真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス- 作:ローグ5
「んあー……寝落ちしちゃってたか」
電灯がつけっぱなしの部屋で
カーテン越しに見える外はまだ暗い。
起きるには早すぎる時刻で、本格的に寝るには遅い時刻。
「微妙な時間だなー。
ええと、まとめ何処までしてたっけ」
多少寝ぼけた目でサイドテーブルに置いたノートを手に取る。
記されているのは管の使用に関する手引き。
白野が手引書を作っているのは、最近交流を持ったある少女の為。
高い実力と素養を持っていたが、師が悪かったのかどうにも歪な悪魔使いだった彼女。
同じ管使いで、どうにも気になる事もあり白野は色々と世話を焼いている。
その一環として作っていたのが手引書だ。
白野の知る限りの管使いの技法や、著名な使い手がどう仲魔を運用していたかの情報のまとめ。
当然ヤタガラスの一員として秘匿すべき情報は、個人情報含めて慎重に抜いている。
それでも歴史的な技術故結構な分量になりそうだ。
何せ歴史のある技術であり独自性も高く、現行の戦況で活躍している召喚師もいる。
彼等が掲示板で明かしている情報だけでもそれなりの分量になる。
例えばCOMPとの併用による召喚数の増加。
管使いは悪魔の召喚数が限られている。
通常は一体、類稀な腕利きで二体。
白野も最近ようやく二体召喚を体得した。
管使いは召喚師自体が強靭な戦士であり、隠し身等独自の技法という利点がある。
それでもCOMPを使用する召喚師と比べると使役数では劣る。
ならばCOMPも併用して召喚数を追加しよう、と考えるのは自然だろう。
白野の知るその管使いは取り回しの良い拳銃型武器COMPを併用しているらしい。
ヤタガラス内の繋がりを通じて、併用にまつわるちょっとした工夫*1等を教えてもらった。
外の使い手の情報はためになるなあと思う。
(……レイブン、雨柳さんかあ)
通称レイブン、雨柳巧──かつてのゲイリン候補者筆頭。
先代ゲイリン、白野の兄の先輩だった人。
白野としても知らぬ相手ではない。
子供の頃の話だが何度かあった事もある。
最後に会ったのはシュバルツバースの半年前だったろうか。
(最近はまたうちの依頼を受けているっていうけど)
噂によると帝都ヤタガラスに合流した漂流者達と面識があった事から、最近色々と動いているらしい。
前会った時にアイスを奢ってくれたお姉さんも元気だとか。
知っている人が元気なのは実に良い事だ。
「あの人今何しているのかなー」
払暁にて、何となく白野は気になった。
砂漠の基地に灰色の影が揺らめく。
X-3セイバーとシューター。
新世塾の特記戦力2機が暴れまわっていた。
『ピガッ!Teキニムケte──』
電子音交じりの狂った叫びを迸らせ、シューターが長大な砲を構える。
武骨な砲に紫電が瞬き、二本の脚が地を踏みしめ。
『LAUNCHERヲ発射ARRRGH!!』
撃ち出されるは力の奔流。
| 光子砲*2 | 物理スキル | 敵全体に戦技属性大ダメージを与える 尚戦技属性は嚙みつき系が属する事から銃撃ではなく |
| 準物理貫通 | 自動効果 | 物理耐性を貫通するが、敵の耐性が無効・吸収・反射の場合ダメージが70%減少する |
| 封魔追加*3 | 自動効果 | 通常攻撃・物理系スキル使用時、中確率で対象をCLOSEにする |
超力殺線を研究する事で得られた成果を転用した試作型光学兵器。
物理属性のレーザーを発射する故に準貫通や封魔追加といった効果が載る。
これを主装備とした砲撃戦機としてシューターは開発された。
奔流がロゼ達を薙ぎ払い、コンクリートと砂塵が舞い上がる。
破壊的な一撃はX-3・シューターの最大火力。
「サマナーのやってたゲームに居なかった?
