運命/世界の引き金   作:アルピ交通事務局

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襲来、モールモッド

「すまん、バレた」

 

「いやいや、気にしてないよ」

 

「な!?」

 

 翌日の事、何時も通り学校に登校すると遊真が僕に正体がバレた事を堂々と修の真横で謝る。

 彼が初日で近界からやってきた事がバレるのは想定内の事で怒る要素は何処にもない。

 

「どういうことだ空閑!?」

 

「出来れば、ここで堂々と言うのはやめてほしかったけどね」

 

 まだ色々と分かっていない修は僕が遊真が向こうの住人だと知っていることを問い詰める。

 もっとこうカッコいいところで僕がトリガーオンして正体をバラしたかったが仕方がない事だ。興奮をしている修に取りあえず深呼吸をして呼吸を整えてもらい、真剣な顔になる。

 

「……越前もボーダー隊員なのか?」

 

「おいおい、ボーダー隊員は公式サイトで名前が公表される。もしそうだったら三好がウザいぐらいに絡んでくるだろ?」

 

 最もらしい疑問をぶつけるので最もらしい答えで返す。

 修はボーダーの仕組みを思い出したのか確かにと納得を見せるが僕がボーダー隊員じゃないならばと更なる疑問を持つ。

 

「僕はボーダー関係者でもなんでもない、でも近界民関係は色々とあれこれあるだけの人間だ」

 

「色々とあれこれ?それっていったい……」

 

「悪いけど、今のところ僕の口から語れるのはこれぐらいだ。僕は所謂近界民じゃないから気にしないでいいよ。今、君が興味を持っているのは僕じゃなくて遊真だろ?」

 

 あれやこれやと聞いてきそうなので釘を刺しておく。

 あまりベラベラと語ると上の人が色々とうるさい、立場的にしたっぱの僕にはなにかと辛い話だ。

 僕の事も気になるだろうけど、遊真のことはもっと気になる修は僕が答えないと分かると興味の視線は遊真に向いた。

 

「修、色々と混乱しているから先ずは一歩ずつ歩み寄る事が大切だ。遊真も僕も基本的に喧嘩を売ってこない限りはなにもしない話し合いが通じる相手なんだ」

 

「そうそう……オサム、おれの事が気になるなら監視でもなんでもしてくれよ。そっちの方がいいし」

 

「……そう、か……それもそうだな」

 

 1日で色々な事を知った上で更に情報が入ってきて色々とややこしくなり、頭の処理が追い付かなかった修。

 僕や遊真の言葉をきっかけに段々と頭に上っていた血や興奮が納まっていき、冷静さを取り戻していく。しかし、僕は質問に答えない事を言っているので、答えてくれない人よりも答えてくれる人の方にと無意識に遊真に顔を向ける。

 

「空閑は越前と知り合いだったのか?」

 

「こっちの世界に来たら取りあえず会うんだって言われてただけだ」

 

「それも親父さんに?」

 

「いや、違う。こっちの世界に来るのを手伝ってくれた人が居るんだよ……あ、その人はこっちの世界にやって来てないから。今回、来たのはおれだけから」

 

 余計な事は喋らず修の知りたいことを教えてくれる遊真。

 だったら越前はいったいと謎が謎を深めるように、疑問が疑問を増やしていく。

 

「そろそろ教室だし、一旦お開きにした方がいい」

 

 近界民関係の事を色々と聞いているが、もうすぐ教室につく。

 遊真が近界民で修がボーダー隊員だとクラスメートに知られるのはまずいと会話をするのはここまでにし授業を受けるのだが、どうしても修は遊真の事を気にしてしまう。

 

「!」

 

 気にするなと言わないが、視線で見え見えだ。

 こちらを見てくる修に答えるかのように遊真は視線を返すとニヤリと笑う。

 

「まだまだですな」

 

「空閑、まだまだならこの問題の答えが分かるか?」

 

「どんまい」

 

 調子に乗っている瞬間こそ最も油断している時である。

 遊真は余裕があるなと先生に見られてしまい、黒板に書いてある問題の答えを聞かれて冷や汗を流すので助け船を入れてやろうかと思ったが、これも学生をやる上では大事なことなので助けを出さない。

 

「……3番で」

 

