ウマ娘と辿る日本の歴史   作:ぶ狸

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大変ご無沙汰してしまいました。
私生活で色々ありましてなかなか筆が進まず申し訳ありません。
今、私は中東にいます。このご時世に何を冗談を言っているのかと思われるかもしれませんが、そういう仕事なのです。
日本を離れて思ったことは、日本の電波最高。あと外国のタマゴはケミカルな味がすることです。
必ず帰ってくるのでしばしお待ちを。


第10回「平氏と源氏 〜ヒトとウマ娘の誓い〜」その2

「一旦スタジオに戻ります。ヨアケノハナさん、白河院が清盛に告げた警句とは、一体どういう意味なのですか?」

 

「あの警句ですね。『我ら血によってウマ娘となり、魂によりウマ娘を超え、血によってウマ娘を失う。指導人よ、かねて血を恐れたまえ』……これはウマ娘の血の特性、インブリードに関する警句と言うのが一般的です」

 

 インブリードとは、近親婚により先天的にウマ娘の力を増大させた子どもを出産することを目的にした結婚です。

 これは主に父親、即ち人間男性に寄るところが大きく、同じ人間男性を祖とする系譜が孫や曾孫世代でウマ娘を出産した場合、全くの他人同士よりも強いウマ娘となることが統計で出ています。主なインブリードによるウマ娘としては幻のトキノミノルやブエナビスタ、オルフェーヴル、エルコンドルパサーなど堂々たるウマ娘が名を挙げられます。

 

「……ああ、ミノルちゃんは確かにそうか」

 

「親戚でしたっけ?」

 

「家内の方が、まぁ一応。つまり、血を恐れよと言うのはやはり人間と同じく近新婚による健康リスクを指しているのですかね」

 

「その通りです。ウマ娘でも近新婚は健康リスクがありますし、人間よりも顕著に現れます。武士団である源氏と平氏と言った閉鎖的な環境では、一族同士の婚姻は非常に多く血が濃くなる危険性がありました。白河院はここに警戒し血を絶やすなと説いているわけですね」

 

「……人とウマ娘を争わせておいて勝手なことを言いやがって」

 

「至極同感ですけれど、松平さんテレビ、テレビですよ〜」

 

「大変失礼しました」

 

「心がこもってな〜い」

 

「それで、白河院(筋金入りのろくでなし)は何故そのような警句を清盛に伝えたのでしょうか」

 

「いくつか説はありますが、その後の歴史を考えますと武士の世……すなわちウマ娘の世が来るにあたり警戒すべきは特定の男性の血が濃くなりすぎること。これまで、聖徳太子以来様々な偉人が多数のウマ娘に好意を寄せられてきましたが、血の氾濫が起きなかったのはパートナーたるウマ娘の強すぎる独占力(例:鈴鹿御前)と、ウマ娘側の人間への配慮と人間側の結婚関係を人間主体とする方針(一夫多妻、妻問婚)によるものです。しかし、そのバランスがウマ娘の世では壊れる可能性が非常に高いのです」

 

「……と言うと?」

 

「やだなぁ、松平アナウンサー、わかってるくせにぃ。現状だって政府やURAが対応に追われている問題ではないですか〜、人間男性の婚姻問題は」

 

 現状でも社会の大きな問題となっているのが、人間男性の婚姻問題です。結婚できないのではなく、それ以前に血で血を洗う争いが生起し、させられない状況にある場合が多すぎるのです。

 これはトレセン学園のトレーナー(生贄)のみの話ではなく、一般的な男性でさえ巻き込まれる可能性のあるものです。

 昨年、このような事案が発覚しました。

 とある一般会社員の男性がウマ娘と結婚を前提とした恋人関係となり、ウマ娘のご実家へ挨拶に行きます。すると、そのウマ娘の姉妹4人全員が男性に好意を抱きその場で修羅場が発生。オハナシの結果、これ以上ライバルを増やさないため姉妹全員で男性を監禁する方向で合意し、以後3年間に渡り自由を奪われていました。不審に思った男性側の家族の捜索願と近隣住民からの証言により発覚しましたが、男性が保護された後に一切の刑事訴訟を起こさなかったばかりか、監禁には自分も合意していたと証言しウマ娘側に一切の刑罰が及ばないようにしました。それに対して検察側は脅されているのてはないかと追求しましたが、被害者男性は憤慨し「そんなことはない。ただ、彼女達は自分がいないと駄目になってしまうし、自分も彼女達なしでは生きられない」と訴えたのです。

 加害者側のウマ娘達は口を揃えて供述します「姉妹だから我慢できるけど、他人だったら許せない。私達以外のウマ娘から護るためにも必要な事だった」これに対して検察側(ウマ娘)は、「護るためだもん、仕方ないね」と事件性はなしと処理しました。

 

「いや、だめでしょう」

 

「何の問題ですか? 卑しいヒトミミと他のウマミミから護るためです。仕方ないね」

 

「単なる独占欲では?」

 

「違います。愛です」

 

「愛って何だ(哲学)」

 

「躊躇わない事ですかねぇ」

 

 

 ……話を清盛側に戻しましょう。

 

 

「それで、話って何?」

 

