真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス- 作:ローグ5
帝都東京の某所、とあるうどん屋。
グルメ番組で紹介された事もある人気店だが、平日昼過着と言う時間のせいか割と空いている。
落ち着いた店構えに、豊富な種類のうどんを啜る先客達はいずれも満足そうだ。
話に違わぬ印象だと、明太うどんを注文したレイは感じた。
「いいお店ね」
「でしょう?
前来た時美味しかったから覚えていたの」
このご時世でもやっていて良かったわと、おろし醤油うどんを注文した美森が続けた。
注文したうどんを待ちながら、二人は他愛のない会話を続ける。
二人の本日の任務は異界の調査。
先日のユルング出現事件と関連付けられた異界を回って、異常がないか調べている。
事件の発端として疑われているのは<インヴォークシステム>。
【DDS-NET】登録者専用の悪魔を対象とした賞金首サイトは、出資者について不明な点や怪し気な点が多い。
さらにハントエリアには【奥多摩アビス】に【魔王城某】、元影異界といった異界が指定され、如何にも怪しげ。
故に帝都ヤタガラスは地脈やレルムと並行して調査を続けていた。
レイと美森が午前中調査した異界もその一つ。
中級者向けハントエリアに指定されていた異界。
午後は逆に
とは言っても今は一仕事を終え、昼食休憩。
午後も調査があるからこそ今のうちにしっかり休む必要がある。
最低限の警戒を絶やさず、心身を休ませる術はレイとて会得している。
(……それにしても)
レイはちらりと、美森へ目を向ける。
正確にはその、
レイとて平均より身長も高いし、スタイルには自信がある。
それでも美森の艶やかさは末恐ろしい。
「どうしたの?」
「え、あーいや、美森って大人っぽいなあと」
偶に見せる雰囲気はまさしく。
「私と同年代なのに時たま年上に見えるわ」
「そうかしら?
まあ……そのっち達もだけど私はもう、人妻みたいなものだから」
白皙の肌を僅かに紅潮させて美森は言った。
短くも艶のある声音で。
帝都ヤタガラスの子女達が焦がれる佐々木氏は
レイ達がこの世界に来る前も幾度なく激戦を生き残り霊格を高めたとか。
その過程で美森とも色々あったらしいが──そのあたりは聞く気はない。
(誰でも話したくない事の一つや二つあるし)
なんにせよ同年代の仲間が増えるのは悪い事ではない。
レイはそう思っている。
「……話持ち出した私が言うのも何だけど、あの人の前ではそういうのやめときなさいよ。
あれ以来あの屋敷を見るのも避けてるんだから」
「あ、はい。注意しておくわ」
だけど、話の方向性が色事関係に行くのは注意するべきだ。
レイ達の話で想定しているのは、念の為名前は出していない雨柳。
腕利きDBなのだがJCの色事に極めて弱く、ついたあだ名が脳破壊おじさん。
その名は未だに払拭ならず、先日の一件でも大ダメージを受けていた。
それはもう
「前の時は特に脳破壊とかはなかった、のよね?」
「ええ、大体は私の知っている通りなのに。
何でああなったのかしら……
本当に何でああなったのかしら……」
「世の中には不思議な事があるって事にしておきましょう」
考えても疑問符が浮かぶだけの話である。
あまり考えても仕方のない。
美森は少し緩んでいたリボンを整える事に集中し、レイはメニューに載っているあんみつを次来た時に頼むべきかの是非を考え始めた。
少なくとも脳破壊という、最近おっさんから神造魔人、さらに漂流者(JK)まで拡散している訳の分からない事象について考えるよりは有意義だった。
春先の風に、木の葉がそよぎ、木々がざわめく。
