真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス- 作:ローグ5
「むぅ……」
WGM攻略戦の少し前。
何の変哲もない倉庫、に偽装したセーフハウス内。
レイは微妙な気持ちを味わっていた。
理由は目の前にいる淡い色の髪に、黒い衣装を纏った女性。
アイリス・ビショップ──自分とは別の周回で
今回作戦には彼方の御国の一部他、護国の家と関係あるDBも参加する。
その中の一人である彼女はこの周回でも雨柳と面識があり、今日会った時に挨拶していた。
最もレイはアイリスを知らず、アイリスもレイを知らなかった。
なので雨柳は微妙に気まずそうな顔をしていたが。
雨柳が彼方の御国との調整の為席を外すと、残されたのはレイとアイリス。
準備も終わりレイとアイリスにはやる事がない。
まだ作戦まで暫くあるにもかかわらずだ。
(んー……何話せばいいのかしら)
初対面な上にお互い──変な言い回しだが、別で同じな雨柳を知っている。
だからこそどうにも話を切り出しづらい。
「えと、その、レイブンよろしくお願いします」
「はい。雨柳様の足を引っ張らないよう努めさせていただきます」
お互いにお辞儀、どうもレイは決まりが悪い。
(なんか変な事言っちゃったなー)
今回の作戦だと雨柳とアイリスが陽動担当、レイはチヒロ達と共に敵の電算室を制圧し今後につながる情報を取得する襲撃担当。
これまでレイが雨柳と参加した作戦と違って別チームになっている。
だから何故か保護者じみた事を言ってしまった。
(……しかし雨柳様、かあ。
レイブンはそんな呼び方させるタイプじゃないし。
何があったのかしらねー)
アイリスのレベルは現在64とレイに近い水準。
基本的に現行世界よりGPが低い世界で生きていた漂流者にするとかなり高い。
前の世界から彼女はどんな人生を歩んできたのだろうか。
とは言っても過去の詮索はご法度だ。
前の世界でどんな別れがあったか言いたくないのはレイも同じ。
まして今の世界に来てからについては、色々と機密もある。
ある程度話して大丈夫な内容にするべきだ。
「そうだ、もしよかったら聞きたいんですが」
「何でしょうレイ様?」
「アイリスさんの知っているレイブンって、どんな人だったんです?」
レイにとっては答えは予想はつく質問。
だけど折角だし聞いておきたかった。
一拍思い返して、アイリスは口を開いた。
「少し自分の評価が低い所があるけど……誰にでも親切で特に子供に優しい。
過酷な状況でも誰かを想う事が出来る方でした」
「……私の知っているレイブンと変わらない、か」
くすり、とレイは笑った。
別の人生、別の世界を生きていても根本の所は変わらない。
雨柳巧という男は他の
過去周回で名を馳せたDBと同じようだ。
「レイ様の知る雨柳様もその様な方だったのですね」
アイリスも微かに笑顔を見せる。
こういう顔が出来るなら、その過去は不幸なだけじゃなかったはずだ。
「お互い頑張りましょう」
「そうね」
死なず死なせず、きっちりと仕事を完遂して帰る。
それが自分達を護ってきた男が望む事だろうから。
WGMの拠点内部、軍靴の硬質な足音が響く。
「ほうほう、Magの生産は順調なのね」
「はい。先日の作戦は失敗しましたが、早期に漂流者や無戸籍の人間を確保できたのが大きいかと」
金髪の少女へ恭しく従うのは頭二つは背の高いブラックデモニカ姿の男。
自分より優に十歳以上年下のシエラ・ウェランドに対しても従順極まりない。
「問題は部下達の
私や姉さんならともかく、それ以外の隊員が現行世界のGP環境下では数を揃えるのは困難。
こっちのサーバーに保存された全書から合体プログラム*1で調達するしかないか」
シエラは指折り数え呟く。
悪魔という損耗前提に使い潰せる戦力は現段階では重要。
調達の手間はかかるが、可能な限り揃えたい。
「拾った漂流者の訓練もまだかかりそうだし、手間がかかる事。
兵達が統率を保っているのは何よりだけど」
「銃皇閣下の薫陶が行き届いているのかと。
私の様にあの方に拾われた者も多い故」
WGMに所属する者の多くは二つに分かれる。
一つは元は海外のガイア系組織のトップだったウェランドの元からの部下。
もう一つはウェランド本人がスカウトした兵士達。
