真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス-   作:ローグ5

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書きあがったので投稿します。
時系列的にはフェクダ戦の1週間前~2日前あたりです。


もし、共に戦ってくれるなら

 帝都東京にある森林。

 市外から外れ、キャンプ場といった娯楽施設もない其処はフェンスで囲まれている。

 

 森林と道路を隔てるフェンス前の看板には、私有地につき立ち入り禁止の文字。

 看板には有名企業である<九十九グループ>の名前が刻まれている。

 

 かつて江戸幕府の技官だった九十九某が明治に創業し、現代でも電子機器及び医療器具関係で安定したシェアを誇る九十九グループ。

 その名前を知れば、偶々ここへ来た人間も納得して来た道を戻る事だろう。

 しかし奇特な人間の多い昨今である。

 陰謀論かあるいは他の何かに突き動かされ、踏み入ろうとする人間もいるかもしれない。

 

 だがそんな場合も心配は無用。

 その場合には人除けの結界が無意識に思考を帰宅に傾ける。

 この森林の中にある異界への、侵入を防ぐのだ。

 

 実を言うと九十九グループには、世間の一般人には知られていない裏の顔がある。

 対悪魔組織である<九十九機構>という裏の顔が。

 

 とは言っても機構の活動は邪悪な物ではない。

 悪魔の討伐等の治安維持活動を行い、収集した情報を基に装備やアイテムを開発。

 成果物に関しては帝都ヤタガラスを始めとする護国組織に卸している。

 総じて真っ当な組織といえるだろう。

 

 この森林の内部は九十九機構が所有する異界。

 新装備の試験に使われており、今日もまた機構の人間が来ていた。

 

 異界の入り口近くに停車した頑丈な指揮車。

 その傍らで、男達が話し込んでいた。

 

「そんで使用した感想はどうよ」

「予想以上にいいな。

 取り回しがきく上に反動も軽い。

 これなら近接武器と併用しても充分に使える」

 

 医者か研究者なのか、白衣を着込んだ男が問うとコートの男が答える。

 コートの男、雨柳巧(うりゅう たくみ)は中々にその装備、新開発の拳銃型GUMPを気に入ったようだ。

 

 バスターサマナー用小型GUMP、正式名称<六六式召喚拳銃>。

 2体格納1体召喚の低容量なものの、高速処理が可能で取り回し良好。

 武器としての機能も当然備えており、新開発の専用弾頭を含め各種弾丸を使用可能。

 堅実に歴戦の近接型バスターが必要とする機能を備えた新時代の武器型COMPである。

 

「新開発の弾頭も癖はあるが使える。

 これなら今後も役立ちそうだ」

「なら良かった。うちの技研に伝えたら喜びそうだ。

 しかしお前がCOMPも使いだすとはなー」

「今況だとそろそろ自前のマグだけじゃキツイわ。

 幾らある程度敵から回収可能って言っても、な」

 

 雨柳は悪魔を封魔管によって使役する神道系召喚師である。

 だが今後さらなる強力な悪魔を使役する必要性から、負担軽減の為いずれか一体をマグバッテリー付きのCOMPの使役をしようと考えた。

 丁度旧知の仲である白衣の男、立科(たてしな)から小型GUMPの話を聞き、実地テストを行う代わりに割引購入する契約を結んだ。

 その為お互いそれなりに忙しい身にも拘わらず、今日会っていたのだ。

 

「丁度刀も銃も壊したし、頃合いだと思って装備を更新しようと思ったわけだ」

「お前がそこまでボロボロになるなんて何と戦ったんだ?」

「LV80越えの堕天使。取り巻きがテトラカーンまで使ってくるからイヤー死ぬかと思った」

「……こういう装備更新ってさ、ワクワクするよな」

「現実から目をそらすな。まあ確かにいい刀手に入れて高揚しているけどさぁ」

 

 LV80越えとか言うありえない数字を聞き遠い目をする立科。

 ツッコミを入れる雨柳の腰には、破損した備前長船に変わり新たな刀が提げられている。

 

 柄頭に蒼い宝玉が埋め込まれた漆黒の柄。

 はめ込まれた鍔は竜を象った紋様が浮かび、目の部分には小柄用の穴があけられている。

 黄金色の打紐が巻かれた柄に隠れているのは、高貴な青を帯びて反る三日月の如き刀身。

 見る者に聖性と絶大な殺傷能力を同時に感じさせる、刀である。

 

 古来より悪魔業界に伝わる錬剣術*1によって、魔の力を取り入れた刀。

 薄く強靭なこの刀の銘を<バルムンク>という。*2

 

「この刀、京都からの分捕り品なんだけど、実にいい出来でな。

 仲魔とのシナジーもあるし、もうすでに気に入ってる」

「へーそんな銘刀良く残ってたな」

「……夷敵の銘がついた刀なんて使えるかってことで倉庫で埃被ってたんだってさ」

「馬鹿なの? 馬鹿だわ」

 

 この刀は、先日京都の再配分を行っている清浦から貰った物である。

 これ以外にもくだらない理由で使われなかった品が幾つもあったらしい。

 聞いてて楽しくないから聞かなかったが。

 

「そうでなきゃあんなことしないだろうしなあ。

 GPが50超えは駄目すぎるだろ」

「聞いた時は流石の俺も思考停止したからな……。

 俺も機械式でようやく40越え、あげてかないといかんな」

 

