完全に茶番なので飲み物でも飲みながら気楽にご笑覧いただければ幸いです。
前もって申し上げます。
ごめんなさい。
これは日本にウマ娘が渡来する遥か前から続く世界の歴史。今日はその断片をご覧ください。
1世紀ーー
中華にて光武帝が後漢王朝を興す。
「うおおお、100万の敵がなんぼのもんじゃァァァ!」
「スゲェ、劉秀様が牛に乗って突撃してる! こっちの兵は1万もいないのに!」
「大将ォォォ、何やってんだお前ェェェ!」
「銅バ軍も続け!
「敵将討ち取ったりッ!」
「何で勝てるんだァァァ!?」
戦場では牛に乗り常に先頭を駆け、銅バ兵と呼ばれる農民反乱集団のウマ娘達を率いて無敵を誇りました。そのため、銅バ帝とも呼ばれたともいいます。
なお、戦闘スタイルは「策?なにそれ美味しいの?そんなことより突撃しようぜ。僕、先陣ね」と、皇帝自ら先陣切って突撃するもので、恐るべきことに本人が先陣を切った戦ではほぼ無敗でした。
後漢を打ち立てた後は善政を敷き、あまりにも温和かつ清廉な人柄に欠点がなさすぎて創作上の人ではと疑われる光武帝こと劉秀。彼の打ち出した政策の中にはウマ娘を含む奴隷解放宣言がありました。その温和で清廉な人柄から聖王や聖帝など「聖」の一字をもって讃えられたのが本人からすれば煩わしかったらしく、自らにこの一字を用いることを禁じました。*1
なお、皇帝になった後もフレンドリーな性格は変わらず、側近や大臣を引き連れて夜の街へと繰り出して門限に間に合わず野宿したことが少なくとも2回記録されています。
同時期、エルサレム。
「ヨシュア様……わたしみたいなノロマが一緒でよかったんですか? 他のお弟子さんはもう先にいってしまいましたよ?」
「良き隣人と共に歩む私は幸せである。ゆっくりと行こうじゃないか」
「えへへ、ヨシュア様は優しいです。マルタ姉ちゃんならグズグズするなっていっつも怒られるけんど、ヨシュア様とならどこまでもいけそうです」
「そうだね。共にどこまでも神の教えを広めよう。この世界には、こんなにも愛が溢れていると伝えなければ」
ナザレのヨシュアーー後のイエス・キリストが伝導を開始。彼は終生マリア*2という小柄なウマ娘を供とし、全ての人類の罪を背負ったゴルゴダの丘での十字架刑の3日後、復活した際には彼女の元へ真っ先に姿を見せたと伝わります。或いは、彼が遺した教え以外にも、彼が生きた証をその身に宿したことに気がついたのか。
マリアは罪の女と呼ばれることもありますが、これはイエスの最も愛した女性がウマ娘であることが人間至上主義の教会からすると都合が悪いため、彼女を貶めた偽りに過ぎません。
有名なマリアの義弟ラザロをイエスが蘇生させたというエピソードですが、実際にはこのような内容でした。
ある日、マリアの姉のマルタからイエス達に報せが来ます。何と義弟のラザロが流行り病で危篤だというのです。急いでベタニアへと向かったイエス達でしたが、着いたときにはラザロが亡くなって4日経っていたのでした。
マリア姉妹と共にラザロの墓へと案内されるイエス。当時のユダヤの埋葬は洞穴の中に一年ほど遺体を安置し、その後に遺骨を骨壷に入れて埋葬する方式が一般的でした。
「ラザロォォォ! 出てきてくれよォォォ!」
滂沱の涙を流して悲しむイエス。さらには悲しみのあまりラザロの墓穴を塞ぐ岩をどかすという暴挙に出ます。ところが、死んだはずのラザロは墓穴から申し訳無さそうに出てきました。
「ラザロ生きとったんかワレ!」
実のところ仮死状態になったラザロは墓の中で蘇生し、墓穴の中で副葬品のワイン等で何とか生きのびていたところをイエスによって墓穴を塞いでいた岩がどいたため外に出られたのです。