ああいう大砲持った奴」
「流石にあんな変な奴はいないよ……」
強大な威力の一撃であったが、多くが無効以上の耐性へ引き上げていたロゼ達は健在。
この一撃でオメテオトルは落ちたが、それ以外はしっかりと立っている。
続けざまにシューターが放つミサイルを防ぎ、躱しながらロゼは恵都と並走。
互いにダメージを受けているがまだまだ戦える。
「ロゼちゃんはまだいけそう?」
「はい。だけどフワフワ飛んでやりづらいし」
シューターが攻撃を終えた瞬間、ロゼはCOMPを操作しジークフリードを召喚。
「あの追加装甲が電撃弱点隠してて厄介ですね」
ロゼの目線の先にはシューターが右肩に装備した追加装甲。
ターコイズブルーの表面にパルスが走る。
| 試作型パルス装甲 | 特殊装備 | 装備したX-3の電撃相性を弱点から無効へ変更する特殊装備。 シューターとセイバーに装備された試作装備 |
装備による相性とは奇妙な物で、防弾チョッキを身に着ける事で体全体が銃撃に強くなりもする。
人間を素材にしている為か、X-3も限定的ながら装備により耐性を変更する事が出来るようだ。
電撃ガードキルで通常までは下げられるが、唯一の弱点を潰されるとやりづらい。
「地道に削っていくしかないね≪衝撃ガードキル≫」
「ですねえ。回復はこれでよしと。
ジークフリードはタル・カジャオン」
格上相手に一撃必殺等そうそうできる物ではない。
耐性を剥がしバフをかけ有効な攻撃を積み重ねていくしかない。
強敵相手の戦いは地道で面倒だがそういう物だ。
恵都もロゼもそのあたりを良く理解している。
「セイテンタイセイは僕達のカバー。
ドッペルゲンガーは僕と共に。
……それにしても」
X-2の流用らしきフライトユニットにより飛行するシューター。
用もないのに砲塔を振り回す敵は狂った叫びをあげている。
『キreiナO嬢サン方AARRR!
ホトBASHIRUワタシノ力DeDIEシテエエeA!!』
見た目が機械だからまだマシと言えよう。
「アイツなんか気持ち悪い」
「アハハ其処は同感だね」
柳眉を潜めるロゼに恵都も同意し、とんとんと脚を軽く動かす。
油断なく慎重かつ早急に、気色の悪い敵を倒そう。
二人の意思はしっかりと統一されていた。
(先代ゲイリン……とても強い人だったってゲイリンちゃん言ってたっけ)
ロゼも当代ゲイリンから雑談程度だが、先代について聞いている。
数年前のシュバルツバース事件でMIAになった青年で、優れた管使いだった事。
まだ幼い妹や婚約者を大切にしていた事。
この世界でのロゼの師の一人である雨柳巧の後輩だったとも。
(刀持ってる奴の方が強そうだったしね。
おじさんなら大丈夫だと思うけど)
まだ互いに連携できる位置取りではない。
けどロゼは雨柳の力と意志を信じている。
少なくともこの世界に来て、知り合う事が出来て良かったと思う程度には。
他方雨柳とセイバーの戦いも膠着していた。
「──────!」
低い姿勢、されど飛燕の如く淀みなき動き。
機械ゆえの硬さ、否機械ゆえの柔軟性で刀を一閃。
| 物理スキル | 敵全体へ斬撃属性大ダメージを与える ゲイリンの系譜に伝わる剣技を近代の退魔戦闘のノウハウを取り入れ近代化した業 |
| 準物理貫通 | 自動効果 | 物理耐性を貫通するが、敵の耐性が無効・吸収・反射の場合ダメージが70%減少する |
| 封魔追加 | 自動効果 | 通常攻撃・物理系スキル使用時、中確率で対象をCLOSEにする |
壮絶な斬撃が雨柳達を襲い血がしぶく。
半端なサマナーなら仲魔毎真っ二つにされる斬撃。
頑丈なファフニールを召し寄せ、盾にしたが恐るべき威力。
「っ!」
「コイツ……我を足蹴に!?」
一撃で満足する事なくセイバーは動く。
邪龍の巨体を転がるように超え、跳躍。
刀の切っ先を向け、片手を峰に沿える。
振るわれるは魔鉱を加工した銘刀。
クズノハのそれと系統が似た技術で、セイバーのステータスを引き上げている。
渾身の勢いを載せて発射される刃。
トゥームストーンと呼ばれるそれもまたゲイリンの系譜に伝わる剣技。
雨柳の身を刀が貫き、奇怪な紫の残光を残す────魔封状態!
