「やぁやぁ、無事そうでなによりだ」
「越前、その姿は!?」
やっぱり修の事が心配になった僕は修の様子を見に、戦場である南校舎にやってくる。
トリオン体の換装は解けて元の姿に戻っている修はとある英雄の姿になっている僕の姿に驚く。
「なに、トリガーを使ってトリオン体に換装しただけだよ。君が変身だと思ってるやつを僕もしたんだ」
「越前もトリガーを……なんで持ってるんだ?」
「イギリスのとある場所で拾った」
「拾った!?」
「説明をすると色々と長いから、話す機会が来た時に思う存分話すよ。それよりも今は大丈夫か?」
僕の転生特典やあれこれ説明するのはまたの機会だ。
僕との無駄話で修の手助けに行くのに時間が掛かったか心配をしていたが怪我らしい怪我はしていない。
「大丈夫だ、空閑が助けてくれたお陰でなんとかなった」
「コシマエから貰った刀が役に立ったな」
どやさと鬼神丸国重を掲げる遊真。黒いジャージ姿になっているということは修のトリガーをパクって使ったんだろう。
やっぱり武器と言えば刀に限る。日本人云々を除いても、刀にはロマンが詰まっている事を再認識するとトリオン体を解除すると元の制服姿に戻り遊真の持っている鬼神丸国重は無くなる。
「お疲れ様って褒めたいんだけどね……どうもまだ事態は納まっていない」
「そうだ……皆、避難する事が出来たのか?」
『その事については心配は無いようだ。オサムが時間を稼いでくれたお陰で全員無事に避難することが出来た』
1番の心配を解消するとホッとする修。
怪我人がなくてなによりだが、事態は丸くは納まらない。
「僕と遊真は逃げ遅れた一般人と言うことにしておいてくれ……余計なのが来るから」
「コシマエ、なんでそんなニヤニヤしているんだ?」
おっと、どうやら表情を隠すことが出来ていないようだ。
修が僕達を救出した事で話は丸く納まり、それっぽい演出をする為に遊真に肩を貸す……因みにだが僕の容姿は越前リョーガであり身長が180ほどあるので、修を背負うことは出来ても肩を借りたり貸したりする事は出来ない。
もうちょっと身長が低くてもいいんだよなと思う時が多々あるが転生する度に宮野真守キャラになる僕は高確率で高身長になるので諦めるしかない。
「……これは……」
「嵐山隊、現着しました」
修と一緒に避難していた生徒達の所に戻って数分。
ヒーローは遅れてやってくるなんて言うけれど、遅れてやってくるのはいけない……まぁ、性質上、ヒーローは悪が居てこそ成り立つ者だから仕方ないと言えば仕方ないな。
「遅れてすみません!負傷者は?」
悲惨な状況を想定していた嵐山さん。
思ったよりも悲惨な状況でなく、一先ずは状況の確認を急ぐと学校の保険医から全員が無事な報告を受けて安堵する。
「近界民がいたはずだが、いったい誰が……」
「ほら、オサム」
今がヒーローになるチャンスだと後押しをする遊真。
しかし、修の表情は優れない。それもその筈だ。修はボーダーの隊員ではあるものの、まだ訓練生である。訓練生はボーダーの基地でのみトリガーを起動する事を許されており、修はその事を分かった上でトリガーを起動した。
遊真にその辺りの事を伝えて一歩前に出る修。怒られることを覚悟している顔になるのだが、肝心の嵐山隊の隊長である嵐山さんはすんなりとお礼を言った。
「なぁ、遊真」
「なんだ?」
「今からちょっと面白い事をするから協力してくれないか?」
「面白い事?」
「なに別に誰かを殴ったりしろとかそんなんじゃない。結果的には修を助ける行為だから、後、シンプルに面白い」
「面白いのか?」
「言い方を変えれば愉悦とも言う」
本当はこういう事をする柄では無いけども、上からの命令なんだからするしかない。
遊真は修を助けることならばと僕の頼みを引き受ける……好感度高くない?まだ出会って2日目だよね?なんなの修って、劉備の生まれ変わりかなんなのかな?