後者は紛争地での犯罪行為やその他不祥事、諸々の理由で軍やPMCを不本意に追われた者達。
彼等の多くは潤沢な装備を与えられ高度な訓練を受けWGMの戦力となる。
好待遇な上にウェランド一族に逆らわず不利益を与えられない限りは
シエラと話している中尉も軍の対悪魔部隊を追われた後に、銃皇へ拾われここまで来た。
捕虜への違法な拷問、ただそれだけで査問会が開かれ、不名誉除隊となった事は未だに納得できていない。
少なくとも本人からすれば。
だからこそ中尉を始めとする兵士達は、この世界でも銃皇の娘達へに従っている。
彼女達の強さや銃皇への恩、さらには自分達を排斥した元の世界への未練のなさ。
それらの複合的理由から、今も忠実たる手足として動く。
「流石は私達のお父様。
世界が変わろうと威光は兵達に忘れられる事はない。
スポンサーがついたのもそのお陰かしら?」
「前と同じように護国が宛にならない分戦力を欲する者も多いのでしょう。
彼らなりの嗅覚を働かせた結果、我々へ期待を働かせている。
以前の様な地位につく日も近いと、少なくとも小官は考えております」
彼等にとって護国組織は矮小な物。
東京を本拠とする暗殺部隊を擁するDAは、逆らったが銃皇に勝てるはずもなく壊滅。
主たる敵はメシアを始めとした勢力であった。
今の世界は違うと知っていても、前の世界の感覚を前提としている彼らは知らない。
この世界の帝都ヤタガラスという護国勢力、及び共に戦う者達の強さを。
彼等がいる以上、自分達の蛮行は許されるはずがないという事を。
「それじゃ、私は合体装置の方見て来るわ。
量産は軌道に乗ってきたけど改良の余地はまだ幾つかあるし」
「不測の事故へお気をつけて」
シエラは軽く手を振り中尉から去っていく。
一礼した中尉は姿が見えなくなると歩き出す。
少しばかり周囲を見て回ろうと思ったのだ。
元は工場だった拠点の中は急ピッチでの改装が施されている。
単に居住性の向上だけでなく、重火器を備えた監視塔等の設備も設けられた。
兵士も抜かりなく哨戒を続けている。
中尉は車庫をちらりと見る。
対悪魔用の改造がなされた装甲車も複数台。
前と比べると物足りないがまずまずといった所だ。
(当面は悪魔を中心に組み立てるべきか。
ハノカ様へアコーニが献上した悪魔……アレの様な物がこちらでも作成できるといいが)
正門近くへ立つのは<混沌の使い魔オニ>というLV55の悪魔。
他にも何体かアコーニを経由して悪魔が提供されている。
その質は中尉をして唸る程高く、うち一体はハノカが直々に使う程だ。
(構成は魔法とバステを中心に……うん?)
不意に中尉は足を止めた。
視線の先には足早に歩く兵士。
報告に向かうのだろうが何処か違和感がある。
強いて言うならば──歩き方や挙措がらしくない。
「おい、そこのお前。所属部隊とIDを」
中尉が誰何するのと同時、デモニカ兵が掲げた手には魔力の収束。
≪メギドラ≫
万能の奔流が監視塔とその周辺に叩き込まれ、瞬時に崩壊。
余波を喰らって周囲の兵士も又吹き飛ばされる。
「敵だ!」
腰に吊るしていたマンダムP*2を抜き打ち瞬時に引き金を引く。
敵兵の胴体に着弾するが微動だにしない。
しかし銃弾によって偽装が剥がれ落ちた。
黒と蒼の衣装に黄金色の髪をした女神、否軍神たるスクルド・スカディ。
(悪魔の擬態能力か!)
人に化ける悪魔は数多い。
様々な手段で擬態し、秘かに人の中へ紛れ込む。
特に旧い分類で<技芸属>の悪魔が行う擬態の精度は高い。*3
場合によっては各種のセンサーを用いても見切れない程だという。
「銃撃耐性はない! 各員状態異常弾頭を中心に対処せよ!」
自身もデモニカのヘルメットを装着しつつ中尉は無線へ声を叩きつける。
既に周辺からデモニカ兵が集まりつつある。
警報のサイレンが響く中、数と連携で侵入者を駆逐しようとして。
屋上に陣取っていた狙撃手が照準を合わせた瞬間。
瞬時に悪魔の姿が消えた。
「なっ!?」
高速移動かと思うが悪魔の姿は周囲に無し。
僅かに緑色の、マグネタイトの残光を残すのみだ。
周囲を見回す中尉達の耳に矢継ぎ早に響くは轟音。
見れば壁が破壊され、侵入する者あり。
その中には
砕けた壁から侵入するのは雨柳達とアイリス、制圧開始だ!
