真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス- 作:ローグ5
「旦那様、コーヒーをどうぞ」
「ああ、ありがとう」
"事件"が起きて数日後の夜。
所有するセーフハウスの中、雨柳巧はゲフィオンへ礼を言った。
丁寧に煎られた豆を使った香しい珈琲。
連絡を終えた雨柳は口を付ける。
仄かな酸味と苦み、そして砂糖の甘味が多少感じる疲労を癒す。
だが雨柳の表情が緩む事はない。
ここ数日取り組んでいる事件の捜査が、一向に進展していないからだ。
(……一体どこに行ったんだ風ちゃん。
ここまで手掛かりがないとは予想外だぞ)
現在取り組んでいる事件、それは雨柳の知古でもある
事件の成り行きは実に奇妙である。
数日前彼女が妹や友人と共に街を歩いていた所、ある男が話しかけてきた。
男は
政財界では一種の伝説であり、本来なら街中で少女達が会えるような相手ではない。
しかし大城戸はしばしの雑談の後、彼女達へ刃を向けた。
<オーディン>の転生者という本質を顕現させて。
結果<ガイア再生機構>の増援があったものの、双方予想外の援軍もあり大城戸は斃れた。
だが瀕死だったはずの風が復活するや否や、妹達に状態異常をかけて何処かへ瞬間転移。
その際に『ちょっと新世界の神になってくるわ』と言い残したという。
全く以て訳の分からない事件である。
数日経っても風の失踪後痕跡は見つからない。
大城戸の身辺を調査しても無しの礫。*1
雨柳自身あちこちの施設を駆け回り、信頼する仲魔に加え普段は拠点にいるゲフィオン、一説にはフリッグの侍女ともされる女神*2も加えて北欧神話の悪魔も探した。
結局空振りに終わってしまったが。
ふぅ、と短く息を吐いて椅子にもたれる。
これまで何度も会い会話もしてきた少女の顔を思い返しす。
犬吠埼風。ある事件でキリギリスの発起人である佐々木に保護された
妹や友達を大切にする明るく面倒見の良い子。
雨柳も何度か異界探索に同行したり、ある事件で助けられたこともある。*3
あの子の行方が分からない事に、胸がざわつく。
(心変わりして戻ってくればいいんだが)
有りそうもない、希望的な観測まで思考が飛ぶ。
自嘲する気にもならない。
あの子達が妹共々どの様な事件で保護されてから知っているからこそ、安全で、幸福に過ごしていて欲しい。
それは佐々木もそう思っているだろう。
だからこそ先日電話で話した時に怒りの強さが感じられた。
まるで噴火寸前の火山を無理やりせき止めているかのような。
「旦那様。お客様がお見えになられましたよ」
ゲフィオンの声で思考を止めて、玄関に向かう。
監視カメラからの映像をチェックし、インターホン越しに符丁を確かめる。
なお不測の事態に備えつつ、扉を開ける。
「お待たせしました雨柳さん」
「時間の五分前丁度、律儀だな君たちは」
此処へ来たのはいずれも射干玉の黒髪に碧玉の目の美少女二人。
東郷美森とイザボーだ。
時間を惜しむ間もなく本題に入り、情報を交換。
ここ数日集めた内容を互いに伝え合う。
「今日の夜に佐々木さんはフリッグと別の手段をとるそうです。
今の所だとその方法が一番確率が高いとか」
二人の分の飲み物を手早く用意したゲフィオンの表情がかすかに動いた。
彼女は主の事を良く知っている。
得意とする術が何かについても。
(おそらく"セイズ"を使うのでしょうけど……)
より効果を発揮する為に必要な行為。
少しばかり不安げな表情になった。
「佐々木様は大丈夫なのでしょうか……‥?」
「それが一番成功率が高いんだろう?
