「いや〜大変だね」
「ちょっ、コシマエ先輩。見てるんだったら少しぐらいは手伝ってくださいよ」
「ええ、僕みたいな一般人になにをしろって言うんだい」
「コシマエ先輩、ホントは戦えるんですよね!」
ハッハッハ、中々にいいリアクションだよ夏目ちゃん。
修とデコッパチもとい木虎がこちらに向かってくる間、呑気に茶を飲んでいると怒られた。
「いやいや、これでも結構忙しい身でね。すんなりとは戦えないんだ」
今はまだ、こちらのエリアにトリオン兵はやって来ていない。とはいえトリオン兵がこちらにやって来るのも時間の問題。トリガー(ということになっている転生特典)を起動する前に色々とやっておかなけれ後々めんどくさくなる。
千佳ちゃんの側にいるちびレプリカにはこっちに来てもらい、ボーダー本部の管制室に繋げて貰う。
『ボーダー本部と繋がったぞ』
「僕の声はダミ声で頼むよ」
宮野真守ボイスはイケボだし、そっちの方が盛り上がるからね。
無駄な事を要求しつつも話は本題に突入する。
「やぁ、サーヴァント序列7位の
『コシマエ……それは本名か?』
「
声からしてヤクザ顔の城戸司令だろう。
名前というのはとても大事な物なので今が非常事態でも呼び方を改めさせる。
『ではセイバー、お前達に聞こう。なにが目的だ?』
「目的とはなんのこと……ああ、そういうことね」
こちらに対して疑いを持っているボーダー本部。
そりゃそうだ。何処からともなく現れた自分達以外にトリガーを使う奴等が自分達以上に情報と戦力を持っていてボーダーをバンバン支援してくるならば裏の1つでもあると疑ってしまうのは当然のことだ。
「別に裏なんてないよ、こちらの世界を攻め落とされるのは困るんだ」
『ならば何故、そちらからなにもしようとしない?』
こちらの世界が攻め落とされて困るのならば、それ相応の動きはするはずだ。
しかし、やったことと言えば遊真達に情報を売るだけで特になにかを倒したとか誰かを助けたといった事はしていない。今の状況から見てもっと積極的にするのが普通だと感じる……はぁ。
「一応、君達の事を気遣っているんだよ?」
どちらかといえばデリカシーがない変態の僕だけれど、空気が読めないというわけじゃない。
ボーダーの事を気遣っており、堂々と動かないんだ。決してめんどくさいとかそういうんじゃない。
「ボーダー以外にトリガーを持っている組織がボーダーが対処しなければならない事案をあっという間に解決。それをすればボーダーという組織の存続が危うくなる」
一応、向こうの組織としての立場とかを気にはしているんだ。
もし僕が当たりの中の当たりを引き当てたのならば、アフトクラトル相手に無双が出来るからね。
「それでもまだ力を貸せって言うならいいけど……ああ、違うな」
「ぎゃあ!こっちに来た!」
力を貸さなきゃいけない状況だ。
そこそこの数のトリオン兵がこちらにやって来てしまい、夏目ちゃんは泣き言を言いながらも必死になって一般市民の避難をしている。
「もうすぐ修がやって来るけど、若干間に合いそうになさそうだよ」
こちに修達が向かってきてはいるものの若干だが間に合いそうにない。
本当に極々僅かな僅差で修達が間に合いそうにない……一人ぐらい隊員を派遣しておいた方が良かったんじゃないかと思う。いや、でもそれやったらBかA級の隊員が拐われる可能性があるんだよな。
「修にあれこれ言った手前、ここで何もしないわけにはいかない」
セイバーの絵が描かれたカードを手にし、逃げる一般市民とは逆の道を歩きモールモッドと対峙する。
「なにが出るかな、なにが出るかはお楽しみぃ!……あ〜、うん」
トリガー(ということになっている転生特典)を起動した。
修の目の前で使った時よりかは強いと思わしき英雄の姿になっていた……。
「仮面セイバー検非違使、いざ進軍!」
とりあえず、ぶっ倒せるやつはぶっ倒すか。
「これは……」
時間はほんの数分進み、修と木虎は現場に到着した。
警戒区域を超えてトリオン兵がやって来たとの報告を受けていたので直ぐに戦えるように準備をしていたのだが、現場に到着すると驚いた。