雨柳達がした事は単純明快である。
以前撃破したWGM兵から入手したデモニカの破片を使い、擬態して潜り込んだスクルドが監視塔を破壊。
注意が集まった所で召し寄せ*4し、力自慢のオンギョウキが壁を破壊して侵入する。
それを綿密な意思疎通の元行っただけだ。
「シロガネは狙撃手、後は敵戦力を掃討するぞ!」
「了解!」
シロガネが
同時に雨柳は召喚していた妖鬼オンギョウキと共に前進。
オンギョウキが狂気の粉砕、雨柳は斬撃をデモニカ兵へ叩き込む。
手ごたえは両者共に素通し。
続いてアイリスが銃撃するが、こちらは銃撃無効。
(装備はある程度統一された形か。
やはりPMCらしく銃を基本装備にした戦法)
悪魔を召喚しつつある敵陣を確認。
体勢を整える前に叩けたが、立ち直りが速い。
「なめるなよクズ共!
殺して剝製に加工してやる!」
中尉は罵倒と共に悪魔へフォッグブレスを指示、さらには部下と同時に雨柳へと銃撃を行う。
ショットガンやマシンガンから放たれるのはBC弾やグッナイマム*5といった状態異常銃撃。
耐性を固めていても数によって貫き、嵌める事が出来る。
(召喚師を潰せば後の仲魔は脆い!)
────悪魔達とは信用ならざる存在だ。
人外たる彼らは人間の潜在敵であり、隙を見せればこちらに牙を剥く。
召喚師が倒れれば悪魔は戦意を失い戦闘はその時点で終わる。*6
ならば当然召喚師を狙うべきな訳で。
「安易な狙いを許すと思ったのかしら?」
スクルドが自発的に雨柳をカバー。
直撃弾をその身を持って受け止める。
状態異常に強い耐性を持つ故多くに耐えるが、一発が耐性を抜け毒状態となる。
「数があると流石にかかるわね。
アイリス治療お願い」
「直ちに」
だが、それだけだ。
アイリスが道具ですぐに回復する。
「銃撃中心なら次はオンギョウキ、頼むぞ」
オンギョウキをカバーの為待機させ、雨柳は再度切り込む。
シロガネの雷撃が敵悪魔を粉砕し、雨柳の斬撃がデモニカ兵を両断。
鋏で布を切り裂くか如く、敵陣を進む。
雨柳とスクルドが背中合わせに武器を掲げ、マグネタイトを励起。
地を震わせる刃の円陣が吹き上がる。
「この、化物がッ……!」
出動した装甲車もろとも、木っ端微塵に中尉は砕かれた。
雨柳とスクルドの合体技震天大雷。
砲撃の如く土煙を巻き上げ、周囲を薙ぎ払う大技の後に動く者無し。
「この辺りの敵は掃討したな。
救出チームの為にもう少し引き付けるぞ」
「かしこまりました雨柳様」
残留マグネタイトを吸収した雨柳とアイリスは、当初の予定通り第二段階へ移動。
この度の戦いはまだ始まったばかりだ。
雨柳達の陽動と同時に各チームが侵入を開始。
迎撃部隊を返り討ちにしながら、目的地へ向けて突き進む。
「死ねカス共が!」
WGM兵達が施設深くまで進攻した敵を迎撃する。
敵はデザインは何処かカエルに似たデモニカ。
それと随伴する悪魔召喚師らしき男。
数十メートル先の敵を捕捉し、引き金を引く。
敵はテトラカーンを展開、故に弱装弾で剥がして本命の銃撃を叩き込む。
それはこれまでのマニュアル通りであったが。
「知っておいてよかったぜこれ。
アイツ等みたいに知らずにいたら洒落にならねえ」
「全く仕様の違いとは恐ろしいな……」
ミスリルの兵士が連れていた聖獣パピルサグの、展開した
故に銃撃の数々は反射され、意図に反して穿たれるのはWGMの兵士達。
「クソが! 悪魔を前面に出してその間に回復だ!
