真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス-   作:ローグ5

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1万字ほどかけたので投稿です。
過去周回って怖いですよね。因縁の敵や親しい人がいても今の周回に生きている者には知り様がありませんから。

今回は最後の方におまけの46話時点の雨柳と仲魔達のデータがあったりします。
もしよかったらどうぞ。


過去世界からの光と影

「うっわあ……」

 

 品川にある帝都ヤタガラスと彼方の御国が合同で設置した拠点の中。

 高性能情報機器にモニターが並ぶ部屋の一室で、チヒロは小さく声を上げた。

 

 彼女の目つきは徹夜明けの様な半目。

 その原因は光量が調整されたモニターで繰り広げられる光景だ。

 

『ガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガド!!』

 

ド ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ

 

 

 品川に出現した<嘆きに呼び出されしグルル>は、他のインヴォークシステムで呼び出された悪魔同様にLV90という大悪魔。

 本来ならば都市一つを単身で滅ぼしかねない規格外の存在。

 かつての世界で並みいるDBを蹴散らしてきた理不尽の権化。

 

 それが今、一方的に蜂の巣にされていた。

 しかももう何度目かにだ。

 

「こんな手段があるとはね。

 敵の強みを封じるのは誰でも考える事だけど」

「<沈黙のささやき>……まさか(フィールド)そのものを対象にした魔法があるなんて」

 

 チヒロの傍らで成り行きを見守るレイからしても信じがたい。

 沈黙のささやき。神樹オシラサマや夜魔ニュクス*1が習得しているこの魔法は敵味方問わず魔法及び特技の発動を封ずる。

 しかもそれは魔封の様なBADステータスを付与するのではなく、その場に一種の結界を創り出す術なのだという。

 この魔法の効果を受けたグルルは有効な反撃が出来ず、DB達の銃撃で一方的に撃ち抜かれていた。

 

 同時に品川に出現した<嘆きに呼び出されしラクシュミ>も、あるサマナーの仲魔が極大万能魔法(メギドラオン)を大きく減衰させた。

 相殺。そんな物までこの世にはあるらしい。

 それから何度も袋叩きにされていた。

 

(まだまだ私達が知らないことは多いわね)

 

 かつてレイが生きていた世界では存在していなかったか、失伝したか。

 いずれせよこれまで存在すら知らなかった魔法。

 この世界に来てから知識は増えたが、まだまだ世界は未知にあふれている。

 これから学ぶべき事が。

 

(……少し割り切れない事もあるけど)

 

 一方でLV90────かつてレイが生きていた世界を滅ぼした邪神セトと同格の悪魔が、こうも簡単に滅ぼされているのは複雑だ。

 多数の強者に、LV90どころか数人だがLV100すらいるこの世界。

 この強靭でしぶとい世界とくらべると、かつて自分がいた世界は何だったのか。

 そう思ってしまう事は、ある。

 割り切って前を向いて、この世界で生きていかなくてはならないのだけれど。

 

「カルケティーヤの方は大丈夫そう。

 チヒロさん、ラクシュミの方はどう?」

「一見変な情報が来てるから確認中。

 なんか剣士同士で同士討ちしてるとか。

 どうせ混乱を巻く為の」

 

 画面に映るのはラクシュミがいるにも関わらず、誰かに斬りかかり真っ二つになる剣士。

 傍にいた者が肩をすくめながら蘇生していた。

 

「……デマの可能性は潰えたわね」

「うん」

 

 他方グルルが何度目かの消滅を迎えた橋近くでは、成金感ある男がガトリングの宣伝。

 その近くではなぜかACっぽいデザインのデモニカ数名がマッスルポーズを取っている。

 沈黙が何処かへ行った混沌空間が現出していた。

 

(なんか釈然としない……!)

 

 これでいいのかこの世界のDB達よ。

 

 レイの経験上だが、この世界のDBはやたらと濃い奴等が多い。

 先ほど画面に映った者達をレイは思い出す。

 

 一回目のグルル撃破に貢献した少年と少女達。

 良く日焼けした少年と翼を持つ銀髪の少女。

 恐らく自分より強い彼等──よりもヤバイのは紙袋を被った少女。

 

 即席の指揮官として機能していたあの子は、LVなら自分よりも下だろう。

 だけどあれはヤバイ。

 雰囲気だけでレイには分かる。

 自分と変わらない年齢なのに真のアウトロー。

 そう確信できる立ち姿だった。

 

(あれって聖華学園の制服よね? 

