加持とアスカが世界を守るために戦う話   作:井上ああああ

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マリの正体がシンエヴァをみてもわからなかったので、独自設定をつけます。


アスカが祖父の本性を知り、加持が救いに行く話

大西洋、スペインの沿岸地域。

黄色いエヴァンゲリオンは海に浮かんでいた。

複数の戦艦や客船が破壊されているのがアスカにはみえた。

また、5年ぶりの戦闘にアスカは興奮していた。

 

住民の避難は済ませている。

 

災害救助や海難事故にかりだたされるのは悪い気持ちはしなかった。

人々の羨望の目が自分には感じ取れた。

今やエヴァは機密ではない。

公然の物として知られている。

多くのファンレターが届いたり、年下の少女が自分にあこがれていると聞いた時は心が震えた。

 

だが違う。

 

アスカがやりたいのはやはり、戦闘なのだ。

 

目の前に浮かぶ黄色いエヴァはX9という数字があった。

 

 

「エヴァ9号機ってところかしら。」

 

 

するとモニター上にミサトの顔がみえた。

 

 

「あら、ミサト久しぶり。」

 

 

ミサトは少し顔に皺が増えていたようにみえた。

 

 

「アスカ、久々の戦闘だけど任せていいかしら?」

 

 

「ええ、任せなさい!過去・現在・未来においても私は最高なのよッ!!」

 

 

この前みたプロレスの映像に乗っていた。

ピンク色のコスチュームをしたレスラーはそんなセリフを吐いていた。

プロレスラーらしからぬ線の細い体格、そしてテクニカルな動きにアスカは魅了された。

かつてファンが多くいた彼のような存在に自分がなれるなら、なってみせよう。

 

専用機に吊り下げられていた弐号機は大西洋上に浮かんだ。

弐号機の四つある緑色の目は光輝いた。

 

アスカは弐号機とともに地面に降り立った。

海の感触がエヴァを通して分かった。

 

冷たい。

 

弐号機の赤い体は海の中でも際立っていた。

 

 

「さあ、かかってきなさい。」

 

 

黄色いエヴァは弐号機に気づくとゆっくり振り向いた。

まるで参号機や四号機をそのまま黄色くしたようなものだった。

 

 

「あれを誰が操ってるのかしら…。」

 

「あれは私たち公式の物ではないわ。中には誰も乗っていないダミープラグを使用しているようね。なるべく機体は壊さないでやってくれたら助かるわ。」

 

 

リツコの声だ。

 

 

「赤木博士、久しぶりですね。」

 

「アスカ、挨拶はいいからあいつをやっちゃって。不愉快よ。」

 

「わかりましたッ!」

 

 

すると黄色いエヴァはグルル…と唸り声をあげた。

 

 

「唸り声をあげている。」

 

 

まるで暴走した初号機のようだ。

勝てるのかな。

アスカがそう思った時だった。

 

 

 

ぐおおおおおおおおおおおおっ!!!!

 

 

黄色いエヴァは獣のようにかけると弐号機にとびかかった。

 

 

「やばいっ!!!」

 

 

弐号機はすぐさまATフィールドをはった。

この感触も久々だ。

ずいぶんとご無沙汰。

黄色いそれはATフィールドを侵食しようとしていた。

 

「でも負けないわっ!」

 

 

アスカは掛け声とともにATフィールドを強く、より強く張り巡らせた。

 

 

「アスカッ!!!!」

 

 

ミサトの声だ。

心配性なヤツめ。

アスカはほくそ笑んだ。

 

 

「アンタは自分の心配でもしてなさい、ミサト。」

 

 

アスカは倍の力で黄色いエヴァを押し返した。

黄色は恐怖の色。

だが、私に恐怖などない。

 

 

「くらえッ!!!」

 

 

JAの力、希望の力を得たアスカは黄色いそれに負けることなどなかった。

腕を振るうと、そのATフィールドは黄色いエヴァの腕を貫いた。

赤い血が大西洋に浮かび上がった。

とともに、黄色いエヴァの片腕がまるで引き千切れたように吹き飛ぶのがみえた。

 

 

「なんだ、弱いじゃん。」

 

 

アスカは安心した。

今まで戦ってきたすべての敵でも一番弱い。

そして、トドメを指すべく拳を突き出した。

 

その時だった。

黄色いエヴァは口を開くと、弐号機の肩にいきなり噛みついてきた。

 

 

「ああああっ!!!」

 

 

激痛がアスカの左肩に響いた。

黄色いそれの牙はまるで肉食獣のようにとがっていた。

 

 

「こいつっ!!」

 

 

アスカは右腕を使い黄色いエヴァの頭をつかんだ。

痛いッ…。

 

 

「でも負けないから!」

 

 

弐号機は力づくで黄色いエヴァを引き離すと力強く放り投げた。

戦艦の残骸の中に倒れた黄色いエヴァはダランと手足が垂れていた。

まるで力尽きたように…。

弐号機は飛び上がると膝をL字状にして、黄色いエヴァの顔面めがけて膝をぶち当てた。

黄色いエヴァはけいれんとともに手足の動きが止まった。

 

 

勝った。

 

 

弐号機はすぐさま、黄色いエヴァの装甲を引き離すとコアを探した。

 

あった。

 

むき出しのコアが浮かび上がっていた。

 

 

「これで終わりだからね!」

 

