真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス- 作:ローグ5
今回は彼方の御国中心のコミュ回です
春先の北陸の空。
微かな雲が流れる青空は透き通っていた。
(少し空気が暖かくなってきたか)
富山駅の中、切符を買う同僚を待ちながら。
\カカカッ/
| 悪魔召喚師 | 尾刃カンナ | LV71(67+4) |
今回カンナが富山県へ来ているのは帝都ヤタガラスへの応援要請が元である。
GPが停滞中とはいえ、並の異能者では対応しきれない異界も多い。
事実異界は平均でLV50代、ボスに至っては機械式で70と強力な悪魔が揃っていた。
(だが先週の新世塾戦には程遠い。
楽とは言わなくても安定して戦えた)
多数の機甲戦力に謎の人喰い悪魔の群れとの激戦。
新世塾の基地へ攻め入ってからすでに一週間以上たっていた。
ミスリルの隊員を含む多数を救助するだけではなく、過酷な戦いだったが得られた物は大きい。
参加した彼方の御国のメンバーの力量は多数の敵を倒した事で大幅に上昇。
カンナを含めこの世界でも戦える者も増えてきた。
加えて同盟相手の帝都ヤタガラスからの評価もさらに上がり、良好な関係の構築に役立った。
当初の接触は不幸な形だったが、技術と戦力、社会的立場を活かし協力する関係が構築できている。
互いの技術を基に、新世塾から得られた多数の魔鉱も利用方法を模索中だ。
(しかし……装備やアイテムも此処まで豊富に渡されると流石に困惑するな。
悪魔人間の私にこれ程の待遇とは)
かつてのヤタガラスにて、悪魔人間であったカンナの扱いは著しく悪かった。
彼方の御国のトップの直属となってからは改善したが、その頃を考えると今の待遇には困惑もする。
最もため込んでいても使う人間が少ないという、ヤタガラスの哀しい都合もあるが。
そんな事を考えていると、カンナへ歩み寄る少女がいた。
銀に一房の赤が混じった髪色、まだ十代と思われる彼女はカンナの同僚。
「切符買ってきたぞ」
切符を差し出すのは当代ゲイリン。
この過酷な世界でも名を馳せる葛葉四天王の一角。
現在各地の異界破壊を任とする彼女の強さはカンナを優に上回る。
とは言っても
レイやロゼが言うには見た目とは裏腹に感情豊かな少女らしい。
現に今も偽装の為もあるが、年頃の少女らしい装いが良く似合っている。
「出発は一時間後。
少し間が空いてしまったが良かったか?」
「いえ、構いません」
切符は緑色の表面に時刻や行き先等が印字された何の変哲もない物。
だがカンナには少しばかり物珍しい。
自動化が進み交通関係は端末認証のみだった身からすると未だに慣れないものだ。
「まだ時間もある。
私はお土産を買うがそっちはどうだ?」
「土産物か……」
しばしカンナは思案する。
前は買う相手も渡す相手も居なかったが。
「私も買っていきましょう」
今は身内や取引先と、以前に比べれば多少はいる。
ただし腹の出た上司はカロリーが気になる。
甘味ではなく体にいい物を買う必要があるだろう。
ならあの店に行くかと駅構内のショップをゲイリンは指し示す。
チーズケーキやカスタード入りの蒸しケーキ等、色鮮やかな箱が軒先に並んでいた。
代わりだねとしては特産の白えびを使った煎餅も。
(何を誰に買っていくか、考える事自体も中々楽しい物だな……)
常人にとってはありふれているが、カンナにとっては新鮮な体験だった。
