真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス- 作:ローグ5
今回も準備回です。
「いや良かった。元気そうで何よりだ」
雨柳は内心安堵し、少女へ語り掛けた。
東京都にある
ちょっとした宝石やアイテム交換の為に立ち寄った雨柳は久しぶりにある少女と会った。
「その節はご迷惑をおかけしました……」
やや気まずげに頭を下げる少女は十代半ばほど。
二つくくりにした長い茶髪に快活に整った顔立ち。
豊かな表情は少女の朗らかさを裏付ける明るさ。
如何にも姉らしい、年下の人間から慕われそうな面倒見の良さがある少女。
彼女の名前は
\カカカッ/
| 転生者 | 犬吠埼風 | LV77 | 備考:最近更に綺麗になった |
風は妹の樹や友人の友奈と共に、雨柳の知古である佐々木の元に身を寄せている少女。
現在はDBとして活動しつつ聖華学園に通っていたが、少し前にある事件に巻き込まれた際に、自らの意思で失踪した。
懸命な捜索の末連れ戻しに行った佐々木達と激戦を繰り広げ、その末に帰って来たらしい。
詳細な顛末は部外者の雨柳は知らない。
だが風は検査の結果健康そのもので、弱体化所か大幅に強くなった。
佐々木──今日はラスキン老所縁のDBと三業会に関する情報交換*1に行った男は何があったのか大きくLVが下がっていたが。
それでも彼らが得た物は多く、何より風が無事に帰ってきた。それが一番大事だ。
「俺は多少大城戸の調査して、後はレイド参加してただけだから」
「そうそう、無事で戻ってきてくれてよかったよね」
雨柳の言葉にシロガネも同意。
同じ神造魔人に脳破壊2号とあだ名されるシロガネも風が無事でよかったと心から思う。
「でも心配かけたのは事実だからね。
ねっ新世界の神に成れなかったお姉ちゃん?」
「うぐぅ、それを言われると弱いわ。
心配おかけしましたぁ……」
ぴょこ、と顔を出した妹の樹が風をいじり倒す。
風とは対照的に小柄で大人しそうで、それでいて芯の強さを秘めた彼女も元気そうだ。
(姉妹揃って心身共に健康で何よりだな)
ある事件で保護されて以来多少長い付き合いになった犬吠埼姉妹。
過酷な戦いを幾度も踏破した姉妹は揃って未だ成長途中。
才気と勇気溢れる子供達は、自分の様な大人を追い越して強くなり続ける。
それでもまだ若く幼く、青春のただ中にいる。
青春を楽しんで、友達と仲良く充実した日々を送って欲しい。
「ほら、お姉ちゃんしゃきっとして。
雨柳さん達に交換品のリスト渡さなきゃ」
「そうだった! えーと、ではこれお願いします」
風が渡したリストには宝石とアイテムが幾つか。
双方近くに住んでいるといえ、赴く異界が異なれば手に入る物も違う。
今回の取引は風達の練習も兼ねて、交換取引をやってみようという訳である。
「どれどれ……色々集めてくれたんだな」
「調整ついでにタマ達色々探したからなー」
ケースを開く小柄な少女は
その傍らでにこにこと笑っているのは
二人もこのビルで暮らしている少女だ。
ついでに言えば二人共犬吠埼姉妹と仲がいい。
「こっちは宝石で、梱包してあるのは武器類。
タマ達が異界で強そうなの取ってきたぞ。
あそこの異界気前良かったなー」
「宝玉も何個か手に入ったしね。
では雨柳さんお願いします」
「数も質も十分だ。
ありがとうなタマちゃん杏ちゃん」
雨柳が少女達から預かったのは彼方の御国や帝都ヤタガラス向けの装備やアイテム。
両組織と共に上澄みの精鋭だけでなく、育成が必要な力量の戦闘員もいる。
彼等の使う装備防具にアイテム。
それらもGPが停滞している間に集めておこうという訳だ。
「どーいたしましてだ!