神の奇跡として名高いエピソードですが、実際には神は神でも笑いの神の奇跡だったようです。とはいえ、ラザロが良き隣人でなければそもそもイエスは墓石をどけるまで取り乱さず、彼は墓穴の中で死んでいたでしょう。この話が後世に残した教訓とは、イエスが奇跡を起こしたことではなく、良き隣人であれば災いから主が救ってくれることなのです。
なお、イエスの血を受けた聖杯と彼とマリアの子孫を巡る謎を描いたダ・ヴィンチコードは世界的ベストセラーとして知られています。
2世紀ーー
ローマ。
「ルシウス、これが新しいテルマエなのか!」
「はい。にんじん風呂と申します、ハドリアヌス陛下。にんじんのエキスを湯に溶け込ませることで疲労回復の薬効があります」
「流石はルシウス。これならばウマ娘達の士気もにんじんのごとく伸び、この戦に勝てるだろう! しかし、人間にはいまいち受けぬようだな。お主が開発した流れるテルマエは人もウマ娘も同様に好評だった。今後も人とウマ娘の双方を喜ばせる活躍を期待するぞ」
(……やはりまだ足りない。あの平たい顔族に負けないテルマエを作らねば)
ローマではハドリアヌス帝の治世下で建築技師ルシウスによりテルマエが発達。
ハドリアヌス帝は名君として知られ、その治世下でローマ帝国全体の統合強化。官僚制の確立と行政制度の整備。さらには法制度の改革といった大胆な改革と繊細な統治を実現しました。
なおにんじん風呂は湯を飲み干すウマ娘が続出し中止となった。
3世紀ーー
「これが最後の戦いかもしれん。赤兎、逃げても良いのだぞ」
「私はもはや貴方様以外に仕えたくはありません。どうか、共に死ねと命じてください」
「ははは、それはできんな。儂も兄者達と同じ時、同じ場所で死ぬと約束している。だから赤兎、共に生き抜こうぞ!」
「はい、関羽様!」
「(すまない、兄者。約束は守れそうにない)」
中華では、三国時代に突入。一日に千里を駆けると言われたウマ娘赤兎と、その指導人となった関羽は最期の時まで共にあり、関羽は捕らえられるも投降を拒み麦城の戦いに散りました。
呉の孫権は赤兎を惜しみ配下に加えようとしましたが、関羽に忠節と操を立てた彼女は食を絶ち、指導人に殉じました。
4世紀ーー
フランス北部、シャンパーニュ。
「私は最初の槍を投ずるだろう。続かぬ者は直ちに死ね。我に続く勇敢なるウマ娘よ、奪え、搾れ、犯せぇ!」
「うぉぉぉぉ、子種を寄越せぇぇぇ!」
「種ェ、種ェェェ!」
「あぁぁ、お父さん! 助けてー!」
「やめろォ! 私が何人でも相手にしますから息子は、息子だけは! この子には心に決めた子がーー」
「ほう、初物か。興奮してきた、服を脱げ。いや脱がせた」
「ヒャッハー、男は奪え! 搾り取れ! 悪いけどまだまだ全然足りないんだよぉ、繁殖期のウマ娘舐めんなよオラァ! 何がお父さんだ、お前がパパになるんだよぉ!」
「嫌ァァァ、俺たちに酷いことをするつもりでしょう! 西ゴート王国みたいに! 西ゴート王国みたいに!」
「うるせぇ! 明るい家族計画の時間だオラァ! 孫と娘が同時にデキることを悦べェェェ!」
「救いはないんですかァァァ!」
アッティラ女王率いるフン族の侵攻により西ゴート王国が崩壊。西ローマ帝国を始めとする諸国にまで影響がおよびゲルマン人の大移動へと繋がってゆきます。
なお侵攻の理由がウマ娘人口がアルテラ女王の善政により爆発的に増えたフン族内部の深刻な男性不足と繁殖期*3が重なった結果、他国への男性の略奪が開始されたのです。
アッティラ女王は「神罰」、「神の鞭」と呼ばれ西欧世界から畏れられましたが、最期は自らが陣営に招いた愛バのクリームヒルトにより刺殺されたといいます。*4
5世紀ーー
ブリテンにてカムランの戦いが発生。
「モードレッド卿。なぜ、遠征中に留守を任せたキャロット城をお前が手にし、反乱を起こしたのだ」