 ふぅ、とため息を吐き立科は宙を仰ぐ。

 一説には悪魔関係組織の六割が異界での活動が不可能になっている昨今。*3

 如何に九十九機構が由緒ある組織とはいえ、昨今のインフレについていくのは厳しい。

 事実九十九機構も機械式でLV50を超えているのは、数人程度。

 幹部の娘が付き合っている所縁で協力してくれている鹿角*4のような、信頼できる戦力は喉から出るほど欲しい。

 

「とは言ってもお前医者と実質兼業じゃん。

 二足のわらじでそんだけいけば充分だと思うが」

「まあ確かにそっちの腕も自信ある。

 流石に宇宙人の手術は無理だけどなー」

「そんなん出来るのブラックジャックぐらいだろ。

 いや……コスモゾンビ*5で練習すれば行けるか?」

 

 同年代の知人友人らしい取り留めのない会話。

 暫く続いた後にふと、雨柳は時計を見る。

 

「そろそろ帰るわ。

 待っている人もいるし明日も仕事があるからな。

 集合場所は予定通り第三でいいか」

「ああ予定通り九時にな」

 

 明日の雨柳の仕事は輸送の護衛である。

 九十九機構の開発したCOMP等の物資の、帝都ヤタガラスへの納入。

 補給基地での受領まで大過なく行えるようにするのが役割。

 

「明日は人と会う予定もあるからな。

 気合い入れていくぜ……!」

 

 雨柳の眼には決意。

 元より仕事はしっかりこなす男である。

 傍目にはその意識の高さ故に見えるが。

 

「ア、ウン、ガンバッテネ」

 

 雨柳の実質的な妻から、従妹の友達が防人隊にいる事から。

 やる気の理由を知る立科は生返事をした。

 

 

 


 

 

 

 雨柳巧は、仁王立ちしていた。

 彼の両足を支えるのは断固とした決意。

 何があろうとも、妥協するわけにはかない。

 

「どうしても、駄目ですの? 

 わたくしの頼みでも」

「ああ、例え君でもそれは駄目だ」

 

 彼の前には艶やかで長い髪を一房ずつカールさせた美少女。

 琥珀色の目をした彼女の苗字は、弥勒(みろく)という。

 若草色の簡易デモニカを纏った少女は、帝都ヤタガラスに所属し後方支援を担う<防人隊>の隊長の一人だ。

 

 弥勒と雨柳の因縁は、一息で説明できない程に複雑である。

 それでも先日再開して以来、時たま連絡を取る関係となっており、関係は悪くない。

 

 その二人が、帝都ヤタガラスの補給基地の中で対峙する。

 

「君の頼みは可能な限り聞いて叶えたい。

 だけが、これだけは聞くわけにはいかないんだ。

 分かってくれ……!」

 

 曇天の下、苦悶を押し殺した声で雨柳は少女を説得しようとする。

 その決意のほどはいかほどか。

 

「そんなおじさまは、なぜそこまで……?」

 

 弥勒は困惑のそぶりを見せる。

 彼女の頼みはただ一つ簡単な事なのに。

 そこまで拒絶する意図が分からなかったのだ。

 

 それでも少女の側も引くわけにはかない。

 長年の悲願、弥勒家の復興の為に、拒絶されても引くわけにはいかないのだ。

 

「わたくしはただ────」

 

 弥勒は、可憐で凛々しい声で告げる。

 雨柳への、簡単であるはずなのに断られた願い。

 それを今一度、願いを強く籠めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「佐々木さんを紹介してほしいだけなのに……!」

「そ゛れ゛た゛け゛は゛駄゛目゛て゛す゛」

 

 少女の無邪気なお願いを濁点付きの言葉で雨柳は拒絶する。

 必死すぎだろこのおっさん。

 

「どうしてですのー! 何故ですのー!」

 

 ぷえーっという感じで雨柳に抗議する弥勒。

 自分の半分ほどの年齢の少女が見せる可愛らしい様を見ても男の心は動かない。

 

 弥勒の頼みとは雨柳の知人であるデビルバスターの佐々木を紹介してくれないかという事。

 ファントムソサエティ壊滅作戦や京都征伐で多大な功績を持ち、導師クラスの実力を持った一級のサマナー。

 ヤタガラス名家の少女達も慕う彼は、高い評価を受けている。

 

 家の復興という弥勒が人生を捧げる目標。

 その為に弥勒は父親の知人に頼みお見合いの機会を得ようとしたが、残念ながらお断り。

 そこでどうするかと考えた結果、お鉢が回ってきたのは雨柳である。

 

「そこまで拒否するんですの? 

 佐々木さんに何か問題がある訳じゃないのでしょう? 

 三ノ輪さんや乃木さんからも信頼されているようですが」

「うぐっいやね、アイツ確かにいい奴だよ?」

 

 そう、雨柳は佐々木の事を悪く思っていない。

 殺伐とした悪魔業界には珍しい程に、他人の事ばかり考えている男。

 それは佐々木が雨柳も知る少女達に慕われている事からも分かる。

 

「例えばあの子達の誰か一人か君がアイツと婚約したとしよう。

 俺は喜んで祝福する。

 そのくらいには信頼できる奴だ」

 

 だが、だからといって紹介するわけにはいかない。

 

「でもアイツの周り女の子が多すぎるのっ。

 君と同年代(JC)だけで10人近くいるんだあっ!」

 

 雨柳は知らない。

 北海道で色々あったことをまだ。

 

「その上君まで、君まであの子達の様な事になったら……! 