一見するとありふれた森林にも見える異界。
東京南部、埼玉県との県境近くにあるこの異界もまたインヴォークシステムのハントエリアに指定されている。
出現悪魔はLAW系統を中心にLV30~40程。
中堅のDBや漂流者の狩場となっていると事前情報にあった。
「エネミーサーチは緑、安定した異界の様ね」
「情報だとダメージゾーンや待ち伏せポイントは特になし。
最深部以外は平坦な地形だった?」
「は、はい。
私が出た時と変わっていなければ多分」
この調査に参加するのは完全装備のレイと美森。
更にもう一人、聖華学園の制服の上から装備を纏った少女がいる。
長い黒髪を切りそろえた髪型、いわゆる姫カットの少女は大人し気な雰囲気。
黒いベレー帽の上に悪魔の血を引く証である
彼女もまたこの異界調査に参加する者の一人。
\カカカッ/
| 悪魔人間 | 黒髪の少女 | LV35 | 魔力に強い 破魔・呪殺無効 |
黒髪の少女は
何でもかつての世界で帝都全域で起きた悪魔の大量発生を、神社内の結界で生き延びたという。
保護された後本人の希望もあって、聖華学園に入学したが元の世界では護国の家の産まれな事もあり、帝都ヤタガラスとの縁は切れていない。
学内でも葛葉一族系の生徒と交流を持ち、情報のやり取りをしている。
今の所誠実な性格もあり、評価は上々。
評価を裏付けるように、今回の案内役の打診も快諾したそうだ。
「お二人の足を引っ張らないように頑張らせていただきます……!」
「そう硬くならないで。レイはともかく私はただの一召喚師だから」
「私も特に役職ナシの平よ。
むしろ今日は来てくれてありがとうって感じ」
だから緊張しないで、と笑いかけると慌てて頭を下げられた。
LV差もあるのだろうが、随分と丁寧な悪魔関係らしくない子だ。
「準備が出来たら行きましょう。
異界奥目指して、油断せずに」
全員装備と道具を点検してから、異界内の調査を開始する。
異界へ踏み入ると散発的に襲ってくるのは霊鳥や妖魔といった悪魔達。
やはり霊鳥や妖魔といったLAW系統が多い。
「カマソッソ無し。鳥系は私が落すわ」
「了解。側面からの警戒は私に任せて」
「援護しますっ」
油断することなく美森が撃ち落し、レイが斬り裂き、二人の仲魔が進撃を支える。
黒髪の少女もまた撃ち漏らしを落しつつ、周辺を警戒。
後衛として良く付いていっている。
「このあたりに敵意を持つ悪魔はなし。
今の所順調で何よりだけど……特に違和感とかもないわね」
これまでの観測データと、COMPに登録されている過去のデータに差異はなし。
美森は異常がない事を確認すると足を止めた。
ふぅ、と小休止するレイの衣装は常と異なる。
長銃型のCOMPを構える美森も又そうだ。
美森とレイが纏うは<デジタライズ>。
「そちらも無事起動しているようね」
「ええ、美森のとは形式違うけど、全体的な
この世界のヤタガラスも独自の技術を持っているのね」
白とスカイブルー二色の衣装を纏う美森。
対してレイは黒を基調に月白色の装甲を纏った強化仕様。
何処か神聖さを感じる衣装は、国津神オオクニヌシの力を宿す。
| オオクニヌシ*1 | LV35 | 銃撃・氷結・呪殺無効 精神に強い 電撃に弱い |
| レイがデジタライズで纏う悪魔。弱点の電撃はキュウキの具足*2で打ち消している |
レイの適正──物理と氷結に長けた悪魔の中から選ばれた国津神。
その力はレイに耐性とスタータス上昇と言った恩恵をもたらす。
かつての世界ではなかった技術を用いた装備だ。
「お二人共凄いです……。
この世界のヤタガラスって凄いんですね」
素直に感心する少女の言葉に二人は苦笑い。
現行成果の帝都ヤタガラスは確かに有能で、技術力も日々高まっている。
