殺さずの剣客、そして人斬りの君   作:ただの物書き

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はじめに忠告しておきます。
クソ長いです、いつのも2倍あります。
精神と身体が休まった時に読むのが良いです。



運命の分かれ道 壱

 何が起きたのか、一瞬、理解が追いつかなかった。

 

「え……?」

 

 ほんの一瞬前まで、自分は赤衣に強く抱き寄せられていたはずなのに、その腕が不意にほどける。

 支えを失った赤衣の身体が、そのまま泥の上へと崩れ落ちようとした。

 

「ちょ、ちょっと……!」

 

 慌てて、沖田はその身体を抱き留める。

 全身から力が抜けきった身体は驚くほど軽く、されるがまま沖田の胸元へともたれかかった。

 

「どうしたんですか……?」

 

 そう呼びかけてみるも、男からの返答はない。

 いつものように、人のいい笑顔を浮かべ、脳天気なまでにお気楽な言葉が返ってくるとばかり思っていた。

 

 なのに……。

 

「あの……目を、開けてください」

 

 沖田は嫌な予感が胸をよぎりながらも、そのまま、ずるずると膝をつき、泥に濡れた肩を恐る恐る揺する。

 

「こんな悪ふざけ、ちっとも面白くありませんよ?」

 

 やっぱり、返事はない。 

 

「あんまりしつこいと、沖田さんも怒りますからね……?」

 

 どころか、男の胸部が微動だにしていないことに、沖田は遅れて気がついた。

 

「起きてください……」

 

 それに目を背けるかのごとく。 

 

「起きてください……!」

 

 揺する――。 

 

「お願いですから……!」

 

 揺する――――。

 

「何とか言ってくださいよ……!!」

 

 ………………。

 

 結局、激しく揺すられた身体が力なく揺れるだけで、男は何一つ応えなかった。

 

「嘘、ですよね……?」

 

 激しい耳鳴りが、沖田の鼓膜をうつ。

 世界から音という音が消え失せたような静寂の中で、その耳鳴りだけが頭蓋の内側を何度も何度も叩いてくる。

 

「……っ」

 

 沖田はきつく唇を噛み締めた。

 

 男には、たしかに無惨な傷がある。

 深く避けた肩口の裂傷。脇腹で開いた古い刺し傷。

 たしかに、それらは人体に多大な影響を齎す損傷だ。

 

 それでも――違う。この傷では、人は死なない。

 

 どこを突けば人は死ぬのか。

 どれだけ血を流せば心臓が止まるのか。

 それを嫌というほど理解している沖田だからこそ、そう断言できた。

 

 だったら、どうして?

 どうして、赤衣の心臓は脈打たず、呼吸すらしていない?

 

「…………」

 

 沖田には、その決定的な要因だけが分からなかった。

 赤衣の男は一体、何を目撃し、自分を何から庇ったのか。

 どうして、死ぬはずもない傷で意識を失い、心肺停止にまで至っているのか。

 

 それらすべてが――どうしても分からなかった。

 

「キ……ギ……、ァ、ア……」

 

 そんな時、不意に耳障りな呻き声が川のせせらぎと共に聞こえてくる。

 

 視線を向ければ、そこには頭蓋を打たれ、地に伏したはずの男が、川中で這い蹲るように身悶えていた。

 泥まみれの片手が川底を掴み、関節を軋ませながら、その巨体をゆっくりと持ち上げていく男の影。

 

 まるで、怪談話にでも出てくる怪物だ……。

 

 そんな、ありきたりで陳腐な言葉しか浮かんでこない。

 けれども、そんな異形を目に留めたからだろう――。

 

 沖田の脳裏で、散らばっていた違和感が一つの答えへと結びつく。

 

「…………――――お前、か」

 

 その声に、感情の起伏など一切ともなってはいなかった。

 いや、怒りさえまだ追いついてはいない。

 

 沖田は赤衣の身体を静かに抱き上げると、濡れた草むらへそっと横たえる。

 乱れた前髪を指先で払い、泥に濡れた襟元を整える所作は、眠っている人へ布団を掛けてやるような、慈しみさえあった。

 

「少しだけ、待っていてください……」

 

 そう言って、沖田は静かに立ち上がる。

 

「タァチェ、チィィ……。セ、ン……セ……ッ!」

 

 男の呻きを耳にしながら、沖田は静かに己の愛刀の柄へと、白皙の指をかけた。

 

 これまで彼女の剣を形作っていた、壬生浪士組として背負うべき責務も、守るべき大義も、すべてが漆黒の純粋な殺意によって塗り潰されていく。

 もはや、普段の陽気な少女の面影はどこにもない。

 今その顔に張り付いているのは、ただただ、目の前で大切な人の命を無残に毟り取られたことへの、筆舌に尽くしがたい激昂と――。

 

 悪鬼羅刹すら裸足で逃げ出すような、おぞましくも恐ろしい――そんな憎悪に塗れた形相だった。

 

「お前かぁッ!!!」

「――キギィェェェェエエエエエエエッッッ!!!!」

 

 沖田の怒号に反応するかの如く、浅瀬の泥を爆ぜさせた薩摩の人斬りが跳ぶ――。

 白目を剥き、完全に意識を失っているはずの肉体は、川底からたった一足の跳躍だけで、沖田たちのいる並木道の地面へと質量を叩きつけた。

 

 それはもはや、常人の出せる跳躍力ではない。

 筋肉が千切れることすら厭わず、肉体を無理やり前へ弾き飛ばしたような、生物として破綻した踏み込みだった。

 

 されど、沖田にとって、そんなことはどうでも良かった。

 

「はぁ――!!」

 

 刀を抜き去ると同時――踏み込む。

 

 ただ怒りのままに放たれる神速の一閃。

 鋭い剣鳴と共に刃が奔り、相手の喉笛を掻き斬るかと思われたそれは――しかし、届く前に男の刃によって阻まれた。

 

「っ――!!」

 

 思わず、舌打ちが出そうになる。

 薩摩の人斬りは、ただ剣を前に出すだけで、いとも容易く沖田の一撃を受け止めてみせた。

 

 剣の振り回しだけで言えば、自分のほうが速いというのに、その動きの小ささだけで、容易く速さを埋められてしまう。

 

 男はまるで沖田の打突など意に介さぬように、彼女の刃を受け止めたまま、無造作にも拳を振り抜いた。

 

「キィエエエエエエエッ゙!!」

 

 猿叫とともに、まともに視認すらさせぬ速度の拳が、沖田の顔面へともろに突き刺さる。

 生々しい打撃音が、鼻骨から頭蓋へと響けば、脳が激しく揺れるのを感じ取った。

 

「がぁっ!」

 

 邪魔な枯葉でも払うかのような腕の振りで、この威力。

 沖田の鼻からは鮮血が飛沫を上げ、衝撃をいなす暇すら与えられず、彼女の小柄な身体は木の葉のように宙を舞った。

 

 そのまま、並木道の裏手にある民家の仕切りをぶち抜き、衝撃のまま庭先へと叩きつけられる。

 背中から白砂を抉り、身体が何度も跳ね、庭石へ肩を打ちつけられたことでようやく止まった頃には、口の中いっぱいに鉄臭い血の味が広がっていた。

 