さっさと殺してハノカ様の元へ行くぞ!」
WGMの隊長格が指示を出し、射程で勝る重火器に変わって悪魔を先陣へ出す。
距離を詰めて近距離戦へと持ち込まんとして。
「突撃しろ悪魔共! お前等の命など惜し」
紫の残光を纏う悪魔召喚師が迫っていた。
| 死神の俊足 | 特殊スキル | 紫の光を伴い瞬間移動を行う巫蠱師の体術 本作ではデビサバ系の<妖光一閃>と同じ効果と裁定し、一時的に移動力を大幅プラスするスキルとして扱う |
「は……!?」
「残念だがこちらも時間をかけている暇はない」
剣型武器COMPを媒介にマグネタイトを励起させ放つは、退魔の業火。
| 決意の大炎*7 | 火炎属性スキル | 敵全体へ火炎属性大ダメージを与えるスキル 巫蠱師の奥義が一つであり、かつての世界では使えるのはクサカベただ一人だった |
| 火炎威力アップⅧ | 魔晶スキル | 火炎属性攻撃の威力を45%アップ |
業火一閃、WGMのデモニカ兵と使役悪魔が纏めて焼き滅ぼされ、残るは焼け焦げた痕跡のみ。
彼方の御国に属する召喚師クサカベ。
彼は巫蠱師でもあり、特に火炎の術を得手とし自身の戦闘能力も高い。
かつての世界にてゲイリン候補であったのは伊達ではない。
「増援は片づいたな。
なら嬢ちゃんたちと合流するか」
「スナイパー、トラップ共になし。
距離も遠くないしすぐに合流出来そうですね」
クサカベとミスリル兵はレイ達と共に電算室の制圧へ進んでいたが、横合いから攻撃を仕掛けようとする敵増援を察知。
迎撃に来る敵兵達を迎撃していた。
戦闘の切れ目に弾倉を入れ替えながら、無駄なくミスリル兵達は意見を述べる。
だが、クサカベは首を振った。
「そうしたい所だが……今度は別口で来たぞ」
クサカベの視線の先で壁が粉砕。
瓦礫を踏みしだいて2体の悪魔が現れる。
「粛清粛清粛清シュクセイイィ!」
「侵入者ヲ殲滅スル!」
何処か機械的な像頭に片刃の蛮刀を携えた物と、蛇の如き体に翼と禿頭を備えた物。
\カカカッ/
| 妖魔 | 天命に誘われしプルキシ | LV66 | 魔力耐性 衝撃・破魔無効 電撃弱点 |
\カカカッ/
| 邪龍 | 天命を奪うキングー | LV64 | 火炎・氷結・電撃・破魔耐性 呪殺・神経無効 |
敵意を隠さない悪魔2体は武器を掲げ、鎌首をもたげ彼等を威嚇。
他方クサカベは特徴からある共通点を見出し、呼応して剣を構える。
(やはりWGMにはガイア再生機構の手が入っているか……!
となるとレイ達の援護に向かいたいが、背後を突かれる訳にもいかないな)
「俺が前衛で奴等とやり合う。
支援と横槍への警戒を任せていいか?」
「任せろクズノハの旦那!
手早く済ませて嬢ちゃんの所へ行きましょうや!」
「こんな所女性だけで走らせたくないですしねえ」
クサカベに呼応してミスリルも支援の態勢。
祖国も育ちも違うが頼もしい味方。
かつては得難かった存在がいる事に、微かに笑う。
(まさか俺がクズノハと呼ばれる時が来るとはな)
望外ではあるが悪くはない。
そう思いクサカベは悪魔との交戦に突入した。
・
・
・
「ごがあっ!」
廊下を転がっていくのはWGMのデモニカ兵士達。
既に大ダメージを受けた兵士達は床に叩きつけられそのまま動かない。
「これで此処の守備隊は壊滅ね。
チヒロさんやはりこの先の部屋に?」
「調査と道中のデモニカから探った限りはね
元は事務室だった部屋の先にあるっぽい」
レイと仲魔が前衛、チヒロが自身の仲魔と共に支援をする陣形。
クサカベと別れた後も順調に進みそろそろ目的地。
だが、二人共油断はない。
「レイ、私のパラス・アテナを先頭に。
側面からの奇襲にも気を付けて」
「了解」
充分に注意し、女神が壁を槍で突き崩して侵入。
側面に注意しながら進めば、正面にいるのは頭部以外をデモニカで覆った若い女。
「────流石に驚くな。
無粋な侵入者がこれほどまでに若いとは」
見慣れない華美な拳銃を構える女の髪は、それぞれ一房が赤、青、黄となっている。
悪魔が混じっているのだろうか、いずれにせよ警戒が必要だろう。
「あなたがWGMのボスかしら?」
「如何にも。私はウェランド一族の現当主にしてWGMの総領。
ハノカ・ウェランド、銃皇の意思を継ぐ者である」
「銃皇?」
耳慣れない言葉に怪訝な表情を浮かべるレイ。
対してハノカは呆れた様な表情。
「仕方がない事とは言え父上の偉業を知らないとは。
私としては頭が痛くなって来るよ」
ハノカにとって父という一番星を知らない人間等、どんな理由があっても蛮人としか思えない。
そんな未開の晩人が自分達の領域へ押し入っているというのは業腹極まりないが、生き証人代わりに教えてやるのもいいだろう。
「……よほど尊敬している人がいるんだね。
今やっているあれこれも、その人からそうしろって言われたの?」
「いや? ただ父上ならそうすると考えた通りに、動いているだけだ」
父と父に魅せられた母達から受けた教育、その忠実たる実践者が自分だと、ハノカ・ウェランドは自負している。
「反抗勢力を制圧し蹂躙し、最強たるウェランド一族の威光を凡骨共へ刻み付ける。
それこそが銃皇の覇道、私達が継ぐ道だ」
「……ああ、そう。
これ以上は話しても無駄だね」
ハノカの妄言にチヒロの目も冷ややかさを増す。
偏った信条の元で動く、他者を踏みつけにする事を一顧だにしない狂信者。
それがどれ程醜悪であるか、チヒロもまた良く知っている。
「そうね、あなた降伏する気はないんでしょう?」
レイの目もまた冷たい。
彼等の邪悪な行為は、どんな意思があろうと肯定されない故に。
「愚問だ。むしろ貴様等が首を垂れろっ!」
ガンスピンと同時に、腕に付けたデバイスが駆動。
悪魔召喚プログラムより悪魔が召喚される!
