加持が退院して数日後、ヴィレ本部には巨大なクモ型のエヴァンゲリオンが上海から北京に上陸したというニュースが流れた。
中国軍はクモ型エヴァに対抗しようと様々な手を打ったが、全く効果がなかった。
総司令である冬月にもその一報は舞い込んだ。
「あれはマトリエルだな。」
冬月は静かに言った。
日向は首を縦に振った。
「そうです。」
マトリエルの体を持ったそれはエヴァ三号機に似た上体を持っていた。
目から硫酸状の液体を拭き散らした。
それはマトリエルの時とは比べ物にならない量だ。
「やはり平穏は長く続かなかったか、使徒ではないだろう。」
「エヴァですね。」
冬月はふと、シンジの方をみた。
「任せるぞ、サード。」
シンジは首を縦に振った。
彼は初号機に向かって走っていった。
かつてのサードチルドレン。
碇シンジ。
否、葛城シンジ。
父親同様婿養子になったそうだ。
考えれば碇は絶縁になった兄弟以外に親戚はいない。
婿養子になるのは必然だろう。
そもそも、碇もそうであったから。
あの女と結婚した少年。
最初は少年と大人の女がと呆れたものだ。
子供を産んで、ヤツはあの目は変わってしまった。
迷える少年ではない、世界を守るために戦う青年になった。
「信頼しているぞ、シンジ君。」
冬月の胸元にはシンジとミサトの子供がいた。
両親が不在の今、こうやって冬月が見るほかない。
冬月はふと考えた。
「ところでこの子名前なんなんだろうな。」
冬月は首を傾げた。
だが、新型エヴァの襲撃はそれだけではなかった。
太平洋沿岸には巨大なクジラ型のエヴァンゲリオンがみつかった。
サンフランシスコの基地にいたオーバーザレインボウと太平洋艦隊の艦長は呑気にコーヒーを飲んでいた。
彼は知っている。
これは使徒ガギエルだ。
ガギエルの体を黄色い装甲が覆っていた。
ガギエルをベースにしたエヴァなのだ。
すると若い士官の部下が入り込んできた。
「艦長、新型エヴァがグアム沿岸で暴れているそうです。」
「ああ、知っとるよ。」
実は艦長はすでにエヴァ出動要請の連絡をヴィレ関係者に送っていた。
すぐさまアメリカ支部にいる四号機が動く予定だ。
「そんな呑気にしていいのですか、ハワイ近くに来ます。」
「君にはわからんのだ。ボウヤ。こんな言葉を知ってるか。カウボーイのことわざのようなものだ。『クズはクズ同士助け合う』我々は弱い生き物だ。だからこそ結束するのさ。」
「エヴァを、彼らを…信頼してるのですか。」
士官はいぶかしげに言った。
艦長は迷いなく言った。
「そうさ。」
「元はあいつらは人類補完計画を考えていた危険な連中ですよ。」
「そいつらはすでに故人だ。過去と現在は違うのだよ。」
「奴らが生んだ兵器が今世界を襲ってる。そのことがわかってますか。あなたは彼らに甘すぎます。」
「コーヒーは甘党派でね。」
艦長は士官の言葉を冗談で交わした。
士官は呆れると艦長の執務室から姿を消した。
彼は窓から様子をみた。
5年前の戦いの後、アスカは一度彼の家を尋ねた。
その時、艦長はアスカのことがわかった。
あの娘は親への愛に飢えていた。
そんな連中に戦いをさせていたのだ。
この残酷さをどう説明しろと。
私の死んだ娘よりも若い子供たちの人生を弄んだことをどう言い訳しろと。
彼らを私たちが悪く言う資格などない。
世界を守ってくれたのだ。
今回もそうだ。
私は彼女たちを信じている。
あの若い士官の男は何も知らない。
あの娘たちの気持ちを、あのガキどもの気持ちを。
我々は弱い。
弱いからこそサルから人間になった。
だから結束し、連帯し強くなる。
人の強さはそれだ。
「がんばれよ、バカども。」
彼はコーヒーを飲んだ。
砂糖バリバリの激甘コーヒーである。
ヴィレ・EU支部にも連絡が入った。
新型エヴァの一体がアルゼンチンを襲撃していると。
シャムシエルをベースにしたエヴァ。
それとは違い、複数のビーム状の触手が覆っていた。
