加持とアスカが世界を守るために戦う話   作:井上ああああ

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プロローグです。
以前から書きたかったアスカと加持の出会いの話を書きます。


アスカと加持の出会いの話

2014年、ドイツベルリン。

そこにはネルフドイツ第三支部が存在していた。

黒く長い髪を束ねた長身の男性がそこにいた。

 

名前は加持リョウジ、少し前までは日本の内務省に出向をしていた。

 

それが久々にドイツに帰ってきた。

その目的はセカンドチルドレンである惣流・アスカ・ラングレーのお守りである。

 

だが、加持の本当の目的は別のところにあった。

それはセカンドインパクトを裏で起こしていたある秘密組織の謎を暴くこと。

セカンドインパクトの後に起きた混乱の影響で両親を失い、弟を失った彼にはそれしか生きる道はなかった。

 

内務省・ネルフ・ゼーレ、3足の草鞋を履きながら加持は生きていた。

軽薄な男の仮面をかぶり、情報を探り彼はその直前まで向かいつつあった。

 

 

「加持じゃないか!」

 

 

声が聞こえた。

加持が振り向くと、そこにはダルマ髭とアンコ型の筋肉質な体系をした高雄コウジがいた。

 

 

「コウジ。」

 

「俺もここには入れたのさ。長かったよ、25過ぎて大学に入ってそこから勉強だ。」

 

「お前がまさかここにきているとはな、10年ぶりか?」

 

「まあ、大体そんなもんだ。」

 

「どこの配属だ?」

 

「開発科ついでにバイトで保安部隊に入ってる、楽しいぞ。」

 

 

コウジは踵をかえした。

 

 

「あいつが消えてからもうだいぶたつな。」

 

「ああ…。」

 

 

彼もセカンドインパクトで家族を失った。

少年時代に二人は出会い、ある人物にともに後見人となって育ててもらってきていたいわば義兄弟の仲であった。

 

 

「どこへいったんだか。」

 

「もうあいつの話はやめにしよう。」

 

 

加持は切り出した。

コウジはふとアゴである方角を刺した。

 

そこには赤いプラグスーツをきた金髪の美少女がいた。

白人特有の赤い髪青い目に、アジア人のきめ細やかな肌。

 

 

「あの娘。」

 

「ああ。」

 

「お前のしばらくの間のお守りの対象だ。ガキのお守りを命じられるたぁ、お前も不憫な野郎だぜ。」

 

「かもな。」

 

「あいつのことを知らねーんだろ、あの娘は相当なじゃじゃ馬だぜ。」

 

 

 

惣流・アスカ・ラングレー、彼女の母はゲヒルン時代の科学者であった惣流・キョウコ・ツェッペリン。

経歴も謎が多いが、恐らくゼーレの構成員の一人だったのではないかといわれている。

母を幼くして失ったアスカは孤独な性格をしている。

 

 

「そんじゃ、まあ加持。しばらくは友達でいつづけようや。」

 

「うまいビールの店教えてくれよな。」

 

「へへへ、じゃあとはよろしく。」

 

 

加持は旧友に別れを告げると、アスカの方へと向かっていった。

噂では13歳なのにもう大学に通っているそうだ。

アスカは、白人の男性と話していた。

男性は気づくと加持の方へと向かっていった。

 

「君が新しくきた人か、私はハインリヒ・ゲーリング中佐。」

 

ハインリヒと名乗る男は加持と同年代のようにみえた。

金髪青目で端正な顔立ちをしたゲーリングはハリウッドの俳優のようにみえた。

 

 

「実は私は昇進して、彼女の教育係からこの第三支部の副官になる。仕事が増えて彼女の教育係・護衛を他で探すこととなった。そこで君だ。」

 

「よろしくお願いします、中佐。」

 

「さあ、アスカ挨拶をしなさい。」

 

すると、横にいたアスカは不機嫌そうな顔で加持を睨みつけた。

 

