真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス- 作:ローグ5
最近SEEDFREEDOMやパラダイス・リゲインドと面白い映画が続いていて実に嬉しい日々が続くものです
レイ達とハノカの戦いはまだ続いている。
豊富なアイテムと手数故に互いを押し切るに至らない為に。
「ぐっ……!」
だが押しているのはレイ達だった。
「ヴェルザンディは攻撃を。
此処で削っていくよ」
「了解よサマナーちゃん」
レイのヴェルザンディが杖を掲げ光を放つ。
光の波動は敵全体を灼き、特にアラストールを苦悶させる。
(
破魔は無効にしている。
すると噂に聞く奇跡属性か……?)
白煙を上げて燻るアラストールを見つつハノカは推測するが、事実は推測と異なっている。
ヴェルザンディが放った魔法は≪光の裁き≫*1。
無効にした破魔でも、警戒していた奇跡でもなく、神聖属性。*2
堕天使の耐性からレイは有効と推測し試したが、大当たりだったようだ。
(しかも、だ)
レイ達の手番が終わる、前にチヒロの
防御モジュールでレイ達の防御を上げ、アテナがまたしても
ハノカの攻撃に対する防備を整える。
(あの女が鬱陶しく支援を続けている。
第一何故テトラカーンが、MPの回復も無しに此処まで持つ?)
ハノカの知るテトラカーンの
前衛型の悪魔なら連発できる物ではないはず。
にも拘らず女神は障壁を展開し続けている。
実はハノカは知らないがチヒロの従えるアテナの使用するテトラカーンの消費するMPは6。*3
全体を対象とするにも拘らず驚くべき省エネ仕様となっている。
(レベルの高さは知ってはいたが──どうなっているんだこの世界は!?)
感情を押し殺しながらもハノカは使役悪魔と共に攻撃を続ける。
デバフの解除と敵へのデバフ、強化からの攻撃。
されどレイ達は崩れない。
傷を負おうとも冷静に辛抱強く対応を続ける。
切り札を切り、部下は各所で撃破されたハノカにそう簡単に覆せない。
手数の差が、知識の差が、仲魔との連携の差が戦いの趨勢をレイ達へ傾けていく。
「馬鹿な……!
父上から受け継いだ悪魔が!?」
そしてついに均衡が決定的に破れた。
マダの焔によってベルセルクとダイアナ、ハノカを支援していた二体が焼かれた。
マグネタイトの残滓となった二体に目を見開く。
それは確かな好機!
「せええええい!」
姿勢を低くしたレイが瞬時に切り込む。
師と別れた後も研鑽を積んだ少女の刃は洗練されている。
それこそ、銃を基盤とする世界に居たハノカは見た事ない程に。
| ブレイブザッパー*4 | 物理スキル | 敵単体に物理属性大ダメージ 高いクリティカル率を誇る |
閃光の如く煌く刃は咄嗟に盾にした腕毎胴体を横一文字に切り裂く。
駆け抜けたレイの手には奥深くを断ち切った致命の感覚。
かつては何度も味わったそれは、相手の
「なめ、る、なあっ!」
だがハノカは食いしばり耐えてみせた。
左腕は端末ごと凄惨に破壊され、致死量の血を流し。
それでもなおメテオドラグーンを構える。
「私はッまだ、戦える……!
欺瞞を踏みにじり、銃皇を継ぐ者として」
戦意を支えるのは狂信だろうけど。
「貴様らを殺しこの世界で」
「いいや、貴方は此処で死ぬんですよォ」
ドス、と重い音が響いた。
音の源はハノカの胸に刺さった槍。
槍を握るアラストールには嘲笑と侮蔑。
その表情は先程までと決定的に異なる。
悪魔召喚プログラムの入った腕部端末への重篤なダメージ。
銃を握った手を優先して残さんとした選択はハノカにとって最悪な結果をもたらした。
即ち──制御を外れたアラストールの造反。
「き、さま……何、を?」
「私も人の事は言えたものじゃないですがねェ、クソったれのMag牧場に馬鹿丸出しの妄想。
不快だったんでずっとブッ殺してやろうと機会を伺ってたんですよ。
召喚呪縛で逆らえませんでしたが今ではこの通り」
アラストールの人外の瞳には憤怒。
堕天使からしてもハノカ達WGMの振舞いは耐えがたかったようだ。
残忍に執拗に、深く刺した槍を抉り込み。
「なーにが銃皇ですか。
所詮は子供の教育すら出来ない負け犬でしょ?」
「貴様! わ、が父を」
「あ、もういいです。不快だから死ネ」
上へ振り上げ心臓から脳までを無慈悲に破壊した。
天井まで飛散し張り付く血に脳漿。
凄惨な光景を前にアラストールは笑う。
「ヒャハハハ! 馬鹿に相応しい死に様だァ!