「なんなんですか……」

 

 沖田は刀を杖代わりに地を突き、震える足へ無理やり力を込める。視界が脳震盪で激しく歪み、夜空も月も滲んで揺れている。

 

 それでも――霞む視界の先、草むらに横たわる赤衣の姿だけは、嫌というほど鮮明に映っていた。

 

「…………」

 

 立て――立て――立たなければ、いけない――。

 

 痛みなど、どうでもよかった。あの背中を、もう二度と動かなくさせた相手が、まだ立っている。

 

 ただ、草むらに横たわる赤衣の姿が、その背中が――彼女の四肢を執念だけで駆動させていた。

 深編み笠の取れた人斬りが、無遠慮にも沖田が吹き飛ばされた庭先へと足を踏み入れる。

 次の瞬間、沖田の身体が再び地を蹴っていた。

 

「薩摩ッ!!」

 

 美麗さも、研鑽された技も、裏をかくずる賢さもない。

 ただ一直線に、ただ首を刎ねるためだけの吶喊。

 

「キィィェェェェェェッ!!」

 

 それを薩摩の人斬りは、片腕だけで大太刀を振るうだけで容易に弾き返した。鈍重なはずの一撃が、嵐のような暴威となって沖田の剣をあらぬ方向へと逸らす。

 

「シィィィィィッ!」

 

 続けざま、男の強靭な膝が沖田の腹部へと深々とめり込んだ。

 

「が、はっ……!」

 

 必然、沖田の身体がくの字に折れ、宙を浮く。

 胃の中身が逆流しかけるのを必死に食いしばるも、無防備に晒されたその滞空の隙を、男が見逃すはずもない。

 容赦のない大太刀の柄による一撃が頬を撃ち抜き、続く二撃目が背中へと強烈に叩き込まれる。

 

「うっぐ――っ!」

 

 人体から聞こえてはならない嫌な破砕音が身体の内側で響く。

 今の攻防だけで、いったい何本の骨が持っていかれたのか、考えるのすら億劫になる。

 

 沖田の身体は紙切れのように叩き落とされれば、口から溢れた赤黒い血が、月明かりに照らされた庭をゆっくりと汚した。

 

「こふっ……がは……っ」

 

 肺腑の空気を無理やり絞り出され、息が吸えない。

 押し出された酸素を取り戻そうと必死に咽ぶも、なにひとつ帰ってこない。

 

 それでも、凄まじい執念と、遅れてやってきた怒りだけで、なんとか刀だけは手放さずにいた。

 強烈な激痛に涙腺が弾け、視界が涙と血に塗れて明滅するも、痙攣する横隔膜を必死に押さえ込む。沖田は刀を待つ手を這わしながら、なんとか立ち上がろうともがいていた。

 

「なにをっ……したんです……ッ!」

 

 ようやく息が戻ってきたとき、沖田は悲痛に似た声音で叫ぶ。

 

「あなたみたいな、化け物にっ……あの人、が……負けるはずが、ありませんっ……!」

 

 しかし、返事はない。

 

「答えろッ!! 薩摩ッ!!!」

 

 そうして、沖田が顔を上げた先にあったものは――。

 

「タァチェ……チィィ……セン……セ……」

 

 涎とともに、意味を成さない言葉を零れ落とす化け物の相貌であった。

 白目を剥いた両目に、口の端から糸を引くように垂れ続ける唾液。全身を痙攣させながら、壊れた絡繰のように首を揺らすその姿に、沖田はもはや絶句することしかできない。

 

 庭先に響く荒い呼吸が零れる。崩れた仕切りからは土煙がなお立ち上り、砕け散った庭石が時折ぱらりと音を立てて落ちた。

 庭木の葉を揺らす夜風すら、どこか息を潜めているようにおもえる。

 

 そんな二人の間に突如、母屋の障子が勢いよく開かれる音が響いた――。

 

「あんた、外は危ないって!」

「だから、様子を見るだけじゃ。盗っ人かもしれんだろ。お前はそいつを連れて中へ――」

「おとっちゃん……?」

 

 障子を開けて母屋から出てきたのは、提灯を手にした家主だった。

 その後ろでは妻が心配そうに戸口へ立ち、小さな娘が眠たげに目をこすりながら、母の着物の裾をぎゅっと掴み、父を見上げている。

 まだ誰一人、庭の惨状には気づいていない様子であった。

 

 が――それは、あまりにも間が悪すぎること。

 

「肉ジャ……」

 

 ぎちり――と、沖田の耳が骨が軋むような音を捉えた。

 まさかと思い視線を薩摩の人斬りへと再び合わせれば、男の首がゆっくりと横へ巡っているのが見える。

 

 その白濁した双眸が向かっているのは、既に沖田ではない――異常を確認しようと顔を出してきた、三人の家族。

 

 瞬間、沖田の背筋に悪寒が走った――。

 

「ッ!! そこの人、逃げてくださいッ!! 早くッ!!」

「あぁ?」

「肉ジァァァァァァァァァァ!!」

 

 突然の絶叫に、家主は反射的に振り返った。

 いや――振り返ってしまった。

 

 視界へ飛び込んできたのは、半壊した家の仕切りと、庭を汚す赤黒い血の池。

 ぼろぼろに傷ついた少女が地面に這いつくばり、それと対峙する大太刀を携えた大男が、生気のない白眼でこちらを見据えていた。

 

「ひぃぃぃぃ、ば、化け物!!」

「お、お前たちっ! 早く、家の中に逃げなさ――!!!」

 

 言うが早いか、父親の身体は反射的に動いていた。

 提灯を投げ捨て、腰を抜かした妻子を庇うように男は身を盾にする。

 

 しかし、そんなお粗末な行動では、人斬りの前で肉壁にすらなり得なかった。

 

「い――――」

「キギ――」

 

 すぱっと一息に真っ二つ――――。

 たった一振りの、それも無造作に振り下ろされた大太刀が、家主である男の声ごと、無造作に縦に両断してみせた。

 

「え……」

 

 ごとり、と血飛沫をあげ倒れる肉の死骸。

 温かい飛沫が、ぱしゃり、と男が庇った娘の右頬を濡らした。

 

 ほんの一拍遅れて――。

 

「か、神様っ! どうか、この子だけは――!!」

 

 と、続けて娘の左頬にも血が飛ぶ。

 

「おっとう……? おっかあ……?」

「――――」

 

 幼い娘は、その場から一歩も動けなかった。

 娘を必死に庇おうと身を囲った女は、頭頂部から顎下にかけても串刺しにされ、既に息絶えている。

 

 それでもなお、幼い瞳は目の前で何が起きたのか理解できなかった。

 泣くことすらできない。悲鳴を上げることすらできない。

 あまりにも突然すぎる惨劇は、幼い心から現実そのものを奪い去っていた。

 

 薩摩の人斬りは、そんな惨憺たる光景を作り上げなんとも思わないのか、突き刺した母親の頭部を乱暴に引き抜くと、今度は娘に覆っていた死体を掴み取り、滴る血もそのままに、その肉を喰らい始める。

 

 ばり、ごり――こきゅっ、こきゅっ。

 

 肉が裂ける音が、静まり返った庭へ湿った音を響かせた。

 

