運命/世界の引き金   作:アルピ交通事務局

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界境防衛機関御前試合人間兵器七番勝負 2番目 アーチャー

 

「ナイス!チカ子!メガネ先輩!おチビ先輩!」

 

 B級ランク戦夜の部が終わりを告げた。

 結果は原作通りであり、玉狛第二が見事な勝利を決めたので夏目は3人にハイタッチを送った。

 

「ま、あんた達にかかればこんなものね!!」

 

「ありがとうございます」

 

 よくやったと修に絡む小南。

 後輩が勝利した事に関しては誇らしげになれるのだが、何故に自分に絡むのだろうとイマイチ修には理解出来なかったがまぁ、褒めてくれるという事は分かるので素直に受け取る。

 

「まぁ……ちゃんと作戦を建てられたが……問題点もあるのを忘れるなよ?」

 

 レイジも今回の戦績は充分な合格点だと認める。

 しかしたった1つ、遊真に依存しすぎているという問題点があるのを頭に入れておくことを注意する。玉狛第二のエースである遊真は絶対に倒れてはいけない支柱であり、エースを語るだけの実力はあるものの上には上が居ると言えるのがボーダーの猛者達でレイジは遊真を作戦でなく純粋な実力のみで倒せるB級隊員を何名か知っている。

 

「はい……次からは自分の得意なフィールドを選ぶ事が出来ません……次からが本番です」

 

 中位の中で上位に繰り上がったのでランク戦でフィールドを選ぶ権利を手にしていない。

 得意なフィールドは今のところは無いのだが、今度は逆にフィールドを生かした戦法を取ってくる相手と戦わなければならない。今までは遊真に依存し過ぎた戦法を取っていて上手いこと噛み合っていたが次からは違うのだと修は油断はしない。

 

「そういえば夏目さんはどうなったんですか?」

 

「無理だったっス……依怙贔屓と特例を作ればややこしくなるって言われて」

 

「まぁ……言っていることに間違いはないからな」

 

 この後に行われるスペシャルマッチ、夏目を参加させる事が出来ないのかを試したが無理だった。

 極々普通の正論を言われたので烏丸も仕方がない事だと受け入れつつも、レイジと千佳を見る。

 

「チカ、連戦だけど大丈夫か?」

 

 この後にスペシャルマッチが行われる。

 千佳はほんの数分前まで戦っていたので精神的な意味合いで問題は無いのかを遊真は尋ねると千佳は大丈夫と言う。

 

「東さんに千佳の大砲にレイジさんが居るからこの狙撃勝負、絶対に負けないわ!」

 

「小南さん……そういうのフラグですよ」

 

「っげ、深雪、コシマエ……」

 

「もう人を見て嫌そうな顔をしないでください…………見事な試合でしたよ。キャラメルがありますので栄養補給をしてください」

 

「ありがとうございます」

 

 小南が今回は勝てると言い切り見事なまでにフラグを立てる。

 深雪とコシマエが現れて深雪が疲れた体を癒やすためにとキャラメルを与えると玉狛第二の面々はキャラメルを食べた。

 

「さて、アドバイス云々は禁止だから見事な試合だったとだけ言っておくけども……解説と実況をするね」

 

「そういえば虹村は何処なの?」

 

「あ、噂をすれば影がさしましたよ」

 

 2人で正しく実況解説を行うという。

 肝心の今回の主役は何処に居るのだろうと小南は探せば噂をすればなんとやらと深雪が1人の男を引き連れた虹村を手で指すのだがコシマエは苦い表情をしてる。

 

「虹村さん……イジメはダメですよ……」

 

「別にいいだろう、ヘラクレスよりはマシだ」

 

 虹村と共に居る男を見てコシマエは呆れる。

 アーチャーのヘラクレスではないもののアーチャーとしては十二分なまでにぶっ壊れた性能を持ったサーヴァントである。例によって弱い者いじめと言える。狙撃合戦でそいつを召喚するとかただのイジメでしかない。

 

「え〜っと」

 

