真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス- 作:ローグ5
今回はVS阿修羅会篇の導入となります。
一度叩き、間をおいて二回。
規定通りのノックの後扉が開いた。
「ただいまー」
「お帰りなさいお姉様」
帰ってきた汐音を恋璃は労う。
コートを受け取ってハンガーにかける様は手慣れた物だ。
仙台にある東鳳学園に通う
漂流者である恋璃を拾った汐音が面倒を見だして速数か月。
時の流れは早いものだと子供らしくない感想を恋璃は抱いていた。
「それにしてもお姉様今日は早かったですね」
「ああ、うんちょっと色々あって早く終わって」
さっぱりとした汐音には珍しく何処か遠い目をしている。
南条の支援を受けデモニカを運用しつつDBとして活動している汐音はとても強く。
いつもキビキビと仕事をこなしているが、今回は何か起きたようだ。
「世の中には恐ろしい人達がいるんだねー……」
本日の汐音の任務は、東鳳学園の生徒を狙う阿修羅会系極道の拠点襲撃。
他のDBと共に今日こそ息の根止めてやらあ! と殴り込みをかけたのだが。
「チッコイツ等しけてやがる。
プラズマソードすら持ってねえ」
「これも暴対法って奴のせいですかね……あ、なんかの帳簿見っけ」
「この壺幾らで売れるかなあ?」
何か
最近地方でヤクザ全滅案件が起きている事は知っていたが、こんなあっけからんとした奴等だとは。
リーダー格の男に至っては近場で美味しい魚を売っている店を聞いてきた。
何でも飼い犬に新鮮な魚を食べさせてあげたいとか。
(貴方の言う飼い犬とは、その、何処からどう見てもわたしよりレベルの高い、其処のワンちゃんの事なのでしょうか?)
そう思いつつも答えると喜んで悪魔を割引で取引してくれた。
ありがとうなんか異常にレベル高い人。
(何だったんだろうあの人たち……本当に何なんだろう?)
考えすぎると深淵に引き込まれそうな気がするがどうしても気になる。
そういえば前キリギリス掲示板で、新しく書き込み始めたらしい超高LVの人達がいた様な。
「最近は漂流者で戦える人が増えてきたせいもあるかな?
GPの停滞もあって落ち着いてきたけど、だからこそ気を付けてね恋璃ちゃん?
嵐の前の静けさって言葉もあるし」
「はいっ! 不肖三笠恋璃ようやくLV50を超えた身、慢心する事なく精進いたします!」
えらいえらいと汐音は恋璃をほめる。
この子も表情が柔らかくなったと思いながら。
恋璃だけではない、東鳳学園の覚醒者生徒達は漂流者も含め地道に成長を続けている。
聖華学園や他の姉妹港に負けまいと意識を持って。
その成長は昔の自分を思い出させる、健全で喜ばしいものだ。
(だからこそ、備えないといけないね)
キリギリスに参加している汐音の元にも阿修羅会の情報は入っている。
現在日本全国から何処か────恐らく政経の中心地たる東京へ集結していると。
阿修羅会の最終目的はいまだ不明。
だが禄でもない事だけは確かだ。
例えばこの国を支配する様な。
故に汐音も多くのキリギリスと同様、準備を整えている。
装備や道具を揃え、仲魔の構成を見直し更新し、デモニカも生身もLVを上げた。
それでも十分とは言えないのが今の恐ろしい所だが。
(頑張らないとね、雨柳さん)
帝都東京で今も、最近は恋璃くらいの少女達を引き連れて頑張っている召喚師を想い、汐音は視線を外へ向けた。
(恋するお姉様も……素敵!)
他方恋璃は汐音の顔を見上げていた。
いつもと違った良さがあったから。
東京より離れた地でも女性と少女は行動し、色々と想っていた。
帝都東京、聖華学園は今日も生徒達でにぎわっている。
日本最大級の学園である此処の生徒は、少なくない数が覚醒者である。
様々な理由で身を寄せた彼らには、漂流者達も加わり実に盛況。
今日も学内は活気に満ちていた。
ある者は友人達と会話し、ある者は勉学に励み、ある者は部活動や旧校舎探索に精を出す。
実に若者らしい自由闊達な学生生活を楽しんでいた。
「はぁ……伊予島さん」
そんな聖華学園の食堂にて、溜息を吐く少年が一人。
北国の出なのか色白の肌に男にしては長めの黒髪。
中性的な顔立ちも相まって、年上の女性から可愛いと好意を抱かれそうな印象。
少年の名前は
北陸にある悪魔召喚師の家に産まれた管使いであった。
\カカカッ/
| 悪魔召喚師 | LV54 | 備考:管使い |
「あんな可愛い子とお付き合い出来たら幸せだろうなぁ……」
物憂げに呟く少年はある少女に好意を抱いていた。
その少女の名前は
自分と同じ最近聖華学園に転入した同学年。
少し前の外部DBとの模擬戦があった時の事。
外出制限に不満はなかったが外の実力を知りたいと久緒は参加した。
しかし敵はさすがに強く、外の洗練されたDBに対抗するも割と早めに倒されてしまったのだ。
あのガキの爪めっちゃ痛いんだけど何なの?