国連軍はすぐにエヴァ出動を要請した。
そして、もう一体。
それはオーストラリアを襲撃した。
金色のエヴァ。
肩にはガトリング銃があった。
まるで二号機のような姿をした金色のエヴァは大きかった。
敵は四体。
これが来たという事は、自分たちへの宣戦布告とほぼ同じだ。
「やはり、来たね加持さん。」
モニターを観たケンスケは静かに言った。
それと同じタイミングでエヴァ8号機は到着した。
8号機でアルゼンチンにいるエヴァを抑え込む。
「じゃあ、アスカ…マリ…後は頼むぞ。」
「わかったわ。」
加持は指揮官ではない。
本部にいる冬月があとは彼らを支援する。
そして、加持の仕事は別にある。
今から加持は選ばれたメンバーのみで南アフリカへ向かう。
恐らくはそこにフリッツの秘密基地がある。
そこで新型エヴァを操るコンピューターを破壊、フリッツ一味を捕縛する。
「ケンスケ、後を頼むぞ。」
「わかってますよ、加持さん。」
加持はそう言い、去ろうとした。
そんな時だった。
「あ、そうだ。アスカお前に大事な話があるちょとこい。」
アスカと加持は二人そろって歩いていった。
やがて、加持の執務室にたどり着いた。
「話って何。」
アスカは不思議そうな顔で聞いた。
加持は照れ臭そうに頭を掻くとアスカの方に振り向いた。
「なあ、アスカ。」
「なあに?」
19歳のアスカはとても美人だった。
このままでは加持は吸い込まれそうだ。
耐えようとしたが、耐えられなかった。
加持の手はアスカを優しく包むと、そのまま彼女の唇を奪い取った。
「んっ!」
アスカは抵抗をしなかった。
二人の唇は重なると強く、強くよせあった。
彼女にとってはファーストキス。
「お前はもう大人だろ。だからこれはお前を認めた証だ。もうお前のそばから離れない。だからお前は生きて帰ってこい。俺も生きるから。」
加持はぶっきらぼうにそういうと、執務室を後にした。
テンガロンハットをつけたウエストは黙ってみていた。
「何だよ、文句あるか。」
「坊主、あの娘いい子だな。」
「最高さ。」
加持は黙って歩いた。
ウエストがそれに加わった。
やがて、コウジもそれに加わった。
「なんかこうしてみると昔に戻った気がするよな。」
コウジは照れ臭く言った。
加持とウエストは黙っていた。
だが、加持の顔には笑顔が浮かんでいた。
発令所にはケンスケとマリが残っていた。
「なあ、マリ。」
ケンスケはモニターをみながら、声を出した。
「なに?」
「あのさ、俺たちって最初仲悪かったじゃん。」
マリはふと思い出した。
そんなこともあったな。
でも、もう忘れていた。
「うん。」
「これ終わったら友達にならないか?」
「トモダチ?!」
「うん、友達。仲よくなかっただろ。そりゃよくないよな。仲いいほうがいい。だからトモダチになるんだ。」
マリはふと考えた。
トモダチか…。
というかよくみると、ケンスケは顔が赤くなっている。
恥じらいをかんじているんだろう。
顔を赤くして、モニターをみている。
マリの胸の中にキュンという締め付ける何かが生まれた。
かわいいじゃないか。
こいつ、もっとかわいいところがみたい。
マリはあることを思いつくとひらめいた。
「ちょっと待って、ケンケン。こっち向いて。」
マリは言った。
ケンスケは振り返ろうとしたその矢先だった。
ケンスケの頬をつかむと、マリは勢いよく唇を奪った。
「むむむ!!!!!???????」
ケンスケは顔が赤くなっていった。
マリは猫のような顔で微笑むとほくそ笑んだ。
「いただいちゃった!ケンケンのファーストキス!生きて帰ってくるから、待ってなよ!オタメガネ!」
「チクショー!お、おれはあ、アスアスアスアスアスアスアスカアスカかかかかか!!!がいるのにいいいいいいいいいいい!!!」
ケンスケは顔を赤くすると胸をかきむしった。
何だ、これはまさか…恋!?
って、ていうかこれキス!?
