真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス- 作:ローグ5
阿修羅会篇は悪魔業界のクズ共と戦っていきます
内閣総理大臣
阿修羅会を民事義勇軍<ペンタグランマ>として任命する狂気の法案。
不可思議にも通ってしまった愚かしき決定を覆す為、総理と護国勢力は連携し芝居を打った。
すなわち、奴等こそが緑の血が流れる悪魔────人ならざる
あまりにも強烈に過ぎる蛭間総理の荒療治。
当然ながら今後の悪魔人間の扱い、社会を構成する一般人の動揺、現内閣の存続等多数の問題がこの方法にはある。
しかし襲来するセプテントリオン、メシアガイアに暗躍する三大勢力。
世界を滅ぼそうとする敵は未だに多い。
そう遠くない未来におきる決戦を、阿修羅会なんぞに邪魔をされるわけにはいかない。
ならば阿修羅会という悪性腫瘍の切除は、戦いが迫る現実を示すのは今しかないと判断を下すのは、今にすべきだとこの国を護る者達は考えた。
全国中継での宣言に、堂々と仁王立ちする総理。
この国を背負う漢に対し阿修羅会が選ぶは
国会議事堂のある千代田区、首都たる帝都東京、さらに全国で極道共が暴れ出す。
有象無象の凶暴な野蛮人が悪魔を従え、得物を手に現れる。
無論阿修羅会も烏合の衆のみにあらず、戦力を蓄え秘策を備えていた。
それは、破壊の八極道と呼ばれる高い戦闘能力を持つ
それは、二十一体の魔丞によって構成される徳川曼荼羅反転による大幅強化であり。
それは、全国の非合法レルムで召喚された三十三体の新化秘神であった。
更には三大化外と呼ばれる強大極まりない三体の悪魔に、<花鳥風月>によって強化された何処か歪な悪魔達。
量と質を揃えた大攻勢を、阿修羅会は展開した。
荒れた世界にて覇を唱えんとする混沌の軍勢。
幾多の世界で社会を蝕み、弱者を蹂躙してきた邪悪達の再現である。
「合図が来た、俺達も動くぞ」
義士と欺瞞した本性を放り捨て、本性を見せんとする阿修羅会の雑多な戦力。
狂った叫び声と共に行われる暴挙を掣肘するは、打撃に斬撃に銃撃、それと衝撃。
蛭間総理の漢立ちに呼応し、武器を取るは自衛隊666部隊に、帝都ヤタガラスを筆頭とする護国勢力、さらにはキリギリスの参加者達。
阿修羅会の非道に怒り、今の社会と人を護らんとする彼等もまた対応を開始した。
【混沌の奇禍事変】と呼ばれる、戦後最大規模の同時多発国内戦事変。
阿修羅会と守護者達の、千代田区を中心とした全国同時決戦。
ただ一日半で膨大な死傷者を出した凄絶な事件。
戦後最も悪魔ではなく人と人が殺し合った日。
雨柳巧も又、一人の悪魔召喚師として事変に加わっていた。
外道共を滅ぼし、現代の社会を維持し、親しい者や顔も知らぬ者達を護る為に。
騒乱の中心たる千代田区に隣接した六本木。
歓楽街のみならずオフィス併設の大規模複合商業ビルや、美術館等も在する日本の中心地のひとつに相応しい繁栄。
巨大な高層ビルの下、普段は人々が行きかう街。
この街も例に漏れず争いの最中にあった。
逃げていく一般人に、避難誘導を行う警官隊。
彼等を追うは雑多な混成軍。
「誘導から外れないで!