「オレはアーチャーのクラスで召喚されたサーヴァントだ……なに、この国じゃ聞いたこともねえ名前だから気にするな!それよりもいい試合を見せてくれたな!」

 

 この前の柳生の爺様と比べて雰囲気が異なるサーヴァント。アーチャーを名乗る男は修にフレンドリーに接してくれる。

 なんというか裏表も無い感じの人だなと思っているとアーチャーは千佳を見つめた。

 

「お前……人を撃てないだろ?」

 

「っ!?」

 

「大丈夫だ、言い触らすような真似はしないさ…………ただお前は命を奪う罪悪感に関しては問題は無い、自分達がやっている事を戦争の軍事演習の一環だって認識してて友達や仲間が斬る事に関しては平気だ……ただただ怖いって思っている……撃った後の事が怖いって思うのは誰もがだ。あんなスゲえ大砲を持ってる人間は化け物か英雄のどちらかにしかならない。人間であり続ける事が出来ない…………でも、友達は、仲間はお前を英雄とも化け物とも扱わない。1人の人間として扱ってくれるぞ」

 

「え…………」

 

「おい、そういうアドバイス禁止だ……って、殆ど答えを言っちまってるか」

 

 千佳は人を撃つことが出来ない。

 まだ周知の事実ではないものの、玉狛の面々は千佳が人を撃つことが出来ないと認知しているのだがアーチャーはその気になれば千佳が人を撃つことが出来ると見抜く。その気になれば未来や心の内側すらも見通す千里眼の能力を用いて千佳が気づいていない心の内側を見抜いた。

 

 基本的にはアドバイスは禁止なので余計な事は言うなと虹村は釘を刺すのだが既に全部言っている。

 

「ど、どういう意味ですか?」

 

「……あ〜…………」

 

「雨取さんはその気になれば人を撃てるという話ですよ」

 

「え!?」

 

 今までは千佳は人を撃つことが出来ないと考えていたが、深雪はぶっちゃける。

 千佳がその気になれば人を撃つことが出来る……玉狛の面々はそれが出来れば苦労はしないと言いたげだがコシマエや虹村の反応を見れば言ってはいけない事を言ってしまったなと困っていた。

 

「千佳が人を撃てる……」

 

「ど、どうしたら人を撃てる様になるんですか?」

 

「気持ちを整理して素直になれば撃てる様になる……オレの口から言えるのはここまでだ。最初の一歩と最後の一歩を踏み出せるのは何時だって自分自身だ……頑張れよ!」

 

 千佳が撃てないと考えていた修は呟き、千佳はどうすれば撃てる様になるのかを聞いた。

 アーチャーから帰ってきた答えは気持ちの整理をすること、素直になることだが千佳は嘘らしい嘘は吐いていない。嘘を見抜くサイドエフェクトを持っている遊真にも引っかからない。アーチャーは最後は頑張れとだけ言えば虹村と共にスペシャルマッチの準備に向かった。

 

「私が、撃てる…………」

 

「……雨取さん、あのアーチャーは見た目こそは人間ですがレプリカやドラえもんの様に自我を持ったトリオン兵、ロボットに近いです……頑張ってくださいね」

 

「……はい……」

 

 自分が人を撃てると言われて困惑をしている千佳。

 いきなりの事に困惑をしており千佳を参加させない方がいいんじゃないのかと修は思ったのだ千佳は参戦するつもりである。深雪が後押しをして逃げ場を無くしたと言われればそうかもしれないのだが。とにかく、千佳とレイジはスペシャルマッチに向かった。

 

「間に合った!!」

 

「太刀川じゃない……今日は無理よ?」

 

「見るのもランク戦の醍醐味だろう」

 

 狙撃手達が戦う準備を行っている中で太刀川隊の太刀川と出水が現れる。

 小南は狙撃手じゃない太刀川や出水に今日は無理な事を言うのだが見るのもランク戦の醍醐味である。

 

「こんな面白いの見れない風間隊は残念だな」

 