\カカカッ/
| 堕天使 | アラストール(強化個体)*8 | LV71 | 物理に弱い 魔法・破魔無効 呪殺反射 |
\カカカッ/
| 地母神 | ダイアナ*9 | LV64(54+10) | 破魔・呪殺耐性 銃撃無効 |
\カカカッ/
| 妖鬼 | ベルセルク*10 | LV63(53+10) | 物理・氷結耐性 火炎弱点 |
大槍を携えた悪鬼の如き堕天使に、弓の地母神と毛皮を被った狂戦士。
総じて
何処か虚ろなそれらをハノカは従えている。
「銃皇を継ぐ私の猛き力を、目に焼き付けて死ぬがいい!」
\カカカッ/
| 悪魔人間/ガンスリンガー | ハノカ・ウェランド(Mag強化済み) | LV71 | ???? |
更に言えば、ハノカの力も並ならぬ域。
Mag強化をされているとはいえ、この世界においても充分に強者と呼べる段階。
体裁きからしても見掛け倒しでないだろう。
「────なら、こちらも貴方の信奉する流儀で行かせてもらうわ」
≪≪≪SUMMON≫≫≫
対するレイもチヒロを背に悪魔をチェンジ。
現れるのは三体の仲魔。
「悪行三昧、即ち因果応報!
私の拳が燃え上がるでしょう!」
\カカカッ/
| 邪神 | マダ*11 | LV66 | 物理・火炎無効 氷結吸収 精神耐性 |
「黒きヒーホーの力を見せてやるホー!」
\カカカッ/
| 邪鬼 | ジャアクフロスト*12 | LV65 | 物理・銃撃耐性 火炎・氷結無効 |
「オオン! ドス黒イMagノ臭イガスルゾサマナー!」
\カカカッ/
| 神獣 | バロン*13 | LV64 | 物理・銃撃耐性 四属性に強い*14 破魔・呪殺・精神・魔力無効 |
レイが従えるのはヴリトラを合体で強化した阿修羅たる邪神。
遊び心を忘れていないダークヒーローめいた邪鬼。
善悪の循環の内善を司る神獣。
盲信のままに道を外れた悪に対して少女は、強力な仲魔を召喚。
この三体を従えて武器COMP≪閃刀壱式≫の切っ先を敵へ突きつける。
「私達の力を以て止めさせてもらう!」
\カカカッ/
| 悪魔召喚師 | 葛葉レイ | LV67 | 電撃・精神・魔力耐性 銃撃・氷結・破魔・呪殺無効 |
魔に堕ちたガンスリンガーと、正しきを忘れない少女召喚師との闘いが始まった。
「先手は貰うぞ!」
搭載されたサプライザー*15を発動。
動作及び通信の高速化によって先手を奪取。
使役悪魔を先頭に動く。
≪狂気の暴虐≫
≪アローレイン≫
ベルセルクの物理とダイアナの銃撃。
小手調べは耐性もあり、大したダメージはない。
≪マハジオダイン≫
続いてのアラストールの電撃が全体へ。
レイにも電撃が放たれるが、重症には遠い。
キュウキの具足を装備し、電撃弱点を耐性へ変更。
さらに剣技に対しても1割以上軽減している為まだまだ元気だ。*16
「チッ無駄に頑丈だな!
