真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス-   作:ローグ5

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ちょっと短めですが投稿します

書いてて思うんですがこのダークサマナーこれまで何人GetWildしてきたんだろう……?


魔術師は隻眼の鷹に魅せられて

 其処は、言うなれば外道の遊び場であった。

 

 帝都某所、人目につかない場所にある施設。

 武装した悪相の男達が警備するのは、ヤクザ資本の闘技場。

 とは、名ばかりの悪趣味極まりない処刑場。

 

 見世物にしているのは、高LVによる低LVの虐殺に状態異常で行動不能にした高LVの嬲り殺しといった、凄惨極まりない光景。

 悪魔業界の人間でも眉を顰めるような光景ではあるが、規制の緩い海外に行くことが出来ず、欲望をため込んだ外道共には渡りに船。

 今日も亡者のように観客が集っていた。

 誰も彼も、嗜虐心に満ちた笑みを浮かべて。

 

「おっ今日ちゃんマリ出るじゃん! あの子泣き顔可愛くて好きなんだよな~」

「それな。悲鳴が他の奴等とは一味違う。

 触手持ちン時はマジで最高だったし、あの子で楽器を作りてえ」

「メインディッシュのイケメンいいわねコレ! 

 苦痛に泣き叫ぶの早く見たいわ!」

 

 場内を興奮の熱気と共に満たすのは、下劣な言葉の数々。

 他者の絶望を、苦痛を心待ちにしている者達は邪悪に過ぎる有様だ。

 

 かくして今宵もまた、外道共の心を血で潤わせる宴が始まろうとしていた。

 饗されるのは、あるスポンサーから提供された超高LVDB。

 魔法禁止・物理スキル禁止・回避不可etc……状態異常で徹底的に縛られた彼は、闘技場のパフォーマーによって処刑される。

 それは彼らにとって何度も見てきた、愉しい愉しい既知の光景である。

 

 盛り上がった所でのパフォーマーの紹介。

 続いてゲスト(生贄)が紹介され、常軌を逸したLVの高さに、観客たち驚愕と困惑し、一瞬静まり返る。

 経験値のつまった肉(カモ)と見たパフォーマーが飛び出して、虐殺ショーが開始────―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────される事はなかった。

 始まったのは虐殺ならぬ、逆殺ショーであった。

 

「おいおい、どうしたお前ら?  

僕は防御(ガード)をしてただけだぜ?」  

 

 雄叫びを上げ、鉄拳を撃ち込み続けた所を、あべこべに殴り飛ばされ。

 泡を吹いて痙攣する壊し屋をよそに、赤眼を光らせて男は宣言する。

 

 悪魔よりもなお悪魔らしく、哄笑する男の名は<レッドアイ・ホーク>。

 隻眼の殺し屋、極道殺し、流浪の修験者、赤目の解析屋と多くの渾名を持つ歴戦のDB。

 全国各地で悪魔を殺し、ダークサマナーを殺し、ヤクザを殺してきた彼は、当然ながら多くの悪党から恨みを多く買っている。

 故にこの処刑場へ連行され、なすすべなく惨殺される姿に溜飲を下げようとしてた者は多いが、そうはならなかった。

 

 殆どの行動が封じられた中、彼が行ったのは瞬間的(パッシブ)な反撃。

 肉体を駆動させる物理スキルは使えなくとも、反撃を行うことは可能である事。

 事前の検証でそれを確認した彼は、反撃を中心にすれば高LV故のステータスを活かし戦えると確信していたのだ。

 

 極限状態での戦いを数えきれない程経験してきたが故の判断。

 周囲が唖然とする中、彼は悠然と攻撃に立ち向かう。

 

 さらに恐ろしい事に彼は、1ターン(10秒)毎に力を取り戻していく。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()状態異常が消え、体力が回復する。

 パフォーマーからすれば理不尽極まりない、悪夢のような事態が目の前で起きていた。

 

 電撃使いの凶獣が、電撃を纏った一撃(サンダーバウンド)を撃つ。

 ────猛反撃で叩き潰された。

 

 天賦の才を持つ光の牙が、驚嘆すべき万能の拳(アンティクトン)で殴りかかる。

 ────激烈な反撃(ハイパーカウンター)で頭部を吹き飛ばされた。

 