敗北し転がっていた自分を介抱してくれたのが杏であった。
可憐な顔立ちに楚々とした振舞、そして制服の布地を押し上げる胸元。
彼女に一目惚れしてしまったのである。
「いつにもまして物憂げだねヒサ君」
久緒の言葉に苦笑するのは
長い黒髪を切りそろえた大人し気な印象。
されどその在り方は中々に侮れないと見えた。
\カカカッ/
| 悪魔人間 | LV45 | 備考:道具や装備に詳しい |
かつてヤタガラスの少女達と異界探索の際に、強敵の撃破に貢献した彼女。*1
その後も慢心せず研鑽を続け力を順調に伸ばしているようだ。
「実を言うと昨日も本の貸し借りの時ちょっと話をしまして。
伊予島さんは本の趣味まで美しいんです」
「青春してるねー」
男子中学生と女子高校生、普通の学校なら同じ部活でもない限りそう話す事はない相手同士。
ではあるが久緒と正実はそれなりに仲はいいが、理由は二つある。
一つ目は現在学生探索者達の間で、出自や技能の垣根を超え協力する機運が高まっている事。
先日のあの模擬戦以来情報を共有し、連携をする事の重要さを多くが認識していた。
二人共その例に漏れず協力していたという事だ。
二つ目は比較的護国に近い位置にいる生徒な事。
第七生徒会の岸波副会長の様に、帝都ヤタガラスの実質的所属というわけではない。
それでも久緒の家は北陸のヤタガラス陣営に在し、正実は
なれば自然と共に過ごす事も多くなった訳だ。
「今は外に出るのも難しいけどご飯とか誘ってみたら?」
「うーんそうしたいのはやまやまなんですが今はちょっと外出るの難しいですからね。
伊予島さんに億が一にも何かあってはいけませんし」
二人は聖華学園内でもよく話し、探索にも出かける間柄だ。
当然その様な相手は二人以外にもいるわけで。
「────だったら食堂でランチに誘うのはどうかな?
幸い此処の食堂はメニューも味もいいしね」*2
爽やかな声音で語り掛けるのは青年になりつつある、落ち着いた雰囲気の少年。
暗い色の赤髪に端正な面持ち、鍛えられた体つき。
まさに物語の騎士の如く整えられた男。
「景崎先輩、今日のランチ美味しそうですね」
「だろう?」
少年の名前は
複数の仲間と共にこの学園に転入した漂流者。
その中でも頭角を現しつつある一人である。
\カカカッ/
| 超人 | LV63 | 備考:前衛型異能者 |
「白身魚とキノコのクリーム煮……うん、中々に美味だ」
「へえ~俺もそれ頼めばよかったかなあ」
久緒と辰砂は同じ前衛だけあって肩を並べる機会も多い。
当初は洗練された雰囲気に気おされたが、今では普通に話す事が出来ている。
「日替わりという訳じゃないから明日頼めばいいさ。
と、そうだ話を戻そう。
食堂なら予定も合せられるし気軽だ。
それでいいんじゃないか?」
「伊予島さん忙しそうなんですよね。
この間も何日かいなかった事もありましたし」
そういえばあのあたり<勇者部>全員を見かけなかったなと久緒は思う。
「あれだけの高LVだ、高LV異界の攻略にでも行ったのだろう」
「勇者部の皆さん強いですからねー」
正実の言葉に久緒は相槌を打つ。
杏の属する勇者部の知名度は学内でも高い。
勇者部とは去年から聖華学園に転入してきた少女達を中心に結成されたボランティア部。
全員が入学前からの知り合いで生徒会を上回る高LV。
その上全員が驚くほどの美少女でしかも親切だという。
久緒の記憶にある中では杏は元気で明るい土井球子、可愛らしい樹と面倒見の良い風の犬吠埼姉妹と特に仲が良かったはず。
三人共杏同様美少女であり、特に最近風は艶めいてきたとの噂だ。
(この間話したけど風先輩胸大きいんだよな……。
制服越しでも明らかに大き……っていかん!