「君の舞にか゛ん゛と゛う゛し゛た゛あ゛」

 

「……何言ってるの、アンタ」

 

「受けなかったか。最近合ったウマ娘が結構面白い奴でな、その真似をしてみたんだが」

 

「いや、面白くないから」

 

「そんなことより、あの舞に即興で合わせるなんて感動したよ。凄いな、キミは」

 

「別に……何となく舞ったら息があっただけだよ」

 

「何となく……つまり運命では?」

 

「蹴られたいの?」

 

「ちょっと待って、大鎧着てくる」

 

「蹴られる前提で話進めんな。……ったく、アタシ、源義朝。舐めたら本当に蹴り飛ばすから。アンタ、平氏の御曹司でしょ。ウマ娘でもないくせに、武士気取りの一門」

 

「武士は武士、人もウマ娘も関係なし。平氏にもウマ娘はいる。源氏にだって人間はいるだろう」

 

「それは、そうだけど」

 

「平氏も源氏も武士だ。お前も武士なんだろう……。まあ、俺だけが何者にもなれずにいるが」

 

「平氏の棟梁の子だったら武士じゃないの」

 

「何者でもないのだ……皆はさるお方のご落胤だと言い、母はウマ娘。この平清盛、何者にもなれずにここにいる」

 

「……え、母親がウマ娘ってことは、アンタはウマ娘なの?」

 

「いや、見ての通り人間の男だが」

 

「じゃあヒトじゃないの」

 

「しかし母は間違いなくウマ娘なのだ。俺は特別らしいのだ」

 

「……いや、それ騙されーー何でもない。アンタの母親は、ちゃんとアンタを見てくれているの?」

 

「無論だ。母上がいなければ私は修羅道に堕ちていただろう。たとえ本当の関係が何であれ、母は母だ」

 

「そう……良かったね」

 

「まあ、形式上の父上や人間の母上はよく分からないけどな。あの二人は私の存在を認めていないからな」

 

「待って。複雑すぎて意味わかんないんだけど」

 

「案ずるな、俺にも分からんほど難しい。でだ、そちらはどうなのだ、義朝。聞くところによると源氏と平氏は仲が悪いようだが」

 

「まあ、仲が悪いというか……殆ど逆恨みだよ。アタシの母親、あんたの親父と同い年みたいで何かと張り合ってさ。途中までは親友と言っても良くて愛バの契りを交わす寸前だって話だけど、家督相続する少し前から何故か急に仲が悪くなって、ギスギスしたまま今に至る。訳を聞いても、うるさいだのお前がなんか産むんじゃなかっただの……ホント、サイアク」

 

「……」

 

「アンタは武士になれてないって言うけど、アタシだってそう。『身体が小さすぎる』、『手足が細すぎる』、『お前は武士になるべきウマ娘じゃない』……全部、全部聞き飽きるほど言われたよ。武士になれないウマ娘……そんなのに価値なんて……」

 

「……私はそうは思わん。走ることこそがウマ娘の可能性であり、価値だ」

 

「そんなわけない」

 

「ある。夜明けだとか武士だとかは、ウマ娘にとって本来の価値ではない。誰よりも速く、どこまでも遠く走ることこそが本当の価値。証明してみせよう。私達ならそれが出来るはずだ」

 

「…………え、待って。私達?」

 

「そうだ。君と愛バの契りを交わしたい」

 

「何でそうなるの……意味わかんないんだけど」

 

「君に可能性を感じた。一目惚れだ」

 

「〜〜ッ! ば、バッカじゃないの!」

 

「バカでない。おパカだ」

 

「いいや、オオバカだよ! アンタ、愛バの誓いを甘く見てるんじゃないの。アタシらウマ娘からすれば、婚儀より重たい誓いなんだけど。一目惚れとか、信用できない!」

 

「私は本気だ。キミに惚れた」

 

「〜〜ッッッ! 知らない! 勝手にしろ!」

 

「義朝……私は諦めないぞ」

 

 義朝とのファーストコンタクトは不調に終わる一方で、政治的には清盛は順調すぎる出世を進みます。

 1134年には14歳で従五位上。2年後には従四位下に昇進。

 一方の義朝は無位無官であったため禄な収入の無い実家を支えるべく伝統三冠への挑戦を決意します。体格も小柄で指導人もいない中での挑戦はうまく行かず、現在のメイクデビュー戦にあたる新人戦を6着に敗北。かろうじて未勝利戦を勝つものの、次走で再び6着に敗北。その後も勝てない競技が続き、夢は潰えたかに思えた秋口、トボトボと屋敷に帰る義朝の前に彼は現れたのです。

 

「良い走りだった」

 

「……アンタ、どうしてここに。何が良い走りよ。全然ダメ。源氏のウマ娘なのに……全然勝てなかった。そんなアタシのどこが良い走りだったっていうの!」

 

「そうだな。全然ダメな展開だった。脚質では最も体力を使う中段先行の位置。少しでも距離を短くしようと内ラチに寄り、追い込みをかけたときには前の沈んでくる逃げ馬に阻まれて抜け出せず、ようやく抜け出したときには後続にいたはずののウマ娘が遙か先を走る。君からすると、まるで壁のようだっただろう」

 

「そうだよ。全然抜けられなかった」

 