しかしレイも美森も此処に至るまでは色々とあった故、純粋に自分が帝都ヤタガラスの構成員とは思えない。
それに──デジタライズといった各種装備を研究し、実戦で使えるまで仕上げたのは優秀な研究者や技術者達だ。
あくまで彼らの成果を使わせてもらっている身としては、己の力そのものとして誇示するのは些か滑稽と感じられる。
「私達は装備を使わせてもらっているだけだから。
特に私なんて本来外様なのに」
「そのあたり忘れちゃだめよね。
そういえばそっちは、聖華学園って防具やアイテム事情ってどんな感じ?」
やや微妙な空気を振り払おうとレイが質問。
こういう時は話題を変えるのが一番だ。
丁度よく装備の話になった所だし、こういう話題が適切だろう。
「確かに私も良く知らないわね。
一応私も聖華学園には通っているけど装備やアイテムは外で揃えているから。
ヒルダさんが特殊購買部やってるのは知っているけど」
「消耗品とかは特殊購買部で買っていますね。
ただ防具とか少し特殊なアイテムは、手に入らない物もあるので通販とかで買っている人もいます」
無論保安上の検査の為、注文した物が届くには時間がかかる。
それでも防具類の品ぞろえが豊富であり、装備が手元にない漂流者等は重宝しているとか。
「このアクセサリーも通販で買ったんです。
ちょっと高かったですけど」
そう言って少女が見せたペンダントは少女の雰囲気とは若干不釣り合い。
だが、その効果は用心深い彼女に適しているといえよう。
また、彼女が見せたポーチの中にも道具がきちんと揃えられていた。
(アイテムは魔反鏡やマジカルガード*3の他に、状態異常対策の物が整理されてすぐに取り出せるようにしている。
何が必要か、よく考えられているわねー)
各種状態異常に備えアイテムを用意し、盾や防具で敵の攻撃に備える。
派手さはないがしっかりと考えて準備をしている少女にレイは感心した。
「そろそろ行きましょうか。
三人そろって油断なく進みましょう」
一先ずのリーダー格の美森の言葉に応じ、レイと少女も再び歩み出す。
異界奥への道のりは六割、残り四割。
順調だろうと、異界内では
・
・
・
かつて少女達が避難していた神社。
あくまで一時的な避難所でしかなかった其処は、多少開けた場所にあった。
古びて損傷しているが、元は丁寧に修繕されていた神域。
しばらくぶりに来た神社の本殿に少女はそっと手を触れる。
「またここに戻ってくるとは思わなかったな……」
数か月前と比べて自分は変われたのか。
感慨と共に自問する少女は少し懐かし気。
が、すぐにレイ達と共に調査を開始した。
「以前のデータと変化はなし。
そっちはどう?」
「仲魔に探らせたけど駄目ね」
「床の痕跡を見ても特に誰か立ち入った事もなさそうです」
ライトで照らした床を確認した少女も頭をふる。
悪魔すらいない静謐なまま。
此処にも手掛かりはなし。
「此処も空振りかあ……」
一通り確かめた後レイはしばし思案。
変な言い方になるが漂流者が保護された以外は何の変哲もない異界。
特異な悪魔が出現するわけでもない。
(……午前に行った異界でも悪魔がCHAOSに偏っていたわね。
一応だけど、戻ったら美森と話してみますか)
小さな事ではあるが伝えた方がいいだろう。
他の調査結果と合わせて何かの事実が分かるかもしれない故に。
少女を聖華学園に帰した後美森と相談する必要があるだろう。
「もう少し探したら戻りましょう。
余り遅くなるのも何だし」
「そうね。この神社には何も────気づいた?」
「ええ」
レイと美森は瞬時に戦闘態勢。
優れた直感と五感が察知するは、高速で接近する何者か。