 なってしまったら……ひいぃ~!」

「何があったんですの……?」

 

 頭を抱え苦悶する雨柳。

 その様子を見た弥勒は戦慄する。

 

「サマナーがまた壊れた……。

 ねえミロク世の中にはね、知らない方がいい事があるの」

 

 ミロクに話しかけるのは雨柳の仲魔であるスクルド。

 彼女の赤紫色の眼には、形容しがたい感情が浮かんでいる。

 

「知らない方がいい事が、あるの」

「二度も言いますの……?」

 

 弥勒に告げるスクルドの顔には一筋の汗が浮かんでいた。

 

 視線を外した彼女が一瞥するのはシロガネ。

 神造魔人という造魔の一種らしき謎の悪魔である彼は、変に人間臭い。

 現に今も弥勒の部下と話していたが、雨柳達の会話が届いてしまったようだ。

 

「……なあ君達、僕さちいかわの戦犯ちゃんの真似得意なんだけど見る?」

「やめなさいシロガネ! 

 それは再現度高すぎて引かれるから禁止されたでしょう!?」

 

 やたら再現度の高い奇行を阻止。

 何とか食い止めたが、こいつもまあ大概である。

 

 スクルドの知る限りでは、シロガネが雨柳と同様の反応をするのは大体4人。

 先程話に出て来た三ノ輪さんと乃木さん家の娘。

 後は訳ありで鷲尾家とかかわりがある東郷さんと彼女と関係の深いイザボーという娘。

 帝都ヤタガラス出身の子の四人だと反応が強い。

 

(サマナーは確か三ノ輪さんのお母さんに、後鷲尾家の人にも結構お世話になったんだっけ。

 それならまだ、まだわかるけど、シロガネはなんなの……?)

 

 悪魔の私が何故こんな感情をいだいているのだろう、とスクルドは指で顔を掻く。

 訳の分からない事だらけではあるが、それでも決意している事がある。

 

(サマナー達に、沖縄で何があったかを告げるわけにはかない……!)

 

 少し前、佐々木とJC達が北海道に行く前に、雨柳の実質的妻である御影とスクルドは何人かから沖縄でのことを聞いている。

 何でも、敵の妨害で異界内に閉じ込められた上みんな頭があっぱらぱーになったとか。

 そこまでは雨柳達も知ってしまったが、二人はそれ以上の事を聞いている。

 

 佐々木の事に話題が飛ぶと顔を赤らめる少女達に御影は問うた。

 どんな感じだったんですと。

 

 ふわふわとした長髪の少しだけ御影に似た少女は言った。

 三人がかりで返り討ちにされちゃったんですと。

 

 聖女の如き印象を与える清楚な少女は言った。

 二人でハメ請いして、たっぷり生ハメしてもらったんですと。

 

 小学生くらいの、生真面目な印象の黒髪の少女は言った。

 隣のぼたもちデカデカ女と一緒に、専用にされてしまったんですと。

 

 語られる恐るべき内容の数々。

 流石にこれは危険だと戦慄した御影たちは、即座に秘密にすることを決意。

 この内容について脳の奥深くに封印したのは言うまでもない。

 これ知ったら雨柳とか自爆技を覚えそうだし。

 

(……耐性いつになったらできるのかなー)

 

 遠い目をするスクルドの先で、雲が流れていく。

 雨降らなくて良かったなと彼女は良い事を見つける事にした。

 

「はあはあ……と、いう訳で俺は残念ながら期待に沿えない。

 ただそれでも君なら良い相手が見つかるさ」

 

 肩で息をしながらも雨柳はようやくダウンから回復し言葉を紡ぐ。

 そう、佐々木は紹介できないがそれでも雨柳は、少女の幸せを願っている。

 

「俺が態々余計な事をしなくても、君のご両親か君なら、最高の相手が見つかる。

 そうして幸せな家をもっと幸せにしていくといい。誰もがうらやむような、さ」

「ふふっわたくしだけでなく弥勒家をさりげなく褒めるとは。

 おじさまは人が喜ぶポイントをわかっていますわねー」

「いい家だっていうのは君を見ていればわかるからなあ」

 

 クス、と穏やかな顔で少女が笑う。

 10年前には思いもしなかった相手の穏やかな笑顔。

 それを守ることが出来たのは、雨柳が再び戦う事を選んだから。

 この半年間で得た最上の報酬の一つかもしれない。

 

 荒れた世界とは思えない平穏な時間。

 それは雨柳にとって心地よい物である。

 

「さて、受領手続きも完了したようですし。

 おじさまへ報酬を────」

 

 そこまで言ったところで雨柳と弥勒は気づいた。

 差し迫った様子でこちらへ走ってくる連絡員の女性。

 ほぼ同時に弥勒の部下や雨柳の仲魔も何事かと、顔を引き締める。

 

 そう、平穏な時間はあれど彼らは戦士。

 何事かあれば戦いに赴くのだ。

 

 この時世にたびたび起きる過酷な戦いにおいて先陣を切る事。

 それは自分の役目であると、雨柳巧は自負している。

 故にこの度も男は、戦場へ赴いた。

 