故のある殺しは! 復讐は最高ですねえェ~!」
復讐を司る悪魔故か狂気に溢れた哄笑。
眉を顰めるレイとチヒロの前でけたたましく笑い、向き直る。
「不快な光景を見せて申し訳ないですねお嬢さん方。
少々私としても不満がたまっていたものでして。
ああ、私に抵抗の意思はありませんよ」
「……今の様子を見るとそうは思えないけど」
堕天使の言葉にチヒロは眉根を寄せて呟く。
「私が愛するのは正当な復讐でして。
それに貴方達を見込んで頼みたい事があるのです。
此処に囚われている私のサマナーを助けていただけませんか?」
曰くアラストールと召喚師は捕獲され、召喚師の方はMag牧場に使われていたらしい。
もし生きてたならば、是非貴方達の組織で保護を頼みたい。
そう告げる堕天使の口調には上辺だけじゃない誠意が感じられた。
「代わりと言っては何ですが私が知る限りの情報は答えますよ。
何なら合体素材に使ってもいい」
「どの道此処に囚われているなら保護対象よ。
それで情報って」
「新しき神話やガイア再生機構に関して少々、ね。
ただ急いだほうがいいかもしれません。
WGMとかいう三下だけでなく此処には<ガイア再生機構>もいますから」
レイやチヒロが息をのむのを見た、アラストールの目には確かな真剣さ。
自身を捕獲し改造しWGMへ引き渡した奴等もエージェントを送り込んできている。
その力はアラストールから見ても恐るべき領域。
「早めに対処せねば死人が出ますよ」
堕天使なりの誠意を伴ってそう告げた。
WGMの研究室内部にて、衝撃波が巻き起こる。
唯人等容易に吹き散らすそれに、雨柳達は足に力を入れ耐えた。
「アイリス無事か!?」
「私の方は大丈夫です。
だけどこの、LVに見合わない程の力は……!」
しかしそれ以上に重大なのは目の前に立つ敵の力。
高度な装備にアナライズのLVから矛盾した強大さ。
アイリスにとっては忌々しくも既知の物。
「ガイア再生機構の!」
本来の力を現したガイア再生機構のエージェント、アコーニと従える仲魔が荒れ狂っていた。
\カカカッ/
| デビルバスター? | ギリメカラ・アコーニ | LV69 | 物理・銃撃反射 ??? |
\カカカッ/
| 凶鳥 | 創造のグルル | LV68 | 銃撃弱点 ??? |
「へえ、俺達の仕様まで知っているのか。
大方漂流者だろうが……折角だし殺しておくか」
アコーニは手にした突剣を軽く弄ぶ。
武器COMPとしての機能が付与されているのは高い技術を持つ勢力に属する証。
| ミセリコルディ*5(武器COMP改造済み) | 魔力知力を上昇させ、小種族人間へのダメージを30%上昇させる他武器COMPとしての機能を持つ |
余裕を保つアコーニは雨柳達を一瞥。
(おっさんの方はマニュアルの端に乗ってたそこそこのサマナー。
殺られた奴も一人か二人はいるそうだが……ま、仲魔も変わり種だが所詮は人間だ)
通称レイブン、元ヤタガラスのエースで管使い。
かつて生きていた世界には居なかったが、確かに現地民としては腕利きだ。
然れども選ばれしエターナルの一員たるアコーニとの差は大きい。
(で、女の方は銃使いで悪魔人間か。
こちらはまあおっさん潰してからでいいな。
LV60前半の雑魚だし)
クラリスは後衛に徹している為未だに無傷。
だがこの手の動きはあくまで手番の前後、そのいずれかに支援する動き。
アコーニと真っ向から渡り合う
(耐性ノックからすると物理反射はない。
時間も押してる────
相手を観察し油断はなく、されど見下して。
アコーニは剣を振るう。
≪テトラブレイク≫
軽い突きが雨柳達の物理反射障壁を粉砕。
何かが砕ける音が響く中、突きが瞬時に横一文字の斬撃へと変化する。