 

弐号機はそのコアをつかむと力任せに引き千切り粉々に砕いた。

黄色エヴァは動きを止めるとそのまま息絶えていった。

アスカはため息をつくと、そのまま丘に腰かけた。

ふとみると、多くの人々が手を振っていた。

 

 

彼らからすれば私はヒーロー。

気分がいい、ヒトに感謝され戦闘に勝つのは…。

 

 

 

「やったわ、加持さん。」

 

 

 

ヴィレEU支部発令所。

加持はようやく気が付いた。

 

 

「あ、ああ…。」

 

 

「みてくれた?」

 

 

「え、ああ…。」

 

 

加持はみていた。

だが、何かがおかしい。

ダミープラグを使っているとはいえ、途中動きが止まっていた。

まるで弐号機の動きを誘っているかのように。

 

 

そして、アスカの祖父を加持はみていた。

戦闘中、心配すべきなのにこの男はほくそ笑んでいた。

あんなに感情的になっていたのに…。

この男、本性はなんなんだ。

シンジとケンスケはお互いに手を取り合い勝利を楽しんでいた。

そして、マリはアスカの祖父をみて怯えていた。

 

 

よく考えればこのマリの正体もつかめていない。

よくわかっているのはかつてあったイギリス支部にいたこと、弐号機パイロットの候補者だったこと。

実はソーンバーグに頼み、この女の本性を探らせている最中だ。

 

 

すると、加持のスマホがなるのが見えた。

 

 

「はいっ。」

 

 

加持は手に取った。

 

 

「加持か?」

 

 

ソーンバーグ、CIAの友人だ。

 

 

「なにかわかったことは。」

 

「二人だけで会いたい、いつもの場所で待ってる。午後7時で。」

 

 

いつもふざけてばかりいるヤツの声が真剣そのものだ。

かなり重大なことだろう。

 

「わかった。」

 

 

ソーンバーグいきつけのストリップバー。

そこで奴は待っている。

 

 

「加持さぁん!」

 

アスカの声だ。

無線を通してしゃべっているようだ。

 

 

「ちゃんとみてくれていたの!?あなたのために戦ったのよ!」

 

 

「いや…すまん。」

 

 

「何それっ!ひどいわよ!最近加持さん帰りは遅いし仕事ばっか!冷たいじゃない!」

 

 

「こっちにだって事情はあるんだ。」

 

 

「そればっか、もういいわよ!加持さんのバカッ!」

 

 

 

アスカは不機嫌そうに声を出すと無線を切った。

ケンスケはほくそ笑んでいた。

 

 

「アスカ、もらっちゃっていいすか。」

 

 

「ダメだ。」

 

 

「なんで?」

 

 

「あと、この場はお前に任せるからな。」

 

 

数時間後、弐号機を連れた専用機はEU支部に戻ってきた。

アスカは不満そうにケイジからでてきた。

 

最近加持は冷たい。

仕事ばかりだ。

何かと忙しいのはわかるが、最近食事すらまともにしてくれない。

苛立たし気にアスカは歩いていた。

 

 

「いやぁ~見事じゃった!」

 

 

祖父の声だ。

 

 

「お爺ちゃん!」

 

 

祖父は涙ぐんでいた。

その横にはシンジとケンスケがいた。

 

 

「アスカよ…お前は立派に戦った。」

 

 

アスカは祖父にとびつくと抱きしめた。

祖父も抱きしめてそれに答えた。

 

 

「お前はよくできる、自慢の孫じゃ。キョウコにもみせたかったのォ~。」

 

 

褒められた。

ママにも褒められたことがない私が褒められた。

アスカは歓喜で震えた。

 

 

「お爺ちゃん…。」

 

 

ようやく認められた。

長い間戦い続けた私の人生にようやく勝利がみえたのだ。

アスカの目に涙が浮かんだ。

ようやく得た。

本当の家族を。

 

長い間、探し求めていた。

それは家族の愛情だった。

 

ママが私を残して死に、パパは新しい奥さんにかまけていた。

ずっと、ずーっと孤独だった。

 

だが、もう違う。

友人もいる、祖父もいる。

 

今の私は幸せだ。

 

 

「じゃあ、アスカ。僕はホテルに戻るよ。明日の便で帰るからお爺さんと楽しくしててね。」

 

「ありがとう、シンジ…アンタがいなけりゃこの人はこなかったわ。」

 

 

「いいんだよ、アスカ。」

 

 

シンジはアスカに手を振るとケンスケの腕をつかんだ。

 

 

「お前もこっちにこいよ!」

 

「シンジ…お前なんか変わってないか?性格。」

 

 

祖父は涙を浮かべていた。

そして、声を震わせ再び泣いていた。

 

 

「よかったのォアスカ…お前は友人に恵まれておる。あの子、男の子優しい子じゃ。ワシの気持ちを察して二人だけにしてくれると。まあわしがそう頼んだことじゃが‥。」

 

「お爺ちゃんありがとう。」

 

「いいのォ、友達。ワシにはそんなもんおらん。ずーっとずーっと研究ばかりじゃったので…。だからキョウコもわしに愛想をつかして…。」

 

「お爺ちゃん。」

 

 

祖父は震えていた。

背は高いが、もう75を超えている老人だ。

聞けばゼーレに追いかけられていたという。

 