遅れて黒髪の少女も盾を構える、前に攻撃が来た。
≪マハザンダイン≫
吹き荒れる烈風、耳を満たす轟音。
異界を震撼させる衝撃が、上空より降り注ぐ。
「怪我はない?」
「は、はい! 庇ってもらったから大丈夫です!」
遠距離から故にレイと美森は回避。
黒髪の少女はレイの仲魔のヴリトラが庇った。
レイと共に少女が盾とライフルを構え向き直る。
上空より"敵"が神社の鳥居へ足を付けた。
「ったく、今のを躱すかよ。
雑魚にしちゃあ反応がいいな」
降り立った敵は特徴的な鎧姿。
スチールブルーで彩られた流線形の装甲、頭部のバイザーからは橙色の光が揺らめく。
手には蒼い長槍を携えたその姿は重武装の騎士と見えた。
\カカカッ/
| 超人? | アクセラス・エクィテス | LV68 | 耐性??? |
≪ルナトラップ≫
逃走阻止の魔法を使用した敵、アクセラスは睥睨するかのように少女達を見下ろす。
バイザー越しにすら分かる酷薄な品定めに、思わず少女達に力が入った。
「
見た目もいいしLVもまあ悪くねえ。
どうせ
「……いきなり表れて随分なご挨拶ね」
侮蔑的な言葉にふさわしく、美森は剣呑に返答。
今の言動だけで相手の悪意の強さが分かった。
翡翠色の目を鋭くし、相手を正面から見据える。
人を人と思わない言動、それは美森と友人、そして想い人が忌み嫌うものである故に。
「用があるなら名乗ったらどう?」
「俺相手に一丁前に話すかよ。
アクセラスは鋭く槍を一振りし、笑う。
言葉に込められた下劣な意味に美森がすっと目を細めた。
高まる緊張。アクセラスが構え。
戦意を漲らせ襲い掛る気勢を見せた所で
≪グランドタック≫
少女達へ斜め後ろより襲い掛かるのは狙撃。
アクセラスが気を引いたうえで警戒しがたい方角からの狙撃。
単純な策だが、彼らの技量であれば有効。
無防備な背中を貫くかに思えたが。
「────コウガサブロウ」
「心得ている」
美森が瞬時に召喚した龍神が銃弾を切り裂き、残滓を受け止める。
堅牢な外骨格を纏う龍人は微動だにしない。
美森が使役するのは必殺の霊的国防兵器が一柱。
龍神コウガサブロウである。
帝都ヤタガラスより授けられたその力は絶大。
(あまり表には出したくなかったのだけど。
出し惜しみはしていられない。
見るからに高度な技術で創られた装備、恐らくガイア再生機構……!)
重サイボーグ化されたメシアンや、各国軍隊やヤタガラスの一部でも使われているデモニカとも毛色が違う装備。
となれば高度な技術を誇るガイア再生機構の可能性が高い。
美森の推測は当たっている、アクセラスはガイア再生機構のエージェント。
アクセラ達はある人物の捜索及び、追加サンプルとしてのDB捕獲の任を受けている。
この場での会敵はあくまで偶然。
しかし互いに相手を逃がす気はない。
「後方の敵は私が倒す。
あの槍使いの相手頼んでいい?」
「任せておいて。
私もあなた程じゃないけどこの世界に来てから鍛えてきた。
その成果を見せてあげるわ」
美森と共にレイもまた自身の刀型武器COMP<閃刀壱式>を構え眼前の敵に集中する。
後方の敵を美森が倒すというならば自分は前の敵に集中するだけだ。
「わ、私も戦います!」
二人に続き、盾とライフルを構えた黒髪の少女もまた声を上げる。
逃走出来ない以上、自分も協力し戦うのみ。
危険は元より織り込み済みだ。何よりも。
「了解。サポートは任せるわ」
自分を仲間として信じてくれているなら、やるべき事をするだけだ。
「下らねえ友情ごっこご苦労様。
良い所に連れてってやるから一度死ねや」
アクセラスが浮かび上がり、長槍をレイ達へ突きつける。
