魔法武闘伝Gの劣等生   作:ガノタなエクセル

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さて皆さん!

怒涛の日々が過ぎていき、比較的落ち着いた日常が始まりました

土門魁斗もクラブを決め、活動に精を出しているようです

ですが、それは新たな波乱が起きる前の猶予期間でしかありません

まあ、今はその日常を楽しんでもらいましょう

それでは!マギクスファイト!レディー……ゴー!


日常 嵐の前の静けさ

ぶつかり合い音を響かせ合う剣と拳

圧倒的な速さで打ち合う攻撃は衝撃波が発生していると勘違いを起こすほどの圧を放ち介入をほぼ不可能にするほどであった。

周囲の者達は倒れ伏しながらも顔だけは激闘の中心に向け、一挙手一投足を見逃すまいとせめてこの闘いを最後まで見届けようと体に鞭打つ。

CADを身につけ竹刀を振るう男(桐原武明)丸腰のままただ拳を突き出す男(土門魁斗)の闘いは互角の様相を呈していた、いや、互角の様に見えるそれは互いの様を見れば一目瞭然だった。

桐原の表情は曇り、振る竹刀からは鋭さが失われているが

土門は余裕の表情を浮かべながら、更に拳打の速度が上がっていく。

だからこそその決着は必然だった。

疲労から緊張がほんの少し弛んだ一瞬の隙をつき、桐原の背後に回り込んだ土門は彼の首筋へ手刀を落とした。

普通であればなんて事のない一撃だ、その衝撃だけで人を倒れさせることなど漫画などの創作上のものでしかない。

だが、立つことすら限界なほど満身創痍な桐原にとってそれだけで倒れるには充分だった。

ドサという音が響き、その後訪れる静寂。

それがこの闘いの決着を知らせる。

倒れ伏す剣術部員数十名とそれに囲まれる土門魁斗

闘いの壮絶さと、それでもなお息ひとつ切らすことなく立つ彼の異常さを誰もが見てわかるだろう。

 

「本気でやって素手の奴に勝てないとかマジかよ……」

 

「大丈夫か?」

 

「…これが大丈夫なように見えるか?」

 

「特に問題はなさそうだな。」

 

「大丈夫じゃねえつってんだろ!」

 

「それだけ騒げるなら充分だろう。俺が師匠と修行をしてた際はいつも3時間ぐらいは気絶していたからな。」

 

「毎度思うけどお前の師匠どんだけやばいんだよ…」

 

今の彼らの会話には初めて対面した時のような険はない。

一度の闘いを経て二人は好敵手()となっていた。

今や土門魁斗の実力は剣術部の部員全員に認められており、剣術部は彼にとっても気が置けない場所となっている。

だが、彼の居場所はここではない。

「そろそろ時間だから俺は行くぞ。」と一言残し魁斗は自身が所属する部活に向かう。

彼が立ち去った闘技場からは「早く起きろ!次は素振り千回だ!」の声とそれに付随して悲鳴が響いていた。

 


 

今から数日前

クラブ活動勧誘期間二日目、闘技場での騒動があった次の日の話である。

 

放課後の昇降口前土門魁斗はそこに一人で立っていた。

先日彼を誘ったエリカは「今あんたと一緒に居たら変なとばっちり受けそうだから今日から別行動ね。」と言われ、いない。

勧誘期間の真っ只中で盛り上がっていた勧誘の声も彼が姿を見せた瞬間に鳴りを潜め、皆、彼を遠目から見つめるばかり。

好奇 嫌悪 羨望 敵意 様々な感情が込められた視線を向けられ、さすがの彼も居心地の悪さを感じる。

もうクラブに入らずに帰ってしまおうか。あの女にはこの状況を説明すれば特例にしてくれるだろう。と考え、そのまま校門を抜けようと歩を進め始めた時、正面から男が現れた。

 

「たった一日で随分人気者になったじゃねえか。土門魁斗」

 

「お前は……桐原武明か。」

 

軽口を叩きながら現れたのは先日相対した桐原武明だった。

周囲の人間はまさか昨日の屈辱を晴らそうとしているのかと身構える。

だが、土門は構えない。

 

「俺のこと知ってたんだな。」

 

「昨日、連れからお前のことは聞いていたからな。それで、俺に何の用だ?」

 

「単刀直入に言わせてもらう。お前、剣術部に入らないか?いや、入ってほしい。お前がいれば三年間大会を総なめ出来る。それに、お前のような奴がいれば部員全員が成長できる。もちろん無理にとは言わないが……どうだ?」

