真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス- 作:ローグ5
しかし三次創作のキャラが創作元に登場するだけならともかく、JCの雌顔に脳を破壊されまくっているのって凄くない?
後今回と次回は若干胸糞要素がある性描写があるのでご注意ください。
中部地方の某県にある森林。
背の高い木々が立ち並ぶその森林地帯の雰囲気は素人目にも不穏である。
この森の一帯は危険極まりない異界となっていた。
(このまま現状維持……といきたいところですが、異界の膨張は続いている故そううまくいく訳もない。はてさてどうした物でしょうか)
異界に飲み込まれた森林の中、簡易的にこしらえられた小さな社にて悪魔は小さくため息をついた。
悪魔の来歴は複雑である。
かつて明治維新の頃よりある
長らく穏やかな日々が続いていたが、その後第二次世界大戦の敗戦に乗じてメシア教により異界は破壊され悪魔は封印される事で平穏は終わりを告げた。
最もこれはメシア教の目からヤタガラスの血族や重要な霊地を隠す為の囮的な意味合いが強く、その点については悪魔も納得済みである。
転機が来たのはほんの数か月前の事。
世界的な霊地活性化及び封印の経年劣化により解き放たれた悪魔は、その存在を密かに把握していた地元ヤタガラスの血族に迎えられた。
そうして現在の世界の状況を教えられたのである。
(なんともまあ世の中は変わった物だ。
表でも裏でもあれだけ激しく争っていた米国とこの国が手を取り合うとは……)
かつて戦争相手だった米国とは同盟を結び経済軍事共に親密な関係になるというだけでなく、裏でも人材・情報を交換し治安維持に協力している。
5年ほど前の南極での大騒動でも日米出身の隊員が中心人物となったとか。
そのことについては驚きはしても不快とは思わない。
思うところはある物の今ではこの国の民は老若男女問わず米国の食や文化を楽しみ、米国の者もまた同様に日本のそれらを楽しんでいるという。
そんな時代にこの様な置物が異を唱えても鬱陶しがられるだけだろうし、協力して平和で豊かな国を作って欲しい。
だがメシア教の羽根つき共はくたばれ。騙されたり洗脳された人間はいざ知らず天使共は悉く死ぬべし。
話を戻そう。
そうして悪魔なりに地元ヤタガラスに協力していたところ事件が起きた。
この森林の中、かつて奇特な金持ちが建てたという廃屋を中心に異界が発生したのである。
異界は世界的なGP上昇の影響かこの地方でそうそうない強力な物である。
出現悪魔の平均レベルは30~40前半、異界の主に至っては推定50程。
ここら一帯のヤタガラスの血族は一番強い者で36程、それを超える者の援軍はさらに重要な霊地の抑えや敵対組織との戦闘で抜ける事が出来ない。
何とか仮設の社を拠点にして結界を敷くことは出来た物の異界を消滅させねば破局が訪れる。
かといって貴重な人員を高確率で死ぬこの異界に投入することはできない。
まさしくにっちもさっちもいかない状況であった。
(とは言っても帝都のヤタガラスは派遣できる余裕はなし、その上に京都ヤタガラスの動きがどうも鈍いとの事。金で雇える召喚師も多くは休業している。
強く信頼できる者は限られるのは世の常とはいえ、これは良くない)
最悪の場合自分が同伴したうえで決死隊を編成する他ないか、そう思考が向いたところでかすかに近づく気配に気づき身構えるが、すぐに警戒を弱める。
社に近づいてきたのは二人の人間、その内一人は地元ヤタガラスの少女であったからだ。
「……こちらに」
「ああ、案内ありがとうな」
黒い装束で口元まで隠した少女は寡黙である。
かつて一族の中興の祖と言われた"
悪魔に対しても頭を下げ見慣れぬ男を迎えるその様は丁寧極まりなかった。
