気が付いたら魔法が使える世界に居た件について   作:awtntn

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30話超えたので初投稿

一度投稿止めたのに気が付けば…感慨深いですね
皆様も体の健康にはお気をつけて


九校戦7日目・裏

8月7日 九校戦七日目

 

前日の女子ミラージ・バット優勝、アイス・ピラーズ・ブレイクでは男女共に一位。それに加えて男子アイス・ピラーズ・ブレイクではあの十師族の一条将輝をくだしての一位となれば向かうところ敵なし、イケイケ状態だ…とはならず作戦室本部では重たい空気が流れていた。

 

なぜその空気になっているのかは大体察してはいるものの、自身がこの場にいるのか理解できていない司波達也は目の前の人物たちの言葉に耳を傾ける。

 

「それで…俺はどういった用件で呼ばれたのでしょうか。」

 

目の前にいるのは一校の部活動連盟の会頭である十文字克人、生徒会長である七草真由美、怪我をした腕を固定している風紀委員長である渡辺摩利。そして……

 

「それに、どうして鳳華は俺から目を背けてるのでしょうか。」

 

この現状のおそらく原因である焔火鳳華が目の前に座っていた。

 

「それは私からの説明でわかると思います。達也くん、あなたにはモノリス・コードに出場してもらいます。」

 

決定事項かのように告げる生徒会長

なぜモノリス・コードの話になっているのかはつい数時間前に遡る。

モノリス・コード一回戦、第一高校対第四高校の試合にて起こった悲劇。室内スタートとなった一校選手を襲う相手選手の違反(オーバー出力)。開始直後ということもありまともな防御も取れず病院送り、場所の特定も開始前に行っていたのではないかというおまけつきである。

相手選手側はやっていない、該当する魔法は入れていないと主張しているものの棄却され棄権。当然選手が居なくなった一校も棄権になるはずだが十文字会頭が抗議をしていた。と、ここまでが俺の知っていることである。

出てほしいということはその抗議が意味をなしたということではあるのだが……。

 

「なぜエンジニアの、それも二科生の自分なのでしょうか。前例がありませんし、それに出すなら一種目しか出ていない選手を出す方が合理的かと思いますが…。」

 

「そのことなんだけどね…これは内緒にしておいてね。大会委員会は鳳華くんの出場を条件として特例として認めたの。」

 

大会委員会が誰か特定の人物を指名して出場など聞いたことがない。今大会の新人戦アイス・ピラーズ・ブレイクはテレビ放送において過去のどの新人戦放送よりも視聴率があったと耳にしたことがある。

スポンサーの意向かはたまた、敗北し面子を汚された一条家が負けていないとリベンジする場を設けるための圧力か。

 

「まったく…しょうもないことに権力を使うなんて、幼稚すぎるわよまったく。あ、ごめんね達也君、今のはこっちの話だから気にしないでね。」

 

どうやら後者が正解らしい。

 

「事情は分かりました、なら尚更自分は適していないでしょう。」

 

「どうしてだい?私の目から見ても相当達也君は実践向きだと思うが。」

 

「これはあくまで競技ですからね、特に格闘技能が封じられていて魔法のみとなると実技の成績が悪い自分は足かせになるかと。」

 

「何を隠そう司波を推薦したのはほかでもない焔火だ。二科生を言い訳にして逃げるのは諦めた方が良い。なんたって俺と達也が居たら優勝できますよと豪語してたからな。」

 

目を逸らしていたことの理由が分かった。彼ほどの実力を持っているのだ、四葉の人間であることはばれていないにしても何かしら特殊な訓練ないし仕事でもしているだろうと思っているのかもしれない。

 

「まぁ決勝以外は達也は酔わせるだけでいいから。ほら、服部副会長と戦った時みたいに。」

 

後ろめたさがある表情はしているものの、諦めろといった表情で鳳華が言った。

 

「分かりました。それでは準備に取り掛かりますがあと一人は誰でしょうか。時間も残されていませんし調整もしないといけません。」

 

「三人目だが…司波、お前が決めろ。それと次の二回戦のみであるが、出場するのはお前たち2人だけだ。」

 

自身に似合わぬ表情をしているのか必死に笑いをこらえようとしている会長が目に入る。

それに気が付くと鳳華を睨む。

 

「ほら、俺担当してたの女の子だけだし…同級生も実力知ってるの達也しかいなかったから。だから今から達也が選んで調整って時間的に厳しいし。」

 

妹以外で感情を露わにするのはこいつ(鳳華)がはじめてになるかもしれないな。

 

 

 

試合についてはあっけないものであった。

試合直後に敵を捕捉。そこから重力操作魔法を使用し気絶。その魔法範囲と精密性に驚かされながら第二回戦は幕を閉じた。これは慎重にと歩を歩めていた第七高校が悪いと世間では言われているが大胆に動いていようが結果は変わらないような気がする。

それを証明するかのように決勝リーグを決める前の試合、予選準決勝では、相手は捕捉されないために常に動いてある程度の位置としてしか場所を把握できていなかった。がしかし、ある程度分かってるなら問題ないと言わんばかりか位置を把握した方向へすぐさま動くと動いた先で相手選手を気絶に追い込む。これを単に三回行った。

もう一人のメンバーに指名され参加している吉田幹比古と俺は結果的にモノリスから一歩も動かずの勝利となった。

 