当然ながら彼方の御国の拠点は葛葉の里のみならず、都内にも存在している。
都内の一角にある事務所に偽装した建物。
一見ありふれた事務所はその実は堅牢。
先日のミスリル襲撃を受け警備と通信能力を強化。
不測の事態に備えた脱出路も備えてられている。
また内部の設備もそれなりに充実している。
この世界のヤタガラスの豊富な資金力は此処でも活かされていた。
地下にある訓練場、簡易的ながら整えられた場。
少女剣士二人が向かい合っていた。
互いに訓練着姿の少女二人は木刀を振るう。
「せえいっ!」
「はあっ!」
一方は二刀を振るうツインテールの少女
もう一刀を振るう黒髪の少女葛葉ロゼ。
ひゅん、と風切り音を立てて木刀が宙を薙ぐ。
両者の動きは年頃の少女と思えない程に鋭い。
新世塾以外にも幾度の激戦を乗り越えた高位覚醒者同士。
速く強く、常人なら捉えようがない程。
木刀で互いの制空圏を探り合うは一瞬。
夏凜の距離を脱したロゼが、踏み込みからの上段。
床がきゅ、と音を立てるよりも早い打ち下ろしは。
「────残念だけどいただくわ」
それよりも早く、夏凜が突き出した二刀によって阻まれた。
「……負けました。
ふぅーやっぱり夏凜ちゃんは疾いね」
手を挙げたロゼに応じて夏凜も構えを解く。
ちょっとした模擬戦も終わりの頃合いだ。
「ロゼも随分強くなったわね。
初めて手合わせした時より重さも速度も段違い」
「えへへ、僕もこっちで経験積んできたからね」
LV80近い夏凜には及ばないが、依然と比べロゼも大分強くなった。
知識を吸収し訓練し、実戦を経験。
まだ仲魔もおらずLV50に至っていなかった頃は遠い昔にも思える。
最もLV100越えすらいる夏凜の保護者達に比べるとまだまだだ。
「この調子で僕もそっちのビルの人達に負けないように頑張るよー。
キャラの濃さでも強さでもね」
「キャラの濃さなら問題ないんじゃない?
一人称が僕の子ウチにはいないし」
「あーやっぱり珍しいんだね」
やはり一人称「僕」は珍しいらしい。
考えてみればばロゼの周りは「私」の人が大半だ。
「思い返せば割とノリで僕は僕と名乗っているなあ」
「そうなんだ?」
「うん、産まれて最初のあたりは私とか自分とかコロコロ変わってたんだけどね」
ロゼがレイとシェルターで生活して数か月後あたりの事である。
ある時、ちょっとした会話の際に「そう言えばレイと自分は対照的な外見をしているなあ」とロゼは思った。
レイは金髪に蒼い目、ロゼは黒髪に赤い目。
其処からレイの一人称は「私」ならロゼは「僕」だろうかと発想が飛び一人称が僕となった。
それが定着して今に至るという訳である。
「へーそんな事があったのねえ」
「一年半くらい前だけどずいぶん昔に思えるよ。
こっちに来てから知り合いも増えて色々学んだし」
シェルターの中でもレイやカンナにチヒロから教育を受けたが、悪魔や魔法関連についてはこの世界でとても多くの事を学ぶ事になった。
破魔呪殺の有無や状態異常の種類、それ以外にも物理の細かな分類等。
「片手剣属性どころか打撃も斬撃も物理で一纏め。*1
この世界とはずいぶん違うんだよね。
知識も色々失伝しているとかで」
思い返してみれば奇妙な話である。
この世界とは違う事が多すぎる。
「ロゼやレイの動き見るに対悪魔向けに調整はされているのよね」
「うん。属性が混ざって悪魔の耐性に引っかからないようにするあれでしょ?
