波乱はあるものの平和な日々が続いている第一高校
その第一高校で公開討論会なるものが行われるようです
学生同士で行われるイベントにてまさかのテロリストが!
土門魁斗は銃を持つ相手にどう闘うのでしょうか!
それでは!マギクスファイト!レディー……ゴー!
昨日流れた放送は非魔法系クラブに所属するニ科生達が結団した有志同盟が校内の放送室を占拠し、行ったものだそうだ。
壬生紗耶香から聞いていた内容と同様の主張を行っていた彼らに対して真由美は交渉を提案。翌日の放課後に講堂にて公開討論会を行うことになったらしい。
「というのが昨日の放送があった後の出来事よ。」
「毎度、昼の鍛錬中に来るのは諦めがついたが……何故それを俺に話す?」
現在彼らがいるのは体育館裏。
ここは人目につきづらく、僅かながらだが自然もあるということで土門魁斗が昼休み時の修行に使っている場所である。
それを何処からかぎつけてきたのかはわからないがスポーツドリンク片手に真由美がやってくるようになった。
最初は厄介者がやって来たと突っぱねていたが、彼女が本当に忙しい日を除いてほぼ毎日来ることと修行の様子をただ眺めるだけでそれ以外のことはしてこないので土門もなにも言わなくなった。
その結果、例の男と生徒会長が毎日体育館裏で逢引きしているという噂がたっているのを土門は知らない。
「言っておくが俺はその討論会なぞ行くつもりないからな。」
「そんな!こんないたいけな少女がたった一人で複数人に立ち向かおうとしてるのに心配して見に来てくれもしないなんてお姉さん悲しい!」
「あのような有象無象を相手にお前が言い負かされる心配などもとよりしておらん。」
「あら、そんなに信用してくれてるなんて嬉しいわ。私の中でかなりポイント高いわよ……魁斗くんには伝えておきたいことがあるの。」
普段の微笑みを潜ませ、話を切り出す真由美。
声のトーンから本人の真剣さを感じた土門は黙ることで続きを促す。
「魁斗くんは『ブランシュ』って知ってる?」
「……?いや、そんな名前聞いたこともない。」
「そう。『ブランシュ』って言うのは世界各国で魔法師の排斥運動を行なっている反魔法組織なの。表向きは魔法師と非魔法師の差別撤廃を掲げて各所で講話を行う非営利団体なんだけど、裏では武器の密売やテロを行うような犯罪組織よ。」
『ブランシュ』なる反魔法師をかかげる犯罪者集団について話を聞いているが、土門はそこで疑問を感じた。
本来ならば今ここでそんな話をする必要などないだろう。より言えば、テロ行為などを行う組織の話を不用心に一般人に聞かせるべきではないはずだ。
わざわざそのような話をするということは
「その『ブランシュ』とやらと第一高校になにか関係があるということか?」
「はぁ……魁斗くんって意外と頭が回るわよね。ええ、そうよ。ブランシュの特に裏のことを担当している下部組織の『エガリテ』、その日本支部が
「彼らはきっと今日の討論会の時に何か行動を起こすわ。だから魁斗くんにはことが起きたらすぐに避難して欲しいんだけど……」
真由美は言葉を止めた後、数拍の間をおいて溜息をついた。
それもそのはず、目の前の男はその話を聞いてから誰の目から見てもわかるほどに戦意を昂らせていからだ。
真由美が土門と関わりを持ってからまだ1ヶ月も経っていないが彼の性格はよくわかっている。
きっと『1対多の経験はなかったな』などと考えているのだろう。
こうなっては土門を止めることなどもうできない。
「せめて無理はしないでね。」
真由美にできたのはただ釘を刺すことだけだった。
第一高校の中庭
土門魁斗はそこの中心に立つ一際大きい木の下で瞑想をしている。
それは奇しくも入学式の日の朝と同じ状態だった。
だがあの時と違い彼に声をかけるお節介焼きはいない。
今、一部の部活は活動に従事しているが大半の生徒は公開討論会を聴講するために講堂に集まっている。
きっと今頃は七草真由美生徒会長の演説会の様相を呈しているのだろう。
だがそんなことは今の彼にはどうでもよいことだったのだ。
真由美から聞かされたエガリテと第一高校の関係。
そこから考えられるテロリストの襲撃。
土門は大規模な戦いを前に逸る精神を落ち着かせるので精一杯だった。
そして
「…来たか。」
爆音、銃声、悲鳴それらの騒音が遠くで響くのを聞いた土門は音の元へ駆け出した。
「私たち討論会行かなくて良かったのかな?」
「他人の愚痴なんて聞くだけ無駄だよ。それに部長もいつも以上にやる気だから行くことなんてできなかっただろうし。」
「ほらほらみんな!こんな広々と演習場使える日なんて滅多にないんだから今日はガッツリやるよー!」
