風紀委員を決めるためのファイトが終わり、クラブ活動勧誘期間が始まりました
そこで衝突を起こす剣道部と剣術部
その諍いに土門魁斗も首を突っ込むようです
剣士との闘いはどのような決着を迎えるのでしょうか
それでは!マギクスファイト!レディー……ゴー!
その日の授業が終わり放課後。
本日からクラブ活動勧誘期間が始まる。
この期間中は有望な新入生の取り合いになる上にオリエンテーションのためにCADの携行が許可されているため別名クラブ活動勧誘合戦と呼ばれており、風紀委員最初の大仕事となる。
新入生の多くがどこのクラブに入ろうかと期待に胸を膨らませる中、不機嫌さを醸し出してる
普段から余り人を近づけない雰囲気を出している彼が更に不機嫌なことによりほとんどの人が彼に話しかけることができない。
しかし、それは大多数の人間であってそんな彼に構わず話すことができる一部の人もいる。
「どうしたんだよ土門。腹でも減ってんのか?」
「あんたじゃないんだからそんなわけないでしょ。」
「なんだと!」
「エリカちゃんもレオ君も喧嘩はやめてください!」
「まあ、土門のことだから鍛錬の時間が減るのが気に食わないんだろう。」
土門と親交があるエリカ・レオンハルト・美月・達也の四人は土門の雰囲気を気にすることなく会話を広げていく。
彼が更に気を悪くしないか周りの人たちは戦々恐々としていたが彼が少し笑みを浮かべているのを見てそれが杞憂だと悟り各々の活動に戻った。
「まあ、そうだな。正直に言って気が進まん。」
「だが、決ってしまった以上どうすることもできない。さっさと覚悟を決めておけ……そろそろ俺は行くよ。」
「そうか……達也!」
「どうした?」
「風紀委員頑張れよ。」
「ふっ。お前は早く入るクラブを見つけろよ。」
軽口をたたき、
それを見送る土門はまだ入るクラブを見つけていない者同士であるエリカと共に勧誘を行う上級生でごった返す校門前へと向かった
「勝者!土門魁「いや違うな。」なに?」
摩利の勝者の宣言は本人によって遮られた。
確かに土門は達也の首元に手刀を当てている。
しかし、よく見ると土門の鳩尾には達也の拳が寸止めされていた。
「お互いに急所への寸止め……勝負は引き分けといったところか。」
「けど、だとしたら結局達也君の風紀委員入りはどうするの?」
「確かにそうですね……」
どちらが風紀委員にふさわしいかを決めるための模擬戦だった。
しかし結果はどちらも申し分ないほどの逸材である。
しかし、推薦枠は一つしかない。
どちらかを選ばなければならないことに頭を悩ませる。
その悩みに対して当の本人が解決策を出した。
「でしたら自分は「元々は達也が風紀委員にふさわしいかを決めるファイトなんだ。そのまま達也を推薦すればいいだろう。」……」
土門の言葉に明らかに下がっていた演習場の室温が戻っていき、その元凶である少女の笑みからも冷たさがなくなっていく。
だが、深雪以外はなんとなく土門が風紀委員になりたくないだけだということを察していた。
しかし、下手に追及して深雪の機嫌をまた悪くさせても困るので黙っておくことにした。
「なら風紀委員に推薦する人が決まったところで達也君は本部まで来てくれ。」
「はぁ……わかりました。」
「それじゃあ私たちも戻りましょうか。魁斗君は帰ってくれていいわ。今日はありがとう♪」
「構わん。二回もファイトできたのだから俺としては本望だ。」
「それならよかったわ……そういえば今度クラブ活動勧誘期間が始まるけど、うちは生徒会や風紀委員に入ってるなどのよほどの事情がない限りはどこかに絶対に入らないといけないからね♪」
「なに?」
「いや~ほんと土門と一緒にいると変な輩に絡まれなくていいから楽だわ~!」
入るクラブがまだ決まっていないエリカと土門は現在行動を共にしている。
取りあえず演習を見たいということで『第二体育館』、通称『闘技場』に向かっている。
そのために部活動勧誘を行っている上級生がひしめき合っている道を通っているのだが誰も彼らに声を掛ける様子はない。
二科生だから誰も声を掛ける気が起きていないとかそういうわけではない。
なんなら誰もがエリカを勧誘しようとしている。
深雪という圧倒的美少女が近くにいるせいで埋もれてしまっているが、エリカは彼女とはまた違うタイプの美少女であり、広告塔やマスコットとしては申し分ないほどである。
そのため特に非魔法系クラブが彼女を勧誘しようと目を光らせているが隣にいる土門魁斗が放つ気迫のせいで誰も近づくことができない。
何のアクシデントも起きることなく平和に目的地に向かうことができるためエリカの表情はとても明るい笑顔だった。
「……」
闘技場に着いて現在行われている剣道部の演習を見ているが、エリカは先程の笑みが噓のように不機嫌だった。