伊予島さんの事が好きなのに不埒だぞ俺!)
風への連想を頭を振って久緒は吹き飛ばす。
第一女性を見てまず連想するのが胸とは不埒ではないか。
「……旧校舎探索でも動きが違うって評判ですから。
俺も地元じゃ麒麟児とか持て囃されてたんですけどあの人たちにはとてもとても」
「外で活動しているDBの強さは知っていたが流石に面食らったね。
この学校の生徒達も大概だが」
辰砂は苦笑を以て応える。
覚醒者の生徒は勇者部以外も大概だ。
学内でも屈指の高LVに気の良さと交流範囲の広さ、それと脳破壊で有名なセイト。
漂流者生徒の中でも卓越した戦闘センスと行動力を誇るジエン。
当初の悪評を挽回する様に優れた素養を見せつつある裏十三生徒会の面々。
それ以外の生徒も逸材揃いだ。
漂流者生徒はこの世界の知識技術を吸収し、元からの生徒も触発されて研鑽に励む。
今の所聖華学園では良い循環が出来ているのだろう。
(腕自慢を自認していた身では些か残念な物もあるがね)
辰砂とて誇る気はないがヤタガラスの傘下で幾つもの功績をあげ、この世界に来てからも異界探索等で力を大きく伸ばした。
だがこの世界では自分より強い者等学内だけでも数多い。
それでもこの環境に適応し、研鑽を積む他ない。
知識や技術に基礎能力の底上げ含めて色々と。
「それでもあの模擬戦だと完敗なんですよね。
俺も頑張ってどうにか一人は倒せたけどそれで終わり」
あの模擬戦の内容は今思い出しても恐ろしい。
過酷な戦況に適応したDB達の無慈悲な戦法の数々。
掲示板であれこれ調べても未だにその全てを理解しきれていない。
「もっと外のDBと繋がり持って、迷惑にならない程度に色々聞きたいなあ。
この間の講習で雨柳さんとは連絡先交換出来たんだけど」
「あの管使いの人ですね」
土曜日に行われた外部DBを講師に招いた講習会。
招かれたのは雨柳という高LVの管使い。
腕利きの評判に違わず管使いの特徴について分かりやすく纏めていた。
(連れてきたアシスタントの人が仲魔だったのはビックリしたなあ。
技芸族の悪魔とはいえあそこまでうまく擬態できるなんて)
同じ管使いの久緒にとって大変参考になった。
その後の旧校舎での実技実習でも色々と教わったものだ。
「私の知るヤタガラスやフリーにはいなかったが恐るべき手練れだ。
学ぶべきところは実に多い」
辰砂の言葉に久緒はうなづく。
学生は学びあるのみ。
(色々やって強くならないとなあ)
聖華学園の片隅で、確かに少年は前に進もうとしていた。
多くの生徒達と同じように。
・
・
・
(トラブルもなくもないが、この学校は実に平和だな)
夕刻の校舎を歩きながら辰砂は一人思った。
荒れた時勢ではあるがこの箱庭の中は秩序が保たれている。
退魔生徒会の者が見回っている他、随所に練度の高い警備員が配置。
生徒の安全に配慮されていると見えた。
それは外部勢力の襲撃のみならず、辰砂の様な漂流者、中でも素行の良からぬ者への備えではあるのだろうが。
(少なくともこの世界の倫理秩序に従う限りは、人間としての扱いをする、か)
辰砂と仲間に聖華学園への入学を手配した帝都ヤタガラスもそうした方針を取っているようだ。
詳しくは知らないが同じように帝都ヤタガラスと接触した漂流者達の中には、組織単位でその傘下となった者達もいる。
しかし辰砂達は小勢でかつ全員が未成年、その為聖華学園への転入を提案された。
学内の帝都ヤタガラス系列の生徒のみならず、漂流者目線の情報も欲しいという意図らしい。
先日の模擬戦の最中起きた事件もそうだが、火種について学園の自治を侵害しない程度には兆候を掴んでおきたいようであった。
(その言葉に偽りがないからこそ、少しばかり調子が狂うな……)