アスカはまだ性格が幼稚だったが、それでもわかる。

あの黄色いエヴァはゼーレの物。

 

この祖父はそのゼーレに怯えていた。

どれだけ怖かったのだろう。

それはわからない。

 

だが、祖父だけは誰にも殺させはしない。

大事な家族だから。

 

できればママを抱き寄せてあげたかっただろう。

それもできなかったのだろう。

 

 

「お爺ちゃん、心配しないで。私がついてる。ママにあげられなかった愛も私にちょうだい。」

 

「優しい子じゃ悲しいのォ…悲しいのォ…。」

 

「そして、守ってあげる。あなたを傷つけるすべての悪から。ゼーレから。何があったかすべて聞かせて。ママの話も。」

 

「アスカ…。」

 

「ご飯を食べに行きましょ!」

 

「なんという言葉じゃ、わしのようなみっともない老人には身に余るもんじゃ。ありがたく受け入れよう。」

 

 

加持さんが冷たくてももういい。

祖父がいるのだから。

そして、せっかく手に入れた家族、手放したくはない。

アスカは強く強く祖父を抱きしめた。

そして、二人はドイツの夜の街へと姿を消した。

 

 

 

午後7時。

 

ストリップクラブは会場していた。

ここの経営者であるロシアンマフィアはソーンバーグの知人が経営していた。

ハゲ頭の巨漢は加持を睨みつけると不愉快そうにドアを開けた。

 

 

「ありがとう。」

 

 

こいつは日本人である俺を内心下にみている。

よくあることだ、レイシスト。

 

加持はつかつかと歩くと、そこにソーンバーグがいた。

 

 

「おい、用ってなんだ。」

 

 

ソーンバーグは周囲に気を使っていた。

そして、ファイルを手渡した。

 

「ゼーレのことさ。」

 

「なに?」

 

「ゼーレだよ、ゼーレ。新しいリーダーのことがわかった。」

 

「本当か?」

 

「ああ、さっき聞いた。スペインで暴れた新型エヴァのこともわかった。」

 

 

加持はさっそくファイルを開いた。

そんな加持をみるとソーンバーグ話をつづけた。

 

「今のゼーレはほとんど宗教団体や秘密組織というより、多国籍企業になっている。水、生命保険、金融、ネットビジネス、そして軍事関係。それらを使い売り飛ばしている。新型エヴァはメインのビジネスだ。」

 

 

 

加持は黄色いエヴァが複数体作られているのに気が付いた。

 

 

「スペインで暴れたやつは第一段階、これからもっと生み出される。」

 

 

「これを使って何をしようとしてる。」

 

 

「俺もわからん、一つだけ言えるのはビジネスがしたいのだろう。」

 

 

ゼーレも資本主義の豚に落ちぶれたのか。

加持はそう思い、別のページを開いた。

そこには信じられないことが乗っていた。

 

 

「おい、おい…これって。」

 

 

加持は震えた。

 

 

「どったの、先生。」

 

 

ソーンバーグはいつもの笑顔になっていた。

だが、加持は笑顔になれなかった。

 

 

新しいゼーレのリーダーと書かれたテキストともに乗っていたのはハゲ頭とメガネをかけた老人だった。

加持はそれに見覚えがあった。

 

 

 

「アスカの祖父だ。」

 

 

 

加持は思わず声が漏れた。

やはり、そうだった。

こいつは怪しいと加持は思っていた。

まさか、それは正しかったなんて。

 

 

 

その頃、ベルリンの小さなレストランではアスカと祖父フリッツがいた。

 

 

「嬉しいのォ…。」

 

 

フリッツは涙を浮かべていた。

 

 

「孫であるおぬしとこうやって食事ができる。これをキョウコになぜできなんだか…。」

 

 

「お爺ちゃんは科学者だったんでしょ。何の研究をしていたの?」

 

 

「アスカよ、多元世界を知らないか?」

 

 

多元世界。

聞いたことがある。

世界には複数の世界線がある。

様々な可能性で宇宙は広がり、そのすべてがピースとなって作り出されている。

 

 

「確か世界にはいろんな方向性があるとかそういうの?」

 

 

「そうじゃ、わしはそれの第一人者なのじゃ。ゼーレはワシの研究を狙い命を狙ってきたのじゃよ。」

 

「それってどういうこと?」

 

 

フリッツは話をつづけた。

 

 

「わしはの、複数の多元世界を渡れる機械を生み出した。それを狙ってゼーレはわしをなんどもなんどもいじめたのじゃ。特にキール議長はひどかった。ドイツにわしはいられなくなった。」

 

 

 

「怖かった?」

 

 

「怖かったとも、だがアフリカはいい。自由じゃ、動物も多いしのぉ…。」

 

 

フリッツのハゲ頭とメガネは輝いていた。

アスカがスパゲッティに手を付けようとした、そんな矢先だった。

店員が出てくると、ドアに鍵をかけはじめた。

 

 

「ちょっと、アタシたちがまだ残ってるんだけど。」

 

 

すると店員は冷たい目をにらみながらアスカを強くにらみつけた。

 

 

「ガタガタぬかすんじゃねえアバズレ。」

 

 

「まさか!」

 

 

アスカは気が付いた。

刺客か。

祖父を奪うためにきたのか。

 

させはしない。

 

たった一人の家族を奪わせはしない。

 

 