 

「なるほど……申し出はありがたいが断らせてもらう。」

 

「そうか。ちなみに理由を聞かせてくれないか?」

 

剣術部のエースから直接の勧誘を断る土門

普通ならば少なからず動揺する筈だが、当の桐原はまるでそう言われるのが分かりきっていたかの如くあっさりと返事した。

 

「刀剣等の武器の扱い方は一通り心得ているが、俺は武闘家だ。基本は無手による格闘を得意としている。そのような半端者が魔法剣技を極めようとするお前達と共にいても和を乱すだけ。」

 

「だから剣術部には入らないってか?律儀というかなんというか……それじゃあお前への用事その二だ。」

 

まだ他の用があるのかと土門はその二の内容を促す。

それに対して桐原は何も言わずに土門に背を向けて歩き始めた。

着いてこいということか。そう察した土門は何も言わずに目の前の桐原の背を追いかけた。

 


 

部活棟

第一高校本校舎から少し離れたところにある建物であり、部活連が管理している。

本校舎と比べても遜色無い巨大さを誇るそれには数多くの部室が入っているが、基本殆どのクラブは校舎外の施設やグラウンドを使用する為、あまり人はいない。しかし、そこのワンフロアを使って活動する部活がある。

それがマーシャル・マジックアーツ

USNAの海兵隊によって開発された魔法を併用した近接格闘術

毎年多くの入部希望者が現れる人気クラブでありながら、競争の激しさに自信を無くした新入部員が辞めていき、最終的には半分以下になるほどに厳しいことで有名な部活である。

もちろん遅刻なんてのはもってのほかで、怒鳴られることはないがその日の組み手の相手が先輩達になるので絶対に遅刻などできないのだ。

一部を除いて

 

ガラッ

 

クラブの練習が始まってから三十分ほど経過した頃、近年となっては珍しい自動ではない横開きドアが開かれた。

 

「すまない遅くなった。」

 

そう言って入ってきたのは土門魁斗

彼は現在マーシャル・マジックアーツ部に所属しているのだ(その代わりに週に一度、剣術部の師範として練習に付き合うようになっている)

数日前、桐原に連れてこられたこのクラブはまさに彼に取って理想の環境だった。

自然こそないもののそのかわりにトレーニング器具が充実しており、さらに格闘術を扱う魔法師が一堂に会している。

どこかしらのクラブに所属しないといけない土門からすればこれ以上の良物件はないだろう。

 

「ん?ああ土門か!今日は剣術部の日だったんだろ。とりあえず今から組み手練するからペアを組んでくれ。」

 

そして何よりここの人達は皆人が良い。

上級生の中に彼がニ科生だからと下に見るはおらず、一年にはそういった者は多くいたが、日がたつにつれてニ科生(土門魁斗)に勝てない事実にプライドがへし折られそのほとんどが部活をやめていった。

その為、今もなお残っている一年生は一科の人間でありながら彼を見下すことなく接してくれる。

 

「お疲れ土門。剣術部の用事が終わった直後で悪いけど、胸を借りさせてもらうよ。」

 

特に、今話しかけてきた少年は、いわば親友の関係と言っても過言では無い。

彼の名前は十三束 鋼(とみつか はがね)

十三の数字を冠する数字持ち(ナンバーズ)の家系であり、想子(サイオン)を強く引き付けるという体質により想子の放出ができず、身体に密着する範囲でしか魔法式の展開ができない。その揶揄として《Range Zero》という異名で呼ばれている。

だが、それは零距離であれば無類の強さを誇るという意味でもあり、本人もそれを自覚しているから近接格闘術を学んでいる。そのため、1年の中でもトップクラスに格闘の練度が高い。

土門は最初に彼と闘ってからクラブ活動でペアを組む際には必ず鋼と組むようになっていた。

 

「構わん。遠慮などせずかかってこい!」

 

その数十秒後、鋼が倒れ伏すのがマーシャル・マジックアーツ部の日常の風景となっていた。

 


 

クラブ活動とて毎日あるわけでは無い。

一昔前までは平日どころか休日すらも返上して練習等が行われていたが、それがブラック労働を助長するのではと問題視されたことにより近年、週に一度休みの日を設けられるように義務付けられ、今ではそれが当たり前となっている。

その場合、土門は基本すぐに帰宅しては修行しているのだが、彼は今学内のカフェでコーヒーを飲んでいた。

 