 このスペシャルマッチは記録を一切残さない決まりになっている。

 太刀川隊と入れ替わるように防衛任務に入った風間隊を少しだけ可哀想に思う出水だが深雪は微笑む。

 

「果たしてそれはどうでしょうか……現場に居合わせなくてトラウマを刻む事が無くて済んだ可能性もありますよ」

 

「トラウマって……相手、アーチャーなんだろう?弓矢を使う相手が銃を使う相手に勝てるんだったら戦争で銃が流行らねえよ」

 

「確かに人を殺すのに銃は最適解な武器とも言えます。100人中100人が確実に人を殺すことが出来る武器で、対する弓矢は100人中5人ぐらいしか確実に人を殺すことが出来ません…………ですが、問題はその5人がおかしいのです」

 

「例えば?」

 

「那須与一という英雄をご存知でしょうか?」

 

「知らねえ」

 

「平安時代に居た優れた弓兵です。現代の様に完成された蒸気機関の船でなく、木製の小舟の上で弓矢を構えて遠くにある扇子を撃ち抜いた逸話を持っています……ボーダー隊員が狙撃銃でそれと同じ事が出来る人は何名居るでしょうか?」

 

「……東さんと奈良坂と当真なら出来そう、いや、揺れる足場なんだろ?……」

 

 那須与一の逸話を出されて答えに悩む太刀川。

 現代の様に完成された船でなく木製の小船の上で旋空弧月を決めたとして果たして確実に相手を倒すことが出来るのか?という疑問に関して答えが出しづらい。

 

「さぁ、はじまりましたスペシャルマッチ!!実況は引き続き私こと武富桜子がお送り致します!」

 

 色々と悩みつつも席を確保していく玉狛と太刀川隊。

 今日はスペシャルマッチが行われる予定であると実況に命をかけている武富桜子が夜の部に引き続き実況を行う。

 

「このスペシャルマッチ、ボーダーが極秘裏に開発をしていた歴史上の偉人や神話の英雄などを模した人型のトリオン兵とボーダー隊員が戦うスペシャルマッチです。なんでも先の大規模侵攻で未知のトリオン兵が出てきて困惑したりする方が多かったりしたので、未知の相手に対する対策を取ろうとの事で……詳しい情報は私も一切知りません!解説のお2人方、お願いします!」

 

「どうもはじめまして、解説の虹村だ。お前誰だ?って思うがそこは気にせずにいてくれ……今回は弓兵(アーチャー)なんで狙撃合戦になってる」

 

「諏訪隊の諏訪だ…………そういう感じになってるのか」

 

 解説席に座る虹村と諏訪。諏訪はボーダー以外にトリガーを扱う組織が存在しており、ボーダーと同盟を結んでいる事を一応は知っている。

 勿論口外はしないでくれと言われているので余計な事は言わない。前回の大規模侵攻で新型が出てきて苦戦したから皆は未知の相手に対しては弱いんじゃないのか?と言う疑問を出して、それに対する回答を出しているという設定なのを飲み込んだ。

 

「今回は人型のトリオン兵を1人狙撃すればいいだけなのですが……これ、あっという間に終わっちゃいませんか?」

 

「流石にそれじゃ訓練にならねえよ……大丈夫、弓兵(アーチャー)を信じろ」

 

「つってもよ、弓矢だろ?弓矢を馬鹿にしてるわけじゃねえけども」

 

「じゃあ、今居る銃手(ガンナー)志望の人間は頭の上に乗ったリンゴを1発で撃ち抜く訓練をしてくれよ」

 

「ウィリアム・テルの真似事か?……散弾銃じゃキツイぞ」

 

 あっという間に試合が終わるかどうか心配をする武富だが虹村は動じない。

 諏訪は弓矢が相手ならば狙撃銃に負けるんじゃないのかと考えるのだが、虹村は銃手志望の人間にウィリアム・テルの真似事をしろと言う。かなりの難題である。

 

「市街地Bの昼間を選ばれました!さぁ、狙撃銃達がフィールドに転送!」

 