「その程度で死ぬかあっ!」
だが雨柳は構わず、踏み込んだ。
退魔刀がセイバーの追加装甲に傷をつける。
反撃を予期しなかったか、敵が蛇の様に退く。
「やはり
自分が邪魔されるのは嫌いなようだな」
血を吐き捨てる雨柳の先でセイバーが低く構えた。
防御を重視した構えは成程、記憶の中にあるそれに似ている。
(だが再現されているのは"動き"だ。
アイツ自身じゃねえ)
もし寸分違わず、思考を始めとする構成する全てを模倣したならば。
管使いとして仲魔と連携してくるならば。
先代ゲイリン──岸波鳩に対して、雨柳巧の勝率は1割以下。
しかし雨柳の所感ではセイバーはあくまで、剣士としての動きを再現したのみ。
通常のX-2とは比べ物にならない程鋭く速いが、先代ゲイリンその物では到底ない。
(付け入る隙は幾らでもある。
それにあの装甲……どうも後付け臭い)
電撃に弱いというX-1及びX-2共通の弱点を補う為の追加装備なのだろう。
(狙う価値はあるな)
地を蹴り動く中、ロゼと刹那目があった。
少女達も交戦し、同じ結論に至ったと見える。
「電撃中心で行くぞ」
「了解。しっかし毎度厄介なのばかりあたるねえ」
呆れつつもシロガネは≪電撃ガードキル≫を使い耐性を剥がす。
通常耐性へ低下させ、
ラクシュミに回復させて態勢を整える。
「このご時世じゃ今更の話だろ。
さっさとあのパチモンを叩き潰すぞ」
召喚師と機械剣士はにらみ合う。
前奏曲で決せず、戦いは続く。
薄く太陽が昇り始める中、互いの刃が鈍く煌いた。
◇
「本当に往生際が悪いわね。
どうせ何をしようと無駄なのに」
基地にある管制室の一つで深海はX-3と戦う戦士達を嘲笑する。
「X-3は試作機とはいえ超高性能。
ましてセイバーとシューターは私が手ずから調整した特別製。
高が数人のDBで対応できると思っているなんて本当におかしいわね」
製造過程を顧みぬ深海からすればX-3は絶対兵器。
素材や部品に装備、更にはAIすら専用の調整を加えた一級品だ。
まず素体からして通常とは違う。
シューターはメシア救世主派の
セイバーはガイア系と思しき老戦士。
内部の電子部品は精度の高い物を厳選し、魔盾に弱点をふさぐ電撃無効の追加装甲。
シューターには試作光子砲、セイバーには試作型対悪魔刀を装備。
極めつけはAIで、シューターは調査隊から得られた対悪魔射撃データ、セイバーに至っては先代ゲイリンのデータを導入している。
新世塾のリソースと技術を動員し自らが作り上げた兵器に、深海は欠点等ないと断じていた。
正しく死角の存在しない完璧な兵器。
今回の様な実戦テストを経てさらに性能を高めていくだろう。
(せいぜい無駄に足掻いて私の踏み台になりなさい)
DBの内一人が十代半ば程の少女でも深海に躊躇も罪悪感もない。
新世塾が日本の実権を握り原罪なき世界へ至る。
来るべき大望に比べれば些事であるから。
たかだか子供の二十人や三十人、死のうがどうという事はない。
至極当然にそう考える。
新世塾に属する者達に共通する歪みを女は体現していた。
「あら? 悪魔を入れ替えたわねあのサマナー」
映像の中で長身の男が悪魔を召喚し直した。
消耗した邪龍に代わり召喚されるのは狩人の姿をした堕天使。
観測AIが導き出した名は堕天使バルバトス。
男の霊格に相応しい強力な悪魔だが。
「X-3には及ばないわね」
何をやっても無駄だと、再度嘲りを込めて見下す。
悪魔の変遷から読むに大方セイバーに鈍重な壁を使うよりも、脚速い悪魔で機動力を生かした戦いを挑むつもりなのだろう。
