ちょっと職場で例のウィルスが出ててんやわんやしていました。←遅刻の理由1割。
あと、ゴルシはともかく芦毛フェチと黒豆をどう描くか悩んでしまいました←9割。
ともかく、続きをご覧ください。
「貞光、金時、綱、やっておしまい!」
「はぃ……ライコウさん……」
「ちょ、おま、スpーー金時、何て格好をしてぬわァァァ、また頭陀袋かよォォォ!」
開幕早々に色々と端折って申し訳ない限りですが、どうやら道長は拉致監禁されてしまったみたいです。いや、本当にどういうことなの……。
頭陀袋から開放されるとどこかで見たことのある屋敷の中。そうです、ライコウの屋敷です。なお、道長の土御門邸宅から距離にして約1.5キロ。御所を挟んで向かい側の割と近場です。
「どういうことか分かっとんのか」
「……」
「分かっとんのかァァァ」
「……」
「蘇蜜*1食えよ」
「……」
「蘇蜜食えよォォォ」
「うるせェェェ! 犯人お前で良かったよこんちくしょう。一瞬だけ倫子と明子が手を組んでとうとうやらかしたかと思ったよ!」
「せやかて
「痛いところ突くのやめて。僕だって新婚初日に囲い込まれるとは思ってなかったよ! 義父さんも知らなかったみたいで僕等を尻目に親指立て合う嫁と姑*2を見た瞬間に全てを悟って牛車に詰め込まれる義父を見送った僕の気持ちが分かるか!」
「分かるってばよ」←わかってない。
「嘘だッ!」
「まあ、お前のうまぴょい事情は置いておくとして、今日はアタシの頼れる家臣、ライコウ四天王を紹介しておこうと思ってな」
「ライコウ四天王?」
「おう。温泉発見の名人・碓井貞光。田村麻呂と鈴鹿御前の子孫・卜部季武。足柄山の怪童で裸前掛けの坂田金時、そしてーー」
おもむろに約1名を睨みつけた後にため息を吐くライコウ。
「これはただの黒豆の妖怪だ」
「待ってください、ライコウ様。私は四天王筆頭の源綱という名がーー」
「うるせぇな。オマエなんかが源氏名乗るんじゃねぇぞ。渡辺*3あたりで育ったんだから渡辺と名乗れ。オマエは今日から渡辺
「いや、ライコウさん……俺気にしてないですよ。好敵手が先に主役級内定貰ったとか……俺については全然何も決まってないとか*4……そこんところは気にしてませんから。本当に、大丈夫ですから」
「めっちゃ気にしとるやん」
「あと、坂上と聞いて何でか渋々出てくれたけどやる気ゼロかつ絶不調の
「……どうしましょう、帰りたい。子孫の役だから出てあげたけど、先々週からずっと手番があって疲れがーー」
「卜部さん! しっかり!」
「それと裸前掛けの
「
「もうやめたげてよぉ!*5」
「これだけの被害がオマエのせいで出たんだぞ、黒豆。恥を知れ恥を」
「り、理不尽な……」
ぐだぐだなライコウ四天王を見て道長は甚だ不安に駆られます。
「……大丈夫か、源氏」
「失礼な、アタシらの
白に青の波模様があしらわれた
「……ナニコレ」
「オマエの衣装。今日からオマエも四天王だ」
「……………………いや、5人いたら四天王じゃないでしょ」
「おいおい何言ってんだ。四天王って、5人だろ?*6」
「ねえ、ライコウ。君の話が理解できないのは僕がパカだからじゃないよね?」
「何言ってんだ。 パカじゃなけりゃアタシと一緒にいるわけないだろ。んなこたぁ良いから着てみてくれ」
「いや、せめてお前らは出てけよ」
「ライコウちゃんは目を離さないんだからね♡ 尺の都合あるんだからとっとと着替えろよな。言っとくけど、逃げたら倫子と明子にオマエが浮気したって吹き込むから」
「やめろォ!」
全てを諦めて着替える道長。
ここにライコウ四天王幻の
「着替えたか
「……何かしっくりこない」
「そうか? んー、確かに何か足りないな。破天荒さと言うか、ちゃらんぽらんさと言うか……死んだ魚のようなナニカが足りない。あ、分かっちゃった♡」
言うやいなやライコウは道長の狩衣を引き裂き、単の左側をはだけさせました。
「イヤァァァァァ」
「生娘みたいに悲鳴上げるな。ウマっ気が苛立つ。つーか、どうよ? これぞ完全形態だろ」
「……何だろう。明らかに間違った着こなしなのに、こうあるべきと言うか、実家のような安心感がある」
描写できるか!