「彼がしたことは明確なルール違反です。違反者を褒めるような真似をしないでください」
アホな事を考えていると、嵐山隊の木虎(でこっぱち)が修を褒め称えるのが気に食わないのか嵐山に注意する。
「確かにルール違反ではあるけれど、結果的にば市民の命を救ったわけだし……」
「人命を救ったのは評価します……けれど、彼をここで許せば他のC級隊員も同じ事を━━」
「三雲、次から俺達の事を見捨てて逃げてくれよ!!」
「越前!?」
結果的に人の命を救われたから、それでいいとする嵐山さん。
人の命は何よりも大事だが、それよりもルールとくだらない事を言うのであれば、それに乗っ取ってやってやろうじゃないか。
「三雲、なにに驚いてるんだ?要するにアレだろ?お前は俺達を見捨ててクラスの奴等と一緒に逃げておけば良かったんだ。そうだろ?」
「誰もそんな事は言っていないわよ!」
「ああ、言ってないね……だから、教えてくれよ。三雲はこの場合は俺や遊真を見捨てておけばよかったのか、あんた達を待っておけばいいのか、なにをすれば良かったのかを」
僕の余計な一言で周りはざわめき出す。木虎の言っていることは間違いではない、しかし絶対に正しいと言うわけでもない。特にここにいる連中の殆どが修が時間を稼がなければ死んでいた……かもしれない。
「私達嵐山隊が到着するのを大人しく」
「おいおい、あんた達今になって到着したんだろ?」
彼がやったことは間違っていると言いたげな木虎。
ならば、答えを教えてくれと問い掛ければ自分達が来るのを待ってればいいと言うが、そんな甘い話が通じるわけがない。なにせ全速力でやってきて今、到着したと言う事実は変わらないのだから。
「それはっ……その」
「なぁ、皆、嵐山隊は今到着したんだ!!近界民が出てくるまで、どれだけの時間があった?僕は三雲に助けられてたから時間を測ってないが、どれくらいの時間が掛かった?」
こんな事をしろと命令してくる深雪は本当に最悪な女である(愉悦)
嵐山隊に背を向けて避難が完了して表に姿を出していた生徒達に演説の如く問い掛けると少しずつ表情が変わる。
「そうだ……私達、逃げ遅れて三雲先輩が来なかったら近界民に殺されてた!」
「避難訓練通りにやろうとしても、近界民がすぐ近くに現れたせいで地下のシェルターに避難出来なかった!!」
「ボーダーが門を誘導しているのに、こんなところに近界民が出るなんて聞いてないぞ!!」
ボーダーが来てくれた事に対してホッとしていたが、僕の言葉で心動かされる学校の皆。修が助けてくれなければ今頃は死んでいた人達が居たのもまた事実。
溜まっていた不安や不満をぶちまけられ、その怒りの矛先が向いているのが木虎であり、こんなことになるとは思ってもいなかったのか一歩、引いてしまう。
「後から来た癖にぶつぶつと文句を言う暇があるんだったら、さっさとおれ達を助けてくれよ」
「っ……」
そして遊真がとどめを刺す。
民衆に煽られて心が弱くなっていっている木虎にその言葉は効果は抜群でなにも言えない。
「取りあえず、状況の説明をこちらも求めたい。貴方達は街を守るのが仕事で門を誘導なんて迷惑な事をしているのに、警戒区域外のウチの学校に門が開いたことについてと三雲修の事については色々と文句を言ってやりたい……で、どういうことだ?」
「それは……」
「それは今、こちらの方でも調査中だよ」
もう少し木虎をイジっておこうと思ったものの、キノコヘッドこと時枝が間に入る。
流石に攻めすぎたが、これぐらいやってもバチは当たらないと僕はこの事については反省はしない。
「そうですか……ですが」
「この事についてはボーダー側に大きな不手際があった。三雲くんの賞罰に対して我々嵐山隊は尽力を尽くすつもりです」
「……抗議の文の1つや2つ、送らせてくださいね」
ボーダーの顔でボーダー歴が長い時枝さん。
色々と攻め立てようとするがその前にこちらの方が悪いことを認め、謝罪をしてきた上での修をフォローするとのこと。まぁ、それでも文句の一言ぐらい言っておこう。
木虎が原因で燃え上がった熱も気付けば冷めていき、近界民を修が倒して後からやって来た嵐山隊が色々と言ってきたで終わった。
「越前、お前はなんてことをするんだ……」
嵐山隊が帰ると何事も無かったかの様に授業は再開する。