 レイブンの知り合いや高LVの漂流者が集まっているらしいけど……どんな魔窟なのかしら)

 

 なんて事を考えているとチヒロたちの右側でざわめきが起きていた。

 画面を眺めるロゼは、珍しく顔をしかめている。

 また出た、と少女が呟いた言葉に、事態を理解しレイも顔をしかめた。

 

「また、これでもう何度目よ?」

「これで三度目。

 体力は回復できるにしても何がしたんだろ?」

 

 こちらのモニターに映るのは上野でのレイド。

<断末魔の叫びに呼ばれしヴァスキ>は順調に削れつつあるが、居住区近くの<断末魔の叫びに呼ばれしカルティケーヤ>が問題だ。

 居住区近くである事や多数の悪魔が出現している事もあるが、それはDB達で充分に対応可能。

 カルケティーヤももう何度も倒され手の内が割れ、今いるDBで倒せる。

 他の三つと同じように順調なはずの戦場で起きている問題、それはある狂人の跳梁。

 

『クソ! 野郎また来やがった! 

 周りから離れろ巻き添え喰らうぞ!』

『避けるんじゃねえクソボケが―!』

 

 怨嗟の声を無視し黒いフードの影の如き男、<シャドウ>がカルケティーヤに挑みかかる。

 周囲の事等蚊程度にも考えずに。

 

 カルケティーヤとの初戦から幾度なく出現するこの男は、カウンター状態へのボスへ攻撃を加える等の愚行を繰り返し、戦闘の妨害を行っている。

 害悪そのものでしかない行為、幾度追われても一顧だにせず繰り返す。

 悪魔業界に数いる狂人の中でも、男の振舞は不可解に過ぎた。

 

「うわあ、こんなひどいの初めて見た。

 僕周りに恵まれていたって思うよ。

 こんなのがいるなんておじさん大丈夫かなあ」

「レイブンなら大丈夫よ。けど────」

 

 レイはその先の言葉を飲み込んだ。

 口に出すには不快不吉に過ぎたから。

 

 シャドウの動きが少しばかり、自分の知るヤタガラスの中でも暗部の者達と似ていたなどと。

 

 

 


 

 

 

 カルケティーヤとの幾度目かの戦いは、常よりも緊迫した雰囲気を漂わせていた。

 

「トループが出やがったぞ! 

 ラフィン・スカルを優先的に始末しろ!」

「カルケティーヤを攪乱する! 

 誘導するなら北側へだ!」

「サマリカーム持ち、誰か居るか?」

 

 無論これまでも表面的な態度は軽くともこの場のDB達は皆真剣だった。

 敵の戦力を適切に見極め、強化と弱体化を駆使し耐えて躱し、有効な攻撃を続ける。

 即席ながらも歴戦の彼らは連携し幾度なく、破壊神を討滅した。

 狂人による意味不明な妨害があったがやり遂げた。

 

 だが、歴戦の彼等とて戦いには予想外の事態がつきものである。

 ましてや気心の知れた仲間だけでなく、多人数が集まっているのなら。

 

 不測の事態の発端はやはり狂人。

 何度目かの出現となる男はまたしても災いをもたらした。

 

 カウンター状態への攻撃による周囲の巻き込み。

 自分すらも傷つける不可解な振舞の結果起きるのは周囲を薙ぎ払う反撃。

 多くはシャドウ出現を知り距離を取っていたが、それでも被害は出る。

 先程<ブラックフィエンド>の少女が吹き飛ばされた時*2と同様に、不運にも若いDBが何人か巻き添えを喰らった。

 

 恐らく経験値を稼ぐ為に遅ればせながら参じた漂流者か地方出身者か。

 距離やシャドウの脅威を測り損ねた彼らは吹き飛ばされた。

 運の悪い事に、破壊神からそう遠くない場所へ。

 

 幸いと言えば幸いだが、付近に破壊神以外の悪魔はいない。

 しかしその超巨体故に何らかの動きが原因で踏みつぶされかねないだろう。

 今まだ生きているのは有志によるヘイト稼ぎが功を奏しているから。

 蘇生が必要な者もおり、危険な状態であった。

 

「あの悪魔共が邪魔だ! 