「肉ッ……肉ッ肉ッ……!!」

「そんな……」

 

 幼い娘は、まだ動けていない。

 母親の死骸を貪る人斬りを前にしても、その足に動く気配は微塵もなかった。

 ただ、転がっている父親の半身と、母親の頭部だけを、じっと見つめているだけ。

 

 そのあまりに凄惨極まりない光景に、沖田は言葉も失せた。

 

 ――『奇妙なのは、ここからです。どうも、その辻斬りに斬られた死体は、死肉を荒らされ、極端に血がない状態になるって聞きます』

 

 赤衣と飲みに行く前、原田から聞かされていた奇妙な話。

 それが、こんな形で繋がることになろうとは。

 

「人を――」

 

 薩摩の人斬りに斬られた死体は、野犬に食い荒らされたような無惨なものばかりだったという――その理由が、今まさに目の前にあることなどだとしたら。

 

「人を、なんだと思ってるんです――あなたは……?」

 

 沖田の脳内で、何かが決定的に弾け飛ぶ。

 その勢いとともに、気が付けば激情のまま地を穿っていた。

 

 刃が閃けば、さっきまで五体を苛んでいた激痛など関係ない。すべての理性を消滅させるかのような、ただ一点を屠るためだけの刃が、いま神速を乗せ振るわれた。

 

「――――ッ!!」

「キギィィィッ!」

 

 激しい剣筋とともに、人斬りの服が鮮血とともに大きく裂ける。初めて返ってきた、肉を断ち切ったときの手応え。

 

 しかし、浅い――これでは、反撃を許してしまう余地がある。

 

 ならば――と沖田はすぐさま薩摩の人斬りへの追撃を早々に打ち捨てた。

 

「早く、逃げてください――!」

 

 娘に振り返り、沖田は叱責を飛ばす。大きな声を浴びせられた娘は、びくりと肩を震わせるも、やはり足は動かない。

 このままでは、自分もろとも薩摩の一太刀を浴びることになる。

 

「っ――!!」

 

 沖田は意を決し、地を蹴る勢いそのままに娘の肩を掴んだ。

 一見、乱暴にも思えるそれは、娘の身を反転させると、そのまま優しく背中を強く押してやる。

 

「走って!! そのまま、振り返らず! 早くっ!!」

 

 沖田の気迫に押されたためか、それとも他人にむりやり背中を押してもらえたためか。

 さっきまで地面に足を縫い付けられていたように動かなかった娘が、こくり、と小さく頷くと、よろめきながらも数歩駆けはじめた。

 

 その直後。

 娘へ向いていた薩摩の人斬りの視線を遮るように、沖田の刃が翻るとともに月光を裂く。

 

「行かせません――!!」

「ウギィ――!!」

 

 再び切り裂く沖田の一刀。それは薩摩の人斬りの右目を完全に絶った。

 

 けれど、またもや浅い。

 

 次の瞬間には男の大太刀がデタラメな速度で平然と振るわれる。それを咄嗟に受け止めた刀ごと、沖田の身体は格子戸を突き破りながら、強引に母屋の中へと弾き飛ばすほどの威力をもっていた。

 

 衝撃で両腕が痺れ、指先の感覚がもう消えかけている。

 沖田は畳の上で転がりながらも、素早く腰ひもを外し、己の拳と刀の柄を固定するように、ぐいっと口で噛み締め縛り上げた。

 

 勢いを殺すように受け身を取り、視線を上げる。

 破れた格子戸の向こう側――荒らされた庭先の奥の方には、己が背中を押した小さな娘の背だけが、闇へと遠ざかっていくのが見えた。

 転びながら――泣きそうになりながらも。

 それでもなんとか、生きようと懸命に走っている少女の後ろ姿が見えた。

 

(良かった……逃げられたんですね……)

 

 少しだけ沖田の表情が緩むとともに、横あいから水を差すような刀が振るわれる。

 ごうっと風切り音を放つそれを、沖田が後ろに跳んで回避すれば、右目を抑えた人斬りが唸り声をあげながら部屋に入ってきた。

 

「キサ、まァ……! よくモ、おいの、目を……!」

 

 いつの間に言語能力が回復したのか、薩摩の人斬りは雄弁に恨み節を口にする。

 沖田はそんな戯言を聞き流しながら、ふっと息を吐いた。

 

「それで……なんなんですか、あなたは」

 

 何度目になるか分からない問いかけではあるが、それは最早、答えを求めての問いではなかった。

 今や、あのような悪逆非道の行いをする目の前の怪物に、沖田はなんら解を求めようとは思ってもいない。

 目の前の男をさらに毛嫌いするために吐かれた呪詛の言葉。

 しかし――。

 

「おいは、人斬りジャ……異人ト通じル売コク奴も……己ン腹ば肥ヤスことしか能のナイ上ん者どモも……みナ、天誅スる、人斬りじゃ」

 

 その呻きに応じるように、男は喉を震わせた。

 

  さっきまで白目を剥いていた瞳には、奇妙な理性が混じり始めている。初めて会ったときから今に至るまで、まともに会話すら成り立たなかった人斬りが、はじめて、相手の問いに答えるという偉業を成した。

 それは、人肉を喰らったことで、壊れていた絡繰の歯車が噛み合ったのか。はたまた、それ以外のなにか悍ましい理由から来るものなのか。

 

 まぁ、どちらにせよ――。

 

「そうですか……正直、今となっては、どうでもいいことです」

「おはンは…… 」

「簡単に死ねると思わないでくださいよ。あなたに苦しめられた人の分だけ、私があなたを斬りますので」

 

 すぅっと、細められる冷ややかな瞳。 

 極限の斬り合いにおいて、相手が何を考え、何者になったかなど、沖田にとってはがどうでもいいことだった。

 

 斬ると決めたからには、話し合いも、考察も、憐憫さえも不要の長物。

 ただ眼前の怪物を屠るべき肉塊と定義した瞬間、沖田の思考はどこまでも平坦に、冷徹に研ぎ澄まされていた。

 

「キギギ、死ネェェェェェェェいッ!!」

 

 沖田の言い様に腹でも立てたのか、鼓膜を引き裂くような咆哮とともに、大太刀が家ごと少女を叩き潰さんと振り下ろされる。

 

 頭上から迫る死の鉄槌を眼前に――けれども、沖田は微動だにしなかった。

 その切っ先が鼻先へ届く、まさに最後の一瞬まで、彼女の瞳は薩摩の太刀筋だけを見据えていた。

 

「――――」

 

 そうして、息を吸う暇すらない間隙。

 ほんのわずかな隙間を縫うように身を捩った沖田は、半歩――たった半歩だけを、後ろへと滑らせた。

 

 直後――響く轟音。

 畳が爆ぜ、床板が派手に部屋中に撒き散らされる。

 

 巨大な刃が古びた床へ深々と食い込めぱ、母屋全体が悲鳴をあげたかのように軋みを上げた。

 

「――――!!?」

 

 だがそこで、男の濁った瞳に初めて驚愕が走る。

 

 避けられたから――ではない。

 最速最強の一撃を、寸分違わず見切られた――その事実が、信じ難いこととして本能に刻まれたのだ。

 