修は僕がボーダーに喧嘩を売ったことについて冷や汗を流している。
「なに……たまにはこういう事をしておかないと思ってね」
「越前くん、ボーダーに抗議文を出すんだよね?私も手伝おうか?」
「出来れば署名があればいいかな」
なにはともあれクラスや学校の皆を修が助けたと言う事実は変わりはしない。
日頃の行いがいいのがよく分かる。修がやった行いが悪いなら抗議すると言えば周りの皆はそれを手伝うと言ってくれている。そして何故か僕が抗議文を書くことになっている。
いや、いいんだよ。木虎の表情を曇らせる事に成功していいものが見れてテンションが上がっているのでやってやろうじゃないか。
「本当は空閑が助けたのに、僕がやったことになっていて」
「いや、それは違うよ。遊真は確かに助けたけど、助けたのは修だけだ」
自分がやったことじゃないのに、やったことにさせられている事に些か納得がいかない修。
そもそもの話でそれは間違っている。遊真は助けたには助けたのだが、それは修ただ1人だ。
「おれが助けたのはオサムただ一人だ……おれが無理だって言ってるのに、突っ込んでそれで避難する時間を稼ぐことが出来たなら、おれの手柄でもなんでもない」
「でも、結果的に近界民を倒したのは僕じゃなくて空閑と越前じゃ」
「いやいや、僕はなにもしていないよ」
割と今回はマジでなにもしていない。
むしろ避難をせずに木影でボーッとしていただけで戦闘らしい戦闘はしていない。
マジレスするとあの姿なら周りに迷惑をかけずにトリオン兵をシュパッと斬ることが出来ていたけど、姿を見られたり痕跡を残したりするとなにかとややこしいのでしなかった。
修が一人で頑張ってくれたお陰で僕の存在が露見されることがなかったのでこれでも割と感謝をしている方だ。
「それでも心残りがあるのならば黙っている事が僕達へのお礼だ。僕も遊真も目立ちたくはない」
語るだけがお礼じゃない、黙っている事もまた1つのお礼だ。
修はなにか言いたそうだったが、一先ずの納得をしてくれてそれ以上なにかを言うことはなく、僕はゆっくりじっくりとボーダーに対する抗議文を書くことに集中が出来る。
授業なんて聞いてれば大体分かるので適当に聞き流し、どういう感じの抗議文を書くかと考えていると授業は終わり、下校時刻になる。
「三雲くん、ボーダー本部に同行して貰うわ」
原作とは異なりボーダーに対して厳しい目を向けられるようにした為に校門で堂々と立たず、修が校門から出てきたところを見計らってスッと出てきた木虎。
修の同行云々を言っているけど、内心周りの視線にビクついている。周りもうわ、ボーダーの木虎だと若干だが嫌そうな視線を向ける……う~ん、面白い。
「わざわざ、そんな事をしなくても行けって言われたらオサムは行くのにご苦労だな」
「簡単にルールを破る人間を信頼できる?彼はただの訓練生、もう少し立場を理解した方がいいわ」
「そういう君は周りからの視線を気にした方がいいよ」
今の尖った状態だと一言、一言がヘイトを集める。
自尊心とかが強い奴が広報するのはどうかと思う……まぁ、僕みたいな変態が言うのもどうかと思うのだけど。
「…っ…」
周りからの視線に気付かないフリをしていたのが僕の言葉で気付いてしまう。
僕が色々と仕掛けていたせいでボーダーって大丈夫なのかと言う疑問視をされており、それらの視線が全て木虎に向けられる。広報でボーダーの顔だからその手の視線には馴れているだろうがさっきの今日なので心の傷は早々に回復しない。
「なんなのよ、貴方は……」
何時もならワーキャー言われる側なだけになにかとナイーブな木虎。
僕に若干だが八つ当たり気味で突っかかってくるところを見れば、大分傷心しているようだ……まぁ、僕の知ったことじゃない。
「僕がなにかって聞かれれば越前龍我としか答えようがない」
修が逃げるわけないのにくだらない嫉妬でここまでやって来たのはスゴいけれども、僕に関しては語ることは特に無い。
同じ転生者で序列3位の人が何処となくロクでなしの匂いがするとか酷いことを言うけれど、僕はロクでなしじゃない至って普通の凡庸型の転生者だ。
「じゃあ、また来週に……と言いたいけど、そう上手く行きそうにはないよね」