少女が連れてきた見慣れる男はおよそ30歳程か。
長身をロングコートで包んだ男の顔立ちは精悍であり、その面持ちからは歴戦の気配を漂わせていた。
「ふむ……中々の霊格の持ち主。帝都か他所かのヤタガラスの召喚師ですか? ああ敬語は結構ですよ。
悪魔召喚師がみだりに悪魔に対して下手に出るわけにはいかないでしょうし」
「なら普段通りで行かせてもらうわ。
俺は
使い込まれ、磨き直された刀の如き男だ。
そう悪魔は雨柳を見定める。
身体か精神かなにがしかに支障をきたし一度錆びついた後、再び立ち上がって錆を落とし、以前にもまして強靭になったと見えた。
人を刀に例えるのは些か不適当かもしれないがこの男はそのような経緯を経て再起したには違いないはずだ。
「長い事醜態をさらしていたが、今はキリギリスってところに所属して戦っている。
そんな木っ端な悪魔召喚師だよ」
「キリギリス……以前聞きましたね。ヤタガラスと共同して戦っている組織で、確かヤタガラスと密接な悪魔召喚師が立ち上げたのでしたか?」
「……密接。うん密接だよな。物理的に、も……ううっ」
「……何か事情がありそうですがまあいいでしょう。
あなたはこの異界を鎮めに来た、そう考えてよいのですか?」
頭を押さえる雨柳の態度は疑問であるが、それは些末な事であるからして単刀直入に問う。
そうすると当然のごとく肯定された。
「非常に有難い話ですが一つ聞かせてください。
あなたの霊格からしてもこの異界は危険には違いなく、報酬もそう多いわけではない。
にも拘らず何故、この異界に挑むのですか? 元ヤタガラスの使命感ですか?」
悪魔業界に関わる人間はよく死ぬ。
人間はいかに強くなろうと基本的に悪魔より弱く、取り返しのつかない死に容易に落ちうる。
それ故に普通は安全を第一に動くのはルーキーからベテランまでの基本である。
にも拘らず雨柳は此処の危険な異界に挑もうというのだ。
「……それもあるかもしれないな。正直あの頃に後悔がないとは言えねし。
でもそれ以上にさ」
雨柳はぽふ、と傍らの少女の頭に優しく手を置く。
まんざらではなさそうなまだ
「こんな子を危険な目に合わせる訳にはいかないでしょうが。
子供の前に危険に突っ込むのが大人の役目ってもんだろ」
「成程成程、雨柳巧よ。あなたはどうやら最低限、信頼に足る者なようだ」
長い事眠っていた血が久しぶりに滾るのを感じ悪魔はククと笑う。
完璧とは程遠くとも、魂の奥深くに揺ぎ無い物があり殉じる心意気。
嗚呼、背格好も顔つきも全く異なるが、雨柳巧は彼とどこか似ている。
かつて自分を使役していた葛葉四天王の一角たる悪魔召喚師、優れた戦士でもあり猛将の異名をとった十六代目葛葉ゲイリンと。
「この異界を鎮めた暁には、私の力を貴方に貸しましょう。
我が名は──」
悪魔は誇りをもって宣言する。
蓮の花に腰掛けた、若草色の肌をした高貴な顔立ちの悪魔はじっと雨柳の目を見据えて宣言する。
「神樹ククノチ。日の本が国にある幾千万の木々を司る神である」
この日ククノチの課した条件は見事に果たされる事となる。
雨柳は同道した仲間と共に異界を鎮めこの地に対してつかの間の平和をもたらし、ついでに仲魔にした異界の悪魔をこの土地の鎮護に置いたうえでククノチを仲魔に加え帝都へと舞い戻っていった。
関東の郊外にある湖を有したそれなりの規模の異界。
現世に影響を与えない安定性を重視した構造の異界は、その製法に違わず平穏な空間だ。
静謐な内部には悪魔の手による物か真新しい建物が幾つも建っている。
この異界は今となってはヤタガラスの係累からも外れた退魔師の血族、すなわち雨柳の家系が継承してきた物であり、本来なら世界の終焉に備えた避難所の予定であった。
