「越前は何者なんだ?」
時間は変わり夜の真夜中、場面は変わり三雲家の修の部屋の布団の中。
イレギュラーな門が開いて、その時もトリガーを起動してあわやクビになりかけたものの実力派エリートのお陰でクビを免れた修はちびレプリカと通信を取る。
サイドエフェクトについて色々と教えて貰い、分からないことに納得がいった修は気にはなっていたが聞けずじまいだったコシマエについて聞いてみる。
『彼は私達の支援者だ』
「支援者?」
『こちらの世界に来る前に彼の上司に当たる人物と出会い、こちらの世界に行くならばと色々と支援をしてもらった。コシマエはこの世界で私達を支援してくれるもの……と言うことになっている』
「じゃあ、越前も近界民なのか?」
『いや、違う。彼も彼の上司に当たる人物もこちらの世界の住人だ』
「でも、越前はボーダーじゃないって」
ありえる話として越前がボーダーと繋がっている事を考えるが、それは違うと真っ向から否定される。
トリガーは近界民の物でボーダーが使っているぐらいの認識の修は越前の事を遊真と似たような立ち位置かと思いきや、そうでないと言われる。
『彼等の事を簡単に言えば、ボーダー以外にトリガーを扱っている一団だ』
「ボーダー以外に……」
『今のところ姿を表に出すつもりはなく、向こうの世界での活動を主にしている。ボーダーの様にこちらの世界を守ろうとする気は薄い……私達の口から語れる事はそれぐらいだ』
「……」
まだなにかあるのかと思わせ振りな発言をするレプリカ。越前以外にもまだ何名かの存在をほのめかしており、そこについて聞きたかったがこれ以上は答えそうにない。越前本人に聞いてみようにもはぐらかされるのがオチだろう。
気になる事は多いが、それらが一気に解消することはない。問題を一個ずつ解決していこうと今起きているイレギュラー門をどうにかしなければ昼間の様な事が起きてしまうと修は若干の不安を抱きつつ眠りについた。
時は更に少し進み遊真がイレギュラー門の原因であるトリオン兵、ラッドを見つけた。
ラッドが内側から門を開いていることでボーダーの門誘導装置を掻い潜っていた事が判明し、ボーダーはラッドを解析。レーダーに写る様にすると三門市全域に渡りラッドがいた。
この事態にボーダーはA及びB級隊員だけでなく訓練生のC級隊員も総出でラッドの駆除に当たることに。
そして場所は移り変わり星倫女学院高等部。ボーダー隊員が通う提携校とはまた別の所謂お嬢様高校。ここには何名かのボーダー隊員が所属しており、転生者の序列5位である蛇喰深雪も通っていた。
「深雪ちゃん、そこにいたら危険よ」
三門市全域に渡りラッドがいた。三門市内にある星倫女学院もその例に漏れず、ゴキブリの如くラッドがいた。
これにあたり、ボーダー側は駆除するのは勿論の事だが男子禁制の女子校と言うこともあり駆除するメンバーは選ばれた者しかいけない。むさ苦しい男は出来ればNGと言うことになり、星倫女学院に通うJKやJKが所属する部隊の隊員が派遣された。
「全く、1匹見たら30匹居ると思わなければいけませんね」
トリガー(と言うことになっている転生特典)を持っている深雪だが、自らラッドを倒すことはしない。
野次馬根性を引っ提げてB級のガールズチームこと那須隊の学校のラッドの駆除を見物している。
「いや、そこまでじゃないわよ」
ゴキブリの例えを出した深雪にツッコミを入れる那須隊の熊谷。
「ですが、学校にはこれでもかというほどに近界民がいます。イレギュラー門の時もそうですが、なにか法則性はあるのでしょうか?」
「ええっと……」
ラッドが集まっている場所は主に優れたトリオン能力を持っている人がいる場所だ。門が開く場所には優れたトリオン能力を持った人達がいる。その事について熊谷は一応は聞かされているのだがボーダーではない人に言ってはいけない事もあるので深雪になんて言えばいいのだろうかと迷ってしまう。