こちらの安全な道を通ってください!」
「予定通り避難経路をエストマで清めた。
だが予想以上の数だなこれは」
「援護射撃行くよ!」
無論帝都ヤタガラスを中心に備えはされていた。
エストマやMAGバッテリーによる悪魔出現の抑制。
さらに偽装警官隊やリコリスによる援護射撃。
講じた策は有効に機能している。
「クソっ! アイツ等小銃程度じゃ止まらない!」
「
しかし阿修羅会の軍勢は止まらない。
多勢のみならず、強化されている。
少々の技巧や作戦を食い破る程に。
「
\カカカッ/
| 軍勢 | カチコミの群れ*1 | LV80(50+30) | 物理・銃撃に強い 呪殺無効 破魔弱点 |
迫りくるは凶相の極道外道の群れ。
銃やドスで武装した軍勢の狙いは無力な一般市民。
「真島サンの言う通りだ!
「ぶつ切りに刻めェっ!」
\カカカッ/
| 外道 | アーバンテラー*2 | LV61(31+30) | 呪殺無効 打撃・斬撃反射 破魔弱点 |
\カカカッ/
| 外道 | ナイトストーカー*3 | LV52(22+30) | 破魔弱点 |
更に側面からはほぼ悪魔化した外道共がリコリスへ襲い掛かる。
破壊の八極道が一人、
避難援護に出てくる
一般市民毎殺し、奴らが意固地に維持する歪な秩序を冒涜しろと。
「俺の従弟はテメェらリコリスに殺された!
ただガキ共に
「
ガキ売った金で気前よく奢ってくれるいい人だった!」
「何て残酷な! アイツ等こそ悪魔やん!」
手前勝手な事をほざく極道の狂気が少女達へ向く。
通常時ならともかく強化された極道を相手にするには危険すぎる。
「ウオオオオォッ! このドスの一撃はっ!
志半ばで死した極道勇者への
特攻したナイトストーカーがドスを構え特攻。
反応が遅れた少女、を庇った青い制服の少女の腹に突き立てる。
「やったぞ! オメェ等俺につづげべっ!」
憎き宿敵に一太刀浴びせた快哉を叫ぶ間もなく外道の頭が吹き飛んだ。
拳を軽く振る少女の腹には僅かな傷も無し。
まるで悪魔の様に、物理無効耐性を持っているかの様に。
「今報告来ました! 対応レベルを2まで引き上げるそうです!」
「ならこの姿でいる必要はないわね」
共に立つ少女の言葉を受けて、
蒼い制服を着た少女から、蒼と黒の衣装を着た金髪の女性へと。
その姿は紛れもなく軍神スクルド・スカディ。
「この数なら万能は安定ね。≪メギドラ≫」
対応レベル2、即ち衝撃・念動以外の魔法も使用しての対応許可。
打ち合わせを思い返しスクルドは魔法を放つ。
万能のエネルギーが放たれ、焼かれる外道共。
重傷を負った奴等にリコリス達が銃撃しとどめをさしていく。
側面からリコリスを襲った部隊はほぼ壊滅だ。
(あの千束って子が言った通りの結果になったわね)
スクルドが擬態能力でリコリスに紛れていたのは、千束というの提言がきっかけだ。
阿修羅会の中でも死柄木の一派は幾度なく彼女を始めとするリコリス達と戦っている。
故に戦闘の際には一般市民毎リコリスを狙いに来るだろうと。
その為スクルド以外にも擬態を使え、なおかつ人への理解度が高い仲魔が何体かリコリスに紛れて配置されている。
奇襲に対する奇襲、市民のみならずリコリスを保護する為の策は見事に功を奏した。
(あちらも……予定通り動いているわ)
スクルドの視線の先、DB達も確かに阿修羅会の襲撃へ対応している。
護る側は防衛の不利等百も承知。
故にこそ入念な研究と準備を重ねていた。
「阿修羅会の戦力を確認、掃討します!」
長大なM249ミニミ*4を腰だめに構えるのはアイリス・ビショップ。
愁いのみならず戦意を湛えた目で外道共を見据え、引き金を引く。
鈍く煌く弾丸が軽機関銃から猛烈な勢いで吐き出され殺到。
逃げ遅れた避難民毎極道共を貫いた。
「俺はもう駄目だ……
「何を言うんだ!