だがセイバーは歴戦の戦士の如く、早くしなやかに、自在に機動し敵を殺す。
戦術を変えようと瞬く間に対応し、矮小な願望を蹂躙する。
深海は敵が手札を変えようとも平然としていた。
先程と変わらない蹂躙を観察する。
堕天使が銃口より嵐を解き放つ。
中空を駆け抜ける嵐、その程度ではセイバーは捉えられない。
「馬鹿ねえ」
当然の結果を深海は嘲笑う。
嵐はセイバーを外れて宙を薙ぎ────ロゼと
「は?」
| テンペスト*4 | 衝撃魔法 | sesame"> |
| 衝撃ギガプロレマ*5 | 自動効果 | 衝撃属性攻撃時の攻撃力を大幅に強化する |
ごぉという響きと共に嵐が射手を打ち据え、地へと叩きつけた。
『ギiga! ワタシwoYaルト!!?』
シューターはすぐには起き上がれない。DOWN!
派手に粉塵を巻き上げ転がるシューターを恵都は飛び越える中。
呼応するかのようにジークフリードが咆哮。
「硬き鋼だろうと貫くのみ!」
≪雄叫び≫*6
英傑の力を得た恵都は、中空にて銃を構える。
狙うは反応が僅かに遅れたセイバー。
「この角度なら確実に当てられるよ!」
| メイク・マイ・デイ*7 | 銃撃スキル | 敵単体に物理防御力を無視し銃撃相性電撃相性*8大ダメージを与える |
雷を纏う弾頭が刀での防御を潜り抜け、セイバーの追加装甲を穿つ。
銅鑼を全力で殴りつけた様な音が響く。
「両方大当たりだ!」
セイバーも傾ぐ中、ロゼは油断なく敵を観察する。
双方ともに予期せぬ直撃に怯んだようだ。
このような状況はあらかじめ雨柳やロゼも想定していた。
敵の物量を考えれば相互に別の敵に対処する機会も出てくるだろう。
一蹴できる敵ならいいが、強敵相手ならば膠着状態に陥る事もあるだろう。
それでも仲間へ意識を保ちつつ、余裕があったら互いに支援する。
敵の意表を突く事にもなるから、頭に入れておこうと話し合っていた。
事前の打ち合わせは見事に功を奏した。
セイバーが複雑な機動で後退するが、追加装甲には罅が入っている。
『──────!』
『AAッ! ソンナnaeteシマウッ!!』
立ち上がろうとするシューターの追加装甲も同様。
罅が入った装甲の機能は停止しつつある。
(おじさんの方もダメージ重ねてたみたいだね。
タイミングヨシ、だ!)
雨柳もロゼもX-3の装甲をこれまで執拗に狙い攻撃してきた。
電撃弱点を覆う装甲は厄介だが、裏を返せば破壊すれば電撃弱点に再び戻るだろう。
予想は当たり、パルスを纏わぬ装甲は防具ではなく最早単なる装甲。
「そちらは任せましたよ頼もしきお嬢様方」
背後からの
恭しく一礼するバルバトスに
≪雷電真剣≫
プレスターン式故、ドッペルゲンガーが回した呼吸でジークフリードが再動。
少女の閃刀が雷を帯び、可憐な顔を照らす。
「せええやあああっ!」
雷を纏う朱き刃が、中空に軌跡を描く。
少女剣士の背後で回転し飛ぶ物あり。
シューターが携えていた砲塔が、半ばから切り裂かれたのだ。
『Oォ! 何トiu理不尽!』
シューターの機体自体も中破していた。
追加装甲は無惨に砕け胴体を深く裂かれ、右腕はケーブルで繋がるのみ。
各所からは臓器の如く部品が零れ落ちる。
『是デハ我セイヘKiガARRRGH!?』
かつての狂気の片鱗を見せつつシューターが嘆き、背部にマウントしていたJM61を構える。
高度なデモニカ故の極限戦闘能力。
だが、その動きは先程より明らかに精彩を欠く。
「このまま手堅く押し込んでいくよ!