なら任せるしかないさ」
「まあ、あの人なら平気。
成功すれば大まかな場所は分かるからそこへ行くとして」
割と非常事態なので、
「問題なのは<インヴォークシステム>です」
「……概ねこちらの調べた通りだな」
イザボーの小さな手が差し出した資料の内容。
雨柳が風の捜索と並行してコネクションを辿り、収集した情報と変わりはない。
インヴォークシステムは悪魔を生贄に捧げる事で、
神のアライメントに応じた悪魔の生贄と、仕掛けた聖地を清める。
ただそれだけで、本来多数の生贄を含む準備を経る事なく召喚が可能。
これまでの悪魔召喚における常識を覆す、恐るべき代物である。
このプログラムを何者かが、<ヤコブの梯子>等幾つかの組織の名義にて各所に提供している。
事件は先日のユルング出現で終わらず、まだまだ続いていた。
「キリギリス内の伝手を辿って調べてみたが、やはり悪魔が何体か召喚されているようだ。
この間のユルングには及ばない強さだが」
雨柳は二人に紙の資料を見せる。
直接の知古であるキリギリス参加者から提供された情報。
雨柳が掴んだ神の召喚は二件。
仙台と福岡。前者はガイア系の新興組織、後者は京都とつながりのあった家が召喚。
いずれも葉弥坂汐音、カナエ・ハイラインといったキリギリスでも腕利きのDB達が中心となって迅速に討滅。
中野の様な大事件にならなかったのは幸いだが。
「明らかに裏……悪魔業界の中でもカルトやダーク系に情報が流れている」
「今はまだ地方中心だけど最終的には恐らく」
「東京ですね」
じきに東京で大規模な召喚が行われる事と、帝都ヤタガラス及びキリギリスの有志の間では予想が共有されていた。
帝都東京は日本最大の人口を抱え、複数のレルムとそれに応じた多数の覚醒者を擁している。
その中にはインヴォークシステムを手に入れ、悪意を持って使用する者も混じっているだろう。
背後で嘲笑う
「……食い止めないと、な」
近いうちに来る帝都での戦い。
集まった戦力で召喚された悪魔を完膚なきまでに叩きつぶす。
そうして社会は、日常は壊せないと証明する。
ただ一人の英雄ではなく、何処かの誰かが集まって日常を護る。
これまで続けてきた事と同じ事をするだけだ。
雨柳の言葉に、姉妹以上によく似た美少女二人はうなづく。
静かな意思はこの場にいる三人とも同じ。
そんな過酷な世界でなお戦う者達を見て、ゲフィオンは静かにほほ笑んだ。
(ふふ、今世は前向きな方が多くて良い事です)
ゲフィオンは開拓者としての側面もある女神。
故に彼女は何かを育み築き、未来へと歩いていく人間を好む。
召喚師も、少女達も、それ以外の人間も彼女にとって好ましい。
色々な事情を抱えていて、それでも前へ向かっていく姿は良いものだ。
(今回も頑張ってくださいね旦那様。
風様が帰ってこられましたら、盛大にお祝いをしましょう)
だから頼みますよ。と、ゲフィオンは祈る。
親愛なるかつての女主人へと。
────ゲフィオンの願いは届いた。
フリッグのセイズは風の居場所を見つけ出し、佐々木達は即座に救出作戦の準備を開始。
彼等はとある場所へと赴くことになる。
同時に起こるのは帝都東京での大悪魔の出現。
キリギリスの中でも最強格の者達を欠いた状態での戦いは、一見過酷に思われる。
何せ貴重なLV100の内三名がいないのだから。
だが心配はいらない。
誰がいないのなら、別の誰かが補う。
それは小はグループ活動から大は国家の計画まで同じ事。
東京に残った者達が<神>と戦うだろう。
無数の人間達の奮戦、それこそが現行世界を支える原動力なのだから。
上野レルム。東京に複数あるレルムの一つ。
レルム外縁部にある建物の中、雨柳達は待機していた。
「上野は……異常なしだね」
「今の所は、な」
このホテルは帝都ヤタガラスと関係が深い乃木グループ系列。
既に話は通され、雨柳に待機所として貸し出されていた。
事件が起きるのは恐らく今日、上野と品川。
各組織から集めた情報や複数系統の占術からそう予測されている。
故に雨柳等ヤタガラスと関係があるDBが昨日から待機に入っていた。
「御影さんからの連絡だと他のレルムも同じだな。
名古屋等地方の大型レルムも同じ」
警戒の目はレルム内にとどまらない。
上野や品川の拠点で、レルム内からの有線回線経由*4で情報を取得し、外部の動きを監視。
またネットにおいても不審な動きがないか確認。
監視網の中には乃木グループ系列のネットセキュリティ企業のメンバーも加わっている。
舞弓御影もその一人というわけだ。
なお拠点には彼方の御国のメンバーも護衛として詰めている。
彼女達の内チヒロは今回ハッカーとして協力するそうだが。
「仕掛けてくるのもしかしたら夜になるかな?」
「目的に依るだろうな。
レルムの破壊が目的ならそうするだろうが」
シロガネと取り留めのない会話を続けて待つ。
待機する事は意外に神経を使う。
適度な集中と適度な弛緩。
その二つの両立は昔取った杵柄だ。
「パフォーマンスなら分かりやすく明るい時間にやるかぁ。
で、雨柳は何調べてるのさ?」
「ん、ああこれか?