一緒に
……あれ特に痛くないぞ」
「ほんとだ。
人外に堕ちた極道共が
だが何処も痛くない事に気付き、警官の誘導に沿って歩き出した。
「よくやった嬢ちゃん!
このままクズ共の昇天祭と行こうぜ!」
「在庫整理を手伝ってくれてありがとう極道共!」
「フォッグブレス浴びせんの忘れんなよ。
間に合わない時のもしもの備えだ」
「なめてんじゃねえぞコラ!
テメエ等のやり口なんざ想定済みなんだよクソボケが―っ!」
乱射される銀の弾丸が次々と極道共や悪魔を昇天させていく。
汚れの如く街から掃討されていった。
DB達は使用しているのは銀の弾丸*5を始めとする破魔属性の弾頭。
悪魔混じりでもなければ人間にとって無害な弾頭であり、使用機会は少ない。
他の属性弾や状態異常弾と違い、余らせているDBも多い品。
しかし阿修羅会の構成員共は多くがDARK属性。
破魔属性の攻撃が有効な個体が多い。
一般市民と阿修羅会を撃てば、前者は無傷なまま後者のみが消えていくのである。
さらにはスクンダ等命中率を低下させるスキルで命中率を低下させる。
非覚醒者は悪魔の攻撃が当たれば死ぬ為防御力を上げても無意味。
ならば命中率を低下させ攻撃を外させる。
とある対悪魔に長けた軍人の論文や、ここ半年で得られた様々な事件のデータ。
それらを元に護国組織やDB達は果敢に対応し、人々の多くを護っていた。
「キヒィ―ッ! 死ねえ弱者共ォ~!」
「っ! やめ」
とはいえ事件の起きた範囲が広く、敵の数も多い。
銃撃を潜り抜けて避難民へ爪牙を突きささんとする外道もいる。
無力な親子連れを狙い振り下ろされる剣。
警官が阻止せんとするがすでに遅し。
血と悲鳴をまき散らす惨劇が。
「────させるかよクズが」
起きる一瞬前に男が間に割り込んだ。
振り下ろされる刃物を刀で受けて切り返す。
その動きは淀みなく、力強い。
| 猛反撃*6 | 自動効果 | 物理・銃撃属性の攻撃を受けた時、50%の確率で強力な反撃を行う。 |
雷を纏う刃が邪鬼化した極道の首を刎ねた。
崩れ落ちる体を蹴り倒し残身。
「その人達をたのみます」
「あ……ああ!」
自分より若い警官に一声かけて駆け出す。
目標は破魔耐性のあった極道共。
「や、野郎は……!」
「知っているんですかい兄貴!?」
その内のリーダー格、悪魔化し大斧を提げた男が目を見開く。
雑多なガイア系組織の古株である男は知っている。
雷光を纏う刀を掲げた召喚師がだれかを。
「間違いねえ! 10年前俺達ガイアを斬りまくった
≪奥義一閃≫
叫ぶその瞬間には既に軍勢に向けて刀は振り下ろされている。
一閃にて敵を死に至らしめる剣技を振るう男は。
◇
「この辺りは全て片付いたな」
微かな音を立てて納刀。
あたりに動く極道は無し。
(千代田の南側からの避難経路は確保した。
犠牲は……皆無じゃないが)
犠牲者はゼロとまではいかない。
それでも大規模市街戦にしては、被害は抑えられている。
綿密な計画と準備、さらに所属を問わない奮戦。
戦闘は今の所防衛側有利で進んでいる。
それは東京全域での様だが。
周辺には既に避難者の姿はなく、雨柳や他のDBも仲魔を展開。
速やかに敵を殲滅する事が出来た。
「事前情報にあった八極道、秘神級の悪魔は無し。
そう時間はかからなかったが長丁場になる。
今のうちに回復はしておけよ」
「という訳ではいこれ」
雨柳の言葉と共にシロガネがチャクラシロップやチャクラ豆*7の包装を渡す。
回復量は多くないが、細かな回復には嵩張らなく安いアイテムの方が便利だ。
「甘露は助かる。≪フォッグブレス≫はそれなりに力を使うのでな」
