真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス-   作:ローグ5

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今回はレルム回を投稿します。

他の三次創作でもたびたび登場するレルム、魅力的な設定ですよね。


人と悪魔の共存領域《レルム》

「……なんかすごい事になってたね」

「……そうね」

 

 先程まで異界化していた廃墟の外、道路わきに停められた車。

 その横でレイとロゼは顔を見合わせる。

 可憐な少女達の瞳には、困惑があった。

 

「異界のGP(ゲートパワー)44って、この時点でなんかおかしいと思うんだ僕。

 僕よりLV高い悪魔だらけなんだけど」

「奥だと普通にギリメカラとか出て来たしね……。

 おまけにボスと取り巻きはアレでしょ」

「うん。アナライズだと75*1いってたね。

 此処ってゲームのラスダンだったのかなあ? 

 でもその割にあっさり消滅したなあ。おかしいなあなんでかなあ」

 

 ロゼは小首を傾げ考える。

 緋色の瞳の、あどけなくも整った顔立ちの少女。

 彼女とレイは今日も実地で学んでいた。

 

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 レイとロゼは幾度なく滅び、再生を続けるこの世界にたどり着いた過去周回の生き残りである。

 俗に言う漂流者達(ドリフターズ)の彼女達は、多くの漂流者達と同様に世界を護る側として戦う事を決めた。

 帝都ヤタガラスや同じドリフターズの手伝い程度だが、この周回に適応せんとしているのだ。

 

 そんな彼女達は、今日は事情を知る者を含めた世界救済オタクサークル(キリギリス)のメンバーと共に、関東某所にある高GP異界攻略に出向いたのであった。

 

 この世界のインフレ具合、つまり悪魔や人のLVの高さは理解していたはずだった。

 しかし実際に体験してみるのと、映像や教材から学ぶのとは全く違う。

 

 異界は────地獄そのものだった。

 

 何せ出現する悪魔は最低でも30後半、異界の深くに入れば50代の悪魔すら普通に居るのだ。

 レイにとってLV50とは、ヤタガラスやファントムといった大組織の幹部が到達する領域。

 現在LV55のレイ自身も到達し、踏破した領域ではあるがそんな悪魔が雑魚としてわらわら出てくるのだからたまらない。

 

 しかも、負けず劣らずボスもひどかった。

 

 

邪神サトゥルヌス*2LV70

 

龍王ペンドラゴン*3LV66

 

邪鬼サイクロプス*4LV61

 

 

 主神級の邪神に、脇を固める巨大な悪魔2体。

 悪魔達の暴威は最早災害に等しく、レイならば何とかロゼや仲間を逃がせれば御の字。

 それ程の差がある強大な悪魔達がそびえ立つ絶望の光景。ではあるが。

 

「なんか普通に勝っちゃったのよねー……」

 

 先導するキリギリスのDB達は、順当に勝った。

 勝っちゃったのである。

 

 仮面の男が奪取した先手を使い、銃撃と片手剣の剣技で邪鬼を倒した。

 

 魔法に強いリリム*5を盾に邪神の火炎を凌ぎ、物理攻撃を物理反射障壁(テトラカーン)でたたき返した。

 

 負傷した龍王を一刀で斬り裂き、邪神を袋叩き。

 

 彼等は強大な悪魔三体に勝利して見せた。

 言うは容易いが、本来難行であるはずの高位悪魔の撃破。

 レイやロゼは打合せ通り、アイテムを使うだけで戦いは終わった。

 誰も死ぬどころか重傷すら負わなかったのは良い事だが。

 

「あの領域に行くまでどれだけの修練が必要になるのかしらねー」

「うん……前途多難っていうんだよね確か」

 

 天才と称される自分達を超えた霊格(レベル)

 手に入れるのに、どれ程の激戦を生き延びてきたのだろうか。

 

「ふう……武器の属性も覚えなきゃね。

 あの動画でもバスターの人が地霊は斧で殴る!って言ってたし」*6

 

 レイはため息を吐きつつも、今日の戦いの内容を思い返す。

 生来の気質だろうか。真面目な質の少女は、困惑しつつも今日の経験を貴重と感じ、次に活かそうとする気概があった。

 

「えーっとシロエwiki見ると……邪鬼は片手剣が弱点は分かるんだけど」*7

 

 他方レイにとって妹のようなロゼも、スマホを片手に今日の裏付けをとろうとする。

 このデータベース便利だなと思いつつも少女の目には疑問。

 

「夜魔のリリムが魔法反射するのはともかく、何で物理に弱いのに前に出していたんだろ? 

