真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス- 作:ローグ5
本スレも凄い展開になっていて続きが楽しみです
恵比寿にある砂丘の影異界。
虚ろな残骸であるはずの其処は、不可解な事になっていた。
威容を誇るは本格的な軍事基地。
格納庫や施設が立ち並び、完全武装の兵士が巡回。
さらに人型戦車までもが配備されていた。
物々しい有様を醸し出す、この基地を拠点とする勢力は『新世塾』。
無原罪の新世界を実現せんとする秘密結社であり、政財界、自衛隊の内部に根を張る組織。
彼等は秘密裏にこの影異界に拠点を築いていた。
基地の奥は何らかの研究及び実験施設になっているらしい。
厳重な警備の元白衣の研究者たちが行きかい、部屋の中では装置を操り記録を取っている。
溶液に満たされたシリンダー内に浮かぶ、人とも悪魔ともつかぬ何かの、虚ろな目がその様を見ていた。
硝子の向こうで繰り広げられる血塗られた実験を。
「────X-3のパフォーマンスは上々ね。
反応速度も予想以上」
陸自の制服に一等陸尉の階級章を付けた女が満足そうに呟く。
硝子の向こう側は酸鼻極まる。
無数の手足が転がり、血だまりの中で人間が泣き叫ぶ光景。
立つのはX-3と呼称された鋼鉄の機体のみ。
「断片的なデータでも流石は
私の目から見ても動きの鋭さが違う。
メシアのサイボーグ程度なら複数相手でも確実に制圧できるわね」
行われていたのはX-3の稼働試験。
光脳改修型X-1及びX-2に続く、特化戦力型のX-3。
まだ試作段階のそれの調整。
対戦相手として使用したのは、先日非合法レルムで捕獲したメシアン達。
素材とする前の有効活用といった所か。
試験結果は良好、己の創り出した兵器は高いパフォーマンスを見せた。
上機嫌に女は記録を確かめていく。
「使った材料は処理して結晶化を。
リーダー格はX-3の材料にするから他と分けて保管しなさい」
部下に指示を出す女に後ろめたさはない。
メシアン達は戸籍も定かではない犯罪者達であり、この国の人間からすれば害虫にも等しい。
そんな物をどう利用しようが文句を言われる筋合いはないという事なのかもしれない。
だが、人間には犯してはならない領域は存在する。
残酷な悪魔業界である事や相手が邪悪である事は免罪符とならず、自身が決定的な邪悪に踏み入れば何時か何処かで報いが待つ。
「回復アイテムの投与開始します。
手足はいりませんよね?」
「当然でしょ。大切なのは脳と、脊髄に目。
それ以外は対して使いようないから」
ではあるが女や他の研究者達に、罪悪感は見受けられない。
まるで一切のネガティブな感情を失ったかの様に。
「これはこれは、順調そうで何よりですな深海一尉」
自動ドアが開き、入室してきたのは白衣の男。
ぎょろりとした目と不健康な印象を与える痩身はまさしくマッドサイエンティストらしい。
深海と呼ばれた女と同じく、この男も新世塾に属する研究者だ。
「結晶化した素体とに植え付けた戦闘用AIと、デモニカの連動も齟齬は無し。
デモニカに関しては流石のお手並みだ」
「ありがとうドクトル。
しかし凄い物ね人間の脳を素材化した光結晶は。
ここまでの処理速度は予想以上だったわ」
深海とドクトルは親しげに言葉を交わす。
X-3は深海が開発におけるデモニカ関係の技術を担当している。
光脳やAIを担当しているドクトルは、共同開発者ともいえる相手故か。
「素材ももう少し入手できればいいのだけど。
全く政府や軍の上は頭が固すぎて困るわ」
深海は不満げに鼻を鳴らす。
自分に言わせれば上の連中は実に手ぬるい。
深海もまたドクトルと同様に自身の評価の低さについては不満がある。
かつて自衛隊のデモニカ担当技官として、現行より高性能な改修モデル、さらには超能力者を利用した予測システムを設計提案した。
しかし結果は不採用。双方ともに膨大な負担による廃人化・死亡リスクが理由で、抗議すれば不適格として閑職に回されたのだ。
(戦果に比べれば消費される人的資源なんてあってない物だろうに)
憤懣やる仕方ない深海にとって新世塾からのスカウトは渡りに船。
自身への正当な評価や兵器の上げる戦果がもたらされる未来が、今から楽しみでしょうがない。