「違う、1番だ。受験で忙しい時期なんだからこれぐらいは分かってもらいたいものだ」

 

 遊真の学力を期待してはいけない。

 修の視線も気付かれていた様でこの後、修も当てられるのだが伊達にメガネじゃない。難なく答える。

 

「学校ってのは案外窮屈なところだな」

 

 そして昼飯。

 漫画以外はありえない屋上で僕と遊真と修は昼御飯を食べる。

 

「お前、学校をなんだと思ってるんだ?」

 

「皆が集まって勉強をするところって聞いてた……まさかこんな高度な勉強をしているとは」

 

 残念だな、遊真。

 ここから更に高校生で訳が分からなくなる感じの勉強をさせられるんだ。僕的には中卒でも問題は無いけれど親とか世間の目もあるし本当にめんどくさいと思う。

 

「向こうの世界には学校は無いのか?」

 

「無いな、勉強を教えるって言っても簡単な文字の読み書きぐらいでこんな難しいのは専門家でもやってない」

 

「来年になると更に難しくなる……ん?」

 

「おめーら、誰に断って屋上を使ってんだ?あ?」

 

 昨日のバカがやって来て騒ぎ出す。

 昨日、転ばせるだけ転ばせてやったのに次の日でこれとは三門市って治安が悪すぎないだろうか?多分、不良とかガラが悪い奴でランキング作ったら上位に食い込むね。

 

「おい、なにバカな事をやってるんだ」

 

「お前は!」

 

 ボーダーに逃げて以降の事は記憶を消されているが、それより前の事は覚えている。

 僕にボコボコにされた事で苦手意識を持った不良どもは嫌そうな顔をしており一歩引く。

 

「全く、受験シーズン真っ只中なんだから問題を起こすなよ……ほら、飯食い終わってる奴等はさっさと教室に戻れ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「礼を言われることなんてしてねえよ」

 

 ぞろぞろと戻っていく後輩および同学年の生徒達。

 僕の事をカッコいいと思ってくれる人も中には居るのだが、あまり表面だけ見てくれのもそれはそれで困っちゃう。

 

「まぁ、そういうことだからアホみたいな真似すんなよ……いや、アホだったか。修、遊真、いこうぜ」

 

「あ、うん」

 

「ごちそうさまでした」

 

 昼御飯を食べ終えていた二人は僕と一緒に屋上を離れ、教室に戻る。

 その間に僕は二人と離れ、下駄箱に向かいコッソリと持ってきたトリオン兵を探知するレーダーを取り出す。

 

「やれやれ……人海戦術じゃないと無理っぽいか」

 

 レーダーにはこれでもかと言うぐらいにトリオン兵の反応が映っていた。

 この後、それはそれは面倒な厄介事が巻き起こるので出来たら回避と思っていたけども思ったよりもトリオン兵が多い。

 僕のトリガー(と言う事になっている転生特典)、本当に近所迷惑な事しか出来ないのが多くて派手だからどうしようもない。

 

『緊急警報!!緊急警報!!』

 

 どうしたものかと頭を悩ませていると事態は深刻な所に進んでいく。出来れば聞きたくはなかった警報音が鳴り響くと学校全体がざわめき出す。学校のグラウンドに出てくる門はそれだけで脅威的なものなのだ。近代兵器通じないんだよね。

 

『門が市街地に発生します!市民の皆様は直ちに避難をしてください!繰り返します!市民の皆様は直ちに避難をしてください!!』

 

「無責任な事を言いやがる」

 

 トリオン兵であるモールモッドが2体出現し、学校に乗り込んでくる。

 学校の皆は急いで避難をしようとするがモールモッドが道を阻んで来ており避難が上手くいかない。

 

「越前!」

 

 大変だなと他人事の様に見ていると校舎から慌てて飛び出てきた修と遊真。

 僕が居たことに大層驚いた修は慌てている。

 

「急いで避難を、避難訓練通りにすれば、でも南館が」

 

「こらこら、なに言ってるかさっぱりだぞ」

 

 緊急事態故に慌てている修。

 原作知識のある僕だからこそ、状況を理解することが出来ているものの一般人とか原作知識が無い人ならば訳が分からない。

 修自身も興奮をしているのを自覚していたのか、僕が落ち着かせるとすごく冷静に焦り出す。

 