 介錯人の少女が、暗殺の絶技(闇討ち)で頸を斬る。

 ────不屈の闘志で回復された。

 

「まあ綺麗に死んだし、おかげで呪いも解けたけどね!じゃあ全力でやろうか!!」 

「無理です、殺して」

 

 赤黒い血で汚れながらも、笑う男はさながら理不尽の権化。

 介錯人の少女が絶望し、降参したのも無理はないと言えよう。

 

「……うっわなまじイケメンだから絵面がえげつないわ」

「そう? ワイルドで素敵だと思うけど」

 

 予期せぬ状況に観客がどよめく中、入り口近くの席で小声で話し合う者達が居た。

 

 二人組の女性、声や物腰からすると二十代の前半だろうか。

 そのうち一人は夜会用じみたドミノマスクをつけ、帯剣した剣士。

 もう一人のフードを目深に被った女性は、アミュレット等から察するに恐らくは魔術師系統。

 デビルバスターらしき二人もまた、闇闘技場の驚くべき光景を見ていた。

 

 早くも罵声を上げ始めた観客達をよそに、彼女達は囁き合う。

 その間も魔術師はレッドアイホークから、目を離さない。

 

「2年経ったけどすごいわねホークさん。

 LVとかスキル以上に在り方が強い人……」

「いやあ猛反撃の仕様は知ってたけどこんな戦い出来るんだね。

 所であの人、やっぱりソーサレスの探してた人なんだ?」

「────間違いないわよエッジ。

 外見も声も同じだから。忘れるわけがない」

 

 ソーサレス、この闘技場に入るにあたって付けた偽名で呼ばれた魔術師は、エッジという仲間の言葉を肯定する。深く深く頷いて。

 

「あの人は私の時も……あ」

 

 不満を爆発させた観客の蛮行に、レッドアイ・ホークが動く。

 ここでは決してありえない光景に、ソーサレスは身を前に乗り出す。

 

 フードの下にある、色素の薄い長い髪と、整った顔立ちが垣間見えた。

 ついでに言えば、目の当たりにした男の雄姿に輝く、大きな目も。

 

 

 


 

 

 

 ──────私がホークさんと会った時の事? 

 

 んー身の上話って仲間に軽くした時くらいだから難しいわね。

 割とありふれた感じの話だけど……それでも良いなら話してみるわ。

 

 今から二年ほど前になるかしら。

 この国に来た私は切羽つまっていたの。

 

 元いた国の魔術結社でちょっと、ありふれてはいるけど面倒なトラブルに巻き込まれてね。

 どんな内容かって? 後継者争いとか、足の引っ張り合いとかありふれたトラブルよ。

 まあ黒魔術って感じじゃないけど閉鎖的な所だったからね。

 私も死んだ母の縁がなかったら、そもそも所属しなかったと思うし。

 

 で、トラブルに巻き込まれてなんとか日本まで逃げられたんだけど、遅効性の質の悪い呪いを受けていたことが分かってね。

 ようやく日本で落ち着いたと思った頃に症状が出て来たの。

 

 悪魔退治の依頼は受けられるといっても、魔術の専門家とも伝手は無し。

 治療できる魔界医師かかろうにも治療は高額。

 生きるために、私にはお金が必要だった。

 

 とは言っても強盗とかするわけにもいかない。

 慣れない異国でそんな悪事で金を稼いでも、すぐに足がつく。

 だから地道に稼ぐしかなかったわ。

 自分で症状を緩和して遅らせる事は出来たしね。

 

 そんな状況だから、最低限の休養を除いて毎日のように依頼を受けたわ。

 お金稼ぎとLVを上げる為に男に身を捧げて、悪魔にも何度か。流石に相手は選んだけどね。

 嫌なこともあったけど、一人で死にたくないって思っていたから。結構頑張ったわ。

 

 ……でもやっぱり焦りすぎていたんでしょうね。

 報酬目当てに受けた依頼で返り討ちにされたの。

 

 依頼は廃ホテルの異界に巣くった悪魔討伐。私が負けたのは夜魔サキュバス。

 LVは確か、42で物理弱点じゃない代わりに魔法を吸収しないタイプで火炎が弱点。*1

 私は火炎が得意だったから相性は悪くなかったけれど、当時LV20代の私じゃあ抗えなくて。

 