ドッペル達ももう少し頑張って!」
「本当にハードな職場ねー。
ナポレオンパイ買ってくれるなら頑張るわ」
「何ら私がチーズケーキもつけてあげるよ。
支援ならお姉さんに任せておきなさい」
最早シューターに戦況を覆せる事も無し。
ロゼ達によって順当に制圧される事だろう。
覆せる可能性があるならセイバーとの連携だが。
「どうした? お前の相手は俺だぞ紛い物」
己の相対者を放置していられない。
≪イナズマ一閃≫*11
質量を備える程の密度を持った雷刃がセイバーを切り裂く。
砕ける装甲、赤熱し飛び散る金属片の中。
手番を終えた雨柳へセイバーは動く。
繰り出すは独特の構えから放つトゥームストーン。
突きが射出され、魔刃が雨柳を穿たんと迫る。
百年以上の昔から幾多の悪魔や外法使いを葬ってきた、ゲイリンの系譜に伝わる剣技。
因果の如く使い手たる雨柳を貫く、事はない。
「やはり速さと力はあっても、形だけだな」
雨柳はするりと、刃を躱した。MISS!!
予期せぬ回避にセイバーはつんのめり、
対照的に雨柳はしっかりと刃を構えた。
(アイツの剣には程遠い)
確かにシュバルツバース調査隊のデータは有用だ。
対悪魔、対覚醒者兵器に取り入れるならこれ程有用な物もない。
現にセイバーの動きはX-2と比べても格段に速く鋭かった。
だが、ゲイリンその物が再現された訳じゃない。
ヨシツネも、黒き地獄を戦った仲魔もいない。
ゲイリンを目指し鍛錬を重ね、後に膝をついた先達に真摯に教えを請い、工夫を繰り返した青年の真摯な積み重ねがない。
まだ幼い妹と婚約者を愛し、人々を護り戦わんとした勇者のソウルはない。
ならば無視し得ない大きな欠落が存在する。
単にデータの不足に留まらない欠落が。
雨柳巧にはそれすら分かれば避けるのは容易い。
知り尽くした軌道から自身の体を外せばいいだけ。
一度はともかく二度目はない。
(……その技を
そんな単調な突きで)
かつて消えた後輩を、お前達は冒涜するのか。
怒りを込めて己を駆動する。
雷電真剣──シロガネが発動したスキルにより霧氷月影が雷を纏う。
繰り出されるのはロゼの再現の如き、十文字。
「俺程度も殺せるかあっ!!」
十字の斬撃が追加装甲を断ち切り、深く深くセイバーを切り裂く。
飛び散る金属片一つ一つも視認できそうな程意識が研ぎ澄まされていた。
仲魔の攻撃がセイバーに叩き込まれ、損傷を広げていく中、尚もセイバーは刀を構える。
罅割れたカメラはなおも雨柳を敵として捉え続けていた。
セイバーの後の先、雨柳は刀を構える。
切っ先を相手に付きつけ、片手は峰に沿える独特の構え。
(トゥームストーンの威力が出ないしぶれる?
