運命/世界の引き金   作:アルピ交通事務局

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変えられた未来と変えられなかった未来

「いやいやいや、どゆこと?」

 

 実力派エリート(自称)迅悠一は呟いた。

 彼は未来視のサイドエフェクトを持っており、見たことのある人物の未来を見ることが出来る。その未来視を利用してなるべく最善の未来へ導こうとしていたのだが、ここに来ての未来が見えなくなるという不測の事態が発生。

 

「迅、なんでこんなところにいるんだ!?」

 

 西と北西を担当している筈の迅がこの場に居ることに嵐山は驚く。

 西と北西のトリオン兵を全て倒したのかとなるが、1人で一つの区域を担当するとしてもあまりにも早すぎる。

 

「未来が色々とおかしくなってきたんだよ」

 

「未来が……外したのか!?」

 

 未来視で未来は見えるが複数の未来が見えて、それ以外の未来も存在する。

 よくある台詞だが未来は決まっておらず、迅の焦りはここにある。

 

「オレが視たどの未来とも異なる新しい未来が生まれてる」

 

 迅の未来視が外れた。

 今回の大規模侵攻は迅の未来視と遊真の近界の情報を頼りにしており、その内の片方が当てにならなくなったとなれば驚異的だ。

 

「……サーヴァントが原因か?」

 

 迅の未来視がハズレた原因を考察する嵐山。

 彼の反則に近いサイドエフェクトには穴があり、見たことのない人間に対しては通用しない。襲撃してきたアフトクラトルの顔は見えないことは勿論の事、現在起きているイレギュラーといえばサーヴァントでしかない。

 

「ああ……顔は見ていないけど、一向に未来が見えない」

 

「それは大丈夫なのか!?」

 

 既に姿を表に出しているのに、迅の未来視は一向に彼等に対して反応はしていない。

 今はどんな人物かは見えていないがこのままいけば顔を見る機会はあるはずなのに見ることはできない。

 

「全然大丈夫じゃない……なんか太刀川さん達がグラサンを掛けて物凄いテンションを上げてる未来が見える様になったけど、それ以外に進展は無いよ」

 

 謎の未来が視えている迅。この未来が意外な未来というか太刀川達らしいなと思える未来だったりするのだが、今とは関係の無い話である。

 未来が見えない事はとにもかくにも危険な事で、今までこんな事は無かったのにと軽く冷や汗をかいて焦る。

 

「やっぱ迅さんでもコシマエは引っかからないか」

 

「なにか知ってるのか?」

 

 今まで見えていた未来が見えなくなり、代わりに見えるようになった変な未来について知っている素振りを見せる遊真。

 

「今、ボーダーに手を貸してるサーヴァント、コシマエはサイドエフェクトが効かないサイドエフェクトを持ってるんだよ」

 

「はぁ!?」

 

 あやふやで変な未来しか見えないよ1番の原因、それは力を貸しているセイバーことコシマエが1番の大きな要因だ。

 まさかサイドエフェクトが効かないサイドエフェクトを持ってる奴が居るとは思わず声を上げる迅。なにせコシマエは唯一無二、迅の天敵なのだから。

 

「待ってくれ、それはつまり」

 

 迅のサイドエフェクトが効かない人間が場を滅茶苦茶に荒らしているとなると物凄く嫌な予感がする嵐山。

 

「今回は迅のサイドエフェクトが頼れないと言うことか?」

 

 コシマエが出ている限りはコシマエが介入している未来は一切見えない。

 現在、コシマエは修達を追いかけており、その修達はボーダーの本部に向かっている。今回の未来の鍵を握る修の未来が見れなくなるのは一大事、いや、それ以前に未来が見えなくなったという時点で一大事だ。

 

「まぁ、そうなるよ」

 

 コシマエ達が動いている限り未来は見えない。

 未来視の予知を前提に色々とやっていた事が全てパーになるとなれば笑い話にすらならない。

 

「けど、それでいいと思うよ」

 

「なにを言ってるんだ、迅の予知が無かったら」

 

「いいんだよ、これで」

 

 何時もなにかと頼っていた未来視が使えないとなると此処から先の指示を間違えるかもしれない。

 未来視の予知の大事さを知っている嵐山だが遊真はそれでいいと断言をする。

 

「サーヴァントが力を貸してくれる。これだけで充分過ぎるほどに強い……迅さんの未来視よりも信頼が出来る」

 

「そんなに、なのか?」

 

