「まさかラピュタをこの目で拝む日がやってくるとは思いもしなかった」
太刀川は再びサングラスをつけて空を見上げる。そこには天に浮いている城があり、いいものが見れたと拝んでいる。
さっきまでバルスと滅びの呪文を唱えまくっていた彼だが滅びの呪文は唱えない。コシマエに滅びたらアレが物理的に上から落ちてくると言われてしまったのでふざけられない。
「うちの基地もあんな感じだったらいいのにな」
「あ〜それ分かります」
四角形な形のボーダーの本部と虚栄の空中庭園を見比べる出水と太刀川。
空飛ぶ城に男の浪漫を感じている。もっとこう秘密基地感があった方が浪漫を感じる。
「この際だ、君達が来てくれ」
護衛役として唐沢は修、出水、太刀川の3人を選ぶ。迅はサイドエフェクトが通じないので自ら辞退する。
やっとこんがらがってきた頭を整理する事が出来たので準備が出来たとコシマエに報告するとコシマエはタブレット端末を取り出した。
「唐沢さんだけでよろしいのですか?一応はボーダーの今後を決めることになりますので城戸司令が出てきた方がいいのでは」
「いや、その辺りは大丈夫だ。外務担当の殆どの権限は私に委ねられている……出来る限りの事はやってみせるさ」
幹部ではあるがトップではない唐沢でいいのかとコシマエは最後の確認を取る。
余計な心配は無用だと言うとコシマエはタブレット端末で電話を取り、そちらに向かうことを伝える。
「そういえばどうやってあそこまで向かうんだ?」
「決まってるだろう。空賊達が乗ってた謎の空飛ぶ乗り物で行くんだ」
「太刀川さんラピュタの見過ぎです」
どうやってあの城まで向かうのか修が問いかけると太刀川は自慢げに語るがコシマエは否定する。
「太刀川さん。アレは世界七不思議の1つであるバビロンの空中庭園を模して作られた偽物であって本物じゃないんです……本物は本物で別にあるんです」
「ラピュタ、もう1個あるのか!?」
「らしいですよ。僕はまだこの目で一度も見たことないですけど……ネブカドネザル二世を引き当てたら出せるとは聞いてます」
「引き当てたら?……」
「メガネくん、こいつと知り合いでしょう。知ってることがあったら色々と教えて」
「あ〜はいはい、その手の問答は後でしますからとりあえずラピュタに行きますよ」
太刀川と出水はイマイチ状況が飲み込めていない。
コシマエは腕に装備している時計を操作するとサークルの様なものが展開されていく。
「皆さん、サークルの中に入ってください」
唐沢達をサークルの中に入れる。
全員がサークルの中に入ったことを確認すると腕時計が光り出し、眩い光に包まれるとボーダーの屋上から何処かの庭園を思わせるかの様な場所に移動していた。
「コレは……」
「貴方達で言うところの
「……」
サラリと語られるがかなりの技術力を有している事がこれだけでも分かる。
ボーダーより格上の組織として認識をしているがこうもあっさりとボーダーでは実装されていない技術を使われていると脱帽でしかない。トリガーを起動しておけと通達があったので起動していなかった修はトリガーを起動してトリオン体に換装する。
「さて、皆様をここに連れてくるのが僕の仕事です。ここからは別の方がこの庭園を案内させていただきます。っと、言ってたら来ましたね……」
「お客さんを連れて来たようだな」
庭園の奥から人がやってきて、ボーダーの一同は固まる
奥からやってきた人は上半身は黒子のバスケに出てくる虹村修造なのだが下半身が馬の姿をしている。
「俺は虹村修蔵、カルデア最高幹部の1人で序列4位の弓兵【アーチャー】……此度は交渉の場を設けていただき感謝致します」
ペコリと頭を下げて虹村は自己紹介をする。見た目のインパクトがあまりにも強すぎており言葉を失っている。
出水と太刀川に至っては俯いておりプルプルと震えている。上半身が純日本人な男の下半身が馬の人間を見ると笑うな言うのが無茶な事である。
「コシマエ、アレは……」