 負けた私は、装備を剥がれて魅了魔法(マリンカリン)されて。

 挙句の果てに色情霊に憑依された。

 そのままだと私の末路は、悪魔に飼われるMag苗床、だったでしょう。

 悪魔業界では良くあることだけどいやな物、よね。

 

 でも私はそうはならなかった。

 私が踏みにじられる前に、ホークさんが来てくれたから。

 

 サキュバスの方が10もLVが上だったのに彼は互角以上に戦っていた。

 状態異常を防いで魔法に耐えて、仲魔に援護させてサキュバスを叩きのめした。

 私がはしたない姿を見せても笑わないで、むしろ怒ってくれて。

 私を庇って怪我しながらも、サキュバスの頭を殴り潰したの。

 

 そうしてボスを倒して異界を踏破して一件落着……では終わらないのが悪魔業界なのよね。

 うん。私は素の状態で魅了喰らった上に色情霊に憑依されていたから。

 ちょっとまあ、人には到底見せられないあられもない状態になっていたわ。

 

 だから、はい。彼に……また手間をかけさせてしまったの。

 こういう悪魔のせいでの過剰性欲に囚われた時は、"荒療治"が必要だから。

 男の彼に私を抱いてもらう事になって。

 丸一日ほど、彼と一緒にいたわ。

 

 その日脳味噌性欲濡れだった私がどうなったかというと、その、ね。

 …………すごかったわ。

 

 心も体もぐちゃぐちゃになった私を丹念に開発して、蕩かして。

 愛撫されて、気持ちよく攻められて。

 

 口では拒んでも心身は彼を求めてしまうようにすぐにされた。

 じっくりと、丁寧に気持ちよくされた。

 

 その後も抱かれたまま入れられて、優しい言葉をかけられて。

 殆ど正気に戻っていた私がわんわん泣きついても、優しい言葉をかけて撫でてくれた。

 一晩かけて私の心を満たしてくれた。

 

 結社を抜けてから、あんなに不安なく眠れたのは初めてだったと思うの。

 

 ……でもそこまでしておいて、私が寝ている間に出ていかなくてもと思ったわ。

 

「一方的に良い思いしたのはこっちだし、また顔を合わせたら嫌だろうから」ですって? 

 命を助けてもらった上に、ドロップ品を売ったお金の大半までおいていったのよ!? 

 そんな事思うわけないじゃない! むしろ私のご主人様に、あ、待って今の流石になしっ。

 

 ……兎に角あの人の足取りを追えなかったのは残念だったわ。

 呪いを解除した後に調べたけど、分かったのはレッドアイ・ホークっていう渾名だけ。

 一から鍛え直して悪魔と戦う間にも、彼が何処にいるか分からなかった。

 

 だけど死んでいると思わなかったし、私も死なないように頑張ったわ。

 何故かと言えば、元気な今の私の姿を見て欲しかったから。

 少しだけだけど、恩返しになるかなと思ったの。

 

 ようやく信頼できる仲間を見つけて、あの人も参加してないかなーと思ってキリギリスに参加して活動していた。

 だから、今回の事は驚いたわよ。

 まさかあの人が処刑ショーに出るなんて。

 

 

 


 

 

 

 ──────パフォーマー(処刑人)の一人、介錯人の異名をとる少女は、他の者とは毛色が違った。

 

 身のこなしからすると、戦闘経験はそれなりにあるのだろう。

 事実少女は一時とはいえカジュアルには珍しい、強者として注目をされていた。

 最も下剋上され、大切にしていたはずの仲魔に手のひらを返され、今はこの闘技場で玩具にされる身ではあるが。

 

 話を戻そう。介錯人は力はあっても纏う空気が、壊し屋とも凶獣とも光の牙とも違う。

 有体に言えば素人臭さが抜けておらず、裏の血なまぐさい雰囲気がない。

 

 当然ではある。彼女は一年程前まで病弱で、悪魔の血が覚醒してからは日常生活すら送れていなかったのだから。

 

 事実少女の身体は同年代と比べても、華奢で肌色も不健康に白い。

 まるで罅の入った白磁の器のような、可憐ながらも良識ある者に不安を抱かせる儚さ。

 仲魔の加護で維持していた力もとうに失せ、今の状態ではただ動くだけで、心臓が痛む程。

 ましてや敗北してから受けた過酷な暴力と陵辱は、確実に少女の心身を蝕んでいる。

 