「だが、君は諦めなかった。脚はまだ残っていた。だから必死に大外に向かい、結果は2着だった。私が知るウマ娘であれば、バ郡に沈んだ時点で半数より上に入るウマ娘は稀だ。それに、そこから闘志を切らさず最後まで諦めないウマ娘はもっと稀だ。だから私は言うのだ、良い走りだったと」

 

「けど、勝てなかった!」

 

「次は勝つ。必ず勝つ。だが、そのためには訓練が必要だ。今のキミの走り方を変えるために、ほんの少し努力がいる」

 

「……」

 

「あの舞から半年だ。半年、私はキミのことばかり考えていた。確かに最初は一目惚れだったかもしれない。キミは無敗ではないし、勝ちよりも負けが多い。そろそろ母君や郎党から言われているのではないか? 向いてないから競技をやめろ、とか」

 

「……ああもう、うるさい! 何でアンタに見透かされなきゃいけないの! 分かってるよ、アタシだって。身体が小さすぎる? 手足が細すぎる? 友達の頭がデカい? お前は競技に出るべきウマ娘じゃない。どれもこれも、聞き飽きたっての!」

 

「そうか(関係ないの混ざってなかったか?)」

 

「けどね、アタシは諦めたくない。武士にも、源氏にもなれないアタシが……走ることを、ウマ娘であることまで諦めたら……何にもなくなっちゃうよ……」

 

「そうだな」

 

「あと家計が本当に……キツイ。アタシが稼がなきゃ、源氏が滅んじゃう」

 

「お、おう。分かった、分かったから不安そうな顔はよしてくれ。大丈夫だから、次の競技絶対勝つ方法教えるから。だから愛バの誓いとは言わずとも……指導人からでお願いしても良いだろうか?」

 

「……本当に勝てたら、考えとく」

 

 そして、清盛と義朝の周囲には秘密の特訓により、次の重賞競技「丹波競争」にて義朝は外側後方で脚をためる作戦を身に着け、最後の末脚で勝利を得たのです。

 

「勝ったな(ドヤァ)」

 

「……何? 顔がうるさいんだけど」

 

「勝てたから正式に指導人として契約をーー」

 

「はいはい。約束だからね、よろしく」

 

 正式に指導人となった清盛と義朝のコンビは続く「神讃記念」と「弥生賞」を快勝。弱小ウマ娘は、一気に期待の新星へと変貌したのです。

 なお、両家の関係を考えて清盛は謎の覆面指導人としての参戦でしたが。

 

「……で、皐月賞の日にまで何でアンタ覆面なの。しかも魚柄」

 

「好きかなと思って。ほら、どうだ。鼻のあたりはハリセンボンが描かれているんだ」

 

「魚は嫌いじゃないけど……ぷふっ……似合ってないし」

 

「あ、笑った。義朝が笑った!」

 

「〜〜! う、うっさい! 笑ってな……ぷっ、なんで後頭部に蛸が来るような模様を……タコ坊主……ひ、卑怯でしょ、それ」

 

「え、そんな面白いことになってるの私?」

 

「ぷっ、あはは! 自分で選んでおいて気づいてないとか、可笑しすぎるでしょ」

 

「ぐわぁぁ、何か悔しいぞ! 義朝がそんなにツボるほど面白いのに何で私は見れないのだ!」

 

 義朝は小柄な体格から期待されていませんでしたが、皐月賞を爆発的な末脚で勝利し、平安優駿でも1着*1。菊御紋賞を目指すも肺を病み、清盛の願いにより回避します。

 

「よもやよもやだ!」

 

「うっさい…ゴホッ…病人の前で大声出すな」

 

「しかし…義朝、三冠とれた筈なのだぞ!」

 

「そりゃ獲れないのは悔しいけど…、アタシ別に称号目的じゃなくて賞金目的だからそこまで嘆かなくても」

 

「賞金も大事だが、私の愛バが最強だと示せなかったのが悔しいのだ!」

 

「はいはい。それじゃあ…ゴホ…すぐに治すから。春のすめらぎ賞をとれば文句ないでしょ」

 

「そうだが……やはり悔しいな」

 

「無理して走れなくなるよりは良いよ。それとも、無理してでも走れって言いたいの?」

 

「それは違う。……健康管理まで手が届かなかったのは私の責任だ。もっと医療が進んでいれば、君にこんな思いをさせずに済んだのに」

 

 当時の日宋貿易においては既に日本の文化や技術は大陸から学ぶべきものをあまり見いだせぬほど向上していましたが、医療だけは別でした。漢方等の東洋医学後はこの時代ではイスラム世界の医療と並ぶまさに最先端の医療であり、徒然草の著者として知られる兼好法師は「唐の物は、薬の外に、なくとも事欠くまじ」と書き残しています。

 

「確かに、ウチの家計じゃ唐土の高い薬なんて買えないからね。……言っとくけど、ゴホ……贈り物とか言って持ってきたら本気で蹴るからね。今でさえ綱渡りなのに、アタシらの関係がバレたら面倒だから」

 

「分かってる。うん、三冠は残念だったけど、何かちょっと安心した」

 

「泣いたり安心したり忙しないけど、どういう意味?」

 