近界民(ネイバー)が学校に出現した」

 

「うんうん」

 

「校舎の南館にいた生徒達が避難に遅れている。僕は今から南館に向かうから越前は空閑と一緒に避難をしてくれ」

 

 トリガーを起動し全身白いジャージみたいな姿に換装する修。

 危機的状況でも僕や遊真を頼ろうとはしないとは……全く、この死にたがり屋め。

 

「オサム、モールモッドは戦闘用のトリオン兵だ。昨日のバムスターとは違う。オサムの腕じゃ死ぬぞ」

 

「おや、修はそこまで弱いのか?」

 

「弱っちいよ」

 

 修が出撃しようとするので忠告を入れる遊真は物凄くいい奴だ。

 ハッキリと言われたことに修は若干ショックを受けるものの、今の修にはちょうどいい薬なのでそれ以上は深堀はしない。

 

「だとしても……勝ち目が薄いからって逃げる理由にはならない」

 

 そんな事を言いながらも修の手は震えている。

 自分が弱いことをハッキリと言われても前に進もうとする姿はなんともエモいと言うか尊いね。

 

「空閑は越前と一緒に避難をしてくれ……僕は助けにいく」

 

 そう言うと修は校舎の南館に向かって突っ走っていく。

 

「アイツ、弱いのに……弱いのに……」

 

「ん~心がモワモワするか?」

 

 修は自分自身が弱いのを理解しており、その事を踏まえた上で忠告をした。

 それなのに修は飛び出していった。困っている人を見過ごせない秩序・善な人間に出会うのははじめてなのか困惑をしている。

 

「なぁ、コシマエ。オサムの事を助けられないか?」

 

「ん~そんな事を聞いてくるなら助けてあげなよ」

 

 色々と心の中にモヤモヤがあるものの修の事を既に気に入っている遊真。

 助ける方法を無いかと聞いてくるが、そんな事を聞くぐらいならば助けにいってあげればいいんだ。

 

「おれもなんとかしてやりたいけど、あんま目立つとお互いの為にならないだろ?」

 

 ボーダー隊員である修が近界からやってきた遊真を匿っていた。

 この事はボーダーの本部的にも宜しくないことで、近界民だとわかり目立つと揉める遊真も匿っていた修も下手すりゃスクラップだ。

 

『コシマエ』

 

「なんだい?」

 

 ニュイと遊真の指輪から出てきたね、レプリカ。

 

『トリガーを使えばトリオンの反応が残る。ユーマは昨日、トリガーを使用しており恐らくは痕跡を残している。ユーマの存在がボーダーに今知られるのは非常にまずい。オサムも何度もその事について釘を刺している』

 

「そうだね……ボーダー隊員には話が通じなさそうなのいるからね」

 

『君もトリガーを持っているのならば、どうか私達に代わって彼を助けてくれないか?』

 

 最も合理的な判断をくだすレプリカ。

 確かに僕が出ていけば、モールモッドなんて数秒どころか刹那的な速度で斬り殺せる。

 

「僕のトリガーは早々に使うわけにはいかないよ。緊急事態でも無い限りね」

 

『今がその緊急事態だと私は思うが?』

 

「本当に緊急事態だったらモールモッド2体で済むと思うかい?」

 

 今現在、緊急事態が起きているがこれは序章に過ぎない。

 本気で戦争を仕掛けて攻め入るならばもっともっとスゴいのを送ってくる。最近のトリガーって本当にスゴいんだよ。

 

『この侵攻には裏があると言うのか?』

 

「情報収集程度の裏があると思っているよ……さて、本題に戻るとして僕は力を貸すことは出来ない。決して意地悪とか修が大嫌いと言った私情を交えてはいない……僕が戦えば校舎はまず間違いなく倒壊する。なにせ僕達はこちらの世界の人間の代表みたいなものだからね」

 

 僕は7人いる転生者の中で最も下に位置する人間だ。

 しかし、それでも原作に出てくるどんな人にも負けない自信がある。

 

「君は知っているでしょ、江戸ベガスミッドを。僕はあれを破壊することが出来るとんでもない化け物なんだよ」

 