 

「で、アンタなんなの?」

 

 

加持は思わずキョトンとした。

 

 

「え?」

 

「なんであんたみたいなわけわかんないやつがアタシの護衛なのよ。」

 

 

なるほど、確かにじゃじゃ馬だ。

加持は面食らうと少し頭を掻いた。

 

『生意気なガキだな』

 

 

そう心の中で告げた。

 

 

「やめなさい、アスカ。」

 

「だって、ハインリヒさんはずっとあたしといてくれるっていったじゃない!」

 

「それも時間が無くなってしまうんだ、許してくれ。」

 

「イヤだ、あたしハインリヒさんじゃないと嫌だもん!」

 

 

アスカはそういうと、肩を怒らせながらどこかへと去り始めた。

 

 

「まあ、そんなわけで許してやってほしい。」

 

 

ハインリヒは愛想笑いで返した。

そして加持とハインリヒはアスカを追いかけていった。

加持を残して、二人は別室に入っていった。

 

 

「なんであんなやつがアタシの護衛なわけ?」

 

「許してくれ、アスカ。俺も時間がないんだ。ここで多くの事務仕事をしなきゃいけない。あいつと付き合ってあげてほしい。」

 

「なんで?じゃああたしは見捨てられるの?」

 

 

「そんなことはないよ、ボクはいつでも君を見守っている。」

 

 

窓越しに加持はその光景をみた。

なるほど、俺は邪魔者なのか。

アスカはハインリヒにとびついていた。

彼はアスカを抱き寄せ頭を撫でていた。

 

 

その時だった。

ハインリヒの目は冷たく鋭かった。

否、憎悪に満ちていた。

 

 

「大丈夫。」

 

 

ハインリヒは言葉ではまるでやさしくなだめるようであった。

だが、その表情は侮蔑と嘲笑の顔であった。

まるで言葉と表情が一致していない。

言葉ではなだめているが、表情では違う。

 

 

「何なんだこいつ…。」

 

加持は面食らった。

この男は何か怪しい。

 

その時だった。

 

 

ギロッ

 

 

ハインリヒの目が加持とあった。

冷たい目をしていた。

 

 

「じゃあ、二人で話をしてくるよ。ここで待っていてくれ。」

 

 

ハインリヒはドアから外にいた加持の方に向き合った。

 

 

「あのすいませんが、中佐殿。」

 

 

加持は質問をしようとした、その矢先だった。

男は凄く小さい声で言った。

 

 

「ガキが。」

 

 

ガキ?

こいつ、ガキといったのか。

そして、まるでゴミがついたかのようにスーツを払うと加持の方に向き直った。

 

 

「あぁそうだ、二人の親交を深めるためにもベルリンの街を冒険しててはどうかな。」

 

 

「え、ああ…。」

 

 

「車はベンツを使うといい。」

 

 

ハインリヒは鍵を放り投げた。

加持はそれをキャッチするとスーツの中に入れた。

 

 

 

「では…私は忙しいのでこれで失礼するよ。」

 

 

そういうとハインリヒは加持に背を向け去っていった。

加持が茫然としていると、ドアが開きアスカがやってきた。

 

 

「アンタ、さっさとあたしについてきなさい。」

 

 

「え?」

 

 

「ドイツの見学、したいでしょ。あたしがついていってやるわよ。」

 

 

「あ、ああ。」

 

 

アスカは先頭にたつとガレージにずかずかと進んでいった。

やがて黒いベンツが目に入った。

加持は鍵でドアを開けて、後部座席にアスカを案内しようとした。

 

 

鼻でため息をつくと、アスカはずかずかと後部座席に入っていった。

 

 

『なんなんだこいつ』

 

 

加持はため息をつくと、運転席に入り込んだ。

車は進んでいった。

 

 

「その先に中佐オススメの食堂があるらしいわよ、そこまでお願い。」

 