ちょっと前に行った店だよ。
レルムから割と近い所」
雨柳の端末に映るのは洋菓子店のサイト。
上野にある店で若年層に人気らしい。
「美森ちゃんやお前も来る前に一度行ったんだ。
風ちゃん達と一緒にさ」
まだ風や妹の樹、友奈が保護されて日が浅い頃。
確か杏も球子もいない時期の話だ。
彼女達の異界への引率帰りによった店。
通りがかりに少女達が気になっているようだから寄ったが中々気に入ったらしい。
美味しいねと他愛なく姉妹同士友人同士で笑い合う少女達。
年相応に日常に喜びを覚えられる事に、内心ほっと胸をなでおろしたのを覚えている。
「あの子が帰ってきたらまたこの店に行くのもいいかと思うんだよ」
「へー雨柳にしてはいい事考えだね」
「一言多いぞ」
シロガネも今は東京の外にいる者達を思う。
見知った少女の行く辺不明に、不安の感情は確かにある。
だが感情は大きいとは言えない。
(佐々木さん達が行くならきっと無事帰ってくるさ)
シロガネ自身雨柳程の交流はないが、彼なら風を、樹の姉を取り戻してくれるはず。
当然佐々木は完璧な存在でも、英雄でもない。
それでも男は幾度なく戦い、少女達を蹂躙しようとする絶望を打ち砕いてきた。
だからこそシロガネにとって大事な少女達も彼を慕うのだ。
雨柳もシロガネも、部外者である。
自分達が出来るのは、風が帰る街を護る事。
微力ではあるがやって見せよう。
(できれば風ちゃん保護の情報が入ってから戦いてえものだが。
そんなうまくはいかないか)
なんてことを考えつつ二人はしばし待つ。
自分達の敵の到来を。
30分、1時間、1時間半────経った所で、巨大な魔法陣が二つ浮かんだ。
「っ! 来たか!
「品川でも2体!」
即座に傍らの刀、霧氷月影を掴んで走り出す。
扉をぶつからないように開けて外へ。
広く取られた廊下には水神恵都とその仲間のアリシアなる少女。
名古屋ヤタガラスと親交のある恵都と、情報収集で貢献したアリシアもまた待機組に入っている。
事前の相談で二人が今日雨柳達と組む予定としていた。
「雨柳さん、どっちから行く?」
「まずは近場、居住区に近い方だ!
もう片方は開けた場所の分多数を展開しやすい」
「耐性はどうなっているのかな?
ユルングと同様なら弱点有りそうだけど」
「既に第一陣が耐性ノック、斬撃・貫通有効!
疾いなこの世界のDBは……!」
短く会話しホテルから出て戦場へ向かう。
その間にも何人ものDB達が向かっていく。
強大な悪魔の元へと。
「経験値の塊だ! 行くぞおオオオっ!」
「なにっ物理が全通しの鴨だと!?