「ニャハハ!ごちそーさま!」
ケンスケの悲鳴を無視するとマリは発令所から走り去った。
すると、ばったりアスカに出会った。
アスカはいつになくもじもじとしていた。
頬は赤く染まっていた。
いつもの彼女らしくない。
「あら、アスカ姫。どったの。」
「加持さんにキスされちゃった。」
「マジ!?」
「うん…。」
こうやって照れるアスカもかわいい。
訓練生のオーディションを受けている時、合宿所でアスカと出会った。
彼女は親切で優しかった。
いつしかマリとアスカは友人になっていた。
虐待と実験ばかりだったマリの人生に明るい兆しがきた。
それはアスカのおかげだ。
「私ね、姫…。ケンケンにキスしちゃった。」
「はあ!?マジ!!!?」
「マジ、だってあいつかわいいじゃん。」
「かわいい?」
アスカは理解ができなかった。
かわいい!?
まあでも言われてみれば童顔でかわいいといえばかわいいのかも。
「ねえ姫。この世界…守ろうね。」
「うん、アンタも生きて帰りなさい。」
弐号機はオーストラリアに、8号機はアルゼンチンへ向かう。
それぞれの敵を迎え撃つ。
アスカとマリは握手をした。
やがて、マリはアスカを力強く抱擁した。
「ちょ、ちょっとアンタバカ!?」
「バカじゃないもん。」
アスカはため息をつくと、マリをさらに強く抱きしめた。
「じゃあ、またね。」
マリは手を振ると、自分のケイジへと入っていった。
アスカは微笑んだ。
バカなやつ。
あいつもまた私の友。
アスカは自分のロッカーを開けプラグスーツを取ろうとした矢先だった。
メモがあった。
英語だ。
加持さんの筆跡ではない。
まさか加持さんを育てた義理の父。
ウエストのもの。
アスカは開いた。
『君のことは知っている。仕掛けられた娘よ。加持には言っていないが、俺はガン末期だ。』
ガン!?
『あいつは自分のことで精いっぱいだ。余計な心配をかけたくない。時期がくれば俺からあいつに言うので余計なことはせんでほしい。』
あの人と加持さんの間にしかない絆。
私には何も言えない。
『あいつは常に余裕な表情をしているが、その中には後悔と未練と孤独で溢れている。お前ならそれを埋める事ができる。俺にできなかったことをあいつにやってくれ。
ハリー・ウエスト』
アスカは手紙を握った。
そうか、だから加持さんたちの前にこれなかった。
だけど、寂しいから戻ってきたのか。
加持さんにとってはパパ。
私にもパパはいた。
パパはママを見捨てた。
違う、寂しかったんだ。
ママがああなって、パパは一人になった。
今ならわかるパパの気持ち。
私は生きて戻ればパパの元に行こう。
そして、ママのことを聞こう。
そんな時だった。
ヴィレEU支部中にファンファーレがなった。
この曲はエルガーの「威風堂々」だ。
ケンスケなりの激励のメッセージか。
「生きて帰ってくるわよ。」
ロッカーの中に母キョウコの写真とともに、その手紙をいれた。
アスカとマリはそれぞれのエヴァに乗り込み、別々にある戦いの場へと突き進んでいったのだった。
中国。
クモ型の「アラクネ」はその脚を使い高層ビルを破壊していた。
目からは硫酸状の液体を垂れ流し街を破壊しつくしていた。
人々は震え、天を仰ぎその破壊を止めてほしいと叫んでいた。
かつてマトリエルだったクモ型の体に浮かんでいるエヴァの素体は不気味にほくそえんでいるように口を開いた。
誰もが終わりだと覚悟を決めた。
その時だった。
天から紫色の刀状の物体が降り注いだ。
アラクネはATフィールドを張りガードした・・・はずだった。
刀状のそれはATフィールドを貫いた。
そして、エヴァの素体の首を突き刺した。
と同時に紫色の巨体が天から落ちてきた。
エヴァ初号機だ。
初号機はATフィールドの穴から入り込むと、刀を引いた。
ビザンオオフネ。
初号機専用のマゴロクソードだ。
「これ以上の破壊をやめろ。」
シンジはそう言った。
当然聞いてるとは思えない。
あれの中にあるのはダミープラグ。
エヴァの素体の目が怪しく輝いた。
初号機は足でそれを蹴り、地面に着地した。