 対象に気付かれる前に潰すぞ!」

「ドーピング完了、シロコちゃん達頑張ってね~」

 

 この事態に対して、少数ながら有志が動いた。

 即座に救出チームが編成。

 それ以外も少なくない数のDBが援護を行ってくれていた。

 その中には頭に光輪(ヘイロー)を浮かべた少女達もいる。

 

「スピード重視で行くぞ。

 奴とやり合うなら俺が中心でやる。

 君達は救助に専念してくれ」

「ん。分かってる」

 

 救出チームは雨柳達に、恵都とアリシア。

 それと砂狼(すなおおかみ)シロコという少女。

 

 雨柳は飛行可能な仲魔2体と共に護衛し、残りの三人は足の速さを活かして救助。

 シロガネに関しては此処でサマリカームが使える蘇生要員として待機。

 即席だがこの場ではこれがベターだろう。

 

「ラフィン・スカルの排除確認、僕は電撃、他の人は火炎頼む!」

 

 後方からの衝撃魔法の狙撃が幽鬼を排除。

 ほぼ同時にシロガネや他の火炎使いが魔法の重爆を放つ。

 

 バフの乗った弱点魔法は強烈極まりない。

 上はLV72から下はLV38まで、その大半が吹き飛んだ。

 残りの悪魔もまた、魔術師と剣士の女性コンビが躍りかかり駆逐していく。

 

「一気に行くぞ!」

 

 仲魔2体を先頭にして全力疾走。

 導師階梯の雨柳を筆頭に、全員が高位覚醒者。

 その速さはまさしく放たれた矢の如く。

 

 瞬く間に近づく要救助者達への距離。

 もう少し────と言う所で(シャドウ)がさした。

 

・敵の朱い目がギラリと輝き、俺を見据える。

・黒き威容に秘められた力は空恐ろしい。

・紛れもない強敵。それでもやらねばならない。

 

 黒い破壊神が煩わし気に見た。

 自分に挑みかかる黒いフードの狂人を。

 

・此処であいつを止められるのは俺しかいないのだから! 

 

 一人だけの世界で踊り続けるシャドウを。

 

\カカカッ/

超人シャドウLV73耐性:???? 

 

≪ピアシングⅢ≫

 

 カルケティーヤへ叩き込まれる万能の一撃。

 幸いにも今はカウンター状態ではないが、当然ながら破壊神も対応。

 

≪コロナカノン≫

 

≪メギド≫

 

「チィッアドラメレク!」

 

 メギドはあらぬ方に飛んでいったが、コロナカノンは直撃コース。

 故にアドラメレクが"カバー"したが、移動速度は落ちた。

 シャドウはしれっと回避している事に腹が立つ。

 

≪ストライクバック・バッシュ≫

 

 更に最悪な事にカルケティーヤは物理カウンター状態に移行。

 その上シャドウがトレインした(引き連れて来た)悪魔も何体か。

 そうなれば今後の展開は。

 

「────あいつは俺とスクルドで抑える! 

 そっちは救助を頼む!」

「分かった! 雨柳さんも気を付けて!」

「迅速に救助するぞ!」

 

 瞬間的に判断。兎に角あの狂人を止める。

 霧氷月影を抜き放ち、スクルドと共に進む。

 馬鹿げた喜劇は此処で終わらせる! 

 

「纏めていくわよ。≪大冷界≫」

 

 静かに怒るスクルドが≪大冷界≫を発動。

 強大な氷結の波動が耐性持ちをも凍えさせた。

 瓦礫の間に立つのは悪魔の氷像。

 

・はぁ、と白く凍えた息を吐き捨てる。

・無遠慮な横槍は何度経験しても哀しいものだ。

 

 だが、シャドウは凍える事なく、動いた。

 

・戦いはいつだって理不尽だ。

・されど挑まれたからにはやらねばならない。

・これ以上の邪魔をさせるわけにはいかないしな。

 

 盾にした悪魔の氷像の影により、雨柳達の視界から外れた瞬間に動く。

 低い姿勢で蜘蛛の如く捕らえようのない動きで。

 

「っ! サマナー!」

 

 狙うはスクルドではなく、雨柳。

 悪魔よりも召喚師を優先して狙う。

 戦闘での鉄則を狂人は知っていた。

 

≪ピアシングⅢ≫

 

 漆黒の十字剣が雨柳を穿ち────輝ける刃が返礼として宙を割く。

 

≪猛反撃≫

 

「ぐっ……!」

「──────」

 

 流す血は雨柳の方が多いか。

 しかしシャドウも確かに血を流した。

 