鴨南蛮にしてやるぜ!」
「生きているって事は経験値を持っているって事だ!」
「レア素材寄こしなさい!」
「お気にの子達の居場所は……僕が守る!」
……最もその陣容は混沌としていたが。
「…………この世界怖いなー」
「俺も偶に思うよ。
これまで何処にいたんだろうなやべー奴等」
これから始まるのは
強大な悪魔だろうとも勝ち筋を見つけ、自身の糧としようとする修羅共。
悲劇を喜劇に変える、逞しき現地人達によるレイドバトル。
異形の邪竜が上野レルム内を闊歩する。
骸骨を思わせる不吉な邪竜の名は<断末魔の叫びに呼ばれしヴァスキ>。
幾多の周回にて破壊と殺戮をまき散らした恐るべき悪魔である。
\カカカッ/
| 邪竜 | 断末魔の叫びに呼ばれしヴァスキ | LV90 |
≪フリージングランス≫
≪マハジオダイン≫
≪疾風陣≫
災禍の如く氷結と電撃をまき散らし、邪魔する者がいれば反撃状態で蹂躙する。
世界を滅ぼしうる六体の災厄の一柱。
自身を倒さんとする、無数の英雄を倒してきた大悪魔。
『ギャアオオオオッ!?』
しかし、<神>たるヴァスキは今、戸惑いつつレルムを疾走。
相対した者達から距離を取る為に。
最初にカンフー使いと剣士の攻撃を受けた時はまだよかった。
現地人の精鋭ではあるがヴァスキにとっては脅威に足らず。
所が第二陣として出て来た反逆のペルソナ使い、さらに万魔の王。
彼等の仲間達が強すぎた。
一番槍の二人の攻撃、さらには疾風陣の仕様から瞬時に対策を構築。
ヴァスキに対して猛撃を開始したのだ。
如何な大悪魔であろうとこの場での最精鋭による攻撃には抗いがたい。
たまらず逃げ回り、高い移動能力を活かさんとする。
巨大な体は移動においても大きな利点となる。
如何に強かろう巨大な邪竜と人間とは一歩の歩幅が違う。
ヴァスキの一歩は大きく矮小な人間を引き離す。
ましてや全力での移動ならば距離は開く一方。
『ヴァスキは北側へ逃げました!
現在射撃カウンター状態です!』
無論彼等や他のDB達も織り込み済み。
ESP能力を用いた通信がなされ、敵へ適切な対処がなされる。
「多勢に無勢だいっけえ!!!」
第三陣のDB達────移動先に網を張る様に待ち構えていた者達によって。
左右から多数のDBに仲魔が接近。
移動の要たる足を狙って攻撃を繰り出す。
槍に刀に剣。煌く白刃が邪竜の足を切り削る。
「予想通りだ! 俺達も行くぞ! 」
スクルドとアドラメレクを召喚した雨柳も続く。
「物理で行くなら支援に回るよ!
雨柳さんGO!」
「こういう時はアイテム係として働こう」
恵都が発動した
雨柳やスクルドが仕掛ける。
≪真空波≫*5
走り出すと同時にさらなる強化が雨柳達に掛けられる。
並走する赤と黒──何処かスパイダーマンに似たカラーの細身のデモニカ。
男の仲間により真空波が発動されたようだ。
「地獄からの使者シュナイダーマッ!
経験値に転生せいやああああああっ!」
「もう少しヒーローっぽい事言えよ!?」
漫才の様な事を言いながらも彼らに抜かりはなく、迅速に接近。
先んじて攻撃した者達が付けた傷を広げる様に。
ヴァスキの左前足を全力で斬り裂く。
≪デスバウンド≫*6
≪一刀両断≫
≪デスサイズカット≫
シュナイダーマンが自身を、左腕の刀身を回転させて斬撃を繰りだし、雨柳とスクルドも渾身の斬撃を見舞う。
狙いすました高威力物理の連刃。
ヴァスキの左前脚がへし折れた!
「この感覚……木こりのバイトをしていた時を思い出すなァ~!」
「京都の外は色々なDBがいる物だね、よっと」
他方右側では鎧姿のDB──
デモニカの方は<黒の騎士団>のエースである腕利き。
力と技の合わせ技で、ヴァスキの右後ろ脚がへし折れた!