 

 


 

 

 

 先程までいた補給基地から来るまで十数分。

 防弾仕様の車が、一軒の邸宅の少し前で停車した。

 

「一番LVの高い俺が先行する。

 情報はどうだ?」

「はい、ちょっと待ってくださいね」

 

 仲魔二人を連れて降り立った雨柳は、同行した召喚師に問いかける。

 齢は20程の、金棒型の武器COMPを持った召喚師は、偵察に出した妖鳥を呼び戻す。

 ヤタガラスには珍しいカトリックである彼女は、普段情報収集を担当しているとの事。

 流石に手慣れており、すぐに必要な情報を引き出した。

 

「争いがあったのは邸宅の中。

 今は庭に住人らしき人が何人か。

 それとヤクザかダークサマナーらしき死体が幾つか、だそうです」

「そうかありがとう。

 てことはアリをマンハント連中が襲ったって感じか?」

 

 雨柳は邸宅の前に停車したバンを見る。

 車両の窓のガラスは砕け、血濡れの腕が垂れ下がっていた。

 

「確かアリというのは、物資と人を蓄えて異界内に籠っている御仁でしたか?」

「ああ、人を拉致でもしてなきゃ極悪人って訳じゃないが……ヤクザ連中が前々から狙っているのは聞いていたからな。

 決めつけは危険だが、通報内容からもその可能性が高い」

 

 先程寄せられた通報は、悪魔を知る市民から。

 邸宅の前に不審な車があり、不審に思い確認した所悪魔を出して攻め始めたとの事。

 事態の確認及び解決の為、現場から一番近い拠点に居た雨柳達が駆り出されたのである。

 

「僕が見た所トラップは発動済みで、呪詛の気配はない。

 ただどうも嫌な予感がするね」

 

 シロガネの言葉に雨柳はうなづく。

 長年悪魔と戦ってきた勘に引っかかるものがある。

 

「たとえ危険でも、救いを求めるなら助ける必要がありますわ。

 ……召喚! おいでなさい私の仲魔達!」

 

 弥勒が召喚するのは槍を携えた妖精セタンタと、樹木と一体化した女の顔を持つ神樹ダフネ。

 どちらもLV30近い悪魔であり、それは少女の研鑽を伝えるものだ。

 

「まだ精鋭には程遠いですが、やりますわよ!」

 

 偵察担当の召喚師と護衛を残し、彼らは進む。

 少女に押されるようにして雨柳達は突入を開始。

 奇襲に配慮し、遮蔽をとりながら接近し横合いから壁を破壊しつつ敷地へ。

 

 そうして見えたのは、熾烈な戦闘の光景。

 

「はああっ!」

「こ、コイツ……ぎあっ!?」

 

 剛剣の一閃が悪魔を、マンハンターの最後の一人を両断する。

 遠目から見ても技量の高さを感じさせる斬撃だ。

 

 それを成したのは白い軍装の男。

 片腕が折れ、全身に自他の血が付いた凄絶な有様。

 肩で息をする男は、すぐに雨柳達に気づいた。

 

「何奴!?」

「その格好お前……左文字か!」

「如何にも吾輩は左文字ワーグナーであるが……かく言うお主は雨柳! 

 それにそのデモニカはヤタガラスの者であるか!」

 

 軍装の男、左文字ワーグナーは少しの驚きと共に答えた。

 

デビルバスター左文字(さもんじ)ワーグナーLV47神経に強い 破魔・呪殺無効
 

 

 奇矯な名前は悪魔業界では珍しくないことを差し引いても特徴的。

 故にか弥勒の記憶にも引っかかる点があった。

 

(ええと確かガイア系列出身のバスターサマナー。

 1年ほど前に海外への依頼へ出かけてそのまま行方不明でしたか)

 

 いつの間に戻っていたのかは知らないが、この邸宅に住んでいたらしい。

 その過程で何があったのかは推測するしかないが。

 

(今この場では、被害者という事でいいのかしら?)

 

 弥勒は左文字の陰に隠れた者達を一瞥する。

 20代前半の、恰好からするとウィッチらしき灰色の髪をした女性。

 それと弥勒より幾分か年上の少女二人。

 彼女達は、心配そうに左文字を見つめている。

 

(ストックホルム症候群、の可能性もあるけどウィッチの人達には傷一つない。

 あの左文字さんが護っていたのだろうけど)

 

 あれこれ考えるより、話を聞いた方が早い。

 弥勒は左文字へと向き直る。

 

「此処で何がありましたの?」

「見ての通りだヤタガラスの少女よ。

 下賤な人狩り共が突如吾輩の家に押し寄せてきた。

 大半は殺したが」

 

 左文字は治療した片腕で女性達をかばいつつ、邸宅へ向き直る。

 辺り一面に生きているマンハンターと悪魔はいない。

 だが、まだ屋内に敵がいるかのように。

 

 屋敷の正面玄関の扉。

 魔術的物理的に徹底的に補強された其処に、不穏が満ちる。

 

「仕掛けを利用して閉じ込めはしたが、厄介な奴が一体残っている! 