あーこれは首周りの力の入れ方が原因だろう。
肘や足首が重要と思いがちだけど意外と首が鍵なんだよなー)
過去が脳裏を過ぎるは一瞬。
雨柳は刀を解き放ち突く。
セイバーを貫くは本家本元の
| トゥームストーン | 物理スキル | 闘気を纏った突きで敵単体へ物理大ダメージを与える 葛葉ゲイリンの系譜に伝えられてきた剣技の一つ |
雷を纏う鮮烈な突きはセイバーの核を破壊し、背中まで突き抜けた。
雨柳が刀を引き抜くと、セイバーは痙攣しながらも刀を振り上げようとし。
果たせずに2歩後ずさり、強く震えて崩れ落ち。
『ゲイリン……ッ!!』
怨嗟の言葉を上げた後、過剰負荷により爆散した。
「……俺はそんな大層な者じゃねえよ」
墓標の如く突き刺さるセイバーの刀。
雨柳はその横で低く呟いた。
異形の群れが砂漠を覆い尽くしていた。
「あっぎぃ! ひっああ!」
異形達は基地を放棄しようとした新世塾の兵士や技術者を、瞬く間に平らげる。
群がられる女の手から零れ落ちたケース──X-3に関するデータを修めた頑丈な無機物すらも彼等には捕食の対象。
まさしく地獄の餓鬼の如きそれらが砂漠中に蠢いていた。
| 軍勢 | 餓鬼道の群れ | LV80 |
| 軍勢 | 餓鬼道の群れ | LV80 |
| 軍勢 | 餓鬼道の群れ | LV80 |
| 軍勢 | 餓鬼道の群れ | LV80 |
無限とも思える数に無限の食欲。
何でもありの悪魔業界の基準においても異常極まりない存在。
多少のダメージ等物ともせず基地へ襲い来る。
「何て数……!
何処から来たのよコイツ等は!?」
基地に逃げ込みつつレイはカンナ達と共に侵攻する敵を削る。
近接は論外、範囲と威力を優先し魔法を放つ。
≪地獄の業火≫
≪マハジオダイン≫
≪マハブフダイン≫
バフをかけた全体魔法は敵に着弾して燃やし凍らし感電させる。
高位の悪魔使いらしい魔法の連撃。
普通の敵ならばこれで十分だが。
「仲間を喰って突撃してくるなんて……こいつらそもそも生き物なの!?」
コイツ等らしき存在は以前聞いていたが、それでも目の当たりにすると驚くしかない。
動揺を押し殺し対応を続けるレイ達の元へ足音。
「レイ! そっちは無事か!」
「レイブン!」
レイ達の元へ合流してきたのは雨柳達。
三人共無事なようだが状況故に緊張の色が濃い。
「奴等基地の敷地内にも入り込んでやがるな。
とんでもない数だが何が目的だ?」
疑問を述べつつアドラメレクを召喚。
鋼鉄の魔神は一瞬で状況判断。
己の火炎を解き放つ。
「燃やすのは奴等か ≪マハラギバリオン≫!」
太陽神の加護を受けた
猛き焔は敵の一群を吹き飛ばす。
「……まさに焼け石に水か」
だが視界内の敵の数は減ったようには見えない。
一つの軍勢を燃やしても次の軍勢が残滓を蹴散らし喰らって来る。
悪魔業界では質によって蹂躙されがちな数の暴力。
それが高い質に、全てを喰らう異常な食欲を持つならば。
天変地異にすら等しいと言えよう。
「新城さんから連絡来たよ!
一度集合して一点突破を目指すって!」
「やはりそれしかないか……」
アドラメレクの業火の照り返しを受けながら、雨柳は煤を払う。
少し離れた所で敵を迎撃する
(もしもの時の殿は俺らあたりだな)
レディ・ファーストというと嘘くさいが、そうする必要があるだろう。
密かに覚悟を決めつつ合流地点に向かおうとして。
────三人の男が、軍勢へ飛び出していった。
「はぁ!?」
「え、嘘でしょ!?」
「何で!?」
雨柳達が口々に驚愕の声を上げる中。
「せめてアスラ王でもつれてこいよな」
「ガブリエル以外の四大天使でも来ればぶっ殺してやったんですが」
「なんでもいい!
