「おはよう、コシマエ」
「ああ、おはよう」
遊真が近界民だとバレた休みの日が開ける月曜日。
何時も通りすんなりと遊真は学校に登校してきて何気なく僕に挨拶をしてくれる。
「うん……見られてるね」
何事もなく登校してきている遊真だけど、ふと視線を感じる。
恐らくは三輪隊の狙撃手のどちらかが遊真が余計な事をしないのか監視をしているのだろう。しかし、僕みたいな戦闘が得意じゃない転生者に見抜かれるとはまだまだだな。
「家を引っ越したよ。今、ボーダーの玉狛支部って所で世話になってる」
「そうかそうか……一応、念の為に確認をしておくけど、ボーダーに言ってないよな?」
「言ってないし、気付いている素振りもなかったよ」
僕達の存在は露見してはならない……とは言わない。
ただ出来ればボーダーとは仲良くしたい。本気で喧嘩をするとなると弱い者いじめになるからしたくないんだよ。
「そう……それでなにか進展はあったかい?」
「それは」
「空閑、越前、もう来ていたのか」
本来の目的は果たせたかどうかを聞こうとすると修が登校してきた。
どちらかと言えば早目に登校している自分よりも早く来たことを意外だと感じる。
「修、色々と大変そうだったじゃないか」
「……なんで知っているんだ?」
「僕に知らない事は無い……なんて言わないけどもある程度は、まぁ、遊真に色々とあったことを尋ねていたところだ」
あの時、あの場には僕が居なかったのにどうしてと言った顔をする修。
そこは僕達だからと無理矢理にでも納得をして貰わないと、説明をするのは難しそうだからね。
「遊真が玉狛支部に引っ越したぐらいを聞いただけで、機密そうな情報は聞いてないよ……なにか言いたいことはあるか?文句は受け付けるよ」
受け付けるだけで、実際に反映するかどうかは別だけど。
遊真が引っ越したと話題を上手くすり替えてみると考える素振りをする修。僕になにか聞きたいことがあるのだろうか?
「越前……力を貸してくれるか?」
「力ね……力とはいったいなんの事だ?言っとくけど財力は期待しないでくれ、相撲の十両ぐらいの給料は貰ってはいるものの将来出会う運命の人の為に貯蓄はしておきたいんだ」
「お金じゃない。実は━━」
そこから語られるは原作を知っているのならば誰しもが知っていること。
近界に行って雨取千佳の兄である麟児さんや友達を助けに行きたいと言う千佳ちゃんの事やチームを組んだこと等、僕に対して警戒心が無さすぎるんじゃないかと思えるぐらいにポロポロと語ってくれる。
「状況は大体分かった、君は僕にどうしてほしい?」
「えっと……」
「言っておくが、ボーダーに入隊なんてしないよ。僕はこれでもそこそこ偉かったりするんだ、最年少でパシリだけど」
もし違う形で出会えていたのならば、ボーダーに入隊するのもありだ。
そうなった場合は敵に回る可能性は大きいけど、その時はその時として今について考えよう。
「近界に遠征する時、一緒になってついて来ようか?」
「そんな事が出来るのか!?」
「はっはっは、多分、いや、結構怒られるからあんまりしたくない……いや、本当だよ」
君達がどんな感じで近界を旅するか、楽しみではあるがそれはそれだ。
あんまり力を貸しすぎると余計なのが出てきたり疑われたりするからね。
「ボーダーの先輩にはあまり出来ない相談とか色々と乗ってやるよ……ああ、でも勘違いをしないでほしい。あくまでも僕は君の友達として相談に乗ったりするだけで完全な味方なわけじゃない。時にはとんでもない事をしでかす」
しつこいと思われるかもしれないが線引きと言うのは大事なことだ。
あくまでも友達として力を貸すだけだと言われると悩む修。なにか聞きたいことがあるのだろうか?