 流血は生の証であり、すなわち無敵に非ざる証。

 非現実的な狂人は確かにこの世の者であり、殺しうる。

 そう確信し雨柳が動き、シャドウも動いた。

 

 両者は同時に刃を煌かせる。

 

 至近距離で霧氷月影と十字剣が旋回。

 刹那鍔迫り合い、離れた瞬間に繰り出されるのは双方の連刃。

 

「此処で、死んでおけ!」

「やれやれ」

 

 導師と超人、人外の域に達した身体能力での、技を伴った斬撃。

 砕けた悪魔の氷片が瞬時に刻まれ、細雪になる高密度の刃。

 業物同士がぶつかり合う金属音が、乱雑な演奏の如く響き。

 

 刃が翻り、旋回し。

 フェイントからの頸を狙った一閃。

 首を傾けて躱した体勢からシャドウは手首をしならせて突き。

 黒い刃が雨柳の肩を抉る。

 

(この野郎一撃が速く、重い! 

 相当な能力値(ステータス)の高さ、前衛型の悪魔が混じっているのか?)

 

 一対一では恐らくシャドウの方に軍配が上がる。

 同じ高LVでも人間の雨柳とシャドウでは後者の方が力が強く速い。

 そのうえ回避能力では明確に上を行けれている。

 真っ向勝負で先に倒れるのは雨柳だろう。

 

「サマナーから離れなさい……!」

 

 だが雨柳は悪魔召喚師。

 単独の武力ではなく、悪魔と連携して戦う者。

 

≪慈愛の反撃≫*3

 

 雨柳の傷に呼応し、スクルドが槍を奮う。

 視界外からの反撃。さしものシャドウも直撃し弾き飛ばされた。

 

「助かったぜスクルド。

 何とかカルケティーヤも誘導できたようだな」

「ええ、大分距離は取れたけど」

 

 宝玉で回復しつつ、雨柳は右側の破壊神を見る。

 弾幕に耐え兼ね≪疾風陣≫に切り替えたが、近接組のDBに押されている。

 今回もまたじきに討伐に至るだろう。

 今も又、飛びあがったシュナイダーマンが回転斬りを決めた。

 

(それとなく誘導して距離を取ったのが効いたな。

 救助も成功。当初の目的は達成したが)

 

 雨柳の横にスクルドがふわりと降り立つ。

 何処か召喚師の血を拭いた気な彼女はそれでも前を向く。

 

「サマナー、あの男無駄にしぶといわね」

「ああ」

 

 吹き飛ばされたシャドウが立ち上がる。

 揺らめく影の様に何処か捉えどころがなく。

 

≪ハイ・リジェネレート≫

 

 雨柳とスクルドが負わせた傷がふさがりゆく。

 漫画好き(雨柳の知人)にもいるが、動きに連動して傷が治癒する体質。

 回避能力といい実に殺しにくく厄介極まりない。

 

(それにまだ奥の手がありそうだ)

 

 単体でこれ程の強さ。

 恐らくまだ隠している手がある。

 この破綻具合でまだ死んでないならそのはずだ。

 

(もう少しコイツを抑えておくか)

 

 こちらに近づこうとするDB達の声が聞こえる。

 もう少し時間を稼げれば、包囲し集中攻撃も出来そうだ。

 ならばアドラメレクを呼び戻して。

 

「────何だレイブンか。

 此処だとまだ生きていたのか」

「……はあ?」

 

 どうでもよさげなシャドウの声に思考が中断。

 

「退場タイミング逃がしているよアンタ。

 今更になって出てこられてもなあ……」

 

 フードの下から垣間見えるシャドウの表情は気だるげだ。

 例えるならソシャゲのピックアップで、既に持っているキャラがすり抜けて来た時の様な。

 見ている特撮で、何度も同じ再生怪人が出て来た時の様な。

 そんな興味なさげな顔だった。

 

(……コイツ過去周回からの奴か。

 どうせ敵だろうが、とっととくたばっていればいい物を)

 

 この狂い様で情報がなかった事から漂流者とは予想していたし、自分を知っている事には驚いたがそれだけだ。

 シャドウは、生きていてくれた子達(レイやロゼ)とは違う。

 過去の誰かが、自分が殺し損ねたならば此処でキッチリと殺しておくべきだ。

 

 増援と共に袋叩きにしてやる。

 其処まで考えた所で、湧き出て来る物があり。

 