しかし、この異界は現在本来の用途とは別の使い方をされていた。
雨柳がある少女との出会いをきっかけに
時たまごく限られたメンバーではあるがキリギリスの構成員が立ち寄ることもあり、以前に比べれば雰囲気がやや引き締まったように感じられた。
そんな異界にある建物の一棟、武器や薬に情報収集用の端末が置かれた部屋の中。
雨柳は刀の手入れを行っていた。
分解した抜き身の刀身に対して、打ち粉を塗布した後拭い、油を引いて整える。
その後分解した刀を再び組みなおし目くぎを刺し直した所で幾つかの角度から確認する。
この静かな手順は単に己の武器を整備するというだけではない。
度重なる戦いでともすれば歪みがちな心を見つめなおし平常に保つという目的もある。
丁度紙の本を読む事を心のチューニングに使うような物だろうか。
(よし、まだまだイケる感じだな。尤も俺はともかくこの刀に心配はいらねえだろうけど)
雨柳は此処最近使用している刀を見る。
飾り気のない黒い柄にはめ込まれた鍔は黒い地金に銀色の五芒星が描かれ、下の二角を挟むように小柄用の穴が開けられている。
その先に延びる緩やかに曲線を描く薄い刀身は折れずに曲がる強靭さを見る者に伝え、刃の部分は微かに紫色の光を帯びていた人の世にあらざる美しさ。
この刀の銘を『備前長船』という。
ただし一般の世に知られる備前長船と違い異界にて出土した対悪魔用の刀であり、それにさらに悪魔由来の呪術的強化を加えた退魔刀である。
金はかかったがその分性能は一級品。悪魔を容易く切り裂くこの刀は実に良い物だと雨柳は感じている。
「はあ……しっかしまさかレベルがヤタガラスの時よりも良くなるなんてなぁ。
十年前とはえらい違いだよ」
雨柳のヤタガラス時代の最高レベルは54に対して現在は58。
30代を迎え若い頃よりもレベルが上がりにくくなったにもかかわらずこの結果は驚きに尽きる。
最もそれはここ最近の敵味方のレベルインフレによるのが大きいのだが。
この十年間の間に悪魔関連の大事件が頻発し、特にここ半年近くの悪魔の強大さはそれはそれは凄い事になっている。
何せ寂れた地方都市にレベル70のクソ野郎が出て来るのなんて序の口、敵のシャドウ使いを倒したと思えば大天使の本体が現れたり、ヒーロー気取ったレベル99のイキリ野郎がヤタガラスに襲撃を掛けてきた事すらあるのだ。
対する味方、ヤタガラス及びキリギリスもレベル50越えはそう多くないが凄い奴になるとレベル90越えのペルソナ使いに80代の悪魔召喚師、極端な例だと齢13にしてレベルならばそれに近い状態に到達した者すらいる。
(ただそれは、俺ら大人が本来やるべき事を子供に押し付けているってことなんだよな。
ああクソ替われるもんなら替わってやりてえ)
件の少女、強大な悪魔の力を宿したあの黄金色の髪をした美しい少女について、詳しい事情は所詮外様の雨柳は知らぬ。
ただキリギリス参加以前にもあの少女とは一度会ったことがある。
今から8、9年は前の事になるか。
フリーの悪魔召喚師としての活動がようやく軌道に乗り始めた頃少女の実家、ヤタガラスを構成する血族でも御三家と呼ばれるかなりの名家を訪ねたことがある。
報告に来た木っ端なフリーにわざわざ応対してくれた当主に謝辞を述べ、退出する際に通った日本庭園の中、たまたま一人で遊んでいた少女と目が合ったのだ。
まだ小学生にもならない年齢の少女はスケッチブックに何かを書き連ねていたがこちらに気づくとすっくと立ちあがり、きっちりと頭を下げてお仕事ご苦労様でしたと雨柳をねぎらってくれた。
生来の自由さと名家の生まれらしい気品を持ち合わせた無垢な少女の可愛らしい笑顔はずっと印象に残っていた。
その時雨柳は大人らしく対応できていただろうか?