ならこれはどうだ!」
「マダお願い!」
挙動から自分狙いと読み取り、動けるゆとりあるマダが前へ。
ハノカが自身の力を凝縮し放つは、高速にして高威力の銃撃。
| グランドタック | 銃撃属性スキル | 敵単体へ銃撃属性大ダメージ |
| 銃ハイブースタ | 自動効果 | 銃属性攻撃時の威力を1.5倍 |
乾いた音と共に弾頭が発射。
レイの盾になったマダの巨体すら押し込む大威力。
「グォォ……恐るべき破壊力の銃撃でありますッ」
「その様ね、貫通がないのは幸いだけど」
邪神の身体を遮蔽にしつつレイの目に映るのは捉え難い踊りのような動き。
≪トリッキーダンス≫*17
「くっ……!」
「ヒホ!? 状態異常は困るホー!」
レイとジャアクフロストが状態異常:魔封へと陥る。
高威力の銃撃に状態異常、厄介な敵だがレイ達も又指をくわえて見ているだけで無し。
「バロンは回復、続いて≪アクセラレート≫!」
「アイヨッ!」
レイが行動を加速させ、メパトラストーンを使用。
続いてバロンがメディラマを発動して全体を回復すする。
鍛えたウカノミタマ*18を業魔殿でランクアップさせたバロンは回復に長けている。
強力な耐性も相まって困難な戦闘でも心強い仲魔と言えよう。
「お返しに喰らうホー!」
続いてジャアクフロストが
其処へマダの薙ぎ払うような一撃が襲い掛かる。
≪冥界破≫
マグネタイトを込めた、破壊の波動。
怒涛の如き一撃がハノカ達を襲う。
巨体に相応しい力に吹き上がる血。
特にアラストールはダメージが大きい。
(堕天使は物理弱点? 打撃限定かもしれないけどなら魔法に強いと見てていいかしら。
確か一部の堕天使は────)
レイの思考と共にチヒロがラク・カジャ団子*19をレイへ使用。
同時に仲魔のアテナが
敵の攻撃への備えとした。
「支援はこっちでする、奴の動きをよく読んで」
それぞれの陣営の手順が終わり
(戦術はよく理解しているか、面倒だな)
ハノカは物反鏡を使用、続いてベルセルクが溶解ブレス*20を放つ。
「つっ……! 合体で強化はしている訳ね」
続いてダイアナが
其処からハノカが銃口をレイへと向ける。
「クズらしく堕ちろ……!」
≪モーンバレット≫*21
赤紫の光弾が高速で連射。
バロン、マダ、レイを撃ち抜く。
万能の銃撃はやはり脅威。
さらにアラストールが続けて動く。
槍の矛先は呪うか如くレイへ。
| デカバー*22 | 神経相性スキル | 敵単体を3ターンHP回復不能状態にする |
ネメシスの如く、復讐を司るアラストールの力が容赦なくレイを縛る。
手番がレイ達へと移り変わる中、ハノカは余裕の表情を崩さない。
対照的に使役悪魔の三体は無表情だった。
「その程度で落ちはしないわよ。
バロンはアムリタの雫*23を使って」
「回復デキナイノトカ、ヨク分カランノハコレダナ」
バロンが毛並みの中から取り出した道具にてレイは回復。
続いて防御フォーマットで味方の防御力を引き上げ、ジャアクフロストは再びランダマイザ。
バフ・デバフに続くのはマダの≪地獄の業火≫*24。
直線状を薙ぎ払う業火は堕天使とハノカを貫く。
「ぐぅ、大した火力だな……!」
ハノカは確かに焼かれダメージを受けたが、アラストールは無傷。
そこからレイは閃刀を掲げコキュートスを発動。
ハノカに氷結を叩き込むがダメージは軽微。
中威力程度なのもあるが手ごたえからすると耐性持ちか。
ダメージを受けたハノカは舌打ち。
あちらとしてもレイの戦闘能力は予想以上らしい。
「しつこく抵抗してくれる!」
ハノカからすれば業腹だが、なかなかの強敵。
バステやダメージを的確に立て直し、弱点もなくデビルCOOP*25も狙えない。
これまで一蹴してきた的とは違う。
(私に此処まで抗うとは。
だが、底が見えてきたな)
他方レイからしてもハノカは予想以上の強さ。
アラストール共々自分よりLVが高いだけあり、中々に崩しがたい。
(やはり魔法無効の耐性持ち。
となるとこのタイプの弱点は……)
両者の思考が加速する中、チヒロがハーブ酒*26で回復し、アテナがテトラカーンを展開。
レイ達の手番が終わりターンが回る。
「頃合いだな。
アラストール、拾ってやった恩の分働け」
ハノカの言葉と共に端末が点滅。
何らかの信号が送られ、堕天使が目を見開く。
「ふざけ──ガ、ギィ、ガアアアアッ!!」
咆哮するアラストールの目は、血涙を流しながらも力を宿す。
≪獣の眼光≫*27
(コイツ……仲魔に何を……?
何かの改造でもしているの!?)