「だって、義朝。ここで走るのをやめたら何にも無くなっちゃうとか言って無理して走りそうだし」

 

「はあ? 言わないよ、そんなこと」

 

「そうなのか」

 

「そうだよ」

 

 アタシには、アンタがいるから。もう、何も無かった頃のアタシじゃないから。その言葉を、義朝は胸に仕舞い込みました。

 

 一方でこの頃、実は滅茶苦茶忙しかったのは忠盛です。

 鳥羽院が建てた得長寿院に千体観音を寄進すると、その功績により内昇殿を許可されたのです。武士である忠盛が殿上人となったことを憎んだ公卿たちによる闇討ちが企てられますが、忠盛は刃をチラつかせることにより脅し、これに恐れをなした公卿たちが院に内裏で刃をチラつかせるとは許し難いと訴えるも、忠盛が差していたのは銀箔を貼った竹光でありハッタリだったのです。この機転を鳥羽院は「賢い」と称賛しました。

 収まりのつかぬ公卿は忠盛に鳥羽上皇の前で舞を披露するよう仕向け、忠盛が斜視だったことから、公卿たちに伊勢の特産品「酢瓶の瓶子」と囃し立てます。しかし、舞は忠盛からすれば得意中の得意とするところ。清盛よりも年季の入った見事な舞踏を演じて逆に讃えられました。

 一方で源氏は、当主の為義は忠盛が活躍するのとは正反対に荒れ、多くの乱暴狼藉事件を引き起こして非常に苦しい立場にありました。稼ぎは実質義朝頼みで、義朝以外の他の妹達は地方で自らの食い扶持を探さねばならぬほどの困窮ぶりでした。また、清盛との出合いにより精神的に安定していた義朝と違い、気性の問題で追放される者もいました。たとえば、源為朝はその一人です。

 

「ほ〜ら、よしよし。おかあさんですよ〜」

 

「「「オギャァ…」」」

 

「や、やりおった。荒くれ者の京童が一気に三人も赤ちゃんにされおった!」←義賢(特別出演タマモクロス)

 

「……いや、意味分かんないんだけど」

 

「あらぁ、姉上達どうしたんですか? もしかして、一緒にでちゅね遊びしたいんですか?」

 

「や、やばい! 今の為朝はやばいで! あれはあんまりにもアカン、阿寒湖さんよりアカン*2ことで有名なダメ義こと為義オカンからの愛情不足で『私自身がお母さんになることです』と変な方向に覚醒したでちゅねの悪魔や! 近付くもの全てを赤ちゃんにしてしまう母性の怪物や! 義朝ねぇちゃん早く逃げーー」

 

 振り返ると、そこに義朝はいませんでした。

 

「……嘘やろォォォォ!」

 

「はぁい、よしよし♡」

 

 ああ、ウチはこれからあかちゃんにされる。

 

 もはや朝廷でも手の付けようがない怪物と化した為朝は九州へと追放となりました。

 てんやわんやの源氏内部ですが、ダメ義こと為義は娘たちのことなど気にせず、忠盛への対抗心だけを燃やしていました。

 1135年。都への物流で大きな懸念となっていた瀬戸内海の海賊討伐に任命される人物に為義と忠盛の名前が上がります。為義はこの役を熱望しますが、朝廷は何事もスマートに解決する忠盛の方が適任であると考えて忠盛に海賊討伐を命じます。これに為義が更に荒れ狂ったのは想像に難くありません。

 

「また忠盛に仕事を盗られた……今日こそ、今日こそ文句言ってやるんだから」

 

 意気揚々と文句をつけに行く為義。なお、この決意は今回で数百回目になります。

 

「た、忠盛!」

 

「為義か。久しいな」

 

「え、ええ、久しぶりですおすし。ほ、本日はお日柄もよく、絶好の良バ場ですわね」

 

「そうだな。流石はウマ娘の為義、いかなる時もバ場を気にするか」

 

「もももも、もちろんだわさ」

 

「お主の娘の義朝も競技で活躍しているみたいだな。母親譲りの良い末脚だ」

 

「……え、ええ。そうですわね(ナンデアイツノハナシヲスルノ)。では、ごきげんよう。おほほほ」

 

「ふむ……相変わらず気の良い奴だ。全く、あの為義が荒くれ者だのとはひどい言い掛かりだな。俺といい、あいつといい、出る杭は打たれるというやつか。白河院め、ウマ娘の世とやらを望むのならば御隠れあそばされる前に為義に昇殿くらい許せばよかろうに……いや、平氏と源氏、すなわち人とウマ娘の闘争を齎すのが奴の狙いなればあからさまな贔屓は当然か。源氏の棟梁があいつでなければ、俺も安心して復讐に邁進できなかったな」

 

 独り勝手に為義を評価する忠盛と、本人を目の前にすれば乙女のように何も言えずへたれる為義。絶妙なすれ違いは平氏と源氏の仲を良好とは言えずとも決裂するほどではない程度に維持していました。

 

「……義朝が忠盛に褒められた? アリエナイ、アリエナイ、アリエナイ。姉さんは死んだし、他の娘は走らせてもいないのに。アイツ、また私から忠盛を奪おうというの? 憎らしいヤツ……本当に、姉さんそっくりの、憎らしい娘」