憶えていないが多分そうではないだろう。
何せ当時の雨柳は己の罪科を直視しては情けなくのたうち回る男だったのだ。
子供の無垢な笑顔等己の脆弱な魂を蝕む猛毒でしかない。
思えば長い事無為に過ごしてきた。
あの日以来続く己の過ちへの慙愧は今も絶えない。
だけど今必要なのは──―
(悪魔やクソ野郎と戦って、一人でも多く守る。それだけだよな
水神ちゃんの言う通り自分なりにやっていくとするかね)
無論その中には彼の大切な女性達を始めとして、共に戦う仲間達──―特に幼い少女達も含まれている。
色々な波乱があったが、このロートルの振るう刀が人の助けになればそれでいい。
微かに金属が触れ合う音を立てて備前長船の刀身を鞘にしまい込み立ち上がる。
時間も空いているしキリギリス掲示板でも確認するかねと思い立ったところで、ドアがノックされる音が響く。
「巧さん入りますよー」
「どうぞ御影さん……その感じからすると依頼か」
ドアを開け入ってきたのは車椅子の女性だ。
雨柳より幾分か年下の彼女はこの異界に住む彼の昔馴染みであり、優れた電子工学技術を持ったハッカーでもある。
雨柳が復帰してからは彼の助手として情報収集をこなしてくれているのだ。
御影の顔つきは普段のおっとりとした面持ちからすると幾分険しい。
長年月日を共に過ごした彼女がこういう顔をするという事は、よからぬ情報が入ったのだろう。
「ええ、人探しの依頼が来ました。私の以前の職場での先輩の娘さん──―茅野安那っていう子で私もあった事があるんですけど、その子を探して欲しいって」
「……居なくなったのは何日前だ」
「二日前だとか。夕方に学校から帰ってこなくて、それで警察に連絡したけど見つからなくて
先ほど偶然連絡を取った時に私も知ったんです」
不吉な予想に御影は表情を曇らせる。
ここ最近の未成年者の行方不明事件はそれこそ異常なほどに多い。
それらは単純に悪魔に襲われ遺体も残らなかったケースから異界に籠る闇の人間に目を付けられたケース等原因はさまざまであるがいずれも悲惨その物。
今回の場合安那に何が起きたかは分からないが悲惨な事になっている可能性は高い。
「分かった。ちょうどそろそろここに水神ちゃんが来るからそしたら行ってくる。
……最悪の事態が起きている可能性もある。が、まだあきらめるには早すぎるぜ御影さん」
知人に起きた悲劇に顔を曇らせる御影。
そんな顔は見たくねえと昔馴染みの女性に目線を合わせてハッキリと宣言する。
「誰が何のためにやったのかまだわかってねえし、さ。
その子を無事なまま助けられる可能性は、希望はまだ残っている。俺や他の奴らがうまくやればな。
そういうわけで俺は行ってくるよ。希望はあるから」
「心配かけてすみませんね巧さん……無事に帰ってきてくださいよ。私が御飯作って待ってますから」
「いやそれは、あかりあたりに、なんでもありませんハイ」
やや締まらない結果となってしまったが雨柳は装備をとって立ち上がる。
雨柳が所属するキリギリスは発起人である一人の自称ダークサマナーを中心に、幾度なく闇に囚われた人間を魔手から救い上げてきた。
この間とて東京緑化会に攫われた魔女達を手遅れになる前に救ったのだ。
雨柳自身も己の責任と能力の範囲で、出来る事をするだけだ。
「
ざっと調べたところ私生活には問題はない。やはりクソ野郎に偶然目を付けられて攫われた可能性が強いか」
都内の人通りの少ない道を歩きながら雨柳は呟いた。
この辺りは安那が母と住んでいるマンションから近い道路だ。
セオリー通り車での拉致を考えた事から、幾つか自分が拉致る側としてよさそうなポイントを当たってみたがどれも空振りだ。
と、なると他の可能性を当たってみる必要があるか。
(あの子は私の宝物なんです。お願いです。どうかあの子を助けてください……!)
