「……」
ハイレインは考えていた。
地球こと玄界について入念にチェックを入れた。その結果、玄界のトリガー使いは多くいるのだが白い服は緊急脱出機能が搭載されていない事を知った。祖国であるアフトクラトルが一大事で覇権を争う状況に扮しており、それをどうにかする為に今回襲撃を仕掛けた。
だが結果はどうだろうか。アフトクラトルの優秀なエンジニア達が作り上げてきたトリオン兵は、国宝を使う洗練された兵は世界界賊サーヴァントにより、たった2人によってボコボコにされた。
「なんとしてでも金の雛鳥を見つけなければ」
大量の戦力を、黒トリガーを使っているのだからなにもないでは済ませられない。
一応の万が一を想定はしているがこのままでは想定を上回ってしまう。ハイレインは自分の手元に光る卵の様なものを出現させると卵からスズメバチ、燕等の卵から生まれる空を飛ぶ事が出来る生き物がウジャウジャと出てきた。
「金が出るか鉄屑が出てくるか」
ハイレインの視線の先にはボーダーの本部を目指そうとしている修達が居る。
道中にラービットやモールモッド等が出てきて、C級隊員を守りながらの移動の為に苦戦を強いられている。なにをしてくるのか分からない、狙えるのは一度きり。何故かレーダーにトリオン能力が映ることがなかった雨取千佳に、C級隊員に向かって卵より生まれる獣を放つ。
「……修くん!!」
「どうした千佳」
「なにかが、来る……」
本部を目指して逃げている千佳は気付く。サイドエフェクトによるものだ。
危険を察知した事をいち早く修に伝えると修は辺りを見回し警戒心を強めていく。
「な、なんすかアレは!?」
夏目が飛んでくる鳥に気付いた。
この非常事態にやってくるということはなにかあると大慌てで逃げるのだが、燕やスズメバチ達がかなりの数でやって来た。それもかなりの速度で。
「下がってなさい!」
この燕やスズメバチは敵の攻撃によるものだと即座に判断する木虎は夏目に逃げる様に言う。
夏目は触れない様に一目散に逃げるのだが、追いかけてくる。夏目だけじゃない、他のC級達にもぶつかろうとしている。最初の木虎の読み通りアフトクラトルの狙いはC級隊員だと分かれば木虎は拳銃のアステロイドを燕達に向けて撃った
「トリオンキューブになった!?」
撃ったアステロイドは燕に命中した。燕は爆ぜる事も貫かれる事もなくグニャッとネジ曲がりトリオンキューブに変化した。
まさかと木虎の脳裏にある事が過ぎるのだが、それが原因で隙を生んでしまう。まだまだ沢山の燕や鉢が宙を舞っており、木虎は撃ち漏らしてしまい燕の1体が木虎に触れると木虎の腕がグニャッと変化する。
「これは」
「木虎!」
自分の身に起きている事を理解する木虎だが段々と意識を手放していく。
修が心配そうに声をかけていくが意識が薄れていく中で返事をする事は出来ず……トリオンキューブに変化した。
「ぬぅああああ!A級の木虎がやられた!」
トリオンキューブに変化した事に1人のC級隊員が叫ぶ。あの嵐山隊のA級隊員である木虎がやられてしまったとなれば叫ぶしかない。
燕や蜂を捌く者が居なくなったのかC級隊員に向かいC級隊員は徐々にトリオンキューブに変えられていった。
「烏丸先輩、これは」
「落ち着け、弾系の武器で撃ち落とすんだ」
触れれば終わりの即死攻撃にどうすればいいのか分からず慌てる修。
烏丸に指示を仰ぐと烏丸は
「僕も、アステロイド!!」
燕達の対処の仕方が分かると修はアステロイドを2×2×2に分割して撃った。
「っ!!」
アステロイドは命中した。しかし大量の蜂達は燕達は消えなかった。
修のトリオン量では一度に分割出来るアステロイドに限界がある。アステロイドを動く的にぶつけるだけでも一苦労の修には飛んでくる相手を対処しきれない。
「修くん!」
「千佳!」
「使って、私の
千佳は修の右手を握った。すると機械的な音声が流れ、修のトリガーと千佳の訓練用のトリガーが接続される。
「アステロイド!!」
これならばいける。そう思った修はアステロイドを出した。
自分のトリオンでなく千佳のトリオンを用いた事によりをそのアステロイドは修の出した手のひらサイズのアステロイドと比較する程が烏滸がましい程に大きなアステロイドだった。