仲魔にならねえなら
・
・
・
「何あれー……」
本隊から零れた悪魔を的確に処理しながらも、ロゼは呆然と呟く。
敵の中に飛び出していった彼らは、規格外とかそういうレベルではない。
≪蒼き魔犬≫≪ピュリプレゲトン≫
≪悪しき輝き≫
見た事もないスキルが群れを複数纏めて消し飛ばしていく。
火力も範囲も意味が分からないレベルで。
「在庫整理ですょおおおおおお!」
引き金を引くと面白い様に敵が薙ぎ倒されていく。
「アカシャアーツとか疲れるんで~」
恐らくリーダー格の男がバイオリン*12で敵を殴りまくる。
そう言う効果なのだろうか、一度振っただけで2、3回どころか平均5回以上、最大八回は当たっているようだ。
「……えいっと」
近くへ飛んできた敵へロゼはとどめを刺す。
次がないかと視線を上げると、目があった。
外見の第一印象で言えば、白饅頭であろうか。
自分達より年上に見える色白の丸顔。
飲食店や家電量販で普通にすれ違いそうな、実に普通の青年に見える。
そのスカウターとバイオリンと強さは何!? という事を除けばだが。
「ナイス!」
「アッハイ、どうも」
サムズアップされたのでお辞儀を返す。
気のいい人なのかもしれない。
「あの人達の勢い凄いねレイ」
「そうね……」
動きは淀みないがレイも目が遠くなっている。
悪魔業界の非常識を上回る超非常識。
そんな物を見せられればこうもなろう。
「こぉい! 在庫転用品!!!!」
「モスマァアアアン!」
更に何か仲魔を呼び出してきた。
モスマンを自称する何かを。
\カカカッ/
| 妖獣 | モスマン(だったもの) | LV99 | ※全てのスキルを全体属性攻撃とメギドラオン チャクラの具足→勝利の雄叫びにされたもの |
≪マハジオダイン≫
凄まじい電撃が群れを滅ぼす中モスマンらしき物は咆哮する。
そう自分こそがモスマンなのだと!
「あの、モスマンてLV40くらいの悪魔、よね?
前レイブンも吸魔特化の奴使ってたけど」
普通ならそのはずである。
「
だがモスマンは俺がモスマンつったらモスマンなんだよと言わんばかりに暴れまわる。
新に召喚されたベルゼブブとの連携で瞬く間に複数の群れを即死させていく。
「…………よし、なんかがおかしい気がするが俺達も道を作るぞ」
今度はリカームドラからの蘇生ループとかやり始めた奴等から目をそらし、雨柳はバルバトスをスクルドへ入れ替える。
何が何だか分からないが今が好機なら、活かさない道理はない。
「こっちも集中攻撃で道を開くぞ。
あの三人と仲魔を巻き込まないように注意」
凄まじい範囲を焼き尽くす焔を三人はごく普通に回避していた。
ちょっと側溝をまたぐくらいの気軽さで。
揃いのポーズを取っているのは陽炎でそう見えるだけと思いたい。
「……する必要もないかもしれないが一応注意だ!」
「お、おおー!」
雨柳と共に仲魔達が魔法を撃ちまくる。
麻の如く乱された奴等には良く効いたようだ。
異界からの脱出は存外にうまくいった。
それこそ脱落者を一人も出さない程に。
あの三人には聞きたい事は山ほどあるがよかったと、雨柳は思っている。
彼方の御国の拠点の中。
ふぁ、とロゼの口から欠伸が出た。
「いやー……何だったんだろうねあの人達」
「本当に何だったんだろうな……」
新世塾基地攻略戦の翌日、雨柳とロゼは些か疲労していた。
戦闘その物も激戦だったが、人間訳の分からない事に直面すると疲れる物である。
仮眠はとったが微妙に疲れた感じが抜けない。
とは言っても収穫は多々あった。
ミスリルの人員含む捕まっていた人達を助けられたうえに、多数の情報や物資を奪取。
ロゼを始め激戦でレベルアップした者も多く今後につながる事だろう。
なお「「「「あいつらに捕まってました!」」」と主張している三人は見なかった事にする。
「何はともあれミスリルの人達を助ける事が出来て良かったよ。
僕やレイもお世話になってたから」
「そうだな」
戦友にしろ何にしろ折角結んだ縁が途切れるのは悲しい物だ。
それが途切れなかったのは良い事に違いない。
「俺ももう少ししたら拠点へ戻る。
ロゼも遅くならないうちに寝るんだぞ」
「はぁい。それじゃあお休みー」
欠伸混じりにロゼ自室へ戻っていった。
昨日とは違って静かな夜を過ごせそうだ。
大変だった分ゆっくりと休んでほしい。
「さて、と……」
ロゼが戻った後雨柳は端末を開く。
先程気づいたが、一つ依頼が入っている。
依頼主は聖華学園第七生徒会。
不定期に行われる外部講師による教導をお願いしたいとか。
今回は管など旧い召喚術の内容も行いたいらしい。
だかた管使いである事から雨柳に白羽の矢が立ったようだ。
(第七生徒会というと、白野ちゃんの所だな)
最後に会った時は中学入学前だっただろうか。
あの子がもう高3で、後輩に教える立場になっているとは。
世の中は知らない内に変わっていくものだ。
「…………」
端末を前にしばし逡巡する。
あの子の兄が誰かを想えば後ろめたさがある。
何かの間違いで、岸波鳩ではなく自分がゲイリンになったならば。
そんなIFはこれまで何度も考えてきた。
昨日紛い物を葬った時もそうだ。
過去は覆らないとしてもそう簡単に割り切れない。
後悔はまだ消える事がない。
「……受けるか」
それでも一呼吸おいて、受諾の返事を送った。
(いいんだよ。後輩の質問に答えるのは先輩の務めだ。
家庭でも部活でもそういう物だろ?)