あからさまに銀○なのだ。
「オメーもそこそこ男前になったところで今から大事なこと言うぜ」
「そこそこ言うな! これでも年上のお姉様方にはモテるんだぞ!*7」
「オメーがモテても誰も得しねーんだよ。オマエ自身も含めてな。倫子に監禁されっか? お?」
「すみません、許してください、何でもしますから」
ん?
「ん? 今何でもするって言ったな。じゃあ、大事な話聞いてもらおうか。え〜、ここに勅令があるぜ。ほれ、本物だ。内容を掻い摘むとーー盗賊団土蜘蛛ってのを討伐して欲しいみたいだな。んじゃ、早速行くぜ!」
「待てや! それ本当に僕行かなきゃだめ!?」
「おいおい、主殿……嫁も、家臣も、源氏で固めた。つまり、オマエも源氏だ。情けないこと言うヤツには蹴りだぜ、蹴り! うぉらぁァァァ! お前も源氏になるんだよッ!」
「誰か助けてくれェェェ!」
ライコウ怒りの「
「ボク、ヒトリムシャ。ゲンジバンザイ、トウゾクコロス」
「よし、主殿改め独武者くんも分かってくれたところで行くぜ野郎共(ほぼウマ娘)。出陣じゃーい!」
「「「「おー(棒)」」」」←絶不調。
「ゲンジバンザイ」
土蜘蛛ーー彼等は神武天皇の御代より皇室に抗ってきた者達の総称です。今世の土蜘蛛は都を荒らす盗賊団の一つでした。が、目をつけられた相手があまりにも悪すぎたのです。
「
「画材はアンタらの血だぞ。逃げるなら今だぜ……俺から逃げられるならな」
「影も踏めない程度の脚で、私から逃げられるわけありませんよ……遅すぎます」
「渡辺綱ーー参る。うん、名乗ってみたら意外と悪くないな。あ、(命が)掛かっているみたいだけど息を入れるなんてさせませんよ。息は引き取るだけです」
「ゲンジバンザイ!」
少数精鋭のライコウ四天王。ほぼ全員がウマ娘。少しばかり人間の中にウマ娘が混ざった盗賊団でも、戦闘のプロフェッショナルである四天王達に勝てるはずもなく、根切り撫で斬りの土曜夜のゴールデンタイムにはとても流せない光景が広がっています。なので、坂田金時周辺の唯一ほのぼのとしている映像をしばらくご覧ください。
「オネガイシマス、コナイデクダサイ、ウツサナイデクダサイ」
「おい、何なのよあの格好。兄弟、アタイはとうとうおかしくなっちまったのか!」
「もちつけ妹分よ。間違いない……アレは露出狂だ。肌を晒して興奮し、自らの闘争意識を爆発的に高めてやがる。相当な変態だぞこいつは」
「つ、強いのかなぁ」
「戦場であんな格好……間違いなく手練だ。傷一つ負うことなくあのパカでかい
「やべぇよ。他の道探そうよ。絶対やべぇよアイツ」
「そうだな。あんな格好のウマ娘と戦うくらいならまだ人間っぽい独武者と戦ったほうがマシーー」
「き、兄弟! くそぅ、恐ろしく正確な狙撃で眉間が撃ち抜かれてる! 誰だアタイの兄弟(血の繋がりは無い)をやったのはーー」
「チェストトウゾク、ゲンジバンザイ」
「デタァァァ!」
……しばらくトウカイテイオーがトレーナーとカイチョーの間で甘えている微笑ましい映像をお楽しみください。*8
「いやー、土蜘蛛は強敵だったな。飲み過ぎた4日目の朝くらいの強さだったな」
「それ二日酔いでさえないじゃないですか。俺、酔ったことないので分からないですけど」
「オメーの変な形の水筒*9の中身、麦茶だもんな……普通に飲めよ」
「ちょ、ライコウさん! それ言わないでくださいよ!」
ちなみに麦茶は平安時代から貴族の間で飲まれていたみたいです。
「……ハッ、僕は何を!?」
「悪い夢を見たのよ。花の都の競技で大敗するみたいな夢ーーそんな夢を」