「復讐のためだ。我が父ロット王とモルガンの恨み、ここで晴らさせてもらう」
「そうか…奴らの手駒となったか。だが、お前は勘違いしている。本当の仇は私ではないのだ」
「違う、あんたは私の父と母を殺した! アグラヴェインが教えてくれた!」
「いいや違う。お前の本当の父母は生きている。……
「
王が如何なるときも外さなかった兜を脱ぐと、アーサー王は金髪碧眼のウマ娘だった。その容姿はまさしくモードレッドと瓜二つ。そして、その髪には母と思っていたモルガンには無かったモードレッドのチャームポイントと同じ特徴的な白い流星がーー
「
なんやかんやあってブリテンは滅びた。
ーーー
「……………」
「パカでも分かるウマ娘の世界史」という本の前半を読んでいた日本ウマ娘放送協会の松平アナウンサーはゆっくりとその本を閉じると鞄にしまい、深くため息をついた。
何十年も前に妻が娘のために買ったもので、面白いし今入っている仕事の参考になるからと渡されたが、前半の1から5世紀までを流し読みしていて頭痛がひどくなり、カムランの戦いでホースの暗黒面を見たあたりで遂にギブアップしたのだ。
「なぁにこれぇ」
それは、世界史の研究をする全ての研究者(人間限定)が新たな資料が発掘される度に呟いてきた言葉であった。ウマ娘の研究者は「わかる」だの「すごい」だのと、何故か語彙力が死んではいるが特に驚く様子もなく受け入れるのが常だ。
まるで意味がわからない。イイハナシダナーと思っていた次の瞬間には人間が蹂躙されたり、隙きあらばよく知った歴史上の偉人がうまぴょいされてよく分からないことになっている。欧州情勢は複雑怪奇というが、この世界は複雑怪奇過ぎて魑魅魍魎が跋扈する地獄なのではないかと思った。
日本に生まれて良かった……。
松平アナは心からそう思った。今取り掛かっている仕事、「ウマ娘と辿る日本の歴史」に出てくるウマ娘達の何と平和なことか。乙巳の変については忘れよう。あれのせいで松平アナは一時期人間不信になりかけるほどのトラウマになってしまったのだ。
収録開始まであと2時間。スマホを見れば、妻から連絡が来ている。
『今日も収録頑張ってね。放送、楽しみにしてるわ♡』
思わず顔がにやけてしまうが、誰が彼を責められようか。既に五十路をとうに越えた松平アナとその妻はかれこれ40年以上連れ添っているが、未だに知り合いのウマ娘の家庭と同じく熱愛ぶりを保っていた。
ウマ娘の結婚相手の9割はトレーナーだが、1割は例外がある。松平アナとその妻は、その1割だ。
待ち受け画面には現役時代の妻ともう一人の写真。トレセン時代のトレーナーだった女性ーー松平アナの母と共に秋の大欅を越えた先にある楯を抱えて二人が笑っていた。撮ったのは自分だったのを今でも思い出す。あの頃から変わらぬ笑顔が今も家には待っている。
これもまた一つの歴史。これから紡がれるものが、このようにささやかなものであればどれほど良いだろうか。
スマホを仕舞った松平アナは再来週収録の台本を取り出し、コーヒーを啜る。そして盛大に吹き出した。
『第8回 ゴールドスピリッツ 〜
台本のタイトルを見て頭を抱える。
どうやら日本はもう手遅れらしい。
本当に飲み物飲みながら読んだ人はいませんよね。
だが私は前もって謝った。
つまり私は悪くない(暴論)。
フライングで第6、7回をすっ飛ばして第8回の予告。
おそらく今後も含めて一番ヒドいタイトルです。
また機会があれば今度は紀元前も書いてみたいですね。
次回はたぶん、きっと、Maybe、来週投稿できる……はずです。
第7回のネタ探しに「阿吽」と「シンデレラグレイ」を購入し読みましたが、元が面白すぎてこれをネタにするのは逆に難しいと勝手に自縄自縛に陥っています。