こういう依頼もタマとあんずの最強コンビと」
「風先輩と樹ちゃんの最強姉妹に任せタマえです」
あはははは、と和やかな笑いが巻き起こる。
雨柳の見た感じ杏と球子、樹と風は元から相性がいいのか仲が良かったが更に良くなった感じ。
この間の事件がきっかけとしたら雨降って地固まると言った所か。
「それにしても風ちゃん何かこう、前よりも大人っぽくなった?」
えー、そう特に変わっていないと思うけどなー」
シロガネの言葉に風が小首を傾げ笑う。
風の表情には確かに、同世代の女子にしかわからない艶が少女に出ていて。
────球子の心臓がはねた。
(……シロガネの奴とーへんぼくと思ったてたけど意外と鋭いのか?
急に言われるとタマげるぞ)
平静な他の三人をごまかすように、ちょっと目がむずがゆかった感じの演技をする。
元気いっぱいな球子の動揺、それには理由がある。
驚いた事に風は球子の、樹は杏の、来世の姿であるらしい。
つまり球子と杏は来世で犬吠埼姉妹に転生する。
一体どういうことなのかと言いたいが魂の輪廻はそうなっているそうだ。
それ自体はまあいい。
驚いたけど妙な納得感もあるし。
だが、一つ重大な問題が存在する。
杏も、樹も、球子の来世である風も、このビルの主である佐々木に雌堕ちしている事である。
でっぱいふたりはともかくとして自分と同じくらいの身長の樹までも。
前世来世が判明した今だと……球子にとって恐ろしい難題だ。
(タマも確かにイケメンだし親切な兄さんだなーって思うけどさあ!
来世は雌落ちでっぱいとか! 認めたくないぞ!)
デッカイぼたもちぶらさげた
純愛雌堕ちダブルピースとか御免こうむる。
絶対に逃げ切ってまともな幸せを手にして見せる。
(だけど、だけど……!)
脳裏に閃くはあの日、突入先でみちまったとんでもない光景。
頭ドピンクムチエロJCとJC調教ダークサマナーのアレに、おもわず女の子みたいな悲鳴を上げ。
『いや、全然いけるっていうか美少女じゃん。
可愛いし、見てて飽きないし、声も可愛いし、
自分の魅力に気づいてないだけじゃない?』
こんな事まで言われてしまった。
光景も言葉も、簡単に忘れられたら苦労しない。
(タマるか! ダークサマナーに快楽堕ちしてタマるかあ!!
あたしは逃げ切って幸福に生きるんだ!!!)
この思考に至るまで0コンマ秒。
周囲にばれないように顔をそらしつつぐっと拳を球子は握る。
それはあの日以来幾度なく固めた決意。
心臓の鼓動が早い事からは、全力で目をそらした。
帝都の地下に<吉祥堂修練場>なる異界がある。
地下に悪魔を押し流し封じ込める帝都地下水道。
その排水溝として設計された異界は多種多様な悪魔が生息する。
地下水道とも一部異なる悪魔が出現し、それぞれのLVも高い。
故に高位召喚師の修業譲場としても利用されている異界だった。
「クドラクの排除完了。
宝石は……よし、落してる」
「これで今日三つ目、調子いいですねチヒロさん」
彼方の御国がこの世界に来て以降、此処を利用する者も増えている。
流石にレイやチヒロと言った
そろそろこの異界での鍛錬に参加できる者も増えて来るだろう。
更に今クドラクの様に、この異界に生息する悪魔の一部は宝石をドロップする。*2
昨今の宝石バブルで後れを取るわけにはいかないと、特に宝石を落す悪魔は逃さずに倒す方針だ。
当然自分や仲間の命を護る事が最優先だが。
「そうね。レイも私も来た時より大分強くなったし。
けど……」
「けど?」
「ここまで強い悪魔が生息する異界なんてね。
ちょっと違和感というか、落ち着かない」
苦笑交じりのチヒロの言葉にレイも納得する。
この異界に出現する悪魔にもレイは安定して、チヒロも互角以上に戦えるようになった。
とは言ってもかつての世界での経験があるからこそ、此処の悪魔達の強さには驚く。