「追加のトループだと?」

 

 夜を迎えた上野レルムに、何処からともなく湧き出すのは蛮刀を携えた地母神とその眷属達。

 

\カカカッ/ 

地母神無慈悲な女王カーリー*4LV70
 

 

\カカカッ/ 

鬼女異形のターラカ×15LV35
 

 

 これまでとは違うトループの悪魔。

 戦力自体は雨柳と仲魔ならば対処可能な程度。

 だが地母神の巨体と、鬼女の群れで視界が遮られたのがまずい。

 

・退屈なひと時が終わり新たな敵が戦場へ現れる。

・瓦礫と夜の闇に紛れ殺戮を始めるつもりだろう。

・しかし英雄はおらずとも、此処に俺がいたのが運の尽きだ。

 

 地母神の一撃を容易く躱し、距離を取ったシャドウは己の力を励起する。

 

・今この場で、俺が奴を止めて魅せる! 

 

 雨柳が止めていたシャドウの一人芝居、それがまた再開しようとしていた。

 

「……させないわ」

「ぐっ?」

 

切なさ乱れ撃ち*5銃撃スキルランダムな敵に1~3回銃撃を行う。中確率で魔封を付与
 

 

 それよりも速く、増援のDBがシャドウを銃撃。

 一発を除いて躱されたが、動きを乱せた。

 

「────いい加減に死ねえっ!」

 

≪天罰必中≫

 

 増援のDBと共に走り寄ってきた少女、ブラックフィエンドのリーダーがシャドウへ攻撃。

 怒りと共に放たれたエネルギー弾は側面からシャドウに直撃。

 先程のカルケティーヤ戦を再現するかの様に吹き飛ばす。

 

≪ネオ・ドグマ≫

 

 更に放たれる力場が、地母神の体表で炸裂。

 麻の如くみだれる敵を通り抜け少女達はシャドウを追う。

 

「っ!? あ、う……!

 銃撃弱点にしたから後はよろしく! 

 私達はあのクズを殺してくる!」

 

 怒りのせいか、声を詰まらせ震わせた少女。

 彼女の部下や他のDBの大半はシャドウを追いかけていく。

 

「俺達はカーリー狙うぜ。

 別の素材ドロップするかもしれないし」

「ああ、銃弾もたっぷりあるしな」

「うーん頼もしい蛮族具合だ」

 

 雨柳の元へ来たのは数人のDB。

 素材狙いのメンバー数人と、シャドウを銃撃した女性DB。

 

「……援護します。手早く片付けましょう」

「ああそうだな」

 

 慣れた手つきでライフルを構える女性と同様に、雨柳も銃を構える。

 アドラメレクも戻り仲魔2体と万全の体勢。

 雄叫びを上げる地母神と鬼女を見据え迎え撃つ。

 

 取り巻きの鬼女が排除され、銃撃弱点を付与された地母神が氷結弱点を抜かれ集中攻撃され。

 高い体力にも拘らず倒されるまでそう時間はかからなかった。

 

 

 


 

 

 

 夜の上野レルム、激戦で所々が破壊された街。

 既に投光器や雷電属の悪魔が持ち込まれ、要救助者の捜索や瓦礫の撤去が行われている。

 

 戦いはすでに終わった。上野品川の計四か所でDB達(人類悪)は、7度に渡り<神>を撃破。

 同時に沸いた悪魔トループもことごとくが駆除されて彼らの経験値に転生した。

 また彼らの多くが知らない事だが、裏で行われた<皓白の巫女>の暗殺も失敗。

 総じて帝都での戦いは世界を維持する側の勝利といっていい。

 

 尤も一部の人間にはあるが。

 

「スクルド、さっきのアレはもう大丈夫か?」

「ええ多分だけど。

 何とかなったみたい。

 あの時の感覚はもうないわ」

 

 レイドの後半にスクルドが感じた不吉な感覚。

 龍脈の流れの一つが途絶え、世界が裂け出すまるで終末(ラグナロク)の始まりの如き不穏さ。

 少しの間で収まったようだが、背筋に氷柱が刺さった様な感覚は忘れがたい。

 

(私の知らない何かが、何処かで起こっていた。

 ……終わった今では知り様がない事。

 何とかなった事を喜ぶしかないわね)

 

 それでも一先ず事態は何とかなった。

 何故かは知らないがそう確信がある。

 