 だが――そんな感情を抱くことすらも遅かった。

 床板が砕けた瞬間には、畳へ食い込んだ大太刀を蹴り、沖田は軽やかに宙へ舞う。返す勢いで男の肩口を蹴り抜くと、その反動で人斬りの後ろにある鴨居へ飛び移った。

 

 そうして――。

 

「――」

 

 一閃――まばたきすら許さない一瞬の中で、鴨居を蹴った神速の突きが男の肩口を深々と貫く。 

 即座に刀を引き抜き、返す刃で脇腹を抉れば、さらに身体を捻りながら両下肢へと斬撃を浴びせた。

 

「ギィッ!!」

 

 男は咄嗟に、己を切りつけた下手人へと剛腕を伸ばす。

 が、沖田は着地から流れるような動作で畳の上を転がり、その痩躯が人斬りの股下をするりと潜り抜けた。

 

 そして、振り向きざまに一刀、起き上がる際にもう一刀。

 

 沖田がそのまま男の背を蹴り離脱すれば、続けて柱を蹴り、天井を蹴り、そのたびに男の死角へ潜り込みながら、白刃だけを何度も閃かせた。

 

 狭い籠の中を舞う燕がごとく、速く――鋭く――。

 人外の膂力を誇る怪物であろうと、その刃を容易に捉えることはできない。

 

「キィエエエエエエッ!!」

 

 しかし――対する男も、並の剣客ではなかった。

 捕まえられないのであれば、そもそも捕まえようとしなければ良い。

 

 苛立ちを爆発させるように猿叫を上げた人斬りは、大太刀を翻し、母屋を支える大黒柱へと刀を叩きつける。

 轟音が炸裂すると同時――柱はへし折れ、家全体が悲鳴を上げるように大きく傾いた。

 

 ――飛び回る場所を。その籠を丸ごと壊せば、自ずとその翼は容易くもがれる。

 

 そんな、言うは易く行うは難しな打開策を、されど人斬りの怪力は何の衒いもなく実現してみせたのだ。

 

「っ!」

 

 沖田の足場が崩れる中、人斬りは崩落する土煙を押しのけながら肉薄する。

 

「シィェェェェェェェィィッ!!」

「――ッ!」

 

 足場がなければ、沖田に逃げることなどできようもない。

 瓦礫が降り注ぎ、天地すら定かではない状況下に晒された時にはもう――二人は壊れた畳の上でもつれ合っていた。

 

「くっ……!」

「キギィ!」

 

 沖田は仰向けに押し倒されていた。丸めた身体のまま背を畳へ預け、左足一本で人斬りの右肩を押し返す。両手で突き出した刀は、男の左前腕を貫き、そのまま肩まで串刺しにしていた。

 

 対して人斬りは、覆い被さるように片膝をついている。右手の大太刀は畳へ深々と突き刺さったまま。刃先を支点に刃区だけを押し下げ、沖田の首を断とうとしていた。

 

 だが下りない。

 人斬りの右肩を押さえる左足。

 肩まで貫いた刀を握る沖田の拳が、(はばき)を押し返す。

 怪力で押し込まれてなお、大太刀は一寸たりとも動かなかった。

 

「イェェァァァァァ!!」

「はぁぁぁぁぁぁっ!!」 

 

 互いの全身へ力が籠もる。

 人斬りの体重を乗せた怪力が押し込まれ、首筋へ添えられた刃が、じり、と肌を裂いた。

 負けじと沖田も刀を押し返そうとするが、じわじわと怪物の膂力がなお上回る。

 

「――っ」

 

 このままでは、首が飛ぶのも時間の問題だ。

 だったら――と沖田は迷いなく顔だけを突き出す。

 狙うは、大太刀を握る右手。

 親指の付け根へと歯を立て、強引にそれを噛みちぎるように首を振った。

 

「ッ――!? キサ、ま――」

 

 ぶちり、と肉が裂ける音がする。

 親指が占める握力はおおよそ半分近い。それが突然なくなれば、人斬りが沖田の首に落とそうとしていた力も必然と弱まるというものだ。

 そんな一瞬を、沖田が逃すはずもなく、素早く脚を使い、沖田は人斬りと体の位置を入れ替えた。

 

「――怪物のくせに、指を落とされたくらいで大袈裟ですね」

「っ――――」

「もらいまよ、この腕」

 

 沖田が上になったことで、半ば捻れていた人斬りの左腕が軋みを上げる。

 ぶちゅり、ごき、と嫌な音が響いた。

 肩まで串刺しとなっていた左腕が、肘から先ごと断ち落とされる。鮮血が噴き上がるより早く、沖田はさっと人斬りから距離を取った。

 

「ギィィィィィッ!!」

 

 片腕を失った痛みによるものか。

 それとも、獲物に傷を刻まれ、追い詰められた結果からなのか。

 片腕を失った人斬りは、理性を失った獣のように大太刀を振り回す。

 

 沖田は追撃へ移ろうとした――その瞬間。

 

「っ!」

 

 予測不能の一薙ぎが刀ごと彼女を弾いた。

 肩が嫌な音を立て、右腕から力が抜ける。たった一合、刀を弾かれただけで、肩の関節が外れてしまったのだ。

 

「ちっ――」

 

 刀と手を固定している以上、肩が上がらなければ打ち合うことはできない。

 沖田は降り注ぐ瓦礫を足場にしながら、ひたすら身を躱す。

 人斬りは獲物を逃がすまいと、大太刀を何度も振り下ろした。

 

 天井が落ち、壁が砕ける、崩れた柱が二人の間へ倒れ込む。

 沖田は紙一重でそれらを飛び越え、人斬りは障害物ごと叩き割って追ってきた。

 

 やがて限界を迎えた母屋が轟音とともに崩れ落ちる。

 崩落に呑まれた二人の姿が、そのまま母屋の壁を突き破り、夜の並木道へと転がり出た。

 

「…………」

「キギ……キギギィ……」

 

 互いに血を滴らせたまま、二つの影が向かい合う。

 沖田の右肩は力なく垂れ下がり、人斬りは片腕と片目を失ってなお、大太刀を握り締めていた。

 

 幾度も刃を打ち合わせた結果だろう。

 双方の刀は深く刃毀れし、もはや鋸のような有様だった。

 

 先に動いたのは沖田だった。

 ごきり――鈍い音とともに、自ら外れた肩をはめ直す。

 

「……どうしました」

「――――」

「私はまだ、死んでませんよ?」

 

 その一言に、人斬りの動きが止まる。

 初めてだった。あれほど獣のように襲い掛かってきた男が、明確な警戒を滲ませたのは。

 

 山南は、かつて言っていた。

 沖田が変われたのは、赤衣という楔があるからだと。

 その楔を失ったとき――彼女がどのような怪物に生まれ変わるか分からない、と。

 

 その予測を裏付けるように、沖田は変わっていた。

 

 全身を裂く傷も、赤衣を失った喪失感すらも、何一つ、その瞳には映っていない。

 残されたものは、ただ一つ。

 ――目の前の敵を斬る。

 そのためだけに研ぎ澄まされた意識だけだった。

 

「キサま……!!! キサま、ハァ――!!!」

「……」

 