「ほら、行こうほのか。」
「うん、わかった雫。」
彼女達は
SSボード・バイアスロン部
公開討論会の聴講に参加している生徒が多い中で部活動を行っている一部の例外である。
普段演習場を利用する他のクラブは軒並み討論会に行っているため広い空間を独占できると部長も張り切っており、バイアスロン部のメンバーは全員練習に参加しているのだ。
だが、折角の好条件での部活動を行うことはできなかった。
突如轟音が鳴り響き、遠くの方では黒煙が立ち昇る。
「何の音!?」
「実技棟の方から煙が上がってるんだけど!」
「ぶ、部長!私たちどうすれば!?」
「今端末で調べてるから待機!下手に動かないで!」
現実味がないが、身の危険があることだけはわかる状況に部員全員がパニックに陥るが、部長は努めて冷静に対処していく。
しかし、情報を調べるために動いていた指が止まると次第に部長の顔にも焦りが生まれた。
「お、おおおおち、落ち着いて聞いてね?当校は今テロリストに襲われています。」
テロリストの襲撃
ただの学生からすれば映画やドラマ等の創作物でしか聞かない、けれど実際に被害を受けているこの現状に動揺が助長される。
それは部長も同じだ。だが部長は焦りながらも皆を纏める立場として自身のやるべきことを熟していく。
しかし、彼女達に安心を与えるほど現実は有情ではない。
「一時的に部活用CADの使用が許可されています。とりあえず中庭で十文字会頭が指揮をとっているらしいから私たちもそれに合流……光井さん危ない!」
悲痛な声で自身の名前を呼ばれた光井ほのかは周囲を見回して見つけた。
ナイフを構え、自分の元に走るテロリストを
光井ほのかは1年A組という一科生の中でも上澄み達が集められたクラスに所属しており、その中でも上位の成績を収める優秀な生徒である。
とはいえ、テロリストの攻撃を難なく対処できるわけではない。
何よりそんな危険とは無関係で生きてきた少女にそれを求めるのは酷な話だろう。
ほのかはナイフを持った相手を前に動くことができなかった。
だが、彼女の友人は違う。
ほのかの幼少期からの親友である北山雫は反射的にその手にある部活用のCADに手をかけた。
彼女もまた魔法師ではあるが、戦闘の経験なんて全くない一般的な感性を持った少女である。
表情の変化こそ乏しいがこの状況に対しての動揺は周囲の人間と大差ない。
だがそれでも友人の危機に無意識のうちに助ける為の行動をとっていた。
コンマの時間をおいて発動された魔法は敵の横っ腹に衝撃を与える。
その力で吹き飛ばされた男は聳え立つ木の一本に頭を打ち、その意識を闇に落とした。
脅威は去った。
そう考えた彼女達は安心し、様々な声をあげる。
先程までの恐怖に泣き出す声
それを慰める声
敵を撃退した少女の勇気を褒める声
避難を開始する為に指示を出す声
「よくも仲間を!」
そんな女子高生の和気藹々とした雰囲気をぶち壊す怒りのこもった男の声が響いた。
声のした方向を見ると、先程倒した男と全く同じ服を着た別の男が小銃を構え、銃口をこちらに向けている。
狙いは自分の仲間を倒した雫についており、気がついた時にはすでに引き金に指がかけられていた。
ほのかを助ける為に魔法を使えた雫だが、敵を倒したことによる油断・慢心があったからだろう。
今度は指一本すら動かすことが出来ない。
雫はこれから訪れるであろう恐怖に備える為、もしくは逃避の為に唯一動いた瞼を閉じた。
直後鳴り響く銃声、その音に体を震わされる。
だが、待てども待てども痛みもなければ自分の意識が事切れる様子もない。
恐る恐る目を開けていくと目の前に壁が聳え立っていた。
否、壁かと思ったそれは自分の身長よりもはるかに高い人の背中だった。
自分を守る為に敵の前に立つ彼と話したことはない。
だが二科の一年生でありながら一科の上級生と闘い勝利したという噂は聞いている。
ぶっちゃけそんな噂は出鱈目だと思っていた。
一科生・二科生という学校のシステムによって分けられた実力差、そこに一年という短くない期間によって生まれる練度の差、その差を埋めるなど大抵の人はできないはずだ。
それこそ自分の友達である司波深雪でなければ不可能なはずだと考えていたから。
だが、目の前のテロリストに相対している土門魁斗には強者の風格が漂っていた。
土門魁斗は銃弾の雨に晒されてなお無傷で立っていた。
だがそれは撃った弾全てが外れたわけではない。
敵が持つ小銃から放たれた弾丸は計二十発、それら全ては確かに土門の身体に命中している。
命中してなお土門の強靭な肉体に傷一つつけることが出来なかったのだ。
地面に落ちた十五個の潰れた鉄の塊が土門の頑強さを如実に表している。