「予算に関してももっと融通を聞かせてもらいたい物ですな。
まあもう少しの辛抱です。
今は新しい素材を楽しみにしておきましょう」
「新しい素材と、なると例の作戦が?」
「数日中にもとの事だそうです」
例の作戦──PMCミスリル本拠地への侵攻作戦。
デモニカスーツを運用するPMCであるミスリルは恐らく過去周回から流れ着いた組織であり、超高性能の潜水艦を所有している。
高度な技術で創られた超大型潜水艦は、新世塾からすれば魅力的極まりない代物である。
先日の同時襲撃で多数を捕獲し、同時に得られたデータから本拠地も判明した。
ならば襲撃を仕掛け接収しようと思うのは想像に難くないだろう。
「そこそこ手ごたえのある相手だって聞いているけど富嶽と機兵もいれば問題なし。
X-3の実戦テストには間に合わないのは残念ね。
どんな素材が手に入るかは気になるけど」
「指揮官やスタッフに知能が高い者がいるといいのですが」
彼はすぐ近くの未来の戦果に期待する。
WGMにミスリルの他にもLV75の超人等、新世塾の兵力は敵に対して圧倒的な戦闘能力を見せていた。
今回の襲撃作戦も成功し、今後につながる成果がもたらされる事だろう。
(旧式でも多数のデモニカが手に入るのは良い事。
X-3の改良には優れた装着者のデータがまだまだ必要なのだから)
同胞の報復に燃える兵士達や、新世塾を止めんと動き出している戦士達の事を。
彼等が既に敵を見定め、動き出している事を。
超力戦艦富嶽の出航、それが襲撃の始まりだとは夢にも思っていなかった。
帝都某所にある彼方の御国の拠点。
一見雑居ビルに見える建物の内部は、改装されたのが見て取れる。
「……やったぜ」
拠点にある一室の中、うつぶせに寝そべったハレは片手をあげた。
うつぶせで寝るのは体力が限界となった時の癖。
魔盾検知器の作成やドローンや監視カメラを用いた恵比寿地域の探査、それらの仕事で体力を使い果たしたのだ。
頑丈な悪魔人間とはいえ気力体力に限界はある。
増してハレは後方要員。
ここ数日よく頑張ったと言えるだろう。
「お疲れ様ハレちゃん。
お菓子いる?」
「うん」
ソファからハレの位置をちょっとずらし、頭を支えて棒状のチーズケーキを口元に持って行く。
こんな事もあろうかと買っておいたうつ伏せでも食べやすい品。
シュレッダーに紙が吸い込まれていくかの如く、すぐにケーキが消えていった。
「ねる」
「電気消しておくね。おやすみ」
ハレの位置を戻して毛布を掛けて電気を消す。
ロゼも慣れた物である。
(さてと、僕もご飯食べたら寝ておこうかなあ)
扉を閉めるとロゼは帽子を取った。
ハレやチヒロ程ではないがロゼやレイもここ最近忙しかった。
というのも新世塾への襲撃がいつになるか分からなかった為だ。
ミスリルから提案されたのは新世塾のミスリル侵攻時を狙った報復攻撃。
敵がミスリル攻略の為大戦力を投入し、手薄になった隙を狙い本拠地を落す。
ミスリルが危険なのもそうだが敵の作戦発動がいつになるかは不明。
ハレの創った検知器やDB達の調査によって本拠地は特定され、ミスリルの部隊が監視しているが正確な兆候はその時が来るまで分からない。
その為急ピッチで準備を進める必要があった。
ミスリルからの貴重な情報。
それを元に短い時間で可能な限り準備した。
仲魔を揃え装備も調整。
できる限りの事をしたとロゼは思う。
「レトルト買ってあったっけ、と」
休憩室の扉を開けたロゼは人影に気付く。
今馴染みとなった男の姿。
「おじさんも来てたんだ」
この世界に来てからお馴染みの雨柳。
彼方の御国とつながりが深く、ロゼも良く世話になっている男だ。
「此処からだと集合予定の拠点も近いからな。
それに差し入れも持ってきた」
がさりと音を立てたのはテイクアウトの包装。
数人分はある包装からは芳醇なソースの匂いが微かに届いた。
ロゼの嗅覚はあれは美味しい物だと判断した。
「丁度夕食時だし食べるか?」
「食べる!」
他の人の分を棚に仕舞って、二人で包みを広げる。
「いただきます」
濃い口のソースが塗られ、焼き目のついた
カリッと焼かれたポテトに、輪切りのトマトを添えたコールスロー。
それ以外にもクルトンが浮いたコンソメスープ。
(香ばしいお肉の組み合わせに加え、ピクルスとチーズのあっさり感が心地よい……!