 全体的に敵は物理よりだったのに」

「ああそれはな、敵悪魔の動きを誘導する為だよ」

 

 ロゼが口に出した疑問に答えるのは、長身の精悍な面持ちの男。

 帯刀した男の名を、雨柳巧(うりゅう たくみ)と言う。

 

\カカカッ/

悪魔召喚師雨柳巧LV73神経・魔力に強い 破魔・呪殺無効

 

「……レイブン」

「あっおじさん」

 

 諸々の報告を終え車へ戻って来た雨柳に対してロゼはともかくレイは複雑な顔をしている。

 

 レイと雨柳────かつてレイブンと呼ばれていた男の関係は一言では説明し辛い、。

 レイが生きて居た周回において孤児の彼女を育て、一廉の悪魔召喚師として鍛え上げた師匠。

 かつてヤタガラスのエースであったレイブンと、雨柳は同一人物である。

 

 才能あるレイはレイブンの指導を受け、力をのばしていき。

 事情により戦えなくなった彼の分まで人を護るのだとレイは決意し、力を磨いていた。

 

 しかし滅びゆく世界においてレイブンはファントム幹部の鉄仮面を殺害。

 成りすましファントムを扇動し、ヤタガラスと潰し合わせ、最終的にレイにわざと殺された。

 腐敗したヤタガラスと、ファントムの戦いによって起きる悲劇を終わらせるために。

 

 過去の事情により、レイは現周回のレイブンに対して複雑な感情をいだいている。

 同一人物とも、別人ともいえる死んだはずの、自分が殺した師匠。

 彼に対する感情に名を付けるのは、並大抵の事ではない。

 

「んーと、悪魔を誘導するってどういうこと?」

「そうだなロゼちゃんは発生したての悪魔は自我がなくて、AIみたいにある程度決まった動きをするって知っているかな?」

「ロゼでいいよおじさん。そっか、ゲームのNPCみたいな奴だね」

 

 レイの様子を知ってか知らずかロゼは明るい声で答えた。

 

「で、そういう悪魔は深く考えない。

 そこに格下で弱点を突ける悪魔を目の前に置いておくとどうなる?」

「弱点に食いつく!」

「正解。つまり物理攻撃を撃たせて反射ダメージを与える為、あえて物理に弱い夜魔のリリムを前に出したんだ」

 

 なるほどと納得するロゼの様子は可愛らしい。

 穏やかな目で少女の返答を肯定する雨柳はレイが知る男と酷似している。

 少し胸の痛みを感じながらも、レイは雨柳へと話しかけた。

 

「皆色々考えているのね。そういえばレイブン。

 明日明後日はどうするの?」

 

 レイ達を保護した帝都ヤタガラスが多忙な事もあり、雨柳が引率を行う事も何度かあった。

 何せキリギリスヤタガラス共に、周回の事を知る人間はそう多くないのだ。

 数少ない存在である雨柳を遊ばしては置けない。

 

 そんな訳で雨柳は、ここ最近少女達と行動を共にし、あれこれ教える事が多い。

 まるで教官とか……師匠のように。

 

「明日はフリーで明後日は調査、というか社会見学だな」

「社会見学? 帝都の業魔殿でも行くの?」

 

 雨柳の言葉に首をかしげるレイ。

 まだこの世界に来て日が浅い彼女には、何処へ行くかがピンとこない。

 そんな彼女の疑問に対して、いやと前置きして雨柳は答える。

 

「明後日行くのは今流行りの────」

 

 それは帝都をはじめ各地に出来ている、悪魔業界人の社交場。

 人と悪魔が共存する野放図ながら、成長を続ける生命力を有した街。

 

「<経済特区レルム>に行くぞ」

 

 

 


 

 

 

 帝都東京郊外。人気が途絶え寂れた商店街。

 如何に日本の首都たる大都市と言っても、何分大事件の多い時勢だ。

 巨大怪獣(セプテントリオン)の出現による人口流出もあり、人気の絶えた地区は帝都だけでも幾つもある。

 此処もまた、時勢から取り残されて朽ち行くだけと思われていたが。

 

「アプラサス―今日何処で食う?」

「焼きそば食べたい。あの名古屋風の濃い口が癖になるのよね」

「この聖明神符*8良くね? 

