『善逸、お前は俺の誇りだ』   作:マキシマムとと

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第 肆拾壱 話『二人の継承者』

 

四年前、俺はジグザグの野郎に呪いを吐き出された。

だが、解呪によってそれまでに蓄積された歪みや淀みが一掃されるかと言えば、それは有り得ねぇ話だった。

 

十一歳、まだ背が低く肉が細い。

その幼さの残る容貌に固定され、俺だけが時間から切り離されたように、この四年間変化しなかった。

 

けどな。

そんな程度、俺からすれば関心を持つに値しやしねぇ。

 

「実弥」

 

小さくて鋭い。

ジグザグの声に竹筒を咥える。

 

「ググゥ…!」

 

この竹筒は、蠅庭という日本有数の変態呪術者集団が業の粋を尽くして考案した最新の呪物だ。

鬼噛みとしての異才と稀血を併せ持つこの身体に蓄積されていた鬼子母神(下弦の参)呪い(祝福)

 

それを砕いて墨に混ぜ、書にしたためて作り上げた巻物を竹筒に忍ばせて、月の明りに晒す。

 

鬼噛みの影響により呼吸の業を習得出来なかった俺は、だからこそ斎藤ジグザグの指導の下に呪術師として修練に励み、月明かりのその下で自らの呪力を込めて祝詞を唱え、九十九日の月日をかけて完成させた。

 

「【白夜叉】や。あの日にもアンタにはお目見えしとったハズやけど、今見るとまた違うやろ?」

 

短く刈っていた白髪がうねるようにして伸びて広がり、清められた鬼の呪力によって柔らかい骨と肉が凄みを帯びて隆起する。

 

全盛期。

 

顔付きも二十代後半の物に変わり、熱すら感じられる筋骨の高ぶりを、同起する野性の本能を、意思の力ただ一つで内側に縛り付ける。

全身に清められた鬼気が巡り、それが黒い痣となって広がる。

風なのか、髪なのか。

うねり流れる線の繋がりが紋様となって俺の意思を試す。

 

研ぎ澄ませ。

研ぎ澄ませ。

研ぎ澄ませ。

 

元は鬼呪であった活力の性質が、中空に…この世の至る所に満ち溢れる嘆きや怨嗟に反応して穢れを帯びようとして、白髪が。

その先端から焼き焦がされるように黒に染まる。

 

だから。

 

(稀血術(きっけじゅつ)ーーー散惨万婪(サンザンバラン)ーーー)

 

《ーーキン》

 

鉄が擦れ、重なって閉じられる音。

手入れが行き届いた鋏の音が何処からともなく鳴り響き、ぱらりぱらりと髪が舞う。

 

切られて減るのは俺の髪。

この世に蔓延する人の(トガ)を吸い込んで、黒く変色した髪の毛の先端。

暖かな地面に落ちる雪のように、断ち切られた瞬間から崩壊して解けては消えて、また伸びる髪が穢れにくすみ、切り捨てられる。

 

その、繰り返し。

そうして鬼で在りながら夜叉であり、夜叉でありながら邪を祓う白に身を寄せて鬼哭(きこく)を鎮める。

いつか、必ず成し遂げる為に。

 

「ーーーーー」

 

表情の抜け落ちた稲井雪菜の動かない口から、声が聞こえる。

 

『鬼ヲ滅ボセ』

 

幻聴と言えば、そうなんだろうぜ。

事実そこに空気の揺れはない。

だが、術者としての俺の魂は、確かにそこに声を知る。

 

『悪鬼滅殺!』

 

ーーー来る!

修練場の床板を蹴り後方へ跳ね、迫る死線から身をそらす。

 

「『泥の呼吸』」

 

「グッグォォウ(稀血術)!!」

 

鬼滅の呪いに身体の主導権を奪われるほど希薄な意識であろうとも、骨の髄まで染み込ませるようにして鍛えられたその技は一級品。

間合いに入られたら逆立ちしたって避けれやしねェ!