 あれには我輩とてそうそう勝てん……」

 

 歯噛みするような台詞と共に、扉から生えるのは刃。

 X字に切り裂かれ、扉が崩れ落ちる。

 

「────これは、これは。

 気付かぬうちに随分と頭数が増えた事よ」

 

 瘴気を纏い、滑るように出てくる悪魔の姿は不吉。

 全身黒で染められた硬質な体を持つ悪魔の手には、血錆びた剣。

 兜じみた頭部の奥からは熾火の如き蒼い目が光る。

 

 それはスラブ神話に語られる神の一柱。

 負を司る黒き神、破壊神チェルノボグである。

 

    \カカカッ/

破壊神チェルノボグLV63呪殺吸収 氷結・魔力・神経に強い 破魔に弱い(即死無効)

 

 黒く揺らめく破壊神の波動が広がるだけで、邸宅の庭が拡張。

 闘技場の様な情景の、異界へと簡易的に変化させられた。

 その強大さに防人達は息をのみ、左文字は愕然とする。

 

「馬鹿な……さっきより10もLVが上がっているだと……!」

「ワシはの、 滋味あふれる食事を喰ろうて、腹が膨れたからのう。

 イマージュじゃったか? 虚ろな人形だが食いでがあったわい」

 

 チェルノボグはかつて三業会に敗北し、軍門に下った個体である。

 不満をいだきながらも従っていたが、今日の戦闘で仮初の召喚師である男のCOMPが破損。

 その隙をついて支配を抜け出し、重傷を負った召喚師やイマージュスラッシャーを喰らったのだ。

 

 邪魔な人間を始末したチェルノボグは上機嫌。

 高揚のままに次の獲物を求める。

 

「そのおかげで、こういう事も出来るようになった」

 

 捕食の名残である血を拭い、破壊神は指を鳴らす。

 祖の陰より湧き出てくるのは、醜悪な死者の群れ。

 

屍鬼コープスLV35銃撃・氷結・呪殺無効 破魔に強い 火炎に弱い

 

 無念の形相を浮かべた死者が何体も。

 這い出して来るそれらの目には、邪悪な敵意が満ちている。

 

「解放記念にお主らの命を頂こうか。

 何、気分がいいから楽にしてやるぞえ」

「残念だがそれは出来ねえ相談だな」

 

 チェルノボグに対して進み出るのは、雨柳。

 それと仲魔であるシロガネとスクルド。

 早くも戦意を取り戻した防人達を、護るように先人に立つ。

 

「その気ならお前には此処で果ててもらうぜ」

 

 雨柳の言葉にチェルノボグは半月の如き笑み。

 

「吼えてくれるのぉ小童。その威勢ならば遠慮はいらんか」

「来るぞ! 構えろ!」「あ、ああ……!」

「このチェルノボグの血肉となるがいい!!」

 

 黒衣が躍り、大剣が(まわ)る。

 それが戦いの幕開けとなった。

 

 

 

 

 

 幾度なく死闘を潜り抜けた雨柳は、チェルノボグより霊格(レベル)で勝っている。

 それは確かにこの戦いにおいて、彼らの優位な点である。

 だが、その差は十未満。

 これ程の相手に対しては、絶対的な優位など到底約束されない。

 

 異界の中心で破壊神が、周囲を薙ぎ払う。

 自分こそが此処の主であると、傲慢に宣言するかのように。

 

「カアッ! ぬるいぞ小童共!」

 

霞駆け物理スキル敵複数に2~4回の中威力攻撃を行う。確率で幻惑の追加効果。

混沌の海万能属性魔法敵全体に万能属性で攻撃を行う。 対象がLAWの場合威力激化

 

 

 無尽蔵とも思える体力のままに、当然の如く二回行動。

 繰出されるのは、暴力的な攻撃の嵐。

 シロガネの展開した防御結界(神奈備ノ守)があっても、きつい事には変わりはない。

 

「うぐあっ! 幻惑かかった! ちょっと回復頼む!」

「フレイダインじゃ削り切れないわね……ここはバフをかけていこう」

「あの子達に近づけさせるな! まずは足を封じるぞ!」

 

 ダメージや状態異常に対しては回復し、ラスタキャンディ*6で能力を引き上げる。

 雨柳達は縦横無尽に暴れまわる強敵に対して、互角に立ち向かう。

 

「このような時だからこそ平常心を保ちますわよ! 

 火炎を使える仲魔と、頑丈な仲魔を出して押しとどめましょう!」

 

 他方弥勒達防人は、襲い掛かるコープス達に立ち向かう。

 装備によって状態異常を防ぎ、相性のいい仲魔を前面に押し立てる。

 内心ビビっているところがなくもないが、それでも凛とした声を上げて指示を出す。

 

「右の2体に攻撃を集中! わたくしは……う゛お゛っ! 危ないですわ!」

 

 保護した少女を狙い繰出される拳を、仲魔でガード。

 お返しにと火炎弾を叩き込み悲鳴を上げさせた。

 

 可憐な顔立ちとは裏腹な勇気溢れる姿。

 それを横目で見ながら左文字は、チェルノボグへと攻撃を仕掛ける。

 

 軍刀を一閃させて繰出すのは真空斬り。

 半端な悪魔なら真っ二つに両断するはずの刃は、片腕を軽く切り裂いたのみ。

 

「石化した状態ならともかく、この程度では効かんのう……む?」

 

 左文字の陰、足元スレスレを疾駆するのは雨柳。

 金色に目を輝かせた男が繰出すのは居合の如き一閃。

 地摺の斬撃はそのまま雷の刃となって、チェルノボグの足元を襲う! 