 まとめ買いすると値段も安くなるし」

「お、新しい古書店できてるぞ。いい魔導書あるかみて見よ―ぜ!」

「そこの御仁どうかな? 家に伝わる秘伝のアミュレットが今ならこの値段で」

「あのホテル乃木グループの系列だっけ? 

 サービスいいらしいしあそこ泊まるか?」

 

 商店街は往年同様、いやそれ以上に賑わっていた。

 真新しい店の多くには客が集い、食事をしたり物品を購入したりなどしている。

 しかも道々を行きかうのは悪魔関係らしき者達。

 その中には少なからず悪魔も混じっている。

 

 悪魔関係者が集う此処は経済特区レルム。

 複数勢力の出資によって築かれた、経済特区にして不戦地域。

 

 レルムが出来たのはつい最近の事だ。

 地方でだぶついた人的物的資材及び資金の投資先として、ゴーストタウンに悪魔関係者の街を創る事を誰かが提唱。

 地方勢力や帝都の平均LV低下を目論む阿修羅会、監視の為影響力を確保したいヤタガラス。

 その他各種の勢力の思惑が絡まりレルムは創り出された。

 

 急増する覚醒者への対応の必要性もあり、レルムは着々と数を増やしている。

 今では正式登録された地区だけで帝都に五、六。それ以外にも名古屋等の大都市にあるそうだ。

 

 レルム用のマップアプリに登録された、此処のレルムもその一つ。

 今日も多数の悪魔業界人が行きかっている。

 

「話には聞いていたけど壮観ね。

 少し外れた所とは言え、こんな大っぴらに街を創れるなんて」

「俺も他のレルムに行った事はあるが驚くよなあ」

 

 目の前を行きかう悪魔やDB達に、レイは目を丸くしていた。

 驚く彼女に雨柳もうなづく。

 秘匿を是とする悪魔業界の常識が染みついていればこそ驚く光景だ。

 

「私の様な人型以外も歩いている。

 まるで業魔殿みたいね」

「とは言っても殺伐とした雰囲気そんなないなあ。

 おいしそうな匂いもするし……あ」

 

 スクルドやロゼも驚くと同時に感心を覚える。

 最もロゼの興味は飲食店と、乗り合いバスから降りてきた者達に向いていた。

 

「おやおや」「おやおやおやおや」

「OYAOYA」「オヤオヤ」

 

 そろいの仮面が、不気味なLED光を放つ。

 

「「「「おやおやおやおやおやおや」」」」

 

 仮面の男達がぞろぞろとレルムに降り立つ。

 整然と降りて来る彼らは、どこか近寄りがたい。

 なんかこう、異様な雰囲気があるし。

 

(異界調査でいたお兄さんと同じ仮面の人だ。

 確かキリギリスで色んなデータを調べている検証班の人だっけ?)

 

 奇怪な姿の彼らはキリギリス所属の、異界検証班<黎明の祈り手>のメンバー。

 某度し難い漫画のコスプレをした彼らは、各種データの検証に血道を上げる知の修羅たち。

 データの検証に個性はいらずと、個人を特定できないように仮面をかぶる彼らは、今日もレルムに有用な知識や道具を求めに来ていたようだ。

 

「検証班の人達も買い物に来てたんだ。

 あの光る仮面結構カッコいいし、今度時間あったら元ネタの漫画読んでみようかな」

「…………やめておいた方がいいと思うわよ絶対」

「ロゼ……世の中には子供の内は知らない方がいい事があるんだ」

「えっ」

「よし、まずは予定通り邪教の館に行くぞ。

 まだ時間があるから街を見ながら行くか」

 

 雨柳の先導で彼らは歩きだす。

 悪魔と悪魔と共にある人々の領域(レルム)の中を。

 

「この魚のフライ美味しいね。

 タルタルソースとよく合うなあ」

「あ、これ子供の頃TV見たトルコのアイスだ。

 東京で食べられたのね」

 

 レイとロゼは軽食を片手にレルムを歩いていく。

 2年間シェルターに居たレイに、初めて外に出てから間もないロゼからすれば、気持ちも弾む。

 それが美味しい食べ物と共にならなおさらだ。

 

「二人共百太郎とタリ報*9を忘れずにな」

「はーい。しかし意外だなあ。

 割とLVが僕より下の人多いね」

 

 ご馳走様でしたと紙袋をゴミ箱に捨てるロゼは、失礼にならない程度に行きかう人々を見回す。

 道行く人も悪魔もそう強くない者が多い。

 

「なんとなくだけど大体LV20か~30くらい? 