御影の紹介の元、先ほど訪れた安那の自宅。
目に隈が出来た憔悴した表情で涙ながらに呟いた言葉。
先程会った安那の母の嘆きが思い起こされる。
親子仲はきっと良いのだろう。
安那と母は母子家庭の分お互いの時間が合わない事も多いとの事だが、それでも二人で出かけた時の写真が幾つもあった。
口ぶりからわかる娘への愛情の強さ。
それは雨柳という男を奮い立たせるには充分であった。
(知人の知人でしかないおっさんを娘の部屋に入らせるくらいだ。
相当に思い詰めてんな……だが、お陰で色々と掴めた)
「サマナー、サマナー! あったよ安那って子の痕跡!」
「おお、でかしたぜアガシオン。痕跡消えたのはどのあたりだ」
雨柳は同時並行で飛ばしていたアガシオンの報告にすっと目を細める。
男の手には安那の部屋にあった手がかりとなる護符がある。
それはBIND・STONE・CLOZEの状態異常を防ぐ効果を持った物であった。
この護符は悪魔業界で使われる代物であるが、これが安那の机の中に複数おいてあった。
悪魔業界の品は一般人からすると予想外の効果もしくは危害をもたらす可能性があり、厳重に流通が管理されている。
そんな物を複数所持しているという事は安那は多少なりとも悪魔業界に関わっている。
(アンナちゃんなら知ってる。えーっと私達と半年、いや七か月前異界何個か潰したわ。
火炎系魔法の他にテトラジャ、スクカジャ使えてすごい助かったなー)
彼女について知っている者がいないかと、キリギリスの伝手を辿てみると案の定アタリだ。
フリーのデビルバスターの中でも高い探索能力と美貌で有名な<魔導針>とその補助者の少女が覚えていた。
安那の当時のレベルは17……といっても今キリギリスにいる少女達と違ってそう本腰を入れてではなく、自分の生活区域周辺の悪魔を倒して平和を守るという面が強かったようだ。
またその時魔導針から最近の悪魔業界の危険さを聞いて用心して行動しており、何度か交わしたメールによると最近は悪魔退治も控えていたらしい。
そんな事から周辺に異界がない事を確認しつつ同時並行でアガシオンに安那のMagといった痕跡を調べさせていた。
雨柳の使役するアガシオンは旧い悪魔分類だと雷電属と分類されていた悪魔に違わず"現場検証"を行い事件の痕跡を調べることができる。
特にこの個体はヤタガラスが受け継いできたノウハウにより鍛えられ優れた調査能力を持っており、十年以上前から調査においては雨柳が最も信頼する仲魔だった。
「この短時間できっちりその子が消えた所まで分かったボクって優秀じゃない? 凄くない?」
「いやお前の調査能力はほんと助かってるわ。ごめんなー最近即カチコミの仕事ばっかでなー
中々お前呼び出す機会なかったからなー」
「まあ優秀で寛大なボクはモンブラン買ってくれるなら許すよ。
で、消えた場所なんだけど、そのものズバリここだね」
アガシオンが小さな指で指し示すは狭い通路だ。
そこは元から狭いうえに、車止めが設置された歩行者専用通路になっている。
車という人間を容易に輸送できる手段が使えない、拉致する側からするとやりにくい場所といっていい。
歩道で攻撃を加えて昏倒させてから車道に停めた車に運び込んだにしても何らかの痕跡が残るはずだが、安那のMag以外の痕跡もない。
「痕跡が完全に途絶えてるが、もし隠すならここまでの痕跡も消しているはず。
つう事はアガシオンの読み通りここが拉致現場で間違いない」
文字通り道半ばで消えた少女。
もしこれが推理小説の話ならばトリックを解き明かすのに名探偵が必要となるが、あいにくこの世界は悪魔や魔法という
長年悪魔業界で生きてきた雨柳には既に拉致の方法が分かっていた。
「下手人の野郎はカード化の魔法を使いやがったな」
希少な魔法ではあるがシャッフ、シャッフルといった対象にCARD化の状態異常を付与し、カードに封じ込める魔法が存在する。
この魔法ならば初手で相手をカード化してそのまま懐に入れて持ち去るということも可能。