あれは確かにしてるっぽいんだよねー」
そのあたりの調整はされているあたり、自分の産まれる大分前に色々変化があったのだろうか。
今となっては比較的年長者でもわからない事だが。
(びみょーにきになるなー)
産まれてくる前の、知りようもない話だからこそ気になる物である。
「ま、今となっては分からない事だからね。
そろそろ休憩にしようか」
「ん、そうしようか。
所で家の兄さんどら焼き持って来てくれたんだけど食べる?」
「もちろん」
なんて会話をしつつざっとシャワーを浴びて着替えて休憩室へ。
冷蔵庫の中にはどら焼きの箱が入れられていた。
「はー……もう少し身長伸びないかしら。
風とか東郷ぐらいにさ」
どら焼きをうきうきと出すロゼ。
一方夏凜は物憂げな息を吐く。
「東郷さんスタイルいいもんね」
「アイツもそうなんだけど風もよ。
最近めっきり人妻みたいな雰囲気出してまあ」
「色々と進んでいるんですネ」
一体何故
恐るべき内容からちょっと目をそらす。
「風もだけど樹や杏も色々あったからね。
アイツ等色ボケ気味だからしっかり引き締めておかないと。
……ま、気持ちはわかるんだけどね」
「うん」
ロゼは相槌を打った。
そう言う夏凜もまんざらでなさ気な顔だった。
(夏凜ちゃんのお兄さん大丈夫かなあ?)
あの時卒倒する雨柳&シロガネに加えマジ泣きしていた夏凜の兄を思い出す。
帝都ヤタガラスでの後方で早くも頭角を現した非常に優秀な人らしい。
だけどあの時の泣き方は凄かった。
クズ役が上手いので有名な某俳優の如く濁点が付きまくっていた。
(しかし家族、家族かあ)
かつての世界で葛葉マンゲツに創り出されたロゼに家族、血縁者はいない。
人造人間の出自は珍しいが、天涯孤独の出自は悪魔業界にありがちで、姉の様なレイもいる。
だから寂しさはそう感じないが、ふとこういう時に気になる。
自分の
「……で、聖華学園は部活の自由度が高くて。
私達勇者部も普通に公認されてるのよ」
「へー日流石は日本最大級の学校だなあ」
少し気になる事もあったが夏凜の話は興味深い。
状況が落ち着いたら学校に通うのもいいかもしれないなとロゼは思う。
聖華学園か他の学校かは分からないけど。
(……だけどもう少し常識を学んだ方がいいよね)
比較的安定している異界の入り口近く。
悪魔の入ってこない、所謂ベースキャンプに近い場所。
安全地帯にてクサカベはふうと、息を吐く。
(つくづく恐ろしいな。
この世界の人間の強さは)
幾度目になるか分からない感想を、胸の内で呟いた。
クサカベは彼方の御国の中でも、カンナやレイと並びトップ層の召喚師である。
前の世界ではファントムの召喚師やリスキーエネミー*2を始めとする特異な悪魔を駆逐。
元老院の覚えはめでたくなかったがレイブンが前線を引いた後、もし途絶えたゲイリンの系譜を継ぐならこの男だろう、そう噂される程の力量はあった。
それは彼方の御国に参加しこの世界に漂着した後も変わりなく、当初は面食らったがこの世界の知識や技術を吸収し力を鍛え上げた。
高GP下の異界を踏破し、先日の新世塾戦でも多数の敵を倒し気づけばLVは70。
慢心はない。それでも自分は強くなったとは思っていたが。
(俺もまだまだだ修行が足りない、か)
クサカベの視線の先はふわりとした髪の可愛らしい少女。
うら若き少女の名前は
帝都ヤタガラスと親交あるDBの庇護下にいる娘で、DBとして活動しつつ友人と一緒に聖華学園に通っているという。
可憐な少女の持つ力はすさまじい。
異界攻略で見せた立ち回りも的確その物。
実に頼もしい後衛だった。
しかも聞けば彼女の友人達も似たような水準、一部はそれ以上らしい。
事実彼女と共に来た球子や帝都ヤタガラス出身組の強さは知っていたが驚くべき事だ。
