真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス- 作:ローグ5
今回は新スキルを使ってガッツリバトルです。
ぐしゃり、と湿った音を残して命が潰えた。
不吉な照り返しの中で、それは手を掲げる。
捕獲したメシアンを、フォアグラのように肥え太らせた贄。
味気ないが予想通りなかなかに役立った。
この空間の主たる怪物の手には紅い結晶。
不吉な印象の物質を見て、微かに喉を鳴らす。
怪物は、一息つくと背後へ向き直る。
来訪者の存在はとうに知っていた。
険しい表情をした軍服の男はあるガイア系団体の長である。
護衛を伴った男は常以上に、不機嫌そうだ。
その表情を見れば、何があったかわかる。
「作戦は失敗したか。
予想以上の戦力を割いていたと見える」
「全く、随分とまあ非効率なことをする」
怪物の嘲りに、軍服の男は同意し唸った。
ある男に引き合わされた彼らは、現在協同して作戦に当たっている。
怪物は男の資金力とコネクションを、男は怪物の持つ特異な強さを。
それぞれ欲した為、歩調を合わせていた。
なお、協力関係の構築にはある程度思想に類似点があった事も一因といえよう。
「
悪魔や外夷の掃除に投入すべきであろうが!?」
「俺にも彼らの考えは理解できんよ。
阿修羅会のように有効活用するならともかく、無益な日常を送らせるとは」
すなわち、アストラルシンドロームの元患者を侮蔑しているという点について。
軍服の男はアストラルシンドロームは弱く怠惰な失敗作を切り捨て、国難の中にある国を再生させる益病と考えていた。
転じて、患者は国を蝕む病原菌にして罪人。
回復しようとも犯した罪は消えない。
身をもって死、能力があれば奉公にて償うべし。
怪物も、男の意見にはおおむね賛同している。
立ち上がれない弱者ならば、せめて自分の贄となればいいものをと。
彼らの計画は、アストラルシンドローム患者の中でも有用な資質及び能力を持つ者の拉致。
ガイア再生機構により供与された簡易
拉致した者を
人の心がある者は考える事すらしないだろう、おぞましい計画。
非道な計画を立案した男は、憤懣やるかたないといった表情。
自分の正当性を全く疑っていない。
「特にだ! この小娘は私に護国が為の資金をもたらす、同士の息子を卑劣にも殺したのだぞ!」
男は隠し撮りしたらしき写真を睨みつける。
隠し撮りらしきそれに写るのは、紫髪の気弱そうな少女。
男の言葉を翻訳するならば、少女は団体のスポンサーの息子を殺したという事になる。
それは事実ではある。ただし事態に至る経緯をあまりにも無視しているが。
「よりにもよってこやつを護るなど、これだから下らん物ばかりに配慮する無能な政府は……!」
「あー、一ついいか?」
流石に面倒になったのか怪物が口をはさんだ。
「襲撃は外部の雇われを使ったとはいえ失敗したんだろう?
なら辿られて、こちらが襲撃される事に備えた方がいいんじゃないか?」
「問題ない。情報の管理は厳重にやっている。
標的の情報と引き渡しの地点程度だが──」
ずん、と空間が震えた。
豊富な戦闘経験を持つ怪物には分かる。
これは魔法による重爆。
「思ったより腕のいいハッカーでもいるのか?
まあ襲撃ならいい。
俺も出るとしよう。
多少は出来る奴がいるといいが」
「そ、そうか! なら頼むぞ!