 目の前にいる少女は、もう先程までの少女ではない。

 そこに立っていたのは、ただ相手の命を刈り取るためだけに研ぎ澄まされた、一振りの刀だ。

 

 沖田の聴覚から耳鳴りが消え、世界から雑音が消えていく。

 代わりに聞こえるのは、足裏が土を噛む音。筋肉の軋み。呼吸。

肩の入り――刃が振り出される、その一瞬前の予兆。

 

 すべてが、手に取るように分かった。

 

 ならばこそ――あとはそれに従い、対処するだけでいい。

 

 異常なまでに、冷めた沖田のその目に、薩摩の人斬りは戦慄し、喉の奥から咆哮を迸らせる。

 

「キサまは、おいがここデ討ツッ!! 先生ノ、為にッ!!」 

 

 沖田はそんな人斬りの気迫を興味なさげに見ると、ゆっくりと言葉もなく平正眼の構えをとった。

 

「天誅、ジャ……キサマハ、コノ国ニャ、要ラン!!!!」

「奇遇ですね。私も同じことを考えていました」

 

 ここまでくれば――言葉も、余韻も、感傷すらも不要。

 次の一撃で、すべてを決める。

 

 その考えが一致したとき、両者の構えが出揃った。 

 月下の並木道に絶対的な静寂が戻る。京の空には、不穏の訪れを知らせるかのように、厚い暗雲が立ち込め始めた。

 

 雨が降る直前の土臭い匂いが、両者の鼻腔を通り抜ける中、薩摩の人斬りと沖田はじろりと互いの目を鋭く尖らせる。

 

 既に、沖田と人斬りの間合いは十歩以上も開いていた。これだけ離れた位置から相手を見据えることができれば、いかなる剣豪であろうとも、最後に踏み込んでくる瞬間にその初動を捉え、一撃で斬殺できる。

 

 人斬りは血塗れの大太刀を片手で持ち上げ天へと突き上げたまま、沖田の構えと目線を、その隻眼で限界まで凝視する。

 沖田の動きが格段に良くなったのは、すべての感覚を研ぎ澄まし、自らを克明に観ているからだ、と怪物の本能が理解していたためだ。

 

 であれば、その視線の先を狂いなく追ってさえいれば、自ずと彼女がどこを狙い、どう踏み込んでくるかを完全に先読みすることができるはず。

 

 であるならば――。

 

「キィエエエエエエエエエエエ!!!!」

 

 肉体の限界を超えた薩摩の人斬りが、大地を蹴って沖田へと吶喊する。

 

 待つ理由はない。

 相手の先読みの、さらに先を読む――。

 武道において、それだけ観るという行為は重要である。

 かの宮本武蔵も、観の目、見の目を説いたほどに。

 

 そしてそれは、沖田も同様だった。

 迫り来る死の暴風をただ冷静に見つめながら、沖田は誰に聴かせるでもなく、静かにその言葉を吐き出した。

 

「……一歩音越え……」

 

 刹那――タン、と短く地を弾く音がした。

 ただ一歩。それだけで世界の音を置き去りにし、最高速へと至る踏み込み。

 人斬りはその異常な神速に舌を巻きながらも、網膜に焼き付いた彼女の目線から、正面突破の軌道を確信し、大太刀を振り下ろそうとする。

 

「チェェェェェェ――!!!」

 

 されど――。

 

「二歩無間……」

 

 さらに一歩――沖田はなんの躊躇もなく、もう一度地を蹴った。

 

 相手が、ここで迎撃の刃を落とす、と予測し意思決定した瞬間、沖田の肉体は、第二段階の加速を敢行してみせたのだ。

 

「三歩――」

 

 そうして、また、最後の踏み込みが、容赦なく間合いを完全に潰す。

 

「――絶刀」

 

 それはまさに、人斬りの思考の間隙を完璧に縫う、本来の速度よりも疾いと思わせる技。

 認識の齟齬を起こした人斬りの脳が、まるで残像でも映ったかのように驚愕に染まってみせた、まさにその時――大太刀が振り下ろされるより一瞬早く、沖田の身体が人斬りの懐へと、直線的に潜り込んだ。

 

 ――『構えと目線で狙いがバレバレでござる。あれじゃ、合わせてくれと言っているようなもの』

 

 もはや目線で狙いがバレようが関係ない。

 その鋭い極限の神速は、奇しくも、かつて初めて赤衣と刃を交えた際、彼に優しく指摘された隙のすべてを完璧に消し去っていた。

 

  あと一寸。それで終わる。

 すべてを、終わらせられる。

 

 そう思った瞬間、血塗られた顔を俯かせた沖田の目尻から、はらりと何かがこぼれそうになる。

 ただ相手の命を刈り取るためだけの怪物として、完全に最適化された刃として――眼前で今も刀を振るおうとする人斬りに、刃を突き立てようとした、その刹那――。

 

 ――『殺しは、いけないでござるよ』

 

 「沖田、殿……」

「――――――――――」

 

 草むらの向こう、かすかな、けれどあまりにも聞き馴染んだ呟きが、不意に彼女の鼓膜を打ってしまった。

 気のせいかもしれない。

 死線の最中が見せた、ただの聞き間違いの可能性だってある。

 

 けれどそれと同時、脳裏に鮮烈に浮かび上がったのは――あの男の、あまりにも能天気な笑顔だった。

 馬校みたいな理想を大真面目に語り、反吐が出るほどの綺麗事を平然と吐く、本当に、どうしようもない馬鹿な人。

 

「……っ!」

 

 でも――あの人がそう言って笑っているときの顔が、あの真っ直ぐな目が――沖田にはなによりも眩く見えた。

 彼の隣にいた時間が、日向の下で縁側に座り、ただ何気ないことを話している時だけが、なによりも忘れられない宝物に思えていた。

 

「――ストォォォォォォォォォッ!!!」

「――――ッ!」

 

 その隙を狙われたかのように、眼前に振り下ろされる薩摩の太刀――。

 

 けれど――沖田はそれすらも上回る剣速で、男の衣服を、肌を、肉を切り裂いてみせた。

 

「あ、ガッ――」

「――――」

 

 凄絶な閃光。

 けれど、その苛烈さに反し、薩摩の人斬りの身体が両断されることはなかった。

 刃は骨の手前で軌道を変え、肩から脇腹にかけてを深く斜めに切り裂く。夜の闇に、鮮烈な血飛沫が舞い散った。

 大太刀がその手から滑り落ち、薩摩の人斬りはその場にドサリと両膝をつく。

 

「……」  

 

 たった一瞬。ほんの火花が散るほどの刹那の躊躇。それだけだった。

 人を斬る刀になり果てていたはずの最後の瞬間、彼女の細い腕は、どうしようもなく力を緩めてしまっていた。

 

 本来ならば上半身を真っ二つに切り裂いていたはずの必殺の剣は、ただの深い切り傷を与えるだけの刃へと変ぜられていた。

 けれど、それで十分だ。

 殺しはしない。この男は奉行所に渡し、今回の顛末と、裏に潜む薩摩藩か過激攘夷派の存在を引きずりだすためにも必要だ。

 

 沖田は、ただただ倒れ伏すその男を泣きそうな顔で睨みながら、そう自身に言い聞かせる。

 