 

 何を思ったのか、為義は義賢を無位無官の義朝を差し置いて東宮帯刀の地位に据えます。これは実質的な廃嫡であり、母娘関係の断絶を意味します。

 居場所を失った義朝は都を離れて東国で一旗挙げる計画を立てます。しかしそれは、清盛との別れを意味する決断でもありました。

 

「本当に東国に行くのか、義朝」 

 

「うん。もう決めたから。ここにアタシの居場所は無いし……東国の方が競技は盛んらしいから、向こうにアンタの愛バの力を見せつけるのも良いかなって、思ってさ」

 

「私は……東国までは……」

 

「分かってる。向こうでは一人で頑張るよ。アンタも、アタシがいないからって指導人の腕を鈍らせないでよ」

 

「……今の君なら、私以外の指導人とも上手くやっていける。競技の盛んな東国や関東ならば私より優れた人もきっとーー」

 

 言い終わる前に義朝に胸ぐらを掴まれ、互いの吐息を感じるまでに近付けられる清盛。突き放すために言った心にもない言葉の報復として一発殴られるかと思いきや、そこにきたのはいじらしいほどに加減した、縋るような掌。

 

「義朝?」

 

「わかれ……アンタじゃないと駄目だって、いい加減わかれ! アンタ以外は、嫌なの」

 

「分かってるよ、本当は。けれど、私は君の傍に居られないから。支えてあげられないから」

 

「……ある。支えになる方法、一つある」

 

「どうやって?」

 

「……産むから」

 

「は?」

 

「アンタの子、産むから」

 

「何故にそうなる!」

 

「絶対産む! その娘と一緒にいつか、絶対に戻ってくるから……待ってて」

 

「……長くは待てんぞ。私にも、御曹司としての役割がある」

 

「浮気したら……死なない程度に蹴り殺すから」

 

 爽やかな別れの雰囲気が漂い、清盛はそれとなく距離を取ろうと試みます。後ろに一歩、もう半歩といったところで、その肩はがっしりと尋常でない力で押さえられました。震える視線を愛バに向けると、凄絶な笑みを浮かべているではありませんか。

 笑うという行為は本来攻撃的なものであり、獣が牙をむく行為が原点なのです。

 

「で、ここまで言わせて指一本触れないとか、女に恥かかせるつもり?」

 

「いや、ここは雰囲気で男女が再開を誓って別れて、互いに別々の道をだなーー」

 

「子は鎹って、良い言葉だね。血は、決して消しされない証になるんだから」

 

 かねて血を恐れたまえよ(震え声)。

 

(白河院ンンンンッ! アレってそういう意味もあったんですかァァァ!)

 

 以下、割愛。性なる一歩半を公共電波に流せるはずもない。イイネ?

 数日に渡り色々と絞られ、何かを失い、人としての尊厳さえ危うい清盛。死にそうな身を引きずりながらようやくたどり着いた実家の門。乱れた着衣から何かを察する義母。何故か一人だけ出される赤飯。いっそ殺せと言いたかったのですが、突然父に呼び出されてしまい神妙な面持ちで部屋に入りました。

 

「為義の娘と親しいようだな」

 

「父上……それは……」

 

「言い訳は無用だ。近々、嫁を取らす。高階の家から貰う。何やら、向こうはお前を気に入っているようでな」

 

「そんな、勝手な!」

 

「お前を源氏に近寄らせるわけにはいかん」

 

「私が誰を愛そうと勝手では無いですか。それに、父上も源氏との縁談があったと聞きまーー」

 

 斬られた。

 そう思うほどの殺気が忠盛から放たれています。親が子に向けて良いはずもない濃厚な殺気。しかし、清盛が引き合いに出そうとした話は、正しく忠盛の逆鱗に他ならなかったのです。

 

「二度と、俺の過去に、土足で踏み込むな。あの方のことをお前が口にするな。それだけは、絶対に許さない」

 

「いいえ。踏み込ませていただく。何故に源氏を嫌うのです。」

 

「嫌う? 俺が、源氏を? 貴様がーーあの血を引く貴様がそれを言うか? 貴様の体に流れる血を知って同じことを申すか! たとえ平氏も源氏も同じ血から生じたとは言え、貴様に流れる血を知れば誰もが青褪めるであろうに。血……? 待て、同じ?」

 

 清盛に僅かに面影が見える憎むべき治天の君。あの幼子に教え諭すようで、人間味の欠片もない声が脳裏に蘇ります。

 

 忠盛くん。いつか、君もまた裏切るとしても覚えておきなさい。相変わらず君は頑なですが、老人の警句は聞くべきです。

 

『かねてより血を恐れたまえ』

 

 おやおや、君は本当に私を憎んでいますね。けれど、その思いもまた人間らしくて可愛らしいものですよ。

 

「……」

 

「父上は、何か知っておられるので?」

 

「……人とウマ娘。平氏と源氏。白河院……皇室。我らは桓武帝より生じ、源氏は清和帝から。そうか……血か。そういうことか」

 

「父上?」

 