 市街地Bの天候晴れの昼間のフィールドが選ばれた。

 通常のランク戦通りランダムに転送されるのだが、今回は動じない。

 

『お前達、コレはランク戦と異なる訓練だ。相手を確実に倒さないとダメなものだ』

 

「分かってますよ、それぐらい」

 

 何時もやっている多対多のランク戦でなく多対一の勝負、頭の処理や状況判断能力が異なる。

 1人の相手を倒すことにだけ意識を割けばいいのは気楽な事だと東からの注意勧告を気にせずにレーダーを展開する。

 

「お、直ぐ近くじゃん」

 

 運が良かった。

 No.1狙撃手の当真が転送されたのは今回の敵から割と近かった。これはラッキーだったなと狙撃に使えそうなポイントを探して住居を伝いイーグレットを相手に向ける。いきなりの発砲はしない、確実に仕留める事が出来る時にしか発砲をしない、牽制の弾を撃たないのが彼の流儀で一先ずはとレーダーに映る対象をイーグレットのスコープで見ようとしたその時だった

 

「え……」

 

『脳伝達神経損傷 緊急脱出(ベイルアウト)

 

 スコープのレンズが矢に貫かれて当真を撃ち抜いたのであった。

 

「え?え?え?」

 

「さて……スゴく今更な事だがボーダーの狙撃銃は風に影響する事は無く真っ直ぐに飛ぶように設計されている。狙撃銃をターゲットに向けてるって事は逆を言えばターゲット側から狙撃する事も可能だ」

 

「いや、あの、なにが起きたんですか!?」

 

「だからターゲット側から撃ち返しただけだって」

 

 いきなりNo.1の男が倒されて動揺が走る。

 狙撃の腕は勿論の事、隠れることや逃げることに関しても一流と言ってもいい当真がイーグレットを向けて対象を確認しただけで何もする事が出来なかった。なにが起こっているのかと武富は驚くのだが虹村は冷静に解説する。

 

 ボーダーの狙撃銃は真っ直ぐに飛ぶように設計されている。

 狙撃手は狙撃銃を構えてターゲットを捉えるのだが、逆を言えばターゲット側からも狙撃手を撃ち抜く事が出来る。だから狙撃銃を向けてきた当真のイーグレットのスコープを貫いて当真の頭を撃ち抜いた。

 

「さて、ただ見てても面白くねえからチャンスタイムだ……トリオンを除く7つのパラメータの内の1つを開ける事が出来る、諏訪さん、弓兵(アーチャー)のパラメータの内の1つを選んでくれ」

 

「あ〜……………技術って言いてえところだけども、射程を教えてくれ」

 

 狙撃する相手を狙撃される位置から狙撃する、しかも弓矢でやるという変態技を成し遂げた。

 果たしてどれくらいの技術を持っているのかと気にはなるのだが、それよりもと射程が気になったので諏訪は射程を選択して射程をモニターに映し出すとどよめきが起きた。

 

 

 射程 99(測定不能)

 

 

「おい、おかしいだろ!!99って、黒トリガーを持った迅でも天羽でも叩き出す事が出来ねえ数字だろ!」

 

「いや……これで間違いはないんすよ」

 

 諏訪がツッコミを入れている間にも観客達が動揺している間にも狙撃手達は数百メートル先にいる弓兵に撃ち抜かれる。

 当たる当たらない以前に射線が通る場所にいれば問答無用で撃たれる。那須隊の日浦が、三輪隊の古寺が、荒船隊の穂刈と荒船が狙撃銃すら向けていない、狙撃の的を絞っている素振りをまともに見せていないのにあっさりと弓兵(アーチャー)に撃ち抜かれる……と思えば撃ち抜いた矢は地面に突き刺さりクレーターが生まれた。

 

「はぁ!?どうなってんのよ!?」

 

 皆の気持ちを小南が代弁した。

 普通に弓矢を放っているだけなのに、クレーターが生まれた。頭がおかしいんじゃねえのと言えるような威力を叩き出している。

 