「そろそろ死んでくれると嬉しいね」
装束の裾が翻り腕が信じられない程しなやかに動く。
アコーニが繰り出すのは破壊の波動。
| 冥界破 | 物理スキル | 敵全体に物理属性大ダメージを与える |
| 物理貫通Ⅲ*6 | COMP改造 | 物理属性攻撃時耐性・無効・吸収を無視する |
| 豪腕一閃 | 特徴 | 斬撃・打撃相性のスキル使用時、威力が50%上昇し詠唱時間が30%減少する IMAGINEの邪鬼ギリメカラが持つ特徴 |
「御屋形の盾とならん……ぬう!」
雨柳をカバーしたオンギョウキが砕け散り。
シロガネとスクルドにも幾つもの傷が付く。
さらに刃を受けたシロガネの肌は紫に変色。
その痛々しい様は毒に相違なし。
ミセリコルディの刃は毒々しい紫に輝いている。
毒追加*7、さらにグリモア*8と猛毒使い*9によって猛毒を敵に押し付ける禍き刃。
幾多のDBを無慈悲に殺してきた刃は、物理と付随する毒にはとどまらない。
行動を終えたはずのグルルの目が朱く光り駆動。
毒状態の観測と同時に鋭利な爪が振るわれる。
| ヤクシャの凶爪 | 連動効果 | 敵が毒状態になった時ランダムに物理属性小ダメージを3回与え、成功時ヒットした敵を低確率で緊縛状態にする |
機械的に繰出された凶爪はスクルド、シロガネ、雨柳に一回ずつヒット。
雨柳の動きが止まり硬直──BIND!
「流石に、削られるな……!」
口から血を流しつつ雨柳は視線を背後へめぐらす。
この部屋に突入した際に
貫通を付与した高威力物理の連撃のみならず、毒付与を基盤とした追撃を行う。
シンプルな戦い方だが、強力な攻撃と状態異常で押し込まれつつある。
(だが耐性はある程度抜いた。
こちらはまだまだ戦える)
雨柳は背後でクラリスが動く。
緊張しながらも淀みのない動き。
激戦に良く付いてきてくれている。
≪アムリタ≫
最初に動いたアイリスが雨柳達の状態異常を回復。
雨柳の緊縛が、シロガネの毒が消える。
「スクルド、アドラメレクを!
回復は俺の後だ!」
雨柳の号令にうなづき、スクルドはついと槍で中空に軌跡を描き舞う。
魔力を伴った舞踏は己が仲魔を呼ぶ、招来の舞踏*10と呼ばれる動き。
「俺の出番だな。あの殺し屋が敵か」
召喚されたのは鋭い4枚の翼に白亜に黒赤の三色の、鋼鉄の身体を持つ魔神。
雨柳の最大戦力たる仲魔は堂々と立つ。
(……驚いたな魔神、というと堕天使の
ここまでの悪魔を使うとは流石に予想以上だ)
他方アコーニは少しばかり雨柳の評価を上方修正。
この高GPといえど自身も知らない悪魔とは予想外。
観察しつつ思考を紡ぐ中、雨柳が刀──
(恐らく"深層"までつながった悪魔。
火炎の属性だろうがスキルは)
一閃にて、首を三分の一程断ち切られた。
「がっ……!?」
ここしばらく味分かった事のない、無慈悲な痛みさえ薄い凄絶な斬撃。
思わず傷口を抑えながらアコーニは瞠目する。
「この技まで、使えるとはな……!」
一般的な周回のDBならいざ知らず、アコーニはその技を知っている。
対悪魔剣技の深奥が一つ、死をもたらす達人の業。
シュバルツバースの奥で、天蓋の東京で振るわれた極限の剣技。
| 奥義一閃*11 | 物理スキル | 敵全体に物理大ダメージを与え、低確率で即死させる |
身体能力かあるいは習熟度で本来の業よりも効果は劣る。*12
だろうともアコーニはあくまでバステ半減、グルルには耐性がない。
そう何度も喰らいたい技ではなかった。
シロガネが宝玉輪で回復する中、アコーニも装着したユニットから即座に高級応急薬を注入回復しつつ雨柳を見る。
(俺と同じ様なグリモアみたいなバステ強化のスキルを持つ可能性は低い。
基本的に神道系の正統派サマナーの構築だ。