スクルドに続きを受け取るのは装甲された手。
差し出された手の主は陽光色の鎧に盾と剣、クワガタの如き黒い二本角。
威容を誇る悪魔はケルト神話の主神ルーグの別側面たる幻魔イルダーナフ。
雨柳が使役する新たな仲魔である。
\カカカッ/
| 幻魔 | イルダーナフ*8 | LV73 | 火炎・電撃・破魔・呪殺無効 |
複数属性の魔法に
相次ぐ大規模戦闘の為に新たに作成した仲魔は、早速役割を果たしていた。
(
今回は基本スクルドとイルダーナフ、回復時にはラクシュミで回す形になるな)
召喚師である雨柳にとって使える仲魔が限られているのは実に厄介。
だが汎用性ある仲魔のお陰で十分に戦闘可能だ。
「思ったより口当たりがいいな。
この手の物は薬臭さがあると思っていたが」
「最近改良が進んでいるのよ。
嫌な味の物を毎日食べさせられたら忠誠心が下がるからって」
「良い事だが……それは酷使される仲魔が多いって事ではないのか?」
「正解」
幻魔が雨柳を見ると厳かな顔で頷いていた。
其処は正直否定してほしかった。
「……異邦だろうと民を護り、敵を駆逐するは戦士の務め。
異論はない故我が剣を振るわしてもらう」
「ああ、頼りにしているぜ」
やや自分に言い聞かせる様に幻魔は呟き追加で一つチャクラ豆を口に入れる。
幻魔のアライメントは雨柳と同じ
相性は良く阿修羅会の悪辣さもあり戦意は高い。
状況は現在は優勢といえ楽観できる物ではない。
しかし敵が強化されてようと、手札が限られていようとやり様はある。
仲魔に加え仲魔がいればなおさらだ。
「と……戻って来たか。
他はどうだアイリス?」
「東京全域に展開した魔丞のうち数体が既に討伐。
介入が懸念されていたシャドウとシャドウガーデンはまだ目撃されてないようです」
情報収集に戻ってきたアイリスが帰ってきた。
情報は予想とはそう違いはない。
「千代田区は……敵の高位悪魔と各DBが交戦中。
異界化した霞が関駅周辺を含め膠着状態の様です」
雨柳が組んでいるのはアイリス、更にもう一人。
「ただ事前準備もあって芝・浜松町方面は避難経路を確立できました。
僕も≪エストマ≫してきましたがあれなら悪魔も湧かないでしょう」
雨柳に説明するのは少年と青年になりつつある年頃の、眼鏡をかけた男。
神職のそれに似た白装束の男は
アイリスと同様、かつての雨柳と共に冷迷の東京で戦っていたDBの一人だという。
\カカカッ/
| 顕現者 | LV62? | 備考:元悪魔討伐隊所属 |
礼一郎もまたこの世界に漂着してからもDBとして活動し、以前のレイドバトルにも参加し頭角を現しつつある。
帝都ヤタガラスとも繋がりがある島田家の支援を受けている事もあり、今回の作戦ではアイリスと共に雨柳と組む事になった。
複数系統の武器を使い判断も適切で、さらには決戦用の奥の手もある。
対応力が必要な今回の戦場では頼れる相手だ。
「ただ市ヶ谷方面は芳しくないようですね。
阿修羅会も戦力を集中しているからか市民の避難が遅れてる」
「次は市ヶ谷方面の戦力に合流するべきか?」
「要所ですしそうするべきかもしれませんね」
「現地にいる戦力はどうだろ。
佐々木さん達は別の所っぽいけど」
其処まで話した所で雨柳の端末に着信。
番号を伝えておいたヤタガラスの司令部からだ。
『HQよりクライエッジ。千代田・六本木の境界近くまで移動お願いします』
「クライエッジよりHQ。阿修羅会の拠点が見つかったのか?」
雨柳がアイリス達と共に六本木へ派遣されたのは、阿修羅会の拠点の一つがあると目されていた為。
なお彼方の御国は今回阿修羅会の拠点があると目された内二つ、渋谷と六本木に主力を展開している。