美森がコウガサブロウと共に後方へ向かい、レイが仲魔と少女と共にアクセラスへ立ち向かう。
銃声が鏑矢の様に、戦闘の開始を告げた。
大気を切り裂いて、スチールブルーの
「どこを狙っている!」
レイの支援を受け攻撃力を強化したヴリトラの剣を躱し、アクセラスが吼える。
バレルロールじみた回避から反転、攻勢に移行。
高速高精度の動きは、人間には難しい2回行動を容易く可能にする。
| ギアチェンジ*4 | 補助スキル | 行動回数を増加させる |
<アクセラス・エクィテス>とは装着者ではなく装備の名を示す。
この装備は原型となった物同様、装着者に高い速のステータス補正をもたらし、なおかつ搭載されたAIの補助で2回行動も可能。
ガイア再生機構の魔導・機械技術を用いて創りだされた鎧は高機動戦闘に対応した装備だ。
さながらファランクスから出でて戦う
まだ配備されて日が浅い装備を、敵は使いこなしていた。
速度を載せたまま突撃を敢行。
高速動作から繰り出されるは猛烈な攻撃。
殺意の具現化というべき一撃がレイ達を襲う!
≪ソニックブーム≫*5
≪冥界破≫
「くぅ……ぁっ!」
「レイさんっ!」
カバーした邪竜バジリスクが砕け、2撃目の余波でレイは後退し、少女に受け止められる。
ヴリトラとキングフロストは耐えたが、高LVに相応しい強烈さ。
本来
(流石に強いわね……!)
口元の血を拭い立ち上がるレイの前で、アクセラスの仲魔がマカラカーンを使用した。
LV60を超す高位の妖精、その援護も又厄介だ。
\カカカッ/
| 妖精 | オベロン*6 | LV64 | 銃撃・電撃・神経等に強い*7 呪殺無効 |
先程魔法石を投げてみたがその後も魔法反射状態が続いていた。
恐らくロゼが使役するサラスヴァティの様に、結界術に長けた悪魔。
魔法反射障壁が何度攻撃を受けようと1ターンは持続し、相性を無視してダメージを反射する。
敵に回せばこれ程厄介な悪魔もいない。
(その上アイツ下衆だけどいい目をしている。
刀とかの近接はそう当たらないわね)
| 極・物理見切り*8 | 自動効果 | 物理属性攻撃への回避率が大きく上昇する |
レイの見立ては正しい。
アクセラスはかつての世界で、ガイア再生機構にスカウトされる程に頭角を現したのは優れた眼を持っていた事も一因。
刀だろうと拳だろうと、物理攻撃を極めて高い精度で見切る眼。
自身を天才たらしめるそれは今に至るまで無数の勝利を与えてきた。
(この分だと銃撃にも装備か何かで対策している。
ガチガチに固めた防御の上にこの速さと力。
全く厄介な敵だわ)
人であるが故の戦い方。
レイもよく知るそれは敵に回せばやりづらい。
高い防御力と補助的な効果を持つ装備。
支援役として優秀な高いLVの仲魔。
才能がもたらす有用なスキルの数々。
紛れもない強敵だ。
「ん、──────単体ならともかく、オベロンが厄介ね。支援お願い」
だけどレイもこの世界に来てからただ漫然と過ごしていたわけじゃない。
新たな世界でも人を護れるように知識を学び、自身を鍛え直してきた。
妹分のロゼも強大な敵を倒したのだ。
姉たる自分がこの程度の敵へ怯んでいられない。
すっと黒髪の少女から、身を離して起き上がる。
額に張り付いた髪を払うレイの目には闘志。
「分かりました!」
当然黒髪の少女とてそうだ。
聖華学園という学び舎で幸運にも現行世界の事を学ぶ事が出来た。
攻勢に至る少女達の目には迷いはない。
「召喚天使ケルプ、強化お願い」
\カカカッ/
| 天使 | ケルプ*9 | LV64 | 物理に弱い 万能以外の魔法を反射 |
≪盟約に従い我が力を。マカ・カジャ≫
レイが最初のターンで掛けていた
強化に長けた
「続いて回復!