 そんな状況で見出した唯一の活路は、敵を倒して膨大なMagを奪い取る事。

 限界の状況でなお、僅かな希望に全てをかけて敗北した。

 

 抵抗する手段を思案するわけない。

 騙し打ちを仕掛けようとするわけでもない。

 見苦しく命乞いをするわけでもない。

 

 ただ絶望し、震え泣いていただけだった。

 

「殺せ! コ・ロ・セ!」

「日和るんじじゃねえよさっさとヤれっ」

「もっと泣きわめけー!」

「全裸土下座しろよ全裸土下座!」

 

 少女に浴びせられるのは罵声。

 追い打ちをかける様に、品性下劣な声を荒げて攻めたてる。

 限界を超えた少女に、嗜虐心を剥き出しにして。

 か細い体と心を更に残酷に壊そうとする。

 

 それは理由があれど悪事に手を染めた少女への因果応報と、いう者もいるかもしれない。

 しかしか細い体を震わせなく少女は悲惨に過ぎ、また浴びせられる罵倒は下劣に過ぎた。

 

「つまんねえなら死ねよ!」

 

 頂点に達した嗜虐心により、撃ち込まれる魔法。

 飛び込んでくる魔法に、少女は、身を固くする。

 何度も味わった死と苦痛に怯え切って。

 

 そうして、既知の絶望が少女を打ち据え────る前にレッドアイ・ホークが少女を庇った。

 

「うおっマジか……! 此処で庇うんだあの人」

「……途轍もなく強くなったのにこういう所は変わらないのね」

 

 ソーサレスは、いつもより熱い息を吐き出す。

 出会ったのは一度だけ。されど男の意思の強さは知っている。

 本能のような、呪いのような、護る意思。

 

 かつてソーサレスを護った時のように、レッドアイ・ホークは今日も少女を護っていた。

 

(LVは、90になったんだっけ。

 私の時より3倍近く、凄い戦いをして、誰かを守り続けていたんだろうな)

 

 闘技場の有象無象に得意げに、この子は勝者である自分の物だと宣言するレッドアイ・ホークは一見すると増上慢にも見える。

 しかし見る者が見れば、攻撃されたら少女の盾になれるような位置取りをしていると分かる。

 全く以て自分が泥をかぶることを厭わない、意固地なまでの在り方であった。

 

「カッコいい……」

 

 ソーサレスは陶然と呟く。

 誰かのために戦う存在が一番格好いい。

 かつて男に教えてもらった事だ。

 

「おいソーサレス。

 雌落ちしてる暇ないぞ。そろそろ来るよ」

「ヤクザって血の気多くてせっかちだいやねー」

 

 仲間の言葉にはっとすると、ギャアギャアと銃器で武装したヤクザが出てきていた。

 余りにも予想外な展開に、責任を取らされる管理者が選んだのは手持ち戦力での抹消。

 短絡的な手は悪手だがそれしかないだろう。

 

 まあもっともそんな手が、あらゆる意味でうまく行くわけがないのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 当然ながらレッドアイ・ホークが闇闘技場で処刑されるというニュースは、悪魔業界、ひいてはキリギリス内でも話題になっている。

 さらに言えば、キリギリス内の殆どが事の真相に気づいていた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そんな訳でこの闘技場には密かに多数のキリギリス関係者が集まっていた。

 クソみたいな闇闘技場を潰したいし、外道の血が見たいし、暴れたいから。

 自由参加で色々な奴が来ていた。

 

 彼等はヤクザ達に呼応して次々と姿を現す。

 正体バレバレの虎マスク男(自称タイガーマスク)に、王蛇×6(通りすがりのDB)謎の導師(ヘビクラ隊長)

 ヤクザ達が唖然とする中、次々と乱入者の数は増えていく。

 

 それは観客席でも同じであった。

 

「な、なんだあっ!?」

「警備員がぶっ飛んできたぞ!? 運営何やってんだあ!?」

 

 更に放送室、映像の撮影配信を行う部屋が機材毎吹き飛んだ。

 