(話に聞く2度のセプテントリオンやLV100を超える悪魔。
異常な強敵に打ち勝ってきた人間の力か。
俺も足を引っ張らないようにしなくてはなるまい)
元の世界でゲイリン候補だったとかは関係ない。
過酷な前線を走る者達の後塵を拝す身。
彼等と肩を並べられるように力を伸ばすだけだ。
「そうか……この世界だとまだ白魔女の系譜は残っているのか」
「はい。私も白魔女の先輩から色々習いまして。
クサカベさんも知り合いが?」」
何て事を考えつつ、杏と会話を続ける。
話せない事もあるだろうが、お互い帝都ヤタガラスと交流のある身。
互いの事を知っていて損はない。
「ああ、俺は母親が白魔女だったんだ」
クサカベは巫蠱師の生き残りと、日本に流れてきた白魔女の間に産まれた。
蟲使いであった血族の末裔と、外夷。
元老院から疎まれていたのはそういう血筋もある。
母が何故日本へ移住したのかと言えば環境破壊が理由らしい。
かつての世界は世界的な環境破壊が酷く、川は淀み木々は枯れる。
まだ自然が残っている日本に何とか移住したとか。
「こっちではまだ白魔女が日本にも生き残っているんだな。
世界が変われば違う物だ」
「その当たり不思議ですよねー」
共通の話題で親近感を感じたからか話が進む。
あちらではレイが球子と話し込んでいる。
漏れ聞こえた話だと彼女はキャンプが趣味らしい。
一仕事を順調に終えた後の平穏な雑談。
実に悪くない。
「あ、そういえばなんですけど」
しばし話題が続いた後で杏がぽんと、手を打った。
何でも自分の知り合いの事で、前から気になっている事があるらしい。
「クサカベさんにちょっと質問なんですけど、前世の相手を来世でも想うのってどう思います?
当然来世でもその人が好きっていう前提で」
「前世の想いが来世でも続くって事か。
それなら……」
しばしクサカベは考え込む。
「時と場合によるとしか言えないな。
それが自分の意思に反して心が縛られるなら良くはない」
人は血筋や家、才能等生得的な物に縛られる。
どれだけ嘆かわしくても避ける事は出来ない。
悪魔業界に生きるクサカベは良く知っている。
「だけど前世でも来世も好きでいられる相手なら悪い事じゃない。
それだけ深く愛している相手ならな」
だろうとも、生きる中に幸福を見出せるなら祝福すべきだろう。
紆余曲折を経てきたクサカベはそう思う。
「クサカベさんってロマンチストなんですねえ」
「そうか?」
笑う杏に、意外だなといった反応のクサカベ。
どうやら少女にとって悪くない返答だったようだ。
「あ、やば」
「? どうしたの球子?」
だが、何故か球子の表情に危機感が満ちる。
「ならさっきと続けて何ですけど」
──杏はクサカベについて一つ誤解をしていた。
杏が友人から聞く限り彼方の御国の実働員は女性が多く、クサカベは貴重な男性である。
女性の割合が高いなら必然的に少ない男性に注目が集まる。
例を挙げるならば、自称ダークサマナーや脳破壊おじさんの様に。
だからクサカベは大層モテる男なのではないかと思っていた。
杏の推察通り、クサカベは目つきは鋭いが見た目も精悍で、人間的にも誠実。
帝都ヤタガラスの巫女からも評価は悪くない。
ではあるが。あるのだが。
「前世来世丼ってどう思います?」
「エッ」
実体は一度知古であった女DBとそうなっただけのほぼ素人。
JCビルの住人の相談相手になるには、あまりにも脆弱であった────!
「その知り合い、友人と前世来世の関係だったらしいんですね。
ですが前世来世の関係と分かったのが二人一緒に彼氏と寝た後で」
「ワッ! ワア……!」
語られる恐るべき内容。
自分より10歳程年下の少女に押されていた。
(助けてくれレイ! 俺ではもう対応できないっ!)