 反目しあっているうちは良い。だが、一度堰が切れて、代を重ねればどうなる。

 方やもはや日の本で最もウマ娘に理解ある一族。方や、愛情を前には盲目となるウマ娘。血は重なり、いずれはーー

 

「あの怪物め、一体何処までが手の内だ。俺の復讐さえもか? 永遠の夜明け……そんなものと思っていたが、人とウマ娘への情はある。おぞましくて吐き気がするな。それほどの情を持ちながら、互いに争えと焚きつける。俺には理解できん。俺には……義忠さんや、為義とは戦えない。きっと、刀を向けることさえできないだろう」

 

「義忠さん?」

 

「……俺が愛した唯一の方だ。約束なんだ。ヒトとウマ娘が争わずにいられる世を作る。それを成し遂げるために、俺は今まで生きてきた。永遠の夜明けなどというものをぶち壊す。そのために、お前を我が子として育てたのだ」

 

「夜明けとは……戦いによる人とウマ娘の切磋琢磨。より高次の存在への昇華。そんなところですか」

 

「察しが良いな。だが、一つ僥倖はある。奴の狙いが何にせよ、為義の娘と親しいお前が源氏と争うことは極めて低かろう。あの為義の娘だからな。きっとお前が手も足も出せないほど気立ての良いウマ娘だろうな」

 

「いや、その……もはや手も足も出ないというか、尻に敷かれたというか、むしろ手も足も出されたというべきか……」

 

「……おい、お前、まさか」

 

「ち、誓って、誓って私からは手を出しておりませぬ。むしろ襲われた側であります!」

 

「よもや……よもや……いや、先程言いかけたことは取り消す。お前は、血はまぁあれだが、うん、認めよう。お前は紛うことなく俺の子だ。こんなことで分かりあいたくはなかったが……そうか。相手は為義の娘か」

 

「はい」

 

「舞が上手く、末脚は鋭いか?」

 

「それはもう」

 

「小柄で、癖のある鹿毛か」

 

「ええ。小柄ですが、誰よりも強いウマ娘です」

 

「女の好みまで似るやつがあるかパカ者め、まったく。確か、為義は東北に行かせると言っていたか……いや、むしろ良い。あそこは白河院の手も薄かろう。こうなっては、いよいよ対決の日は近い。お前には苦しい道になるぞ」

 

「しかし、父上。白河院は既に御隠れになって久しく、もはや憂いなど無いと思うのですが」

 

「死んだ程度で、あの物の怪が止まるものか。あの腐れ外道、本当にウマ娘に関しては当代随一の研究家だったよ」

 

 想いの継承。魂の共振。

 ヒトの身では不可能な、ウマ娘固有の能力と言っても差し支えないもの。それを、人為的に起こせるとすれば。

 例えば、薬品と洗脳による人格と記憶と知識の上書き。手段が手段故に個体数は少ないものの、白河院は自分自身の継承を成し遂げていたのです。

 

「よもや、そのようなことが可能とは。相手はもはや個人ではなく組織なのでは?」

 

「組織ではない。だが、個人と呼ぶにはあまりにも悍ましい。気をつけろ、朝廷のどこかに必ずあの男は隠れ潜んでいる。そやつらを見つけ、根絶やしにする。今や、それこそが俺の戦いであり復讐だ。お前も、志を共にしないか?」

 

「……既に同じ志であるとお分かりでしょう。是非とも、私も共に」

 

「ほう、何のために?」

 

「我が愛バとの平穏のために」

 

「愛バか……素晴らしいじゃあないか。存分に探し、狩りたまえよ。穢れた浮世。吐き気のする物の怪。頭のいかれた為政者共。皆もううんざりじゃあないか。俺達の最終目標は、全ての物の怪を狩り尽くし、人とウマ娘の淀みを根絶すること。きっと誰にも理解されぬだろう……だからこそ、俺は同じ志を持つものを愛するのだ」

 

「はい」

 

 綺麗に話が纏まりつつあり、清盛はそれとなく部屋を出ようとしますが、それを許す忠盛ではありません。

 

「それはそれとしてお前の縁談は変わらんからな。高階殿は同じ志を持つ者。お前にとっても悪い話ではない」

 

「ちょ、そこら何とか! このままでは私が義朝に蹴り殺されてしまいます!」

 

「案ずるな、高階殿の娘もウマ娘だ。白河院の落胤たるお前を取り合って争うウマ娘。ふん、これ以上なくあの物の怪への皮肉だな。そんな夜明け、犬も食わんだろう」

 

「間に挟まれる私は挽肉となって犬に食われるでしょうがね!」

 

「知るか、死ねば良い。為義の娘で義忠さんの姪御に蹴られるだと? そんなご褒美で死ぬような腑抜けならば潔く死ね。俺もかつては義忠さんと、何故か為義の蹴りを我が強靭なる腹筋を以て受け止めたことのある身だ。その蹄跡は未だ消えんがな」

 

「言いたくはありませんが、為義殿がひねくれたのも父上が蹴られたのも当然ではありませぬか」

 

「パカな。為義のどこが捻くれておると言うか。くだらん噂を信じるな。あやつは今も昔も心根の良きウマ娘だぞ。あの蹴りは、アレだ。何か虫の居所が悪かったのだろう」

 

「……度し難い。度し難いですぞ父上!」

 