 

なら、話をもっと簡単にすりゃ良ぃんだ。

 

「ーーーく?」

 

(剣厳戯淋(ケンゲンギリン))

 

切り捨てた黒の髪に意識を通す。

霧散する前に操り繋げ、強固に固めて稲井の鞘に巻き付ける。

善逸対策に組んだ術式だが使える。

これで、御自慢の刀は棒切れ同然だァ!

 

「グッゴァァァァァア!」

 

そんでェ!

 

床に足をつけ、踏ん張って待ち構える。

俺を追って跳ねた稲井をしっかりと見据え、床板を踏み砕く寸前までに制御した活力が、身体を強引に前へ押し出す。

 

突っ込むェェェェェェエ!

 

薄っぺらい表情が、僅かに熱を持って変わる。

驚愕だろうが嫌悪だろうが、そんなモノはどうだって良い。

大切なのは、変化だ。

 

心を、揺さぶれ!

 

勘だが、もし稲井が悪鬼滅殺の呪いに操られていなかったなら、何らかの駆け引きの後に俺の特攻は軽々といなされていたんじゃねーかな。

けど、今の虚ろな状態には効果覿面。

肩に雪菜の細い胴体を担ぎ上げ「シャゴァァ!」掛け声一発、空中に投げ飛ばした。

 

この修練場の天井は高い。

それこそ善逸の無茶に応えられるように設計してある。

軽く三メートルは投げたか。

 

「ググンガオグー!」

 

空に浮かぶ稲井を指差して逃げる。

つまり、鬼ごっこ。

馬鹿馬鹿しいが、ここはジグザグを信じる。

 

と言うのもこれはジグザグが考案した作戦だ。

雪菜の希薄になった心を呼び覚ますために、まずは鬼気に当ててその深層に泥のように沈殿する鬼滅の呪いを揺さぶり起こす。

そして直に触れることによって鬼滅の呪いを俺の鬼気で弾いて稲井の意識に呼び掛ける。

これで第一段階は越えた…!

 

「あっひゃっひゃっひゃっひゃっ!」

 

「ググォグァ!」

 

信じた矢先に俺を指差してバカ笑いするジグザグを見つけて、とりあえず殴る。

 

「危っぶな!」

 

殴ったのは奴の影。

本物は難なく着地した雪菜の背後に隠れて嫌味に嗤ってやがる。

 

「さて雪菜さんや、鬼ごっこの始まりやで」

 

「ーーー鬼…ごっこ?」

 

小さな唇から。

稲井の声が、空気を震わせた。

 

 

 

 


 

 

 

 

休日です。

 

蟲の呼吸に適性があると判断された私に待っていたのは、剣の稽古ではなく科学と医学と薬学と呪術。

お勉強お勉強お勉強の毎日でした。

 

勉強その物は楽しかったです。

 

私の家は両親が共に薬師として働いておりました。

家にいることは少なく、もっぱら私と姉さんの面倒を見てくれた祖母も、霊障により体調を崩しがちだった姉の看病で手一杯な時があり、そうした時は暇潰しに父の薬学書や医学書を読んで幼少期を過ごしていましたからね。

 

知らない言葉や概念は祖母や両親、近所の優しいお爺さんに聞きながら、遊び感覚で薬学を学びました。

初めて作った薬は、そう。

近所のお爺さんの為に血圧を下げる薬を作ってあげたっけ。

あのお爺さん、まさか泣くとは思わなくて。

嬉しいような、こそばゆいような不思議な気持ちでした。

 

 

そんな事もあって育手のお婆様から与えられた教材や、彼女が培ってきた知識に触れる事は物事の基礎を学び直し、本当の意味で科学や物理、この世界の法則を理解する一助になりました。

 

その点に関しては感謝しています。

していますとも。

それはそれとして。

 

「そんな言い訳で、私が納得すると思ってるの?」

 