救いを求めてレイを見るが、諦めの表情で首を振るばかり。
となりにいる球子も同様だ。
「杏も風ももう駄目だ……。
大半頭ピンクのビルでタマはよく頑張ってるとタマに思うぞ」
「本当によく頑張っているわ……」
球子の言葉にレイも同意する。
現行周回の恐ろしさは強さや知識のみにあらず。
「レイブンもカンナさん曰く昔からモテてたって言うけどまさかあんなになってるなんて……。
この世界の男って女好きの傾向が強くなっているのかしら?」
「分からないなー。
取り合えずタマは杏だけでも止めておくぞ。
おっちゃんの脳をこれ以上破壊するわけにいかないからな」
「恩に着るわ本当に」
レイ達の背後でクサカベの裏返った声が響く。
二人共聞かなかった事にした。
漂流者とは奇妙な存在である。
自分が今とは同じで違う誰かを知っている事もあれば、誰かが今とは同じで違う自分を知っている事もある。
そんな奇妙な事が普通に起きる存在。
「しかし驚きですねえ。
チヒロちゃん達を知っている人も来ていたなんて」
「ええ本当に」
雨柳の事務所兼自宅の中。
チヒロは
「よく似た他人と勘違いしているにしては私の事良く知っていて。
どうも
「私はその時もエナドリ好きみたいだったしねー」
チヒロの言葉に続いたハレがコップを傾ける。
暖かくなってきたこの頃冷たい珈琲は喉にとって芳醇な潤い。
今日ハレとチヒロは御影と会っていた。
何か大した用事がある訳でもないちょっとした情報交換。
だけど近場に来たし、少しばかり話してみたくなったのだ。
「<学園都市須摩留>……そんな都市があったなんて俄かには信じがたい話ですけど」
ふぅ、とチヒロは息を吐いた。
レイブンという前例はあっても流石に驚く。
自分の知らない知古と"再開"するとは。
先日の新世塾戦の後処理となる、奪取した情報の解析を行った時の事だ。
多数の情報を取得した分解析には人手が必要であり、彼方の御国の一員であるチヒロも参加。
さらに応援として襲撃に協力したDB達からも応援が派遣されたが、その中に生塩ノアという少女がいた。
佐々木氏から派遣された彼女は情報処理に関して非常に優秀。
卓越した記憶力も相まって解析作業に貢献したが。
『チヒロさんにハレちゃんまで!?
貴方もこの世界に来てたんですか?』
『あー……何処かの私の知り合いな感じ?』
自分やハレ、カンナと同じ
ノア曰くチヒロとハレは学園都市で、同じ学校の生徒だったらしい。
運営側の
実質的なリーダーだった副部長チヒロに、ハレの他マキとコタマという4人の生徒がいて、日々企業のセキュリティ強化や情報収集をしていたという。
ノアたちとはたまに対立しつつも色々交流があったと、少し懐かしそうに語っていた。
俄かには信じがたい話だ。
ライトノベルの様な学園都市に生徒が
そんな都市が過去にあったとは。
だけどノアは嘘を語っているように見えなかった。
御影にも言ったがノアの語る自分と経歴以外の齟齬が少ない。
細かな癖や嗜好を知っていて、その知識はチヒロが夜どんな格好をしているかまで及ぶ。
無論エデンなんて組織が暗躍している昨今用心は必要に越したことはない。
だが同時に帝都ヤタガラスとも親交ある佐々木氏に雇われている相手。
なら自分個人程度ならと連絡先を交換した。
「生塩さんに聞いてみたい事もあるんですよね。
私達の頭に浮かんでいるこれとか」
チヒロが軽く指さすのは頭上に浮かぶ
悪魔人間の証たるこれはノアが言うには、学園都市由来の物であるらしい。
その全てを知るのは今は亡き超人生徒会長のみ。
ではあるが気がかりであるのは確かだ。
「前の世界でもこの世界でも時たま見かけたしそういう物かっておもってたけどねー。
チヒロ先輩はやっぱ気になるかあ」
「前から気がかりだったけど最近は特にね」
……本当に何なんだろうね」
物心ついた時にはあった悪魔人間の証。
これがきっかけで良い事も悪い事も多くあった。
紛れもない自分の一部だが、正体の分からない事に不気味さを感じる。