我らに仇なす国賊共を殺してくれ!」
軍服の男の言葉に、怪物は獰猛に口の端を吊り上げる。
戦いの、否、殺戮の気配に高揚を感じた。
「心配するな。
俺は
かつてある周回において起きた、とある受胎の勝者────魔丞たる怪物は傲然と宣言した。
────襲撃は迅速に行われた。
アストラルシンドローム元患者への拉致未遂。
元患者に悟られる事なく防がれた事件への反応は早かった。
実行犯より回収された情報、先の襲撃*1より悪魔関連の思想団体への調査が進んでいた事もあり、首謀した団体を特定。
選抜された部隊が送り込まれた。
主力は帝都ヤタガラスの他、ミスリルと彼方の御国、さらには
彼等は迅速に包囲し、拠点となる建物へと突入。
敵戦力の掃討を開始した。
無論敵側も
しかし、ヤタガラスを始めとする襲撃側はいずれも歴戦揃い。
仮初の防衛網を精鋭たちは食い破りつつある。
「スクルド、剣の次は国津神を」
「分かったわサマナー。手早くやりましょう」
レイを伴った雨柳も、その一人であった。
≪銀氷真剣≫
遠方の敵を見て即座に指示。
接敵する時には既に準備は済んでいる。
≪フレイダイン≫
邪魔な悪魔を吹き飛ばし、氷の刃で切りつけ。
弱点を突かれ硬直した敵にとどめを刺し、吹き出すMagを奪う。*2
板前が魚を裁くように、淀みなく一連の動きをこなす。
練度が違う、事実を悟り軍服姿の構成員は降伏。
正しく鎧袖一触といえよう。
(新しい刀、早速使いこなしているわね)
雨柳が振るう刀は常用するバルムンクと異なる。
三日月の如く緩く湾曲した刀身に、静寂や冷気を厳かに印象付ける輝き。
鍔には羽が描かれた刀は紛れもない銘刀。
| 霧氷月影*3 | 錬剣術により幾度なく打ち直して錬成した刀 高い攻撃力と魔・運・体の補正を持つ |
| 大いなる吸魔 | 刀自動効果 | 弱点硬直中の敵から吸収するMagを増加させる |
さらに腰に吊るした小型GUMP六六式召喚拳銃も改良がなされた。
形状を工夫し取り回しの良さが依然とありつつ、銃身下部には管のホルスターが増設。
今後の戦いに備えて強化された武器は、現在も起動して雨柳の戦いを有利に進めている。
| 六六式召喚拳銃・改 | 彼方の御国の技術を基に改良された雨柳の武器COMP |
仲魔の強化を前提として、継戦能力上昇に重きを置いた装備の更新。
今日の本番までにスクルド同様馴らしが済んだのは幸運と言えよう。
「この調子なら僕の電撃は温存しておいた方がいいかな」
「……敵の練度は高くない。奥に戦力を集めているのか?」
「待ち伏せならここかと思って待機してたけど……見切りをつけて逃げたかしら?」
彼等がたどり着いたのは4階まである吹き抜け。
異界内故に闘技場のように拡張された空間。
奇襲に備え慎重に足を踏み入れていく。
雨柳の背後を守るレイは仲魔として、邪竜ヴリトラと魔王キングフロストを従えている。
いずれも少女のLVの高さを伺わせる強力な悪魔。
されど少女の顔に油断はない。
先日の襲撃に投入された戦力は開示されたデータから分かる通り、強力な敵が多数存在した。
比較的与し易い相手にしてもLVと数は脅威。
ましてあの、<逆襲の霊的国防兵器>クラスがいたならば、死力を尽くさねば戦いになるまい。
そんな彼女を見て、スクルドは雨柳と目を合わせ頷く。
初めて会った時はまさかの事態に面食らった物だが、誠実で良い子だ。
人ならぬ悪魔の身であるスクルドも護らなくてはと思う程に。
(我ながら普通の悪魔とかけ離れているかしら?
まあ仲魔は召喚師に似るものだし、いいか)
他者を想う心、人が持つそれが自分にあるのは悪くない。
自分の為だけでなく誰かの為に、何かをしたいという気持ち。
その有無が善と悪の決定的な違いを産むと。
召喚師である男から学んだから。
(私も初のお披露目頑張らないとね)
前列に立つスクルドはふぅ、と一息つくと感覚を研ぎ澄ませる。
スカディの力を取り込んだ事で得た高い魔力。
研ぎ澄ませれば引っかかる感覚があった。
「サマナー、あの噴水から敵が来る!」
スクルドの槍が指し示すは、前方にある噴水。
刹那。軽い音を立てて消失した。
続いてあふれ出すのは、朱い光に、人影。
「無粋な侵入者共が……!