私の育手…併願 八千代お婆様が、顔のおシワをぐゅぐゅっと深めてしかめっ面を見せました。

 

「言い訳であるもんけぁ、小うるさいションベン臭い」

 

「変なこといわないの! お婆様、そんな妄言で有耶無耶に出来るわけ、ないでしょ!」

 

お婆様の頬っぺたを両手で掴み、おシワを伸ばしてさしあげる。

 

「よしなひゃれ」

 

「よしません」

 

うっぷん晴らしもかねて頬を伸ばして遊んでいると、不意にお婆様が一筋の涙を溢した。

 

「えっ! アレ? 痛かったですか?」

 

慌てて指から力を抜き、頬を撫でようとした所で顔を背けられた。

 

「でぃじょうぶじゃ。何でもなぃ」

 

大丈夫なら泣かないのでは?

 

とは思ったけれど、お婆様から伝わる拒絶の意思を感じ取り、声かけがためらわれました。

 

「兎も角、蟲の呼吸は教えられん。お前さんのオツムの出来も十二分にわかったからの、基礎の書物は粗方すべて要済みじゃわ。専門書を集めるまでの間はこのババに出来ることはない」

 

「そんな…急に。あ! それならカラダを鍛えましょうか!」

 

「無いもんは鍛えれん」

 

カチンです。

カチンと来ましたね!

 

「あります! 父母から頂いた立派なカラダ!」

 

「既製品の刀ぁ持てるようになってから言いゃ」

 

ぐっ、と息が詰まります。

確かに、私の腕力は他人(ヒト)の一般水準を少し、ほんのちょっぴりだけ下回りますが。

 

「そ、それこそ鍛えねば! 私はやるからにはヤル女です、蟲柱を目指してまずは筋肉を鍛えましょう!」

 

「んーなもんは、一人でせればよろしかろ? ワシは忙しいんじゃ、四六時中ハナタレの面倒は見れん」

 

うぅ。

この人は本当に私を育てる気があるのでしょうか。

 

「…山にでも行きんせぇ」

 

「山ですか?」

 

「蟲じゃろうが花じゃろうが何じゃろうが、鬼狩りの基本は呼吸…つまり肺や。肺は空気の薄い所で運動すらば、うんと鍛えられるぁ。そもそも…しのぶは身体が弱すぎる。山ぁ歩け。下手にその辺走るよりよっっっぽと身体んつぐ」

 

お婆様の教えには得心が行きました。

しかし、山ですか。

一概に山と言っても…?

 

考えている間に、お婆様が何やら書棚から地図を抜き出します。

 

「狭霧山や」

 

ある一点を指して。

 

「走って行げ」

 

「…は?」

 

「一昼夜寝ずに走ればしのぶの足でも一日で着げる」

 

「」

 

「身体、鍛えねばの。未来の蟲柱さまよぉ」

 

ニヤリ、と先程とは別の形におシワをこさえたお婆様の頬っぺたを伸ばして。

 

「行って参ります!」

 

笑顔で宣言してさしあげました。

 

 

 

そんな事情もあり、今は休日です。

足が棒になって、走るというか、ふらついてる、けれど。

とにもかくにも、休日、なのです。

 

「うっ…ふぅ、はっ、んぐ」

 

走る、気持ち、だけは、、、ある、けど!

 

「はっ…はぁ、は、んぐ」

 

腹筋が、一番、脆い。

お腹に、筋肉が無い、から、足の力…が。

 

あばら骨が内蔵に刺さっているような痛みと苦しみ。

これも修行の一部だと考えて耐える。

頑張って耐える。

耐えて、耐えて、耐え続けて。

兎に角、一歩でも前に。

 

「…あ」

 

目の前が真っ暗だった。

いつの間にか日が暮れていたのか、私の脳が酸素不足でへたれたのかはわかりません。

なんだか暗くて。

けど、何故か暖かくて。

 

 

 

 

 

ーー気付けば、私は誰かの背に乗せられていました。

 

「…姉さん?」

 

ほんやりする頭が、明らかな間違いを口にさせます。

違う。

匂いが違う、硬さが…違う!