「ヒデェ話だぜ。一体どこのパカのせいだ?」
「お前のせいだよ! 思い出したぞライコウ。何てことしやがる、仮にも僕は主ぞ!」
「洗脳が甘かったか。仕方ねぇな……あと2、3回蹴り入れとくか」
「よくぞ土蜘蛛を討ち取った。褒めて遣わす」
「分かりゃ良いんだよ、分かりゃ」
「ライコウ様……いつかバチ当たりますよ」
「うるせぇ黒豆! 春のすめらぎ賞でアタシに勝ちやがったこと一生恨むからな。お前をゴルす」
「何なのこの人……*10」
「神様仏様、本当にバチ当ててください。300文あげますから」
その夜ーー
「だりぃ……2週間目のセミみたいに元気でねぇぜ……」
「本当にバチ当たってるよこの人」
「ざまぁ、ライコウざまぁ。偉いぞ神様、100万年寄進します」
「覚えてろよ黒豆と主殿……お゛ぼ゛え゛て゛ろ゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛」
翌朝ーー
「ライコウちゃん、大復活〜☆ やる気満杯、有頂天!」
「嘘でしょ……また台本と違うことになってる*11」
「こいつ……僕等を埋めるためだけに歴史を書き換えやがった……」
「やっぱり神様なんていませんでしたね……」
庭先に埋められた道長と綱。見切れた金時は「お母ちゃん……都は怖いところです」と足柄山を恋しく思いました。
「どういうことなの……」
「さあ?」
「本当にどういうことなの……」
「気にしたら禿げるぞマツケンサンボマスター」
「私の原型残ってないんですけど……と言うか、道長何やってるんですか。貴族の御曹司ですよね」
「んにゃ、アイツ若い頃から結構盗賊退治とかしてるぞ。まあ、ライコウちゃんが連れてったってのもあるけど……夜の都、家の障子破いて回る青春ーーじゃなくて、それを取り締まる側として頑張ってたんだ。自費で」
「え、自費?」
「おう。誰に頼まれたわけじゃねぇ。勝手に都の治安維持をやってたな。弓矢の腕もアタシら本職に負けないくらいだったもんな〜道長。ま、ヒーロー活動に熱中しすぎたせいで勘当されかけてるんだけど」
「けれど、当時から道長の人気が高いのはそういった活動が巡ってきたとも考えられますね」
「だな。何せこの後色々あったけど、道長は敵を呪詛したとか貶めたとかそう言う噂とは無縁だったからな。あの時代は噂一つで致命的だけど、誰も道長を疑わなかった。アイツはそんな奴じゃないって、皆思ってたんだ。ま、呪詛しようにも日本のグランドキャスターで平安のスーパー陰陽師・安倍晴明は道長の庇護下にあったし、検非違使よりよほど仕事していた源氏を抱えていたのもプラスに働いたな」
「……あの、ゴr、オールバトさん、口調、口調」
「ですわ」
「取って付けたようなお嬢様口調やめません? スーパーのお菓子コーナーのPOP以下ですよ」
「あらぁ、わたくし何の事だかわかりかねますわぁ」
「……私知〜らない。さて、ライコウ四天王といえば、やはり大江山ですが、あれはいつ頃の話なのですか?」
「ええと……あれは今から36万……いや、1万4000年前だったか。まあいい。アタシにとってはつい昨日の出来事だけど、オマエらにとってはたぶん明日の出来事だ」
「あ、そういうの良いんで」
「……徳川アナ、死にかけの道長に似てるな。アイツも年取ったら丸くなりやがって……けど体型は丸くなかったな*12」
「せめて晩年って言ってくれませんか!? あと私は松平です」
「真面目な話に戻るとしてーー大江山は990年の冬頃だったかな。アイツがメンバー入りしてから割とすぐだったな」