東京にはこういう美味しい物を作っているお店が幾らでもあるんだなあ)
強いて言うならソースが垂れそうなのがちょっと気がかりだろうか。
だけどとにかく美味しく肉と野菜の味を堪能していると、あっと言う間に食べ終わってしまった。
「ご馳走様でした。
このオープンサンド美味しかったけどどこのお店で売ってるの?」
「意外と近いぞ。大体……この辺だな」
「本当だ。こっちの方行ってなかったけどこんなお店もあったんだね」
雨柳が端末で表示した場所はこのビルから程近い。
店があるのは此処から歩いて5分くらいだろうか。
街という物は面白いなとロゼは思う。
普段歩くすぐ近くに知らない店が幾らでもある。
この複雑さは範囲の限られたシェルターでの生活では知る事は出来なかった。
(あの頃の僕はシェルターしか知らなかったしそんな不満はなかったっけ。
ただ前の世界を知っている人だと……辛い事もあったのかな?)
例えばレイ達彼方の御国の他に──潜水艦の中で2年を過ごしたミスリルとか。
「……ねえおじさん、また同じような事を聞いちゃうんだけどさ。
ミスリルの援護はともかく、新世塾への襲撃って来ても大丈夫?」
ミスリルから発想が繋がって、ふと思ったロゼは雨柳に質問してみた。
既に雨柳の縁者は避難させているといえ、新世塾は公権力に根を張っている。
ヤタガラスの後ろ盾があっても、本人の言った通りフリーの身で参加していいのだろうかとロゼは思う。
(やっぱりレイや僕の事、あとアイリスさん達の事が心配なのかな?)
新世塾はどうやら漂流者を狙っているようだ。
そうなればミスリルの次はロゼ達漂流者が狙われる可能性がないとは到底言えない。
何せミスリルを襲撃するような無慈悲で強大な相手なのだから。
だとするとちょっと申し訳ない気もする。
なんだかんだ言って、雨柳には普段から世話になっているのだから。
「あーそれか。
そのあたりはあまり心配しなくていいと思うぞ」
楽観的な予測と言われたらそれまでだが、と前置きして雨柳は続ける。
「新世塾の構成員が正規の自衛隊員だからこそ、自衛隊は頼りにくい。
何せ不正規に基地を建設して、非合法な軍事作戦を展開しているんだ。
それが露見したら困るのはあちらの方だ」
新世塾が秘密結社だったのは、秘密裏に動く必要があるから。
政府及び自衛隊内の勢力が一強ならいざ知らず、この段階でもし活動が露見したならば致命傷となりかねない。
現に非合法レルムの襲撃はやりすぎな程に痕跡を消していた。
「今回の作戦が失敗して、奴らがクーデターで政権を取りでもしない限りは問題ないはずだ。
な、訳でそのあたりも考えて参加を決めた。
納得できる理由も幾つかあったしな」
「幾つもなんだ?