レイの察しの通りアラストールはアコーニから提供された実験体悪魔──捕獲した物をあれこれ弄った存在であり、WGMの引き渡し後も調整が行われている。
その結果得られたのがマグネタイトの過剰消費による獣の眼光。
先程と同じようにダイアナがデクンダに能力低下を抹消、ベルセルクが溶解ブレスでレイ達の防御力を低下させ。
喉を割くような叫びと共にアラストールが動いた。
| メギドトランス*28 | 補助スキル | 使用したターン対象のMP消費が2倍になる代わり万能属性攻撃のダメージが50%アップ |
| 魔のドナム*29 | 補助スキル | 味方単体の次に行う魔法ダメージを50%アップ |
アラストールの手によってハノカへ二重の
高速かつ淀みない動きで銃を構える。
輝く銃身の照り返しを受け、ハノカは獰猛に笑う。
これこそがかつての世界で最強を誇り、今の世界でなおも進化を続けるウェランドの業!
「私に殺される事を、光栄に思ええええっ!」
| フライシュッツ | 万能属性銃撃スキル | 敵全体へ万能大ダメージを与える ハノカが父から受け継いだ魔銃を以て極限まで集中する事で可能とする奥義 |
魔弾が流星の如く飛翔。
銃弾では有り得ぬ鋭角すら描く軌道でレイ達を撃ち抜いた。
上がる血しぶきに苦鳴。
それがさらにもう一発。
一発目とは別の軌道にてレイ達へ飛ぶ。
(手こずりはしたが終わりだな)
ハノカが持つ魔銃はメテオドラグーン。
かつて彼女の父たる銃皇が私財を投じて創り出した至高の魔銃。
貴重なシュバルツバース算出の資源を使用しただけあり、性能は万能銃技2種をも使用可能にする恐るべき高さを誇る。
ハノカが思うに世界最高のガンスリンガーに相応しい一品だ。
ハノカを銃使いと見た敵が、銃撃ハイブースタを載せた銃技を反射で凌ぐのは当然計算内。
バステと耐性ノックも兼ねた攻撃で敵の動きと耐性を見定めて。
アラストールを駆動しての支援で威力を強化し、2連射を以て撃ち貫く。
かつての世界、2度目のシュバルツバースとデヴァロ―ガによって世界が滅びる前に、父が死闘の末倒した鬼女ボルボ。
鬼女の残滓と合体したハノカの身体と、父譲りの強き魂は魔銃のもたらす負荷に耐えられる。
(ウェランド一族は、銃皇は強い。
そして私はその名を継ぐ勇者とも言うべき天才。
デヴァローガを滅ぼし、この世界に君臨する存在)
かつての間違いを正し、衆愚と雑魚を従える。
それが自分と妹と、今は亡き父と母達の願い。
迷いなどあるはずもない。
(それが道理であるのだが────)
膨大なMPを消費した事もあり、疲労感を感じる事もある。
だがそれ以上にハノカには不快極まりない現実が赦しがたい。
「……あの一撃を喰らって何故まだ生きている」
レイは傷を負いながらも生存。
確かに魔弾を受けたはずだが何とか生きていた。
「ひゃーどうにか死なずに済んだホー。
≪食いしばり≫のスキルって凄いホ」
「胴体が二連ドーナッツになりましたが……未だに健在でありますっ」
おまけにジャアクフロストは死にかけ、マダも風穴二つが開いていたが生きていた。
「お前程度では耐えられない威力のはず。
なのに何故、魔弾に耐えたのだ?」
「それは当然マダが庇ってくれたからよ」
その言葉にハノカは眉根を寄せる。
悪魔が自発的に盾になる事はあり得るのかと。
あり得るとすればそういうスキルか。
「≪カバー≫をスキルとして持っている悪魔か?」
「いいえそれも違うわ。
スキル枠8つだと流石に入れるの難しいし」
正解はね、とレイは前置きして告げた。
「お酒よ」
「は?」
銘酒大吟醸九段仕込み、それが秘密である。
「性格友愛の忠誠心が高い仲魔はね、召喚師が危険な時に庇ってくれるのよ。*30
マダの本来の性格はそうじゃないんだけど、世の中には悪魔の性格を変えるお酒がある。
後は分かるわよね?」
思わずマダの巨体をハノカは仰ぎ見た。
悪魔の酒を飲んだ人間が死んだという話は聞いても、その逆など聞いた事がない。
「私の性格の強制的変更!
一抹の悔しさがうま酒とつまみに押し流されていきます! すわっ!
……それに召喚師を死なす訳にはいかんのでな」
マダの前身はヴリトラ──かつての雨柳がレイを護る為に残した悪魔。
仲魔となってからの二年間見てきた少女。
そのソウルは、道半ばで朽ちて欲しくないと思うには充分だった。
「馬鹿な! そんな事がありえる物か!