 あれよあれよと言う間に縁談は纏まり、高階家の息女との婚姻の日。清盛は逃げ馬の如く脱走を計画しますが、思いもよらぬ再会がそれを阻みます。

 

「通憲殿ではないか。高階と聞いてもしやとは思ったが、まさか私の嫁はーー」

 

「ああッ、あの時の少年だ! 久しぶりーーって、ええっ、違うよぉ。アタシもう旦那いるし、子どももいるんだけど」

 

 高階通憲。かつて涸れ井戸の底から救い出されたウマ娘は念願の平安優駿を勝利した後に競技の世界を引退。現在は学者だった身の上を鳥羽上皇に見出され内裏で活躍する公卿であります。また、鳥羽上皇の第4皇子たる雅仁親王(後の後白河天皇)の乳母を務めています。*3

 

「キミに紹介するのは、うちの旦那の親戚の子で、右近将監高階基章の娘さんの和子ちゃんだよ。向こうにいるから、会ってきなよ。じゃ、後はお若い二人でってね」

 

 右近将監は決して高い地位ではなく、武家としては出世頭と言える清盛にはやや物足りない身分です。しかし、白河院の陰謀に気付き、反抗を決めた同志である高階家と関係を深めたいと考える忠盛としては是が非でも結びたい婚姻でありました。

 後は若い二人で、と言われて残される清盛と和子。

 

「和子殿は、何故に縁談に乗ったのだ?」

 

「あなたのお家が好きだからよ」

 

「……? 平氏の家が? いや、悪くはないが、決め手になるほど良い家かね?」

 

「だって、平という字は、平穏という字にもあるでしょう。良い名前よね」

 

「ああ、家って、そういう意味か」

 

「わたし平穏って言葉が好き。だから、お嫁にいくなら平さんのところが良いなぁって思っていたら、こういうご縁があったわけなの。それに、あなたも素敵な方だからきっと上手くいくわ」

 

「おかしいな。平穏とは程遠い、むしろ煩いとか暑苦しいとはよく言われる。そんな私が良いのか?」

 

「はい」

 

 愛バを忘れたわけではない。けれど、この女性とならきっと上手くいく。きっと良い家族になれる。そういう確信が清盛にはありました。

 決して、そのふわふわとした雰囲気を裏付けるような泰山の如き尻に惹かれたわけではないのです。

 1137年頃、清盛最初の結婚。

 夫婦仲は良く、翌年には癖の強いどころではない芦毛の髪をした。長女を。翌々年には武辺者といった風な黒髪の次女を授かります。

 

「このまま平穏に、一緒に年を取っていけたらいいのにね」

 

 清盛の最初の妻について残っている資料は少なく、本来ならば名前さえ伝わっていません。分かっているのは、清盛との間に二人の子を儲け、そして亡くなったことだけです。

 彼女との間に儲けた長女・重盛は平氏の中にあっても後ろ盾はなく清盛自身も出自から平氏の嫡男の地位は確かなものでは無かったため、本来ならば清盛は身分ある女性を妻として地位の安定化を図るのが筋でしょう。しかし、この後に清盛は長らく後妻を迎えようとせず、周囲の勧めからようやく1145年頃に後妻を迎えた後も、嫡子の座を重盛と定めて譲りませんでした。

 彼女と共にいたと思われる期間は清盛という英傑の人生において取り立てて何もない空白期間でありますが、同時に数少ない平穏であった時間でもあります。

 後に傲慢さや悪逆さを誇張され、長らく誤解され続けることとなる清盛ですが、十訓抄において、若かりし頃はむしろ穏やかで誰にでも優しい性格であり、冬の寒い時に身辺に奉仕する幼い童を自分の衣を布団代わりに寝かせ、その子がが寝付いてしまったらそっと部屋から抜け出して存分に寝かせるなど、寛大な逸話が多く残されています。あるいは、若き日に連れ添った相手の影響を受けたのかもしれません。

 

「……一緒に年を取ろうと申したではないか。重盛達のためにも、寂しくとも生きていかねばならぬではないか」

 

 平穏な時は瞬く間に過ぎ去り、時代は少しずつ動き始めようとしています。そして、物事が動くときは始めは緩やかに、そして急転するが如く一気に動いていくのは歴史の常と言えるでしょう。

 一方そのころ、関東地方。

 

「箱根を抑えていた一族が完敗したらしい。距離も短距離から長距離まで自在。最後には囲んでおきながらも大外からぶんまわされて抜かれたそうな」

 

「あれで童を抱える母親だっていうから恐ろしい。賞金目当てに次々と関東のウマ娘を降して従えている。ウマ娘の指導をしておった武家の棟梁たちも面目丸つぶれじゃ。まったく、どこの誰があんな怪物を鍛えたんだ」

 

「まるで凶星の如きウマ娘だが、仕方ない。天災だと思って過ぎ去るのを待とう。流石に奴も鎌倉の小さな競技には来ないだろうしーー」

 

「こ、子連れ狼が来た!」

 

「おのれ、こんなささやかな競技まで刈り取るというの!?」

 

「……おお、仏陀は寝ておられるのか」

 