我らの大義を邪魔だてするかっ!」
先んじて現れたのは軍服の男と、男が率いる兵士たち。
顔をも甲冑様の面で覆った表情なき亡霊。
ヨミクグツと呼ばれる特殊な悪魔が連なる部隊が出現した。
| 軍勢 | 超力兵団 | LV67 | 統率者:軍服の男 LV61 |
「成程成程初手でこれ程とは、やはりこの国の護国勢力は豪勢なようだな」
更に続いて現れるは強力な悪魔を従えた外套にフードの巨体。
巨体を見て、雨柳達に緊張が走る。
解析除けのまじないが掛かっているのか正確な情報は読み取れない。
されど佇まいから分かる。
最低でも雨柳とLVは同等、相当な強さだ。
雨柳達を見て、巨体は鷹揚に両腕を広げ、語りかけた。
「思う存分干戈を交えたいところだが、いきなりと言うのは無粋だ。
何でも彼は君達に言いたいことがあるらしい。
一つ聞いてみてはくれないだろうか」
「言いたい……事?」
レイは眉をひそめ、彼女の言葉をそれ以上待たず軍服の男は語りだした。
「惰弱な出来損ない達を救い、あまつさえ再利用を邪魔するなど!
道理という物をわきまえないのか貴様らは!」
「……はあ?」
男の言葉にレイは怪訝な顔をし、すぐに形の良い眉を歪めた。
続くのは彼等のみならず、多くの人を貶める言葉であるから。
不要な人間と他者をこき下ろし蔑み、残虐な行いを正当化する。
己の嗜虐心を糊塗した正当性に依った聞くに堪えない内容。
聞いているだけでこの空間の空気が淀んでくるのを感じる。
(……不快に過ぎるわね)
スクルドも同じだ。
男の言葉は彼女の感性に酷く触る。
だから分かる。雨柳は
「────戯言はもういいぞ」
物凄く怒っていると。
「いう事に事欠いて
随分とまあ程度の低い事をいうな」
いつもより鋭い目で雨柳は告げた。
「病人に願うのは元気になって、幸せに生きる事だけだろうが。
そんな事も知らないとは大層おめでたいな」
「何ィ!?」
上ずった怒声を無視し、第一と続ける。
「苦しみから立ち直ろうとする人達をお前如きクズが蔑むな。
誰も救わず、誰も幸せにできない。
自分の無価値さを認めて、大人しく投降しろ」
心身の弱さ等、護国の役に立つか等関係ない。
誰かを傷つけず、苦しみを人もいつか幸福になって欲しい。
雨柳はそう考えている。
己が心弱き者である故。
大切な人が歩けない故。
人の心を失わない男は、怒りを感じていた。
「黙れ黙れ黙れぇ! 浪人風情が!
今は国難の時なのだぞ!
無駄飯喰らいは肥料程度にしか使い道がないだろうが!」
「国難だからこそ皆で協力するんだよ。
態々トラブル起こしてどうするのさ。
国防逆MVPでも狙ってんの?」
「あのさ、アンタ偉そうな事言ってるけど、なんで大層な悪魔連れてるのに自分が率先して敵と戦わないの?」
激昂する男にシロガネは疑問を呈し、レイは軽蔑し言葉を重ねる。
「力があるなら自分が戦って国を護りなさいよ。
そもそも、力は戦えない人を護る為って、他の人からでも作品からでもいいけど学ばなかった?」
「この手の奴は思いやりとかないのよレイ。
ただ暴力とか主張とかで、他人に言う事聞かせられればいいの」
自分の召喚師や、キリギリスの者達の反対側にある者達。
即ち、人らしい心の欠落を意味する。
「誰かを大切にするって発想すらない。
何もなせず不平を喚くだけの存在なのよ」
「ここまで来るともう哀れだねー」
悪魔に人でなしと言われたら、終わりだろうに。
「悪魔風情が……! 私への暴言の罪を含め国賊として処刑してくれる!」
「やれやれようやく戦闘か。
まあ多少の盛り上げになったかな」
軍服の男の号令でヨミクグツ達が機銃や刀といった武装を構え。
フードの巨体の従える仲魔も姿勢を低くする。
「貴様らの勇気に応じて、俺も全力で行こう」
巨体がフードを放り捨てその全容を表す。
魔丞としての、全容を。
深緑の身体に赤黒い甲殻を纏った威風堂々。
鋭角な双角が生える悪鬼相。
威容はどこか人の様で、悪魔に他ならない。
「俺は魔丞<邪神 マンモン>!