「種類も豊富で、ピュートーンみたいに弱点がない悪魔も意外といますし。*3
目標地点まで気を引き締めていきましょう」
「今度は私が後衛に回る。
良さそうな悪魔がいたら交渉してみて」
「道具をくれる悪魔もいますからね」
ヴリトラを始めとする三体を召喚したレイが前衛に立ち、チヒロが仲魔と共に後衛に立つ。
地道な探索行ではあるが二人に抜かりはない。
此処で手に入る物は多々あるのだ。
経験値に仲魔、悪魔から取得できる宝石等の道具。
それらを効率よく補充できれば、重要な戦いで必ず役立つだろうから。
「アンタ等のお目当てはこれだろ。
もっていけばいいさ」
「用件は済んだし帰るぜ。あばよ」
「じゃーねー」
他方、雨柳とロゼも修練場の探索を続けていた。
雨柳達が先程まで相対していたのは2体の堕天使バルバトス。*4
雨柳の手持ちにも
「儲かっちゃったねおじさん」
「ああ。こういう稼ぎはいいもんだよな」
ロゼは雨柳から渡された魔晶をしまい込む。
魔晶は悪魔の力を宿した金属で復元された錬剣術で剣を創造する素材になるが、あいにくと既存の魔晶は在庫が払底している。
なので悪魔を狩るなり、交渉で手に入れるしか今の所入手方法がない。
今回雨柳が彼方の御国に同行していたのは、此処に魔晶を落す悪魔が何種類か出現する事もある。
前はそうではなかったが、悪魔の実体化率が高い最近は違う。
それら悪魔を狩る事に魔晶という新たなメリットが産まれたのであった。
「サマナーよ。次に行きましょう。
この辺にはもう
「私の癒しは……まだいらないでしょうね」
雨柳が召喚しているのはラクシュミとバルバトス。
今回の探索は数日前合体で作成した仲魔の調整も兼ねている。
「ううん、流石に宝石は落ちてないね。
ちょっとは落ちてそうだと思ったけど」
「シロガネ君は宝石効果あったっけ?」
「一応悪魔判定だから効果ないよ。
だけどほら、銀ちゃん達にどうかなと思ってさ」
後列で援護を担当するロゼとシロガネは気軽に話している。
やはり共通の知り合いがいると話もよく進むのかもしれない。
「ただ銀ちゃんに似合いそうなルビー。
あれも上がるの体力だけだから他の宝石の方がいいかなあって」
「う~ん確かに。銀ちゃん色々出来るし何あげた方がいいかなー。
まあ僕達も全然宝石揃ってないんだけど」
ロゼとシロガネは揃って頭を悩ませる。
宝石は難儀な物で9個揃わなければ効果を発揮しないうえに効果は千差万別。
自分の求める増強効果と宝石の種類がマッチしない事もある。
そんな訳でキリギリス掲示板でも宝石を求める声は凄まじい。
普通の宝石を高値で売ろうとしたテンバイヤーがもうすでに1ダースは画像付きで物理的に晒されている。
恐るべきは人類悪のあくなき欲求か。
なんて事を言いつつも異界内部を進んでいく。
悪魔の多くは雨柳からすれば敵ではないが、油断せずに目を配り。
自身や悪魔の動きを確かめながら進む。
「な、なにをするヤメローッ! ヤメローッ!」
途中銃撃耐性のある悪魔にバルバトスの百麻痺針を撃つとうまい具合に緊縛状態に陥った。
そこから容赦なく3度のファンド*5でマッカを取得。
装備の更新にも必要なマッカにはこうした稼ぎ方もある。
「へ~状態異常ってこういう使い方もあるんだね」
関心を示すロゼと距離を離さず十字路を進むと、悪魔が何体か。
気づいたあちらも敵意を向けている。
「シロガネ、ラクシュミはクーフーリンへ電撃。
バルバトスは落ちたら銃撃」
仲魔へ敵悪魔達への対応を淀みなく指示。
幻魔クー・フーリン*6を女神とシロガネの電撃で仕留め、壁が落ちた所でクラマテング*7と夜魔ヒュプノス*8へ容赦なくバルバトスが射撃。
何とか踏みとどまったクラマテングの片割れを雨柳が駄目押しに銃撃し討滅。
残るは運よく生き残った龍王ユルング*9は、慌てて声を上げる。
「待テ待テ待テ!?