マトリエルだったそれの目から硫酸が噴き出た。
初号機はそれをよけなかった。
否、ATフィールドを何重にもはり、ガードをした。
「それで終わりか。」
攻撃は終わった。
シンジはビザンオオフネを構えると、横一文字に切り裂いた。
シュンッ
空気を切る音が響いた。
すると、クモ型の足は音をたてて崩れていった。
足が切られていたのだ。
アラクネは姿勢を崩すと、そのまま崩れていった。
シンジはビザンオオフネを天空近く構えると突き刺した。
アラクネの体を貫たビザンオオフネはそのまま、コアを刺すと体を赤いLCLに変化させて死亡したのであった。
「すごい…。」
音声回路状からリツコの声が聞こえた。
「すごいわシンジ君。」
しかし、シンジは気が付いていた。
「まだいる。」
シンジの声に反応するかのように何百体という黄色いエヴァが待ち受けていた。
これはスペインで暴れた物。
まさかここにいるとは…。
太平洋上ではガギエルをベースにしたケートスが猛威を振るっていた。
そんな矢先だった。
白銀の四号機は人工衛星から放たれると、太平洋上に到達した。
その中には渚カヲルがいた。
「君の奏でる悲鳴のオペラはさぞかし気持ちいいだろうね、ガギエルのまがい物。許さないよ。」
四号機はケートスの装甲の張り巡らされた体に張り付いた。
そして、手に持っていたマゴロクソードで突き刺した。
ギャアアああああああああああああああ!!!
それは悲鳴をあげると、太平洋の中へと入りこんだ。
四号機はしがみついた。
海のしぶきが四号機を通してカヲルを襲った。
クソ、海に入られた。
このままでは虚数空間を張れない。
ATフィールドも。
だが諦めない。
突き刺さったマゴロクソードをつかむと四号機はそのまま海底深くへともつれこんでいった。
アルゼンチンにいたマリはピンク色の8号機に乗っていた。
そこでは黄色の装甲をした手足のない弐号機のような姿をしたクラーケンが無数のビーム状の触手をはやしているのがみえた。
あの中にいるダミープラグにしようしているのはおそらく別の自分。
ふとマリの頭の中に声が聞こえた。
『なんできたの。』
「アンタを止めるためだニャ。」
『とめられるものなら止めてみなさい、あなたにできっこないから。』
クラーケンはすぐさまビーム状の触手をのばしてきた。
8号機はすぐさまそれをよけた。
高層ビルの1つを突き刺すのがみえた。
『怖いの?』
「まさかそんな…。」
マリはライフルを撃った。
だが、クラーケンの触手は弾を弾いた。
マリは動揺せず次から次に銃を撃ち始めたが、そのすべてをクラーケンは弾き飛ばしていた。
『いったでしょ、あなたなんかにできっこないって。』
クラーケンは9ある触手を伸ばすと8号機の手足・胴体を貫いた。
「う、うっ!!!」
マリは悲鳴あげた。
突き刺さったまま動くことができない。
このまま殺されるのか。
最後一本が8号機の近くに届いた。
まるで頭を突き刺そうとしていたのだ。
南アフリカ。
加持たちはようやく、現地にたどり着いた。
相手の研究施設から6km以上離れてる崖の上だった。
ふと、近くをみると先に先客がいた。
「遅いじゃない。」
葛城ミサトだ。
「様子はどうだ。」
「何も変わらない。ただ厄介なのはここからでもみえるぐらいバカでかい大男がいるのがわかるわ。あれが生物兵器じゃないとすれば世の中本当にヤバくなってる証拠じゃない。」
加持はミサトにゴーグルを渡された。
そこには明らかに3m以上ある巨漢がいた。
「なんだあれは…。」
加持は思わず二度見しそうになった。
できればあのバケモノとかち合いたくはない。
巨漢はトレーラーをまるで赤ん坊のように抱えていた。
そして、ガレージに置くと何事もなかったように突き進んでいった。
明らかに5トン以上あるトレーラーもあいつと比べると小さくみえた。
余りにも大きすぎるせいで施設に中々はいれなくて苦労しているようだ。
「俺にも見せろ」
コウジは加持に要求した。
加持は黙ってゴーグルを渡した。
「なんだあれは。」
「だろ。あいつら生物実験でもしてるのかな。」