「……大怪我を治すトリガーって、あるか?」
「大怪我を治すね……」
チラリと遊真に視線を向ける修。
遊真の肉体はトリオンで出来ている。生身の肉体は3年ほど前に敵に死ぬ寸前までやられており目や四肢を損傷している。なら、なんで生きているかと言えば遊真のつけている黒トリガーのお陰だ。
遊真は黒トリガーを元の人間に戻す方法を探しにこの世界に来ており、レプリカは遊真の怪我をどうにかしたいと思っている。修はどちらかと言えばレプリカと同じ考えをしているのだろう。
「死んだ人間を生き返らせるのは無理だけど、四肢の損傷とか目玉がやられたとかの傷をどうにか出来るよ」
「なら━━」
「ただし、絶対とは言えないしタダとも言えない。本来なら死ぬはずの怪我を治すのだから、それ相応の代価は頂かないと」
遊真の怪我を治す方法はあるにはあるが、絶対に出来ると言う確信はない。
いや、多分出来るんだろうけども問題はそれになるかどうかで、そうなると運の要素が含まれたりする。剣である僕が遊真を治すには
ただまぁ、深雪に頼むと本当にロクな未来が待ち受けていない。絶対に余計な事を言ってきたりするのでオススメは出来ない。
「代価ってなにを払えば」
「黒トリガー及びそれを使える使い手の身柄とか、有益な情報とか……この辺りは僕に決める権利は無いからなんとも言えない。だから、僕に頼られても困る……剣を振るえとかそういう感じの仕事なら僕の独断でどうにかなるから」
払えるのならば支払う気満々の修。
支払いはクレジットでもキャッシュでもなく本当に使えるもの……多分、黒トリガー及び遊真の身柄数年とか言ってくるだろう。黒トリガー数百本分に匹敵するトリガー(と言うことになっている転生特典)を持っていても黒トリガーは欲しいから。
「そうか……」
「因みにだが僕がどんな感じの立ち位置でどういう感じの人間なのかを遊真から聞いているか?」
「いや、なにも……」
「コシマエが言うなって言ってるし、そういう約束だからな」
「一応、ボーダー以外でトリガーを持っている集団ぐらいしか……」
「大体、そんな感じだ……だけどまぁ、色々と気になるだろうし続きを説明しよう」
僕も黙って見続けているのは辛いし、喋れるときは喋りたい。
出来ることならもっともっと力を貸してあげたいんだが、そうなると彼が全然成長しなくていざというときが危うい。
「僕達はトリガーを持っている集団で昔はそれはそれは極悪非道の限りを尽くした」
「ご、極悪非道?」
「ピンと来ないだろう?でも、これが事実なんだよ。僕は今でこそ大人しくなったけどかつては近界全体を騒がせた世界界賊の1人……どれだけ悪いことをしたかと言えば国を滅ぼしたりしたかな」
僕も昔は若かった。
奪った黒トリガーを王族の目の前で堂々とぶっ壊したり、指を一本一本切り落としたりとヤンチャをしていた。
「ヤンチャをしていた僕達だけど、ある日
「な!?……空閑」
「コシマエの言っていることは多分、本当だよ」
僕からあまりにもバイオレンスな事を聞かされて頭の処理が追い付かない修。
嘘をついているんじゃないかと疑いを持ち遊真に尋ねるが、僕はサイドエフェクト無効化サイドエフェクトがあるので嘘を言っているかどうかは見抜けない。
僕のことをある程度は知っているので遊真は嘘じゃないと否定しない。
「今はそこを拠点に面白おかしく日々を過ごしている。ああ、勿論この世界を襲撃するなんてバカな事はしていないよ」
どう言った経緯で国を手に入れたかは説明はしない。
そこを説明すると色々とややこしいし、なにより修からの評価ががた落ちする。
「遊真が此処に来る前に居た国と貿易をしていて、こっちの世界に来るならばと僕の上司とかが色々と支援したんだ」
「だから、支援者なのか……」
色々と腑に落ちない点を少しずつ納得に変わっていく。