「上機嫌かと思えば今は機嫌が悪くなったり……せわしないやつだなお前は。」
「だってさ、落ち着いて演習を見れるのはいいんだけどその見てるのがこんなただの殺陣じゃ機嫌も悪くなるでしょ。」
「そうか?これは誰かに見せるためのものだある程度見映えをよくしたほうがいいだろう。それにそれを一般人にはわからないように見せれているんだ。あいつらの技量の高さを伺える。」
「……」
「どうした?」
「いや、あんたのことだから『なんだあれは!武道というものを
「流石にそのようなこと言わん。俺をなんだと思っているんだ?」
「いや~それは「ちょっと!何やってるの!」ん?」
彼らの会話は突如さえぎられた。
下を見ると先ほどまで行われていた演習が終わり、倒れている生徒、何か言い争いをしている女子生徒と男子生徒の構図が出来上がっていた。
野次馬根性を働かせ近くに向かうエリカ、土門もそれに着いていく。
「あの二人か……面白いことになりそうね。」
「知っているのか?」
「女子の方は壬生沙耶香。一昨年の剣道女子で全国二位よ。男子の方は桐原武明。こっちは関東剣術大会のチャンピオン。まあ、要するにジャンルは違うけど二人とも剣において学生の中でもトップの実力を持つ人達よ。」
「なるほど。」
今現在の険悪な雰囲気。
そして両者共に名のある剣士であればこの後何が起きるか想像に難くない。
武闘家ではあるが剣も少しかじっている土門としても期待を寄せてしまう。
「剣術部の順番までまだ一時間以上あるのよ!どうして大人しくできないの!?」
「おいおい心外だな壬生。あんな未熟者相手じゃお前の実力を披露できないだろうから俺が手伝ってやろうってのによ。」
「無理矢理勝負を吹っかけてきたくせに何が協力よ!その上先輩を気絶させるなんてどうかしてるわ!」
「あいつが先に手を出してきたんだぜ?それに対して俺は面の上から竹刀で叩いただけだ。それで気絶するってことはそいつが未熟なだけだろ。」
明らかに挑発する男子生徒。
一触即発の空気に周りの人達は固唾を飲んで見守ることしかできない。
「せっかくだ可哀想だから魔法は使わないでおいてやるよ。」
「魔法に頼り切った剣術部のあなたが剣技のみを磨き続ける私に勝てると思っているの?」
「へっ。なら見せてやるよ。身体能力の限界を超えた次元で競い合う、剣術の剣技をな!」
その言葉と共に始まる試合
一瞬で距離を詰め、両者剝き出しの頭部に向けて竹刀を振り下ろす。
スパンという音が響き、それが勝負の決着を伝えた。
ぱっと見では相打ちのように見えるがわずかながら壬生の竹刀の方が深く決まっている。
「真剣なら致命傷よ。素直に負けを認めなさい。」
「真剣なら……?そうかお前は真剣勝負が望みか……ならお望み通り
負けを認めるよう壬生が言うと、桐原は不敵に笑い出し腕に巻いてあったCADを操作し、竹刀を振り下ろす。
壬生は守るように竹刀を構え後方へ跳んだが、触れた竹刀は真っ二つに切られ、かすった胴には細い線が入り込んでいた。
振動系・近接戦闘用魔法《高周波ブレード》
刀身を高速振動させ、接触物の分子結合力を超えた振動を伝播させることで固体を局所的に液状化して切断する魔法であり、同じ魔法を使うか、硬化魔法を発動させなければ真正面から打ち合うことはできない。
そして休む暇なく振り下ろされる刃
それは壬生の身体を切り裂くことはなかった。
真剣が打ち合ったような音を立ててぶつかり合う竹刀。
それを扱うのは一人は勿論桐原。
そしてもう一人は花冠がない制服を着用している少年。
その光景にエリカは目を見開き隣に目をやるとそこにいたはずの連れはいなかった。
「戦意喪失した者に刃を振り下ろすなど剣士の風上にも置けんぞ。」
「なんだァ?てめェ……」
「土門魁斗。武闘家だ。」
「そういう意味じゃねえよ!」
「ならどういう意味なんだ?」
「はぁ……てめえは新入生……それも
「戦いへの覚悟を持っているのであればそいつはファイターだそこに女も子供も関係ない。だが、あの戦いの決着はもうすでについている。それなのに更なる追い討ちをかけるなど剣士以前に人としてどうかしているぞ。それほど人斬りがしたいのであれば俺が相手になろう。」
「ほう……言ってくれるじゃねえか。なら、やってやろうじゃねえか。とはいえハンデは必要だろうからな。最初の一撃はお前に譲ってやるよ。」
突如切って落とされた戦いの火蓋。
突然の状況に観客達は何も行動を起こすことができない。
「では行くぞ!」
桐原武明は油断していた。
目の前の男から気迫自体は感じるが雄叫びをあげながら真正面から振り下ろすその姿は初心者丸出しだ。
上段から振り下ろすされる刃にあわせて自分の竹刀を構える。
そしてぶつかり合う刀と刀。
このまま相手の竹刀を弾き飛ばして……弾き……飛ばせない!