ミスリルの人達を助けに行く以外にも」
ロゼにとっても少々意外だった。
それだけでも雨柳は動きそうだったから。
「それは一番の理由だな。
で二つ目が十分な報酬が用意された事。
そのあたりはフリーとしては大事だ。
で、三つ目だが」
言葉を一度切って、雨柳は告げた。
「いい加減アイツ等には退場いただきたいって所か。
ほら前アストラルシンドローム事件があったろ」
「僕達が病院防衛してた時の奴だね。
マレビトってペルソナ使いが起こしてた」
聞き覚えのある単語にロゼはうなづく。
マレビト達が主体となって、仮想世界カリギュラに多くの人々の意識を幽閉した事件。
ロゼや雨柳も昏睡状態で入院する患者の防衛に参加していた。
思えばあの戦いが、この世界でのデビュー戦だっただろうか。
「写真見たけど……僕とそんな変わらない年の人ばかりだったね」
ロゼは僅かに表情を曇らせた。
マレビト達はみな一様に若い。
眼帯の少女に黒髪を切りそろえた少年に、深い何処か絶望を瞳に漂わせた少年。
まだ若い彼らが何故現実に見切りをつけたのか。
形容し難いがあまりいい気持ちはない。
「……ああそうだな。
奴等の起こした事件には以前も関わったが、壊滅までに多くの被害が出ている」
雨柳の言葉には少し力がこもっていた。
何があったか知らないが、いやな事件だったのかなとロゼは思う。
「で、そのマレビトなんだが……どうやら件の新世塾に暫く管理されていたらしい」
雨柳の知古である佐々木の持ってきた情報*1を元に雨柳が行った幾つかの調査。
その過程で以前倒したガイア系団体*2の捕縛された構成員から、マレビト達の捜索を指示されていた裏付けが取れた。
それ以外にもマレビトの目撃証言や発見された実験施設*3の調査を再検証。
結果ある推論が裏付けられた。
即ちマレビトを管理していた中央省庁、その正体は新世塾であると。
各事件を起こしたのは脱走後の様だが、それでも苛烈な扱いをしていたのは想像に難くない。
それがマレビトの絶望に繋がっている事も。
「……それは、酷いね」
「ああ酷い。
それ以外にもアストラルシンドローム患者の虐殺未遂*4や拉致。
其処に来て今回の事件だ。
奴等にはそろそろ退場してもらいたい、そう思ったわけだ」
正義を語る資格も気もないが、雨柳にとって有り様は度し難い。
黒幕面して人を殺し奪い、のうのうと逃げ延びさせる気等、雨柳にはなかった。
いつもより力がこもっている雨柳の言葉に、ロゼは少し驚きつつも得心した。
「……御影さんの言った通り。
おじさんは他の人の事には怒るんだねえ」
ロゼは最近よく話すようになった女性の言っていた事を思い出しくすりと笑う。
雨柳は自分の事には無頓着だし少々情けない所もあるが、他人の苦しみに共感し、他人の為に怒り行動出来る人間だと。
これって意外と難しい事なんですよと、ちょっと自慢気に御影は言っていた。
新世塾が一方的に人を踏みにじるのは、相手を尊重しない故に。
雨柳が誰かの為に動くのは、相手を尊重しているが故に。
(案外対照的な存在なのかも、おじさんと新世塾は)
「ん? そんなに変だったか?」
「ううんそうじゃないよ。
おじさんはやさし……あ」
テーブルに置いた手からは何かが付いた感触。
視線を遣ると付着していたのは……テーブルに垂れてたソース。
(やばー……死角になってて気づかなかった)
いい感じで話したところでこれである。
少し恥ずかしい。
「おじさんウェットティッシュとってー」
「はいよ」
作戦の前、召喚師達の時間は過ぎていく。
翌日、監視していた新世塾拠点の動きが活発化。
程なくして新世塾の戦艦の出航が確認された。
集合したDB達は救出班と陽動・襲撃班に分かれ従事する事となる。
待機時に若干のトラブル──漂流者同士の悶着や、彼方の御国構成員と漂流者の予期せぬ再会があった。
されど歴戦の彼らは迅速に準備を整え、敵の拠点へ向けて出発。
夜明け前の時刻にて、作戦を開始した。
どぉ、と体の奥深くに響く爆音が巻き起こった。
新世塾の拠点たる恵比寿影異界内の基地。
その一角で高く高く火柱が舞い上がる。
新世塾への陽動担当部隊が一撃を加えた証。
「一気に行くぞ!」
偉丈夫を先頭に第一陣のDB達が基地内へ突入。
短時間ながら入念に計画し準備した成果。
完全に敵の不意を打った。
「な、なんだ!? 敵襲だと!?」
「どうしてここが分かったんだ?