 流石にあの、ヤタガラスの人達、とかおじさん程はいないね」

「そうね。幾ら激戦が続いていると言っても60、70行くような超人以上は稀みたい」

 

 言い淀むロゼやレイの脳裏に浮かぶのは、完敗したヤタガラスの幹部陣を始めとする猛者たち。

 それに比べると行きかう者達は普通で、平和だ。

 

「レルムの主な客層は最前線の面子とは違う若手中心だからな。

 それと流石にあの人たちは例外だよ。

 知識に経験に鍛錬、ソウルの強さも違うさ」

「でもレイブンもLV70越えで覚醒段階が導師まで言っているじゃない」

「俺もまあここ半年くらい色々あったからなー」

 

 毎回のようにLV50越えが相手で、クズのアジトへ踏み込んだ先には英傑カンセイテイクン。

 LV100越えの超威力攻撃で死にかけ、LV80越えの堕天使やメシア幹部と死闘を繰り広げ、どうにか仲間と協力し討滅した。

 かつてヤタガラスに居た頃以上に激しい戦いを、キリギリスに参加してから繰り広げてきた。

 

(あれ? よく俺生きてるな?)

 

 その事実に我ながら血の気が引く想いだ。

 雨柳の横ではスクルドもうんうんと頷いている。

 口には出さないが、激戦に参加してきた彼女にとってもその気持ちは共感できるものだ。

 

「サマナー、邪教の館が見えて来たわよ。

 時間も丁度良く予定の少し前ね」

「んぐ、待って……今食べ終わるから」

「はいロゼお水飲んで」

 

 なんて事を話している内に邪教の館へ着いた。

 飾り気がないがしっかりした造りの近代建築、扉の上に備えられた看板には意外な達筆で「邪教の館」と刻まれている。

 

「よしっ物乞い*10を使えるオニを創ってやったぜ。なあこれで女悪魔にモテモテだよな?」

「ああ、お前の手元にマッカがある限りな」

 

 丁度出ていく二人組と入れ違いに、扉を開けて館へ入る。

 カラン、と鈴が小気味よい音を立てる先に広がるのは、元はカラオケ店らしき暖色で整った2階建ての内装。

 

「へえ、邪教の館って始めて来たけど結構近代的なんだ」

「主が新しい物導入するのに抵抗ない奴だからな」

 

 受付の機械に予め発行されたコードを入力し、承認完了。

 エントランスの奥にある頑丈な扉が開き、その先に下り会談が続く。

 

 少し肌寒く感じる、階段を下ると────合体場にたどり着いた。

 

「ん、次はお前達だったか。

 ちょっと待ってろ」

 

 そう言って一服する、濡れ羽色の髪を一房赤く染め白衣を着た女はこの邪教の館の主人だ。

 

「各種装置も最新式……羽振りがよさそうで何よりだな」

「そちらも両手に花か。気分はどうだ脳は」

「おっと、その呼称はルールで禁止だぞ」

 

 フェクダ戦の終了直後、雨柳行きつけの邪教の館の主人である彼女は、元居た住宅地の邪教の館をこのレルムへ移転していた。

 本人曰く「不逞の輩(悪魔召喚師)が多くなり過ぎて近所に変な噂が立った」との事だが、そんな事を気にする繊細な人間では無論ない。

 レルムというホットな地域での、多種多様な悪魔のデータ収集。

 さらに需要の増加による利益を見込んでの事だろうと、関係者の間では専らの噂だ。

 

「予定通り御霊合体だけ、俺じゃなくてこの子の仲魔が対象だ」

「ロゼです。よろしくお願いします」

「……随分と若いし、素直だな。

 まあいい合体する悪魔を出してみろ」

 

 ロゼはヤタガラスから支給された最新鋭の刀型武器COMPを操作。

 魔法陣が瞬時に展開され召喚されるのは────翼を持つ者。

 