 サーヴァントがなんなのか詳しい説明を受けていない嵐山。

 引き合いに出された迅の予知よりもとなるとそれはもう凄いのだろうと更に説明を求めるので遊真は説明をする。

 

「たった7人で近界(ネイバーフッド)の色んな国を荒らしに荒らしただけじゃなくて、文字通り国を滅ぼしたんだよ」

 

「国を……」

 

「序列最下位のコシマエでもおれは勝てない」

 

 遊真は当事者ではないので詳しいことは知らない。

 しかし、噂は知っている。近界をとにかく荒らしまくっただけでなく文字通り国を滅ぼした……まぁ、滅ぼしたのはコシマエでなく別の人物だが、それはさておき迅の予知が使えなくなったのを含めたとしてもコシマエの助力は強い。

 

「ジンさん、コシマエが介入してない未来は見える?」

 

「見えるには見えるけど……殆どがこの大規模侵攻が終わった後だ」

 

「だったら問題無いよ。ちゃんと終わるって未来は見えてるみたいだから」

 

 迅の未来視で見えている大規模侵攻後の未来。

 それが平和的な未来に見えるのならば、逆説的に見てこの大規模侵攻は乗り越える事が出来る。

 

「そう簡単に言うが、見えてる未来は中々だぞ」

 

 コシマエ関連じゃない未来は中々に危険な未来が待ち構えている。具体的に言えば普通に死人が出ている未来が視えている。

 

「彼等と協力して最善の未来を選ぶのは出来ないのか?」

 

 最悪な未来は出来る限りは回避したい嵐山。

 今は同盟を結んでいるので、協力関係にあるので協力は出来ないかとなるのだが、それをすることは出来ない。

 

「オレのサイドエフェクトが効かない以上は向こうが完全に退場してくれないと無理だ」

 

 サイドエフェクトが効かないサイドエフェクトがある以上は迅のサイドエフェクトは頼れない。

 コシマエ達とどれだけ協力しても未来が見えない以上は誘導することが出来ない。未来視のサイドエフェクトが意味を為さないのはまずい。

 

「全く、なんで隠してたんだ」

 

 コシマエ達の事を秘密にしていた遊真に文句の1つでも言いたい。

 まさかここに来てボーダー以外でトリガーを扱っている集団が居るとは誰が予想するだろうか。

 

「おれがこっちの世界に送ってもらって色々とやってもらう代わりに黙ってる約束だったんだよ」

 

 修と千佳には自ら正体をバラしていると言えばややこしくなるので言わない。

 遊真にも遊真で事情はあったので喋るに喋られない。そういう契約を交わしていたから。

 

「で、どうすんの?」

 

 コシマエ達はこの場から退場するつもりはない。迅悠一はコシマエ達がいる為に未来が見えない。

 それを踏まえた上で迅に次にどう出るかを尋ねる。

 

「う〜ん、前に見えてた最悪の未来を前提に動くしかないな」

 

「最悪の未来……なにが見えてたの?」

 

「……メガネくんが死ぬ」

 

「!」

 

 これまでに見えていた最悪の未来、それは修が死ぬ未来だ。

 役職があるわけでも特段強いわけでもないがなにかととんでもない運命力を持っている修。今回の大規模侵攻でもある意味鍵を握っており、そんな彼が死ぬと言われれば流石の遊真も目を見開く。

 

「……どんな感じで死ぬの?」

 

 一瞬だけ動じたがそこはそれ、プロだ。

 下手に慌てて行動すれば墓穴を掘るだけで、冷静にその時の状況を分析する。

 

「敵にやられる。相手の顔が分からないからそこまでしか分からない」

 

「レプリカ、今は修達はなにをしている?」

 

『C級隊員と共にボーダーの本部に向かっている……しかし、ラッドが門を開きトリオン兵を送り込んでいるせいで思う様に進んでいない……』

 

「こなみ先輩達とコシマエは?」

 

「コナミは市街地に出ようとしているトリオン兵を相手に、レイジは倒した角付を捕縛の為に身動きが取れない。コシマエはアフトクラトルの黒トリガー使いを倒して、今修達の援護に向かっている」

 

「だそうだ……ジンさん、どう?」

 

 今の修達の状況を詳しく聞けた。

 未来視で見えていた未来と現状を照り合わせてみて、今の修達が無事な未来にいるかどうかを確認する。

 

「1つ、千佳ちゃんはどうしてる?」

 

『チカならばオサム達と共に行動をしている』

 