『ギ、ガアアアアッ!?』
≪ストライクバック・バッシュ≫
たまらずヴァスキは物理カウンターへ移行。
スキルの行使に真っ先に気付いたのは、電撃ガードキルを発動したアリシア。
「射撃カウンター状態に移ったぞ!」
「なら、私が連絡を」
声を上げると近場のDBが青い信号弾を撃つ。
先程簡易的な取り決めで赤が物理カウンター、青が射撃カウンターとした。
スキルや魔法に頼らない小技。
単故に大人数での戦いで力を発揮する。
≪フリージングランス≫
≪マハジオダイン≫
信号の照り返しを受けてDB達は戦型を移行。
近接班が下がり、ガードや魔反鏡でヴァスキの攻撃を防御。
これまで後衛に居た者達が応射する。
「ガトリングとは破壊力!
砲身が焼け落ちるまで撃ちてしやまん!」
赤を基調とした
「今日はやめに……いたさぬ!」
古式ゆかしい眼鏡をかけた剣士が風神剣*8にて甲殻を切り裂き。
「こういう時に貢献稼がないとね!」
「そうだそうだマグネタイト寄こせえ!」
恵都が火炎弾を撃ちまくり、シロガネが轟雷・改を叩き込む。
ヴァスキの攪乱をも意図したラン&ショット。
其処で一瞬迷ったのが運の尽き。
≪停まったその時が最後だ。メレク・シェメシュ!≫
真っ向から頭部に叩き込まれるは、太陽神の力たる猛き焔。
太陽の如き熱量の集中。
爆炎がとどろき、巨体が傾ぐ。
『グォ、ギガァ……!』
ヴァスキはこれまでにないダメージを受け、ついに転倒。
追い打ちをかける様に、近づくのは反逆のペルソナ使い達。
「もう追いついたか流石に早いな。
この分なら此処は時間の問題か」
「そうですね。ただあっちはちょっとまずいかも」
恵都が見せる端末の画面にはキリギリス掲示板。
実況レスを見るにどうやら反対側は苦戦しているようだ。
人が集まる商業地区から近く、避難誘導に手を取られているのも大きいだろう。
「あちらの手伝いに行きます?」
「そうだな。先に来た奴等の邪魔にならない程度にやるとしよう」
既にヴァスキはロクに動けない所に高威力攻撃を叩き込まれ虫の息。
同じ結論に至ったのか何人かも離脱し、もう一つの戦場に向かっていく。
彼等同様支援に行ってもいいだろう。
「全くこの世界のDBは随分と頑健だ。
骨が折れるが……嫌いじゃない。
私も同行させてもらうぞ」
「なら決まりだね。飛ばしていくよ!」
アリシアの言葉にうなづき恵都は自分の脚へマグネタイトを集中。
仄かに燐光を帯びて発動するのはモリ―アンの具足の力。
戦車を駆り、戦場をかける女神の力。
| 疾駆 | 自動効果 | NINE出展 パーティの移動速度を上昇させる |
「出発進行!」
先導する恵都に雨柳達も続く。
レイドバトルはまだ始まったばかりだ。
・
・
・
<断末魔の叫びに呼ばれしカルケティーヤ>、黒鉄の鳥人の目が光った。
\カカカッ/
| 破壊神 | 断末魔の叫びに呼ばれしカルケティーヤ | LV90 |
≪ストライクバック・バッシュ≫
瞬時に放たれるのは万能属性のカウンター。
強大な悪魔の一撃は街を瓦礫に変え、並み居るDBを吹き飛ばす。
「っ! スクルド!」
雨柳達の到着はまさにその瞬間だ。
咄嗟に飛んできたDBをスクルドが空中にて受け止める。
未だ死んでいないが重傷、シロガネがサマリカームを発動し回復させた。
「……大丈夫?」
「うう、食いしばり切ったけど何とか。
美女美少女も視界内に何人もいるし」
「元気そうだなヨシ。
とっととスクルドから離れろ。
で、何があったんだ?」
ふらつきながらも立ち上がったDB曰く、とんでもない事をしやがった奴がいたとか。
「あのフード野郎、マジで信じられねえよ」
何でも意図的としか思えないタイミングで、物理カウンターのトリガーを引いたらしい。
一度目ならありうる。しかし二度目、三度目となればどうか。
雨柳の視界に映るのはカルケティーヤの前面で立ち回るフードの男。
その姿正確に捉えずらいのは技術か、装備による物かは分からない。
男が悪魔の前面で立ち回るようにして────周囲へ被害を与え続けている。
「……止めるにしても位置が悪い。
シロガネは回復、アドラメレクは盾、スクルドはマカラだ!」
「アリシア、ラクカジャお願い!」
「心得ている!」
損耗した人員を下げ回復しつつ、攻撃に備える。
恵都とアリシアの強化をも入れて防備を固めた。
≪メギド≫
≪コロナカノン≫
≪ストライクバック・バッシュ≫
カルケティーヤの攻撃が開始。
雨柳の他にも増援のDBが備えたせいか先程より被害は少ない。
だがそれでも神の力は強大ゆえに、被害は出た。
「貫通無しなら俺に焔は効かんが……あいつを止めねばまずいぞ」
コロナカノンから近くのDBを"カバー"したアドラメレクは呟く。
まだ平然とフードの男は動いていた。
此処は自分の独壇場だと、魅せつける様に。
(頭イカレてんのかあの野郎!)