「お爺ちゃん、私の後ろに隠れて!」

 

 

アスカはミサトから白兵戦術を学んだ。

カノジョほどではないかもしれないが、自分にだってこいつを倒せることはできる。

 

 

 

「アスカ、お前は優しい子じゃ。本当に本当に優しいいい子じゃよ。」

 

 

祖父の声が聞こえた。

 

 

 

「だがな。」

 

 

祖父の声色が変わった。

低くなった。

 

 

「お前はバカなんだよ。」

 

 

アスカは思わず振り向いた。

そこにはさっきまでの弱弱しい老人とは真逆の残酷な白い目を浮かべ笑みを浮かべていた。

口は三日月のように曲がっていた。

目も。

 

 

 

アスカはその顔に寒気を感じた。

 

 

 

気が付くと、店員の男がアスカの首にきつい電撃を加えた。

彼女は地面に倒れた、世界がかすんでいくのを感じた。

 

 

「どうして…。」

 

 

アスカは声を漏らした。

祖父は嗤っていた。

店員の男も同じく、やがて複数の男たちがやってくるとアスカを囲んで笑っているのがみえた。

 

 

どうして、どうして…

ようやく家族を得たのに。

なぜ笑うの。

 

そこでアスカの気は失っていった。

 

 

加持はその一方を聞いたのは午後11時だった。

夜は更けていた。

保安部から連絡を受けた加持は自分の無力さを痛感した。

 

 

「アスカ…。」

 

 

加持は壁を殴っていた。

自分に感情を取り戻してくれたアスカ。

そんなアスカにかまってやれなかった。

仕事が忙しいのを言い訳にしていた。

逃げていたんだ。

アスカから‥‥。

 

 

ふと、そんな加持に誰か近づくのがみえた。

 

 

メガネをかけていた女、マリ。

 

 

 

「お前!!」

 

 

加持はマリの襟首をつかんだ。

 

 

「なぜいってくれなかった、あいつがゼーレのリーダーになっているってなんで!!!知っていたんだろっ!!!その癖に!!第一お前はなんなんだ!!!」

 

 

マリは苦しそうに加持の手をつかんだ。

 

 

「だって言えなかったもん、怖くて何されるかわかんないからっ…。」

 

 

「なんだと、お前が早く言えばこんなことにならなくて済んだんだ!!お前がもっと早く言えば!!!」

 

 

トイレに行っていたソーンバーグは加持に気が付くと声をかけた。

 

 

「やめろよ、加持!てめえらしくもねえぜ!」

 

 

加持はようやくマリをつかんでいた手を離すと、自分の髪に触った。

そして言った。

ようやく冷静になれた。

 

 

「アスカにはあいつに話していないが、ヤツにGPSをつけている。それを手繰り探り当てよう…。」

 

 

 

マリは震えながら肩を抑えながらようやく声を出した。

 

 

「私は、ニンゲンじゃないの。」

 

 

「なに?」

 

 

「私は人間じゃないモノと人間のクローンを掛け合わせた存在。」

 

 

「綾波レイのようにか?」

 

 

「それと似ているけど、もっと違う。私にはオリジナルのマリがいた。あたしはそのクローンに過ぎないの。今度届くエヴァの中にはオリジナルのマリがいる。コアの中に。そういう風に作ったのはあのジジイなの。あいつは世界中に基地を持ってそこで私のようなクローンを生み出している。あの黄色のエヴァの中にいるのもおそらく私のクローン、姉妹のようなもの。」

 

 

そうか、コイツもアスカの祖父に支配されているのか。

マリはふと服を脱いだ。

すると、背中には大きな大きな傷があった。

生々しい蛇が通ったような傷だった。

 

 

「逆らえばあいつに鞭で打たれた。電気もあった。見せしめに私のクローンが殺されることもあった。時には玩具にして…。暇つぶしに。逆らえなかった。10年以上前からずっと、やがて解放されたけど。そこで姫と出会った。優しかった。あいつに命じられたけど姫と会ったのは人生で一番楽しい日々だった。」

 

 

マリは震えていた。

それは恐怖の感情だった。

 

 

「でも、余計に…だから怖くて…怖くて…。」

 

 

加持は自分を恥じた。

こんな怖いことを経験した少女を自分は脅した。

 

 

「すまない。」

 

 

加持は静かに言った。

 

 

「わかったよ。君のためにもあいつをなんとかする。だからここにいろ。」

 

 

マリは地面に顔を伏せると小さく頷いた。

ふと、加持の携帯電話に着信がなった。

 

 

アスカの番号。

 

 

 

「まさか…。」

 

 

加持は嫌な予感がした、そして電話を取った。

 

 

 

「誰だ。」

 

 

「ほっほっほ、元気か?」

 

 

フリッツだ。

 

 

 

「貴様…。」

 

 

「悲しいのォ…こんなことになって悲劇じゃよ。ほほほ。」

 

 

「何が言いたい。」

 

 

「まあ、そう焦らんでくれ。旧東ドイツのバッハ村におる。誰も済んでおらぬ村じゃがな。ここで待っておるから…まあ金を持ってこい。1兆ドルほどな。まあ無理じゃろう。」

 

 

1兆ドル!?

こいつイカレているのか。

 

 

「彼女に手を出すな。」

 

 

 

加持は怒りに震え、感情を抑えながら静かに言った。

 

 

 

「あとそうそうGPSはみつけたので捨てておいた。こっちを探そうとしても無駄だよ。」

 

 

そこまで手を打っているのか。

このクソジジイが!