「ああーっ! 貴重な収入源があっ!」

 

 行動を開始したのは裏闘技場に密かに来たキリギリス各員。

 姿を現した彼らは──────

 

 

 

「私の名前はキャプテン・カラス。

 安全圏から女の子一人を甚振るだけの君達には失望したよ。死ぬがいい」

 

導師キャプテン・カラスLV73
  

 

「女の子が可哀想なのは憲法で禁止なんだ」

 

■造魔■シルバースターLV66

 

「偶にはクズの泣き声が聞きてえからよ。わざわざ来てやったぜ」

 

カメンヒジリ包帯男LV59
 

 

「外道共は生存禁止! 禁止だぜェ~!」

 

デビルシフターサメ頭LV61

 

 

 

 ────有体に言って化け物の集まりであった。

 超人クラスかそれ以上のDBがわらわらと集まり、闘技場に集った外道共に襲い掛かる。

 安全に残酷を楽しむ為の場は、外道共が収穫される草刈り場となっていた。

 

「あ、そこの奴京都関連の幹部だわ。捕獲して情報吐かせんぞ」

「マンハント系の連中が多めだな。

 状態異常回復アイテムと仲魔切らすなよ」

「あそこの護衛は幾らか強そうだな。

 三人がかりで確実に潰すぞ」

 

 キリギリス各員は一見無秩序に見えて、連携し的確に反撃をそいでいく。

 歴戦の動きに、残酷さの身が取り柄の堕落した者達は歯が立たない。

 

「ほらエッジ! 私達も増援潰さないと!」

「え、あ、うん」

 

 戦陣に加わったソーサレスは、さっきとは反対にエッジを叱咤する。

 彼女は、観客席で暴れている中でもひと際強い男、キャプテン・カラスを半目で見ていた。

 カラスっぽくしたペストマスクを被り、神獣アヌビスを従えた男とは知り合いなのだろうか? 

 よく考えれば、其処までエッジの過去を知らないなと思いつつも、杖を構えた。

 

 慌ただしい足音を響かせて来るのはヤクザや雇われたマンハント共。

 ガチャガチャと耳障りな音と共に突進してくる。

 

軍勢ゴロツキの群れ*2LV35物理・銃撃に強い 破魔無効 魔力に弱い

 

 刀剣やアサルトライフルで武装したゴロツキ達の、数は脅威ではあるが。

 

「ソーサレス、いつも通りの手順で」

「了解ー。SUMMONデカラビア! 

 テトラカーン!」

 

 魔術師たるソーサレスが堕天使デカラビアを召喚。

 同時に発動させるのは物理反射障壁(テトラカーン)という銃撃に対する壁。

 

 それはゴロツキ達の乱射を跳ね返し────確かなダメージを与えた。

 

「う、そだろぉ!? 耐性があるの、に……!」

「ぎゃああっ!? アイツ等何をしやがったあ!」

 

(まあ普通は知らないわよねこの仕様)

 

 上機嫌に回転するデカラビアの傍らで、ソーサレスは想う。

 

 種を明かせば簡単な話だ。彼女の使役するデカラビアが使うテトラカーンはやや特殊。

 反射した攻撃は、相性無視(100%)で、相手にダメージを与えるのだ。*3

 大種族【鬼神族】の鬼女ゴルゴンと同様の仕様の障壁を使用可能なデカラビアは、要注意悪魔の一角である。

 

 驚愕と苦痛の悲鳴が響き渡る中、エッジが放つは全体高位重力魔法(マハグラダイン)

 希少な属性故に耐性がないゴロツキ達が叩き潰され、血をまき散らす。

 

「エッジ! 正面と、11時の方向!」

「新手来てるね!」

 

 血の池を蹴立て、客席を飛渡る数体の影。

 ゴロツキを囮とした悪魔達は、闘技場の用心棒であり、マンハントとは異なる強さ。

 それらが彼女達に接敵(エンカウント)せんとするが。

 

「悪いけど何もさせないわ。

 闇に惑いなさい」

 

ダークミラージュ*4補助スキル敵全体の回避率・命中率を二段階低下させる
 

 

 ソーサレスの魔力が励起すると同時に、悪魔達を包むは昏き魔力の波動。

 黒い魔力は、悪魔達の四肢を、感覚器官を縛り働きを衰えさせる。

 一度使われれば、避ける力も当てる力も大きく弱まる恐ろしい魔術である。

 