辰砂達に対応した鷲尾という紳士──運営幹部かそれに近い立場らしい男は、思いのほか気さくで辰砂達には学生生活を楽しんでほしいと言っていた。
それと自身の娘も通っているので催し物や活動の際にはよろしく頼むと。
そうした真っ当な人間性を見せられるのは意外であった。
辰砂達が所属していたヤタガラスは
構成する名家がどう自分達を扱ったか、どのような醜態を晒し滅んだかを知っているからこそ。
この世界のヤタガラスの真っ当な在り方には驚かされる。
無論この世界のヤタガラスもすべてが理想的という訳ではない。
過去には醜聞で主力が職を辞した事もあったようだし、京都は腐敗の果てに醜悪に滅んだ。
それでもこの環境で踏みとどまっているのは気高く優秀なのだろう。
「ここでトマトソースの中に豆腐を投入します。
形が崩れすぎないように慎重に」
辰砂の発達した聴力は通り過ぎた家庭科室から聞こえた久緒の声を捉えた。
少年は兄弟が料理店をやっている事もあり料理上手。
寮に入った学友にも色々教えているようだ。
(少々惚れっぽい所はあるがいい奴だな久緒は)
久緒と交流がある生徒には京都からの避難者である少女達もいる。
本人は気にして一人称を俺としているが、柔らかな容姿が威圧感を与えないのもあるだろうが。
親切で親しみやすい久緒は受け入れられているようだ。
自分とは異なる恵まれた環境で育った少年を、羨ましいと思っても恨むことはない。
嫉妬や憎悪等の悪感情は対象を絞り、それのみに痛烈に抱く事。
それが景崎辰砂の人生哲学が故に。
少し自嘲の混じった笑みを残して歩いていく辰砂。
窓の外を見れば中庭では平穏な光景が広がっていた。
第三生徒会の少女達が仲睦まじく歩いていく様。
探索終わりの生徒達が満足げに寮へと帰る。
備えられたベンチに座り話し込む少女が二人。
明るい色の髪に奇妙なマスコットをカバンに付けたのは確か阿慈谷ヒフミ。
彼女と話しているのは
前者は顔の広さ、後者は貴重なナビ型ペルソナ使いの為覚えていた。
更に二人に駆け寄っていくのは本条二乃。*3
何処で買ったのかたい焼きの袋を提げた彼女も槍の技と高い機動力でそれなりに有名な生徒だ。
誰もが戦う技を持ち、それでいて殺伐さのない年相応の時間を過ごしている。
在りがちなのだろうが、辰砂にとっては新鮮な物だ。
「この平穏を……壊させるわけにはいかんな」
価値を感じているからこそ、辰砂は呟いた。
少年の手にした新聞ががさりと、音を立てた。
一面記事には、民事義勇軍<ペンタグランマ>について書かれていた新聞が。
護国系や黄金の花園の影響が強い杉並レルムは、比較的平穏な状況が維持できている。
小規模な分警備の目が行き届きやすく、区画も死角が極力出ないように工夫されている。
外国人や一部の友好的な悪魔にとってもそう悪くない場所だろう。
だがそれでもレルムという社会の裏側に属する場所。
以前起きたメシア系のテロ*4に続き幾つかの事件が起きていた。
今日も又一角には規制線と現場の保全を行う係員。
何らかの事件が起きていたようだ。
平穏なようでいて水面下では静かに悪意が蠢いている。
そんな状況を感じ取ってか武具や道具を扱う店にはDBが絶えないのは杉並レルムも同じ。
悪魔合体を行う邪教の館も賑わっていた。
「待たせたなレイ」
「思ったより早かったねレイブン」
邪教の館のエントランス奥、合体場へ続く扉から出てきた雨柳もその一人だ。
手早く合体を済ませた雨柳やレイと合流し外へ出る。
雲の切れ間に除く太陽が微かに眩しい。
「今日は1体だけだったからな。
スキルの定着もうまくいったし時間はかからなかった」
「目当ての奴上手く来たんだ良かったね」