フロストは盾、ヴリトラはテトラ!」
「この手の魔法は得意じゃないんだがな!」
「ウオオオオイラは不沈艦だホー!」
更にレイが<宝玉輪>を使用し回復、ヴリトラは
キングフロストはいつでも動けるように、行動機会を温存。
これまでとは違う動きにアクセラスは僅かに眉根を寄せる。
(万能魔法か……?)
マカラカーンが適用されない万能属性魔法。
恐らくキングフロストあたりが保持するそれで自分かオベロンを落すつもりか。
其処まで考えていた所でアクセラスは気づいた。
鬱陶しいとすら思っていなかった
これまた安っぽい赤い拳が放たれて、オベロンに命中し。
「……はぁ?」
寸分にも満たない思考の空白。
偶然にも少女が息を吐くのと同じタイミング。
「当たって、効いた……!」
少女が使ったのはパンチガンと呼ばれるアイテムである。
敵1体を強制的に戦闘から離脱させるこのアイテムは驚くべき事にジャンクから作成可能。
マイナーな道具ではあるが一説には万能相性で効果を発揮する*10とも言われている。
この道具をある時少女は知り、聖華学園内で知り合った
万が一対処できない強敵と遭遇した時にはこれを使おうとお守り代わりに持っていたが、本当に役立つとは。
世の中何が役に立つか分からない物である。
「雑魚の分際で! 何処までも手間をかけさせやがる! 猿共がァ!」
再び距離を取る黒髪の少女へ、血気盛んに叫びながらもアクセラスは単体での戦闘を計算。
オベロンは恐らく迷子*11かそれに近しい状態。
地力で劣る他の仲魔を召喚しても、魔法で薙ぎ払われるだけ。
(あの天使も恐らくは魔法反射タイプ。
テトラカーンと合わせて全体攻撃を封じるのが狙いだろう)
思考が一点に集中。迷いが消えた。
(ならば──物理で薙ぎ払うのみ!)
不快感を燃焼材として鋭く飛翔し、反転し加速。
投じられるは呪印が刻まれた短剣4本。
過たずレイと仲魔を、護る物理反射障壁に直撃し砕いた。
短剣は認知存在としての悪魔を素材としたテトラブレイク効果を持つアイテム。
少数のみの生産だが購入した甲斐あった。
アクセラスは速度を減じる事無く槍を構え突撃。
「計算外だったか! そのまま死ねえッ!!」
天賦の才を絞り出して放つは、空間を埋め尽くす無数の斬撃。
| 空間殺法 | 物理スキル | 敵全体へ物理属性極大ダメージを与える |
ヴリトラを、ケルプを、キングフロストを切り刻み、狙うはレイの頸筋。
鋭い槍撃は頑健なヴリトラすらクリティカルを喰らい大ダメージを受けた。
悪魔より脆いレイには危険極まりない。
レイは咄嗟に腕でガード。
獰猛に叫ぶアクセラス。
その一瞬後、レイの腕に触れた瞬間。
槍撃が反射され、真っ向から受けたアクセラスは全身から血をしぶいた。
「──────ガッ!?」
アクセラスはスパークと血を靡かせて宙を舞う。
兜の中の顔は、予期せぬ交通事故にあった様な驚愕を浮かべていた。
「あなたが居てくれて、本当に助かったわ」
レイは振り向かず、なおしっかりと意思を込めて少女へ告げる。
首元には先程までなかった黒紫のペンダントが提げられていた。
物理反射の種は説明すれば簡単極まりない。
先程受け止めた時に黒髪の少女は、レイに自分のアクセサリーを密かに渡していた。
<暴走王の証>というアクセサリーを。
| 暴走王の証 | アクセサリー | P3出展 高確率で敵の物理攻撃を反射する 何と通販で購入可能 |
『悪いな、その攻撃は俺の当たりだ。
テトラカーンの下に反射をもっていてはいけないというルールはあるまい?』
黒髪の少女が聖華学園で師事するサマナーがかつて見せた戦術。
それを自分なりに模倣したのが反射障壁と装備での二重の備え。
この場ではレイの身体を借りてではあるが、見事にはまっていた。
(バルツァー先生、少しだけど頑張っている人たちのお役に立てました……!)