10×10×10と1000発に分割したアステロイドを燕達に向けて撃つと質量の暴力か、燕やスズメバチはアステロイドに触れてグニャッとねじ曲がりトリオンキューブになっていく。
「っ、しまっ!」
「メガネくん、そりゃロマン溢れるけど雑だぜ」
アステロイドを掻い潜る燕達がいた。
修の取り零しであり、修に向かって突っ込んできて万事休すかあわやと言ったところで修の横をトリオンキューブが通り過ぎた。
「よぉ、メガネボーイ。久しぶりだ」
「米屋先輩、それと」
「オレは出水、出水公平だ。にしても今のスゲえな」
「あ、いえ、僕じゃなくて千佳のトリオンを使ったんです」
「あ〜噂のトリオン怪獣か」
旧三門大学から移動して助っ人にやってきたA級隊員の出水、米屋、そして緑川。
ここに来ての増援に修は少しだけホッとしているが現状は変わりはなく直ぐに状況を報告する。
「あの光る燕や蜂は触れるとトリオンキューブに変化させられます。触れた時点でトリオンキューブ化が進行していってしまいますので撃ち落とす必要があります」
「マジか〜……どうする弾バカ?カッコよく来たんだけどもな」
「俺達、邪魔者だね」
「バーカ、ついさっきまでお前達が活躍してたんだ。ちょっとはオレにも見せ場を作らせろや」
攻撃手の米屋と緑川はここにいても対して役には立たない。
出水は心配そうにしている修に任せろというと両手から大きなトリオンキューブを出し、飛んでいる蜂達目掛けてぶつける。
「す、スゴい……」
「三雲先輩、いずみん先輩に驚いてる場合じゃないよ。新型を撃退しないと!」
出水の
出水のおかげでC級への被害を抑える事が出来てきたのだがここに来て色付きラービットが出てきてしまった。
「やはり金の雛鳥だったか」
ハイレインの賭けは成功した。金の雛鳥と呼ぶに相応しいトリオン能力を有した雛鳥がいた。それも意図的に隠されている存在でだ。
金の雛鳥さえ連れ帰る事が出来ればそれでいいと残っているラービット等の使える駒をラッドを経由して修達の元に出現させ、自分も金の雛鳥に……雨取千佳に近付こうとする。
「……出水先輩、米屋先輩、後は頼みます」
千佳に脅威の魔の手が迫る中で烏丸は1つの決断をする。
裏でコソコソしていた迅から聞き出した情報によれば自分が修たちをどうにかする出番は無い。コシマエの介入により未来は大きく乱れており、その未来は無くなったが今が正念場である事には変わりない。ここを切り抜けさえすれば良い方向に未来は切り替わる。
『ガイスト起動。トリオン体崩壊まで残り232秒』
烏丸は自分の持つ玉狛トリガーであるガイストを起動する。白兵戦特化の形態に切り替えて色付きの頑丈なラービットを切り裂いた。
「お、京介のズルいやつじゃねえか……いいよな、それ。オレも使ってみたいわ。でもイケメン限定なんだよな」
「米屋先輩もカチューシャ降ろしたら充分イケメンです」
尚、米屋の場合は米屋のトリオン能力が低くてガイストがそんなに持たない。
それをわかっていて尚、その事について触れない烏丸はなんだかんだでイケメンである。
「遅れてごめん!!」
「コシマエ!」
徐々にハイレインが修達の元へと近付く中で、コシマエがやってきた。
烏丸と同じく色付きのラービットを一閃、綺麗に真っ二つに切り裂いた。
「コスプレ!?」
「いやいや、僕のトリガーは色々と特殊なんだ。細かな説明は修にしてあるから時間が空いている時に修に聞いてくれ緑川」
「え、あんたに名乗ったっけ?」
「HAHAHA、コレでも色々と情報網があるんだよ!滅!」
斬撃を飛ばし、ラービットを熔解させるコシマエ。
コレもトリガーの一種なのか緑川と米屋は目をキラキラと輝かせるが、今の敵はコシマエでなくているトリオン兵だ。
鬼切を納刀し、神速の抜刀術でラービットを切り裂いてくコシマエだが、肝心のトリオンキューブ化してくる燕達をどうにかする事は出来ていない。
「もう無駄だ……サーヴァント、お前がどれだけ強かろうとトリオン体である事には変わりない」
遂に目の前に姿を現すハイレイン。周りにグルグルと魚が渦巻いて回転しており、コシマエの剣戟は届かない。
例えどれだけの猛者であろうともハイレインの黒トリガー