「君でもコーヒーとか飲むんだね。私、てっきり水しか飲まないものだと思ってた。」

 

毎度土門に絡んでくる生徒会長(七草真由美)を想起させるようなイタズラな笑みを浮かべながら話しかけるのは向かいの席に座る壬生紗耶香。

彼女は直帰しようとしてる土門に声をかけ、部活動勧誘期間の時に助けてくれたことのお礼がしたいとここに連れてきたのだ。

だが、土門としてはそんなことどうでも良い。

普通の男子であれば壬生のような美女と二人でお茶ができることに喜ぶのだろうが、普段飲まないコーヒーを嗜む暇があるのならば早く修行がしたいと考えている土門からすれば煩わしい以外の何者でも無い。

 

「コーヒーはご馳走になった。もう用がないのならば俺はもう帰らせてもらうぞ。」

 

「ちょ、ちょっと待って!実はまだあなたにお願いしたいことがあるの!」

 

そう言って帰ろうと席を立つ土門を引き留めることに成功した壬生は一つ咳払いを入れてから本題を切り出した。

 

「実は、非魔法系クラブで同盟を組んで、部活連とは別の組織を作るつもりなの。魔法科高校だから、ある程度魔法で成績が左右されるのは仕方ないとしても、クラブ活動まで魔法優先にされるのは許せない!だから私たちは今年中に組織を発足し、学校側に考えを伝えるつもり。」

 

「…で、それを俺に手伝えということか?」

 

「ええ。貴方がマーシャル・マジックアーツ部に所属しているのは知っているわ。けど、ニ科生だからって不当な扱いを受けたとかって経験は貴方にもあるでしょう?」

 

「私はある。あれは入学してすぐ後ぐらいだったかな、ある一科生の人の技に見惚れた私はその人に手合わせをお願いしたの。」

 

「その時に言われたの『ニ科生(お前)では相手にならない』って。」

 

「とても悔しかった。ニ科生だからって、魔法の腕は劣っているからって、私の剣まで否定されたのが許せなかった。」

 

そう言って下を向き、黙り込む壬生。

コップを握る手には力が入り込んでいき、本当に悔しがっているのがわかる。

その様子を見た土門は席を立ち、一言言い放った。

 

「くだらん」

 

きっと了承する旨のことを言うのだろうと思っていたのだろう。

壬生は驚きと困惑が織り交ぜになった表情で見上げた。

 

「魔法技術で劣っていたからと剣の勝負の土俵に立たせてもらえなかった。それが悔しいからこそ、剣を捨て、同じように燻っている者共と徒党を組み、言論でなんとかしよう。そんなものはただの逃避でしかない。」

 

「誰に断られたのかは知らんが、魔法の力がないから相手にされなかったのであればそいつに振り向いてもらえる程に魔法を研鑽すればいい。もしくは、魔法師すらも圧倒できるほどに剣を極めればいい。」

 

「それを諦めたくせに平等を謳うなど愚の骨頂。俺は強者と闘い、自らの力を高める為にこの学校に来たんだ。貴様のような弱者に構う時間は無い。」

 

もうこれ以上話すことなど無いと壬生に背中を向ける土門。

遠ざかっていく背中をただ眺めることしか彼女にはできなかった。

 


 

次の日

学生の情報伝達速度は早いもので、先日の壬生紗耶香との一幕はもう学校中で噂になっていた。

やれ壬生を言葉責めにしただの、やれ告白してきた壬生を振っただの。少し曲解されていき、その結果、真由美が物凄い形相で1-Eの教室に突撃してき、また新たな噂が立ったりし、放課後となった今、土門は机に突っ伏す程に心的疲労を感じていた。

あのエリカでさえ、今の彼に声をかけない程なのだから疲労が相当なものだとわかるだろう。

そして、クラスの皆が部活に行こうと席を立ったその時

 

『全校生徒の皆さん!僕達は学内の差別撤廃を目指す有志同盟です!!』

 

日常を破壊する放送が学校中に鳴り響いた。




皆さんお待ちかね!

生徒会長と有志同盟による公開討論会

学生達の意見のぶつけ合いが起きる中に忍び寄る集団が

彼らはいったい何者なのでしょうか……

次回 魔法武闘伝Gの劣等生

『襲来!テロリスト集団エガリテ』に

レディー……ゴー!
注:実際の内容と異なる可能性がございます。
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