 

「あっ、や! おろして!」

 

月明かりこそ煌々と降り注ぐけれど、それは即ち時刻は夜中であり、月の輝きが映えるくらい、周囲に光源が無いと言うこと。

 

慌てて手足を振り回すと、その人がゆっくり膝を曲げ、地面に私の足をつけてくれた。

 

「あ、えっと…!」

 

急いで距離を取り、周囲を確認する。

後ろまでは見れないけれど、左右は田んぼ。

ここは田んぼを突っ切る一本道の途中。

 

『常に最悪を想像しておきんせぇ』

 

そう言って、お婆様が忍ばせてくださった懐刀に手を添えた。

心臓が、震えて。

 

「すまない」

 

その男性が口を開きました。

 

ーーーすまない?

謝罪をするのはどうして?

好意で私を助けてくれた訳じゃなくて、もしかして…。

混乱する私を他所に、彼が続けた言葉は。

 

「俺はお前の姉ではない」

 

……………え?

いや、わかって…ますけど?

わからないハズ…無いと思います、けど??

 

「俺は冨岡義勇だ」

 

あ、はいー。

どうも今晩はー?

えっと状況説明とか「鬼殺隊だ」おっとぉ?

 

これは凄いですね。

鬼殺隊を知ってる『私』には最適にわかりやすい単語で攻めて参りましたね。

…ときに、私が鬼狩りを知らなかったらどうするおつもりだったのでしょうか?

 

これまで出会ったことの無いパターンの人だな。

最悪の状況では、無さそうなのですが。

返す言葉を決めあぐねながらも、一応の礼儀として自分の名前を返したのですが、不意に彼ーー冨岡さんーーが私に背を向け、何事もなかったように歩き始めたのです。

 

トコトコというか、テチテチというか、トテトテ?

そんな擬音が見えてきそうな速度でのんびり散歩。

 

「…て!」

 

信じられます?

こんな真夜中に、どことも知れない人家の影も無い一本道の真ん中に、こんな可憐な少女を無視して放置ですよ?

どんな人格破綻者なのよ!

 

「ちょ……と、冨岡さん!」

 

これが私、胡蝶しのぶと冨岡義勇の出逢いでした。

万事が万事こんな風で、笑ってしまうほど話が進まなかったので要約するのですが。

 

まず、彼は何らかの事情で狭霧山を目指していたらしい。

途中で鴉が飛んできて、どこそこの道の途中で女の子が倒れてるから拾って行くように指示された、とか。

 

「あ~はいはい、わかりました。なるほどね? 私がこんな容姿だから馬鹿にしてらっしゃる。あのですね、私はこう見えても十一歳ですよ? 鴉が喋るだなんて、そんな子供騙しの嘘に引っ掛かる訳がない、立派な淑女なのです」

 

「…十一歳?」

 

不思議そうにするな。

そして私の頭をポンポンするな。

笑顔でその手を払い除けてやりましたよ。

 

後に正式に鬼殺隊に入隊してから鎹鴉の存在を知ったのですが…本当に、この人は。

 

「冨岡さん。冨岡さんはもっと早く進めるんじゃないですか?」

 

目的地が同じだとしても、私に速度を合わせるのは申し訳ないというか、違うように感じて。

 

「出来る」

 

「でしたら…」

 

「しかし、無用だ」

 

なんでしょうか。

私だって乙女の端くれですし、状況が状況です。

冨岡さんは言動に目を瞑ればなかなかの美男子ですからね?

ちょっとトキメキ的な感覚がよぎったりよぎらなかったりはするでしょ?