 

 

 

アスカは不機嫌そうに言った。

そして、手元にあったゲームをし始めた。

加持はため息をついた。

流石にここまで不機嫌にされちゃ黙っていられない。

 

 

「なあ、なんなんだお前は。」

 

 

後部座席にいたアスカは素っ頓狂な声をあげた。

 

 

「はぁ?」

 

「いやな、お前…流石に俺とお前は初対面だろ?ちったぁ愛想よくしてくれなきゃ俺のメンツも丸つぶれなんだよ。わかるか?下手したらクビになるかもしれないんだ。お前もそこそこ大人なんだったら俺のメンツぐらいはたててくれよ。」

 

 

アスカは少し窓から外をみると小さい声でいった。

 

 

「ごめんなさい。」

 

 

アスカは暗い顔をしていた。

 

 

「中佐のことが好きなのか?」

 

「うん、だって彼は私のことを褒めてくれるもん。頭を撫でてて抱きしめていっぱいいっぱい褒めてくれるんだもん。」

 

「そうか…。」

 

 

それは本心なのだろうか。

この子をあえてヨイショして持ち上げて乗せている、それだけでしかないようにみえる。

そして、あの内心見下したような態度。

何か嫌な物を感じる。

 

 

「なあ、自己紹介がまだだったな。俺は加持リョウジ。」

 

 

 

加持が自己紹介をしようとした矢先だった。

アスカはゲームに集中し始めていた。

無視だ。

 

 

「あのな、ヒトの話は聞いてから遊べって…ママにいわれたことあるのか?」

 

「ママの話はしないで。」

 

 

加持は舌打ちをした。

そうだ、この子のママはすでに死んでいる。

 

 

「すまん…。」

 

 

加持はベンツを高速道路の脇に止めた。

そんな時だった。

 

地鳴りが響いた。

そして、轟音とともに何かが近づくのを感じた。

 

 

「なんだ?」

 

 

加持はサイドミラー越しで確認しようとしたその時だった。

 

 

ガッシャーン!!!!!

 

轟音と窓ガラスが割れる音が響いた。

 

 

 

「うわああああああああああああああ!!!」

 

 

加持は悲鳴を上げると、世界が横転するのを感じた。

その中で彼は横から車が突っ込んできたことに気が付いた。

 

 

「畜生なんなんだ。」

 

 

 

加持は舌打ちをした。

そして、ドアを蹴り飛ばし外の世界にでようとしたその矢先だった。

男たちの腕がのびてアスカをつかむのが見えた。

 

 

「イヤ!!はなして、嫌ァぁあああああああああああ!!!!!!」

 

 

加持はすぐさまドアから出た。

だが遅かった。

男たちは素早くアスカを捕まえると、そのままバンに素早く乱雑に投げ込んだ。

 

 

「やめて!!!やめてよ!!!!」

 

 

アスカはあばれもがこうとしたが、男の一人がアスカの首にスタンガンを押し付けたことでとうとう気絶した。

バンは立ち去ろうとした。

加持を置いて…。

 

だが、加持は冷静だった。

 

スーツの中から小さなマイクロGPSを取り出すとそれを投げて、バンのナンバープレートの近くに張り付けた。

そして、銃を取り出し撃つふりをした。

無論ポーズのためだ。

 

やがて、バンは姿がみえなくなっていった。

 

 

 

「やれやれ、これが最初の仕事ってやつか。」

 

加持はふと、横をみた。

そこには呆然とその様をみていた男とオートバイがあった。

 

 

「すまん、アンタそのバイクを貸してくれ。」

 

「え?」

 

「悪いな、請求はネルフにいってくれ。」

 

「え?」

 

 

困惑する男を置いて、加持はすぐさまバンを追いかけていったのだった。

 

 