まるで樹齢何百年もある大木を押し込んでいるかのように動く様子がない。
それどころかドンドン押し込まれていき、そしてついに吹き飛ばされてしまった。
3mほど引き離され、桐原は悟った。
この男は手を抜いて勝てるほど簡単な相手ではない。
俺が出せる
そして左腕に装着したCADを操作して一足で離された距離を詰める。
その速度は明らかに人間の限界を超えており、常人では目で追うこともできない。
《自己加速術式》
その名の通り自身を加速させる魔法。
単純ながらも強力な魔法であり、魔法に長けた者であればあるほど効果を発揮する。
桐原の速さはその中でも目を見張るものがあり、彼の実力の高さが伺える。
彼が言ったように身体能力の限界を超えた次元の速度で繰り出される数々の剣戟。
だが、土門はその速さについてこれていた。
残像により複数の剣を同時に振っているようにすら見える程の斬撃の全てに自身の竹刀を割り込ませており、対抗している。
続くかと思われた拮抗は皆が予想していない形で崩れた。
どんどん加速していく打ち合いに先についてこれなくなったのは桐原だった。
魔法で加速した桐原ですら対応できない速さの剣に押されだしていき。
彼は撤退を選んだ。選ばざるをえなかった。
魔法で加速された全力を用いて後ろに跳んでいく桐原。
対抗するためには今までの実力では勝つことができない。
普段の試合ではほとんど使うことのない技術をぶっつけ本番で試した。
闘技場内に思わず耳を塞ぎたくなるなるほどの不快な音が鳴り響く。
そして竹刀を構え、また目で追うのも困難な素早さで近づく桐原。
その速さにその場にいた全員が驚愕した。
彼は《高周波ブレード》と《自己加速術式》の
系統の違う魔法を同時に使用するためには緻密な魔法操作が必要であり、高等技術として扱われるほどのものだ。
それこそ魔法競技の大きな大会でもベスト4に入るような者がようやく使用できるほどのレベルであり、彼自身関東大会の決勝ですら扱っていなかった。
桐原はもともとマルチキャストの成功率はあまり高くなく、5回に1回成功する程度でしかなかった。
だが、正直この部の悪い賭けにでなければきっとあの男に勝つことができないと考えた桐原はそれに挑戦し、成功した。
竹刀で受け止めるのも不可能な斬撃を通常の人間では反応不可能な速さで振っていく。
土門は今度は自分の竹刀で受け止めることはせずに後ろに跳んでかわした。
圧倒的な加速で目標を追う桐原と、それをかわし続ける土門。
お互いに苦悶の表情を浮かべながら続いていく試合の中、効力がきれた魔法をもう一度かけ直す桐原。
そのほんの一瞬の隙を見出した土門は「ハアッ!!」と雄叫びをあげる。
それはただ気合を入れただけだが、攻めようとしていた桐原を吹き飛ばした。
また振り出しに戻る彼らの位置、桐原が相手の次の行動に対処する為に姿勢を戻した後土門を見、目を見開いた。
なんと目を閉じていたのだ。
まさに隙だらけな状態だが、それに相対する桐原の背中に一筋の汗が流れた。
今までとは比にならないほどの闘気が溢れ、その手に持つ竹刀に集中している。
最後の一振り……それで決着がつく……
それを察した桐原もまた自身も集中を高める。
《高周波ブレード》の振動数を更に上げていき、《自己加速術式》を自身の腕だけに限定させながらもその効力を更に上げていく。
そしてお互いに目を開き、構えをとる。
二人の構えは奇しくも同じだった。
上段の構え
攻めに特化した構えであり、格上の相手に使えば失礼にあたってしまうこともある構えでもある。
即ち、お互いにこの構えをとったということはお互いにこの一撃を持って相手を倒すことを考えており、そしてお互いに相手を認め合っているということになる。
明らかに変わり、張り詰めた空気に観客も固唾を呑んで見守る。
そして数秒後、二人が全く同じタイミングで走り出し竹刀を振り下ろす。
真剣が打ち合ったかのような音を残し、交差して位置を入れ替える二人。
「俺の……負けだ。」
そう静かに放った桐原の竹刀は半ばから断ち切られていた。
『こちら渡辺摩利だ。各員定期報告をしろ。』
渡された通信機から通信が入る。
それを皮切りに次々と続く『異常無し』という通信。
そして自分の同僚となった森崎駿の報告が終わったのを聞き届け、自分も報告を入れる。
「こちら司波達也。現在第二体育館……異常ありません。」
これは貸しにしとくぞ土門。
そう心の中で呟きながら達也は闘技場を去っていった。
皆さんお待ちかね!
第二体育館での騒動が終了した後
平和な日々が続いていきます
しかしそれは新たな騒動の前触れでしかありません
次回 魔法武闘伝Gの劣等生
『日常 嵐の前の静けさ』に
レディー……ゴー!
注:実際の内容と異なる可能性がございます。