勇気を奪い喰らい、天へ駆け上がる
| 邪神 | 魔丞・マンモン | LV75(Mag強化済み) | 耐性??? |
朱き燐光を纏い立つマンモン。
LVは雨柳以上、強大な力を持つ人から成った魔丞の、大悪魔。
その姿は味方に安堵を、敵に畏れを与えるが。
「お前みたいなのは勇者なんて言わねえんだよ。
来い、アドラメレク!」
雨柳は拳銃型GUMPを掲げ魔神を召喚。
再度の修練と工夫、装備強化の結果習得したのは、GUMPで1体、管で1体の変則2体召喚。
神造魔人のシロガネを加えれば、3体の仲魔を指揮する。
いやに馴染む戦闘スタイルを、雨柳は確立しつつあった。
「スクルドは強化を! 奴らを叩き潰す!」
「定石通りねサマナー」
雨柳の指示に応える刹那、スクルドの脳裏に思い浮かぶ明るい表情。
此処までの調査や警護の過程で彼女は見た。
アストラルシンドロームの元患者たちの事を。
ある者は重石から解き放たれた様に軽やか歩き、またある者は友人と同じ音楽を奏で、ある者は信頼できる人と笑いあう。
病から回復し立ち直り、幸福な未来へ歩き出そうとする人達。
スクルドにとっては垣間見たのみ、名前も知らないけど。
(彼らの未来への助けになるなら、喜んでこの力を振るいましょう)
≪ラスタキャンディ≫
祈りと決意を込めた
硬質な靴音が響き、吹き抜けの2階から人影が現れる。
何処かカエルに似た装甲のデモニカを纏う軍人達は、ミスリルの1チーム。
オスカー1~4のコールサインで呼ばれる彼らは、眼下の光景に目を見開く。
「これは……!」
雨柳達と魔丞たちとの激戦に。
「呆けている場合じゃねえ、支援するぞ!
オスカー2から4は散会!」
敵の主力との激戦を見て、即座にオスカー1が
長銃を抱えた2と3が配置につき、盾を抱えた4が回り込む。
彼等の動きは洗練され、無駄がない。
淀みなく支援へと移るが、何処か切迫している。
それもそのはず、敵の戦力は予想以上。
あの亡霊兵士や悪魔もだが。
(先日に続きここまでの化け物が出て来るか!
本当に地獄だなこの世界は……!)
敵陣の中心で仁王立ちする魔丞。
遠目にもわかる、絶大な力は危険に過ぎる。
「まずは下拵えだ。ハァッ!」
銃撃に魔法に物理、各種の攻撃が放たれる中。
マンモンは
そしてそのまま朱い結晶を握りつぶした。
「っ! 噂に聞くマガツヒね!」
マガツヒ結晶体と呼ばれるそれは、瞬く間に空間に拡散。
不吉な朱い光で、空間を不気味に照らす。
ここから先の展開を考えれば早急な処理が必要。
だがヨミクグツにマンモンの仲魔が壁となる。
| 鬼女 | アトロポス*7 | LV69(強化済み) | 氷結・電撃・破魔無効 火炎に弱い |
| 天使 | ドミニオン*8 | LV60(強化済み) | 破魔・呪殺無効 魔力弱点 |
| 邪神 | ギリメカラ*9 | LV66(強化済み) | 呪殺無効 物理反射 |
MagによりLVを上げ、合体により耐性強化を施した仲魔。
頑丈な壁となる仲魔が攻撃し、支援役の天使が
城壁の如き布陣を構築。
「さあ、鉄壁の陣を乗り越えられるか!」
呵々大笑するマンモン。
だが、臆することなく雨柳達は動く。
「レイ、打合せ通りだ!」
「ええ! 分かってるわレイブン!」
レイは魔王に回復させ、相手を睨む。
前ターンの防御モジュール*10と、スクルドのラスタキャンディで能力を引き上げた少女は簡単に崩れない。
気高く、勇ましく戦う少女の横を魔神が飛翔。
≪燃え尽きろ──メレク・シェメシュ!≫
太陽神の権能たる焔が放たれ鬼女が爆散。
恐るべき威力に敵陣がたじろぎ、傷を押し開く様に軍神が続く。
前の手番で、氷結・電撃ガードキルで邪神の耐性を下げている。
下準備から放たれるのは氷結の波動。
≪絶対零度*11≫
死をもたらす氷柱が幾重にも殺到。
ヨミクグツの殆どを凍えさせ、死に至らしめる。
絶死の波動はそのままマンモンにも襲い掛かるように見えたが。
「話し相手になってやった礼はしてもらおう」
「貴様なにを!? がっ!」
天使が軍服の男を放り投げ、マンモンの盾に。
ほぼ即死したが邪神は無傷!