 

けれど、彼の横顔には私に対する気遣いというか、それ以前に他人に心を配れるような余裕があるようには見えなかった。

 

「もっと詳しく仰ってくださらないとわかりませんよ」

 

袖を引っ張ると、一度だけ彼の目が私を見つけた。

 

「…あれは今から十一ヶ月前のこと」

 

「て、おぃおぃおーい! 冨岡さん冨岡さん、もしかしなくても私の事からかってます? からかってますよね?」

 

大きく手を振って呼び止めると、彼は不思議そうに…まるで初めてサナギが蝶々になる瞬間を目撃したような目をして沈黙した。

 

…黙るなし!

 

「もぉ! わかりましたよ! 十一ヶ月前ですね? 何があったんですか! しょうもない事だったら頬っぺたつねりますからね」

 

「十一ヶ月前。最終選別から少しした頃、奇特にも俺を継子にしたいと言う女性が現れた」

 

「はいはいはぁ~い! 冨岡さん質問です、最終選別はわかりますけれど、継子ってなんですか?」

 

うん、だいたいこの人との距離感がわかってきたかも。

まずは笑顔ね、そして折れない心!

 

「継子とは…待て、最終選別を知っているのか?」

 

よくよく観察すれば、という枕詞込みで冨岡さんが驚いて私を見つめました。

 

「知っておりますとも、私は現在蟲柱を目指して鬼狩りの修行中の身。狭霧山へも身体強化の為に向かっているのですよ!」

 

「蟲柱? 聞かぬ柱だ…それに」

 

「ひゃ!?」

 

「鬼狩りの修行中にしては細い、それに肌も綺麗だ」

 

「ぴ」

 

「…ぴ?」

 

私は十一歳。

ついこの間まで小学校の高学年に在籍しておりましたのよ?

意味がおわかりになります?

高学年。

身体が変化し始め、殿方とのアレソレやそうした願望を題材にして描かれた小説を友達と回し読みしてはしゃいだり。

 

その中にね、あるのですよね。

主人公の少女の前にそれはもう花の咲き乱れるような美男子が現れて…。

 

夜道で、急に腕を掴まれて「細い」だとか。

月明かりの下でグッと顔を近付けられて「綺麗だ」とか…!!!

 

 

 

リアルでそんなん、

十一歳の許容量越えてますってばーーーー!

 

 

 

奇声をあげながら振り回した手の平が、見事に冨岡さんの頬っぺたに紅葉の跡をつけましたが、これに関しては反省など致しません。

むしろ乙女心をフミフミした冨岡さんこそ反省するべきでしょうね。

 

 

 

 

 

「ーーーつまり、蟲の呼吸は百年前の百鬼夜行で継承が断然し、今ではその薬学の知識だけが伝えられている…と」

 

なぜ叩かれたのか理解した素振りもなく、それでも平然としてらっしゃるものだから、なんだか私も馬鹿馬鹿しくなっておりました。

 

「そうですね、ヒントと言えば蟲の呼吸は花の派生…と、その程度ですからね。それに私って背も低いし軟弱でしょ? 育手のお婆様も私には無理だと思っていらっしゃるみたいでして」

 

「ならば止めろ」

 

軽い愚痴のつもりで溢した言葉に。

それほど強く反応があるだなんて、考えもせずに傷を抉る、言葉。

 

「最終選別は遊びじゃない、半端な覚悟の人間が生半可な修行をして、その程度で行くような場所じゃ無い!」

 

何が彼の逆鱗に触れたのか、何故そんなにも苦しそうなのか。

話したいことも聞きたいことも沢山あったのに。

 

 

それからはただ黙々と歩いて、歩いて。

だけど、私は気付くとまた彼の背に負われていました。

見上げるとそこは朝日が昇り、その光すら遮る霧の山。

 

「狭霧山だ」

 

背中越の彼の声。

それが、何故か震えている気がして。

私は少しだけ、彼の首に回していた腕に力を込めました。

 

 




追記。
義勇にしのぶの存在を教えた鴉は育手のお婆様の手持ち鴉です。可愛い子には旅をさせよとは言いますが、流石に心配が勝った模様。

愛され系少女しのぶちゃん。
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