とここでテロリストの男は気がついた。
自分が撃ったのは二十発、だが地面にちらばる弾丸だったものは十五発。
そう五発足りないのだ。
ならばその五発はどこにいったのか。
それを考えた男は嫌な予感を覚え、土門を、厳密に言えば彼が突き出している握り拳を見た。
それとほぼ同じタイミングで土門は握られた拳を開く。
パラパラと音を立てて落ちていく鉄の塊を眺め、男は絶望した。
只人の身で魔法師と敵対することの意味をわかっているつもりだった。
だが、こちらは武器を持っているし相手は魔法師といえど荒事の経験なんて皆無の未だに成人すらしていない子供なのだ。
ここまで圧倒的な差を見せつけられるなんて思っていない。そんなあんまりな結果に男は呆然としてしまう。
「返すぞ」の言葉で意識を戻した男の目に映ったのはこちらに向かって飛んでくる鉄塊の1つだった。
敵の銃弾を体で受け止め、そのうちの1つを指で弾き飛ばすだけで無力化する。
一般人ではとうてい行えない、なんなら魔法師でもそう簡単にはできないことをやってのけた男に視線が集まる。
だが、誰も言葉を発することもしなければ動くこともできない。
土門魁斗から放たれる圧が皆が緊張を解くのを許さないのだ。
肝心の本人はどこか渋い顔をしながらなにか考え込んでいる。
だが、それも一瞬のことで銃声が鳴り響く方向に徐に歩き出した。
「待って!」
あげられた声に立ち止まり、振り向く。
声の主は自分が庇うことになった少女だった。
土門は無表情のまま黙ることで話の続きを促す。
「ありがとう。」
奇しくも雫を睨みつける形となってしまったが、彼女はそれを意に介さず礼を告げた。
「ああいった奴らは基本的に二人以上の集団で行動する。一人を無力化したからといって油断するな。」
「……だが、友を守る為に闘ったその行動は賞賛に値する。」
「えっ?」
土門の指摘に落ち込み俯いてしまう雫。
しかし、少しの間を置いて告げられた言葉に咄嗟に顔をあげた。
彼の表情は未だに仏頂面のままだ。
けれど放たれていた威圧感はなくなってた。
もしかして自分を励ましてくれたのだろうか。
しかし、その確認をする前に土門は戦闘音が鳴り響く校門の方へと走り去っていった。
「……とりあえず中庭に行って十文字会頭と合流しましょう。いつまた敵に襲われるかわからないからいつでも魔法を発動できるように準備してて。」
部長の指示で全員が行動を開始する。その中に油断している人は一人もいなかった。
校門では激しい争いが行われていた。
戦力の多くがここに充てられているいるようで第一高校の教師を勤める優秀な魔法師達が対処しているものの相手の数に押されているようだ。遮蔽物に身を隠しながら迎撃している教師の額にも汗が浮かんでいる。そんな戦場の中心に土門は降り立った。
突然の生徒の乱入に動きを止めてしまう教師達、だがそんなことはテロリストには関係ない。
たとえ相手が子供だろうと魔法師であるのならば敵なのだと目の前の男に銃口を集中させる。
飛び出た弾丸の数は数えるのも億劫なほどで、先程のが銃弾の雨であればこれは銃弾の嵐であろうか。
だが、土門は狼狽えない。静かに、しかし力強く、
無数の銃弾は全て光の渦に弾かれ、その身体に痣をつくることすら叶わない。
「超級覇王!電影弾!!」
技名を叫ぶと共に自身をエネルギーの砲弾と化して突き進む。
だが、それが目の前の敵を轢く前に進行方向を空へと変えた。
上昇に上昇を続け、校舎の屋上程の高さに到達したところでその身が重力に引かれ始める。
落下によって加速し続ける身体が地面についた瞬間。
身に纏っていたエネルギーが拡散されて嵐となった。
これはかつて師匠と兄弟子の最終決戦にて、お互いに電影弾でぶつかり合った時に巨大な竜巻を発生させた。という話から着想を得た土門魁斗のアレンジ技。
「竜巻電影弾!」
威力こそ元の技より劣るものの、攻撃範囲は遥かに広くなったその技に敵の半分以上は飲み込まれ、技が終わった時には校門前にいたテロリストのほとんどが地面に倒れ伏していた。
それなりに訓練されている兵士達が馬鹿正直に真正面から攻めてくるとは考えられない。となるとこいつらは陽動部隊。
だが、本隊の対処は達也あたりがやっているだろうし、俺はこいつらの相手でもしておくか。
そう結論付いた土門は残った敵を倒すべく動き出した。
皆さんお待ちかね!
テロリストを鎮圧した土門魁斗達
ここで反撃のためにエガリテのアジトに攻めるようです
そこで彼らはあの人との会合を果たすことになります!
次回 魔法武闘伝Gの劣等生
『東方不敗!マスターアジア』に
レディー……ゴー!
注:実際の内容と異なる可能性がございます。