「アイツ仲間を……! どこまで道を外れれば気が済むの!?」
「外道共にはたまに良くあることだ!
それよりもやはり奴を殺し切れない! 防御を固めろ!」
「いつもの結界を展開!」
雨柳は攻撃の呼吸に乗って再動しようとしたアドラメレクを呼び戻す。
軍勢は全滅したが、より厄介な邪神と仲魔2体が当然のように生き残っている。
予想以上の体力の高さに、雨柳は瞬時に善後策を判断。
レイは全力でガード、ヴリトラは盾に。
自分は物理反射鏡を、シロガネは
さらにオスカーチームからマンモンの
両腕の力が弱まり、足と各種感覚が鈍りきる。
如何に強大な悪魔と言えど、マンモンは大幅に弱体化した。
| 魔丞 | マンモン | LV75 |
攻撃力 | -2 | |
命中・回避 | -4 | |
どの様な悪魔であろうと有効な弱体化。
煙幕の中、邪神は首を巡らして。
「────その程度の妨害が、俺に効くかよ」
≪
ただ一言で、決死の妨害を散らした。
| 邪神 | 魔丞・マンモン | LV75 |
攻撃力 | -2 | |
命中・回避 | -4 | |
「ギリメカラ、分かっているな?」
「応よボス!」
ギリメカラがヒートウェーブ*12にて軽く薙ぎ、物理反射障壁に反射される。
だが元より物理反射持ちのギリメカラにとっては、無効で痛くもかゆくもない。
さらに、
「準備は整いましたぜ」
「うむ、なら行くとしよう」
防御態勢をとったレイの背に悪寒が走る。
冷汗が顎を伝うのを感じた刹那、邪神が飛んだ。
音速を超える疾さで、禍禍しい朱が舞う。
前の手番にて、
如何なる敵も打ち砕く、絶殺の拳!
| 八相発破*13 | 物理スキル | 敵全体に物理ダメージ。術者のHP最大値が大きいほど威力が上がる |
| 物理ギガプロレマ | 自動効果 | 物理スキルの威力を大幅に上昇させる |
| ミナゴロシの愉悦 | 自動効果 | クリティカル率を大幅に上昇させる |
| 貫く神気*14 | マガツヒスキル | 次に行う攻撃のダメージが著しく上昇し、反射を含む貫通を付与 |
先程より多い手ごたえのまま走り抜けた。
ドミニオンの
幾度なく勇者を屠った一撃に、耐えられる者は存在しないから。
────とある周回、第二次世界大戦の結果ヤタガラスは解体され、護国を担う家が各個に悪魔と戦っていた周回。
悪魔召喚師を生業とする地方の名家に、ある男は生を受けた。
男は優秀だった。年若くして家の歴代当主に勝るとも劣らない力を示し、悪魔召喚師として頭角を現した。
長じてからも周囲の期待を裏切る事無く成果を出し続け、その人ありと名声を得た。
得てして悪魔蔓延る世界において、男は成功者だったと言えよう。
しかし、家の一部は男の事を危ぶんでいた。
嫉妬もあるだろうが、何よりも男の異端性を知っていたが故に。
男の異端性、それは他者を想う心を持たぬ事。
経験と知性から、他者の感情思考を予想する事は出来る。
されど共感の情があまりにも欠けていた。
何せ婚約者が悪魔に嬲られようとも「顔も素質もあの程度の女は幾らでもいる。縁切りの手間が省けた」等と言いはなったのだ。
心の壊れた彼女が自殺しても、手間がかかるとため息を吐いたのみ。
人間として致命的な破綻を抱えていても、なまじ強く優れ、力を至上とする家の流儀にのっとり肯定されたが故に。
男は己を疑問に思わず生き続けた。
そんな男にも興味を持てる者達がいた。
彼等は強く気高く、勇気ある者。すなわち勇者。
悪魔召喚師として生きる中、幾度も巡り会った勇者と呼べる戦士達。
彼等は絶望しようとも立ち上がり、男に戦いを挑んだ。
強いソウルを持つ彼等と戦い、全てを奪う事で力は更に高まった。
ある時巻き込まれた受胎で、なおも人を護ろうとする彼等を下し。
勇気ある者を奪い喰らい、我がものとする事で高みを目指す勇奪我のコトワリを開き、魔丞となった事で男の
素晴らしき力を持つ勇者達。
彼らを屠った自分こそ、至上の勇者であると。
その後も勇者を殺し、この世界に流れ着きなおも男は勇者を屠ろうとする。
自分があらゆる勇者を下し、至高の勇者であると証明する為に。
最早人でない男は、アストラルシンドロームの元患者達を嘲弄する。
素質は良いのに、これでは宝の持ち腐れだと。
おいおい情けないな。その程度の絶望で膝を屈するのか。
俺には心底理解できないよ。
どうして体の重石が取れない程度で引き籠る?