 

 

「まあ、応援は呼ぶなよ。まあ金は置いておいて…君の実力をみたい。まあもっといえばアスカの目の前で朽ち果てるお前をみせてアスカがどれだけ傷つくのがみたいんじゃがな。」

 

 

この爺。

 

 

「言いたいことはそれだけか。」

 

 

「まああって話をしよう、待っておるぞ。加持リョウジ君。」

 

 

そういうとフリッツは強制的に電話を切った。

それと同じくして、椅子に座り眠っているアスカの写真が送られた。

 

 

 

「畜生…。」

 

 

 

そんな加持をソーンバーグとマリは心配そうにみつめていた。

 

 

 

「アスカを助けに行く、俺だけ来いとさ。」

 

 

「そんな無茶なことを!」

 

 

「すまん、二人とも…。待っていてくれ。」

 

 

葛城の真似事か。

無茶なことをするのは俺のスタイルじゃない。

だが、それでもいかなければいけない。

加持はオートバイに乗ると、すぐさま出発をした。

高速道路を抜け、山々の中へと入っていったのだった。

 

 

夜は明け、朝日が差し込んだ。

その朝日にかられてアスカはようやく目を覚ました。

 

 

「ここは。」

 

 

 

椅子に座らされている。

両手両足は縛られている。

 

 

 

「ほっほ、気が付いたかアスカ。」

 

 

声だ。

祖父の声。

フリッツ。

 

 

 

「あ、あなた!」

 

 

「ふふふふ。」

 

 

祖父のフリッツは不気味にほくそえんだ。

そして、小さく笑うとその声は大きくドス黒く響き始めた。

 

 

 

 

「ははははははははははは!!!!」

 

 

 

「あなたも、裏切るのあたしを!」

 

 

そうか、コイツも私を裏切る。

あのハインリヒのように。

 

 

「ハインリヒのことか?ああ、あいつはいい駒だった。まあ無能なので死んでもらったがね!」

 

 

「殺したの?!」

 

 

「ああ、そうとも…。ああ教えてやるか。エヴァ弐号機の中に何がいると思う?」

 

 

「なにって・・・。」

 

 

「なんでエヴァは動く?教えてもらっておらんのか?」

 

 

 

そういえば考えたことがなかった。

なぜ動くのだろう。

アスカの答えを無視して老人は話をつづけた。

 

 

「エヴァの中には貴様の母がおるのさ、キョウコの魂がの。」

 

 

「え?」

 

 

嘘、聞いていない。

エヴァの中にママがいる?

そんなことは聞いていない。

 

 

「まさか」

 

 

いや、知っていた。

エヴァの中にいるとママを感じた。

そうだったのか、ママはあの中にいた。

確かに私も何回か感じた。

 

 

「ママ…。」

 

 

アスカは声を漏らした。

ずっと気づいていた。

でも気づかないふりをしていた。

 

ごめんなさい、ママ。

 

 

老人は話をつづけた。

 

 

「ああ、そうだ。キョウコの話をしようか。あの役立たずの話を。」

 

 

 

役立たず?

ママが?

 

 

「え?」

 

 

「そうだ、あいつは役立たずだ。それだけではないお前など産みたくもなかったのさ。だって無能の娘はさらに無能だからの。」

 

 

 

嘘だ、嘘だ。

信じられない。

ママがそんなことをいうはずがない。

 

 

「私が…無能?そんな私は頑張って生きてきていた。」

 

 

「はァ?お前がァ?抜かせ!なぜおまえが大学に受かったと思う?わしが通してやったからだ!!!セカンドチルドレンにさせたのもお前を操るためよ!!!他のやつを当て馬にさせてお前をその気にさせるためよ!お前の人生は偽りの人生だ。哀れな負け犬、それがお前だ。」

 

 

「私は。」

 

 

「おや、知らぬか。お前はやはりただの木偶よ。人生全てが木偶にすぎぬ。」

 

 

 

祖父は高笑いをした。

その目には嗤いすぎて涙が出ていた。

祖父は続けた。

アスカのプライドをくじくために。

 

 

「シンクロ率は最低で、戦闘はいつも華を持たせてもらっていた。それだけにすぎぬ。お前は存在価値のないただの木偶人形よ!あのキョウコと同じくな!親子そろってグズで低能で愚かな木偶人形どもよ!」

 

 

「私は…私は…。」

 

 

「キールもそうだ。わしが表向き引退して議長に座っただけでしかない。おおそうだ。あの碇シンジ、教えてやろう。ヤツはキールの孫じゃ。そんなキールの孫に世界一偉大なワシの孫が負けるとは…悲しいのォ悲しいのォ。ふがいない。」

 

 

 

アスカは震えた。

私の全ては駒だった。

ママとともに駒に過ぎなかった。

 

 

「キョウコにしてもそうだ。碇ユイに学力で負けておった。おぬしの父を、ヤツの夫を看護婦如きに奪われおった!まあ、仕方ない。ヤツの母親も無能じゃったから殺してやった。他の娘も殺してやったのよ。まあどいつもこいつもぜーんぶぜーんぶ、わしに劣る連中ばかりじゃ!」

 

 

アスカは地に目を伏せた。

もう何も言えない。

 