『東さん、相手はなんなんですか!?こっちがイーグレット向ける前に射線が通ってるからって撃たれましたよ!?』

 

 倒された古寺は東に今回の相手が何なのかを尋ねる。

 100m以上先にいる自分達を器用に撃ち抜くだけでも異常なのに、射線が通ってるからと言うだけで撃たれた。

 

「……それが、分からないんだ」

 

『今回の相手は歴史上の人物や神話の英雄を模したトリオン兵だと聞きますが?』

 

「いや、誰かは教えてもらっているんだが……アーラシュって言う英雄だが聞いたことはあるか?」

 

『いえ……無いですね』

 

 東は夜の部が終わってから今回呼び出された英霊の真名を知った。

 アーラシュ、戦史関係では博識な東だったがアーラシュという名前は聞いたことはなかった。発想が柔軟な東は直ぐにインターネットを使ってアーラシュの情報を出そうとしたが……全くと言って出てこなかった。

 

 奈良坂に聞いたことがあるかどうかを尋ねるのだが奈良坂も知らない。

 

「え〜このままだと一方的なクソゲーになるから一応は解説をする。今回の相手はアーラシュと呼ばれるイランという国の神話に出てくる英雄だ」

 

「イランですか?」

 

「あ〜…………全く分からねえな…………」

 

 矢の雨が降り注ぎクレーターが大量に生まれる。

 腕のある狙撃手達は射線が通ると同時に撃ち抜かれるという事態に襲われており、虹村はこのままだと塩試合なクソゲーになるからと一応は解説をしておく。アーラシュの名を上げて何処の英雄かと言っても深雪とコシマエ以外にはピンと来ない。横の知識は広い見た目の割には博学な諏訪もイランの神話に出てくるという英雄と言われてもピンと来ない。

 

「宗教で言えばゾロアスター教とかに出てくるレベルの英雄で……まぁ、日本じゃマジでちゃんとしたゾロアスター教とかちゃんとしたイスラム教とかちゃんとしたイラン人じゃないと知らないレベルの知名度の英雄で…………弓矢に関してヤバい逸話を持っている」

 

「ヤバい逸話?」

 

「ペルシャ、今で言うところのイランという国と今で言うところのトルコという国が当時戦争をやってて締結したんだけども弓矢を放って飛んだところを国境にしようぜとなって神様がその決め方は理不尽すぎるからと最上級の弓矢の作り方を教えてペルシャで1番の勇者であるアーラシュが放ったんだがな………………………」

 

「どうなったんですか?」

 

「文献によって異なるけど……最低でも2500km以上の距離を撃ったらしい」

 

「はぁ!?」

 

 諏訪の叫び声に誰もがつられそうになった。

 小南が耐えたのが奇跡とも言っていいぐらいであり当然の如く周りはざわめく。

 

「2500kmが分かりにくいならば北海道から沖縄に向けて弓矢を撃って当たったぐらいの認識を持てばいいぞ」

 

「2500kmってマジですか!?」

 

「その辺は曖昧だ……文献によっては6000kmとか言うのもあるし……でまぁ、千里眼を持っている」

 

「千里眼というと千里の先まで見える目。遠方の出来事や未来、人の心の奥底を見通す能力ですか!?」

 

「そうそう、その千里眼だ……だから数百mぐらいの狙撃はクイックドロウ、いや、準備運動にすらならねえ……仮に戦場が東京だったら東京の何処でも撃ち抜くことが出来る」

 

「東京って確か2000平方km以上あんだろ…………」

 

 ありえないと言いたい諏訪だが目の前で起きている事に関しては受け入れないといけない。

 射線が通ると同時に撃ち抜かれるというとんでもない事が起きており、レイジを始めとするマスタークラス以上の狙撃手達も撃ち抜かれて……40分で全滅した。

 

「銃は100人使って100人とも殺すことが出来る便利な道具だ。対する弓矢は100人使っても5人ぐらいしか殺すことが出来ねえが……その5人は時には銃を持った人間よりも上回る……アーラシュにとって十数kmの的当てなんざ余裕なんだ」