「馬鹿は、私のほうかもしれませんね……」

 

 自身の胸の内に去来した甘さを、沖田は冷徹に自嘲していた。

 この男は間違いなく、今この場で斬り殺しておくべき邪悪だった。情けをかける価値など一寸もない。現に今日だけで、この怪物の手によって三人の無辜の町民が命を奪われている。ここで生かして奉行所に引き渡したところで、待っているのは極刑の一択。ならば、ここで自身の刃を汚しても問題は無い。

 

 だと言うのに、殺さなかった。

 あの赤衣の男が遺した、あまりにも不器用で、あまりにも甘っちょろい願いを、どうしても裏切りたくなかった。

 

 ただそれだけの理由で、怪物になりかけた己の牙を収めてしまったのだ。

 

「…………」

 

 夜の並木道に、ただ重苦しい静寂だけが横たわる。

 ぽつり、ぽつりと、暗雲からこぼれ落ちた大粒の涙が、沖田の頬の血を洗うように伝い、やがて視界を白く染めるほどの凄絶な土砂降りの雨へと変わっていく。

 

 終わった。

 すべてが、終わった。

 

 そう理解して、沖田が草むらへと踵を返す。

 一刻も早く、あの倒れた赤衣を医者のもとに運ばなければいけない。

 

 そう思った、まさにその直後だった。

 

「最後ん最後……ためロウたなァ」

 

 ――背後から迫る、濃厚な死の気配。

 振り返った瞬間、その泥塗れの巨大な五指が、沖田の頭部を正面から鷲掴みにした。

 

「な――っ!?」  

 

 みしり、と不吉な音を立てて頭蓋が軋む。脳を直接揺さぶられるような激痛に視界が火花を散らし、指先から力が抜けて、握っていた刀が地面へと滑り落ちた。

 

 凄まじい膂力によって、沖田の身体が地面から徐々に宙へと吊り上げられていく。

 薩摩の人斬りは――まだ、死んでなどいなかった。

 沖田は必死に両手で男のを掻きむしり、爪を立てて引き剥がそうとするが、岩のように凝固した怪物の握力は微塵も揺るがない。

 それどころか、沖田は決してあってはならない不条理を目撃した。

 

 先ほど、自らの牙で確かに噛み千切ったはずの、男の右の親指――いや、断ち切ったはずの左腕に至るまで。

 その赤黒い断面から、おぞましい数の黒い虫が這い出し、うごめき、肉の繊維を編み直すかのようにして、失われたはずのそれを瞬く間に再生させていく。

 

「あなた……本当に、一体……!?」

 

 恐怖よりも先に、理解を拒む拒絶感が喉を突く。

 男は雨に打たれながら、地獄の底から響くような声で静かに告げた。

 

「おいハ、しんベエ……人斬り、親兵衛ジャ」

 

 名乗る言葉には、もはや獣の咆哮のような狂気はなかった。

 ただただ冷徹に、雨に打たれた人斬りは、そう告げる。

 

「くっ、ぁ――!!」

「礼ァ言う……じゃっド、キサまはいずれ、武市センセイん障害ニなル」

 

 沖田の甘えを正確に見抜き、親兵衛は冷酷に言い放つ。

 再生された左手で、地面に落ちていた大太刀が静かに拾い上げれば、男は月のない夜空へと高く掲げた。

 

「さらバじゃ、名モ知らん剣客……」

 

 慈悲なき一刀が、無防備な少女の脳頭へと振り下ろされようとした、その瞬間――激しい雨の音を鋭く切り裂き、横合いから一条の、あまりにも美しく鋭利な閃光が奔った。

 

 肉を断ち、骨を砕く、確かな手応えの音。

 直後、沖田の頭部を万力のように掴んでいた親兵衛の右腕が、肘の先から鮮やかに宙へと舞い、激しい血飛沫とともに地面へと転がった。

 

「ッ!!?」

 

 突如として右腕を奪われた親兵衛は、拘束から解き地面に倒れ込んだ沖田を睨み据えたまま、凄絶な速度で跳躍し、とっさに大きな距離を取る。

 泥水を跳ね上げ、断ち切られた断面から黒い虫をうごめけば、そのまま、斬撃が放たれた闇の境界を凝視した。

 

 そこに佇んでいたのは、白の入り混じった艶やかな黒髪を長く垂らした一人の剣客だった。

 体躯は小柄で、一見すれば華奢な少年のようにも、あるいは凛とした生娘のようにも見える。

 しかし、その身から放たれる気配は、あまりにも静かで、あまりにも異質だった。

 

「なにモンじゃ、おはん……」

「別に、悪人に名乗るほどの者じゃない」

 

 鈴を転がすような、一切の温度を持たない声音。明確に女性のものであると知れるその響きとともに、女剣客は極端に低い姿勢の残心から、ぱちん、と澄んだ音を立てて刀を鞘に戻した。

 

 彼女の視線は、親兵衛を通り越し、凄惨な血に染まった周囲の並木道へと向けられる。

 

「あの家の惨状、あなたがやったの?」

「……」

「……そう」

 

 無言の肯定を返した親兵衛を、女の双眸が見つめ返す。

 そこにあるのは、怒りや憎しみといった濁った感情ではない。ただ、汚れた塵芥を眺めるかのような、そんな昏い目をしていた。

 

「信頼できる攘夷派と聞いて来たけど、とんだ見当違いだったみたいね」

 

 女の身体が、すう、と再び深く沈み込む。

 構えなどない。にもかかわらず、その指先が柄に触れた瞬間、周囲の空間全体の酸素が凝固したかのような、圧倒的な錯覚がその場を支配した。

 

「――死んで、あの子に詫びたら?」

 

 ぞわり、と肌を粟立たせるような、本物の殺気を、親兵衛の本能が敏感に察知した。

 片腕を失い、さらに正体不明のこの刺客を相手にすれば、今度こそ確実に仕留められる。そう判断したのか、薩摩の人斬りは大太刀を拾い上げることすら諦め、激しい雨の中、漆黒の闇夜の向こうへと音もなく消え去った。

 

 狂気の発露だった戦場は、一瞬にして静まり返る。

 激しい土砂降りの雨の中、残されたのは、血だらけのまま泥を這う沖田と、静かに佇む女剣士の二人だけだった。

 

「あなた、は……?」

 

 痛む身体を引きずり、途切れ途切れの声を絞り出す沖田。

 そんな彼女を、女は一瞥すらすることなく、ただ雨に洗われる夜の闇を見つめたまま淡々と告げた。

 

「気にしなくていい。ただ通りすがった、悪人を許せないだけの浪人崩れだから」

 

 女は容赦なく降り注ぐ雨に身を晒したまま、自身の衣服にわずかに飛び散っていた親兵衛の返り血を、冷たい雨水で洗い流すように指先で丁寧に拭った。

 

「奉行所を呼んであるから、もう直くると思う。普段は死体回収業者と呼ばれる彼らだけど、こういう時には役に立つ…………はず」

 

 そこで初めて、女剣士の視線が、地面に伏したままの沖田へと向けられた。

 憐憫とも、あるいは底冷えするような観察とも取れる視線。

 