相手は何処のどい」
新世塾の兵士が動揺しつつも展開。
言い終わる前に、転がってきた装甲車に衝突し吹き飛んだ。
同時に更なる爆炎が巻き起こり動揺を広げる。
狼煙となる一撃の派手さに、さざ波の如く新世塾の兵士達に動揺が走る。
ミスリル攻略の為戦力の多くが出払った所での襲撃、それはあってはいけない事態なのだから。
「狼煙は上がったな。
手筈通り敵を削っていくぞ」
「了解。ロボの速さに注意ね」
「奇襲で混乱しているが練度はそれなりだ。
十字砲火に注意だな」
「仲間仲魔との連携が大切だね。
分かったよおじさん」
敵陣を攪拌せんと、DB達がチーム毎に散会。
一気に速度を上げ、
◇
仄暗い影異界にある基地の中。
迎撃に出た戦力は厄介極まりない。
| マシン | X-1 光脳改修型 | LV55 | 全攻撃耐性 神聖・暗黒・神経・精神無効 電撃弱点 |
| HUMAN | 天誅軍・暁*5 | LV52 | 暗黒・神経・精神耐性 神聖無効 |
| JOKER兵 | カトブレパス | LV62(42+20) | 物理・銃撃に強い 神聖・暗黒耐性 神経・精神弱点 |
| JOKER兵 | ラクシャーサ | LV59(39+20) | 物理・銃撃耐性 魔法弱点 |
| JOKER兵 | パールヴァティ | LV61(41+20) | 神経・精神耐性 神聖無効 暗黒弱点 |
ミスリル襲撃の際も見受けられたマシンに、装備を固め訓練された兵士。
量産型マレビト──シャドウを被せた悪魔兵*6。
人を人と思わない所業で揃えた戦力。
現行世界でも多少の敵なら、数と質の両面で叩き潰す事が出来るだろう。
「数が多いな……だがこちらも対策はしてある」
各所で戦闘音が響く中、カンナは銃を構え敵を見据える。
同道するは自身の仲魔にレイ、さらに普段は恵都と組んでいるアリシア。
「やはり電撃が弱点なようだな!
そのあたりは機械の基準から外れていないか!」
アリシアが
魔法物理両面で電撃の扱いに長ける事からアリシアは今回の作戦への参加を打診されていたが、その判断は正解だったようだ。
ミスリルからの交戦情報の通り、X-1は強力な耐性を持つが電撃弱点。
攻略には電撃を主軸に攻撃するのが望ましい。
無論他の敵の耐性に気を付けた上でだが。
「敵に電撃の反射無し!
ケルプ、魔法強化!」
「心得ておりますとも我が主よ」
攻撃フォーマットの発動に続きケルプにマカ・カジャを発動させる。
2段階の強化を得て、カンナが仲魔のティターニア*7へ目くばせ。
激しさを増した妖精の電撃がX-1を内部から灼き、火花が飛び散る。
傾いだ所に飛び掛かるのは大鰐。
「アオオォオン! 固クテモヤツザキ!」
| 魔獣 | アーマーン*8 | LV65 | 銃撃耐性 物理・電撃無効 氷結弱点 |
身構え耐え凌がんとする人型戦車。
それは<
「オレ様ノ爪ニハ紙ト同ジダッ!」
されど素材となった龍王より物理・銃撃貫通*9を引き継いだ魔獣は雄々しく爪を振るう。
恐るべき威力にX-1が2機まとめて大破する。
「馬鹿なX-1がこんな簡単に……ぐぎゃあっ!」
「地獄とは此処に在り!