さらに最近幾度なく戦いLVを上げた結果、これまで使えなかったスキルも使えるようになった。
妙に馴染む力は再度の検査の結果浮かび上がったある神。
自分に根付くその力の顕現だろうと。
「前の世界で調べて貰った時も詳しくは分からなかったんですよね」
「マンゲツさんとその時弟子だった……私が調べたんでしたか」
御影の言葉へチヒロが頷く。
そう、以前の世界でも面識があった。
かつての世界では、御影はマンゲツの助手の一人。
造魔関係の研究を行う他、ロゼを創り出したロストナンバーズ計画にも関わっていた。
チヒロも世界が荒れる前は検査や任務で何度か顔を合わせたことがある。
(それがまさかレイブン――――雨柳さんと一緒にいるとは……)
レイから初めて聞いた時は思わず自分の頬をつねった。
実際に会ってみると前とは髪型や雰囲気も随分違うが同一人物に違いない。
とは言っても雨柳の現状含め驚くものだ。
「当時の科学力でも詳細な部分は分からずじまい。
ただ仮説として……肉体ではなく魂事態が融合しているのではないかと」
「血や肉体じゃなくて魂との融合。
一体どうやったんだろうね」
チヒロもハレも皆目見当がつかない。
どの様な技術を用いて、何故、魂に悪魔の力を根付かせたのか。
生まれ変わった後も、呪いの如く続くように。
「魂レベルでの融合ですか。ん~……」
御影はこめかみを軽く押し、考え込む。
一応覚醒はしているし、悪魔関係についても色々聞いている。
だがだからといって何か思いつくわけでもない。
この世界ではマンゲツの弟子という訳でもないから。
「巧さんの知り合いにもヘイロー持ちの子はいますが由来は知らないそうです。
ただ知る限りだとチヒロちゃんやハレちゃんみたいな若い子が多いかな?」
知っているのはそれくらいだ。
悪魔人間の
「巧さんの時も驚きましたが漂流者の事情って随分込み入っていますよね。
私が言えた身ではないけど。
巧さんもアイリスちゃんっていう二例目が名乗り出てきましたし」
雨柳を知る漂流者は他にもいてもおかしくないかなーと思いきや案の定である。
会ってみた所礼儀正しいいい子で、も仲良くなれそうだ。
なお出会った経緯を聞いてみれば、ああやはり雨柳らしいという感じであった。
「世界が変わっても……本当に根っこは変わらないんですよねあの人」
ふふと笑う御影の顔はまんざらでもない。
だからこそ好きなんだと言いたげである。
「レイやロゼも頼りにしているからねあのおじさん。
こっちでも色々あったらしいけど」
「まあ、色々とありました。
銀ちゃん達と会って、また戦いはじめてから良くなりました」
三ノ輪銀、今は佐々木氏の元に身を寄せている少女の一人。
あの子がきっかけでまた立ち上がった事には感謝しかない。
「……ただですね、あの子達私より進んでいるんですよね」
「えっ」
「わあ」
だが、御影は少女達に敗北感を感じている。
転機となったのは雨柳が葛葉の里での会議の後。
全員
脳破壊された雨柳から聞いた御影は青ざめた。
(私……13歳の銀ちゃんに……完敗してる!!?)
何せ御影はちょくちょく遊びに来ていた銀に、あれこれアドバイスしていたのである。
ギャーやめてと嘆く雨柳をよそに実体験に基づく奴を先輩らしく。
おやおやおや銀ちゃんは可愛いですねと。
それが完全にひっくり返ってしまった。
もう完全にあっちの方が先に進んでいる。
(私26、銀ちゃん達13、これで前者が完敗って……!)
思い出すと未だに、心の中でネコチャンが頭を抱え絶望の叫びをあげる。
あな恐ろしや帝都ヤタガラスのJC達。
「……どう、思います?」
チヒロとハレは二人顔を見合わせた。
知らんがなとはちょっと言いづらかった。
現在彼方の御国のメンバーはLV70代3名(レイ・カンナ・クサカベ)LV60代2名(ロゼ・チヒロ)と、各地の異界踏破や新世塾等世界崩壊勢力との戦いで力を上げていきました。
だけどガイアメシアや三大勢力を相手するにはまだまだ力不足。
オタクくんサマナー世界の過酷さは恐ろしい……。
次回は戦闘回、5月中には投稿したいと思います