 

 

「教えてやろう、あの黄色のエヴァ。なぜ負けたと思う?本当に勝ったと思ってるか?デモンストレーションにすぎぬのだよ!これから始まる偉大な偉大なる計画、お前にはわからんだろう。世界一偉大なワシが多元世界を支配する!ネオンジェネシスをな!破壊して支配する!そのために資本主義者はワシに金を与えた!」

 

 

祖父はアスカに目をやった。

目に破気はなかった。

さながら殺されるのを待つ家畜。

 

 

「もう、魂がないか。折ってやったわ。弱いのォ悲しいのォ…。そうだ、そんなに悲しいならお前の想い人とともに殺してやろう。それがお前のためだ!なんと優しい親心か。ワシは優しいのォ…。」

 

 

加持さん?

まさか、こいつら加持さんを…。

アスカは震えた。

だが何もできなかった。

何もできはしなかったのだ。

 

 

 

「加持さん。」

 

 

アスカはふと祖父の言うとおりだと思った。

自分は何もできないでいる。

ただの木偶。

本当にそれが私なのかも。

 

 

「まあそこでみておれ。やはり芝居は悲劇が一番じゃ。」

 

 

フリッツは微笑んで言った。

そして、椅子に深く腰掛けた。

 

村の奥の屋敷には複数のガードがいた。

ここにアスカはいた。

そして、ガードたちの中に盲目の男がいた。

モーガン。

 

 

あのジジイ、フリッツ。

あれの目的は自分の孫娘の精神を徹底的に砕き殺すこと。

 

その後で、またクローンで作られたアスカをよこすそうだ。

そのために加持を呼んだ。

アスカの目の前で殺すために。

 

そこまでやる必要があるのか?

よくわかりはしない。

 

流石に少し哀れにすら思う。

たたかうことを運命づけられた少女、それが成長しても戦わなければならない。

宿命か。

さながら私のように。

 

 

加持リョウジ、お前を待っていた。

この時のためにお前を生かしておいた。

 

ヤツとあったのはアダムの闇オークションの時だ。

 

 

アダムを奪った時、最後の補完委員会の生き残りを殺した。

冬月コウゾウの情報で国際法廷に差し出される前に生き延びた「左様」が口癖の老人を。

それがフリッツのオーダー。

 

そして、最後のアダムを手に入れた。

ヤツの手元にそれはある。

何をするかわからない、知りたくもない。

 

 

聞いた話では、アメリカの軍需産業が新しい戦争の場所を探している。

連中は先ほど行われた二号機とX9の殺し合いをみていた。

しかし、あれはほんのテストに過ぎない。

 

モーガンは事前の打ち合わせ通りに動いた。

アスカに見せ場を与え、適当に負ける。

実行した。

俗に言われる「プロレス」というものだ。

 

 

 

私はブルーノ・サンマルチノ以外はよくわからない。

 

 

軍需産業の人間には「もっとより強い機体であればあの赤い物を倒すことができる」とだけいっておいた。

赤い物は倒せなく手もよいらしく、いくつかの会社は融資を名乗り出た。

 

 

フリッツは彼らを抱き込んで、多元世界に侵攻し侵略するそうだ。

その一つの世界で人類補完計画を進めるそうだ。

エヴァのない世界は侵略し、制圧するそうだ。

 

 

 

よくわからん。

まあ、わからんでもよい。

 

 

別に他意はない。

やり過ぎだと思うが、俺は金がもらえればそれだけでよい。

 

 

 

 

「来い。」

 

 

 

モーガンは仕込み刀を持つと、姿を隠した。

 

 

 

 

加持は廃棄された村の中で隠れていた。

 

アスカ、最近は冷たくし過ぎていた。

想えばあいつと5年いるが、抱きもキスもしてやれなかった。

よくよく考えればまだ葛城への未練があったのかもしれない。

だからアスカに手を出せなかった。

 

 

いずれ自分を捨て、若い男と付き合うだろうと思い込んでいたから。

俺を捨てるだろうと。

 

 

それは都合のいい考えだ。

甘い考え。

逃げだ。

 

葛城は碇シンジを選んだ。

アスカは自分を選んだ。

 

その現実から目を背けていたのはほかならぬ俺だ。

だが、ようやく気が付いた。

あいつは逃げなかった。

俺を愛していたから、本気で。

 

 

 

「アスカ、すまない。お前を俺を本気で愛していたんだな!許せ俺を!」

 

 

 

なぜ気づいてやれなかったのだ。

俺はバカだ。

だったら、これが生きて帰ってあいつらとのケリがついたらあいつを嫁にしてやる。

それが俺にできるあいつへの慰め。

やってやる、今度こそ。

生きて帰れば…。

 

 

加持は銃を持つと、その冷たい銃をゆっくりと撫でた。

村の門に入った。

すると守衛の一人が欠伸をしているのがみえた。

 

 

こいつにしよう。

 

 

守衛は仲間に合図を出した。

 

 

「便所に行く」

 

 

守衛はやがて、トイレの中へ入っていった。

匍匐前進で歩いた加持はトイレの中にいる守衛の一人の片腕で首を締め上げた。

背中にはナイフを突き出している。

 

 

「しゃべるな、女はどこにいるか言え。言えば生かしておく。」

 

 

守衛は震えながら言った。

 

 