が、世の中ラッキーパンチってもんがあるからな。
明らかに
面倒な相手ではあるが、撤退はない。
(退屈な任務で得る物無しってのも割に合わねえ。
てかそれ以前に俺は
エデンに属して以来高めてきた力は<デヴァローガ>や<新しき神話>と戦い勝利し、栄達する為にあるのだ。
それを下準備程度でいちいち消費などしてはいられない。
(奴らの耐性と体力は大体わかった。
俺が2回殴っても死なないだろうが)
グルルは危険域だが自身の体力に余裕はある。
サイバネアイに内蔵の簡易サードアイ*13に反応なし。
対応しきれない反射耐性の悪魔はいない。
(
行動方針を規定、サマナーを標的に攻勢へ出る。
主の意を受けてグルルが放つはソニックブーム。*14
下準備は整った────アコーニは目を見開き、武器COMPのトリガーを引く。
| クロックアップ*15 | コマンダースキル | 味方単体の行動回数を1回増加 エデンの高い技術によってミセリコルディを改造して付与したスキルであり、1戦闘に付き1度のみ使用可能 |
奥の手の一つである武器COMPの重改造によって増設されたスキル。
消費は大きいが要所で使えば効果は絶大。
スキルが起動──武器COMPの刀身が輝きを増す。
スキルが起動──脊髄インプラントに点火し、神経へ灯がともる。
スキルが起動──空気が歪む中アコーニが嗤う。
「雑草を草刈り機で刈る様に、刻んでやるよ!」
初撃で放つは冥界破。先程と同じように全体へ広がる破壊。
アドラメレクとスクルドが毒へ陥る。
毒状態を観測したグルルの凶爪が6度。
「物理耐性は、無しだよなあ!」
雨柳の猛反撃が返礼として叩き込まれる。
刃は凶鳥の片翼を切断。
重傷を負った凶鳥、を踏み越えてアコーニが迫る。
「これはどうだ?」
中空から全身をしならせ放たれるのは、
計6回、刃から目をそらさず、傷口を毒で染めながらも尚立ち。
凶鳥の爪がシロガネへの一撃の後、1度雨柳を削ぎ、更に頭部を狙うが。
「それはさせないわよ」
友愛の加護*16を以て、スクルドがカバー。
物理無効耐性の彼女は傷一つなく、グルルを主と共に睨む。
「スクルド!」
「分かってる」
そこからさらに、雨柳の猛反撃とスクルドの慈愛の反撃が同時に発動。
二重の刃は凶鳥の片翼を切断し、真っ向から喉を刺し貫く!
「よくやるじゃねえか。
まあそれで終わりだろうが」
声もあげずに消滅する仲魔をよそにアコーニが再度剣を振るう。
まだ立っているが雨柳は満身創痍、今の猛反撃で毒が進行し、食いしばりを切った。
ならば文字通りの虫の息だ。
「お前の事は覚えておいてやるよ!
5分ぐらいはな!」
駄目押しに振るうデスバウンド、死の連斬はそのまま雨柳の身を、斬り刻む事はなかった。
「ンだと!? そこまでやるか!」
「神道式召喚術の奥義、らしいわね」
マグネタイトの光と共に瞬転したスクルドが雨柳の盾になった故に。
召し寄せ、それは仲魔の構成マグネタイト操作により瞬間的にカバーさせる技。
最近再度修練し直したこの技を以て雨柳は、スクルドを自身の傍へ移動させて再度のカバーを成功せしめた。
「ここ最近馴らしておいて良かったわ。
こんなにすぐ使う時が来ると思わなかったけど」
雨柳同様満身創痍になりながらもスクルドはまだ死んでいない。
ならば動き戦う事が出来る。
と後ろ目をやると雨柳も動かず、目のみで同意してくれた。
(私もサマナーも此処で死んでいられないのよ。
色々と関わる人も増えて来たし)
過去周回、ひいてはその頃の雨柳との知り合いが出てくるとは驚いたがそう悪くは思わない。
それは彼女の主が世界をまたいでも変わらなかった証であるから。
(あなたもそうなのかしらアイリス?)