オマエ達が欲シイノハコレダロ!?」
器用に龍王が口で放り投げたのはサファイア。
「オ前達ニンゲンハ宝石ヲ探シテイルト聞イタ。
ナラ、コレヲヤルカラ助ケテクレ!」
命乞い。追い詰められた悪魔が時たま行う行動。
先程まで殺し合っていた敵へ抵抗もなく命乞いとは人間からば奇妙だが悪魔とはそういう生き物。
雨柳のスクルドやロゼのドミニオンの様に人格と呼べる様な物がなければ、彼らはこだわらずに自分の命を長えるべく行動する。
「俺としてはそうしてもいいんだが」
「僕は合体の為に悪魔探してるんだよねー」
無論DBからしても命乞いのメリットは大きい。
道具を寄こせとか仲魔になれとか、労せずして悪魔に自分の要求を了承させられるからだ。
「今ならもっと強い悪魔になれるけどどうかな?」
「オマエノレベルナラ上ガ目指セソウダナ。
ヨシ、魔石ヲクレタラ仲魔ニナルゾ」
「なら、はいこれ」
「確カニ受ケトッタ。
ワレハ龍王ユルングコンゴトモヨロシク……」
龍王ユルングはロゼの持つ武器COMP<閃刀弐式>に吸い込まれていった。
雨柳の持つGUMPと違い、ロゼの閃刀は10体以上の悪魔を格納できる。
その容量の多さは羨ましい限りだ。
「おじさんのお陰で強めの悪魔を仲魔に出来たよ。
どうもありがとう」
「どういたしまして。
悪魔合体を近々やる予定なのか?
どんな悪魔を作る予定なんだ?」
「んー前衛と回復役はいるから後衛かな。
魔法が使える奴。
それ以外にも幾つか考えているけど」
指を折って考えるロゼ。
成程レイや周りの教育が良かったようだ。
きちんと自分で考える事が出来ている。
(それが勉強や遊びじゃなくて、戦闘に関してってのが複雑だけどなー……)
複雑ではあるが、胸の中に秘めておこう。
「ならこの異界ティターニアもいるし探しておくか」
「いや大丈夫。合体に使うならレイの持ってるデータ借りるし。
もう少し奥の方調査しに行こうよ」
「それもそうだな、それじゃあそろそろ悪魔を入れ替えるか。
召喚、オンギョウキ、スクルド」
ラクシュミとバルバトスを送還し、GUMPからオンギョウキを、管からスクルドを召喚する。
ロゼメインに後退するまでもうしばらくはこの2体の連携調整だ。
「大事の前の小事だ。
何事もなく片付けるとしよう」
「奇襲に注意して進みましょう」
アライメントが異なるものの、共闘する妖鬼と軍神には隔意はない。
長物を使う為戦闘で互いに配慮する必要があるが、其処は指揮者たる雨柳の腕の見せ所。
「格下相手ならやはり万能の通りがいいわね」
遭遇した悪魔をスクルドの
消耗が重いがチャクラクォーク*10と魔脈高揚*11である程度カバーできる。
乱用は出来ないが探索や雑多な敵を相手する時には有効だろう。
焼け焦げた床をまたぎ進み右折すると小部屋への扉があった。
小部屋は悪魔が潜んでいる事もあるが、同時に宝──異界から出土する貴重品がある事も多い。
此処は調査も兼ねて踏み入ってみるべきだろう。
(3、数えたら入るぞ)
(了解)
ロゼへ合図し3カウント後、スクルドが器用に槍でドアを開け、耐性の強いオンギョウキを先頭に突入。
こちらへ向き直るのは複数の悪魔。
その奥には宝箱があるのが見えた。
悪魔の陣容はアーマーン*12が2、アルケニー1*13、ヴェータラ1*14。
物理反射を備えた悪魔はいない。
(全員呪殺には無効以上。なら試すか)
「オンギョウキは狂気の粉砕、スクルドは連携」
「御屋形の意を得たり!」