焔の溢れる一本線に!」
新世塾の兵士がカンナに撃ち抜かれ倒れ。
さらにレイのマダより≪地獄の業火≫が発射。
巨神の放つ焔が一直線にJOKER兵達を薙ぎ払う。
強化された業火は接近しつつあったゾンビ兵をも吹き飛ばした。
熱波と衝撃で巻き上がる砂塵。
隠れてラクシャーサが下がろうとするが。
異形の頸がするりと、ズレて地に落ちた。
「――――余計なお世話だった?」
無慈悲にJOKER兵の頸を落したのは白いフードに黒い硬質なマスクの少女。
少女の名前は
佐々木の一党に属する暗殺技巧の使い手たる少女。
今回の作戦では恐るべき練度の隠密の業を活かし、遊撃や連絡役を担当している。
「いや、変に時間をかけるのもうまくない。
いい援護だった」
「逃げられると面倒ですしね。
それで、敵の様子はどう?」
「悪魔兵の数は大分減ったけど
歩兵も増えて来たしあっちと一度合流して」
摩理が示す方角から爆音が上がっている。
新世塾の主力はやはり人型戦車。
堅牢な装甲に高い攻撃力を備えた厄介な敵。
「了解だ。奴らの掃討にあたるとしよう」
カンナの言葉にアリシアとレイもうなづき、自身や仲魔の状況を確認すると駆け出す。
連携し敵を掃討してもまだまだ敵は多い。
(腐敗し奢った権力者に手下の群れ……前の世界と多少は似た状況か)
腐り切り自身の保身のみに注力した者達と、忠実に従う配下との戦い。
かつての世界での経験と似ていなくもない。
あの時より世界も戦力もだいぶマシだが。
漂流者になるか魂を砕かれでもしない限り、死んだ人間は次の周回に生まれ変わるという。
ならば政府や軍部に食い込んでいる新世塾には、かつて自分の生きていた周回の
(……居ようが居まいがやる事は変わらんか)
敵の戦力を削り注目を引きつけ、別のチームがミスリルの救出を行う助けとする。
大切なのは割り当てられた任務を果たす事と。
(この作戦の参加者を死なさない事だな)
作戦に参加している者の少なくない割合は自分より年若い少女達。
自分と同じような
そんな者達がいる中、年長者として重要な事は分かり切っている。
「私の仲魔を先頭に。
狙撃に注意し慎重にいくぞ」
物理反射を持つギリメカラに頑丈なアーマーンを先頭に立て、彼方に見える鋼鉄の影へ駆ける。
油断せず冷静に、敵が隙を見せたならば獰猛に食らいつく。
この世界に来ても基本は変わらない。
ただ着実に、やるだけだ。
◇
新世塾基地の一角、試験用らしき区域。
試験棟らしき建物に隣接した平地を雨柳達は駆けていく。
「ヨミクグツの排除完了。
次から次へと湧いてきて面倒だね」
「これで出払った隙をついてんだからな」
「──雨柳さん、ロゼちゃん!
11時からX-1にヨミクグツ、その後ろから重装も来てる!」
互いに複数の仲魔を召喚している為、雨柳と距離を取りつつついてくるのはロゼ。
さらに建物の上を恵都が走り先導する。
機動力のある先駆け、それが彼女の求められた役割故に。
恵都の言葉通り敵の戦力が立ちふさがる。
突出したX-1、鋼鉄の巨兵が振りかぶり跳躍し。
「ぬるい攻撃など効くかあっ!」
鋼鉄の巨龍の≪猛突進≫*10で跳ね飛ばされ、壁に埋まる。
瓦礫で化粧されたX-1に追撃の雷が降る中、龍は咆哮する。
北欧神話に語られるその雄姿を見よと。
\カカカッ/
| 邪龍 | ファフニール*11 | LV74 | 銃撃・電撃耐性 物理反射 氷結弱点 |
ファフニールは雨柳が本作戦の為に準備した仲魔。
葛葉の持つ悪魔合体技術を駆使した個体で、物理反射を有している上に力が強く硬い。
さらにそれだけでなく。
「ファフニール!」