安那の持っていた護符でも防げない類の状態異常の為、初手で突然使われれば何も抵抗できないでそのまま拉致られるという事も充分に考えられる。
「使えるのは確か悪魔なら個体にもよるが一部の堕天使……いや、状況を考えると異能者の可能性が高いか」
「だろうねえ。痕跡は二日も経てば無くなってるだろうし地道に聞き込みしてく?」
「時間はかかるがそれが確実……だが必要なくなったようだぞ」
雨柳が指し示すのは木に隠れてこちらを覗っていたジャックフロスト。
コンビニの袋を提げたその姿からは敵意が感じられない。
「ヒホッ!? オ、オイラ悪い悪魔じゃないホー! アイス食べ歩きが好きな善良なジャックフロストだホー!」
「ええ~? 本当でござるか~?」
「本当だホー! 小銭やMagだってニンゲンのお手伝いして合法的に手に入れてるホ!」
曰くこのジャックフロストはたまに知人のサマナーを手伝ってMagや小銭を得ており、後は気ままに平和に暮らしているらしい。
観察してみても人を襲いなれた悪魔特有の感じはしない。
まあ話を聞くだけ聞いてみてもいいだろう。
「で、俺になんか用か? もし仲魔になりたいなら俺の空きはないが連れがレベル的にいいから紹介するぞ」
「いや仲魔はいいホ。オイラはノマドなんだホ。
そうじゃなくてその様子だと怪しい奴を探しているんだホ? ならオイラ二日前に見たホ!」
二日前、丁度安那の消えた日付と同じである。
「二日前の、いつ頃だ?」
「えーと夕方……あの日は夕日を見ながらお芋アイスを食べて、それから公園を出たから……大体5時くらいだホ。
これ以上は千円で話すホ」
「オーケー。2千円やるからその怪しい奴について知っている事を全部話してくれ」
日付だけでなく犯行の予想時刻とも一致している。
まだ完全に信用できるとは言えないが一先話を聞いても良いだろう。
「ありがとうだホー! これでダッツが買えるホ! 二日前だけどその時見たのは、高そーなスーツ着た男だったホ!
おじさん程じゃないにしてもレベルは見た感じ結構高そうで、なんとなくだけどレベル30はありそうだったホ」
「30っていうのは穏やかじゃねえな。それと訂正しなさい。令和時代においては31歳はおじさんじゃなくて青年なの」
「……お金貰ったしそういう事にしておくホ。
で、何が変だったかというと異様に機嫌が良かったんだホ」
ジャックフロスト曰くスーツの男はそれこそステッキを持ってたら振り回していただろうという程の上機嫌。
ポケットを片手で撫でまわしながら鼻歌交じりに歩いてこれまた高そうな車に乗って去ったのだという。
「ポケットをねえ……なあお前、人の顔分かるか」
「んーこれでも人間界来て長いしある程度は、ホ」
警戒を絶やさないまま雨柳は端末を操作してファイルを開く。
其処へまとめられているのはここ最近の失踪事件においてマークされた者達の顔写真。
彼が以前から交流のある警察内部の協力者から寄こされた物を御影が分かり易くまとめた物だ。
どいつこいつも一癖二癖もある犯罪者顔をしてやがり、いやな物を御影さんに見せてしまったなと反省の念を抱く。
「オイラが見た奴は……あ、多分コイツだホ。スーツもこんな感じの色でネクタイも同じ。
コイツに違いないホ!」
ジャックフロストが指さしたのはショッピングモール内で女子中学生が失踪した事件で目撃された男だ。
名前は
友人や仕事での交流関係においてもすごぶる評判が良い男だ。
が、それでも失踪事件の初動捜査に当たった刑事はこの男を容疑者としてマークせよと部下に指示したのだという。
「大手柄だぜジャックフロスト! こいつはかなり臭い。良く俺に知らせてくれたな」
「悪い奴が見つかってよかったホー。最近マッポーめいてるから早くみんなが食べ歩きできるような世の中になって欲しいホー」
「……そうだな。もしそうなったら2千と言わず1万ぐらいのアイスを奢ってやるよ。
皆で食おうぜうまい奴」
楽しみだホーと歓声を上げるジャックフロストの姿に雨柳は少し笑う。
己の行動をきっかけに人慣れした愛嬌のある悪魔が、刑事の直感が、娘を想う母の想いが僅かな希望を手繰り寄せていく。