「コレはまずい……と言えば君は慢心してくれるのかな?……残念だ、実に残念だよ……」
「なに?」
「僕達を相手にした時点で君達は逃げればよかった」
「どういうい──!?」
「おい、嘘だろ!」
「アレって矢!」
どういう意味なのかハイレインが尋ねようとするとハイレインの頭に矢が突き刺さった。
突如として現れた矢に米屋と出水は驚き、矢が飛んできた方向を見る……そこには誰も居ない。この辺りに居るのはC級隊員と後は本部付近に潜んでいる狙撃手達ぐらい。そもそもでボーダーのトリガーに弓矢なんてものは存在しない。
「バカな、警戒は怠っていない」
「ああ、そうだね。貴方は慢心せずに臆病になって魚の膜を作った、その中にいる貴方を狙撃するのは至難の技だ……並大抵の人間ならばね。僕達サーヴァントの扱う力は並大抵の力じゃない。地球の人類史に刻まれた英雄と呼ばれる猛者達を模した力を使っている……故に教えておこう。5km先から狙撃した」
コシマエが念には念を入れて呼んでおいた助っ人が、ハイレインを撃ち抜いた。ただそれだけなのだがそれがあまりにも規格外な事で出水は冷や汗をかいてしまう。
「おい、嘘だろ。
「出水さん、驚いてもらっては困ります。サーヴァントの弓兵の最大射程は……2500kmぐらいです」
「……マジで?」
「大マジですよ。僕達の力は人類の歴史の力で、過去に国を作る一矢を放った大英雄がいる。その英雄の力を使えば5km先の物を命中させるなんて朝飯前。もっとも、あの人は今別の力を纏っていますが」
「いったい、どんな奴なんだ……」
矢を撃った奴が気になる中、頭を撃ち抜かれたハイレインは元の生身の肉体へと戻る
「さて……修、僕はやれるだけの事はやったよ」
コシマエはアフトクラトルが送り出したラービットを倒した。アフトクラトルの国宝、
その上で深雪はエネドラを倒して泥の王を破壊、更には姿を潜めている
「鬼切が無い事が実に残念だよ、君の首は刎ねておいて損は無いんだけど……」
コシマエにはもう鬼切が無い。
トリオン体に身を任せてハイレインをぶん殴るという手段が無いわけではないが他人を無闇矢鱈と痛めつける趣味は無い。殺せるならば殺しておきたいが武器は無いので仕方がないとコシマエは潔く諦めた。
「っく……撤退だ、ミラ!」
エネドラがヴィザがそして自身までも破れた。
3人目のサーヴァントが遠くに潜んでいて自身を容易に狙撃する事が出来る。何処にいるのかすら分からない相手がいて、こちらには残された手札はもうない。ハイレインは撤退を選ぶと門の様なものが開かれる。
「おい、捕まえなくて」
「それは君達の仕事だ。僕の仕事はぶっ倒すことで管轄外だ」
「そんなマニュアル対応をすんじゃねえよ」
逃げようとするハイレインを捕まえないのか出水は尋ねるがコシマエは最初から捕まえるつもりはなかった。
最初に言った通り暴力という力を貸すだけで捕獲については一切するつもりはない。米屋が呆れながらもハイレインを追いかけようとするがハイレインは門(窓)を潜って自身が乗ってきた遠征艇に戻ってしまい、逃げられた。
「ボーダー本部、こちらコシマエ。敵の総大将と思わしき人物が撤退を指示した。どうぞ」
逃げられたものの、ボーダーは勝った。
暴力という力を貸しているコシマエはちびレプリカを経由しボーダーの本部に連絡を取る。
『……君達の目的はなんだ?』
「そういう小難しい事はうちの上司を通して言ってくれ。僕はこっちの世界でゴタゴタがあったら力技で解決してくれと指示を受けている……ボーダー以外でトリガーを持っている組織が現れた、もしくは居たと考えてください……もし貴方達が力技で物事を解決するならば、そこにいる通称A級3バカに極秘で僕達を捕える様に連行する様に命じているのならばそれなりに抵抗はさせてもらう」
詳しい事は上司に聞け。なんともマニュアル通りな対応をコシマエは見せる。
相手は撤退を選択してこれ以上はトリオン兵は現れる事は無いと判断したコシマエはつけていた仮面を外す。もうこれ以上は戦うつもりはないのだという意思表示だ。
「修、僕は君の力になる事が出来たか?」
「……ああ。越前が、コシマエが居なかったら危なかったよ」