「アレもまたサーヴァントの力だよ……ということで皆さん、虹村さんについていってくださいね」
あの姿について修は問い詰めると、コシマエは頷く。ここからは僕の仕事は終わりだと虹村から離れていった。
「じゃあ、案内しますのでついてきてください」
爆笑を終えたので虹村は奥へと案内する。
出水と太刀川はヒソヒソと小さな声で話し合う
「アレもトリガーの一種なのか?」
「そりゃそうでしょう。ケンタウロスなんて居るはず無いでしょう……にしても本格的な格好だな」
如何にも古代のギリシャに出てきそうな格好をしている。
トリガーでそれっぽい服装を再現していても下半身は馬とか無いだろうと小さく2人は笑い合う。無論虹村の耳にはその事が伝わっている。虹村は怒る事はしない。ケンタウロスの姿で現れれば爆笑されるのは間違い無し、受けを狙ってのこの格好である。
「どうぞ」
庭園の奥に進むと巨大な扉があり、虹村が手を翳すと扉が開かれる。
中に入れという事なのだろうと今までの緩い感じの空気が一変し、シリアスな空気が流れ出す。ここからは大事な話し合いの場がやってくる。自分達は万が一を想定して唐沢を護衛しようと考える。
「お待ちしておりました……虹村さん、資料をお配りください」
扉の向こう側には円卓がありそこには深雪が座っていた。
「はいよ」
虹村は書類を渡す。唐沢だけでなく出水にも修にも太刀川にも配る。
「先ずはお礼を申し上げます、カルデアをボーダーとは異なるトリガーを扱っている組織として認めた事を。私も虹村さんもコシマエも暴力は嫌いです。皆様を血祭りに上げる事をしなくて良かったです」
「……マジかよ」
ボーダー以外にトリガーを使っている組織との交渉をしていると分かると太刀川は顔色を変える。
何度も何度も向こうの世界に遠征した経験のある彼だがボーダー以外でトリガーを扱っている組織は聞いたことも見たこともない。そんな組織が居たのかと驚くしかない。それと同時に唐沢も考える。深雪達はボーダーと交渉する事が出来なかった場合は実力を行使する、暴力に走ることを躊躇わない。ここは敵地で相手は若いが、軽く見てはいけない。
「カルデア及びサーヴァントに関しては一部の情報を秘匿していますが手元の資料に色々と書かれております。詳しい事が知りたいのであれば質問に応じます」
準備万端だなと配られた資料に目を通す。
配られた資料はサーヴァントに関する個人情報やカルデアに関する情報はあまり書かれていない。とはいえ無いか有るかで言えばあってくれた方がいい資料で、実によく出来ているなと目を通して気になる点はないか、交渉に使えるカードは無いのかと探してみる。技術力では遥かに上で、戦力も充分なまでに揃っている……この感じだと金に困っているという様子は無さそうである。
「交渉の場でこういう結論を先に語るのは実に禁則事項な事ですが、私達はボーダーと仲良くしたいのです」
「仲良く、か……具体的にはどの様にしたいつもりで?」
「そうですね。別に表に出るつもりはありません。遠征先で偶然に出会ったボーダー以外にトリガーを扱っている組織と適当に経歴を適当に偽造していただいても構いません。私達は基本的にはカルデアに引きこもっているだけですので」
唐沢は手探りで深雪から情報を聞き出そうとする。
なにが望みなのか、なにを求めているのか。そこから交渉ははじまるのだが深雪の答えは曖昧なものだった。
仲良くしたいという気持ちは伝わっている。だが具体的にどの様な形で納まるのかが見えていない。
「引きこもっているなら何故こちらの世界にいるんだ?」
「そうですね。カルデアに色々と持ち込める技術等がこちらの世界にあるからですね……例えばそう、こういうものとか」
「電球?」
深雪は円卓の中心に電球を置いた。
この電球は特別な電球、ではない。その辺の電気屋で普通に購入する事が出来る電球であり、こちらの世界で大量生産を可能としている一品である。唐沢もこれはなにかあるのだろうかと確認を取ると普通の電球だった。
