魔法武闘伝Gの劣等生   作:ガノタなエクセル

8 / 9
さて皆さん!

襲いかかるテロリストを蹴散らした土門魁斗!

今度はこちらの番だと敵アジトへの襲撃をかけるようです!

しかし、たどり着いた敵のアジトには既に制圧されておりました!

テロリストを鎮圧した下手人の謎に戸惑う土門魁斗達の前に立ち塞がる影、彼はいったい何者なのでしょうか!

それでは!マギクスファイト!レディー……ゴー!


東方不敗!マスターアジア

自動扉の開閉音と共に入室する。

場所は学園内の保健室。

壬生紗耶香の見舞い兼事情聴取の為に三巨頭(真由美、摩利、克人)、司波兄妹、エリカ、レオが既に集合し、事情聴取もほぼ終わっていた。

その中に突然現れた土門魁人に一人を除いて全員が面を食らっている。

 

「魁人くん……どうしてここに?」

 

「自分が彼を呼んだんですよ。拠点を襲撃するのに声をかけなかったとあればどんな文句を言われるかわかったものではないですし。」

 

真由美の問いに達也が答えるが、当の本人は何も言葉を発さずにずかずかと中に入り込み、ベッドに腰掛ける壬生紗耶香の目の前に立った。

まるで何かを見定めるかのように立ち尽くす土門。

空気が張り詰めていき、自然と病室内がシンと静まり返っていく。

いたたまれなくなった紗耶香が言葉を発しようとしたが、土門にその先手をうたれた。

 

「明鏡止水」

 

「怒りや疚しさの無い澄んだ心。この境地に達した者のみが自身の限界を超えた力を手にすることができる。」

 

「お前は自身の恨みという感情が無駄なものだと知った。ならばお前は武の極みに一歩近づいたことになる……励めよ。」

 

微小の笑みを浮かべ立ち去る土門。

誰も何も言えないまま開いた扉を潜る男の背中を見送り、静かに扉が閉められた。

また静寂が訪れた病室。

何とも言えない空気が漂い、いたたまれなくなったエリカが言葉を漏らす。

 

「あいつ……あれで慰めたつもりなの?」

 

エリカの呟きに誰も答えることはなかったが、全員が心の中でその感想に同意していた。

 


 

十文字克人が用意したバンに乗り込み、ブランシュのアジトへと向かう。

メンバーは十文字克人、司波達也、司波深雪、桐原武明、千葉エリカ、西条レオンハルト、土門魁人の七人。

具体的な人数もわからないテロリストに反撃するには心許ない人数だが、一人一人が一騎当千の力を持った魔法師達。

彼等の表情にも恐れは全く感じられない。

 

「土門、あの時言っていた『明鏡止水』それは俺たちでもなることができるのか?」

 

「ああ。十分な身体能力と闘気を扱う素養があることが前提だが、魔法師であれば誰もが可能性はあるはずだ。」

 

「へぇー、それであんだけ強くなれるんならその『明鏡止水』ってのになってみてえな。」

 

「ま、あんたじゃ無理でしょうね。」

 

「なんだと!」

 

「そうやってすぐにかっとなるから無理だってことよ。」

 

彼等の会話もそれに倣って和気藹々としたものだった。

だが、それは彼らが危機感を持っていないというわけではない。

 

「あと数分でアジトに到着する。全員気を引き締めろ。」

 

十文字克人からの指示で全員の表情に鋭さが加わった。

ほんの数秒で言い終える程度の言葉ではあったが、それだけで意識を切り替え、緊張感を持つことができる者たちしかいないので十分なのだ。

車内の空気を張り詰めさせながら目的地へと近づいていく。

少しして前に古びた鉄の門が現れた。

それは侵入者を阻む為に閉ざされている。

それを確認してなお車は止まらない。

なんなら更に速度を上げていく。

そうして段々と距離が縮まっていき、接触まで数メートルとなったところで

 

装甲(パンツァー)!!」

 

レオの叫びが彼の得意とする魔法の起動キーとなって効果を発揮した。

皆が乗るバンが車体に不可視の装甲を纏う。

装甲車を超え、戦車に匹敵する程の堅牢さに至った車の衝突に年季が入り錆が目立つ鉄柵では到底太刀打ち出来なかった。

無傷での突入に成功する一行。

それぞれが自分の役割を果たしてためにバンから降りたところで目の前の光景に目を見開いた。

 

数十人にもなる男達が意識も無い状態で山のように積み上げられていたのだ。

一人一人がロープで簀巻きにされており、ご丁寧にもその山頂にはエガリテのリーダーである司一が据えられている。

 

「いったい誰がこれを……」

 

「それはワシがやったことよ!!」

 

そんな光景に対する誰かの呟き。

独り言であるが故に誰かの返答を求めない疑問に対する回答が静寂な空気を引き裂いた。

明らかに自分達ではない壮年の男性の声に全員が警戒心を露にしながら周囲を見渡す。

しかし、声の主の姿は見えない。

 