「奥の屋敷だ。」

 

 

「じゃあ、お前はもう用済みだな。」

 

 

 

加持はそのままナイフを使い男の首に赤い切り傷をつけた。

男はうめき声をあげることすらできずそのまま地に伏し死んだ。

男の服を脱がすと、守衛の制服に着替えた。

男の死体はトイレの掃除部屋に隠した。

 

 

殺すことは好きではない。

なれていない。

葛城と比較すれば自分は白兵戦はそこまでプロではない。

 

ヤツならこの程度の人間は軽々と真正面から地獄送りにするだろう。

元々あいつは戦略家などではない。

策士より戦士だ。

 

これも時間稼ぎ、守衛の服を着るとそのまま加持は堂々と歩いて村の奥にある屋敷の方へと向かった。

 

その中には別の制服を着た守衛がいた。

 

 

「待て、ここから先は通すわけにはいかん。」

 

 

どうやら位は上なのだろう。

どうする?

加持はふと思いついた。

 

「すいません、よくわからないことが起きたもんでついてきてくれませんか。」

 

 

「愚図め、仕方ない。今回だけだぞ。」

 

 

「トイレの方に怪しいもんが…。」

 

 

加持はそう言い、トイレの中へと入っていった。

 

 

「どこが異常なんだ、なにも異常などないではないか。」

 

 

上級警備兵はそういった。

だが、加持はその一瞬を見逃さなかった。

その男の首に腕を巻きつけ一気に全力で締め上げた。

やがて、男はいきを引き取りそのまま二度と動かなくなった。

 

 

「悪いな、次はお前の服を奪う。」

 

 

そして先ほどの男と同じくその制服を奪った。

男の死体は用務員室に押し込んだ。

 

 

これもいずれはバレるだろう。

その前にさっさとアスカを助けないと。

 

 

 

ふと、サイレンは鳴り響いた。

 

 

 

「死体だっ!!!敵襲かー!!!」

 

加持は面を喰らった。

バレたか。

だが様子が違う。

恐らくこいつとは違う、先ほど殺した下級の警備兵か。

 

 

 

警備兵たちは一目散にその場へと向かっていった。

加持はモニタールームに移動した。

そこには複数のカメラがあった。

 

多くの警備兵たちがさきほどの外のトイレに集まっていた。

 

 

「よし、いいだろう。」

 

 

加持は手元に隠してあった、ボタンを押した。

実はあの中にあったのは起動式の粘着爆弾。

ボタンを押せば爆発するものだ。

 

ポチッ

 

 

どごおおおおおおおん!!!

 

 

大きな地鳴りが響いた。

轟音とともにトイレは吹き飛び、中にいた多くの兵士も巻き添えとなった。

加持は確認すると、奥の部屋まで走って追いかけた。

そこにアスカがいる。

無事ならいいが・・・。

 

階段をぬけ、奥の部屋へと向かっていった。

そこにはアスカがいた。

彼女の祖父も。

フリッツは笑みを浮かべていた。

 

 

「来たようだな。」

 

 

アスカは暗い顔をしていた。

ハインリヒの時とは違う、完全に意思を砕かれた顔だ。

 

 

「アスカッ!!!」

 

 

「彼女はもうダメだ。心を砕いてやったのでね。」

 

 

加持はフリッツを睨みつけ、銃をつきつけようとした。

 

 

 

「あーいかんいかん、私はここでおいとましよう。君の相手は別のヤツがするよ。」

 

 

フリッツはそういうと、裏口のドアを開け素早く去っていった。

と同じく、加持の後部から男の声が聞こえた。

 

 

 

 

 

「なるほど、警備兵の服を盗み侵入したわけだ。」

 

 

太い声が聞こえた。

聞き覚えのある声だ。

 

 

 

「モーガン・ジャクソン。」

 

 

「フフフ、しばらくだな加持くん。」

 

 

 

モーガンの手には仕込み刀があった。

 

 

「アンタ、他の連中と一緒に行動しなかったな。俺のことわかっていたのか?」

 

 

「臭いだ、君の臭いはすぐにわかる。次に音だ。私は5㎞先にある声にも気づくことができる。先ほどもここのガードを二人殺しただろう。手際のいいことだ。さあ、もう御託はいいだろう。ここで死ぬのは貴様か私か…。」

 

 

「そうだな、じゃあ行くか。」

 

 

加持は銃を持ち構えた。

そして、撃った。

だが、モーガンは早かった。

 

 

シュッ!

 

 

仕込み刀は動くと、銃弾を切り裂いた。

こいつ…銃弾を切ることができるのかっ!!!