「向こうの世界に遠征の経験がある太刀川さんや出水さんはご存知かもしれませんが、向こうの世界では明かりを一つ灯すだけでもトリオンを動力源にした物を使います。カルデアではトリオンでなく電気で動く道具の量産等を目指していてこういったものを持っていったりする事もあります」
「なるほど……カルデアはトリオンによる文明から電気による文明に切り替えようとしている、そんなところか」
「まぁ、そんな感じです……私達としては仲良くしたいですが貴方達からすればこの上ない厄介な組織でしょう。貴方達は具体的にはどうしてほしいですか?」
「我々としては……そうだね……」
ボーダーの傘下に加われと言っても却下されるだろう。
黒トリガーを7つも持っている組織を相手に下に降れと言うのは無茶というもの。時と場合によっては暴力に訴えに来る事も躊躇わない
「こちらも是非とも仲良くしたいと思っている」
故に和平の道を辿るしかない。
サーヴァントについて色々と知っている遊真から勝つことは不可能だと言われている存在を相手にするのは愚策である。
「よかったです……ボーダーも同じ事を考えていただいて」
「ただ、君達が危険な存在だと言う意見もある。本格的な同盟を結ぶのならば君達が使っている黒トリガーを共同して使うという事をしたい」
「それは出来ない事ですね。サーヴァントの持つクラスカードは貸し出すつもりはありません……ただ街を防衛する為にサーヴァントの誰かを派遣するということは出来ますが。クラスカードを貴方達に貸しても宝の持ち腐れ状態ですし、なにより臨機応変に使いこなす事が出来ません……」
クラスカードは貸さない、けれどもクラスカードを持ったサーヴァントを貸すことは出来る。
重要なのはクラスカードで使い手自体はボーダーで選ぶつもりだが、深雪はそこを譲るつもりはない。クラスカードは貸し出さない。
「……唐沢さん、諦めてください」
なにか交渉のカードは無いのかと考えていると深雪は冷たい目を唐沢に向ける。
唐沢は冷静になって交渉に使えるカードは無いのかと考えるが、ボーダーがカルデアに対して出せるカードが皆無に等しい。
ボーダーの様に街を守る組織ではない、金はある、独自の進歩を遂げている、喉から手が出る程に欲しい物があるとは言えない。相手の望みはあくまでも仲良くすること。ボーダーとしてもカルデアとしても不干渉を貫くのは出来ない事……故に諦めるしかない。
「私達がタダで出せるカードはサーヴァント達が有事の際に街を防衛する事を手伝う事、それに加えてボーダーの隊員達を強く鍛え上げる事の2つです。それ以上は、例えば
「……そうか」
比較的に友好な国である事には変わりはない。これだけでも充分な成果はあった。
話し合いが通じる相手で今日ここで全てを終わりに向かわせるものではない。ゆっくりじっくりと時間を掛けて交渉していく事が出来る。
「私達がボーダーに求める事はカルデアという組織に対して不干渉を貫いてほしいのです。私達はこちらの世界の技術は取り入れますが人を拐うといった事を一切しません。当時エンディミオンと呼ばれていたカルデアで王族や重役を皆殺しにして政の実権を全て握っていますのでそうしないと誓えますよ」
だからもう諦めるしかない。深雪の出した交渉のカードは中々に渋い物だが決して悪くはない。
黒トリガーを撃退する力を持った黒トリガーの様な物が有事の際に動いてくれる……今回の一件で死人が出てしまった。ボーダーと無関係な三門市民に死者は出なかったがそれは相手の狙いがボーダーのC級隊員だったからであり、街を狙う作戦で来ていたのならばまた結果は違っていた。
「一旦、城戸司令と話し合って構わないかい?」
「ここで電話でならいいですよ。流石にこの虚栄の空中庭園はバカデカい物で邪魔ですからね、何処か別の場所に移動させたいんですよ」
考える時間を与えてはくれるが、猶予はもう無いに等しい。
