「お、いい顔になってるじゃねえか」
2月5日水曜日。
昼過ぎ頃にラピュタから玉狛支部に降りれば玉狛第二の面々が居て三雲がいい顔付きになっていた。
「虹村さん、アドバイスをありがとうございます……お陰で色々と作戦を考える事が出来ました」
「……ぶっちゃけた話、俺は雨取と三雲がどういう感じに成長すれば良いのかを知ってる。それを教えてない以上はお礼を言われる筋合いはねえな。頭を下げるな……俺はただ単に自分の能力や個性と向き合うこと、2は1よりも大きくてXという式が存在すれば1は2よりも大きくなる可能性を秘めていて、更には3以上の数字があるならばぶつかるのでなく自分の持つ3以上の駒にかけ算すりゃより大きな数字になるっていう戦術云々の以前のホントに基礎中の基礎を教えただけに過ぎねえ。お前にアステロイドの飛ばし方とか戦い方の指導はしてねえ……ただ単に頭のスイッチの切り替える方法を教えただけで……現にお前自身は思考が少しだけ柔軟になった以外はなんもパワーアップしてねえんだ」
いい顔付きに変わったけど、三雲がパワーアップを果たしたかどうかと聞かれれば答えはNOだ。
原作のスパイダーやアステロイドに見せかけたハウンド戦法なんかを教えることをしていない以上は頭を下げられるのは困る。
「じゃあ、オサムにそれを教える…………ってのはダメなんだよな」
「答えは自力で見つけ出さなきゃならない……ただし99%の努力も1%のひらめきやキッカケには勝てねえってのも事実だ…………だからこっそりとヒントを与える…………雨取も三雲も向いてる向いてない云々は置いといてB級の、今の時点で使える全てのトリガーをありとあらゆる組み合わせで使え…………俺の口から言えることはコレが限界だ」
「それって結局のところ答えになってないんじゃないのか?」
『いや、逆に考えるんだユーマ。オサムとチカに最適なトリガーの組み合わせをニジムラは知っている……オサムはトリオン能力の問題で、チカはトリオン能力以外の能力の問題で1度も触れたことが無いトリガーも存在している。恐らくはまだ試したことがない組み合わせの中に2人と適合する組み合わせが存在しているのだろう』
「……レプリカ、分かってるんだったら言うなよ……」
コッソリとヒントを与えた意味がねえだろうが。
考えさせて血に変えて肉に変えなきゃいけねえ……これ以上は存在していないヒントを、きっかけを与えることが出来たからそれでよし。
「お前等、行くぞ」
「とりまるは既に向こうにいるけど今回は全員だから、油断するんじゃないわよ!」
「…………小南達も来るのか?玉狛のテレビで見れるんじゃねえの?」
林藤支部長とレイジさんが車を出してくれるんだが小南達もなんか来るみたいだ。
記憶に間違いないなら確か玉狛のテレビでランク戦を観戦する事が出来るはずだが…………。
「お前、聞いてないのか?」
「ボーダーとの貿易関係は深雪担当だからな……どういうことだ?」
「ボーダー以外にトリガーを持ってる組織が居たら色々と厄介だから名目上はこの前の大規模な侵攻を経験してボーダーが極秘裏に開発している歴史上の偉人を模したトリオン兵との対決をするっていう設定になってるんだ……極秘裏って事だから本部でしか映像を見ることも出来ないし音声記録なんかも一切残さない様にしてる。だから玉狛支部じゃ見れないんだ」
「成る程、そういう感じね…………ちゃんと仕事はしてるみたいだな」
「とはいえ支部を完全に空けるわけにはいかないから俺は皆を送れば帰ってくるけど」
ふざけていたり性根が腐ってたりするけれどもなんだかんだで深雪はちゃんと仕事を果たしている。
あいつは笑顔を曇らせる事さえしなければ完璧な人間なんだけども……何処で頭のネジが狂ったのか分からねえな。俺は林藤支部長の車に乗せてもらう。玉狛第二の面々はレイジさんの車に乗せてもらう。
「それで、なにを呼び出すつもりなんだ?」
「それ聞くっすか?」
「いや、純粋に気になるだろ……大規模侵攻の際にコシマエは渡辺綱になり
「言っとくが柳生の爺さんは純粋な剣の技術では人間世界でもトップレベルだ……」
「人間世界?」
「英雄にも属性というものが存在している……スゴくざっくり言えば神様、化け物、人間の3つで三竦みの関係性になってる……柳生の爺さんの属性は人間で、人間の世界で神秘的な力を一切用いておらず素の実力で瞬間最高速度がアキレウス並なんだよ」
「…………あたしも戦えばよかったわね」
1回目のセイバーの戦いは試験運用等を兼ねて極少数、極秘裏に玉狛支部で行った。
ボーダーの実力とサーヴァントの実力の差を知るという意味合いでやったから実力差がハッキリと明確に分かった。俺達の持っている転生特典はぶっ壊れている。
小南は戦えなかった事をかなり後悔している。
「安心しろ……残り5人の誰かがボーダー隊員総出で掛かってこいって言うからそん時に戦えばいい」