なんて事を前自分は言ったはずだ。
もし多少でも鳩の大切な妹の役に立つならば。
やるべきだしやりたいと思う。
「明日から細部を詰めて、それから資料準備するとしよう」
何を説明すべきかを頭の中で並べ、仕事の算段を立てていく。
何て事のない準備が、少し懐かしい様な気がするのは気のせいだろうか。
◎主人公and登場人物紹介
・雨柳巧 <デビルサマナー><剣士> LV80
シリーズポジション:ニッカリ及び悪魔討伐隊(真・女神転生Ⅳ Final)& レイブン(ソウルハッカーズ2)
先代ゲイリンと交流があった元ヤタガラスの悪魔召喚師。
この後久々に会うはくのんや大鳳に後ろめたさから胃を痛めつつも、聖華学園に来たりする事になる。
・ロゼ <悪魔召喚師> LV66
シリーズポジション:ナナ(ソウルハッカーズ2)
彼方の御国に属する悪魔召喚師の一人。脅威の実年齢2歳。
今回も強敵と戦いレベルを上げたが、謎の三人の強さに衝撃を受け自分もまだまだだなーと思っている。
なお謎の魔犬は意外と人懐っこく、レイと一緒に撫でさせてもらった。もふもふ。
◎X-3シューター/セイバーについて
新世塾の技術者である深海一尉が開発した対異能者・対悪魔特記戦力。
高性能なパーツが使われている他、X-1及びX-2共通の弱点である電撃を防ぐ電磁装甲を追加で装備。
シューターには試作型光子砲、セイバーには魔鉱を鍛造した銘刀を装備。
極めつけは搭載されたAIであり、シュバルツバース調査隊のデータが導入されている他、セイバーに至っては調査隊に参加していた先代ゲイリンのデータを戦闘機動の基盤としている。
しかしあくまで導入されているのは戦闘技術に関するデータのみ。
深海は問題としなかったが本人の再現には程遠く、それが雨柳巧──かつてのゲイリン候補の付け入る隙となった。
尚シューターとセイバーの中身の来歴は以下のとおりである。
シューター:メシア救世主系列に属していたクラリック。
合法都市支援の為北海道及び東北で暗躍していたが、合法都市失陥を機に潜伏し東京で漂流者達を旗下に加えようとした所を捕獲された。
セイバー:かつての世界では推定戦中から生きていた古きガイア教徒。
元は護国側にいたがどの様な道をたどったのか極度の弱肉強食主義者となり、世界滅亡の事態の中行動を起こすも、当代のゲイリンによって敗走させられた。
この世界に流れ着いた後も対ヤタガラスを意図し非合法レルム内で活動していたがあえなく新世塾に捕獲。
国やヤタガラス、ゲイリンへの妄執を抱えたまま今度こそ死亡した。
次回はコミュ回か短めの事件を予定しております
GWには遅くとも投稿したいところです