カルケティーヤ単体ならともかくあの男が邪魔に過ぎる。
明らかな確信犯。排除が必要だが立て直しがまだ終わっていない。
せめてもう少し体勢を整えないと崩れるだけだ。
(あいつを止める戦力は)
思考を巡らしながら雨柳は防御。
その瞬間、背筋に冷やりとした感覚を感じた。
雨柳の頭上を跳び越すのは紫電の光。
『銃鎖にて裁け! ≪ネオ・ドグマ≫!』
強大な力場がカルケティーヤの体表で弾ける。
何かが砕けた音が響き、破壊神が驚愕した気配。
(反応からするとガードキルか? にしては動揺しているようだが)
遠目に現れたのは近未来的な装備の少女。
怒りを滲ませる声を彼女は張り上げた。
「銃撃を弱点にしたわ!
全員離れて射撃! ダッジに警戒!
あのアホには近寄らないかまとめて殺して!」
少女は声を張り上げ、感情をこめてフードの男へ攻撃を叩き込む。
予期せぬ妨害を堰き止める援軍。
好機を逃さず既に、雨柳達も、継戦可能なDBは動いている。
銃撃弱点。是即ち好機なり。
「銃撃弱点か。なら決まりだな」
「はいアリシア。予備の銃ね」
「分かった。ハチの巣にしてやろう。
後アイツ氷結・呪殺弱点らしいぞ」
雨柳はホルスターか<六六式召喚拳銃改>を抜き放ち、恵都とアリシアは銃を構える。
アドラメレクは盾となりつつ、カルケティーヤの背後を狙うそぶりを見せ、シロガネとスクルドは魔力を集中し魔法を行使せんとする。
「倍返しじゃあああああ!」
「まずアンタから死になさい」
「行くぜ1殺目、JUUDAN!」
他のDBの動きもまた同様。
機会を逃すまいと銃を構える。
彼等はただの書割に等しい
好き好んで大悪魔に挑み何かを勝ち取らんとしている戦士達。
憤懣をため込んだ彼らが、邪魔者が消え弱点が付与された、この機会を逃すはずもない。
少女の背後で無数の銃弾がカルケティーヤへ放たれた。
流星群の様に、死の雨となって。
破壊神は全身を穿たれ、DB達は歓声を上げる。
銃声すらかき消すほどの勢いで。
「ひゃっはあああああああ!!」
カルケティーヤは穴だらけになり消滅。
南無三。
DB達の活躍によって品川及び上野のレイドバトルは終了した。
出現した4体の神は、群がる無数のDBに完膚なきまでに叩きのめされた。
レルムの施設に被害は出たが、DB達の多くはまだまだ元気。
戦場跡にたむろしている。
「そんじゃ行くぞーはいチーズ」
「イエーッ」
ある者は「我々の完全勝利でした」の横断幕を掲げて記念撮影。
無駄に達筆な字がでかでかと書かれているのが印象深い。
「はっやっくっおかわりよっこせっよォォォオオオオ~ッ!!」
「まだ稼ぎ足りねえんだよ!
もったいぶりやがって―ッ!!