スクルドの背後にて、アイリスの魔力が励起する気配がした。
アイリス・ビショップにとって雨柳巧は恩人である。
かつて全てを失った自分を拾い、世界が滅びゆく中も人としての生き方を教え守り育ててくれた。
最終的にガイア再生機構との戦いで戦死するまでの数年間は掛け替えのない月日だった。
暖かい部屋での食事や団欒、凍土に閉ざされた世界でも掛け替えのない日常があった。
アイリスは自身の記憶がないとしても、この世界で雨柳が生きていた事が嬉しかった。
少し戸惑いながらもかつてと変わらないこの人がいてよかったと思う。
(だから──させません)
自身に渦巻く魔力を集中しながらアイリスは思う。
先程雨柳が集中攻撃を受けた時、心臓が止まるかと思う程怖かった。
自分より遥かに強いアコーニの刃は鋭く、無慈悲で死神の如し。
不吉な刃が雨柳を斬り刻む光景に、まだ心身が落ち着かない。
だけど、泣いてばかりはいられないのだ。
かつてアイリスの生きていた冷迷の東京にもいた
それがまたしても雨柳の死の原因となる等許せるわけがない。
同じ事の繰り返しなど、まっぴらごめんだ。
(人らしい心を失った貴方達にあの人を奪わせはしない!)
アイリスはかつてメシア教に居た頃大天使スラオシャの因子を移植された。
彼女が実験に使われたのは熱心な信者だった両親の後押しもあるが、聖女候補に相応しい高い治癒の適正もある為。
高い適性は癒しに長けるスラオシャの力でさらに増幅されている。
かつての世界では出力不足により真価を発揮する事はなかったが、この世界での過酷な戦闘によって耐えうる心身へと成長しつつあった。
未だ足りない出力を補う様に、
嫋やかに両腕を重ね、捧げるは癒しの祈り。
「貴方達の為に祈ります」
| 回復魔法 | 味方全体の死亡以外のバステを回復し、全回復させる |
| アイリスの聖女としての素養とスラオシャの力を合わせて初めて使える魔法 LV不足の為MP消費が倍となっている他1戦闘において1度しか使えない |
清純に輝く祈りの力が雨柳達の緊縛や状態異常、更に傷を癒やす。
それ以上に消耗した体力が戻り、十全のパフォーマンスが可能になった。
「ありがとうアイリス。
お陰で……思う存分反撃できる!」
これまで状態異常と回復で2手消費した所を1手のみの消費。
この1手分は実に大きい。
雨柳の言葉を肯定する様に、同時にスクルドが
低下した防御力が戻り、それ以外の能力が上がる。
槍を手に舞ったスクルドが、終わり際にアイリスへ軽く手を振った。
「ここが勝負時だね?」
「ああ、此処で決める」
続けてシロガネが精神向上*17の札を、雨柳が魔壁の勾玉*18を使用。
強化を受ける対象はアドラメレク。
「俺の太陽の輝きを求めるなら────応えよう!」
魔神の両腕の間に膨大な熱量が集中。
アコーニが目を見開く中強まりゆく恐るべき焔。
それは太陽神たる魔神の迸る力!
| 火炎属性魔法 | 敵単体に火炎属性大ダメージを与える ダメージは |
強化を施された魔神の焔はアコーニへ着弾。
装備とスキルによって強化された体力を瞬時に削り、食いしばりさえさせない。
(…………馬鹿な俺はエターナルだぞ?)
膨大な焔に焼かれていくアコーニの脳裏に疑問。
退廃した社会の中エデンに誘われ幾多の世界で暗躍してきた。
敵を殺し馬鹿を扇動し、社会を荒して直接間接問わず多くの人間を死に追いやってきた。
だが己の行いが悪だと、アコーニはたいして思ってはいない。
絶望し死にゆく者共は全て、自分や他のエターナルに劣る雑魚共。
自分にとって大切でも価値がある訳でもない。
そんな者を幾ら踏みにじったからなんだというのだろう?
(そうだ、俺は選ばれた特別。
あらゆる雑魚を蹂躙するエデンの選ばれし者。
である、はずなのに)
自身の身体が焼き尽くされるのを感じながらアコーニは思った。
(何故ここで死ぬのだろう?)