 

「チィッ! やりおるな……! だが!」

 

 常ではありえない急角度の稲妻一閃は、踝を切り飛ばした。

 血とマグネタイトをたなびかせるチェルノボグは舌打ちし、跳躍のままに旋回。

 

「その程度でワシの命が取れるかあっ!」

 

 中空から繰り出されるのは虚空残波。

 体力を激しく消耗する代わりに、デスバウンドをも超える威力の全体攻撃。

 斬撃は咄嗟にカバーした左文字の仲魔を両断し、男にも重傷を負わせる。

 

「が……!」

 

 切断力以前の物理的衝撃。

 それのみで左文字は吐血し地面を何メートルも無様に転がる。

 

(またか、またなのか)

 

 血を吐きながら、苦鳴を漏らす。

 弱者のように震える手で、宝玉を使用する。

 視線の先では、回復した雨柳と仲魔達がまだ戦い続けていた。

 

(吾輩は、いや、俺はまた)

 

 全体呪殺が防人へ飛ばないようにシロガネが盾になり苦悶する。

 スクルドが回復魔法を飛ばしながら槍を振るう。

 雨柳が指示を飛ばしながら、属性を付加させた刀で切りかかる。

 

(また……負けるのか……?)

 

 左文字ワーグナーは少し前まで、強者として知られていた。

 奇矯な名前や振舞も強さに裏打ちされたならば肯定される物。

 戦い、研鑽を積むたびに名声は増していく。

 悪逆な行為に身を染める事はなかったが、己の強さを鼻にかけていたのは間違いない。

 

 そんな彼はある目的から渡英して、メシアとの戦に惨敗した。

 仲間も民間人も悲惨な目に合う中助け出せたのは、幼馴染であったウィッチを含む数人。

 這う這うの体で日本に逃げ戻った自分は、水におちた犬の方がマシな無様さだろう。

 

 アコライツなる団体に連絡を取り、異界のノウハウを得たが上がやらかしてすぐに壊滅。

 そして俗にアリと呼ばれる異界への引きこもりを始めれば、これだ。

 

 此処に至れば嫌でもわかる。

 左文字ワーグナー否、佐藤和吾助(さとう わごすけ)は完全なる愚者だ。

 頼みとする力はこの時代では並程度で、やることなす事失敗ばかり。

 全く以て度し難い。この様な惨めな人間が他にいるか? 

 

 そして今も、未成年や顔見知りにおんぶにだっこだ。

 情けない。実に情けない。

 この様な人間はこのまま死ぬのが────

 

「いだだ……そこの人、すいませんが宝玉とってくれませんこと?」

 敵のコープスに突進されたのだろうか、少女が転がってきた。

 確か弥勒と呼ばれていただろうか。

 

「あ、ああ」

「ありがとうございます。……急造にしては硬いですわね」

 

 コープスへ銃撃しながら左腕に装着した端末を確認。

 あの悪魔のマグネタイト型量である為か、異界の障壁は硬い。

 

「これでは、あなた方を出すことは難しいでしょう。

 ごめんあそばせ」

「え……」

 

 意外な言葉に、左文字は驚く。

 この少女は今、何と言った? 

 

「待ってくれ。俺はアリだぞ? 

 ヤタガラスからすれば無駄飯くらいの、面倒ばかり起こす、ロクデナシのはずじゃ」

 

 戦況は厳しく、断腸の思いでこの少女の様な子供を出さなくてはいけない程。

 そんな時世に尻尾を巻いて隠れ、あまつさえ雑な異界作成で悪魔出現の遠因となる。

 護国組織からすれば、それこそ討伐対象に他ならない。

 そんな相手を何故助けようとする? 

 

「うーん……あなたが外法な行いに手を染めているならともかく、そうではないのでしょう?」

「だが、あの子達ならともかく俺までを?」

「わたくし、逃げる事が悪いと思いませんもの」

 

 戦闘中だから手短にと前置きして、弥勒は告げる。

 

「人間怖い物から逃げるのは当り前ですわ。

 わたくしも正直、防人になってから怖いと思った事は何度もあるし。

 逃げたいっていうのはよくわかりますわーえいっ」

 

 話ながらアギストーンを投擲し、敵を怯ませる。

 

「だからわたくしは逃げる方を咎めはしません。

 でも、もし。もし共に戦ってくれるなら」

 

 防人たる少女は、爽やかな微笑みで告げた。

 

「盛大に、歓迎しますわ!」

「────────」

 

 弥勒が戦線に戻って何秒か、気が付けば左文字は立ち上がっていた。

 少女の言葉を聞いているうちに、鉛の様な体が軽くなった。

 それ以上に力が強まった気がしている。

 

「はぁっはぁ……ふぅ、ううう」

「……レイラ」

 

 それは彼の幼馴染であるウィッチのレイラ。

 彼女が発動した攻撃力強化魔法(タルカジャ)による物だ。

 驚きを以て左文字は、彼女を見返す。

 

 レイラは故郷イギリスでメシア教の魔女狩りに会い、傷つけられた。

 教義に反する魔女として目を抉られ、舌を死なないように斬り、背中に烙印を押された。

 その結果、彼女の片目は義眼になり、背中には古傷の跡。

 そして何よりも、彼女が修練した魔法の行使に激しい心理的苦痛を伴うようになった。

 