「刀剣に鉛礫程度で、この壁を貫かせはせんよ」
| 蛮力の壁*12 | 合体技 | 8秒間味方全体に物理無効のバリアを張る 攻撃中に物理攻撃を受けた場合召喚師はMagを吸収可能 |
ヨミクグツの銃撃、X-1の斬撃に対して邪龍の障壁が展開。
いずれも障壁に受け止められ、雨柳達にダメージを与えるどころかむしろ恩恵をもたらす。
耐性の書き換えではなく、
それ故に物理相性への耐性・無効・吸収を対象とするX-1の貫通は適用されない。
物理攻撃がメインの新世塾戦力への対策として用意した巨龍。
雨柳の考えた対策通り、しっかりと機能していた。
≪ムラマサコピー≫
≪ムラマサコピー≫
だが敵もさるもの。
更なる上位戦力は鋭く刀を振るう。
するりと刃が障壁を抜け、邪龍を刻んだ。
「グゥ……! 小癪なり」
鋼鉄の身体を切り裂き、霧のような血がしぶく。
痛みを堪え邪龍が敵を睨みつけた。
X-1よりさらに重装備のマシンは、仮称するならばX-2といった所か。
2体揃って大振りの刀を装備しているが、何処か不可思議な力が宿っていると雨柳には見えた。
(ペルソナ封じのムラマサコピーか。
ファフニールのダメージからすると恐らく物理準貫通*13。
検証結果を知ってはいたが、やはり障壁で無効化は出来ないか)
ファフニールの動きも精彩を欠いている。
陥った状態異常は魔封のようだ。
先手を取っての2回行動、準貫通を宿した物理攻撃、さらには魔盾による高い防御力。
対人特化した構成のX-2の性能は恐ろしい。
≪シースパロー≫
≪ムラマサコピー≫
障壁が途絶えた瞬間、もう1体がロゼや恵都を狙い攻撃する。
ミサイルを発射し、同時に突貫し刀を振るう。
鋼鉄の兵が少女達を蹂躙する凄惨な光景となるかと見えたが。
「その程度じゃ私は捕らえられないわよ!」
| スク・フレキシー*14 | 自動効果 | 先攻でバトルを開始時3ターンの間、味方全体の回避と命中を20%増加させる。また後攻でバトルを開始時3ターンの間、敵全体の回避と命中を20%減少させる。 |
ダークブルーの『モリ―アンの具足』を煌かせ、急加速し鋭角に方向転換、ミサイルをすり抜けるようにして躱す。
素早さの心得で強化された自身の機動力を更に輝かせる戦神の力。
度重なる激戦で使いこなしつつあった。
「ドッペルゲンガー悪いけどお願い!」
「了解……後で美味しいスイーツよろしくね」
他方ロゼを仲魔の一体が
その容姿は顔が陰になり見えない事を除けばロゼと同様。
不可思議な仲魔は召喚者を確かに守った。
「次はこちらの
外套を翻し少女が仲魔へ指示を下す。
広域の乱戦故に三体、少女は仲魔を従えていた。
| 怪異 | ドッペルゲンガー*15 | LV59(49+10) | 銃撃耐性 電撃・魔力無効 物理反射 |
| 魔神 | オメテオトル*16 | LV59 | 火炎・氷結耐性 |
| 破壊神 | セイテンタイセイ*17 | LV60(57+3) | 火炎耐性 物理・銃撃・破魔無効 氷結・電撃弱点 |
人の営みに興味を持った姿を模倣する怪異。
二面性を司るアステカ神話の創造神。
西遊記の主人公である神猿。
3体の仲魔を従えて少女は過酷な戦場に立っていた。
「制圧するよ。オメテオトルが1で火炎、セイテンタイセイが2で地変」
少女が仲魔に指示を下すと正確に追従。
魔神が
「最後にラクシュミさん、激しく光る奴お願いします!」
「まあ面白言い方をする子ね。
訓練通り≪ジオダイン≫を御所望と」
雨柳の使役するラクシュミが
異なるエレメントを瞬かせる魔法が三連。
それは互いを高め、恐るべき破壊の雷となる!