990年ーー
父、兼家の死から3ヶ月後の同年10月、摂政道隆は娘の定子を前代未聞の四后*13として世の反感を買いました。しかも、道隆は父の喪中に立后を行ったことが余計な反感を産んだと当時の貴族たちは日記に書いています。中宮大夫*14道長は、喪中の件と強引なやり方にキレて仕事をボイコットし、世間から賞賛されました。権力者道隆は甚だ弟を疎ましく思いましたがそんな道長を罰することはできませんでした。それは、道長傘下の源氏が大手柄を上げ、世間がそれを決して許さなかったからなのです。
「よお、主殿。鬼退治行こうぜ」
喪中で屋敷に籠もる道長*15は日々のうまぴょいから開放されだいぶ血色がよくなっています。倫子は触れ合いの無いことに不満に思いつつも可愛い盛りの愛娘彰子(2歳)をあやし、家族水入らずの日々を送っていました。が、明日を喪明けに控えた道長の元に動く破天荒が来襲したのです。
「いきなり何ですかライコウ。私はもう四天王を引退しました。そもそも加入した覚えも無いのに何でーー」
「お、倫子ちゃん今日も美人だな。そう言えば知ってるか? コイツの初恋はアターー」
「あたかも白雪が如き髪のそなただ倫子! もうあの日からぞっこんですよ、本当に。もう倫子しか勝たん。ところでライコウ、仕事の話だろう、そうだろう。さあ、内密な話だからお前の屋敷に行こうか! 明日が喪明けだからバレんようにお主の牛車でなぁ!」
「あ? あたしんちバ車しかねぇぞ。外で金時に待たせてっからよ」
「あの娘にそろそろまともな服着せてあげなさいよ! 寒空の下で可哀想に」
「アタシだって鬼じゃねぇからちゃんと許してるぜ。今の金時は裸前掛けに足袋を履かせている」
「余計いかがわしいわ! 倫子、何か適当に僕の服着せてあげて……え、嫌です? 僕の服を他人にあげたくない? いや、外見てきてみ。裸前掛けに足袋だけ履いたウマ娘がご近所からの目に晒されながら待ってるから」
「この件終わったらいい加減服着せてやっから構わねーだろ。んじゃ、旦那を2、3日借りてくぜ。心配しなくても無事に返してやっからよぉ……五体満足とは限らねーけど」
「イヤァァァァァ、オウチカエル!」
「ここがオマエのお家なんだよなぁ」
またしても何も知らないまま連行される藤原道長さん(24)。例の衣装ではなく山伏姿にコスプレさせられると、平安京周辺で最も危険な場所である大江山へと向かわせられたのです。
「今回はぎりぎり喪中であるオマエの名は使えないから
「保昌ァァァ! なに名前貸してんのォォォ!」
「と言うわけで大江山に行くゾ」
一方、大江山では土蜘蛛討伐などでライコウの活動が本格化したことを察した酒呑童子達は出入りする者達を厳しく詰問しました。そこに、山伏姿になったライコウ達は潜入任務を開始したのです。
「こちらライコウ、任務開始点に到着した。これより
「一体誰に言ってんだお前」
「こう言うのはノリだよノリ。オマエ、まだまだノリが悪いぞ。そんなんじゃ『ご○んですよ!』に勝てねぇぞ」
「僕は何と勝負させられているんだ……」
山伏姿の一行は一晩の宿として大江山の盗賊の砦に泊まらせてくれと願います。今どき見事な怖いもの知らずのウマ娘の山伏だと彼らを気に入った大江山の盗賊達は快く受け入れようとしますが、そこを酒呑童子の副官である茨木童子が見咎めます。
「おい。そっちのお前は……人間か?」
「はい……お供をさせていただいております」
へへぇ、とへつらいの笑みを浮かべる道長。人間、流石に命がかかると何でもするものです。