 鎌倉、鶴岡八幡宮。

 神事として行われるささやかな競技も、彼女には関係ありません。二冠ウマ娘として、現役最強の誇りにかけて関東のウマ娘を全て下す。そのための戦場を彼女は選びません。

 小柄な体躯は僅かに丈を増し、癖のある赤みがかった鹿毛の髪は結えるほどに伸び、碧眼には他人を寄せ付けない凄みと、確かな母としての情。そして、腕には闇夜の如き黒鹿毛の髪をした小さなウマ娘。あまり母親には似ず、顔立ちは父親に似たのかどこか焔のような苛烈さを思わせます。

 

「関東のウマ娘も弛んでるね。ろくな指導人がいないの? アイツなら、もっとマシな走り方教えるよ。まあ、どうでも良いか。娘の布おむつ代も欲しいし、一着貰ってくから」

 

 源義朝、関東のウマ娘を傘下に収める。ところで、腕に抱いた娘の父親は一体……。

 河内源氏の勢力基盤がライコウ以来脈々と基盤としてきた河内から、元を正せば平氏側であった関東となったのはこの義朝の代であり、居城を源氏にゆかりのある鎌倉に移し、特に相模国に強い基盤を持ちました。

 一方で義朝の勢力伸張は関東の他の源氏、特に下野国の足利に本拠を置く大伯父・源義国の勢力と競合することとなり緊張を生みます。しかし、下野国は奈良時代にとある老僧がウマ娘の育成に関するノウハウを残して以来ウマ娘の競技が盛んであり、菊御紋賞を未出走で逃したとは言え二冠ウマ娘たる義朝には一目を置いていました。そこで、緊張緩和を目指す義朝が直接赴くと義国と勢力争いなどどうでも良いとばかりに意気投合し、同じ走りを愛する盟友となることで解消されました。

 この時、義朝が清盛から学んだことを競技者目線で指導した各地のりょうウマ娘は義朝を「お姉さま」と慕い、後に嫁ぎ先で産んだ娘を義朝の競技的遺伝子を継ぐ者と言う意味で「義朝の娘」と称したと言います。

 歴史において、後に治承・寿永の乱の際に挙兵した源頼朝の許へ集った余りにも多くの義朝の子どもがいます。血では無く、想いで繋がった者達。それは血に縛られた平氏と、血よりも想いによって纏まった源氏を対比させる形にもなっていました。

 

 『我ら血によってウマ娘となり、魂によりウマ娘を超え、血によってウマ娘を失う。指導人よ、かねて血を恐れたまえ』

 

 怨敵の警句の通りに滅びゆく己の末裔に平氏中興の祖・忠盛の憂いは如何ばかりでありましょうか。しかしながら、彼等の歴史を語るのは今少し先といたしましょう。

 

「もう6年か……この子も大きくなったし、そろそろ都に戻ろうか。アンタも、お父さんに会いたいよね?」

 

「ひかりとやみのであい(訳:お父さんにに会いたい)」

 

「……関東の訛が移ったかな?」

 

 そして、役者は再び都に集うのです。

 

*1
割愛していますがチケゾーこと高階通憲(信西)は既に平安優駿で勝利した後に競技を引退。学問の道に進んでいます。そのため、義朝の好敵手は存在しなかった。

*2
キンイロリョテイ「うっせぇわ!」

*3
※史実では高階通憲の妻:朝子が乳母。この世界では高階通憲がウマ娘となっている関係で習合しています。




歴史情報番組風というよりも大河ドラマに近寄っている件。原因なんですけど……どう考えても大河ドラマ「平清盛」の影響てすね。賛否ありますが、私は結構楽しんで観ていました。あと、若い頃の清盛と義朝の史料って少ないんですよね。特に義朝関連は想像するしかない点が多いです。
 次回からようやく史料も多い時期に入ると思います。

改変ポイント。
史実では義朝は清盛より5歳ほど下ですが、この世界では同い年として扱います。

早めに登場人物紹介
平和子…脚はそれほど速くはないけれど、流麗な舞を得意とするウマ娘。やや癖毛。3冠バを産みそうな良い尻をしている。好きな言葉は平穏無事。本人はトレセン学園の先生ではなく、ダンスの先生。ハヤヒデやブライアンからは特に慕われている。


 なお、源氏と平氏の関係悪化の時系列は以下の通り。

忠盛と為義が幼馴染として親交を深める。為義は忠盛に好意を寄せる。

義家死去前後。為義の叔母の義忠が忠盛(ショタ)に一目惚れ。姪のボーイフレンドを寝取る。

程なくして義忠が白河院により暗殺。為義は忠盛にアタックするもフラれ、以後グレてしまう(ダメ義伝説のはじまり)。

グレても未練たらたらで同じ職場(北面の武士)に就職したり当てつけるように同僚と付き合ったりしたが復讐を胸に秘める忠盛はガン無視。亡き叔母への嫉妬と、踏み出せなかった自分の現状に余計やさぐれる。

不良行動ばかりして出世は忠盛に大きく差をつけられ、同僚との間に生まれた義朝への愛情も抱けずにいる。これらは全部平氏が悪いと逆恨みしているが、忠盛を前にするとこれ以上嫌われたくないので何も言えないヘタレっぷり。⬅イマココ。
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