どうして友達だけ夢を叶えられた程度で落ち込む?
どうして友人に騙され輪姦され、相手を殺した程度で心が壊れる?
何故にそこまで弱いんだ。頼むよ。
そんな惨めな有様じゃ俺の
もっと頑張って俺を満たしてくれ。
自身を勇者と狂信する邪神は、己の過ちを知る事はこれまでなかった。
だからこそ強い。
だからこそ。
「召喚、ティターニア」
「あら、私の力が入用なようですね」
| 妖精 | ティターニア*15 | LV57(育成中) |
| 四属性反射 魔力無効 物理に弱い |
人の強さに、足元をすくわれる。
「それと地返しの玉、と。
これでいいのよね?」
「ああ良くやってくれた。召喚、アドラメレク」
「痛ったあ……お香で体力上げてなかったら死んでたかな」
レイが、雨柳が、シロガネが。
さらに仲魔が立ち上がる。
蘇生されたアドラメレクに、スクルドもいた。
2撃目を回避したものの余波を受けたレイ含め、誰もが傷つき血を流しているが。
「癒しの望みに、仲魔として応えるとしましょう」
| メ・ディアラハン | 回復魔法 | 味方全体の体力を全回復 |
妖精王の妃が強力な回復魔法にて回復。
骨肉が繋ぎ治され、血が補われ、消耗した体力が戻る。
頭数こそ一つへったものの、彼らは依然として戦える状態。
「……何故、生きている?
カバーされたにしても威力が落ちたとはいえ、小娘程度2撃目で殺せるだろ。
そんな事が何故、起きる?」
「さあ。大層な頭で考えた見たらどう?」
隠し身にて一撃目を避け、二撃目は直撃を受けつつも尚も立つスクルド。
粉塵と血に汚れようと揺るがない軍神の目は、涼やかに煌いている。
種を明かせば単純である。
スクルドの蒼い衣装の裾が翻る。
さながら闘牛士の振るうカポーテの如く。
| 気まぐれカポーテ*16 | 思い出スキル | 敵の攻撃を一定確率で完全防御する 確率は運に応じて上昇 |
運を引き上げてのゾロ目フィーバー合体で取得した特殊なスキル。
葛葉式悪魔合体の奥義が壮絶な一撃からスクルドを護ったのだ。
「
俺の焔はまだまだ消えん」
また他の三人は仲魔のカバーによって一撃目をしのいだ。*17
一撃で仲魔三体は死に絶えたが、スキルと御霊で体力を限界まで上げた三体は役目を遂行。
自身の主を守り抜いた。
無論、2撃目とて装備*18で耐性を得て体力を引き上げた雨柳以外の二人を殺しうる威力。
ではあるが、ここにも仕掛けが存在する。
「レイやおじさん、シロガネ君が無事で良かった~」
「何とかうまく行ったな。
予め支援の連携を練習しておいてよかった」
「オスカー4のおじ、お兄さんもありがとうね。
盾でうまく隠してくれたから僕は気づかれないですんだよ」
先程の支援に参加しなかったオスカー4、彼は密かにロゼと合流していた。
煙幕に紛れ、オスカー4はラク・カジャ珠*19を使用、少女は妖獣ヌエを召喚し居飛車穴熊*20を使わせていた。
故にマンモンの攻撃時の雨柳達の能力向上は以下の通りになる。
| 悪魔召喚師 | 雨柳巧 | LV74 |
攻撃力 | +1 | |
防御力 | +4 | |
命中・回避 | +2 | |
これによってレイは攻撃を躱し、雨柳やシロガネ、スクルドは耐える事が出来た。
結果にはギリギリまで敵を引き付け、盾になった仲魔達の献身。
確固たるデータによらぬ仲魔達の働きもあるのかもしれない。
「……ゴキブリか貴様らはっ!」
「お前相手に、死んで居られないんだよ!」
シロガネは叫び、
強烈な電撃はドミニオンとギリメカラを炭化させ、電撃ガードキルで耐性を剥がれたマンモンの体力を削る。
シロガネの眼力は強い。