「残りって確かランサー、キャスター、バーサーカー、アサシン、ライダーよね……なんかランサー以外に無双してるイメージが無いんだけど」
「それはお前の知識不足だ…………出てきた英雄によっては壊れた性能を持っている。例えばそうだな、アメリカの大統領のリンカーンが仏教の開祖のブッダとレスリングで勝負したら互角に戦うことが出来るとか」
「いや、何処からツッコミを入れればいいのよ!なんでリンカーンとブッダがレスリングをするのよ!」
「なんだ知らねえのか?リンカーンはレスリングの達人、ブッダはカラリバヤットという武術の達人なんだぞ」
「……わけわかんないわ」
安心しろ、俺も時折わけがわからなくなる。
どの英雄がどんな能力を持っているかは定かではない……マジで謎が多い。
「そういえば英雄のゆかりの物があればその英雄をピンポイントで呼び出せるんだったっけ?だったらKFCのフライドチキンを触媒にしたら……呼び出せるの?」
「呼び出せるけどもフライドチキンのレシピは社外秘だから絶対に教えてくれねえ……道頓堀に沈めた瞬間問答無用で戦闘不能になる、阪神の呪いを持ってる」
「なんでよ!阪神関係ないじゃない!」
いや、優勝したから呪いが生まれたんだよ。関係大有りだよ。
「ていうかあんたがこの前出したアーチャー、おかしいでしょう!モリアーティ教授はフィクションの存在でしょ!」
「モリアーティ教授って、シャーロック・ホームズのライバルのモリアーティ教授か?おいおい、フィクションの人物も呼び出せるのか?」
「………なら聞くが桃太郎は実在しているか?」
「バカにしないでよ!桃太郎はフィクション!実在はしていないぐらい小学生でも知ってるわ!」
「ハズレ、桃太郎は実在しているんだよ……お伽噺の中には実在していた出来事や伝承を子供向けにしたものがある。有名どころで言えば桃太郎、浦島太郎、金太郎、西遊記、一寸法師なんかがそうだ」
「え…………じゃあつまり、シャーロック・ホームズは実在してたって事なの!?」
「さて……少なくともアサシンのクラスでアルセーヌ・ルパンを出したことがあるからな……信じるか信じないかはお前次第だ」
「なんか都市伝説みたいな感じなんだな…………しかし、ホームズが実在していたのか…………面白い話だ」
果たしてシャーロック・ホームズは実在していたのかどうか……この世界では謎である。
少なくとも型月世界ではシャーロック・ホームズは存在している。モリアーティ教授も存在している。
小南はスゲえ事を知ってしまったと驚き、林藤支部長は感心する。
……俺は一言もシャーロック・ホームズは実在しているとは言っていない…………信じるか信じないかは貴方次第である。
「お〜い、虹村さん」
そんなこんなでボーダー本部に辿り着いた。
この前足を運んだばかりで別に緊張することは特にねえ。ゆったりと中に入っていけばコシマエと深雪が夏目と一緒に居た。
「深雪……ちゃんと仕事はしてるんだな」
「ええ、コレでも仕事はちゃんとしますから…………ちょっとお願いがあるのです」
「なんだ?」
「夏目さんも参加させてはくれませんか?」
深雪が珍しく俺に頼み事をしてきた。実に珍しい事だ。
夏目は確かC級の狙撃手…………。
「いや……悪いけどもダメだな……心が折られる可能性だって存在している」
「どうしてもダメですか?」
「ダメだな……依怙贔屓してて将来の役に立つ為に参加させてえって気持ちは分からなくもねえが夏目と言う特例を認めれば他の奴等も認めなきゃならねえ。ボーダーが定めた現場に出ても問題無い狙撃手じゃないならば今回は観戦側だ…………コシマエ、深雪、徹底的に解説はしてやれ」
個人的な依怙贔屓だろうが、少なくともボーダーが定めた狙撃手の基準を満たしていない。
将来の役に立つ可能性は確かにあるが夏目という一例を認めれば他の特例を認めなければならない。そういう特例みたいな存在は組織を運営するにあたってはあまり良くないこと、深雪とコシマエが解説するだけで終わらせる、それが俺に出来る依怙贔屓だ。
「ごめんね……僕達も一応組織の人間だから上司の言うことはしっかりと聞かなきゃいけないんだ……虹村さんの言ってる事にも一理あるからね」
「そうすか…………あたしも救助とかじゃなくてちゃんとした現場を知りたかったんすけど……無理なら無理で諦めて見て学ぶっす!コシマエ先輩、深雪先輩、色々と教えてください!」
おぉ、元気があっていいことだな。
コシマエと深雪は夏目を依怙贔屓するけれどもその辺に関してはあまり深くは咎めない。咎めればややこしくなるからある程度は緩くしねえと。
「ところで今回はなんの英雄が出てくるんスか?」
気持ちを切り替える夏目は単刀直入で聞いてくる。
コシマエと深雪は見つめ合うと頷いてコシマエはスマホを取り出して深雪と一緒に構える。
「本能寺の変
本能寺の変
本能寺の変
本能寺の変
1582年本能寺で起こった悲劇
織田さんが家臣の明智に
シバかれる話
どうして~?どうして~?