「私を呼びましたかサマナー」

 

\カカカッ/

天使月夜の翼 パワー*11LV43魔法に強い 破魔無効 銃撃・呪殺弱点

 

 翼持つ天使パワーの姿は、常に知られる赤い鎧のそれとだいぶ異なる。

 夜の色をした衣装の上から銀色の軽装鎧を纏う、紫の髪を清楚に切りそろえた美女。

 フードも相まって、背中の翼がなければ天使ではなくシスターも見える姿であった。

 

 この天使は先日訪れた異界で、これまで自分の仲魔が居なかったロゼが勧誘に成功した個体。

 悪魔でも珍しい二つ名付きの存在だが、ロゼに従順に従っている。

 契約の縛りもあるが受け答えの真っ当さから、ある程度は信用出来ると雨柳は判断していた。

 

「ほう……これは珍しいな。

 天使パワーとはいえ、LV40を超えるとは。

 しかも二つ名付きか」

「地上への派遣に際して、レリエル様より力を頂きました」

 

 邪教の館の主に隔意を見せる事無く、パワーは素直に答える。

 

「彼の方より地上にて信仰を歪めた者や我欲に負け悪に走った者達より、無辜の人々守護するべしと仰せつかりまして。

 ただその……騒乱の地たるこの日本では穏健派メシア(全うな信仰者の戦力)は既にすでになく」

「僕についてくる事になったんだよねー」

 

 異界で会ったパワーは困り果てた様子だった。

 何せ宛にしていた味方はほぼ壊滅。

 自分とスタンスの合致するロゼと契約できたのは僥倖と言えよう。

 故にロゼ以上に、彼女は良き出会いに感謝しているのだという。

 

「地上での天使の評判は聞き及んでますから……。

 サマナーには合体で別の悪魔にしても良いといったのですが」

「とは言っても今の僕だとこれ以上強い悪魔と契約できないしね。

 では、合体お願いします」

「了解した。此処は初めてだろう。

 なら雨柳の全書から御霊を創ってそれを登録するといい」

 

 ロゼは雨柳のデータと同様の御霊を創り、パワーを合体させてステータスを上げていく。

 其処へ呪殺無効を付与し、更に貰ったマカミソースからテトラカーンを継承。

 

「銃撃弱点は残しておくのか?」

「魔法に強い耐性があるからね。

 となると相手がついてくるのは銃撃弱点になる。

 だけどテトラカーンがあるから、ねっ?」

 

 ロゼは少し得意そうな顔で雨柳に確認。

 ああ、と雨柳は肯定してやる。

 

 理屈は先日の異界でのあえて弱点を残す事による誘導と同じ。

 銃撃弱点を残す事で敵の攻撃を誘導し、物理反射障壁(テトラカーン)の罠に嵌める。

 熟練者同士の戦闘ならともかく、野良悪魔やマンハント相手ならかなり有効だろう。

 

「ただ対人戦だと銃撃使う相手も多い。

 もう一体銃撃、出来れば物理にも強い悪魔が居た方がいいな」

「んーそうだね。今度異界調べておこう」

「ロゼが終わったら私も御霊合体お願いします。

 ステータス上げないと前線に追いつかないんで」

 

 少女達は悪魔召喚師として、大切な仲魔の強化をしていく。

 過酷な世界だからこそゆとりがある内に、神経を休めつつもキッチリと調整。

 レイはかつて師匠(レイブン)から、ロゼはレイから教わった心得。

 真面目な少女達は、しっかりと自分のすべき事をしていた。

 

 

 


 

 

 

 時刻は夕刻前、夕日が見える時刻になってレルムはいまだに盛況だ。

 昼過ぎと変わらず、人魔問わず多くの者が行きかっていた。

 

「ねえレイこのお皿良くない? 