社会とか文化とか、JCとか護るべき物は多い。
此処で立ち止まっていられるかという思いが青年には籠っていた。
不利に傾いた状況、邪神の思考が撤退へ傾き。
其処へ軍神が飛翔した。
「売女めが!」
「もう少し知的で品のある事言ったらどう?」
高速での瞬間的な攻防。
押し勝ったスクルドが踏み込み、槍を振るう。
無慈悲な一閃は死神の鎌の一振りの如し。
「がぁっ……!」
苦鳴を上げたマンモンは軍神を睨む。
スクルドの支援へとアイテムが、銃撃が、障壁が来る。
自身とは対照的な状況に瞬間的に憤怒。
「ふざけるなよ貴様等!
俺は、勇者なのだぞ!!」
デクンダにて能力低下を解除し、咢を開く。
邪神の牙*21で相手の活力を奪い、その隙を以て体勢を立て直す。
(俺が負ける訳があるかよ!!)
貪欲なる波動。
邪神マンモンの十八番たる万能技が放たれようとするが。
(――――――は?)
彫像のように、邪神の動きが止まった。
(何故だ! 何故動かない!?
それどころか奴らに、背を向けて逃げたい、と感じているだと!?
なんだ、なんなのだこれは?)
困惑するマンモン。
対して目前の軍神はそっと告げる。
「あなたは知らないのね。
苦しくても、辛くても人間が乗り越えようとする感情。
それは」
誰もが味わい、それでも未来の為に乗り越えようとする感情。
「恐怖よ」
| 恐怖状態 | DSJ・ペルソナで存在する状態異常 行動不能や逃走などを引き起こす |
スクルドが先程マンモンを切り裂いたスキルはデスサイズカット。*22
死神の側面を有するスクルドであり、一説には死や損害を意味するスカディの名を冠する彼女にはよく馴染むスキル。
フィーバー状態で合体を繰り返しステータスを上げる中掴んだ斬撃。
このスキルは強力な物理威力の他、一定確率で恐怖を相手に引き起こす。
ここまで強力な悪魔なら耐性によって、存在を確立した事で、耐える事が多いだろう。
だが、恐れを知らない────人間らしい感情の多くが欠けた精神性。
強いのではなく、破綻し痛みを感じぬ精神の邪神には効いたようだ。
| 魔丞 | マンモン | LV75(Mag強化済み) |
| 四属性吸収 破魔・呪殺・神経・魔力無効 精神にやや弱い |
「まだだ! まだ」
「いいえ、あなたはもう終わりなさい」
マンモンの言葉を遮りスクルドは手を掲げる。
魔力の励起と共に、邪神の傷口より漆黒が噴出。
| 亡者の嘆き*23 | 万能魔法 | 恐怖状態の敵を即死させる スクルドがスカディの相を得たことにより習得した強力な呪詛 |
恐怖した者を絡めとる呪詛の、黒い瘴気が邪神を飲み込み、死に至らしめる。
さながら罪業への応報が如く。
「……人の苦しみを嗤い、自分の為だけに奪い続ける生き方。
そんなのつまらないって、何処かで気づければ良かったのにね」
スクルドは、自身を助けた男から教えられた生き方と、逆の生き方をした邪神を想い。
少し残念そうな表情を浮かべ、呟いた。
「葛葉の里から帰ると、サマナーが極大脳破壊されていた」
あくる日、雨柳ビルの一室にて。
スクルドは呆然と呟いた。
彼女の目の前には真っ白に燃え尽きた雨柳。
耳を澄まさなくてもチーンという効果音が聞こえてきそうだ。
「流石にこれは予想出来なかったわね……」
「あなおそろしや……JCの執念恐ろしや……
レースで私はJCに先を越されてしまうのでしょうか……? 」
隣で声を潜めて御影がつぶやく。
今回ばかりは彼女にとっても予想外だった。
先日雨柳は葛葉の里に行き、会議に出席した。
ヤタガラスや他の組織、キリギリスの発起人まで集まった重要な会議。