「ふぅん、なるほど。非常食(意味深)と言うわけか。なるほど。ところで、私も最近日照り気味でね。ちょいとばかしつまみ食いをしても、構わないかね?」
「よろしくてですわよ」
「はい、田村麻呂様以外ならどうでも良いです」
「日照りとか何だか俺には分かんねーけど、コイツが持ってる食い物なら食っていいんじゃね?」
「可愛そうだけど、仕方ないね」
「けっぱるべー」
「お前ら嫌いだ。大嫌いだ。畜生めェェェ!」
「冗談だよ。けど、シュテンには気をつけなよ。アイツは線の細い年下の男が好みだから……本当に食べられちゃうかもよ」
その言葉に道長は「そんなに女顔か僕?」と訝しみ、ライコウは「普通に通用するんじゃね? オマエ、髪とまつ毛を変えたらナディ○に似てるもん」と言い道長を絶望させました。が、一瞬素が出たライコウを茨木童子は見逃しません。
「待て。君、こっちを向いてくれるかな?」
じっとライコウを見る茨木童子。お嬢様オーラで誤魔化しながら冷や汗ダラダラのライコウを道長は内心でざまぁと嘲笑います。
「何だ、ただの芦毛の可愛子ちゃんか。てっきりあのイカレ娘かとおもったよ。君も災難だね……アイツと似ているなんて思われても」
「い、イカレ……アイツとは、どなたのことかしら?」
「そりゃ、源ライコウのことさ」
「…………ええ、迷惑しておりますわ。おかげで毎晩ヤケまんじゅうをパクパクですわ」
「はは、良かった。あの気狂いがこんな可憐な芦毛ちゃんなわけないものな。同じ芦毛でも大違いだ」
ふむ、と茨木童子は今度は渡辺綱を見ます。
「そっちの艷やかな黒豆のような髪の君。何だか運命を感じてしまうね。いや、ここにいるのはまるで血の繋がったーーまるで親戚の集まりのような気分さ」←ステゴ産駒
「……そうですか」←SS産駒
「確かに、何だか不思議な感覚ですね!」←SS産駒
「皆毛色も違うのに、どこか惹かれ合うナニカがありますね」←ステゴ産駒
「言われてみればそうかもな〜……ですわ」←ステゴ産駒。
「おい……何でだ。ウマ娘じゃない僕まで同意せざるを得ない何かを感じるぞ」←???
「ふっ、私達は姉妹だったようだな。血ではなく、ウマ魂で結ばれた魂の姉妹。言うなれば運命共同体。互いに頼り、互いに庇い合い、互いに助け合う。一人が五人の為に、五人が一人の為に。だからこそこのイカれた時代で生きられる。団員は姉妹。団員は家族ーー」
「嘘を言うなっ!」
猜疑に歪んだ暗い瞳がせせら嗤う。
無能、怯懦、虚偽、杜撰、どれ一つ取っても内裏では命取りとなる。それらを纏めて無謀で括る。
誰が仕組んだ地獄やら。
兄弟姉妹が嗤わせる。
お前もっ!
お前もっ!
お前もっ!
だからこそ、
僕の為に死ねっ!
「くくっ、その言葉が聞きたかった。盗賊とは何かを分かっているじゃあないか。ようこそ、君も家族だ。シュテンはきっと気に入るだろう」
何とか茨木童子の詰問を逃れた一行は標的である酒呑童子の面前へと到達します。酒呑童子は既に酒で出来上がっており、上機嫌に一行を迎えました。
「どうだ、シュテン。こいつらなら一晩と言わずずっといてほしいほどの強さを感じないか?」
「ああ、合格だ。特にそこの栗毛。……オマエは特に気に入った。走ること以外どうでも良いって眼をしていやがる。先頭の景色に焦がれているその眼ーーアタシが一番気持ちいいのは、その景色を台無しにしてやることさ。アンタの逃げ足、アタシがグチャグチャに差し壊してやりたいなぁ」
「走ることと同じくらいーーいえ、それ以上に大切なものくらいあります。けれど、あなた如きが私を差せるとでも?