そんな物私の世界には」
「この世界にはあるのよ。
狭い世界から出ずに
妄念に囚われていたら分からないでしょうけどね」
レイ達に手番が回り、反撃が始まる。
レイが宝玉輪を使用して自分達を回復。
続けて閃刀を掲げ悪魔を召喚する。
「来て! 私の今を支えてくれる仲魔!」
少女の言葉と共に悪魔が降り立つ。
召喚されたのは麗しき女神。
「──あら、私の力が必要なのサマナーちゃん?」
上品な白と深い青を中心にしたドレスに、円環を先端近くに備えた杖。
こげ茶色の髪の間からは尖った耳が見える。
レイより少し年上でいて、落ち着いた表情の美貌。
「貴方の心意気に応じて私の──女神ヴェルザンディの力を奮いましょう」
北欧神話において現在を司る神格と謡われる女神ヴェルザンディ。
レイが雨柳のスクルドの協力も得て、合体で創り契約した仲魔。
\カカカッ/
| 女神 | ヴェルザンディ | LV65 | 技・神経・精神耐性 破魔・呪殺無効 |
水しぶきの様にマグネタイトの残影を煌かせ、女神が降り立つ。
優雅に麗しく、まるで自分達が主役の様に。
自らの主たるレイと、仲魔達と共に堂々と。
「お前達はっ何処まで私を苛立たせるっ……!」
その姿が、ハノカに気に障って仕方がない。
「我々ウェランド一族の、銃皇の威光へ泥を塗る馬鹿者共!
最強の道筋に汚泥をぶちまけるなどと!」
シュバルツバースが消滅後、混迷を深める世界。
その中で銃皇と呼ばれた男は強かった。
日本のメシアを半壊させ、高位悪魔を倒し裏社会へ名を轟かせた強者。
銃皇を企業や悪魔組織、国すら無視できなかった。
ウェランド一族に手を出し容赦なく滅ぼされる敵を、力と威光に阿る人々を、ハノカは子供の頃から見てきた。
だから彼女にとって銃皇とは最強であり、
それは1プラス1が2であるような前提だった。
「無駄な抵抗は止めてさっさと死んでいろよ!
それが当然だろうが!」
「……ウェランドって名前のDBなんだけどさ」
ハノカの激昂を遮るようにレイが呟く。
「今回の作戦に当たって調べたけど、この世界にもいたのよね。
<マーセナル>ってファントムとつながりのある、武器調達や傭兵派遣している悪魔組織のトップだったんだけど」
レイの言葉にハノカは目を見開き、続いて口元に笑みを浮かべる。
敵の言葉ではあるが、やはり喜ばざるを得ない。
(そうか! 父上はやはりこの世界でも名を残していたか!
日本で聞かなかったとすると英米あたりが本拠?
この世界でどんな偉業を積み重ねていたんだ?)
何らかの策かもしれないが、期待してしまう。
偉大なる父のこの世界における英雄譚を。
ハノカの期待を前にレイが一瞬間を置き続けた。
「私達がこの世界に来る前に、倒されたそうよ。
組織ごと、取り巻き毎完膚なきまでに」
「………………はあ?」
「信じられないだろうけど本当よ。
非合法作戦や貴方達みたいな事をしていたからキリギリスに殴り込まれてね。
何なら証拠データもあるけど」
チヒロが嘆息を伴って告げた。
確かにハノカには討伐された男とその側近両方の面影がある。
「……貴方の言う銃皇の様な絶対も最強もこの世には存在しない。
もしあったとしても道理を破り、罪を犯していいはずがない。
それを知らず、学ぼうとせず、顧みる事もないなら終わるだけよ」
レイやチヒロは悲しい程に良く知っている。
護国の大義に酔い自分達を絶対的に正しいと定義し、
理由があろうとああなってしまったならば、これ以上人を傷つける者が出ないように倒すのみ。
「貴方の歪みがもたらした悪は、私達が此処で終わらせる!」
葛葉レイは声を張り上げ宣言する。
それが目の前の敵への誠意だと考えている故に。
・Tips:WGMの出身世界について
21世紀初頭現れたシュバルツバースが調査隊の多大な犠牲と引き換えに破壊された後もなおも混乱が止まらなかった世界。
メシア教の様な大組織(京都を本拠とするヤタガラスは技術革新に乗り遅れ衰退していった)のみならず、銃皇率いるWGMといった新興勢力が各国で台頭し戦国時代の様に争ってきた。
バックに居た各国政府やメガコーポを巻き込み争いは止まらず────再び発生したシュバルツバース、並びに大量の人喰い悪魔デヴァローガによって滅ぼされた。
なお1度目のシュバルツバース以降、各国の間で技術協力も停滞したためコマンダースキルは開発されていない。
端的に言えば
次回も戦闘の組み立ては終わっているので近いうちに投稿予定です