「何処を見ておる!ワシはここだ!!」

 

再び男の声が響く。

声の位置は自分達の遥か上空。

全員が一斉に見上げた先、煙を吐かなくなった煙突の天辺に彼はいた。

 

年齢を感じさせる白髪混じりの銀髪

だが、紫色の中華服は筋肉で張っておりその身体が未だ衰えていない事を訴えている

口髭を生やす多くの皺が刻まれた顔

だが、その身から放たれる雰囲気がそれを老化の表れではなく大樹の年輪のようにその者の歴の長さ、経験値を表す指標となっている

 

全員がかの老人は強者だと悟った。

自分では太刀打ちできない程の強者だ。

背に流れる汗が体の熱を奪い、行動を起こすという考えを起こさせない。

だが、司波達也は動き出した。

その頭に刻まれた「妹を守る」という使命に突き動かされ、深雪の前に立つ。

しかし、武器は構えない。

否、構えられない。

今ここで敵対行動をとった際、勝利できるという確証が持てなかったのだ。

格闘戦を挑んでも、魔法を行使しても、勝てるビジョンが浮かばない。

自身の本当の魔法を十全に使えば対抗することはできるだろう。

だがそれでも、自分以外の人間の無事が保証できない。

司波達也にとって妹の命はなによりも優先されることであり、自身の存在意義である。

そのため深雪の負傷、延いては死とは彼の敗北と同義なのだ。

そのため彼が選んだのは膠着状態を生み出す事。

何かあれば直ぐに盾になれるように位置取りをしながら細心の注意を払う事であった。

達也の動きで呑まれていた意識を取り戻した他の者達も目前の存在に対応できるように身構える。

老人は未だ同じ場所で腕を組み、微かに笑みを浮かべながらも動かない。

環境から放たれるもの以外の音が消え、その代わりに音の無い緊張が周囲を支配する。

 

だが、その静寂も直ぐに破られることとなった。

地面を踏み締める音が小さいながらも響き渡る。

土門魁斗が全員の前へと踏み出したのだ。

強者を前に戦意が高揚したのかと全員が思い

その足取りの覚束なさを確認し、その考えを否定する。

思いもよらぬ相手と再会し、頭が追いつかないながらもその者に近づこうとしている歩きだったのだ。

老人も笑みを一瞬、深いものにし

 

「流派!東方不敗は!」

 

顔を引き締めて叫んだ

 

「王者の風よ!」

 

土門もその気迫に負けないほどに声を張り上げる

 

「全新!」

 

「系烈!」

 

互に跳び上がり無数の拳をぶつけ合う

 

「「天破俠乱!」」

 

鏡写しのように同じ構えで最後の一撃を放つ

 

「「見よ!東方は赤く燃えている!」」

 

ぶつかり合った拳からは衝撃波が放たれ

周囲が炎に包まれる様を幻視させる

 

炎も消え去り目の前に残るは拳を突き合わせる老人と魁斗

構えが解かれると共に張り詰めた緊張も霧散していく

 

「打撃のキレが上がっている。どうやら鍛錬は怠っていなかったようだな魁斗よ。」

 

「あぁ……!師匠ッ!お久しゅう御座いますッ……!」

 

「まったく……ワシの元を離れてまだ数月しか経っておらぬと言うのに泣く者がおるか。」

 

「申し訳ございませんッ!ですがぁッ!」

 

泣き崩れる土門魁斗

それを優しく嗜める老人

それを見守る周囲の人達は怒涛の展開に理解が追いつかなかった

 

「して、お主等は第一高校の生徒かな?」

 

「え、その状態のまま話進めるの?」

 

エリカのツッコミは当事者である二名以外の総意であった。

しかし、巫山戯が許されない空気感に封殺されていく。

 

「私は国立魔法大学付属第一高等学校3年の十文字克人です。失礼ですが、貴殿の名前をお聞きしても?」

 

メンバーの中で最年長でもある十文字克人が矢面に立った。

正直言って土門魁斗の態度からある程度の関係性、老人がどういった人間なのかは察することが出来る。

だが、後々の処理の為にも聞き出す必要があるのだ。

 

「おっと、他人に質問を聞いておきながら自分の名を名乗ることを忘れておったわ。」

 

失敬、失敬とカラカラと笑いながら

好々爺な態度ながら自分に確かな自信を持つ面持ちで老人は名乗りを上げた。

 

「ワシは東方不敗、またの名をマスターアジア!そこで泣いておる土門魁斗の武の師よ!」




皆さんお待ちかね!

ブランシュ日本支部「エガリテ」を壊滅させた土門魁斗達!

これで彼等の平和な日常が取り戻されたわけであります

若人の青春を我々も見守って行こうではありませんか

次回 魔法武闘伝Gの劣等生

『終幕 一学期』に

レディー……ゴー!
注:実際の内容と異なる可能性がございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。