「くく……ギャハハハ! アタシが力不足だとぬかすか。いいぜ、構わねぇ。今すぐ勝負だ。逃げてみせろ!」
「やってみせろよシュテン」
「何とでもなる筈よ」
「即席競技だと!?」
「あわわ、季武さん、何売り言葉に買い言葉してるんですかぁ! マズイですよ」
「……いや、マズイのはお前の格好だろ。どうした、乳臭いウマ娘。アンタ、いじめられてんのか? 分かるぜ。アタシも昔は虐められてた……速攻で逆転してやったがな。良くわからんが、強く生きろよ」
「うう……盗賊さんが一番優しい……」
「金ちゃん、騙されちゃだめよ。この子、きっと自分の『自主規制』に発狂するような女よ」
スズカァナニイッテンノサァー!
「……いや、変な印象付けるのホントやめてくれねぇか? アタシはまだどっかの豆大福と違って汚れてないって言うか……金色の暴君的なカッコイイ路線でいきたいから……実装前からそういうの、いけないと思う」
((((コイツ、実装まだ諦めてないのか))))
「……ああもう、やめだやめ。嫌な話になっちまった。大体さぁ、ウマ娘は三冠バのアタシや
「シュテン、それ以上いけない」
「情緒不安定な……」
「だいぶ出来上がってんなコイツ……マジで酒呑んでんの? へべれけじゃん」
「へへ……どうせアタシは牝バに負けるようなへっぽこ三冠バですよぉ。貴婦人の体当たりで力負けするような……ぐすっ、何だよぉあの貴婦人……殆ど吉田○保里じゃねぇか。なんつー娘産んでんだよ寝坊助ェ、普段はぽやんとしてるくせに競技だけ性格変わるとかお前にそっくりじゃねぇか……」
「なぁ、ジャsーー主殿……貴婦人の体当たりとかそんな凄かったか?(小声)」
「お前は体格恵まれてたから宝塚で弾き返してただろうが。逆に貴婦人が面食らってたぞ(小声)」
「呑みすぎだぞシュテン。全く……いや、逆に潰したほうが大人しいか。あんたら、強い酒とか持ってないか?」
「それならスペ太郎(偽名)が持ってたな。スペ、用意していた酒出してくれ」
「ーーません」
「え?」
「あげませんッ!」
「いや、そういうの良いから」
「私の持ちネタなのに……」
「いや、実際には君言ってないでしょ。それより神便鬼毒酒出してよ」
「何そのあからさまに怪しい名前のお酒。賭けても良いけど毒入ってそうだね」
「鬼に便とか、身の程知らずの金色さんにはお似合いのお酒ですね」
「ドウセアタシナンカ……」
「やめろォ! シュテンは見かけより繊細なんだぞ! 元いじめられっ子が必死に去勢張ってるだけの脆い刃なんだからな!」
「……どうでも良いけど、話が進まないから呑んでくれねぇかな」
極上の味ながらもアルコール度数もまた極めて高い神便鬼毒酒により、酒呑童子はコテンと眠りについてしまいます。茨木童子にも勧めましたが、彼女は酒よりも甘い物が良いと言って断り、ふらふらと外に出てしまいました。目の前には酔いつぶれた標的ーーウマ娘5人と人間1人。何も起きないはずも無く。
「お前をゴルす」
組み敷いて首を跳ねようとするライコウ四天王。突然の暴挙に酒呑童子は驚き目を覚まします。
「ン、何だお前ら(驚愕)!?」
「金時、押さえろ!」
「はい!」
「なんだその派手な腰巻き(虎柄)はよぉ。カッコイイな、俺も買おうかな」
「5人に勝てるわけないでしょ!!」
「パカ野郎お前アタシは勝つぞお前(天下無双)!どけお前! コラ!」
「どきませんッ!」