数時間後、山岳地帯。

そこに破棄された工場があった。

かつてはそこで多くの物が作られていたが、ベトナムにうつったことで閉鎖されたものだった。

もう夜になっていた。

山々の中、電気がついているのはその工場だけだった。

 

 

アスカはようやく目覚めた。

両腕両足は縛られていた。

そして、椅子に座らされていた。

 

 

 

「ここはどこなの。」

 

 

周囲には銃を持った黒服の男たちが集められている。

 

 

「ねえ、どういうことなの?なぜこんなことするの。」

 

 

アスカの声を無視するように男たちは去っていった。

一人だけは別だった。

その男だけガスマスクのようなものをつけていた。

 

 

「こんなことしてただで済むと思って…。」

 

「思ってるさ。」

 

 

この声、聞いたことがある。

まさか…。

 

 

「ハインリヒさん?」

 

 

アスカは震えた。

嘘でしょ。

まさか、ハインリヒさんが誘拐したの?

信じたくない。

 

 

「うそでしょ!!!」

 

 

声の主はガスマスクを外した。

端正な甘いマスクのそれはハインリヒだった。

 

 

「どうしてこんなことをするの?私はあなたを信じていたのに…。」

 

 

ハインリヒはムッとした表情に変わった。

アスカの知る彼ではなかった。

 

 

「うるせェんだよ!!!このクソアマがッ!!!!」

 

 

「えっ…。」

 

 

困惑しているアスカを無視するとハインリヒは大きな腕を振るいアスカの顔面を殴り飛ばした。

アスカの唇は切れ、血があふれ出た。

 

 

「うっ!」

 

 

地面に倒れると、アスカはハインリヒをみつめた。

ハインリヒはそんなアスカを無視するとなんどもなんども腹部を蹴りつけた。

 

 

「いいかッ、ここで働いてるより倍の金をな…。アメリカの企業が払ってくれるんだよ!!!そのために必要なのがてめぇなんだよ!!!てめえをネタにネルフを脅すそうだぜぇ!!!」

 

 

「うぐっ!」

 

 

アスカの腹部に激痛が走った。

1発、2発、3発…何度も何度も続いた。

 

 

「五体満足ならなんでもいいとよ、あいにく俺は軍医の経験もある。お前がいくらケガしても俺は手術で治せるわけだ。ってことはな、お前をいくらでもけっていいってわけだなァっ!ははははっ!」

 

 

アスカの世界がかすんだ。

ママに見捨てられ、パパも消えて独りぼっちになった私のそばにいるのは彼だけだった。

なのに、そのはずなのに…。

その彼は自分を見捨てた。

 

 

「おいおい、いつもの威勢はどこにいったんだ。アスカ。言ってやるよ。てめえは不愉快なんだ。ずっとずっとこの機会を待っていたんだよ。その威張り散らした態度も傲慢な性格、その癖に俺にやたらと擦り寄る姿勢も全部全部全部全部!!!反吐が出るんだよ!!あーはっはっはっは!」

 

 

ハインリヒは大声で笑った。

その笑い声は周囲に響いていた。

アスカは自身の無力さに打ちひしがれた。

そして、意識が薄れつつあるのを感じた。

 

「殺してやる。」

 

声が出た。

 

 

「あ?」

 

「殺してやる。」

 

「ほーう、そうか、じゃあ立ち上がって殺してみろよクソアマ!どうだぁ?おい!立ち上がれ!殺してみろ!できねえんだろできねえんだったら最初から言うなよ!クソアマが!!あっはっはっはっは!」

 

 

ハインリヒは馬鹿笑いをした。

そして、もう一発アスカに食らわせようとしたその矢先だった。

 

 

 

プツッ

 

 

ブレーカーの音が聞こえた。

 

 

「畜生、なんだなんだ。」

 

 

ハインリヒは懐中電灯をつけた。

そんな時だった。

 

 

「うわああああああああああっ!!!」

 

 

悲鳴が聞こえた。

男の悲鳴だ。

 