答える者は誰もいなかった。
・
・
・
「はぁっはあ……流石に肝を冷やしたわね」
千葉県の非合法レルム内に築かれたWGMの秘密拠点の一つ。
ようやく到着し、迎えの兵が来たのを見てシエラはほっと一息つく。
拠点から逃れられた理由は転送ポータル。
一度使用すれば壊れる上に一方通行な代わりに転送距離は折り紙つき。
ガイア再生機構から受領したそれは、この時本当にあって良かったと思う。
「姉さんは……まだ着いてないか」
ハノカとシエラ、後は一部の側近のみが知る転送装置を使い、拠点外の隠し施設へ脱出。
配置していたバイクでこの拠点へ逃れてきた。
それはともかくとして姉に連絡が繋がらないのは不安ではあるが。
(ま、他はともかく姉さんは何とかするでしょ。
問題は襲撃を受けた本隊。
包囲されてあそこまで防衛網を食い荒らされたらもう駄目だわ……)
兵員や悪魔合体装置の製造設備等失った物は大きい。
それでもシエラは気落ちしていない。
大切なのは自分と姉の命であるから。
(私と姉さんがいれば銃皇の血は途絶える事はない。
兵達には悪いけどこの世界のDBや企業を取り込めば補充は幾らでも効く。
姉さんが来たら今後について考えなくちゃね)
兵達のエスコートを受け、頑丈な門が開く中シエラは思考を巡らす。
動揺を見せず羽織っていたコートを渡し、首元へ冷えた風を送り込むと冷徹に計算。
自分達は罪を重ねていると、往生際が悪いとシエラは思っていない。
あらゆる敵を粉砕する父の強さと、その雄姿を賛美する母達の姿。
産まれてからの両親の
(一先ずは非合法レルムに潜伏して勢力を拡大するしかないか。
そうすれば又スポンサーはつく。
いや今回襲撃してきた勢力への報復が先かしら?)
故に姉がそうであったように、最期まで彼女は止まらない。
銃皇の娘、ウェランド一族の一員、WGMの指揮官らしく考え動く。
「貴方達は姉さんを含む部隊の受け入れを準備して。
撹乱の為の人員も忘れずに……?」
背後にある門の向こう側、何か重い物が迫る音が響いた瞬間。
頑丈なはずの門が木っ端みじんに砕かれた。
「なっ……! 追撃だというの!?」
シエラが目を見開く中敷地内へ踏み入っていく敵。
それは先程拠点で見た召喚師達でもデモニカ兵達でもない。
粉塵の中敷地へ無遠慮に踏み入ってくる巨影。
曲面装甲を連ねた四肢を持つ人型、全長3メートル近い巨兵であった。
「マシン系統!? 電撃中心に対処を!」
シエラが周囲の兵に指示を出す瞬間。
もうすでに敵は動いていた。
刹那にて力を籠めて刀を、重火器を構え。
無慈悲な殺戮を開始した。
「がっ!」「ぎぺっ」「ごぉ……!」
恐るべき速度と力の二連撃に次々とWGM兵が殺戮されていく。
血がしぶき、骨肉がばら撒かれ、デモニカや武具が砕ける。
それはシエラとて例外ではない。
(馬鹿な、ありえないでしょ)
迫撃砲で半ば引き裂かれ、宙を吹き飛びながらシエラは唖然とする。
先程の襲撃以上に、今の自分を撃ちのめす現実が信じられなかった。
こんな蹂躙劇には見覚えがある。
まだ前の世界で父が生きていた頃、たまにあった事だ。
矮小な欲望や貧弱な正義感からウェランド一族へ手を出した愚か者共。
あらゆる点で劣る戦闘員を数と質で上回り一方的に殺戮し生き残った女子供はその身を以て罪を償わせる。
そういう事を銃皇を中心に幾度も行ったし、シエラ自身も加わってきた。
だからこそ信じられない。
今自分達がこんな一方的に、斬られ撃たれる等。
(こんな事ありえてはいけない。
そうよね姉さん?)