 白色が凄い綺麗に出ているよ」

「本当ね。どうやって出しているんだろこの色」

 

 合体という用事を終えたレイとロゼはまたレルム内を見回り始めた。

 翼をたたんだパワーが、不測の事態に備え見守る中、年頃の少女らしく品揃えを見て、いいと思った商品を買うのを楽しむ。

 

「二人とも楽しんでいるようで何よりね」

「こっちに来て早々仕事ばかりじゃあなんだ。

 遊んでストレスの解消をするのも大事さ」

 

 一先ず年長者らしく、雨柳とスクルドは少女達を見守る。

 

 視線を移すと二人共今度は装身具の店で商品を購入していた。

 そろいのブローチ────何の効果もないが、年頃の少女に似合うデザインの物を早速付け、端末で自分達を撮影している。

 レイも苦笑こそしている物の、まんざらではなさそうだ。

 

 彼女達の様子を見守る雨柳の瞳は、凪の様に、いつになく穏やかである。

 

(サマナーもこういう姿が板についてきた、かしら?)

 

 スクルドが雨柳の仲魔になってしばらくたつが、記憶にある以前の雨柳よりも年少者といる機会が増えたからだろうか。

 元から面倒見がいい方だが、誰かを後方で見守る姿も少しになってきた気がする。

 最も単に年を取ったからともいえるが。

 

「見て回ったけど国際色豊かねここのレルム。

 その割には落ち着いているようだし」

「治安がいいのは後ろ盾の影響だな。

 此処は後発な分、各レルムの中でも護国や各穏健派の影響が強い」

 

 レルムの設立には、ヤクザの阿修羅会さらに繋がりのある政治家の影響が強いと専らの噂。

 その不確かさを逆手に取り、此処のレルムは安定性を重視した秩序だったものとなっている。

 良くも悪くも各レルムに比べると整然として、小綺麗。

 近隣地域の治安も確保されている、総じて良性(Light)の区域と言えるだろう。

 

「だから他以上に若い人間が多い。

 後国際色豊かなのは、<黄金の花園>も関わっているからだな」

「確か外国人コミュニティだったかしら? 

 私が来る前に事件に巻き込まれたっていう」

 

 黄金の花園は英国大使の息女が主催する団体であり、ここ半年の騒動で帰国できなかった外国人の支援を行っていた団体である。

 しかし一部の支援者や構成員の裏切りにより、エコテロ組織<東京緑化会>に浸食され事件に巻き込まれ一度大きく名声を損なった。

 それでもなお一部のキリギリスの支援もあり、今なお支援活動を続けているという。

 

<東京緑化会>の起こした事件には雨柳も解決へ関わった。

 思えばあれはキリギリスの大規模動員がなされた初の事件だったのではなかろうか。

 

「新生黄金の花園は厳重な審査の上で海外出身者を纏め、異能者も信頼できる奴を雇用している。

 レルム全体へ出資すると同時に、警備員として一部をここに派遣。

 さらに一般悪魔関係問わず技術のある人間に店が構えられる様に支援しているって話だ」

「随分と強かな人なのね、その代表さん」

 

 辻に立つ外国人のDB、このレルムの警備員のLVは40後半程だろうか。

 熟練らしき謹厳な立ち姿を見つつ、スクルドは感心を覚える。

 

 「しかもレルムの最大戦力はLV70越え……よくここまでの人材が確保できたわね」

 「色々繋がりがあったんだろうが、異変の前から名前を聞く腕利き。

 秩序寄りでメシア穏健派の生き残りの保護もしている奴らしいが、コイツの協力を取り付けるとは大したもんだ」

 

 新生した黄金の花園の代表、彼女の活躍は八面六臂と言える。

 護国や日本政府と辛抱強く折衝し協力を得て、集めた資金と人材を適切に回す。

 その上でかつての過ちを忘れず、内外を厳重に固め失敗を繰り返さない。

 言うは易しだが中々できる事ではない。

 

「前の事件の反省を良く生かして、今の所はうまく行っているようだ」

「悪くない事ね。この時世どうしても対応する人が必要だし」

 

 ああ、と返事してレイ達を見ると洒落た看板の露店の前で考え込んでいる。

 ローブ姿の中年外国人魔術師が、造魔の助手とやっている小さな店。

 商品を見るレイ達は先程よりも真剣な様子だ。

 

「……ああレイブン。

 このアミュレットどう思う?」

 

 近寄ってみると、彼女達が鑑定するように眺めているのは、魔力の込められた護符。

 色は赤、青、緑の三色。簡素ではあるが確かな魔力を感じる。

 

アミュレット消費アイテムTRPG覚醒篇出展

魔物の歌、視線、毒矢ブレス等の状態異常から装備者を護る護符

 

「状態異常の対策になるかなと思ったんだけど、どうかな?」

「んん、そうだな……かなりいいと思うぞ。

 込められた力も丁寧だしな」

 

 三色とも検分するが悪くない。

 技芸族であるスクルドも、雨柳に同意するようにうなづく。

 

「オオ、分カッテクレマスカ! 