避難経路の確立後は雨柳達と合流して拠点攻略を行う予定だった。
『既に発見された拠点は、彼方の御国とキリギリスのDBが急行中。
貴方達に敵戦力の排除をお願いします」
オペレーター曰く境界近くで避難を妨害している悪魔の一団がいるらしい。
展開したDBの一部が防衛に当たり、何とか市民は護れているが攻勢には手が足りない。
故に雨柳達に援軍として行ってもらいたいと。
「クライエッジ了解、今から現場へ向かう。
と、いう訳だ。善は急げで行くぞ」
「かしこまりました雨柳様」
「久しぶりって訳じゃないですがよろしくお願いします雨柳先輩」
軽く一礼した二人と共に駆け出す。
道路状況を鑑みれば車両より徒歩の方が速い。
(千寿の奴もアイリスと同じ周回……俺の事知っているんだよな)
初めて会ったのはWGM攻略戦が終わった少し後で、まだ会って間もない。
自分以外にも誰と親しかったか等も聞いて少し驚いた物だ。
しかしレイ達の来訪を皮切りに何度も感じたが、知らない過去があるというのは、むず痒いというか落ち着かないというか。
(
小耳に挟んだ所によると、雨柳も面識あるシロコ達と佐々木は過去周回で面識があったらしい。
案の定知らない過去があった訳だがどう感じているのだろうか。
時間があったら聞いてみよう、そう思いつつも雨柳は戦火の街を走り抜けていく。
遠くでまた、爆炎が一つ上がった。
六本木-千代田の境、高層ビルが立ち並ぶ街の中を人々が避難していく。
安全と断定できる場所は少ないが、最大の激戦区たる千代田よりは周辺地域の方が遥かにマシ。
現に東京の中でも魔丞を始めとする阿修羅会側の戦力が駆逐され、厳重に警備された避難所がある地区も幾つか出てきている。
故に警察の誘導の元千代田区から六本木方面への避難が行われていた。
「ふぅむ、柔らかな
これは喜ばしい事じゃのう」
正規ペンタグランマのDB達が避難民を護る中、馬の嘶きが響く。
武器が振るわれ魔法が行使され人魔が争い合う。
その中を高速で駆け、亡霊騎士は笑う。
「夜に至らぬは残念だが、無聊を慰めるには良き哉」
首無しの黒馬に跨るは、和洋を歪に混ぜ合わせた夜色の鎧を纏った騎士。
髑髏に似た頭部は宙に浮き、両の眼窩には不吉な青い熾火を宿す。
「このヤコウ・デュラハンと
亡霊騎士は破壊の八極道が一人によって新生した、百鬼夜行が分派の棟梁。
幽鬼ヤコウが西洋の亡霊騎士として身を鎧った存在である。
\カカカッ/
| 幽鬼 | ヤコウ・デュラハン | LV87(67+20)*9 | 物理・破魔耐性 電撃・呪殺無効 |
首のない馬に跨るヤコウとデュラハン、相似形を利用した歪な悪魔。
百鬼夜行の先触れたる亡霊騎士は居丈高に振舞槍を振るう。
更に疾駆する幽鬼へ続く悪魔もまた多数。
魔犬や騎乗の士に鬼、姿形は異なれど夜色の装いの亡霊妖怪が街を闊歩する。
\カカカッ/
| 軍勢 | LV78(53+15+10)*10 |
デュラハンに率いられる百鬼夜行の悪魔達。
彼等もまた強化され、ワイルドハントとして力を得ていた。
「一撃を受けい! 雑草共!」
軍勢を率いる幽鬼が咆哮。
蹄の音を響かせ疾走し、手の中で槍を半回転。
一閃されるは破壊の一撃。
| 冥界破 | 物理スキル*11 | 敵全体に物理属性大ダメージを与える*12 |
| 修羅の一撃*13 | 自動効果 | (クリティカル率が20%増加し、クリティカル時に与えるダメージが20%増加する |
槍による物理破壊の波動。
強烈な一撃がDB達を打ち据える。
「チッ……テトラも貫く仕様かよ!」
「置きメディアラハンしつつ足を止めろ!