遊真が此処に来る前に居た城塞都市カラワリアと僕達の国は貿易をした。戦争でなにかと疲弊しきっていたカラワリワに救援物資を送る変わりに色々と貰った。そしてその際に遊真は僕の上司に出会った。
「とはいえ、ボーダーに厄介になる以上はもう支援らしい支援をすることは出来ない」
これからはボーダーで世話になるんだ。世話らしい世話をした覚えはないけどね。
「僕に関してはこんな感じなんだけどなにか質問はあるか?」
ざっくりと語ったので色々と気になる点は多いだろう。
質問の機会を与えると修が挙手してくれたので質問を聞く。
「越前はなんでこっちの世界に?向こうの世界で色々とやっているなら、こっちに居るのはおかしいんじゃ……それにどうしてボーダーみたいに表に出ないんだ」
「おおっと、一気に2つの質問か」
「え、ダメだったか?」
「いやいや、構わないよ」
でも、一度に同時は出来ればやめてほしいな。
答えれない質問ではないけど答え方を間違えてはいけない質問なので、慎重に考えて答える。
「まず、表に出ない理由は……色々とある。一言に纏めれば僕達が表に出ればボーダーに迷惑をかける。4年間も掛けて色々と築き上げた近界民に対する印象やイメージを全て消し飛ばしかねない。それと目的とか色々と異なるんだ。ボーダーは一応、近界民から此方の世界を守ることになっているが、僕達は向こうの世界で面白おかしく過ごすのを主としている。ある程度は仲良くする事は出来てもある程度までだ。ボーダーにだって色々と派閥があるんだし、余計な事はしない方がいい」
これは僕を含めて7人全員の総意だ。世間の目とも戦っている組織に対して後から出て来て横槍を入れるのはお門違いだ。
「ボーダーも一枚岩じゃないし、下手な事は出来ないんだ」
近界民は何がなんでもぶっ殺す派閥もあれば仲良くしようとする派閥もある。
そんな感じの組織と仲良くしようとは下手に言えない……組織の総意をある程度纏まっていないとこちらも困る。
「それで僕の立ち位置だけど、僕はこちらの世界で万が一が起きたら守護してこいとパシられている」
「パシられてるのか」
「ああ……こう見えて偉いんだけど7人の中ではビリでね。都合よくパシられていて遊真の面倒を見たり、万が一なにかあったら自力で対処しろと結構な無茶振りをされているんだよ」
僕達の影響で原作通りに事が進むとは限らない。
僕は主に僕達が原因で起きるバタフライエフェクトの様な物を対処するのが仕事であり、原作への介入はある程度は許されたりしている……が、原作が原作だけにポンポンと力を貸すわけにはいかない。
「そんな無茶ぶりをされてるのか……大丈夫なのか?」
「ああ、気にしないで。馴れてるから」
心配をしてくれてありがとう。
今の段階で話せることは話すと今まで納得できなかった事や腑に落ちない事がスッキリと無くなり、少しだけ表情が緩くなる。やっぱりと言うか僕のことを色々と考えていたんだね。教えてくれって言われたらすんなりと教えてたのに。
「僕のことは困ったら何だかんだで助けてくれる爽やかイケメン(笑)の同級生だと思ってくれればいい……今は君が成すべき事を見つけて成し遂げる。その為にはしっかりと強くなるんだ」
三雲修は千佳ちゃんと遊真と共に遠征を目指している。
遠征を目指すにはボーダーの精鋭であるA級を目指す必要があり、その為には基礎となる強さが必要だ。
「それとボーダーや近界民関係の事で話があるのなら越前と呼ぶのはやめてほしい。一応、一線を敷いている意味合いを兼ねて向こうの世界でも越前でなくコシマエと呼ばれている。今度から相談がある時は越前でなくコシマエと呼んでくれ」
僕がコシマエと呼ばせている理由をついでに教えておく。