 その彼女が魔法を使い、息を荒げながらも魔法を使った。

 何のために、左文字を支える為だ。

 

(レイラ、君は……)

 

 自然と軍刀を握る手に力が入る。

 これまでに何度も反芻した記憶を思い返す。

 

 幼少期、成金の高圧的な父親に渋々連れられて行った英国で出会った少女。

 事業の邪魔になると親共々嫌がらせを受けた彼女を、庇った事。

 それが、この大切な女性との出会いだった。

 

 彼女の家に伝わる魔術を教わり、代わりに日本という異国の事を教えた。

 そうして二人で未知に胸を躍らせて笑いあった。

 成長して関係性が変わり、お互い大人になって会う機会が減っても、大切な人であることに変わりはない。

 お互い打ちのめされて、それでも傍にいる大切な人。

 

 そんな彼女が、彼が助けられた少女二人が、涙目で頷いた。

 彼を後押しするように。

 

「逃げても咎めない。戦うならば歓迎する。ならば────」

 

 彼女達の目を見れば、十分だった。

 

「充分であるなあッ!!」

 

 咆哮と共に回転し、コープスを切り裂く。

 血と悔恨の叫びがこだまする中、左文字は地を這うように疾走。

 血濡れた草を蹴だてて、四角へ潜り込むようにチェルノボグへ接近。

 

 雨柳達とチェルノボグは膠着状態。

 一瞬の隙を作れば、戦況を傾ける事が出来るだろう。

 ならば、己の手札を切る価値はある! 

 

「来いっ! セイギュウカイっ!」

 

 懐中時計型のCOMPに触れた瞬間、召喚されたのは雲に乗った蒼い牛の悪魔。

 LVも高くなく、呪殺弱点の為に呼び出せなかった仲魔である。*7

 このままならば呪殺魔法で一蹴されるだけだが。

 

「いつもの奴じゃな! 心得ておるわい!」

 

 セイギュウカイが放つ中位破魔属性魔法(ハマオン)

 後押しを受ける様にして、上段からの凄絶な剛切断を左文字は放つ。

 破魔属性魔法(神聖系魔法)剣を用いた物理スキル(剣系特殊物理)の相乗効果は、予想以上の効果を生み出した! 

 

ライトスマッシャー合体魔法ペルソナ2罰出展 聖なる力を込めた剣で敵を切り裂き、高確率で瀕死にする。
 

 

 輝く斬撃は、チェルノボグの傷ついた片腕を切り飛ばす。

 積み重ねたダメージと弱点効果の合わせ技は確かに届いた。

 

「俺の、我輩の奥義の一つだ!」

 

 左文字がある機会に知った合体魔法は、彼の奥義だ。

 破魔を弱点とする敵にはライトスマッシャーを、呪殺を弱点とする敵にはダークセイバー*8を用いて、一撃で殺す。

 意表を突いた一撃は、これまで幾度なく彼を生き延びさせてきた。

 

(……やってくれおるわこの小童)

 

 チェルノボグは即死無効の為一撃で戦闘不能になることはない。

 だが、これまでダメージが蓄積した片腕に、意識の外から叩き込まれた一撃は効いた。

 

 破壊神は熾火の如き目を見開き、硬直する。弱点硬直! 

 

「隙を見せたな……ならこれはどうだあっ!」

 

 隙を見逃さないシロガネが繰出すのは白銀に輝く、強大な雷。

 陰鬱な異界を切り裂く美しき雷光は、ガードに掲げた剣毎、チェルノボグの腕を炭化させる。

 

(なんとまあ。闘いとは一瞬で趣が変わる物よ。

 これもまた人間の性がもたらすものか)

 

 戦いに高揚すれど、チェルノボグには動揺はない。

 死や不運という負なる物が、破壊神自身にも向いただけ。

 ただ、それだけのことだ。

 

 チェルノボグは胸を張り、自分へ向かう軍神と剣士を見据えた。

 

「……ありがとうな。スクルド! 一気に決めるぞ!」

「ええ!」

 

 雨柳が持つバルムンクの力を宿した銘刀と、スクルドが持つ大槍。

 両者が全力で放つ一撃が共鳴。

 天を震わせる斬撃の波動が、雷のように響いた! 

 

震天大雷合体技敵全体に剣相性特大ダメージを与え、中確率で気絶させる。 アバドン王では神話のバルムンクの使い手であるジークフリートと協力して放つ奥義。
 

 

 絶大な力の波動が、チェルノボグを含むすべての敵を吹き飛ばす。

 マグネタイトの粒子が立ち上る幻想的な光景は、勝利の証。

 

 残身を決めた雨柳は立ち上がり、刀を鞘に納める。

 微かな金属音が響いた。

 

「はあ……流石にこれはきついな。

 一回の戦闘で出来るのは、せいぜい2回か」

「……ええ、もう少し私も難しいけどLVあげなくてはね」

「前衛は体力必要で大変だなあ。取り合えずマカの葉使っておきなよ」

 

 肩で息をし、負担に汗を流す雨柳とスクルド。

 それでもなお彼らは、吊りそうな腕を上げる。

 

 健闘した仲間達を湛える為に。

 

「……うむ」「いえい、ですわ!」

 

 左文字や、弥勒達もそれに続いた。

 

 

 


 

 

 

 帝都東京にある、とある邪教の館。

 住宅街の一角にある古物商に偽装した館は、雨柳の行きつけである。

 

 この館の主である女は、珍しく半目で雨柳を見ていた。

 

「何だお前等は。餌を投げられた鯉か? 