どうして織田はシバかれた~ん?
明智さんは織田さんに
長い間イジられた
みんなの前で
呼ばれたあだ名は…………ハゲ(キンカ頭)
どうして~?どうして~?
どうしてハゲに負けたの~?
あのハゲ(明智)出張するゆて
嘘ついて攻めてきたん!
ハゲ(明智)の軍勢1000に対し
織田の軍勢30!!
どうして~?どうして~?
どうしてそんなに少ないの~?
ハゲ(明智)の勧めで戦の休憩
数人で寺の坊主の元へ
ハゲ(明智)は家臣と一致団結
織田は坊主とティーパーティー(茶会)
多くな~い?多くな~い?
毛が無い奴が多くな~い?
いや多くな~い!多くな~い!
(この時代)毛の有る奴が多くな~い!
変じゃな~い?
NO!変じゃな~い!
変じゃな~い?
NO!変じゃな~い!
変!
変!
変!
変!
変!
変!
変!
変!
変!
これが本能寺の変
本能寺の変!
本能寺の変
本能寺の変
本能寺の変
本能寺の変
本能寺の変
本能寺の変
諸説あり」
「……昔、流行ったっすね…………信長が相手なんすか?」
「いえ、手頃だったので踊っただけです……アーチャーの信長は色々と性能がおかしいんですよ」
本能寺の変を踊りきった深雪とコシマエのバカ二人。
その歌を聞かされれば誰しもが信長を連想するけれどもこの2人に対してなんのサーヴァントを呼び出すかは言ってねえ。
「安心しろ、アーチャーのヘラクレスを呼び出すことはしねえ」
「虹村さん……アーチャーのヘラクレスなんて呼び出したらボーダー隊員が防衛任務とか放棄して挑んできても2時間あればボーダー隊員全滅させられますからダメですって」
「そんなにヤバいんすか!?」
「音速で飛んでくる追尾機能を持った矢を10km先から撃ってきます。しかも1度に9発も」
「え〜………」
アーチャーのヘラクレスを呼び出すなと念押しをしてくるコシマエ。
アーチャーのヘラクレスの理不尽さを知っている深雪はイマイチピンと来てねえ夏目にどんな事が出来るのか教えると疑いの眼差しを持つ。
「お前等、ボーダーに迷惑かけずにランク戦見物だけにしとけよ……俺は打ち合わせあるから、じゃあな」
まだやらなくちゃいけねえからこの場を後にし、忍田本部長の部屋に向かった。
忍田本部長の部屋には東さんと忍田本部長と沢村さんが居た。
「遅れて申し訳ない、ちょっと無駄話が長引いた」
「いや、大丈夫だ…………しかし、ホントに大丈夫なのかね?10人をも超える狙撃手を相手に弓矢を用いてたった1人で戦いを挑むのは不利にもほどがある」
「大丈夫大丈夫…………むしろこれぐらいじゃなくちゃダメです……それともシモ・ヘイヘとタイマンやりますか?」
「……1人の狙撃手としてシモ・ヘイヘと本気で戦ってみたいと言う気持ちはある。だが、今回はそれが目的じゃない」
東さんはシモ・ヘイヘとの対決をしたいという欲望を抑える。
この戦いの目的は未知の相手とかを想定しての戦いだから未知じゃない相手を戦っても意味は無い……それ言い出したら地球の英雄全てがアウトだけども。
「我々の方で色々と話し合いをした結果、今回は全てを東隊員に任せる事にした」
「指揮権を与えたって事ですか?」
「そうだ。もし東隊員がここに残るのであれば指揮を任せようかと検討中だ」
「ほ〜………滅茶苦茶信頼されてますね」
「まぁ、年長者の隊員として色々と任されてたからな…………それでなんの英雄を呼び出すんだ?」
「おい、それ聞くか?」
「情報戦は既に始まってるって認識してくれたらいい」
「そうだな……………多分、誰だそいつ?って言うぐらいには日本じゃ認知度は低い、日本語のwikiが存在しないぐらいだ…………真名を教えるのを条件にこちらもある事をやらせてもらうぞ」
「なんだ?」
「東春秋、奈良坂透、当麻勇、佐鳥賢、雨取千佳の5名の顔写真を見せてこの5人はなるべく優先して倒せという……名前は夜のランク戦終了後にあんたにだけ教える。そこから色々と組み立ててくれよ」
「……分かった……」
相手の情報の一部を開示する事が出来たので東さん的には儲け物だろうが、今上げた5人の狙撃手をぶっ倒した方がいいとオススメする事が出来るとじゃ5人の情報の方がデカい……東さんは天秤にかけた結果、それ良いと了承してくれた。
後はサーヴァントを召喚すればそれでいい、実に気楽な事だとアーチャーのクラスカードと触媒を取り出した。
「素に銀と鉄、礎に石の契約の大公。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出て王国は至る三叉路に循環せよ。
さて、戦いの開幕だ。