己のやっていることが形を成していくのが嬉しかったのだ。
それから30分後、キリギリスの他メンバーから更なる情報がもたらされた。
四葉は北海道にあり、もうすでに滅びた現代のソドムとゴモラたる合法都市に、商売ついでに頻繁に通っていたようだ。
北海道で活動していたメンバーが締め上げた業者から、都市へ強硬偵察に入った者の証言から、そしてさらにつながりのあるハッカーが検証した映像から証拠が取れた。
この時点でこいつは99%黒である。
今回の件に関わっていないとも邪悪を秘めた人でなしのケダモノであることは確実。
早急に片を付けなければいけない相手に違いなかった。
「ん、んんっ……うあ」
暗い部屋の中で茅野安那は目を覚ました。
視界が徐々に焦点を合わせていくと共に不安げに周囲を見回す。
生臭い匂いが何処か漂うが、元が分からない程には闇が濃い。
「ここは、どこだろ……? あの人なんか変だなと思ったら……ああもう、もう少し警戒しておけば────うわっ!」
安那は衣服をはぎ取られて全裸の状態にされていた。
自身のあられもない姿に少女が驚くと共に金属音が鳴る。
安那の両腕を纏めて拘束する鎖が身じろぎによってこすれ合う事で鳴った音だ。
「~~~~っ!」
羞恥と恐怖で安那は震える。
身動き取れない状態で一糸まとわぬ姿にされた状況。
ただでさえ多感な年頃の少女にとって過酷にすぎる状況の上に、自分を拉致した男の目的を察してしまう。
察せてしまう。
「くっくそぉ……何でこんな……!」
「おや、思ったより気づくのが早かったね。
だがその言葉使いは感心しないな。もっと少女らしく悲鳴を上げていただきたい」
薄嫌い部屋の中に響く声に安那は驚き顔を向ける。
彼女から見て右側にある高価そうな椅子に座るのは30後半程の年齢の男だ。
異常な状況を除けばスーツ姿に彫りの深い顔立ちは紳士のように見えるが、ドブのように濁った眼が男の本質的な異常性を物語っていた。
「あなたはあの時の……!
どうしてこんなことをするんです! 警察やヤタガラスに捕まるに決まっているのに!」
「──ストレスっていうのは常識に縛られると溜まっていく物。
だから非常識な事をやらないとストレスは解消できない」
「……は?」
椅子から立ち上がった男はもったいぶった様子でリモコンを弄びながらつぶやいた。
陰鬱そうに、自身の考えを吐露していた。
「私がかつて合法都市と呼ばれる場所で出会った男の言葉だよ。
取るに足らない愚かで醜悪な男だったがその言葉には一理あると思う。
私もね、ストレスを発散する機会がないと駄目なんだよ。潰れてしまうんだ」
「な、なにを言って」
「こういうことをしないとね、私は駄目なんだ」
リモコンのボタンを押すと鳴る軽快な電子音。
薄暗い部屋が一気に明るくなるが、それによって映し出された者を見て安那は悲鳴を上げた。
広い部屋の壁一面には安那と同じように拘束された少女達が幾人も並んでいた。
ただしその姿は安那と同じようにまっさらなままではない。
その悲惨な有様が、何よりも雄弁に物語っている。
少女達を蹂躙した地獄を。
安那の悲鳴が響く中男は、告解するかのように一人呟く。
己の度し難い欲望への理不尽な肯定を求めるかのように。
「私四葉希夫は、下は12歳から上は15歳。
中学生程の少女を痛めつけ犯す事でしか喜びを感じられない男なんだ」
男の目に少女に対する共感性は一切存在しなかった。
◎主人公紹介
・雨柳巧 <デビルサマナー><剣士> LV58
シリーズポジション:ニッカリ及び悪魔討伐隊(真・女神転生Ⅳ Final)
全盛期を超えた力を手にした剣士兼サマナー。
四人の嫁に支えられながら今日も戦いに精を出す。
使用スキルはデスバウンド・乱入剣・暗殺剣等。
仲魔に関しては魔獣オルトロスや神樹ククノチ等の戦闘用悪魔の他、補助用や捜査用の悪魔と何体か契約している。
最近本スレにも出演したがJCの雌顔に脳を破壊される事が鉄板ネタとなっている事には人生の悲哀を感じますね。