「そうか……」

 

『チカが狙われる可能性は低い』

 

 トリオン量が黒トリガー並の千佳。

 狙われまくる未来を迅のサイドエフェクトは告げていたが、その可能性は限りなく低い。

 理由としてまず千佳のトリオンが規格外だと露見するラービットをアイビスで撃退する出来事が起きていない。トリオンを測定する機能をトリオン兵にも付けてはいるものの、コシマエがその前に一手を……トリオンをトリオン兵に測定されず尚且近界民が自分の近くに出てこないと言う効果を持ったお守りを託している。

 

「……」

 

「まだなにか不安要素があるのか?」

 

 ここに来て黙る迅。冷静に未来を分析しているのだが、言葉が詰まっている。

 人型が何名かまだ出ているのここからの未来が本番と嵐山は思っており、迅の不安を聞こうとする。

 

「いや……狙われないならそれに越したことはないんだけど……どうするか」

 

 見える未来は侵攻後の未来ばかり。

 見えていた未来も頼る事は出来ないぐらいには変動をしており、どう動くべきか悩む。今までサイドエフェクトに頼っていた分のツケがここでやってきた。まさか自分にとっての天敵が存在するとは思いもしなかった。

 

「ジンさん、オサム達を迎えに行こう……C級隊員も居るならキトラととりまる先輩が強くても意味がない」

 

 C級隊員狙いで共に戦うのではなく守らなければならない対象となっている。

 防衛の戦いは出来ても守りながら移動して戦うにはとにもかくにも数が必要でA級でも苦戦する敵がいるならば、自分達が必要だ。

 

「アラシヤマさん、オサムが死ぬ可能性があるから行かせてもらうね」

 

「ああ。ここは任せてくれ、三雲くんと木虎の事を頼んだ」

 

「それが1番か……」

 

 色々とあれこれ考えたりやったりはしたものの、結局の所は現場に向かうのが1番だ。

 敵が修達の元に現れる未来は多く存在し、後々のボーダーの被害を極力減らす為に彼等を囮にしなければならない。苦渋の決断を1人でしている。既にある程度マシな未来に向かっていっているのだが。

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

「バカな……」

 

 一方、場所は少し変わりアフトクラトルの遠征艇。

 今回のリーダーであるハイレインは驚きを隠せず、開いた口が塞がらない。

 

「ヴィザ翁が真っ先に倒されただと」

 

「申し訳ありません……一生の不覚です」

 

 この玄界(ミデン)の雛鳥を捕らえる作戦、玄界の進歩は目覚ましく万が一は想定していた。

 具体的に言えばランバネインが玄界のトリガー使いに負けたり、エネドラが作戦通りに動いてくれなかったりと色々と想定していた。しかし、まさかの自分達が絶対に倒されることはないと信頼を置いていたヴィザが真っ先に倒された。

 国宝と呼ばれる黒トリガーを持ち剣も達人という向こうの世界でも数えるほどしかいないであろう歴戦の猛者だが、そんな事は関係無いと騙し討ちからの正々堂々の真正面からの攻撃を受けて退場した。

 

「しかし、その話は本当なのですか?」

 

「ええ……私が相手にしたのはサーヴァントです」

 

「っ!サーヴァントが、何故ここにいる!?奴等はカルデアに閉じ籠もっているはずだ」

 

 サーヴァントの名を聞いて恐れるハイレイン。それもそうだ。

 2年前に大国を含めて総力戦とも言うべき戦力で挑んだのに結果はまさかの大敗で終わり、黒トリガーを丸々一個破壊されたのだ。

 基本的に喧嘩を売りさえしなければ安全だと言われており事実その通りで、アフトクラトルも狙わない様にしている。それなのにまさかこんな辺鄙な所で出会うとは誰も思ってもいないだろう。

 

「どうやら彼等はここが地元のようです」

 

「なん、だと……」

 

 ここにどうして居るのかを知っているヴィザはハイレインに教える。

 コシマエ達がどうしているのかと言われれば地元だから……それがどれだけ恐ろしい言葉なのか分かるだろうか。5年前にふらりと何処からともなく現れた世界界賊サーヴァント、何処からともなくでなく玄界から現れたということが判明した。

 向こうから挑んで来ない限りは争うとはしないカルデア。そんなカルデアに知らず知らずの内に喧嘩を売ってしまった。

 カルデアの極悪非道っぷりはハイレインは知っている。一番酷い物になると文字通り世界を滅ぼしたもので、その時を知る者は世界を滅ぼしたサーヴァント以外は知らない。

 