| 合 体 魔 法 サ ン ダ ー ク ラ ッ シ ュ *19 |
敵全体を飲み込む雷に弱点を突かれたマシンは耐えきれない。
関節各所から煙を上げスパークを閃かせ、動きを止める。
「俺は右をやる」
「なら僕は左を。
丁度X-1も巻き込めるし」
雨柳がX-2の頸を撥ね、シロガネが
残るのヨミクグツもまた、恵都の銃撃を始めとする攻撃で駆逐されていった。
油断なく雨柳達は周囲を見回す。
足元含め敵の気配は無し。
「これでこの辺りの敵は全滅かな?」
「大体その様だな。
まだマッピングが済んでいないのはあのあたりか」
この区域でも一際大きい建物と周辺にはまだ踏み入ってはいない。
他のチームの進行具合やマップの状況を考えると、やはり次に進むべきはあちらだろう。
「トラップに注意して進むぞ」
「了解。ロボ以外にも奇襲に注意していこう」
雨柳にうなづき進むロゼには隙がない。
先導する恵都と適切な距離を自然に保ち、仲魔の陣形も適切。
(若い子の成長は早いもんだな……)
この世界に来てからレイもロゼも急激な成長を続けている。
砂地が水を吸い込むように知識を吸収し、自分に適した形で実際の動きに反映。
現行の過酷な戦況でも対応し、一廉の戦力として活躍する様になった。
ヤタガラスや佐々木の所にいる
それこそそう遠くない内に自分を追い越す程に。
自分程度はいつまで先達として振る舞えるのかと、時たま思う。
(だろうとも出来る限りの事はしてやらないとな)
大人としてせめてその程度はしておきたい。
なんて事を頭の片隅で考えつつ、二人と共に進む。
四角い建物は研究施設か倉庫か。
いずれにせよ禄でもない物がありそうだが。
「……! 雨柳さん、ロゼちゃん」
先頭を行く恵都が手ぶりで制止。
建物前の開けた場所。
敵の集中砲火やトラップも気がかかりだが。
「ロゼも気づいたか?」
「うん、何か近づいてきてるよね?」
大気を切り裂き飛び来る気配。
数は二つ、キィンと音を立てて建物の屋上に着地。
ダークグレーの2体、否2機は装いが異なる。
刀を携えた鋭利なシルエットの機体と、長大な砲を有した角ばった機体。
ターコイズブルーの追加装甲を前者は胸部に、後者は左肩に装着している。
明らかな量産型とは異なる特殊機。
その雰囲気は対照的。
『──────』
『TARGET確認ンンッ!
SHIヲPRESENTオオォOOOO!!』
ダークグレーの2機はX-3。
新世塾の特化戦力として製造された試作機。
\カカカッ/
| サイボーグ | X-3・セイバー | LV74 | 全体的に強い 電撃??? |
\カカカッ/
| サイボーグ | X-3・シューター | LV71 | 全体的に強い 電撃??? |
シューターは長大な砲を旋回させ壊れた叫びをあげ、セイバーは無言で刀を構える。
切っ先を相手に付きつけ、片手は峰に沿える独特の構え。
されどその圧力は並ならぬ。
「……なんだと?」
構えを見て雨柳は呟いた。
どこか驚きを込めて。
そう、セイバーの構えに雨柳は驚いていた。
それは雨柳が習い、使い、そしてある後輩に教えた技の構え故に。
『警告:新世塾が出撃させた試作機仮称X-3の一部には』
シューターがホバリングし、セイバーと別角度から雨柳達を狙う動きを見せる中。
オペレーター側から警告メッセージが届く。
一足先にX-3と交戦したチームからもたらされた情報。
それを見て雨柳は納得した。
「……ああそうか。
二人は砲持ちの方を頼む。
刀持ちの方は、俺がやった方が良さそうだ」
「砲撃機を引き付けるのは任せておいて!」
「僕も回避重視で慎重に行くね。
あっちの方が強そうだしおじさんも気を付けて」
「そっちも命を大事に、な」
雨柳の背後で軽やかに駆けだすロゼと恵都。
他方雨柳は気を伺い緩やかに動くセイバーから目を離さない。
「……もしかしてさ、アイツに心当たりある感じ?」
「大ありって所だな。
あの構えに動きを俺は知っている」
シロガネの疑問に雨柳はうなづく。
腹が立つ程に覚えがある。
セイバーの構えは葛葉でもゲイリンの系譜に伝わる剣技トゥームストーン*20のそれ。
現代においてこの剣技を使える者は少ない。
雨柳に当代ゲイリンを除けばほんの数人だろうか。
「どんな手段で入手したのかは知らねえ。
だがさっきの情報と併せて考えれば嫌でもわかる」
『出現したX-3の一部には、シュバルツバース調査隊の
先程オペレーターから送られた情報。
其処から導き出される事実はただ一つ。
「あのX-3には
かつて雨柳に替わってゲイリンを襲名した後輩。
幼い妹と、同じ年の許嫁を大事にしていた少年は黒き禍渦の中へ消えた。
(ふざけやがって……!)
それをよりによってこんな使い方をするとは。
新世塾を叩き潰す理由がまた一つ増えた。
心は怒りに燃え頭は冷え冴えわたる中、雨柳も刀を構える。
戦意を見て取ったセイバーが跳躍。
かつての勇者の模倣体の魔剣が不吉に輝いた。
次回は忙しい時期になりますが4月中には投稿したいと思います