 そして、その隙を見逃す彼女達ではない。

 

「アナライズ完了。クドラクは私がやる。

 エッジは前衛のプルキシお願い」

 

≪アギダイン≫

 

「はいな。いやあ御霊改造もされてないと楽なもんだねえ」

 

≪デスバウンド≫

 

 火炎で、剣撃で瞬く間に悪魔は討滅。

 悪魔の残滓を蹴散らしながら、二人は次の敵を目指して駆ける。

 

(────私も頑張る)

 ソーサレスはつかの間、愛しい男の姿を瞳に焼き付ける。

 少女を抱きかかえ退避していく彼とは、折角見つけられたのに言葉を交わす事も出来なかった。

 

 でも今はそれで十分だ。

 彼が変わらず、誰かを護る人間であることを知れたのだから。

 

(今度ホークさんに会ったら今の私の姿を、見てもらわないとね)

 

 少し口元を緩めると、相棒たるエッジに続く。

 今は外道共の討伐が先だ。さあ愛しの彼に追随して頑張ろう。

 いつもより軽やかな心で、ソーサレスは想った。

 

 

 


 

 

 

 こうして裏闘技場とは名ばかりの残酷処刑場は壊滅した。

 

 外道共はなぎ倒され、悪行の情報は引っこ抜かれ、経営役の組は物理的に吹き飛び終焉。

 黒幕やその協力者を抑える事は出来なかったのは残念だが、この裏闘技場の犠牲者がこれ以上出なかったことは幸いと言えよう。

 

 悪党を散々にぶちのめしたキリギリス各員はそれぞれ帰っていった。

 単に気に入らないという理由から復讐まで様々な理由があるが、各々目的を満たせて満足したようである。

 

 発端となったレッドアイ・ホークは介錯人の少女を可哀想なので連れて帰った。

 病院で治療を受けさせたところ有用な情報を持っている事が分かり、調査への案内人として少女を庇護対象に置いたのはまた別の話である。

 まあ、本当によくある事なので気にしてもしょうがない。

 

 そして裏闘技場にてソーサレスを自称していた女性が、レッドアイホークと再会できたかというと……それは分からない。

 裏闘技場の一幕で新たに目覚めた、性癖を満たしてもらったかも、だ。

 

 例え今は会えなくても、心配はいらない。

 彼女は再会の時の為に頑張って生きてきたしこれからもそうだ。

 それは今が激動の時代でも変わらない。

 

 そうして生きて、垣間見た彼を探し続ければきっと遠くない未来に会えるはずだから。

 

 かつて魅せられた隻眼の鷹の(ソウル)の輝きを、目指すべき標として。

 彼女は今日も人や世界を守る側として立つ。

 例え自分や仲間にできる事が小さな事でも、やり続ける。

 

 一人の人間を救う意味を、かつてレッドアイ・ホークが教えてくれたから。

 彼女は救う側に立ち続けるのだ。

*1
デビルサマナー無印仕様

*2
真Ⅳ出展

*3
シリーズでは真Ⅰ特有の仕様 真Ⅰにてデカラビアはテトラカーンを習得している数少ない悪魔の一体である

*4
DDSAT2出展




 ◎主人公紹介

・ソーサレス(偽名) <魔術師> LV57
海外ガイア系魔術結社出身のキリギリス構成員。
かつて呪いに蝕まれ、無茶をして危機に陥っていった所をレッドアイ・ホークに救われた。
魔術師としては火炎属性魔法の他、ダークミラージュ等のデバフ系魔法を使いこなし、限定的ながら悪魔召喚も可能な技巧派。
裏闘技場のレッドアイ・ホークの悪魔的な姿を見て、新たな性癖に目覚めつつあるのは内緒。


◎キリギリス構成員紹介

・佐々木/レッドアイ・ホーク LV 99
漫画好きの自称ダークサマナー。
今回裏闘技場で大暴れし、JCを護って颯爽と去っていった。
彼がこれまで何人救ってきたか、GetWildしてきたかは定かではない。


次回はちょっと強めのドリフターズの話、その後は雨柳とロゼレイがレルムに行く回を考えています。
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