雨柳の指示と共にオンギョウキが怖気を引き起こす気を込めて大鎌を奮う。
アーマーンの1体の頸が飛び、もう一体のアーマーンとアルケニーも切り裂かれた。
挫けた2体は耐性がなかった事もあり、恐怖状態に陥っている。*15
「予定通りこれね」
其処へ浴びせられるはスクルドの亡者の嘆き。
恐怖状態に陥った者を即死させる呪詛は容易く2体をからめとった。
これで敵の残りはヴェータラのみ。
オンギョウキの狂気の粉砕で敵を恐怖させ、スクルドの亡者の嘆きで即死させるコンボ。
ボス格ともなれば効かない事も多いだろうが、こうした複数の敵を手際よく処理するには便利だ。
一体のみになったヴェータラへ雨柳が疾走。
雨柳の振るう霧氷月影が旋回。
銀の弧を描く刃は、幽鬼の頸を半ばまで断ち切り。
「とどめを刺すよ!」
雨柳が離れた直後、ヴェータラが反撃に移るより早くロゼが銃撃。
弱点を突く火炎弾が頭部に着弾。
燃やしながら引きちぎり落した。
「……敵の気配はなしと。
いい援護だったぞろぜ。銃の扱いも上達したな」
「どもども。
でもおじさん何で
おじさんなら使えば一撃だったと思うんだけど」
もっともな質問である。
雨柳も確か……此処で先達と共にヴェータラと戦った時同じ質問をしたはずだ。
今となっては微かな痛みと共に呼び起こされる懐かしい記憶。
「此処だと滅多に出ないんだがあの系統のヴェータラは氷結電撃無効、呪殺吸収の他に物理攻撃の多くに耐性を持っているんだ。
剣技や銃撃、格闘技や悪魔の爪牙を使ったスキルは10%まで軽減する。
槍や投具での攻撃は70%なんだが*16」
正確な倍率はここ最近、他所で出現する同系統個体からの測定で判明した。
それでも物理に複雑かつ強力な耐性を持つ事は、昔からこの場で修練を受ける召喚師には昔から知られていた。
「うわあ面倒な耐性してるんだね」
「ところが剣での
体力の消耗を考えても、追加効果狙いじゃないならそっちの方がいい」
「へー種族毎の耐性とかは知っていたけどそんなのもあるんだね。
……あれ? おじさん悪魔攻撃って何?」
しばしの沈黙。これも説明が必要だが難しい。
「……此処や地下水道で出現する悪魔、後平崎市周辺の悪魔にいるんだが。
何故か通常攻撃が悪魔攻撃、通称魔攻っていう別属性扱いなんだよな」
「悪魔の通常攻撃が別属性……何で?」
「まだ検証班も答えを出せていないんだ。
ただこれ厄介で、人間の装備する防具だと耐性がないんだよなー」
「ええ……」
悪魔攻撃は恐ろしい事に、万能すら耐性を持つAマックス系やカラミティ系*17すら防げない。
回避するか素の防御力やHPで耐えるしかないのだ。
「……何というか悪魔の相性属性って複雑怪奇だね。
シロガネ君ドロップ品あった?」
「宝石と魔晶両方あったよ。
二つ同時に見つかるのはラッキーだ」
これで雨柳の所有するオニキスは都合9個。
| オニキス | ボーナス:力1、体1、速3、運1 |
オニキスは雨柳が、霊銀はロゼが受け取る。
今日最初に決めた取り決め通りの配分だ。
「後は宝箱だな。
オンギョウキ開けてみてくれ」
「委細承知」
妖鬼が宝箱を開けると中に入っていたのは宝玉と反魂香。
それと、輝く輪を前立てのようにした黒い兜。
「これが入っていたのか。
運がいい事は続くもんだな」
兜を見て雨柳は驚く。
レアリティの高い防具ではあるが雨柳はその兜を知っている。
光輪の兜。高い防御力と豊富な耐性を持つ防具であった。
光輪の兜*20 | 男性用頭部防具 |