また別の悲鳴が聞こえた。

 

 

「うわあああああああああああああっ!!!」

 

 

ハインリヒはアスカの首をつかむと無理矢理立たせた。

そして、彼女の頭に銃を突きつけた。

足元には懐中電灯を置いていた。

 

 

「一体何だッ!!!」

 

 

ネルフの保安部はここまで早くない。

だとしたら別。

別のヤツ。

 

 

 

「誰だッ!!!」

 

 

ふと、また電気がついた。

そして、ドアがゆっくり開くのがわかった。

中から一人の男が出てきた。

青いワイシャツを着た赤いネクタイの男。

加持リョウジだ。

 

 

「ハインリヒさん、アンタぁ…レディに暴力を振るうなんて男としてサイテーだと思わないか?」

 

 

 

アスカは気が付いた。

 

 

「あんた…なんでこんなとこに…。」

 

 

「君を守るためだよ。アスカ。君はな、世界で一番大事な女の子なのさ。」

 

 

ふとみると、加持の頭には血が出ていた。

恐らく内部で少しやられたのだろう。

加持はそれを気にもかけていなかった。

 

 

「ほうほうそうかそうか、加持くんよ。まさかお前ひとりできたわけじゃねェだろうな。」

 

「一人だ、お前みたいな輩には俺一人で充分だ。」

 

 

ハインリヒの頭の血管がキレた。

 

 

「いってくれるじゃねェか…なあおい。お前に俺の本当の力をみせてやる。」

 

 

 

ハインリヒは銃を捨てた。

そして、作業用机にあったレイピアを取り出すと振りかざした。

 

 

「俺はな、昔フェンシング部の主将だったんだ。お前に今日はその強さを見せてやる…いくぞォ!!!」

 

 

ハインリヒはレイピアを持つと、加持に素早く突き刺そうとした。

加持はそれをすぐに避けた。

 

「なにっ!」

 

 

レイピアは壁に突き刺さった。

そして、加持は素早く拳を突き出すとハインリヒの顎めがけて勢いよくアッパーカットを繰り出した。

 

 

 

「ぬぼっ!!!」

 

 

 

ハインリヒの体は空中に飛びあがるとそのまま地面に倒れ伏した。

加持は彼を無視すると、そのままアスカの方に向いて、両手両足の拘束を素早く解いた。

そして、アスカを胸の中で抱き起した。

 

 

「バカね、わたしのためにケガしてるじゃない。」

 

 

アスカは思わずそういった。

すると加持は微笑んで返した。

 

 

「こんなのはな、ケガの一つにも入らない。」

 

 

その顔は輝いてみえた。

アスカの胸の奥がズシリと重くなった。

そして、思わず頬を染めてしまった。

 

 

「待てェ!!!」

 

 

声だ。

 

 

「へへへ、てめえ…これで終わったと思うなよ。」

 

 

ハインリヒ。

手には銃を持っている。

 

 

「もうやめろ、ハインリヒ。お前のやったことはすでにバレている。俺はお前を殺す気はない。誰も殺す気はない。外にいる連中も眠ってるだけだ。」

 

「なに?命乞いか?フフフ…。」

 

「俺はやめろといったんだ。」

 

「助けてほしいとなぜ素直に言えねぇんだ?加持くんよォ…。」

 

「そうか…。」

 

 

加持はアスカをお姫様抱っこの姿勢で抱えた。

アスカは不思議と抵抗はしなかった。

 

 

「なあ、ハインリヒ…俺はお前に嘘をついた。」

 

「なに?」

 

「俺は一人じゃあない。」

 

「なにっ!!!!??」

 

 

その時だった。

またドアが開く音が聞こえた。

 

 

「お邪魔します。」

 

 

 

低い声が聞こえた。

そこにはハインリヒより大きな巨体をした男がいた。

高雄コウジ…。

 

「あ…。」

 

 