 朝からわらわら集まりすぎだろう」

 

 普段は穴場である事もあり、比較的すいている施設である。

 にも拘らず今日は、いつもより遥かに多数の召喚師が来ていた。

 予期せぬ繁盛具合には、普段泰然自若とした女も辟易気味だ。

 

「すまないが急度用でなー。

 フェクダとかいうのが数日後に来るからさ」

「まあそれはそうなんだが」

 

 あと二日もないうちに襲来する謎の敵フェクダ。

 以前出現したドゥベと同様にセプテントリオンであるそれは、合体状態だと万能以外通じない強力な耐性を持っている。

 更に合体の度に広域高位電撃魔法(マハジオダイン)級の電撃を放ち、周囲数百メートルを破壊する無法さ。

 その他にも地上の汚染やトラップ設置など、傍から見ればふざけるなとしか言いようがない極悪性能の敵である。

 

 だがキリギリスの集合知はこの敵に対する攻略法を編み出した。

 その一つが、一部の悪魔が持つ特殊な仕様のマカラカーンの、1()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()仕様。

 

 そうなれば起きるのは邪教の館へのラッシュ。

 電撃・魔力耐性の負荷の他にも上記の仕様のマカラカーンを手に入れんと、キリギリスに参加する召喚師がこぞって向かっていった。

 その余波が此処にも来たのである。

 

「まあ、私にとっても貴重なデータをとるいい機会だ。

 第一ツーリングに行くのに道路が壊れては困るしな。

 途上国に行った時のようなことは避けたい」

 

 それに、と前置きして女は雨柳以外のメンバーを見やる。

 

「耐性は問題ないからガードキルだ……! 

 貫通を持たない僕がこの環境でやっていくにはこれしかない!」

「突貫でLVを上げなおした吾輩ならばゴルゴンもイケるはず。

 折角だから呪殺魔法もつけねばなァ」

「電撃吸収、電撃吸収持ちは何処だあ~」

 

 雨柳が連れてきたシロガネ、左文字や立科といった面々が何事か呟いている。

 必死に手持ちの端末やノートで、自身の手札に最適な合体を模索しているのだ。

 その様子は、本人からすると必死ではあるが。

 

「必死な悪魔や召喚師は見てて面白いからな」

「お前相変わらず性格悪いな……という訳でよろしく頼む」

 

 にやにやと笑う女の趣味は、知ってはいるが独特である。

 

「了解だ。所でゴルゴンには電撃耐性が元からあるだろう? *9

 魔力無効があるならこっちの悪魔を素材にした方が良くないか」

「確かにな。物理型は自爆攻撃をしてくるらしいし……。

 ってことを考えるとラクカジャ付きのこちらにするか」

 

 軽口をたたきながらも、彼らは闘いの準備を進めていく。

 苦悩が、困難があろうともこの時代でなお戦う事を決めた彼らは進んで行く。

 迷う事もあるけど、大切な物や支えてくれる人がいるから。

 彼等は協力して進んで行くのだ。

 

 その答えの一つが、これから始まるセプテントリオンとの二回目の戦い。

 必死の連帯の末に現れた二つの希望。

 それは紛れもなく、彼らの戦いに繋がっている。

*1
アバドン王出展 悪魔から入手した"魔晶"というアイテムと刀を合体させ新たな刀を生み出す。攻撃力の強化の他、使用者のステータスアップや耐性等の特殊効果をもたらす。

*2
アバドン王にて錬剣術によって作成可能な高ランクの刀。HP・力・運が強化され呪殺属性の攻撃を1.5倍にする<呪殺高揚>が付与される。

*3
原作 『DDC 掲示板回その28』

*4
前回の話参照 キリギリスに参加している武器COMP使いの召喚師

*5
ソウルハッカーズに登場する宇宙人と思われる生命体のゾンビ。 LVは何と44。高くね? 

*6
味方全体の攻撃力・防御力・命中・回避率を上昇させる。 LVアップにてスクルドが取得した魔法

*7
真ⅣFではLV29で衝撃・呪殺弱点

*8
呪殺などの暗黒系魔法と物理スキルを用いた合体魔法。 暗黒の力を込めた剣で敵を切り、高確率で瀕死にさせる。

*9
真Ⅰだと耐性は電撃半減




・雨柳巧 <デビルサマナー><剣士> LV68
シリーズポジション:ニッカリ及び悪魔討伐隊(真・女神転生Ⅳ Final)
キリギリスの一員として活動している元ヤタガラスの悪魔召喚師。
本エピソードで錬剣術による【銘刀バルムンク】と、拳銃型COMP【六六式召喚拳銃】を手に入れた。
弥勒ちゃんとの和解など戦い始めてよかったことは多いが、それでも脳破壊はされる。とうとうシロガネという同類までできてしまったおじさんの明日はどっちだ。



次回も早いうちに投稿したいと思います。
出来ればフェクダ戦についても描写していきたいですね。
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