「あのワケわからん建造物をか!?」

 

「そうそう……とまぁ、御託を並べては見たけどもやれることはやってみる。無理だったら君に任せるよ」

 

 出来れば力を貸してやりたいけど、僕も近界の一国に仕える人間。

 大人としてなんて言わないけれども、ある程度の責務はあるので姿が露見していない限りはポンポンと動くわけにはいかない。

 とはいえこのまま修を見捨てるのも僕的には嫌なのでやれることはやってみようとポケットに入れているトリガー(と言う名の転生特典)を起動すると三門第三中学の制服から黒いスーツ姿に変化しており、左手には刀を握っていた……。

 

「なんかあんまパッとしないトリオン体だな」

 

 他の転生者のトリオン体を見たことがあるのか、驚かない。

 

「言っておくけどね、他の人達は色々と濃すぎるだけで僕が普通なんだよ」

 

「む……そういうものなのか?」

 

「そういうもの……とはいえだ……他のクラスメートにこの姿を見られるとややこしくなるのは事実。鬼神丸国重を貸すから、遊真が代わりに倒してくれないか?」

 

 僕が行ってパパっと倒しても問題は無い。

 それでもいいんだけど、それだと色々と原作的なこともあるし僕が目立つ……本格的に動いていいのはアフトクラトルが攻めてきた時からと決まっている。と言うか僕の仕事ってアフトクラトルのジジイをぶっ倒せって言うとんでもない命令なんだよね。

 

「この剣、トリオン兵を斬れるの?」

 

 とある英雄の姿を模したトリオン体に換装した僕は遊真に刀を貸す。

 本物の刀と同じ質量なので大丈夫なのかと心配してくれるが、問題は無いはずだ。

 

「斬れるし、無理なら無理で修からトリガーパクって起動すればどうにかなる」

 

「成る程、その手があったか」

 

 原作ならそういった感じで遊真が修の事を助けていた。

 既に修の事を気に入っている遊真は多分、なんの迷いもなく起動するだろう。

 

「じゃあ、行ってくる」

 

「ああ、行ってらっしゃい」

 

 鬼神丸国重を持った遊真は校舎の南館に向かって走り出す。

 これでもう安心だ。元の姿に戻りたいけど、戻ってしまえば遊真に渡した鬼神丸国重が無くなってしまうので近くの木影に寄り添う。

 

「まぁ、取りあえずこれで三雲修に貸しを作ることは出来た……女装でもしてもらおう」

 

 僕の見立てが間違いなければ、修の女装は物凄く似合う。

 母と言う名の年齢詐称な姉の容姿があれでそれを色濃く受け継いでおり、メガネを外すことでイケメンランキングが上昇する。ちょっとおっぱいを盛りロングヘアーになるだけで女子と思わせる姿になるのだから、一回ぐらいは女装させたい。

 そもそも彼って乙女ゲームの主人公みたいなものだろう。

 

「っと、連絡をしないと」

 

 修の女装も楽しみだが、僕も僕でやらないといけないことがある。

 近界民から侵攻があったと一応は上司になっている人に連絡を入れたりしつつ時間を潰そうとしていると、序列5位の転生者、蛇喰深雪から連絡が入る。

 

【木虎さんに正論をぶつけて笑顔を曇らせてください、お願いします】

 

「……ふぅ、全く深雪は本当に……なんてことを僕に頼みやがるんだ、こんちくしょう」

 

 これから起きる出来事を僕と深雪は知っており、そこにアンチ要素はそこそこある。

 そこを今から指摘してくれと頼んでくる深雪は中々に極悪非道な性格をしている……まぁ、だからこそ長い間転生者をやっていられるんだ。

 

「あ~辛い。僕って末端のパシリだから上の命令を聞かないといけない……いや、本当に辛いな~」

 

 今必死になってこっちに向かってきているボーダーの嵐山隊。

 その中の木虎ちゃんに色々と言わないといけないんだな、なんて残酷な事を僕はしなくちゃいけないんだろう。早くその時が来ないか楽しみすぎて思わず笑みがこぼれ落ちる。




言うまでもなく、主人公は変態です。

三雲修は乙女ゲームの主人公であると勝手に思い込んでる節があるので女装をさせたい(変態)
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