 コレハ我ガ流派ノ魔道ノ粋ヲ集メタ自慢ノ逸品。

 オ客サン魔導ノ経験ガオアリデ?」

見鬼(アナライズ)*12鍛える時にまあ、さわりだけ。

 色で効果が違うようだが、それぞれの効果は?」

 「ソレゾレレッド、ブルー、グリーンガ、精神神経魔力ヲ防グ仕様デス」

「へえ~ちょっと高めだけどいい物なんだね」

 

 のっぺりとした造魔が商品を掲げる中、魔術師は胸を張る。

 自身を持つだけはある品質だ。

 解説されるとレイやロゼもなんとなく込められた力が分かる。

 

「今ナラケース付キのセットガ定価10%引キデス! ドウデスカ?」

「ならケース付き3セット頼む」

「マイドアリ!」

 

 ほくほく顔で袋を用意する魔術師。

 他方レイは、やや不安げな顔を向ける。

 

「私達の分までいいの? 

 このアミュレット結構高いよ」

「心配するなって。

 ヤタガラスから支度金や調査費用も貰っているし問題ないよ」

「えへへおじさんありがとうね」

 

 そういうとレイは納得したような表情をし、ロゼは素直に礼を言う。

 またのお越しをと頭を下げる造魔と魔術師を背に露店から離れる。

 

「良い物を買えて何よりでしたねサマナー」

 本とかゲームで市場には掘り出し物があるって言われてたけど本当にいい物があるんだね。

 おじさんも手裏剣、スリケン? も切れ味良さそうなの買えてたし」

「スリケンは忍殺よロゼ。だけど確かに鍛えの良い刃をしていたわ」

「投擲武器系でここまでの質は珍しい。

 インド神話系のチャクラム*13ならともかく」

 

 ロゼが言うのは雨柳が先程武器店で購入した常闇流手裏剣*14

 艶消し加工がなされた棒手裏剣は、雨柳の持つ戦技ともマッチしている。

 

 何せ雨柳のメインウェポンである刀は<両手剣属性>で、邪神や屍鬼には効果が薄い。

 他方手裏剣は<投具属性>で、邪神や屍鬼に効果が高い。*15

 今後予想される極限状況の戦闘では、持っておいて損はない。

 

「ま、これが買い物の醍醐味だな。

 予め決めておいた物を買いに行くのも、予期せぬ良い物に合うのも良い。

 どっちも別の楽しみがある。だろ」

「そうね」「うんうん」

 

 納得の面持ちでレイとロゼはうなづく。

 姉妹の様に息の合った様子が可愛らしい。

 

「後は最後に夕食食べて帰るとしよう。

 何が食べたいのあるか?」

「はい! 僕はこの店がいいと思います!」

 

 ロゼの持つ端末に映っているのは、このレルムでも評判のいいイタリア料理の店。

 レビューも多いが多くが高評価。見た感じは内装も料理も良さそうだ。

 

「今なら時間早いし空いてそうね。

 私も此処がいいかも」

 

 レイもロゼの要望を肯定する。

 ならそうしようと雨柳は少女と仲魔達と連れ立っていく。

 

 目的の店は2階建、のレンガ造り。

 魔法関係の建築技術も使ったのだろうか、レルムの店にしてはやけに凝っている。

 給仕に窓際の席を希望すると、広めの席に案内してくれた。

 

「雰囲気あるねこのお店。レイは何にする?」

「私はパスタ味は何にしようかな」

「人数も多いしサイドメニューも頼んだ方が良いのでは?」

「早めにできる料理がいいわね」

 

 人と悪魔が和気あいあいと料理を注文し、しばし待って。

 やがて来た料理に目を輝かせる。

 

 爽やかな色合いの野菜と鱈のサラダに、香ばしい牛肉のソテー。

 海老や貝、鯛をトマトや調味料で煮込んだ芳醇な盛り合わせ。

 チーズと胡椒をふんだんに使ったパスタに、生ハムやトマト、チーズを使った各種のピザ。

 