成程、少女はDBとして凡庸である。
悪魔人間であるが大したスキルはなく、何かの適正がある訳でもない。
戦法も盾を構えて銃を撃つ消極的なスタイル。
かつての世界でも後方に回された事で偶然生き永らえた。
それでも情報を集め知らなかった事を知り、知恵を駆使して道具を使い装備を備え付け、掛け替えのない一人として戦いに加わる。
そうしていいと、尊敬する先達は言った。
だから自分なりに頑張った。
少女の誠実な努力は決して無駄ではない。
「隙が出来た。一気に畳みかけるわよ」
そして仲間の奮闘を無駄にするレイでもない。
≪攻撃モジュール≫
レイが閃刀を駆使し再び攻撃力が上昇。
────魔法攻撃力上昇第三段階!
≪マカ・カジャ≫
ケルプが再度マカ・カジャを唱える。
────魔法攻撃力上昇第四段階!
強化魔法に長けるケルプが
強化された魔法の連弾がアクセラスへ牙を剥く。
LVが多少下だろうと魔法の威力は絶大!
「一気にぶっ飛ばすホー!」
≪絶対零度≫
「今がその時だ!」
≪ジオダイン≫
魔王の冷気が、龍神の電撃がアクセラスを蝕む。
凍り付き感電し、悲鳴と共に血が散る。
「なめ、るなよクズが!」
それでもなおAIによるダメコンを活かし、重傷ながらもアクセラスは生存。
高級応急薬*13の注入により応急処置し、後退せんとする。
距離をとり、何らかのアイテムにて離脱しようというのだろうか。
が、レイが勇敢に踏み込み閃刀を向ける。
COMP搭載の魔晶により発動する氷の一撃。
本来魔法技能を持たない彼女が唯一持つ魔法。
≪コキュートス≫*14
昏き氷結が正面よりアクセラスを穿つ。
動きが硬直し、とどめに投げ込まれるのはとっておきのメギドストーン。
黒髪の少女が気を逃さず投じたアイテムだ。
万能属性の花が咲く。
限界を超えたダメージに中空にて傾ぎ、スパークを盛大に噴き出す。
まるで血のように、断末魔の様に。
「やって、くれるじゃねえ、か……!」
一際大きいスパークの後、アクセラスはついに地へと落ちた。
完全に死に絶え、ピクリとも動かない。
ただ墓標の如く、握ったままの槍が地に突き立つのみ。
レイ達が何をするでもなくアクセラスの鎧が一人でに崩れ落ちる。
悪魔の様に死体は霧散し、鎧は内部機構が破壊されていた。
「死体がMagに還元されたけど……悪魔だったのあいつら?