「熊ちゃん、ダメよ」
「あ……そうよね」
「語れないことですか……残念です」
守秘義務があるので那須隊の那須は迷う熊谷に注意を促す。
とはいえ、原作を知っている身なので深雪は答えを教えてもらわなくても問題は無い。こうやって迷ったり、たじろいだりする姿を見ているのが楽しいからしている。結構ロクでなしな女である。
「語れなくても考察する事は出来ますけどね……ボーダーは近界民の手のひらの上で踊らされていると」
「え!?」
意味深な事をボソリと呟くと思わず声を上げてしまう熊谷。深雪は心でガッツポーズを取るが、表情には出さない。
ゆっくりと目を細めて考えている素振りを見せるだけでそれ以上は語ろうとしない。
「どういう意味なの?」
那須の耳にも深雪の呟きは聞こえていた。
今こうしてイレギュラー門の原因を解明し必死になって近界民を駆除しているのだが、事態を終わらせる事ではない。
「素人の話ですので聞くだけ無駄ですよ?」
あくまでも素人目線の意見だと一線を深雪は引く。
内心では物凄く聞いてくださいと満面の笑み(ゲス)を浮かび上げているのだが、顔には出さない。
「そう言われると逆に気になるわ。私達が
「そうですね……一部オフレコでお願いしますね」
周りに他のボーダー隊員(柿崎隊とか加古隊とか)がいる中で秘密っぽく人差し指を立てる深雪。
既に彼女の術中に嵌まっている熊谷と那須は秘密にするわと深雪のロクでもない話に耳を傾ける。
「ここだけの話ですが、私の知り合いがイレギュラー門に遭遇しました」
「嘘!?その人、大丈夫だったの!?」
「熊谷さん、お静かに。幸い、C級の訓練生が時間を稼いでくれたお陰で近界民から逃げ延びましたが……まぁ、色々とありまして」
「それって……今回のイレギュラー門の原因を見つけたって噂のメガネの隊員?」
「はい、その方のお陰です」
話題の食い付きがいい熊谷と那須。
嘘は言っていないとこれからやることに若干の興奮を覚えながらも、真面目な顔をする。
「結構、怒っていましたよ。彼が居なければ危うく死にかけたのに、後から来た木虎さんがトリガー使うのは規約違反だと言い出して、それを言い出すならさっさとお前が来て助けろよと」
「木虎ちゃん……」
因みにだが、深雪は木虎の事を嫌いとかそういう感情はない。ただ単に煽るのにちょうどいいカモだと思っている。
なに一つ嘘は言っておらず、人命に関わることなのでルール云々よりも人助けが大事だと思っている2人は木虎の言動に引いてしまう。
「まぁ、いざ自分が動いた時は死人や負傷者を出してしまっていますので助けてほしいなんて言えないと笑っていましたが」
修が下校時の本部に向かう際に起きたイレギュラー門で死人が出ている。
負傷者でなく死人でしかもボーダーとは無関係の一般人と来るとなれば本当に洒落にならない。痛いところを的確につつき、木虎の株を落としている。なにも嘘は言っていないのがミソである。
「っと、無駄話が過ぎましたね……なにを話していましたか?」
「ボーダーが近界民の手のひらの上で踊らされている話よ」
「ああ、そうでした……今回の事態は今までに無いことです」
「まぁ、そうね。基本的には警戒区域内から近界民が出てくるから今回の事は今までにないわ」
「そう……襲われた私の知人曰くボーダーが何時も相手にしているフナムシに尻尾が生えた近界民が2体しか出てこなかったと言っています」
「2体しか……普通、2体もじゃないかしら?」
近代兵器の効かないトリオン兵は一般人にとって脅威的だ。
たった1体でもどうにもならない存在でたまたまC級隊員がいたとしても2体は恐ろしい。
「なにを仰っているのですか、今現在数百に及ぶ近界民の駆除をしているじゃありませんか」