「何だお前ら、酒飲ませて寝込みを襲うとか鬼でもしないぞ! お侍様の戦い方じゃねぇだろ!」
「何を申す! 酒に酔ったところをブスリは日本の伝統芸じゃい。古事記にもそう書いてあるゾ(史実)」
「やめろォ、何すーー」
ウマ娘が折り重なりあう百合百合しい光景の筈なのに、妙に汚いものを幻視してしまった道長は無言で太刀を振りかぶると、酒呑童子の首を落としました。
「そういうの、ホント良いから」
「「「「ごめんなさい」」」」
首だけでも謝る酒呑童子。なおライコウと季武は無視しています。
首魁の酒呑童子を失い、酒に酔いつぶれた他の盗賊も全て討ち取られ、ここに大江山の盗賊団は壊滅したのであります。そう、ただ一人の生き残りを除いて……。
「……最後の賭けはお前の勝ちだったが、命を取られてちゃ世話が無いな、シュテン。だからあれだけ酒をやめろと賭けたんだ。まあ、今更関係無いがね。風来坊の私にはそろそろ限界だったし、これからは好きに生きるさ」
茨木童子はその後、復讐のため渡辺綱に挑む説話などがありますが詳細は不明です。いずれにせよ、彼女はただ一人生き残り、その後の歴史に現れることなく消えたのでした。
酒呑童子討伐の勲功もあってか、ライコウは春宮大進に昇進、主君の道長も権大納言に昇進しました。今や都は空前の源氏ブーム。誰もが源氏を称え、道長を支持しました。それを見た道隆は苦々しくとも中宮大夫をボイコットした道長を罰せなかったのです。
しかし、道隆は道長への報復を諦めたわけではありません。何と、息子の伊周を20歳で内大臣に据えてしまったのです。ちょうどその時期は道長の舅である左大臣の源雅信が薨去したため、左大臣の位には雅信の弟である源重信が。右大臣には道兼がつき、内大臣には当然道長が順当に繰り上がって昇進すると思っていたため、慣例至上主義かつ調和を重んじる貴族達は道隆に猛反発します。挙げ句、増長した伊周は内裏にて道長とすれ違った際に年上の叔父である道長に自分の方が位が高いから道を譲れと命令し、道長を呆れさせました。
この頃の道隆は、はっきり言って痛飲が原因の糖尿病によって正常な思考能力を失っていました。健康が悪化しているにも関わらず痛飲し、人前で頭を晒す*17などの醜態を重ね、いよいよ健康が悪くなると自らは隠居し、全てを伊周に継がせようと画策したのですが、道隆の強引さを毛嫌いした妹の詮子は元々道長へのブラコン気味を加速させて伊周排除に舵を切りはじめました。一条天皇は道隆の娘で伊周の妹である中宮定子に気を遣いつつも関白の座など全てを伊周に継がせることは留めざるをえず、とりあえず道隆を内覧*18とし、伊周をその代理としました。ところが、伊周は代理ということに不満を持ち、正式な内覧職とすることを強要したのです。一条天皇は甚だ不快に思いつつも義兄の言うとおりにしました。これで仕事ができれば良かったのですが、内覧職として立案した朝廷内の倹約令は帯の長さの統一など余りにも細かく、お洒落に闘志を燃やす平安貴族の逆鱗に触れるものでした。これには一条天皇も匙を投げてしまいました。
結局、散々に晩節を汚した道隆は糖尿病により死去。その座を継いだ道兼も僅か数日後に当時の都で流行していた麻疹により死去し、藤原氏は道長と伊周による跡目争いが勃発したのです。
最初に動いたのは、何と道長でも、伊周でもありません。意外、それは詮子ッ!