「あれを持ち上げるのは一苦労しそうだな。」
コウジは加持にゴーグルを渡した。
「要するにアイツを持ち上げれるかもしれないってことか。」
加持は皮肉を言った。
ゴーグルで再びあの巨人を見つめなおした。
コウジは怪力の持ち主だが、あれには勝てるかどうかわからない。
「まあスピードと技術では俺が上だろう。」
「じゃあもしもあいつがきたらあいつの相手はお前に任せるか。」
他の守衛の力でなんとか施設に入っていた。
それ以外守衛の数は少なさそうだ。
ふと、みるとまたトラックが入っていった。
何台もきているようだ。
「で、応援は?」
ミサトは冷たく言った。
「俺たちより先に来てるさ。そっちの応援と合流した。俺たちが騒ぎを起こす間に乱入する予定だ。俺たちのやることは見張りを何人かやっておくこと。」
「そう、今回はあなたが作戦参謀ね。任せるわよ加持くん。」
「お前よりも俺のが作戦立案力は高い、まあみとけ。」
ミサトは舌打ちをした。
まあ図星なんだろう。
「よし、お二方準備はいいか。」
コウジは重たそうなホーミングランチャーを軽く持ち上げた。
「いいぞ。」
「じゃあ、花火といくか。」
コウジは狙いをつけた。
そして、一番守衛が集まっている部分に向けてランチャーを放った。
弾に火が付くと、守衛の群れは何人も空中に向かって吹き飛んだ。
「畜生!!!きたぞ!!!警戒しろ!!!」
警備兵たちは何人も集まってきた。
ミサトはスナイパーライフルを持つと、一人また一人と狩っていた。
「それじゃお先にいっておくぜ。」
加持は急いで崖をかけおりた。
守衛たちは崖の上にいるコウジやミサトに集中して加持の存在に気づくことができなかった。
施設のトラックがホーミングランチャーの餌食になり何台も吹き飛んでいった。
守衛は徐々に数が少なくなっていった。
加持は無線をとると連絡をした。
「出番だぜ、ローンレンジャー。」
すると、トラックの荷台から馬がかけおりた。
そこにはテンガロンハットをつけたウエストがやってきた。
さながら西部劇のカウボーイのように。
「なんだ?!馬だ!?なぜこんなところに!!」
馬は素早かった。
警備兵たちの銃弾をかいくぐった。
ウエストは馬の上からライフルを構えて、沈着に一人ずつ殺していった。
「お、応援を頼む!敵襲!敵襲だあああああああああああああああ!!!」
応援はこない。
加持はゲートの横にいくとバギーをみつけた。
「いただこう。」
鍵は指しっぱなし。
バギーに乗り込むと、急いでウエストのもとへと向かった。
やがて、バギーの上に設置してあったガトリングガンを使うと敵の基地に向かって乱射を始めた。
バギーと馬は合流すると、かけはじめた。
馬の上からはウエストがライフルを、バギーからは加持がガトリングガンを乱射した。
上空からくるランチャーとスナイパーライフル、前方から来るライフルとガトリングガンに怯えた敵兵たちは一人また一人と倒れていった。
ガトリングガンの銃弾は有刺鉄線の網に大きな穴を開けた。
今だ。
「ゲートに人が少なくなってきた。今だこい。穴が開いてる。そこからくるんだ。」
ウエストは馬からおりた。
「行け!」
ウエストの指示をきくと馬は砂漠地帯へと消えていった。
「おい、乗せろ。」
ウエストはすぐさまバギーに乗ると加持の肩にライフル銃を置いた。
二人は銃を放ちながら突き進んでいった。
気が付けばミサトとコウジは二人より先に侵入に成功していた。
ミサトはスナイパーを捨て、ハンドガンで応戦していた。
多くの衛兵が倒れた。
門は開いている。
ゲート周辺にいる守衛は少なくなっている。
「おい、お前ら。俺がここで時間稼ぎをする。いってこい。」
ウエストは言った。
「死ぬなよ。」
加持は小さくいうと門の中に入っていった。
ウエストの周囲には衛兵が囲んでいるのがみえた。
だが、わかっていた。
あいつはこんなところで死ぬようなヤツなんかじゃない。
「行こう。」
門の中をかがんでいこうとした矢先だった。
うおおおおおおおおおおおおおおおっッ!!!!!!!