「も」ではなく「しか」の考えをしている深雪に疑問を抱く那須だが直ぐに納得をする。
確かに言われてみれば今現在自分達は数百に及ぶトリオン兵を相手にしている。なんだったら普段門誘導装置を使って誘導してやって来たトリオン兵の方が数が多いことに気付く。
「私はこう思うのです。近界民はボーダーの存在に気付き、手口を変えてきたのだと」
「っ……」
「一連のイレギュラー門はその場にいたボーダー隊員がなんやかんやと対処して処理しました。しかし、近界民が本気を出せば4年半前にあった大規模な侵攻をすることが出来る……それなのに、してこなかった」
「ちょ、ちょっと待って。じゃあ、私達が今やってる事って」
「恐らく、ですが近界民の親玉か指揮者が監視をしていますね。この近界民、カメラっぽいのがついていますし」
トリオン体で汗をかかない筈の熊谷は冷や汗をかく。
深雪の言っている事を否定しようにも否定をする材料が何処にも無かった。ボーダーに入って約一年半、色々とあったもののこういった事が起きたのははじめてだ。
「まぁ、私の勝手な解釈ですのであまり気にせず……とは言えませんね」
あくまでも個人的な想像だと一線を敷いてみるものの、2人の顔色は優れない。
実際のところ深雪の言っていることは正しく、今回のはある意味前座、情報収集の様なものも兼ねており、本格的に攻めるつもりは向こう側は無い。
もしかしてとんでもない事を聞かされているんじゃと悪い方向に考えが行ってしまっている2人に深雪は少しだけやりすぎたかもしれないと反省をする。
「熊谷、那須、大丈夫か?」
手が止まっている2人を心配する柿崎隊の隊長である悩めるリア充こと柿崎。
「柿崎さん……その」
「あくまでも個人的な想像で場を乱すような事を言ってはいけませんよ」
この人ならば頼れると知っている熊谷は語ろうとするが、深雪に踏み留まらせる。
あくまでも深雪の想像で言うべきか言わないべきかの最後の判断は熊谷がするもの。
「なんの話かは分からないけど、悩みがあるなら相談に乗るぞ」
なんの話か分からないのに、それでも大丈夫と笑う柿崎さんはイケメンである。
本当はそこまで能力持ってないのに頑張ってるのはエモいとアホな事を深雪は考える横で熊谷は相談ぐらいならばと柿崎に相談をすると先ほどの自分の様に顔色は悪くなっている。
「成る程な……」
思ったよりも重い案件で冷や汗をタラリと垂れ流す。
ボーダー歴が長いだけあり色々と見てきた柿崎は今回の事が異例の事態だとこの場にいる誰よりも認識している。
「今度、迅や本部長に相談してみよう」
一人で解決できる案件ではない。あまり頼りすぎるのもよくないのは知っているが、それでも実力派エリートに頼るしかない。
迅の名前が出るとそうよねと納得する熊谷。日頃がアレなだけで頼れる実力派エリートであることには変わり無く、相談をするのにはちょうどいい。
「にしても、そんな事を考えていたのか」
上の人達に相談してみるで話は収まると深雪に関心を見せる。
ボーダー隊員ならば色々と考える機会はあったが、深雪は一般人(笑)でそこまで深く考えれるのは中々にいない。
「考えるだけなら誰でも出来ますよ……問題はこの後ですよ」
「この後か……そうだな」
迅と本部長に相談をする事で話は終わったが、もし本当に大規模な侵攻があったら守りきれるのかと不安を抱く。否、抱かせる。
「深雪ちゃん、そこまで考えれるなら、ボーダーに入らないかしら?」
「那須さん……冗談を言うのは上の口だけにしておいてください」
深い考察をしている深雪に那須はボーダー入隊を勧めるが心底呆れた顔をされる。そして下ネタを吐かれる。
「上の口?」
「ちょっと玲になんて事を言うのよ!?」
「勿論上の口ですよ」
「いや、口は上にしかないわよ!?」
「熊谷さん、なにを仰っているのですか!!女には4つあるのですよ!」