「次の内覧は私の弟、道長です。異論は認めません」
「お、叔母上。話が違います。父上は私を後継にせよとーー」
「餓鬼が……図に乗るな。私の兄弟は道長だけ。兄など存在しませんし、お前を甥と思ったことなんか一度も無いわ。というわけで、内覧職はあなたよ、道長。それに、格下の餓鬼より官位が下なんて嫌でしょう? 来月からは右大臣にしてあげる」
「御意のままに、東三条院陛下」
「違うでしょ道長。お姉様、でしょう?」
「お、お姉様……」
「ふぉぉぉぉ! そうよ、私が、唯一無二のお姉様よ!」
(僕の周りの女性はこんなのしかいないのか……)
「う、右大臣? 内覧に続いて官位までーー一体どういうつもりですか叔ばーー」
「やかましい! いつまでいるのだ。疾く失せよ、私はお姉様だぞ!」
「お、お姉様、国母とか皇太后の方が僕の姉を名乗るより上位かと……」
「閃いた、姉であり国母である私はいわばこの国すべての民の母。即ち、道長ーー私はお前のお母さんだったのよ」
「いやその理屈はおかしい」
道長のツッコミは虚しく母を名乗る姉という深淵に飲まれてゆき、ドン引きした伊周を完全に蚊帳の外に置きつつ詮子は道長を次の氏長者へと据えることに成功したのです。
これに不満を持った伊周は真の氏長者は自分だと喧伝しますが、市井の評判は道長の方が圧倒的に上。貴族も皆道長に味方し、皇族も詮子により道長派が優勢。唯一の味方である中宮定子は慎み深く、身内贔屓をするような性格ではありません。実質的に伊周は孤立していったのです。
「すっかり政治家の顔だな主殿」
「……母を名乗る姉に追いかけ回されるのが政治ならば、この国は滅ぶべきだと思います」
「そう言うなよ。オマエの出世がライコウちゃんの給料にも直結するんだから、もっと出世してくれねえと困るぜ。ところでさ、またオマエん家の前で変な奴らが暴れてたから全員六条河原に頭から埋めといたぞ」
「よくやった。どうせ伊周の嫌がらせだから構うまいさ。むしろ芦毛流の伝説の技でも放てば良かろう」
「……何いってんだオメェ。芦毛流なんてこの世に存在しねぇぞ。やっぱ時代はバクシン一刀流だな。受けてみるか、アタシのバ剣・立上り*19を」
「??? 記憶違い……いや、待てコラ。何だバクシン一刀流って。注釈までついてるけどそっちの方が存在しねぇ記録じゃねぇか。本当に適当なことしか言わないなお前」
「やりたいように生きるのがアタシの侍道だからな」
「何、N○RUTOの忍道みたいに良い台詞っぽくしてんだよ。単に頭がバクシンしてるだけじゃねーかよ!」
と、そこに金時が何やら慌てふためき駆けてきました。
「ライコウ様ァ!」
「どうした金時……オマエ、やっと服を……」
「はい! ようやく着用許可が出てーーじゃなくて、大変なんです、大変!」
「大変な変態なんです?」
「違いますッ! とても笑えるものじゃないです。源氏の情報網と晴明さんから報せが来て、道長様の家臣が殺害されたことと、伊周の舅が呪詛している疑惑が出たんです」
「……やっちまったなぁ、オイ」
「殺害に呪詛……噂でも失脚には十分だぞ。何で今こんなことをーー」
道長が振り向く前にライコウは道長の耳にこう吹き込みました。
「……ご運が開けましたな」
「ライコウ……」
悪い顔をすライコウに、道長は真顔でツッコみました。
「取り敢えず岡○准一に謝れ」
「ぴすぴーす。許してくれなきゃ河原に埋めちゃうぞ♡」
「それ謝罪じゃなくて脅迫だからァァァ!」
………
「やる気を失ったまま放浪を続けるライコウちゃん。
辿り着いたエデンが彼女に希望を教える。
遂に発動する人類股間計画。
ディープインパクト阻止のため、最後の決戦を挑む四天王。
空を裂く鬼切安綱、赤い大地を疾走するウマ娘達。
次回、『シン・ゴールドスピリッツ 〜道長とライコウちゃんの奇妙な冒険〜 鬼殺の刃を添えて』:||
さ~て最後まで、サービス、サービス~!」
「お前が予告するんかい! つーか次回の内容と全く関係ないじゃねぇか! 何だ人類股間計画って! ツッコミきれるかァァァ!」
つづく。
実際には大江山の件っていつ頃なんですかね。一条天皇の御代ぐらいしか時期の情報が無いので、道長を何とか絡められる時期に設定しました。
パロディが多すぎて筆者も「なぁにこれぇ」となっています。