「それより、貴女。一つ聞いていい?」

 

 女はさう言うと、沖田の前でしゃがみこむ。

 

「どうして最後、斬るのをやめたの? 貴女がそのまま刃を押し通していれば、あの男は殺せていたのに」

 

 それは、非難でも、責め立てるような口調でもなかった。

 ただ道端の珍しい草花に目を留めたかのような、あるいは子供が素朴な疑問を口にするかのような、どこまでも純粋で、まっすぐな問いかけだった。

 

「それ、は……」

 

 押し黙る沖田の胸の奥で、苦い泥のような感情がのたうつ。

 

 ――活人剣など、ただの綺麗事だ。

 人を活かす剣などという甘えが、この血生臭い動乱の時代でいかに薄っぺらく、何の役にも立たない欺瞞であるかなど、他ならぬ沖田自身が誰よりも理解している。

 

 それなのに、あの赤衣の男が、そう望んでいたから。ただそれだけの理由で、最後の最後で己の剣を鈍らせてしまった。

 

 自分が心の底から共感できてもいない、他人の借り物の理想。そんなぶれにぶれた薄っぺらい信念を抱え込んだせいで、今の自分は「人斬り」にもなれず、さりとて赤衣が望む「誰かを守るための剣」にもなれてはいない。

 何者にもなれぬまま、ただ泥に塗れて這いつくばっている。

 

 そんな沖田の引き攣った沈黙に興味が失せたのか、女剣士は軽く目を伏せ、立ち上がる。

 

「そう……」

 

 女はそれ以上追及することもなく、ただ、激しく降り注ぐ雨水で刀身の血を洗い流すように引き抜いた。

 

「人を斬る覚悟もないのに、そんなものを持たされるなんて、可哀想」

「――――」

「弱いのね、貴女」

 

 そこに侮蔑や嘲笑の響きは一切ない。ただ、道具としての本質から外れた武器を持たされ、勝手に自滅しかけている沖田を、本心から「不憫だ」と、事務的に同情しているだけだった。

 その悪意の無さこそが、今の沖田には何よりも冷酷に突き刺さる。

 

 女は流れるような動作で刀を鞘へと収めた。カチリ、と小さく鳴った鯉口の音が、奇妙なほど冷ややかに響けば、女はふらりと背を向け、雨の向こうへと歩き出す。

 

 ただ、ざーざーと、すべてを白く洗い流そうとするかのように激しく振りしきる、冷たい雨の音だけが、いつまでも京の夜に響いていた。 

 

 

 

 

 

 

 

— 壱 —

 

 屯所の一室には、重苦しい沈黙が満ちていた。

 奥の寝床に横たわっているのは、あの赤衣の男だ。急ぎ呼び出された幕府方の蘭方医が、男の胸元から耳を離すと、信じがたい生物にでも直面したかのように顔を強張らせた。

 

「……信じられませんな。脈はなく、心臓も完全に停止している。医学的には間違いなく死人だ」

 

 蘭方医は恐る恐る赤衣の肌に触れ、声を震わせる。

 

「……だが、なぜか生きている。身体が腐敗する兆候が一切ないばかりか、まるで眠っているかのように微かに温かい……」

 

 蘭方医が赤衣の掛け布団を整えると、困惑と戦慄の混じった顔のまま、ゆっくりと首を横に振った。

 

「医学書にも載っていない現象だ。今後、目を覚ますことがあるのやら……とても私には判断がつかんよ」

 

 不条理な現実を前に、沖田はただ、己の白く染まった指先を見つめることしかできなかった。

 心肺が停止しているのに、生きている。その奇妙な中途半端さは、最後の一歩で「人斬り」にも「誰かを守るための剣」にもなりきれなかった自分への、皮肉のようにも思えた。

 

「そう、ですか……こんな夜更けに診てくださり、ありがとうございます」

 

 静かに頭を下げたのは、傍らに控えていた新選組局長――近藤勇だった。

 

「いやいや、怪我人を診るのは私の役目だからね。それに、会津藩直々の頼みとあっては、断れんよ」

 

 そう言って道具を片付け始めた蘭方医は、ふと、近藤の後方にぽつんと座り込む沖田へ視線を移す。

 血の気の引いた横顔。凄惨な戦いの跡は、彼女の身体にも無惨な傷跡として刻まれていた。

 

「それに、近藤さん。そちらの彼女もかなりの怪我をしている。私が言うのもあれだが、身体はきちんと労らせるんだよ。そんな顔をしていては、治るものも治らん」

「おっしゃる通り、ですね……」

 

 蘭方医の言葉に、近藤は一度だけ、視線を沖田へ向けた。

 本当なら「総司、大丈夫か」と大きな手で肩を叩いてやりたいのだろう。

 しかし、あんな顔の沖田を近藤は今まで見たことがない。

 かつて多摩の郷里で、姉においていかれたときでさえ、あんな迷子の子供のような、今にも消えてしまいそうな顔はしていなかった。

 

 ゆえに近藤も、今の彼女にどう声をかけていいものか、深く思い悩んでいた。かけるべきは局長としての厳格な言葉なのか、それとも兄としての温情なのか。

 かつて「お前のおかげで、俺は空の青さを知った」とまで感謝した少女の崩壊を前に、豪胆な男の胸中にもまた、割り切れない苦い沈黙が広がっていく。

 

「とにかく先生。御心遣い、痛み入ります」

 

 近藤はなんとかいつも通りの声音を絞り出し、蘭方医に深く頭を下げた。

 

 そうして、部屋をあとにする蘭方医が部屋とすれ違いで、張り詰めた部屋の静寂を引き裂くように、二人の男が部屋へと入ってきた。

 

「斎藤一ならびに土方副長、ただいま戻りましたよっと。いやー、どこもかしこも雨のせいで足跡一つ追えやしないねぇ」

 

 入ってきたのは、ヘラヘラとした斎藤一と顔の険しい土方歳三だった。

 近藤は局長という立場のため、沖田とともに屯所に残っていたが、花街での宴の余韻など一瞬で吹き飛ぶほどの緊急事態。会津藩から直々に「薩摩の人斬りを早急に捜索・捕縛せよ」との厳命が下り、彼らは泥水を蹴って走り回っていたのだ。

 土方は濡れた髪を乱暴に掻き揚げると、獰猛な眼光で床に座り込む沖田を睨み据えた。

 

「おい、沖田。説明しろ」

「っ、歳」

 

 開口一番のあまりに容赦のない地声に、近藤がたまらず待ったを掛けようとする。だが、土方はそれを横目で一瞥するなり、片手を上げて冷酷に制した。

 

「近藤さん。これは壬生浪士組としての責務だ。いつまでも、俺たちは同じ道場の仲良しこよしじゃ、いられねぇ」

「だが……」

「まぁまぁ、二人とも落ち着きましょうって。沖田ちゃんも、そんな怖い顔で見下ろされたら、話せるもんも話しにくくなっちゃうかもですし」

 

 斎藤がひらひらと両手を振って、わざとらしいほど軽い調子で割って入る。一触即発になりかけた土方と近藤の間にすっと身体を差し込み、険悪な空気をあえておどけた態度で遮ってみせた。

 