「後始末が済んだらシロガネを拾って帰りましょうサマナー」

「そうだなぁ……流石に俺も疲れた。

 レイドもそうだが何だったんだろうなアレ」

「分からない……考えたらこっちの頭もおかしくなりそう」

 

 シャドウは結局仕留めきれず、ブラックフィエンドの少女達が追いかけていった。

 どうも雨柳の事を知っていたようだが、何分あの有様だ。

 何処かで対峙した時があったのだろう。

 どうでもいいが速く消えて欲しい。

 

(あちらも片が付いたならいいんだが)

 

 佐々木達の戦いも終わり、風の保護が確認されればいい。

 そう思いながらシロガネのいる方へ向かおうとして、脚が止まった。

 

 こちらへまっすぐ歩み寄ってくるのは、先ほど雨柳を援護した女性DB。

 やや足早にこちらへ歩み寄る彼女の年齢は20手前程か。

 知り合いの例にもれず、その容姿は美しい。

 

 黒い衣装と対象的な白い肌に淡い色の髪。

 流麗な造形の顔に、愁いを帯びた目。

 総じて令嬢を思わせる、静謐な気品を纏う女性であった。

 

 そんな彼女は雨柳の眼で足を止めた。

 何処か緊張した面持ちで。

 

「さっきはの援護は助かったよありがとう」

「大したことではございません。

 ただ……一つだけ良いでしょうか?」

 

 意を決した女性が言葉を紡ぐ。

 

「あなた様のお名前を……聞かせていただけないでしょうか」

「俺は雨柳。雨柳巧だ。

 多少の伝手はあるがただのデビルバス」

 

 其処まで言った所で雨柳は言葉を止める。

 

 なぜならば女性が抱き着き、否縋り付いたから。

 

「やはり、あなたは雨柳様……! 

 この世界で、生きていられたのですね」

「──────え?」

「うそぉ」

 

 思いがけない言葉。

 泣き笑いの様な彼女の言葉に、雨柳だけでなくスクルドも硬直した。

 

 雨柳とて予測と覚悟はしていた。

 数え切れぬほどの過去周回から漂着した幾多の漂流者達。

 その中には自分の事を知っている者もいるかもしれないと。

 何せレイやロゼという前例があるのだ。またあってもおかしくはない。

 

 そうではあるが。あるのだが。

 

「アイリス・ビショップです。

 あなたとまたお会いしとうございました……!」

 

\カカカッ/ 

天使人間アイリス・ビショップLV62(55+7)
 

 

(……何をした過去の俺!! 

 今度は何をやりやがった!! 

 何でこんな子に様付で呼ばれてんだよ!!!)

 

 実際に直面すると、驚くほかなかった。

 

(本当にどういう事だよ!!!)

 

 

 


 

 

 

 上野レルムの外縁近く、戦火を逃れた区域。

 この日に備えて密かに買収していたビルの中。

 装備を外した少女はソファへどっかりと座り込む。

 

「シャドウ死ね。頼むから一秒でも早く死ね。

私が殺したいけど、そうじゃなくても死ね」

 

 疲労の色が濃い少女は呪詛を吐く。

 彼女率いるブラックフィエンドは実に半日近くシャドウを追っていた。

 出没しては周囲に被害を与える狂人の追跡。

 途中幾度もトラブルが起き、それでいて殺し切れない。

 多大なストレスを感じるのも無理はなかった。

 

「戻って来たか。随分と疲れたようだな」

「まあね。あのクズなんで生きているのかしら。

 で、そっちはどう」

「上々だ。上野の火事場泥棒は始末しておいた」

 

 少女へ話しかけるのは20代後半ほどに見える男。

 何処か黒装束に、黒い近代的なバイザー。

 腰に差す刀は見るからに業物。

 

「カジュアル中心で高くてもLV50。

 この程度なら俺も加勢した方が良かったか?」

「いいわよ。そういう細かい案件も見逃さない方が印象いいし」

 

 男も少女と同じブラックフィエンドの構成員。

 今回はレイドの裏で動き、組織の迅速性をアピールしていた。

 

「正義の傭兵集団としてはね。

 そうでしょ尾之辻?」

「違いないな」

 

\カカカッ/ 

デビルバスター尾野辻蘭堂(おのつじ らんどう)LV66? 