自身をのぞき込む巨兵から目をそらすようにシエラは心中、姉に尋ねる。
その姉が既にこの世にいない事は、最後まで知らなかった。
WGM掃討戦から数日後、雨柳の所有するビルにて。
「そろそろ時間だ。
それじゃあ御影さん行ってくるわ」
雨柳は今日も異界巡りに出かけようとしていた。
先日のWGM掃討戦は予想以上の激戦となったが何とか成功裏に終わった。
主力とガイア再生機構から派遣されたエージェントを殲滅し、捕虜となっていた人々の多くも救助する事が出来た。
またサマナーの救助の為協力した堕天使アラストールから、三大勢力に関する幾つかの情報を入手できたのも大きいだろう。
(私のサマナーは……記憶を消すなりして保護してあげてください。
それと余り心が強い子じゃないので、頼りがいのある相手をあてがってくれると嬉しいですねェ)
WGMに捕まっていた、自らのサマナーの保護を条件に堕天使は全面的な協力を約束していた。
殺戮を好む気性と裏腹なサマナーへの慈悲。
以外ではあるが確かな信頼関係があったのだろう。
それもまたサマナーと悪魔の関係性の一つかとも雨柳は思う。
一つの事件は終わったが、まだまだやる事は多い。
特に彼方の御国メンバーやアイリスも順調に力を上げている。
消耗したアイテムの補充のみならず、仲魔を含む戦力や戦術の再検討も必要だ。
また関東周辺にはいまだにLV60~70代の異界が幾つも発生している。
それらを対処する事も重要に違いない。
なので今日もアイリスやロゼと一緒に異界攻略。
地道な活動こそが周囲に貢献し、自分や仲間の大仕事の際に命を繋ぐ。
華々しさはなくともそういう物だろう。
「気を付けて行ってらっしゃい巧さん。
アイリスちゃんにもよろしくお願いしますね」
穏やかにほほ笑む御影はいつも通りだ。
漂流者関連の事情についてある程度知っている彼女も、流石にアイリスの事を聞いた時は驚いた。
まあ雨柳ならそんな事もあるだろうとすぐに納得していたが。
(レイちゃんの知る巧さんも同じらしいですしねー。
私が知らない巧さんを知っているのはちょっと気になりますけど)
まあ細かい事を気にしていてもしょうがない。
もうすでに5人+仲魔1体いるのである。
また一人増えようが増えなかろうがさしたる問題ではない。ただし。
「所で御影さんその板は何?」
「これは投資で稼いだへそくりでDIYした板です」
ただし一番を譲る気は断じてないのであるが。
御影が掲げるのは黒檀に金字で正妻と刻まれた板であった。
仕事との合間を縫って作った自慢の一品。
強度も汚れ耐性も加工によりバッチリだ。
「せっかくなので作ってみました。どうです?」
「良くできていると思うぞ。
御影さんはたまにちょっと変な事する所が相変わらず可愛いなあ」
やだもーという御影は雨柳と共に朗らかに笑う。
「所でシロガネ君、このパイナップル乗せピザってどうなの?」
「うーん、美味しいって評判の店だけどボスカイオーラ*20やバンビーノ*21の方がいいんじゃないかな?」
他方部屋の外ではシロガネとロゼが食事内容の検討をしていた。
最近発見された食事バフは馬鹿にならないのだ。
「こないだ銀ちゃんやイザボーちゃんも美味しいって言っていたし間違いはないよ」
「……そっちはもう効果証明されてるしねー」
ロゼはこの神造魔人の銀ちゃん達への感情は何なのだろうと、ちょっと思うが顔には出さない。
人には色々事情があるし、神造魔人もそうなのだ。
たぶん、きっと。
ややツッコミ所を挟みながらも、戦いの間。
他愛のない日常は過ぎていく。
◎主人公and登場人物紹介
・雨柳巧 <デビルサマナー><剣士> LV79
シリーズポジション:ニッカリ及び悪魔討伐隊(真・女神転生Ⅳ Final)& レイブン(ソウルハッカーズ2)
最近帝都ヤタガラスと再接近している悪魔召喚師。
レイ達にアイリスと過去周回から関係者が次々来ているが、紅葉の存在は未だ知らない。合掌。
・レイ <悪魔召喚師> LV68
シリーズポジション:アロウ(ソウルハッカーズ2)
過去周回で
LVを上げ、仲魔を揃え大分強くなったがまだまだ強くなる必要を自身は感じている。
・アイリス・ビショップ <クラリック><天使人間> LV66
かつてある周回で雨柳と共に悪魔討伐隊に所属し戦っていたDB。
大天使スラオシャの力と聖女としての素養を活かした回復魔法の他に銃も使う。
今回も強敵との戦いに貢献し力をのばした。
この世界の雨柳と会って日は浅いが距離を縮める気満々らしい。
次回は短めで1話早めに投稿したいと思います