 評判だけの事はある。どの料理も大変美味だ。

 

「んん、このピザ美味しいわね。

 こういうときブオーノっていうんだっけ?」

「生地はサクサク、具はジューシー。

 本場の味ってこういうのかな……ん」

 

 レイと話していたロゼが、不意に窓の外へ視線を移す。

 紅い瞳に映るのは、人と悪魔の平穏な営み。

 

 仲良さそうに次の予定を話す同年代のグループ。

 驚きつつも料理をほおばる悪魔。

 掘り出し物を手に入れたらしき満ち足りた笑顔の魔術師。

 歩きながら戦い方を話し合う剣士の青年と銀髪眼鏡の少女。

 

「……ねえレイ。こういうの悪くないね」

「……そうね。悪くないわ」

 

 少女達は笑いあう。

 その様子を見て、内心雨柳は安堵する。

 

(多少の気晴らしになればいいと思っていたが、二人共楽しんでくれたようだな。

 ならあれこれ下調べした甲斐があったぜ。良かった良かった)

 

 先日レイと会った時、周回の事を知った時はとても驚いた。

 何せ自覚はないが、この世界は幾度なく滅びと再生を繰り返しているとか。

 周回の事を知っている佐々木や鳴上にも確認したが、やはり本当らしい。

 

 しかもレイの居た周回の自分は聞いている限りでもとんでもない事をやらかしていたのである。

 

(腐敗したヤタガラスに絶望して、鉄仮面を殺して立場を乗っ取る?? 

 両者を潰し合わせてレイに自分を殺させる??? 

 何やってんのその周回の俺!????)

 

 動揺のあまり以前籠っていた異界に直行し、馬鹿やろおおおおと叫んだ。

 そりゃあもう、喉痛くなるぐらい、何処かの魔術師殺しくらいに。

 若干理不尽な気がしないでもないが、あの野郎出会ったら東京湾に放り込んでやる何負けとんじゃいと固く決意する位に。

 

 正直、過去周回の事については飲み込み切れていない事も、多少はある。

 さらにレイに対してどうふるまえばいいのかも。

 

 ただそれでも、少女達には戦いだけでなく、生きる楽しみがあっていいはずだと思う。 

 

 悪魔召喚師だろうが、クローン聖女だろうが。

 年頃の少女らしい楽しみが。

 

 その為には多少骨を折っても構わない。

 今日みたいに街を案内する程度の。

 

(人間使命だけには生きられない。

 人としての喜びを積み重ねていく、それもまた大切だ)

 

 人と悪魔が共存する街にある店の中。

 雨柳巧は喜びを浮かべる少女達を見ながら、そんな事を考えていた。

*1
機械式での判定 大体+5LV

*2
ソウルハッカーズ2仕様

*3
真ⅣF仕様

*4
真Ⅰ仕様

*5
P1仕様 夜魔なので【物理に弱く魔法を吸収する】

*6
本スレ 【 ノンフィクション勧誘ビデオ(前線編)】

*7
P1においてヘカトンケイル・オーガといった邪鬼は片手剣属性を弱点とする

*8
TRPG200X 自分への破魔または呪殺相性の攻撃1回に対してダメージを半減し、即死を防ぐ。 

*9
いずれも敵の奇襲を予防するソフト

*10
マッカやアイテムを要求する 相手よりLVが10以上高いと効果大

*11
LV等はSH2のパワーと同様

*12
TRPG覚醒篇のカルトマジック:魔道には実体化してない悪魔をアナライズする見鬼技能が含まれる

*13
LV100越えアイドルが振り回しているスダルサナとか

*14
P2罪出展の投具武器

*15
P1において邪神・屍鬼へのダメージ倍率は両手剣25%・投具200%




◎主人公紹介
・雨柳巧 <デビルサマナー><剣士> LV73
シリーズポジション:ニッカリ及び悪魔討伐隊(真・女神転生Ⅳ Final)
          レイブン(ソウルハッカーズ2)

キリギリスの一員として活動している元ヤタガラスの悪魔召喚師。
過去周回からやってきた弟子には滅茶苦茶びっくりしたが、それはそれとしてある程度は面倒を見る。大人だしね。



次回のエピソードは幾つか考えていますが、そろそろ本格的な戦闘を書きたいですね。
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