「そうか。戦闘に向いてない僕でもどうにかなったか」
これが主人公の成長を妨げるものかどうかは分からないが、死ぬ未来は回避する事が出来た。
数少ない友達を助ける事が出来てコシマエは満足そうにしこの場を後にしようとするのだがその前に三輪が立ち塞がった。
「お疲れ様です、残りの敗残兵を始末するのは任せましたよ」
「待て!動くな!」
「……なんの真似ですか?」
三輪に後を託して去ろうとするコシマエだが、三輪は銃口をコシマエに向ける。
「お前達は何者だ!」
「そういう話は後で上司が色々とやってくれるから僕の口からはポンポンと言えないよ。今のところ言えるのはボーダーとはまた別にトリガーを使っている団体、または組織」
「ふざけるな!そんな組織は聞いたことはない」
「ならよかった。貴方はこれでまた新しい知識と知恵を得た、上層部の事だから有耶無耶にするか秘密にするつもりだ……さっさとその銃口を下げろよ。君、結構危ない事をしてる自覚ある?」
近界民でない一般人に対して銃口を向けている。これだけでも充分にヤバい。
ボーダーの弾系のトリガーは被弾防止対策として生身の肉体にぶつかっても痛いだけで済む様になっているが現在のコシマエはトリオン体である。撃たれれば生身の肉体に戻ってしまう。
「……お前達は何故近界民と戦わない!」
「そういう禅問答は飽きたよ。僕の1番の友人の言葉を借りるなら……めんどくさい」
「ふざけ──」
「黙れと言ってるんだ」
大声を出して叫ぼうとする三輪の口をガッシリとコシマエは掴む。
その目は心底どうでも良さそうで三輪の胸の内にある感情なんて知ったことではない。どれだけ悲劇的な過去があろうと過去は過去、前に進む事しか人間は出来ない生き物だ。
「あの……ありがとうございました!!」
三輪の口を握る手の握力を強めていると千佳がペコリと頭を下げてお礼を言う。
なにはともあれコシマエが修達に力を貸した事により事態はいい方向に向かっていった事には変わりはない。それだけでも千佳はお礼を言いたかった。
「お礼は要らないよ。僕は僕の責務を全うしただけだ……それでも感謝の念を抱いているのならば、強くなるんだ。君は快楽の為にボーダーに所属しているんじゃない。大切なものを取り戻す為に入った……君が強くなれば勇気を出して一歩前に進むことが出来れば、救われる人だっているんだ」
「っ……はい!」
そんなこんなでコシマエは帰っていく。大規模侵攻はここで幕が引くのだからもう自分の力は不要で、友達である修をデッド・オア・アライヴな怪我を負わせずに済んだ事をホッとしている。
「むっ、出遅れてしまったか」
ホッとしていると黒トリガー換装状態の遊真が現れる。
「遊真、遅いぞ。なにやってたんだ」
「これでも割と全速力でやってきたんだけどな……コシマエ、滅茶苦茶早いな」
「そりゃまぁ、今回は滅茶苦茶頑張ったからね……僕は基本的にはこっちの世界に居るから安心して色々とやりなよ」
「サーヴァントが味方に居てくれるのはホントに頼もしいな」
「おっと、勘違いしちゃダメだよ。味方じゃなくて同盟や協力関係にあたるんだよ」
あくまでも今はボーダーと一時的な同盟を結んでいるだけで、100%ボーダーの味方ではない。
その辺の一線はコシマエは譲るつもりはない。このままグダグダやってボーダーの同盟でなく傘下になっては溜まったものではない。一線は譲らない姿勢を見せると今度こそコシマエは現場から去っていく。もういいとちびレプリカを遊真に返し、生身の肉体に換装し深雪と連絡を取る。
「ヒュースはどうなってるの?」
唯一の心残りであるアフトクラトルの尖兵であるヒュースについて尋ねる。
レイジ達が足止めをしてくれているのかそれとも倒されたのか、彼の今後によって修達の未来は変わってしまう。
『大丈夫ですよ。例によって取り残されて、実力派エリートを名乗るセクハラ魔がやってきました』
「そう……僕は頑張ったんだから、後の処理は頼むよ」
『ええ、勿論……ですが、その前に私達の拠点を持ってこなければなりません……きっと皆さん、驚きますよ』
「バルスって言うのは確定だろうな」
いや〜……テイルズオブの息抜きにね、ね。まともに完結していないのになにやってんだって言うけどもね、ね。