どうも気になるけどその、大丈夫?」
「ハイ、大丈夫です。
私も前に暴徒やカジュアルを撃った事はありますから」
ヴリトラに敵の死亡を確認させたレイは少女を気遣うが問題ないようだ。
一先ず戦闘は終わったようだ。
「デスマーチの発動はなし。
オベロンはCOMPに戻ってもいないようだけど」
「妖精なら私が倒したわ。
丁度飛んできたから」
しゅた、と身軽に降り立つのは美森。
レイと違ってその身に汚れは少なく、洗練された動きは優雅ですらある。
改めてのその強さが垣間見えた。
「流石に早いわね。そちらの敵は?」
「あなた達と同じ<アクセラス・エクィテス>。
どうも装備の名称がアナライズで出ているようだけど、中身はMagになって装備は自壊したわ」
「結局私達が戦った情報だけかあ。
それ以外にも手に入れられたら良かったけど」
ふぅ、とレイは息を吐く。
結局インヴォークシステムやガイア再生機構の手がかりは得られずじまいだ。
強敵は倒したが似たようなのが、まだまだいるだろう。
「一先ずは三人そろって帰りましょうか。
まず報告しないといけないしね」
それでも三人そろって生き延び、次につながる経験を得られた。挨拶
それは今後の戦いに繋がる得難い物である。
レイの言葉に対して美森は穏やかに、黒髪の少女ははい! と元気よく挨拶した。
「今日もこのレルムは異常なしね」
「だねー物々しい感じも抜けてきたかな?」
あくる日の午後、レイは雨柳やロゼと以前来たレルムに来ていた。
巡回がてらに来たが、すぐに戦えるように武装している人間は多い。
それでも張り詰めた雰囲気はなく、前と同じ様に穏やかな活気がある。
「邪教の館も行ったし、そろそろ帰るとするか」
「おじさん、帰る前にあそこのお店行っていい?
シュークリーム美味しいって評判なんだよね」
「まだ時間あるしいいぞー」
今日の午後はどちらも空いている。
ならそのくらいは問題ない。
「ありがと、おじさん家や銀ちゃん達に渡す分も買ってくるね」
「此処のお店小倉あんの奴もあるのね。
美森とかイザボーちゃん好きそうだし、何個かこれにしましょう」
どうやらロゼとレイは雨柳の知らない内に随分と少女達と仲良くなったようだ。
(二人共成長しているな)
現在のLVはレイが65、ロゼが60。
当初より大きく上がっただけでなく仲魔や装備も強化された。
知識に関しても比べ物にならない程だろう。
それ以上に知人が増え、経験を得て人間として成長しつつある。
この様な時代だからこそ喜ばしい事だ。
(おっさんからすると眩しい……ん?)
仕事用の端末が振動。
アプリに表示された新規着信の文章を読む。
「──────」
端的な、最も重要な事項を告げる文章。
雨柳の眼が少し冷えた。
「……レイブン?」
「すまない二人共、緊急の連絡が来た」
言葉少なに雨柳は告げる。
本来あってはならない事態。
揺らぎを押し殺し、再度文面に目を通す。
文面の冒頭には、こう書かれていた。
少女の行方不明は、これから起きる危機の前奏曲。
救う者と護る者、二者の共同がこれより始まる。
◎今回の登場人物について
・黒髪の少女<悪魔人間>Lv37
普段は聖華学園に通っている漂流者。外見は大体ブルアカの正実モブちゃんみたいな感じ。
彼女の世界のヤタガラスはまともであったが小規模で、悪魔の大量発生に対応しきれなかった。
それでもかつて受けた教育と現在受けている教育、その両方を大事にして頑張っている。
戦闘スタイルは消極的だが、尊敬するバルツァーの影響もあり、アイテムや装備の知識は豊富。
・アクセラス・エクィテス
高度な戦闘技術を持つガイア再生機構の戦士が、新型装備を纏った姿。
アクセラス・エクィテスという装備の名称がそのままアナライズでの名称となっている。
高い防御力に速のステータスの強化、さらにAI補助による二回行動と様々な効果を持つ鎧であり、限定的ながら飛行能力すら備えている。
元ネタは女神転生imgineのディヴァインアーマーと言う装備と、作中でもほのめかしたがACⅥのエクドロモイ。
東郷さんに負けた方は「アクセラスに……付いてくる……だと……」とか多分言ってる。
次回は未定ですが、また頑張って戦闘とか書いていきたいと思います。