今後の方針について重要な情報が共有されたそうである。
問題はその後だ。ヤタガラス文官の三好──彼の妹とはスクルドも御影も面識があると酒を飲み、起きた翌朝の事だ。
帰り道にある屋敷から出て来たのは雨柳の知古である、キリギリスの発起人たる佐々木。
なんか開き直った笑顔の彼と、葛葉所縁のJS1人とJC4人。
彼女達は命を、心を救われた佐々木という男を慕い、これまで以上に深くつながり胤をもらい受けようとしたのである。
大人たちは最終的にそうなればいいなーくらいだったのだが、少女達の想いは重い。
彼を説得し、屋敷の中で一晩愛を深め続けた。
5人一気に。情熱的に。
『もう戦うこと、生きることに迷いはなくなったわ。頑張るわ』
『ギャア―ッ』
三好の妹、明らかに艶めいた雰囲気になった少女の言葉を皮切りに、野郎三人に対し極大脳破壊ダメージが発生。
後に残ったのはむーざんむーざんな男三人、という訳である。
「カリンチャン、ギンチャン……ミモリチャンスミチャン……ソノコチャン」
ダメージから目が覚めた時、雨柳は無明の絶望に陥っていた。
「13歳は早い、早すぎますわね」
「人ならぬ悪魔の身でも動揺するわ」
スクルドは部屋のもう一方を見る。
部屋のもう一方ではシロガネが「私は闇落ちしています」という表情で指の骨を鳴らしていた。
「俺の望む世界はァ……」
「あっちは
何してるんだこの神造魔人はと思ってたら、シロガネの持つ端末が鳴った。
「もしもし銀ちゃん? 元気してた?」
「そこも再現するんだ!?
というか元ネタ的にギンの弟気取りなの!?」
電話に出た途端急に明るくなったシロガネの声。
本当に何をしてるんだこの男達は。
(けどまあ……この奇行もギン達に幸せでいて欲しいって気持ちの表れなのよね)
雨柳もシロガネも、少女達の幸福を願っている。
過酷な状況でも人を愛し、希望を捨てない少女達。
彼女達に生きて、未来をつないでほしい。
人らしい、他者を想う心の表れ。
自分にも芽生えた心を彼等も持っている。
それは悪くない事だ。
スクルドが雨柳の仲魔として、共に居ようと思う程度には。
(神話だとスカディは離婚してるけど、あくまで私はスクルドが本体だし、ね)
この地獄の様な戦いを勝ち抜き生き延びて、皆で未来にたどり着こう。
新たな力を得たスクルドは、秘かに確かにそう思っている。
この力は、自分だけでなく他者の未来の為に。
悪魔なりに、ソウルを磨き、戦うのだと。
敬愛する召喚師と契約し一度別れ、再度新生した軍神。
彼女はこの先を思い浮かべ、微かに笑った。
ごく自然な笑顔で。
「ギンチャンガ、オンナノカオ、アアッ……」
「……巧さんの脳破壊、前みたいにパトラで治らないんですか?」
「無理よミカゲ。三回やったけどすぐに元通りに。
どうしようこれ……」
だけどまずはかつてない程のダメージを受けた召喚師の修復である。
どうしてこうなったのやら。
「本当にどうすればいいのかしら」
全く以て手のかかる召喚師であった。
◎主人公紹介
・雨柳巧 <デビルサマナー><剣士> LV75
シリーズポジション:ニッカリ及び悪魔討伐隊(真・女神転生Ⅳ Final)& レイブン(ソウルハッカーズ2)
キリギリスの一員として活動している、最近また帝都ヤタガラスと距離が近づいてきた召喚師。
今回のエピソードで古くからの仲魔であるスクルドが<軍神 スクルド・スカディ LV73>へと大きく強化された。
仲魔と共に強さを増しているが脳の強さには反映されない。合掌。
次回は7月中、そろそろレイやロゼも強化を入れていきたいところですね。