ハインリヒは思わずだしぬけに言った。

コウジはその大きな腕で張り手の形を作ると、ハインリヒの頬めがけて張り手を食らわしたのであった。

ハインリヒの体は3m先の壁を突き抜けると、そのまま外の世界に放り出されたのだった。

そして、けいれんすると地面に倒れそのまま気を失ったのだった。

 

 

「元相撲部主将の張り手はいい気分だったか?」

 

 

コウジはそういうと、加持とアスカの方に振り向いた。

 

 

「あとの連中は俺が全部始末した。あとのことは任せろ。」

 

 

「助かったコウジ、じゃあな。」

 

 

加持はアスカをお姫様抱っこのまま歩いていた。

ふと、加持の腕の中に何か濡れているのがみえた。

 

涙。

 

アスカは泣いていた。

怖かったんだ。

アスカは加持のシャツをつかんでいた。

加持は黙ってアスカの涙を受け入れた。

 

加持はバイクに乗ると、アスカを後ろに乗せた。

加持の背中に抱きながらアスカは再び泣きじゃくった。

その後はアスカを宿舎まで送ると、加持はバイクの持ち主に謝罪と謝礼金をもって返していった。

 

 

後日。

加持は自分の執務室で寝ていた。

頭には包帯を巻いていた。

 

 

「加持センパイっ!」

 

 

声が聞こえた。

アスカの声だ。

 

 

「アスカっ?」

 

 

「これからは加持センパイっていわせてね。」

 

 

「なに言ってるんだアスカ。」

 

 

アスカは笑っていた。

ふと、手元には大きなチョコレートがあった。

 

 

「おっ!うまそうだな!それ!くれるのか!?俺にっ!ありがとう!」

 

加持は思わず言ってしまった。

その時だった、アスカは加持に飛びつくとその頬にめがけてキスをした。

余りの出来事に加持はあっけにとられた。

 

 

「おい!なにをっ!」

 

 

アスカはいたずらそうに微笑むとチョコを置いて去っていったのだった。

そこにはドイツ語で「アスカお手製」と書かれていたメモがあった。

 

 

「全く…。」

 

 

加持は包み紙をあけるとチョコを取り出した。

 

 

「うまいじゃないか…。あいつにこんな才能があったなんてな。」

 

 

アスカにキスされた頬を優しく触り、照れ臭そうに笑いながら加持はチョコをつまんでいた。

かわいいところがあるじゃないか。

あいつ。

加持はアスカに少しばかりの愛おしさを感じるようになった。

 

 

 

その様子をだまってみていたアスカはさらに微笑んだ。

ハインリヒに対して抱いていた気持ちは違う、また別の感情がアスカの中に芽生えた。

 

それは愛であった。

 

 

 

 

数日後、ドイツの刑務所。

そこにはハインリヒが収監されていた。

彼は震えていた。

 

失敗した。

ハインリヒに依頼をしたアメリカの軍需産業の大物。

その男は決して、失敗を許さない。

ゼーレにも大きな関わりをもつ人間である。

 

その時だった。

彼の牢屋の扉が開くのがみえた。

 

 

「やあ、ハインリヒ。」

 

 

中からはサングラスをつけた盲目の黒人の老人がいた。

 

 

「君は失敗をした、それは何を意味するかわかるな。」

 

 

老人は杖を取り出すと、中から仕込み刀を取り出した。

 

 

「やめてくれ…俺は…俺は…。」

 

 

独房の中にはハインリヒの悲鳴が聞こえた。

やがて、収まると地面で息絶えるハインリヒの姿のみがあった。

老人は背を向けるとそのまま去っていった。

 

老人の名前はモーガン・ジャクソン。

世界最強の暗殺者であった。

 

 

「惣流・アスカ・ラングレー、会えることを楽しみにしているよ…。」

 

 

老人は鼻歌を歌いながら、刑務所を後にした。

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