唐沢は携帯を取り出すと城戸司令に連絡を入れて、深雪がボーダーに提示した交渉のカードについて説明をする。
『カルデアはボーダーと同盟を結ぼう』
「よろしいのですか?」
割とあっさりとカルデアとの同盟を結ぶ事を決める。
『今ここで彼等を野放しにする方が危険だ……故に君達が表に出てこない事も条件に加えていただきたい』
「それは表に、メディア出現等をするなとの認識でよろしいでしょうか?」
『その認識で構わない』
こうしてボーダーとカルデアは同盟を結ぶ事になった。
ボーダーはカルデアに対して不干渉を、カルデアはボーダーに対して有事の際にサーヴァントを派遣する、一件ボーダーの方が不利に見えるがカルデアは存在を表に出さないという条件を出しているので一応の釣り合いは取れている。後で正式な書類を作り上げるからサインを頂きたいと言えば城戸司令は応じる。
「ではでは、小難しい話は終わりましたのでお楽しみタイムと参りましょう!!」
交渉はコレにて終わると深雪は今まで抑えていたテンションを上げに行く
パンパンと手を叩くとコシマエが部屋に入ってきたのだがコシマエの手には福引の時に回す抽選機が握られており、円卓の上に置かれる。
「先程申し上げた通りカルデアは有事の際にサーヴァントを派遣します。それとは別にボーダー隊員達を今よりも強く鍛え上げる訓練をすると……ボーダーでは隊員達同士で激闘を繰り広げるランク戦がありますがアレでは自分の可能性を探すことは出来ても未知の相手に対しては逆に弱くなってしまうおそれがあります」
「まぁ、確かに言っている事には間違いとは言い難いな」
トリオン能力云々はさておいて全員が同じトリガーを使っている。
戦いを重ねることで自分が出来ることを模索する事が出来る反面、ボーダーのトリガーを相手に想定した戦闘スタイルになっている。未知の相手に対しては弱いと言われれば出水は納得する。
「サーヴァントが未知のトリガー使いとして相手になりましょう」
「バトルしてくれるのか!?」
ここに来て未知の相手とバトルする事が出来ると太刀川は喜ぶ。バトル脳である。
深雪は勿論ですと頷くと抽選機にセイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、アサシン、キャスター、バーサーカーのモニュメントピースを入れる。
「サーヴァントは全員で7人、一度に全員を相手にしてしまうとそれこそボーダー壊滅タイムアタックになりますので1人ずつお相手をします……名付けて界境防衛機関御前試合人間兵器七番勝負、面白いでしょう」
「面白いし、戦いたい!」
「誰が戦うかはこちらがある程度決めます。ですがご安心ください、太刀川さんが楽しめる相手が出てくる筈です……多分」
「おい、最後怪しいぞ……」
深雪の最後の言葉を聞いて出水は心配をする、しかしそれは仕方がない事である。
サーヴァントが引き当てる英霊は基本的にはランダムなのだから。
「三雲さん、貴方がこのガチャを回してください」
「僕が、ですか?」
「ええ、是非ともお願いします」
ぶっちゃけた話、別に誰が引いても変わりはないのだが、ここは主人公に身を委ねる。
修はこのガチャで未知の相手と戦うことになるとゴクリと息を飲み込んで抽選機に手を触れて回す。
「強い奴、来い。強い奴、来やがれ!」
必死になって強い奴が来いと太刀川は祈る。
そんな事をしなくても強い奴は居る。なんだったら全員強いのである。
「トップバッターは……セイバー!」
修がガチャを回した結果、飛び出てきたのはセイバーのモニュメント。
セイバーが誰なのかを知っている修はコシマエに視線を向けるのだがコシマエは微動だにしていない。
「では、セイバーとの訓練に出る為の参加条件を申します!セイバーと戦う事が出来るボーダー隊員は剣を使うことが出来る隊員、即ち
コソコソ裏話
虚栄の空中庭園には転生者7人のそれぞれ個別に部屋が存在している
さて、セイバーvsボーダーの攻撃手、セイバーはなんの英霊で来るのでしょうかね