「どうしますか?私の窓で雛鳥達から遠く離れさせる事は可能ですが……」

 

 複数の黒トリガーに強化角トリガー使いを乗せたこの遠征は失敗するわけにはいかない。

 なんの成果も無しで後戻りは出来ないぐらいに兵力を導入しているのでミラはコシマエを遠くに飛ばしてその間に雛鳥達を回収する案を出す。

 

「ヴィザ翁の星の杖よりも素早く動ける相手に窓を開く余裕はあるのか?」

 

「それは……失礼しました」

 

 ミラの窓は何処からともなく出せるが何処でも出せるわけじゃない。

 ある程度の条件はあり、コシマエを遠くに引き離すには目の前に現れなければならない。瞬間最高速度がアキレウス並の化物染みた現在のコシマエを相手にそれは愚策というもの。

 

「雛鳥の捕獲の進行具合はどうなっている?」

 

 後戻り出来ないぐらいには事は進んでいる。

 今の所、どれだけ成果が上がっているのかをハイレインは確かめる。

 

「サーヴァントが現れた地域は1人も捕獲することは出来ていません。ですが、それ以外の地域は何人か捕らえることが出来ています」

 

 一応の成果は上がっている。しかし今までかけた労力と比べれば、圧倒的に成果が低い。

 ここに至るまでそれ相応の労力を有した以上、もう少し成果が必要だ。折角人が多い玄界を襲ったのに、これでは何処かの国を襲っただけの成果と一緒だ。

 

「雛鳥でない者達は?」

 

「……1人捕獲に成功しましたが奪還されました」

 

 こうなったら雛鳥以外を捕まえなければ割に合わない。しかし肝心の雛鳥以外は捕まえれていない。

 成果が思うように上がらず若干の苛立ちを覚えるが、それでも冷静さを欠かないのは流石とも言うべきか。

 

「なにか成果を……なにかないか……」

 

 手ぶらで帰るわけにはいかない。

 なにか無いかと色々と模索していると1つの知らせが届く。

 

「ランバネインがやられました」

 

「っ……そうか」

 

 ここに来ての自軍がやられたという悲報。

 一応の想定はしていた事の為にそこまで驚く事じゃないが、ここに来ての悲報は痛い。

 

「撤退いたしますか?」

 

 相手が相手だけに、これ以上勝負に出ると手痛い目に合う。

 ヴィザは撤退をすることを視野に入れ始めるが、中々に決断が出来ない。それほどこの遠征は重要なものだから。

 

「はっはっは、すまん。玄界(ミデン)の兵も思ったよりやるようだ」

 

 どうすべきか悩んでいるとミラに連れられ帰還したランバネイン。

 ここは玄界の兵を相手にしたランバネインから意見を聞くのも1つかと尋ねてみる。

 

「金の雛鳥になりえそうな者はいたか?」

 

「流石にそれはなかったな……こちらのトリガーを持たせれば面白くなる強者は中々にいたがな」

 

 面白い奴はいても金の雛鳥は早々にない。

 どうしたものかと考えているとヴィザがボーダーの本部に向かって走っている一団(修達)に目が入る。

 

「おや、計測器の故障ですかな?」

 

「どうかなさいましたか?」

 

 首を傾げるヴィザ。

 モニターに移されている一団のトリオンを計測しているのだが、約1名のトリオンを計測することが出来ていない。計測器が故障したのかと思ったのだが、他の人達の計測は出来ており、計測器自体が故障しているわけではない。

 

「これは……トリオン量を計らせない様にしている?」

 

 トリオンを測定する装置があるならば、それを遮断する装置もある。

 唯一測れていない違和感をハイレインに報告をする。

 

「トリオンを測定させない装置を一人だけ持っているか……」

 

 殆どが似たりよったりのトリオン量の雛鳥達。その中でただ一人だけ測定出来ない雛鳥がいるとなると色々と考える。

 雛鳥の中で唯一トリオンを測定させない装置を用いている。その手の装置を持たせるという事はなにか理由があり、1番の理由となればトリオンが多いからだろう。

 

「……少し、つついてみるか」

 

 これが金の雛鳥の可能性にハイレインは賭ける。





運命/世界の引き金こそこそ裏話

コシマエ達が乗っ取った国は改名してカルデアになっているが、その前の名前はエンディミオン。
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