出来ればこのまま被害者面をして修と一緒に基地手前まで同行してあげたいんだけど、案外僕も暇じゃない。
遊真に修に万が一があったときはお願いと頼み込んで、ここで別れて家に向かうと家の前に顔が司波深雪、体が蛇喰夢子というなんともエロティックな女子高生が立っていた。
「おかえりなさい、どうでした?」
彼女の名前は蛇喰深雪、僕と同じ転生者であり転生者の序列は5位の僕よりも上に位置する人間だ。
転生者の先輩後輩で言えば同期にあたり、なにかと話が通じたり通じなかったり合ったり合わなかったりする。
「来て早々にそれを聞くのか?」
「当たり前じゃありませんか、その為に貴方に命令を出したのですよ」
彼女が今日、僕の家にやって来た理由は至ってシンプルだ。
先ほど、コッソリと撮影をしていた木虎が攻められまくる姿を見せてほしいと言うなんとも言えない理由でやって来た。この深雪と言う女、僕が言うのもなんだが結構酷い性格をしており、今回みたいに笑顔を曇らせているボーダー隊員の姿を見たいとか言い出す始末。
立場上、下の僕は基本的には彼女の命令は逆らうことは出来ないので引き受けたが今回みたいなのは出来れば自分でどうにかしてほしい。
「どうと言われてもね……若干天狗になっている奴の鼻っ柱を民衆の力で叩き折るのは気持ちいいけど、覚えていけない快楽だよ」
木虎の表情を思い出しただけで笑みが止まらない。
あの攻められてることに馴れていない、自分の自尊心とかが制御できなくてつい言っちゃった一言でやらかした感じは見ている側には面白いけれど、あまり知ってはいけない味だ。美味しいけど食べてはいけない麻薬みたいなものだ。
「なにを言っているのですか?貴方は間違ったことは一言も言っていませんよ」
「正しいだけが正しいとは限らないでしょうが……もう何回も転生してるんだからそれぐらい分かるでしょうに」
「いいえ、私は理不尽な暴力は嫌いですけど正論をぶつけたり自業自得で自らで破滅フラグに行く人は大好きなのです……木虎さんは今回の件で終わりですが、まだまだ他にも笑顔を曇らせれる素質を持っている人達は沢山います」
やっぱ、こいつとは合わないな。
他の奴等は僕と深雪が似ているなんて言っているけども、似ていない。僕はエモかったりする笑顔を守りたかったりするが、深雪はエモい笑顔に正論と言う名の言葉の暴力をぶつけたりして曇らせたりする。
正論をぶつけられて悩んでしまい苦しんでいて必死になってあがいている姿に興奮を覚えるどうしようのない変態だ。確かに笑顔が曇っている姿はいいものだけど、わざわざ曇らせるものじゃない。
「ああ、雨取さんに会ってあんな事やこんな事を言ってあげたい。考えるだけでゾクゾクします」
「お前、本当に勘弁してくれよ……」
放置していたらなにかとんでもない事をやらかすクソアマであり、今もなんかアホな事を想像している。
彼女のブレーキとなる存在はいない。いや、本当に転生者を転生させる運営側もなんでこんな凶悪な人物を野放しにしているのか謎だよ。
「ということで、頑張って三雲さんの好感度を上げてくださいね」
「……」
こんな奴の命令を聞かないといけない僕は本当に貧乏くじを引いている。
ところで千佳の笑顔を曇らせるって言うけどなにをするんだろう?やっぱりぐうの音も出ないド正論をぶつけるのだろうか?
ハイブリット変態 ミユキ
顔が司波深雪、体が蛇喰夢子というハイブリットな容姿をもつ転生者でコシマエとは転生者として同期であり腐れ縁の関係。
容姿端麗スポーツ万能家事も完璧と絵に描いた様な絶世の美女だが、推しの笑顔を曇らせかったり地雷を爆発させたいと常々考えているド変態。理不尽な暴力は振るわない。正論をぶつけたい。
主人公をからかったり挑発したりする系のヒロインが匙加減を間違えて主人公にぶち切れられて修復不可能な関係になり主人公がもっと素直な別のヒロインと付き合い始めて精神的に追い込まれてボロボロになっていく展開とかが見たいだけで暴力は嫌いで変なところでピュアである。
木虎が修の功績を嫉妬しているシーンで民衆を味方につけることで後から出てきたくせに偉そうにすんじゃねえ、こっちは危うく死にかけたんだぞ、死ねって言ってるのかと怒りの矛先を木虎に向けさせて精神的に追い詰めるのは愉悦じゃないんです、ただ正論をぶつけてるだけなんです(満面の笑み)