暗い部屋で黒幕でも気取っているのか!?」
ある者は何処かにいる黒幕を虚空に向かって罵倒していた。
血管が切れそうな怒り具合で、無茶苦茶な事を言っている。
「ラーメン食いたい人集まってー。
疲れた体に染み渡るアルよー」
またある者は屋台を曳いて、DB達の胃袋を満たそうとする。
既にラーメンやらおでんに、キッチンカーまで来ていた。
今回のレイドを象徴するかのような混沌具合。
纏まりがなくまた纏まりがあるといえる状況。
瓦礫の撤去を真面目にしている<ブラックフィエンド>の少女がむしろ浮くぐらいだった。
(ひと段落はついたが……あっちはまだか)
雨柳は端末をしまい込む。
先程のホテルを中継点に連絡を取ったが風の救出はまだ終わっていないようだ。
あちらも異界にいるならそう簡単に連絡とれないだろう。
気がかりではあるが吉報を待つしかない。
(こういう時は待つだけだな)
東京にいる者に出来る事は待つだけ。
ならば余計に騒がずそうするだけだ。
彼方で響く地鳴り。
存外に落ち着いている雨柳は、背後へ向き直る。
遠く、恐らく新宿レルムありに出現した巨大な悪魔の姿が見えた。
「あ、悪魔が湧いてきたですぅ!?
異界だからですか!?」
他方雨柳の眼前でも少女の声の通り、多数の悪魔が出現。
黒ずんだ影の様なそれらは数を増やしていく。
\カカカッ/
| 幽鬼 | 狂気に駆られたレギオン | LV38 |
\カカカッ/
| 龍神 | 狂気に駆られたガンガー | LV60 |
| 幽鬼 | 狂気に駆られたラフィン・スカル | LV66 |
\カカカッ/
| 龍神 | 狂気に駆られたコワトリクエ | LV65 |
| 幽鬼 | 狂気に駆られたピシャーチャ | LV72 |
| 幽鬼 | 狂気に駆られたピシャーチャ | LV72 |
1対1体がボスと見まがう高位の悪魔。
それらが
現に近くにいた
一度終わったはずの戦いの再会。
強大な<天命を纏うセイテンタイセイ>に狂気に駆られた悪魔達。
絶望的光景に対してこの場のDB達は──
むしろ喜び勇んで再突撃していった。
まだまだまだまだボーナスゲームが続くなら参加する。
この場にいるのは狂喜に駆られた
何せ彼らの多くは悪魔相手のみならず、多くがソシャゲにネトゲと過酷な耐久戦を潜り抜けてきた経験を持つ。
美味しい相手が大量にいるのに休んでなどいられやしない。
「了解です。銃弾多めに持っておいて良かったー」
「ここまで来るともう反応するの疲れて来たぞ。
あ、恵都ガンガー狙っていいか?
アイツ電撃弱点の様だぞ」
雨柳の前で恵都とアリシアも悪魔を狙っていく。
もうすでに耐性ノックで悪魔の耐性が抜かれ始めている。
「火炎弱点が多いか?
ならお前の出番だな」
「ああ。邪竜一匹じゃ燃やし足りん」
「私はまずはバフね。
そこの子達、もう少し近寄って。
効果範囲に入るから」
「呪殺効かなそうだし、電撃中心で行くかな」
雨柳もさりげなく、前の方に居たJK達の前に出つつ戦闘準備。
JK達も戸惑いつつも戦いに加わるようだ。
「もし戦うなら無理はしないようにな。
回復アイテムはすぐに使えるように」
「……ん。おじさん一先ずよろしく」
狼を思わせる少女が代表としてあいさつし、雨柳達と共に戦列に加わる。
面識はなくてもそこは経験を積んだDB同士、連携しての動きはスムーズな物だ。
≪ダークブレス≫
≪ラスタキャンディ≫
≪轟雷・改≫
≪火炎真剣≫
≪刃・壊・塵≫
刃や魔法による攻撃が、悪魔達を駆逐していく。
大量の悪魔達だろうと、彼らは臆せず次々と倒していく。
上野レルムにおけるレイドバトルの狂騒は、敵がいなくなるまで続いたという。
本スレで盛り上がったレイドバトル。
雨柳は今回上野での参戦となりましたがいかがでしたか?