「え……え!?……ええっと」
突如として吐かれる深雪の下ネタに頭がバグる熊谷。
上の口と下の口とお尻の穴までは想像したが第4の口とはいったいなんだろうと深く考えてしまい、顔を真っ赤にさせる。この女はなにを言い出すかと思えば、本当にロクでなしであり下ネタも大好きである。
「4つ……4つってなんだ」
「柿崎さん、変な事を考えないで。深雪も変な事を言わないで!!」
「変な事は言っていませんよ……私の口は正直者ですよ。下の口は知りませんが」
「だから、やめろぉ!!」
完熟トマトの如く顔を真っ赤にさせる熊谷にヘッドロックをされる深雪。
結果的に熊谷のおっぱいが当たり役得ですねと内心で満足していると顔に出ていたのか熊谷はハッと気付いて深雪のヘッドロックを解除する。
「おやおや、ボーダー隊員が市民に向かって暴力なんて酷いことを」
「っく……」
クスクスと笑う深雪に苛立つ熊谷。
見た目は何処からどう見ても王道系清楚なお嬢様なのになんでこうなんだろうと残念がる。
「私の事は気になさらないでください。
「……そうよね」
裏で色々とあったものの、事態がいち早く解決したとは言え、出してはいけない犠牲者を出してしまった。
これから起きるかもしれない重い出来事を考えればこんな街に住んでいられるかと考えるのは当然の事である。非常識な事ばかり言う彼女だが、ちゃんとしっかりと見て考えている……ぶっちゃければ原作知識の逆用だが。
「特に進学とかが掛かってる人達は気を付けた方がいいですよ。中学卒業を機会にボーダーを止めさせるとか普通にいそうですし……今回の事をどう受け止めるのか、少なくとも三門市は世界一危険な街です」
「……」
ボーダー隊員が尽力を尽くして街を守っている?そんな事は関係無いのである。
むしろボーダーが三門市と言う街を戦場に変えている。それを見過ごすほど、親と言うものは無能ではない。自分の隊に中学生がいる二人の隊長は深雪の言葉を深く受け止める。
「今回の事でボーダーのこと、どう思ったのかしら……」
基本的には戦闘しか出来ないボーダー隊員である熊谷は親の顔を思い浮かべる。
危険なこの街に住んでいられるかと言い出してもおかしくはない。まだ高校生の熊谷は親の選択に逆らうことが出来ないのが痛い。
「まぁ、頑張ってくださいね……alea jacta estです」
本当はこの場にいない日浦茜の事を言っているのだが、今はまだ気付かない。
蛇喰深雪と言う転生者は正論をぶつけることにより推しの笑顔を曇らせる事に喜びや生き甲斐を感じているロクでもない女ではあるが、決して悪人ではない。
今こうして原作知識を逆用して危険が迫っている事を教えるのはわざとであり、そうすることで尊い笑顔を守れるから……要するに変態である。
「さて、未来はどうなるか……頑張りませんと」
何処ぞの実力派エリートとは言わないが未来に目を向ける深雪。
最高の未来を勝ち取りたいとは思わないが、出来ることはやっておく。自分達の存在がどう未来に影響するか、それはやってみないと分からない話だ。まぁ、その気になれば未来を見放題なのは内緒であるが。
運命/世界の引き金こそこそ裏話
ラッドの一斉駆除の際に星倫女学院は女子校なので通っている生徒とその生徒が所属する部隊、ガールズチームが出来れば来てほしいとのオファーがあったが1オペレーターと言う嘘をついている小南は全く違うところで活動している。
深雪は原作を知っているので小南が攻撃手と言うのは知っているが小南が普段は猫を被っているので「何処の部隊に所属しているのですか?」と聞いたりしてボロを出したりするのを見て楽しんでいる。その為に小南に苦手意識を持たれている。
因みに柿崎が星倫女学院に足を踏み入れる事について女性陣が「まぁ、柿崎さんだし」と誰一人文句を言わない。これが迅だったらNGをくらう