「お前達、遅かったな」
トリオン兵がピラミッド状にが山積みされていた。
C級隊員しかいないと聞いているのにこれはと驚いているとピラミッドの前に立っている男……コシマエが振り向いた。
「あまりにも遅かったからトリオン兵をピラミッドに積み上げさせてもらったぞ」
「コシマエ、なのか……」
修はコシマエの姿を見て、驚く。
前回トリガーを起動したときはサンタっぽい服装をしており、自分を間接的にトリガーを起動した時とは全くことなる姿。具体的に言えば平安時代の時代劇に出てきそうな格好をしている。
「僕のトリガーはね、使う度に能力が切り替わる少々特殊なトリガーでね……今は仮面セイバー検非違使とでも言っておこうか」
「なによそれ、丸っきりパクリじゃない」
コシマエの時代劇な格好に呆れる木虎。
コシマエが全てのトリオン兵を一瞬にして撃退することに成功したので一先ずの警戒心を解く。
「貴方、トリガーを持っていたのね……」
おかしな仮面を付けてはいるものの、木虎はコシマエの事をハッキリと覚えている。
まさかトリガーを持っているとは思ってもおらず、修への嫉妬から余計な事を言ってしまい周りから責めたてられたのは苦い思い出だ。
「これあんまり使いたくないんだよ……ハズレを引いた時が怖いから」
「ハズレ?トリガーなら事前に設定してあるトリガーで戦うものじゃないの」
「僕達のトリガーはそうは行かない。ちびレプリカ、本部に音声流して。後から説明するのめんどくさいから」
コシマエがあっという間にトリオン兵を倒したので、僅かばかり説明の時間が生まれた。
本当ならばさっさと次に行けよとか安全な基地に避難しろとなるのだが、コシマエの格好があまりにも逸脱しているので耳を傾ける。
「僕達のトリガーは起動するたびに能力が切り替わるもので色々と使用用途がある。1つは今みたいにトリオン体に換装することなんだが、実はこのトリオン体はあるものを再現しているんだ」
コシマエの格好を見る修。
平安時代の時代劇に出てきそうな格好をしており、腰には刀が添えられているから侍かなにかかと考える。
「そう、それはこの世界の人間達だ」
「……どういう意味?」
「簡単に言えば歴史上の偉人や神話や伝承に出てくる英雄達の力を再現したトリオン体がランダムで出てくるんだ」
「英雄……じゃあ、貴方が平安時代に出てきそうな格好をしているのも」
「ああ、平安時代のとある英雄の力を使っているからだ」
平安武者な格好にも理由がある。
仮面セイバー検非違使に好き好んでなっているわけではなく、ランダムで出てきたから使っている。彼的には不死身の竜殺しが出てきて欲しかったが、これはこれで悪くはないと納得をしている。
「そして僕達はボーダーで言うポジションの様なものがある。剣兵、セイバー。僕はこれで剣に関する逸話を持った英雄、聖剣エクスカリバーで有名なアーサー王やギリシャ神話最強の英雄ヘラクレスが該当しこれらの力が扱える」
「アーサー王にヘラクレス……」
詳しい内容は修は知らないが、流石に聞いたことはある。とてつもないビックネームに冷や汗をタラリと流す。
「次に弓兵、アーチャー。このクラスは弓で逸話を残した人が該当するんだがなにかを投擲したとかも該当するみたいで英雄王ギルガメッシュやヘラクレス、アーラシュがこのクラスに該当する」
「アーラシュ?」
誰だそれとなる木虎。
残念な事にこの世界にはFate関連が無いのでアーラシュと言われても誰だそいつとしかならない。Fateのお陰で日本での知名度が上がっている東方の大英雄、誠に残念なり。
「3つ目、槍兵、ランサー。槍に関する逸話を持った英雄のクラスで個人としての俊敏さならトップクラス。クー……源頼光、ブリュンヒルデ、ヘラクレス、レオニダス一世がこれに該当する』
アーラシュの反応を見てか、クーフーリンの名前を出すのをコシマエはやめる。
奴もまた型月のお陰で知名度を上げた英雄の一人だと思い知る。
「4つ目、騎兵、ライダー。乗り物に関する逸話を持った英雄のクラスでコロンブス、カーネル・サンダース、呂布、ヘラクレスがこれに該当する」