先に合体したレイも雨柳も目当ての仲魔を入手する事が出来た。
レイは後衛型の仲魔、雨柳は武器COMPにて使役する準主力。
いずれも今後控える戦いの役に立つだろう。
雨柳は目立たない程度に行きかう人々に目を向ける。
前来たよりも落ち着かない様子の者が多い。
彼等もまたニュースなりで聞いたのだろうか。
政府が阿修羅会を、民事義勇軍<ペンタグランマ>として国軍認定を進めているという狂気の沙汰を。
(ありえねえ話だよなあ)
蛭間総理や愛田副総理はこの難局に辛抱強く、見事な舵取りをしている。
しかし民主主義国家の日本は議会での多数決が、国の決定となる。
ならば多くが阿修羅会、もしくは新世塾に組みすれば、残念ながら通ってしまうのだ。
無論、帝都ヤタガラスや政府の良識派は動きを察知し対処に動いている。
法案がどう転ぶにしろ阿修羅会及び新世塾との決戦は近いだろう。
「所でだ、待ってる間何か情報あったか?」
だからこそ雨柳やレイは準備を整えつつ各所からの情報を集めていた。
「他のDBも気づいてるみたいね阿修羅会の動き。
以前から交戦していた奴等も移動しているって。
色々ガイア系も集まっているのも本当みたい」
「
そうそうたるクズカスのオンパレードだよなあ」
「バリエーション豊富で最悪ねほんと」
現在の阿修羅会は反社会的なガイア系勢力の
神話復権思想、ネバーランド、介錯人、ヘルメット団、百鬼夜行、無明の血盟、花鳥風月。
知名度の高い組織だけに限っても七つ。
(私達も調べたけどそれ以外に雑多な奴等も加わっているのよね)
情報収集には彼方の御国も無論協力している。
上記の組織以外にも、幾つかの組織の存在を浮かびあがらせていた。
一つ目は<征魔剣盟党>旧京都ヤタガラスと密接な関係にあった西日本を本拠とする悪魔組織。
極端な男尊女卑主義や暗殺等の悪行を成しており、京都ヤタガラス壊滅後には帝都ヤタガラスを始めとする護国組織によって取り潰しを受けた。
現在は阿修羅会の傘下へ入り、帝都での勢力確立を狙っているという。
追記するなら先日幹部の一人はチヒロが撃破した。
幹部や構成員の多くを失ったが、歴史の長さ故に切り札を隠している可能性を鑑み注意が必要と思われるとか。
二つ目は<ザナドゥ・ユニオン>。現世利益を重視し政財界への浸透各種犯罪と共に行っていた新興のダークサマナー組織。
ここ半年の異変では組織単位でアリとなる事を選択し、地方勢力やメシア穏健派を襲撃し物資や人材を略奪。
蓄えた富を以て崩壊後も箱庭での繁栄を謳歌しようとしていた。
だがドゥベ戦による異界崩壊やキリギリスの台頭でユニオンの思惑は崩壊し。
現行世界における善悪問わず厳しい過酷な環境、強力な悪魔や各勢力がせめぎ合う中で組織が選択したのは阿修羅会傘下となる事。
現在は阿修羅会の悪魔戦力の増強に着手していると思われる。
この二つの他にも百鬼夜行の分派等複数の組織も阿修羅会へ加わっているようだ。
ガイア系勢力は総計を推定すれば阿修羅会の実に四割。
雑多ではあるが大した大勢力だ。
「それとさっき規制線張られていた所あったでしょ?
今回事件起こしたの、阿修羅会の手下でもシャドウガーデンって奴等なんだって」
「嫌な予感はしたがまたかー……」
げんなりとして、重い息を吐き捨てる。
大した被害もなく鎮圧されたようだが此処でもか。
シャドウガーデンとは阿修羅会に潜り込んだ狂人シャドウ。
奴が何を考えたか救った事で産まれた狂信者達。
それがシャドウガーデンだという。
(類は友を呼ぶというが狂人と狂人がガッチャンコかよ。
頼むから纏めて滅んでくれ)
考えるだけで気が滅入る事態。
雨柳の場合は尚更だ。
「そのシャドウって奴評判悪いけど……レイブンの事知ってたんでしょ?