獣のような雄たけびが聞こえた。
次にドンッ!ドンッ!という地響きの声が聞こえた。
地響きの音は近づいていた。
まるで怪獣がくるように。
一人だけ心当たりがあった。
「あのバカでかい奴か。」
その時だった。
壁にひびが入ると、その中から大きな大きな大男がでてきた。
黒い長髪をなびかせていた。
「やはりやつか。」
崖の上からでみれた3mサイズの巨人。
ここにきたんだ。
「あんどれ、おまえらたおす。」
巨人はゆっくりとそう言った。
「出番だな。」
コウジはそういうと巨人の前に立ちふさがった。
「お前らは先に行け。ここは俺に任せろ。」
「頼むぞ、コウジ。」
ミサトと加持は足早に去った。
バケモノのおかげで、壁に穴があいた。
二人はくぐりぬけていった。
「お前、スポーツは何をしている。」
「ちかとうぎじょうでちゃんぴおんしてる。」
「俺は相撲と柔道だ。全力で来い!」
「あんどれ、おまえよりもつよい!」
アンドレと自分を呼ぶ3mサイズのバケモノは唸り声をあげながらコウジに殴りかかった。
コウジはそれを相撲のぶちかましで受けようとした。
ミサトと加持は階段を駆け下りた。
ミサトはハンドガンを構えるとまた、一人ずつ的確に仕留めていった。
加持は技術者の一人を捕まえると銃を突きつけ脅した。
「お前のところのエヴァはどこで制御してる。」
「一番下の階のメインコンピューターだ。」
「死にたくなけりゃ隠れてるか消えろ!」
加持は大きな声をあげた。
技術者集団はコケながら逃げていった。
「あそこの階段からいけるわ。」
ミサトは銃を撃ちながらアゴで指さした。
「さきいってて。」
「葛城。」
「アタシは大丈夫、またドイツで遊びに行くからよろしくね。」
ミサトはウインクをした。
加持はミサトにその場を任せると階段を駆け下りた。
すると守衛の中から一人の男が出てきた。
「お前ら雑兵は邪魔だ。消えろ。下の階に応援に行け。」
男は冷たいハンサムな顔をしていた。
上半身を脱いでいた。
その体は筋骨隆々そのもの。
秤と髑髏のタトゥーをいれていた。
「了解しました。」
衛兵たちは加持を追いかけ階段を駆け下りた。
「俺はセルゲイ・コズロフ。お姉さんは?」
「葛城ミサト。」
「俺は銃を使うのは趣味じゃない。何が言いたいかわかるな?」
「あなたもそういう人種なの?」
セルゲイはニヤリとほくそ笑んだ。
ミサトも同じくニヤリと笑い返した。
「美人を殺すなんて残念だな。」
「イケメンとやりあうのも残念だわ。」
セルゲイは長い脚を使うと、ミサトの首に蹴りを当てようとした。
ミサトは左足を伸ばすと迎撃をした。
その威力は互角だった。
「やるねえ、ネエサン。」
「あなたもやるわねぇ。」
「じゃあ、いくよ。」
「いつでもかかっておいで。」
セルゲイとミサトは向かい合い決闘を始めた。
加持は追っ手から逃げながらメインコンピュータールーム近くに向かっていった。
「待てぇえええ!!」
加持は振り返ると、銃を撃った。
追っ手は一人また一人と倒れた。
加持はようやくたどり着いた。
ふと、階段を下りた。
その時だった。
鞭のバチィンという音が響いた。
この音に聞き覚えがある。
すると、加持の首元に何かが絡みつくのを感じた。
「うっ!」
加持は地面に倒れそうになったが何とか耐えた。
そこには厚化粧をした女殺し屋がいた。
「お久しぶり、坊や。」
「キム・ソナ。」
「でもね、あたしだけじゃないの。」
シュッ!