「これ…僕たち本当に必要なのかな。」

 

試合中であるにも関わらず呑気に話しかけているのは同級生で吉田幹比古。

 

「あの様子なら負けることはないだろう。」

 

その言葉共に第一高校の決勝リーグ進出が決まる。

 

[第一高校 WIN]

 

「そうだろうね、彼あの一条くんを倒したんだってね。やっぱり僕は単なる数合わせにしかならなさそうだ。」

 

謙遜なのか、はたまた単なる自虐なのか。彼の今までの言動を知る達也にとっては答えは明白である。

 

「そんなことはないよ。達也から吉田のことを聞いてたけど決勝戦では大役を任せたいと思ってるからね。」

 

帰ってきた鳳華が幹比古に作戦の要だと伝える。

 

「何度も言ってるけど幹比古でいいよ、同じクラスだし。それにしても鳳華もすごいよね、毎試合使う魔法を変えるなんて…しかもあんなに正確に。」

 

既にメディアによって世間に知れ渡っている焔火家の歴史。その特性なのか血筋なのか分からないがそれを存分に発揮し相手を苦しませている。

観客は彼が次に使う魔法が何なのかわくわくしている状況にすらなっている。

 

「ごめんね幹比古、まだ慣れていなくて。それじゃあ決勝戦の作戦会議でもしようか。」

 

まるで決勝戦までは作戦がいらないと言ってるような傲慢さだが、鳳華を間近で見ている彼らにはそれを心配する様子はなかった。

 

 

***

 

 

「くそっ、あのまま第一高校が棄権していれば……。」

 

そう嘆くのは第三高校の得点集計をしている生徒であった。その他にもまた第一高校が事故で棄権にならないかと不謹慎なことをいうものまで現れる始末である。

 

その様子を眺めている人物、一色愛梨はその醜態に嫌気が差していた。これなら第一高校へ受験すべきでしたね。

今すぐにでも転校しようかと考える彼女は左手にくぐらせているシュシュを眺めながら考える。

 

クラウド・ボール優勝後、控室へ訪れたのは今大会の前にお見合いをした焔火鳳華である。その訪問時に優勝お祝いだともらったシュシュである。

 

「愛梨ちゃんが優勝すると思っていたからね、お祝いに。似合うと思ったんだけどどうかな。」

 

そういって渡してきたのは軽い宝石に似せたアクセサリーがついた黒色のシュシュ。

 

「どうして私が優勝すると思ったのですか?」

 

受け取る前に質問をする。それはまるで彼を試すかのような質問であった。

 

「だって愛梨ちゃんは……」

 

一色家の娘でしょ?今ままでの者ならばそう答えていた。皆誰も違わずに、両親でさえ。

勿論友人たちは違う。私を近くで見てくれているから、もちろん血筋も少なからずはあるだろうが努力を見ているから。家族は見ているようで見ていない。だからあんまり好きじゃなかった。

この人もほかの人と同じなのだろうか。

 

「クラウド・ボール、愛梨ちゃんくらい努力してそうな子いなかったからね。一校の選手の練習もちょっと見たけど、愛梨ちゃんみたいに手にタコを作るくらいまで練習してる子はいなかったし。」

 

続け様に言葉を重ねる。

 

「それに競技用に用意したCAD結構ボロボロだね。相当練習してないとここまでボロボロにならないよ。」

 

クラウド・ボールは魔法競技とテニスを掛け合わせたような種目である。七草真由美のような一歩も動かずに勝利といった例外はあるもの、基本的にはテニスのようにコート内を走り、ラケットとCADを併用して競技に挑む。

だからこそ鳳華があのちょっとしたお見合いの時間で自身がどれほどの努力をしたのか、一色家の令嬢としてではなくただ個人の一色愛梨としてみてくれていたことに驚いた。

 

「ごめんね、泣くようなこと言っちゃって。」

 

自身が気が付かないうちに涙がふと出ていた。それはなぜなのかその時の彼女には分からなかったが、少しの間ではあるが涙が引くまで鳳華の胸を借りた。

 

その後は他愛もない会話を少し続けて9日目と10日目に2人きりで観戦しようと話になった。俗にいうデートというものである。

といっても三校の今のポイントを鑑みて自身がでる新人戦ミラージ・バットが本戦、つまりは上級生と戦うことになったので9日目のデートはなくなってしまったのだが。

このことはまだ彼に伝えてることはできていない。既に三校の批判からこのことをいつ伝えようかという考えに移っていた。

 

やはりモノリス・コードで鳳華さんが優勝した後でしょうか。

彼女にはもはや三校を応援する気などさらさらなかった。

 

そのようなことを考えているときにふと彼女のことが思い浮かぶ。

司波深雪、鳳華ともし仮に婚約するにあたり正妻戦争において大きな敵になりそうなのは彼女か。おそらくは彼女が事前に聞いていた何人かの婚約者の内の一人なのであろう。

 

先に手を打っておかなければ。

 

「もしもしお父様、はい。今回のお見合いの件でお話があるのですが……」

 

作戦本部室をあとにし、電話を掛ける愛梨。

何が何でも全部使って彼の心を射止める、そんな表情が目に宿っていた。

 




80万UAありがとうございます!

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次回は8日目の裏視点から先に投稿
掲示板はその後に投稿予定。
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