「ちょっと待って。さっきから聞いてたらヘラクレスが多くないかしら!?」
毎回出てくるヘラクレスにツッコミを入れたくなる木虎。
しかし残念な事にこれは型月の公式も認めている事実であり、気にしてはいけない。
「ヘラクレスはギリシャ神話最強の英雄で逸話には色々と欠かさないんだよ。言っておくが源頼光もセイバー、アーチャー、ランサー、ライダーに適合してるからな」
ギリシャ最強と肩を並べる平安最強の神秘殺しマジパねえである。
「5つ目、暗殺者、アサシン。アサシンの語源である19人の山の翁、風魔の忍者の首領、風魔小太郎、ヘラクレス、源頼光がこれに該当する」
「またヘラクレス……いえ、もうなにも言わないわ」
「言わなくていいよ。6つ目は魔術師、キャスター。これはちょっと特殊でコルキスの王女メディアやアーサー王に仕えていたマーリンの様に魔術やそれっぽいものを使っていた安倍晴明みたいに逸話を持っている英雄以外にも作家や学者と言った人物も該当していて例を上げればウォルト・ディズニー、エジソン、手塚治虫がこれに該当する」
「ヘラクレスはいないのか」
ここまでくれば全部出てくると修は思ったがそう上手くはいかない。
指を曲げて数えていた検非違使仮面は最後の指を折り曲げる。
「最後に狂戦士、バーサーカー。怒り狂い暴れたとかの逸話を持った英雄がこれに該当しヘラクレス、アキレウス、ナイチンゲールがこれに該当する」
「ちょっと待って、なんでナイチンゲールが」
「歴史の教科書を一回読み直してこい……ナイチンゲールは中々にバイオレンスな逸話を残してるぞ」
白衣の天使だなんだと言われているが、実際のところはすごいバイオレンスな女である。
こうして全てのクラスについて説明は終わったので引き続きの避難をさせようとすると、検非違使仮面が作り上げたトリオン兵の山から小さな人の頭ぐらいの大きさの見た目がフナムシの様なトリオン兵、ラッドが出てきた。
ラッドを見た修と木虎はまずいと頭に不吉な事を思い浮かべるが、既に遅い。
こちらの世界に現れる黒い穴こと
「遅いな」
門が開いてラービットが姿を表すまで数秒かかった。
普段のコシマエならばなにも出来なかったが今のコシマエは検非違使仮面になっている。腰に添えるはこの国の国宝級の刀剣である。
地面に向かってズドンと鈍い音をたてて降りてくる色違いのラービットに向かい居合抜きをし、刀身を真っ赤に染め上げると刀の周りに炎が出現し、そのまま1体、2体と目元を切り刻み3体目は焔をまとった斬撃と思わしきものを飛ばして切断、溶解した。
「なにも、見えなかった」
検非違使仮面は新型のラービットが姿を現してから10秒も満たない内に撃退した。
一体だけならばボーダーのトップ達でも出来る芸当かもしれないが、少なくとも今の修には何が起きたかが分からないまでの速さだった。
「なにそう驚くことはない。今の僕は人属性に置いて最強と言っていい英雄の力を使っている……トリオン兵程度は有象無象の雑魚だ」
周りがスゴイだなんだと言っているので静める検非違使仮面。
その瞳には降りてきたラービットの残骸が宿っており、嫌なことを考えてしまい少々重苦しい息を吐いている。
「大変だ、ここ以外でもラッドが新型の多くを出していて殆どが警戒区域の外に」
「そんな……まさか狙いは最初からこれだったの!?」
今回のこの侵攻に些か疑問を抱いていたレプリカから疑問内容を聞いていた2人はそうかとなる。
本国の守りが手薄になるほどのトリオンを注ぎ込んだトリオン兵を集中させずに分散させた。本気で敵の大将の首を取りに行ったりするならば、戦力を分散させるわけにはいかない。それなのにしていて腑に落ちなかったが、目の前に複数のラービットと上層部からの報告を受けて全てに納得がいった。
「気をつけろよ。相手はC級狙いだ……特にやべーの居るからな」
トリオンが洒落にならない千佳をチラ見する検非違使仮面。
とはいえ、ここは一先ずの安心はある。ラービットをコシマエが秒殺したのだから。
「忍田本部長、現在新型3体が送り込まれましたがセイバーがそれを撃退しました」