 そんな斎藤の割り込みを強引に押し退けるようにして、土方がさらに一歩、沖田の間近へと踏み込んだ。

 

「――なんで追わなかった、沖田」

「…………」

 

 土方の低く冷え切った声が、部屋の空気を凍らせる。

 すでに会津藩からは、手負いの大男――薩摩の人斬りが京の闇に紛れて逃走したという視認の報告が何件も入っていた。壬生浪士組の総力を挙げた夜通しの捜索も、降りしきる雨に阻まれて見事な空振りに終わっている。

 

「手負いだったんだろ。致命の傷を負わせておきながら、なぜそこで見失う? なぜ息の根を止めるまで追撃しなかった! テメエほどの腕がありゃ、その場で確実にブチ殺せていたんじゃねぇのか!!」

 

 怒号が、四方の襖を震わせる。

 それは沖田総司という強さを誰よりも信じ、あいつの剣が遅れをとるはずがないと認めている土方だからこその、裏切られたような激昂だった。 

 

「だから熱くなりすぎですって、土方さん。そんな大声出したって――」

「歳、落ち着け。お前の言い分は分かるが、まずは総司の言い分も――」

「俺は、至って冷静だ。かまけてんのは、コイツのほうだろ」

 

 土方は近藤の手を払いのけることもなく、ただ、酷く冷え切った声で言葉を返した。

 怒号を響かせた直後だというのに、濡れた髪の隙間から覗くその瞳は、凍りついたように冴え渡っている。わざとらしくおどけてみせた斎藤の手が、その異様な気配を察して、すっと自然に離れた。

 

「斎藤、それに近藤さん。これは同じ試衛館の身内が仕損じたっていう、そんな可愛い話じゃねぇんだよ」

 

 土方は乱暴に掻き揚げた髪から滴る雨水を床に落としながら、静かに、言い逃れのできない事実を並べ立てていく。

 

「今回の失態は既に会津も把握していやがる。手負いの大男――あの薩摩の人斬りが、よりにもよって、うちの隊士と切り結び、そのまま京の闇に消えた……これがどういう意味か、分からねぇ馬鹿はいねぇ」

 

 淡々と紡がれる言葉が、重苦しい現実の重みとなって部屋の空気を圧殺していく。

 

「あの化物が生き延び、京の闇に潜伏し続ければ、会津の要人や公家がいつ裏から首を飛ばされるか分からねぇ。それだけじゃねぇ。致命の傷を負わせながら、あえて追撃を止めた……そう周囲に受け取られりゃ、俺たちは『薩摩と内通し、人斬りを意図的に見逃した』反幕府勢力の最有力候補だ。そうなれば、壬生浪士組は一発で取り潰し。局長であるあんたの首だって、明日には飛ぶんだぜ、近藤さん」

 

 これ以上ないほど鋭利な正論が、部屋の空気を完全に凍りつかせる。

 こいつがやったのは、そういうことだ。

 そう突きつけられた瞬間、部屋には文字通りの死寂が訪れた。

 

 誰も、言葉を発することができなかった。

 斎藤はヘラヘラとしたいつもの笑みを完全に消し、長脇差の柄に手をかけたまま、面白くなさそうに床の一点を見つめるしかない。近藤もまた、土方の言葉に狂いもないことを知っているがゆえに、握りしめた拳を震わせ、言葉を失っていた。

 誰も、沖田を庇う言葉を持てなかった。

 

 静まり返った部屋の中で、ただ外の雨音だけが、容赦なく新選組の足元を濡らすように響き続けていた。

 

「もう一度だけ聞く。沖田、てめぇは何をしていやがった?」

 

 土方の冷徹な双眸が、再び、俯く沖田へと落とされる。

 だが、その鋭い視線が沖田のすぐ背後――寝床に横たわる、赤衣の姿を捉えた瞬間、その眼光がはたと静止した。

 

 ――不殺。

 

 自分が真剣で襲いかかられているというのに、最後まで反撃をしなかった男。この狂った激動の京の街において、あまりにも滑稽で、あまりにも甘すぎる誓いを掲げる男。

 そして、そんな男と沖田は、どこか奇妙に心を通わせていたことを、土方は知っていた。

 白刃のように冴え渡る土方の脳裏に、最悪の仮説が浮かび上がり、一本の線となって繋がっていく。

 

「まさか、お前……」

 

 土方の目が、驚愕と、底知れない冷や水でも浴びせられたかのような戦慄にわずかへと見開かれた。

 この赤衣の男が頑なに貫く不殺という生温い病が、いつの間にか沖田の心にまで伝染していたのではないか。

 あるいは――近藤の命と赤衣の命。それらを天秤にかけたとき、赤衣の命のほうが勝ったとでもいうのか?

 

 いや、どちらにせよ。

 

「斬れなかったんじゃねえだろうな……?」

「――――」

 

 沖田は何も答えなかった。否定も、肯定もせず、ただ小さく唇を噛んで俯くだけ。

 その引きつった沈黙こそが、何よりの雄弁な答えだった。

 

 そんな沖田の態度に、土方は酷く冷めた、底冷えするような目をした。

 

「……そうか。何があったかは知らねえが、迷いのある刃を置いておけるほど、今の京は甘くねぇ」

「おい、歳」

 

 近藤の呼びかけも無視して、土方は懐から一通の書状を取り出し、沖田の目の前へ容赦なく放り捨てた。

 

「将軍家茂公の帰東が決まった。それに合わせ、お前も武州へ帰れ」

「え……?」

「耳が腐ってんのか? 多摩へ帰れ、と俺は言ったんだ。井上兄さんには、俺から受け入れの文を出しておく」

 

 いくぞ、斎藤。といって土方は部屋をあとにしようとする。 そうして、出て行く際。

 

「今のお前はもう、あの時約束したお前じゃねぇよ……」

 

 とだけ、言い残したのだった。

 




なっっっっっっっっが……。

でも、ここまでは1話で描き切りたかったので仕方がないんです。
ほんと、すんません、許してください。これのせいで投稿が遅れたんです。
これでもだいぶ削ったほうなんですよ……もう、疲れて最後はやっつけですが、いいライブ感がでてるでしょ?


まぁ、本文が二万文字くらいあるので、ながながとあとがきまで読む体力も皆様には残っていないでしょうが、さりとて語りたいこともある。


ようやっと、沖田さんが沖田さんをしていますよ。
FGOでもあまりそういった面を見せませんが、なんというか、怖いですよね、こういう人斬りモードみたいなときの沖田さんって。
いつかの「あとがき」でも述べましたが、この章で沖田さんはもう一番の幸せが訪れた人なので……まぁ、あとは言わなくても分かりますよね? ええ、そういうことです。

あ、あと幕末が好きな人ならもう分かっていたと思いますが、薩摩の人斬りは人斬り親兵衛です。
え? 誰だって?
復習されたい方は、どうぞ、ぐだぐだイベント竜馬危機一髪!を読み返してみてくだされ。あっちとこっちの温度差違いで、きっと風邪を引けます。
なんで当作ではこんな化物なのかは、まぁ後々わかりますよ。


そんなこんなありますが、まぁ最後に一応言っておきましょう。
沖田さんを助けたあの人は、いったいどこの熊本藩士なんだいっ!
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