転生する度にコロコロと宮野真守キャラに変わり名前も変わったりするので、時に自分の名前が気に食わなかったりする時がある。越前という名前を気に入らないわけじゃないが、あくまでもサーヴァントの1人として踏ん切りをつける為にも名前で呼ぶのを出来ればやめてほしい。
「そうか……分かったよ、コシマエ」
「こらこら、今はクラスメートの越前だよ」
「……君の事をボーダーの先輩に話していいか?」
「ダメに決まってるじゃないか。ボーダー以外にトリガーを持っている組織が居たなんて厄災の種にしかならない……ここはただのお友だちでいようよ」
多分、実力派エリートに僕のことを紹介しようとしている。
未来を視る事の出来る迅なら僕の未来を見て安全かどうかを見極める事が出来ると思っているのだろうが、すごく残念な事に僕にはサイドエフェクトが効かない。更に言えば僕の髪の毛とかをベースに持っている間はサイドエフェクトが効かなくなるお守りを持っているから他の転生者も効かないんだよ。
「友達……」
「そうそう、無駄な争いは持ち込まない……僕達は1人で黒トリガー数百個分の兵力だからね、喧嘩はしたくない」
「なっ!?」
修の驚く反応を見るのは楽しいな。
黒トリガーがどれだけ優れていて一個あるだけでどれだけ戦況をひっくり返すのかを知っているので修は驚きを隠せない。僕達の持っているトリガー(と言うことになっている転生特典)は本当に危険なもので、ある意味こちらの世界の代表だ。
「オサム、コシマエの言ってることはマジだ……コシマエと同じトリガーを持ってる人を知ってるけどおれと迅さんとたまこまの人達が協力しても多分、まともにダメージを与えられない。いや、顔を見ることも出来ない」
「あの人、序列一位だからね」
遊真がこの世界に来る前に出会った僕達を纏めるリーダーを思い出す。
あの胡散臭さがなんとも言えない後輩の転生者で、一番危険な人だったりする。
「序列?」
「ああ、僕達は全部で七人いるって言っただろ。それにランキングみたいなのを一応つけているんだ」
転生者序列は戦闘力以外にも人間として危険とかそういう色々な分野を踏まえた上で決まる。
単純な実力だったら僕は3本の指に入るが変態なのと性格が優しすぎたり年齢が一番下なのを理由にびりっけつだ。
「……本当に色々とあるんだな」
「まぁね……因みにだが僕達の国は色々とスゴいぞ」
色々と知識を蓄えていく修に更なる知識を授ける。
僕達が支配することに成功した国はとにかくスゴいぞ。なにがスゴいかって一言で表せないぐらいにスゴいんだ。
「どうスゴいんだ?」
「フライドチキンが物凄く美味かった」
「遊真、ストップ」
「フライドチキンが名物なのか?」
「いや、ただ単に鶏肉が余ってたからフライドチキンにしたって1位の人が」
「ストップ!!まだ許される範囲だけどストップ!!」
どんな感じの国なのかを語ってくれる遊真だが、それ以上は非常にまずい。
フライドチキンだけだとまだまだ気付かれないがアレとかを話されると非常にまずい。トリガー(と言うことになっている転生特典)のお陰だけど本当に心臓に悪い。
「コシマエ達の国は遊ぶところがとにかくスゴくて、他所の国が遊びに行きたいから和平交渉をするんだ」
「頼む、それ以上は言わないでくれ!!」
「なにをそんなに隠そうとしているんだ?」
必死になって遊真を黙らせに行くがここぞとばかりに喋る遊真。
それ以上は言ってはいけないと僕の直感が言っているが、それでも遊真は止まらない。
「
「……なんて?」
っく……すまない。修に知られてはいけない情報を知られた。
運命/世界の引き金こそこそ裏話
転生者の地球に残っている組はトップからお給料をもらっている。
越前は相撲取りの十両ほどで、深雪は小結ぐらいのお給料をもらっており、彼氏彼女と言った浮いた話を作れないのでお金は使われず貯蓄されており、それなりに金は持っている。