「まさか……」
急に現れたラービットを見て、嫌な予感をする木虎。
ラービットは戦力を分散させる為に各地に現れた筈なのにここだけ一度に3つも、しかも色が違う個体が出てきた。なにか意味がある筈だと色々と考え、検非違使仮面をチラリと目が行くが、それは関係のないこと。
「C級です、忍田本部長!敵の狙いはC級隊員です!」
極端な話をすれば緊急脱出機能のお陰で人的被害を0にすることは出来る。
しかし、緊急脱出機能をC級隊員の使っている訓練生用のトリガーにはその機能がついておらず、その事を学校で起きたイレギュラー門の一件でアフトクラトルへ知られてしまった。イレギュラー門からアフトクラトルの侵攻ははじまっていたのだ。
『状況はほぼ把握した。東部と南部にも新型の色違いが出現している』
「まだまだラッドがいるから出てくるトリオン兵を倒さないと……ラッドの動きを強制的に停止させる装置とか作ってないのか?」
他にも似たような事が起きているとの報告を受ける。
出てくるならば斬って倒せばいいだけだが、毎度毎度出てこられたらきりがない。ラッドそのものをどうにかしなければならず、そのラッドは数だけは無駄に多くて対処している暇はない。
『そんなもん、作っているわけないだろう!』
「極端な話をすればトリオン兵はロボットなんだから行動停止のプログラムを送れば止まるって浦原もというちのトップの人が言っていて、うちの国では既に実装されてるぞ」
そんなものはないと言い切る鬼怒田開発室長。
既にとある国ではそれが実用化にまで至っているとポロリと検非違使仮面は零す。
「新型の色付きが一度に何体襲ってこようがこっちにとっちゃ、屁でもねえ……ボーダーさんは次はどう手をうつ?」
『そちらに今、ボーダーの最強部隊を派遣している』
「最強部隊を派遣したとしてどうする?そっちがボーダー最強ならこっちは平安最強だぞ」
『平安最強?君は今、英雄の力を身に纏っている様だがいったいなんの英雄の力を纏っているんだ?』
「さて、何者なんでしょうな」
忍田本部長の疑問を検非違使仮面は答えない。
「今は僕達が善意で力を貸してあげてる状態だ。これ以上を望むのならばそれ相応の代価は頂かなければ」
『なに!?』
あくまでも検非違使仮面は勝手に動いていて勝手に協力している。
「同盟を結ぼうじゃないか」
個人として力を貸すことはここまでにする。組織として力を貸す事にしようと検非違使仮面は笑みを浮かべる。
ここからは三雲修個人に力を貸すことはやめてボーダーと言う組織に力を貸す。その為の交渉のカードを切る。
「僕達と、カルデアと同盟を結ぼうじゃないか」
『同盟……』
「一時的な物か継続的な物なのかを決めるのはそっちで構わない。一時的な物ならばこの大規模な侵攻の後処理を終えるまでの同盟、継続的な物ならば大規模侵攻の処理後も仲良くしようじゃないか。ああでも、そこから先は僕からじゃなくて上司を通さないといけなくなるからその辺りはあのアマもといキャスターに聞いてくれ」
『キャスター、そうだ。彼女はどうなっている!?』
『今までの会話をちゃんと聞いてますよ。検非違使仮面の言う通り、同盟を結びませんか?こちら側はセイバーを貸し出しましょう。此度のセイバーは並大抵の黒トリガーならば討ち倒す事が出来る当たりです』
『黒トリガーを!?』
「ハードルを上げないで……」
とはいえ。検非違使仮面の実力が半端じゃないのは事実。
A級でもそれなりに苦戦するラービットをいとも容易く倒す黒トリガーみたいなのが味方になってくれるのは心強い。
『……いいだろう。そちらとこの大規模侵攻の後処理を終えるまで一時的な同盟を結ぼう』
今ここで彼等に姿を消されるのもそれはそれで困る。
黒トリガーの様な戦力が加わるのはボーダー側にとって有益になる。不安要素はあるものの城戸司令はカルデアの者と同盟を結んだ。
仮面セイバー検非違使
クラス:セイバー
真名:□□□
トリオン 30
攻撃 33
防御・支援 12
機動 18
技術 24
射程 2
指揮 0
特殊戦術 3
TOTAL 122