空気を切る音が聞こえた。
ナイフだ。
加持はそれをかわした。
ナイフは加持がよけた壁に突き刺さった。
「お初にお目にかかる。私はイワン・コズロフ。コズロフ三兄弟の長兄だ。」
「イワンちゃんはね、私のダーリンなの。」
「フフフ、我らカップルの愛の力。みせてやろう。」
ソナは鞭の力を強めた。
加持は倒れそうになった。
その時、イワンは一つナイフを投げつけてきた。
だが、加持はニヤリと笑った。
そして、加持は二つの指でナイフをつかんだ。
「なにいっ!」
「俺だってこういうマネはできる。ナイフをありがとうな。」
ナイフを使い、加持は鞭を切り裂いた。
そして、鞭の切った先をつかむと思いっきり引っ張った。
「え!?ちょ」
ソナは悲鳴を上げた。
加持はグーパンチでソナの顔面を殴り飛ばした。
「お前はレディじゃないから、殴っていい。」
ソナの体は吹き飛ぶとそのまま意識を失った。
「貴様!よくも!」
イワンはナイフを取り出しなげようとした。
加持はそれよりも早く動くとソナにしたように拳を握りしめイワンの顔面にぶち当てた。
「ぬぼっ!」
イワンは悲鳴をあげるとそのまま意識を失った。
ふと、加持は前を観た。
そこにはドアがあった。
ゆっくりと開けた。
コンピューターばかり並んでいた。
加持が考える通りではここはメインコンピュータールーム。
そこにはモーガンが一人たたずんでいた。
「モーガン・ジャクソン。」
「見事な連携だ、多少無茶はあるがね。」
モーガンは杖から刀を抜いた。
そして、加持の前に躍り出た。
「アンタ、ウエストと何があったんだ。」
「ヤツとは昔仲間だった。」
その時、モーガンはサングラスを外した。
目は真っ白だった。
確かに視力はない。
「ある日、ウガンダで任務があった。俺とあいつは特殊部隊にいてね。生き残ったのは俺とアイツだけ。目の前に閃光弾がとんできた。その時だよ。気が付けば俺は視力を失っていた。それまで当たり前にあったものがなくなった。」
加持は何も言えなかった。
視力を失うという事はどれだけ厳しいのだろう。
辛い事だろう。
こいつはそれを抱えて生きてきたのだ。
「あいつはバカなやつだ。自分のせいだと思い込んだのさ。そんなことはない、ただ運が悪かっただけさ。それ以降私は軍の特殊な手術を受けた、そこで異常聴覚を得た。」
その時、モーガンの目から涙が出ているようにみえた。
こいつとウエストの間には何か斬っても切れない絆があるのだろう。
以前あったときウエストの前から逃げたのは、殺したくなかったのかも。
「さあ、長話はもういいだろう。新型エヴァンゲリオンはこの先のコンピューターの人工知能で操っている。それを守るのが私の役目だ。邪魔はさせん。」
「ああ。」
モーガンは構えをとった。
その動きは盲目とは思えない。
だが、間違いなく盲目だ。
「行くぞ。」
加持は銃を持った。
今回はウエストから譲ってもらった44マグナム。
いけるはずだ。
恐らくは…。
同じころ、赤い二号機はようやくオーストラリアにおりたった。
そこには金色のエヴァがいた。
まるで弐号機をベースにしているようだ。
だが、違うのは筋肉が増幅している。
向こうの方が大きい。
「アスカ。」
声だ。
音声回路を通じて声が聞こえた。
その声に聞き覚えがあった。
祖父だ。
「フリッツ。」
「もうお爺ちゃんといってくれんのかね。」
「もうあなたは祖父と呼ぶ気はない。」
「悲しいのォ…よかろうその中にいるキョウコともども貴様を地獄へ葬ってくれるわ!覚悟しろ!アスカ!!」
「地獄に落ちるのは貴様のほうだ!」
金色のエヴァは弐号機とかちあった。
金色のそれのATフィールドは何重にも張り巡らされていた。
「ほほほほ、教えてやろうアスカ。この機体、この名前はデウス!この世界の新しい神だ!旧世代とは格が違う。これは何百層にもなるATフィールドを張り巡らせる。中和できることもなく押しつぶすのだ!!!」
アスカは歯ぎしりをした。
すごいパワーだ。
とても耐えきれそうにない。
近寄ることもできない。
桁が違う。
「格が違うのだよ!格が!これが終われば・・・多元世界への侵略だ!そしてわしは多数ある並行世界の神になるのだ!」
アスカの微弱なATフィールドでは勝てない。
徐々に押されて行った。
リツコの悲鳴が聞こえた。
「アスカ、しっかりして!このままだと大破するわよ。」
わかっている。
このままでは勝てない。
なんとか、何とかしないと…。
だが、強い。
アスカは地面をみた。
地面が割れている。
そして、弐号機の装甲ももう持たない…。
このままでは負ける。
アスカは確信した。