 

 

 

「言っただろう、音でわかると。」

 

 

 

モーガンは余裕の表情だった。

加持は二発目を撃った。

しかし、またモーガンは動いた。

銃弾は切り裂かれた。

3発目も四発目も同じだった。

 

 

 

「くそっ…。」

 

 

加持は舌打ちした。

 

 

「もうおしまいかね?」

 

 

モーガンはほくそ笑んだ。

 

 

「次は私の番のようだな。」

 

 

モーガンは大きく飛び上がった。

そして、加持の数mまで近づいた。

何て動きだ。

 

 

 

「うっ!」

 

 

 

加持は急いで避けた、その際に肩に刀がかすんでしまった。

 

 

 

「うううっ!!」

 

 

斬られた肩からは血がにじみでている。

激痛のあまり、肩を押さえ地面に倒れ込んだ。

 

アスカは顔を青くしていた。

その顔は恐怖になっている。

 

 

加持さんが殺されそうになっている。

まずい。

これはまずい。

 

 

 

「大丈夫かね?こんなとこで死なれては歯ごたえがないのだがね。」

 

 

モーガンは余裕の表情だった。

加持は肩を抑えると立ち上がった。

 

 

 

「まだ終わらないぞ。」

 

 

そういった。

 

 

「そうだ、そうでなくては面白みがないよ。」

 

 

盲目の暗殺者は余裕という表情で素早く動いた。

加持は銃を持ち、狙おうとした。

 

だが、暗殺者は素早かった。

モーガンは刀を加持の左肩を突き刺した。

加持の肩に激痛が走った。

 

銃が地面に落ちた。

と同時に加持はうめき声をあげ地面に倒れた。

 

 

「うおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

 

やがて、モーガンは刀を抜いた。

さらに加持の肩に激痛が走った。

アスカは呆然とみていた。

 

 

 

「加持さん・・・?」

 

 

アスカの声が聞こえた。

彼女を怯えさせた。

大事な人が殺されそうになってる。

何もできない。

こいつ、強い。

 

 

そして、盲目の暗殺者は血を拭いて余裕のほほえみで聞いた。

 

 

 

「おお、そうだ。」

 

 

 

モーガンは加持の顎に仕込み刀を突き付けた。

 

 

 

「坊や。お前、何か言い残すことはあるか。」

 

 

 

まずい。

このままだと殺される。

すまない、アスカ…。

 

 

モーガンはほくそ笑んだ。

そして、刀を振るい加持の首を切り刻もうとした。

矢先だった。

 

 

 

 

 

バァン!!!

 

 

 

 

銃声が響いた。

モーガンの仕込み刀は一瞬で砕けた。

 

 

モーガンはわかっていた。

なれた臭いが混じってると思っていた。

そしていつかくるのだともわかっていた。

 

 

 

 

「貴様もきていたのか。」

 

 

モーガンの顔は微笑んでいた。

加持は溢れる血を抑えながらふと振り返った。

 

 

 

「懐かしい友人、二人と会えるとはね。」

 

 

 

 

テンガロンハットをした黒いジャケットの男。

加持には見覚えがあった。

 

 

 

 

「ウエスト…」

 

 

 

加持の育ての親だ。

生きていた。

死んでいるとうわさされていたはず。

だが、生きていた。

 

 

「今更何の用だ…。」

 

 

加持はうめき声をあげた。

ウエストは小さく唸り声をあげると言った。

 

 

「大事な坊主を助けるためだよ。」

 

 

ガキ…。

恐らくアスカのことではなく加持のこと。

こいつからすれば俺はガキなのか。

 

 

 

ウエストの手にはマグナム銃があった。

これであの仕込み刀を破ったのか。

 

 

 

「こいつはぁマグナムといってな世界一強力な銃なんだ、お前の刀なんて簡単に破壊できる。無論お前の頭もな。どうする、モーガン。」

 

 

モーガンは肩をすくめた。

だが、顔は楽しそうな笑みで浮かんでいた。

 

 

 

「フフフ、相手がお前とあっては分が悪い。また次の機会にしよう。古い友よ。」

 

 

モーガンは刀を捨てると、フリッツと同じように外に出ようとした。

一瞬足を止め、声をあげた。

 

 

「おい、娘。」

 

 

アスカはモーガンの声に気が付いた。

間違いなくアスカのことだろう。

 

 

 

「お前も戦士であるなら、戦って死ぬのだな。」

 

 

 

モーガンはそれだけをいうと、姿を消した。

ウエストはアスカの両手両足を解放した。

そして、加持の肩を抱くと抱え上げた。

 

 

生き残っていた他の警備兵たちは応援部隊に次々に捕まっていった。

ウエストが呼んでいたようだ。

騎兵隊。

星条旗の旗が肩にしてあった。

恐らくは戦略自衛隊を超える世界最強の軍隊『特殊海兵隊』またの名を『自由主義特殊軍』。

 

アスカはその装備だけでも国連軍はおろか、戦略自衛隊よりも上なのがわかった、

ケンスケがみれば目を輝かせ涙するだろう。

 

 

やがて、二人はアスカが呼んだ救援のヘリに迎え入れられた。

アスカは太陽をみていた。

そのわきではヘリの中で軽い応急処置を受けている加持がいた。

加持は気を失っていた。

 

 

アスカは去り際に盲目の暗殺者が言った言葉を思い出した。

 

 

『お前も戦士であるなら、戦って死ぬのだな。』

 

 

激励か。

敵からの激励。

遠回しの激励か。

 

 

ありがたくもなんともない。

祖父は悪党だった。

だが、あの盲目の男は何か私に思うものがあるのかも。

 

 

 

「戦うわよ、戦って死んでみせるわよ。」

 

 

 

アスカは朝焼けとともに誓った。

例え、ママがエヴァの中にいようとママが私を嫌おうと関係ない。

 

この足が動くまで私は戦う。

 

それは私のプライドのためだけではない。

もはやそれだけではない。

 

この世界を守るため。

あのような悪意から世界を守るため、私は戦う。

 

 

アスカの小さい胸は鼓動して決意したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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