| 精神・破魔無効 呪殺・魔力反射(50%) その他火炎・氷結・神経等に70%耐性 |
(雲雀ケ丘の地下水道では何度か発見された*21とは聞いていたが、此処でも見つかるとは。
今日は運がいい日だが……そろそろ戻るか)
この幸運が尽きない内に探索を切り上げようと雨柳は考える。
目標までは進んだし時間的にもそれなりに長丁場になった。
ならこの幸運が不運に裏返らないうちに帰るべし。
「よし、丁度良い区切りもついたし戻るとしよう。
持ち帰りたい物も色々あるしな」
「そうだねー。僕も今日は探索来てよかったよ」
ロゼの言う通り、日常の空いた時間に行った探索だが得られる物は多かった。
実に有意義な探索行だった。
頑丈な兜を慎重に包み雨柳もロゼに続いた。
暖かくなってきたとはいえまだまだ早朝の空気は冷え込み、その分日差しは何処か爽やかだ。
神社庁管轄の施設の一角。
静謐さが満ちる異能者の屋内訓練場へ、雨柳は足を踏み入れていた。
ここ一週間程で仲魔に続き、消耗品等のアイテムを大分そろえる事が出来た。
仲魔の調整も終わり、今後使っていく防具のテストも完了。
まだ宝石はルビーとオニキスしか揃ってないが、其処は宝石バブルの中高望みしても仕方ない。
戦いへの備えはおおむね終わった。
だが更なる戦いの前にやっておく事がある。
「いやいや遅くなって済まないね。
ちょっと準備することがあってさ」
「いえお構いなく。
こちらの依頼へ忙しい中来ていただいたわけですから」
いつもよりかしこまった雨柳と相対するのは、壮年の大男。
見るからに鍛え込まれた体躯に、髭に黒い丸眼鏡。
一見胡散臭くも見える男は佩刀していた。
男の名は
聖華学園で警備と異能者生徒の教育を担当する凄腕の剣士DB。
更に言えば一般に秘匿された経歴も又凄まじい。
法山はシュバルツバース調査隊の生存者であり、深部に到達したRED指定者。
即ち十六代目ライドウや先代ゲイリンと共に、多大な犠牲を払いながらも世界を救った現代英雄の一人であった。
「アンタにはオレの受け持ちじゃないけど生徒の何人かも世話になってるしな。
これぐらいなら問題ないさ」
「……痛み入ります」
聖華学園の生徒には雨柳がかつて助けた少女も二人ほど在籍している。
その他にも風達の様な面識のある子達もいる。
彼女達のお陰でこの場を整えられたならば感謝せねばなるまい。
法山は本来なら多忙で雨柳とは縁もない。
だが法山の上司である巫女の紹介もあってこの時間が取れた。
「彼方の御国について色々動いてもらっているお礼」との事らしいが、実にありがたい。
「さ、お互い多忙な身だ。早速始めるとしよう」
雨柳が法山に依頼したのは、とある剣技の伝授。
シュバルツバースの極限状況でなおも活路を切り開いた業。
今後雨柳も仲魔と共に戦う為に必要となるそれを学ぼうというのだ。
ニヤリ、と笑い法山が刀を抜き放つ。
力みのない自然な動きと大業物。
それは達人にして英雄に相応しい練度。
空気が硬質化し、静かだった訓練室が変貌する。
「オレやライドウが振るい、悪魔達を滅ぼした剣。
見逃がすなよ────!」
応、と返答し雨柳も刀を抜く。
短い時間、集中の限りで剣技を物にして見せる。
ライドウの名を聞いた男には確かな意志があった。
世の中が平穏な時であるからこそ、DB達は準備を進める。
雨柳巧もまた、その中の一人であった。
次回はガイア再生機構か新しき神話との戦闘開始。
可能な限り早いうちに投稿したいと思います。