 

 尾之辻と呼ばれた男は頷き、包装を取り出す。

 包装の中身は羊羹。

 黒紫色の艶やかな長方形の和菓子。

 尾之辻は羊羹を良く味わい、咀嚼し滋養とする。

 

「好きね羊羹」

「好物だからな」

 

 少女と尾之辻の会話はある程度気安い。

 ブラックフィエンド──この周回におけるガイア再生機構のカバーたる組織。

 ガイア再生機構へのレジスタンスの名を援用した組織は予想ほどの戦果はなかった。

 だが確かに名を売り、今後この世界で活動していく事になる。

 組織の勢力拡大、幾多の世界で行ってきたのと同じ様に。

 

 羊羹を咀嚼する尾之辻をよそに、ふうと少女は重い息を吐く。

 シャドウ追跡の疲れもだが、その最中に予期せぬ人を見たからだ。

 

(この世界のレイブンは、まだ生きているのね。

 前は……ガイアの幹部と相打ちになってたっけ)

 

 一員たる少女は過去を捨てきれたとは言い難い。

 

 望むと望まざると、人は過去を捨てきれない。

 人から外れ切らない限りそういうものだ。

 それはキリギリスのレイブンも、ブラックフィエンドの少女も変わりない。

 

(それはそうとしてシャドウは死ね)

 

 どうであろうと少女の狂人への殺意は高かった。

 

 

 


 

 

 

◎おまけ:46話時点の雨柳と仲魔達のデータ

 

 ほびーさんや他の三次創作者の皆様に需要があるかもしれないので現在の雨柳と仲魔達のデータを作成してみました。

 もしよかったらお使いください。

 

雨柳データ

悪魔召喚師雨柳巧LV78 物理・神経・魔力に強い 破魔・呪殺無効 

 

【所持スキル】

 ●乱入剣

 ●十文字斬り

 ●ヤマオロシ 

 ●一刀両断

 ●磁霊金剛壊(モータルジハード)

 ●刃・壊・塵(虚空斬波) 

 ●バイトザブレット

 ●トリプルファイア

【自動スキル】

 ●抜刀術

 ●食いしばり(ライドウ仕様)

 

【刀自動効果】

 ●大いなる吸魔

 ●バルムンク

 前者は霧氷月影装備時、後者はバルムンク装備時に発動

 

 刀装備:霧氷月影orバルムンク*6 

 銃装備:武器COMP六六式召喚拳銃

 

 

 

 

仲魔データ

 

◆神造魔人シロガネLV70 轟雷・改やマハジオダインさらに電撃ガードキルを使う他、敵の攻撃ダメージを30%防ぐ神奈備ノ守(真Ⅴ)やサマリカームでの支援も可能な後衛。

 ◆軍神スクルドLV74 大冷界の他デスサイズカット(P5)⇒亡者の嘆きでの即死コンボもあるオールラウンド型。

 ◆魔神アドラメレクLV75 D2メギドフレイム相当のメレク・シェメシュの他、混沌の海や虚空爪激も使うガチガチのアタッカー。

 ◆神樹ククノチ LV59 テトラカーンや衝撃魔法で雨柳を支援する後衛型。

 

 その他には破魔や状態異常担当のアヌビスや普段は事務所で働いている妖精ゲフィオン、捜査担当のアガシオンが仲魔に居たりします。

 基本的には悪魔人間に近い扱いのシロガネの他、管(スクルド・ククノチ他)とGUMP(アドラメレク・アヌビス)からそれぞれ1体で計3体召喚。

 合体技の真剣系についてはシロガネが雷電真剣、アドラメレクが火炎真剣、ククノチが疾風真剣のスキルを所持。

 

 仲魔に関しては今後もサブを中心に変更していきたいです。

 回復役やタンクも欲しいですしねー。

*1
ソウルハッカーズだとLV56

*2
ジントニック123様『真・女神転生オタクくんサマナー外伝~エピソードオブドリフターズ~』19話より

*3
真ⅣF版 味方が物理・銃撃属性で攻撃された時反撃する

*4
女神転生imagine において夜間のウエノに出現する悪魔

*5
DSJ出展 妖虫ミルメコレオのスキル

*6
いずれもアバドン王出展




やっぱり雨柳巧は……過去周回でもレイブンしてたんだああああ!!という事でレイド後半戦と新キャラ登場回でした。
それにしてもシャドウは怖いですね。何考えているのか全然わからないから。



ガイア再生機構関係の情報も色々出ているので次回も近いうちに投稿したいと思います。
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