 

 アーチャーという点ではアーラシュはぶっ壊れた性能を持っている。

 1kmの狙撃でヤバいボーダーの中で2500km以上の狙撃が出来て十数kmの狙撃は準備運動と言うぶっ壊れにも程がある力を持ったアーラシュ。

 

「ミユキさん」

 

「なんでしょうか?」

 

「サーヴァントってこっちの世界で実在してた人を模したトリオン兵、であってるよね?」

 

「ええ、その認識で間違いはありません……アーラシュは1000年以上前の英雄です。日本のネットで検索しても引っかからないので超がつくほどに日本ではマイナーな英霊ですが地元であるイランではジャシュ・ネ・ティルガンという祭りがあるほどの英雄ですよ」

 

「そっか……」

 

「どうしたんですか?」

 

「ずっと疑問に思っててさ……こっちの世界、トリガー文明が全然発達してないなら何処かの国が支配下に置こうって企まなかったのかって……あんな事が出来る人間が滅茶苦茶居たらそりゃこっちの世界を支配する事なんて不可能だよなって」

 

 こっちの世界が何処かの国に支配されていたという一例は聞かない。

 遊真は狙撃手じゃないが今回アーラシュがやった事がどれだけイカれた事なのかは熟知している。それを踏まえた上で、この世界の歴史上の人物や神話の英雄はとてつもない化け物だと認識する。

 

「言っとくけどアーラシュは1流で勇者であっても1番強いわけじゃねえ……まだまだ上な英雄は存在してる……それやったら流石にイジメでしかないからやらないようにしてるけれども」

 

 ついでだからとコシマエも補足しておく。

 それを聞いていた玉狛や太刀川隊はマジで?という顔をしているのだが残念ながら事実である。

 

「え〜流石に塩試合なので次の試合を決めたいと思います」

 

 アーラシュが普通に矢を放つだけで勝利を決めた。

 圧倒的なまでの力を見せつけられたが見る人にとってはつまらない塩試合、虹村は次に行われる試合を決めようとガラガラを取り出して修の元に向かった。

 

「夜の部のMVPは三雲隊だからな……引けよ」

 

「はい……」

 

 ガラガラを修は回す。

 残っているクラスはランサー、ライダー、アサシン、キャスター、バーサーカーの5つでありなにが出てくるのかと周りも息を飲み込んだ。

 

「お、キャスターか……じゃ、後は頼むわ」

 

 ガラガラを回せばキャスターのモニュメントピースが出てきた。

 これが出てきた以上は進行役は自分じゃなくて深雪に相応しいとピンマイクを深雪に渡した。

 

「さぁさぁさぁ!皆様、次にボーダーが対戦する相手はキャスター、主に魔術や呪術等を使った逸話や文学史に歴史を残した英雄達がコレに該当いたします!さて…………アーラシュ相手に滅茶苦茶ボコボコにされたので今回は色々とハンデを用意しましょう!次に戦っていいのは迅さんと現在部隊を組んでいる全ボーダー隊員!反則級なトリガーを持っている玉狛もOKで、更にはトリオン兵でなく私が戦いましょう!」

 

 再び行われる多対一にざわめく。

 なにせ今回は迅と部隊を組んでいるボーダー隊員、ボーダーの主戦力全員でかかってこいと言ってきている。狙撃合戦で完敗したのだからもしかしたらボーダーの主戦力を動員しても勝つことが出来ないとてつもない相手じゃないのかと考える。

 

「オマケです!次に戦う相手の能力の元となっている名前は…………ズバリ、闘戦勝仏!!…………さぁ、現在防衛任務しかなくて絶賛暇なA級の皆様……果たして闘戦勝仏を倒すことが出来るでしょうか?…………期待だけはしておきますね」




アーラシュが壊れた性能をしすぎてないかって?なにもおかしくはないのである。
なお、この後に普通にアーラシュは消えました。ステラは撃っていない。
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