一体何があったのかしら」
「さあな……あいつは興味なさげだったが全くわからん。
多分アイツのいた世界に俺もいたんだろうが」
気がかりだしもしもの時の為の備えと情報収集もしているが。
「記憶がさっぱりだからな。
過去で何があったかは、アイリスみたいに来ないと分からないもんだ」
「私も私がいない時のレイブン知らないしね」
「そう、過去の事は知る事出来ないんだよなざ……」
雨柳はふと、前方に目を止める。
人で賑わい狭くなった通路を、通り辛そうな少女達がいた。
年は
男性としても体格の良い雨柳とすれ違うと、窮屈なのかもしれない。
なのでそれとなく距離を取って先に通す。
銀髪の方は横目で雨柳を一瞥したのみだが、茶髪の方は軽く会釈してくれた。
「……相変わらず気が利くねレイブン」
「そうかあ?」
レイの言葉に疑問符を並べつつ共に歩いていく。
少女達と合流した、紅葉の様に鮮やかな赤髪の少女の視線には。
人ごみのせいか気づく事はなかった。
「そう言えばさ、レイブンの
「えっあ、うん」
「
「タブンネ」
「ケイケンチ―?」
「それはやめて色んな意味で」
そして雨柳はレイの鋭い追及を探す事に、大変な労力を要していた。
錦糸町にある極道所有ビルの一室。
一際
「さて、次の
高級な椅子に座る男は呟いた。
堂々たる体格に威厳あるスーツ。
コールタールの如き黒で染められた異形のマスク。
四万の阿修羅会構成員を統べる棟梁は泰然としていた。
「こちらです親父」
側近のペストマスクを付けた若い男は名簿を差し出す。
並べられているのは
「
おい、繋いでくれや」
担当の技術ヤクザが機械を操作しモニターの幾つかに明りが灯る。
時刻は夜であるが直近の作戦には欠かせない工程だ。
男が行っているのは新規構成員への激励、ただそれだけ。
多少頭があれば使い捨てにされる可能性を頭に入れているガイア系の構成員達。
奴等にこちらから声を掛け、お前達に期待しているぞと示すのだ。
ヤクザやガイア系なんてのは大概人生不遇──本人に帰責するか、事実であるかはともかく主観ではそう思っている。
そんな人間にはこんな簡単な手が存外聞くのだ。
だからこそ男は側近の一人への教育を兼ねて構成員へ声を掛けている。
多少のトラブルで長時間の動きが難しい身。
この手の手法も後継者候補の一人に学ばせねばなるまい。
「夜遅くにすまんな。
各々調子はどうだ?」
画面越しに居並ぶ面々に声を掛ける。
己の鷹揚さを示す為に。
「すごぶる好調でございます。
これも阿修羅会のお歴々のお陰。
力戦にて応えねばなりますまい」
真っ先に応えるのは百鬼夜行の分派を率いる幽鬼。
瞳に灯した青白い熾火が不吉に揺らめく。
「レイだったらシュロの奴に言っても良いんだぜ?
何せお前さんを
「確かに我にこの力を与えたのはシュロ様。
されどその縁は阿修羅会によって紡がれた物。
恭順を示すは当然でございましょう」
「クハハハ! 言うねえ」
続いて渋谷に潜む者──二十一母の一角たる魔丞へ。
「そちらの手は足りているか?
先日幾らか欠員が出たそうだが」
「問題ありませぬ。
我ら征魔剣盟党、雑兵共を草の如く狩りましょう」
かつて征魔剣盟党の幹部であった魔丞は、今も組織を率いている。
魔丞の中ではLVが低い分、比較的理性的で意思疎通が可能。
故に重要度は高くないとはいえ拠点の一つを任されていた。
「それに……奴は乃木若葉への執着が未だ途切れず、正直煩わしいと思っていたのですよ。
貴殿のされた、
「ま、
更に側近とは違うか仮面式のペストマスクを装着した男へ声を掛ける。
「お前さん達には期待している。
闇の召喚師の腕、存分に奮いな」
「……俺も期待している」
側近の男も主に追随し言葉を紡いだ。
人魔問わず素材の確保に貢献した召喚師へ。
「親分殿、治崎さん。任せてくださいよ。
折角の機会、殺しのついでに良さげな素材でも確保してきましょう。
「頼もしい言い様だな。なあ治崎」
「ええ、質のいい素材はなかなか手に入らない。
確保できれば今後の役に立つ」
二人の言葉に闇召喚師は獰猛に笑う。
裏切り奪い犯し殺し、呵責を感じない事を強さとする男。
正道を踏みにじり笑う外道は楽しげだった。
「全く……どいつもこいつも頼もしい
彼等を見回し阿修羅会の主は尊大に笑う。
「いいかお前等。せいぜい殺し壊して、愉しめ。
天下分け目の大一番、極道達の楽園を築くが為の関ケ原────」
それは彼等が暖めてきた秘策、日本を外道共の手に収める為の一大作戦。
「────日本静止作戦をな!」
帝都にて悪意を胎動させる外道共は、まだ笑っていた。
次回から戦闘開始
雑多なクズ共を駆逐していきます