カタギに近づけさせるなよ!」
それでもこの場のDB達は手を尽くして幽鬼の蛮行を止める。
ただでさえ高LVなデュラハンの突撃を受ければ死ぬのは避難民のみではない。
支援するリコリスや警官達にも甚大な被害が出る。
そんな最悪な光景は御免だ。
フォッグブレス等を交え機動力を低下させ、デュラハンを包囲し止めんと果敢に戦う。
格上だろうと怯える事の無き堂々たる奮戦。
(……ああまったく鬱陶しいのぉ)
それはデュラハンにとって苛立たしい光景だ。
「ならばほれ、雑草らしく足掻いて見せよ」
速度自慢らしきDB達へ眼差しを向け、呪詛の言葉を唱える。
放たれるは幽鬼のもたらす悍ましき呪縛。
| 憑依*14 | 種族 | 選択した敵チームの射程を1、移動力を半分にする他、状態異常・回復不能 |
「クソッ足が鈍りやがる……!」
「カジュアルの悪魔が使うスキルか! 面倒な!」
機動力を大きく低下させたDB達へ妖怪が殺到。
カバーに入るDB、呪われる度に連携が綻んでいく。
その様を様を視つつ配下の
酷薄な目でデュラハンはほくそ笑んだ。
(だがまあいい。奴らの様を見れば肉共も恐怖に駆られ慄く。
面倒だが良い
────ヤコウ・デュラハンにとって今の世界の有り様は気に食わなかった。
そも、妖怪とは人にとって理不尽の権化であり、遭遇が死を運命づけすらもする上位存在。
彼等は自分達を畏れ、己の矮小な命を奪われぬ様に必死になるべきなのだ。
それが今の世の中はどうだろう。
非覚醒者にとって妖怪は幻想の中の存在。
面白おかしい物でしかない。
更に覚醒者にとっても妖怪は恐れる存在ではない。
一昔前ならいざ知らず、異常なGP下では妖怪を容易に超える強さへと到達する。
彼等は最早妖怪など畏れやしないのだ。
百鬼夜行の分派を率いていたヤコウは、そうした状況へ憤懣を抱いていた。
怒りは裏京都が滅び、見つからぬ様に身を隠す中でさらに強まっていく。
今の妖怪の、自分達の境遇は間違っていると。
だから阿修羅会を通じ巡り会った八極道の提案には二つ返事で乗った。
西洋のデュラハンなんぞと混ぜ合わせられようが構いやしない。
「理不尽と恐怖、それこそが妖怪の本懐なり!」
DB達と戦いつつもデュラハンは叫ぶ。
その為に我は生き、人は生かされているのだと。
デュラハンは駆け抜け、槍を振るいながら喧騒に気付く。
千代田方面の道路から同じ覆面を被った群れが流れてきていた。
まるで波濤の如く大量に、道路を埋め尽くす。
(あれは阿修羅会の……確かトゥワイスと言ったか)
スキルの組み合わせによって無限に分身し、無効の耐性で身を護るのが男の戦法。
一体一体は弱くとも体を張る事で味方に貢献する。
(煩わしくはあるがまあいい。
此処で押し切っておくか)
多少喰える量は目減りするだろうが、戦いにもそろそろ飽きた。
質と量で敵を圧倒し恐怖と絶望を味わいたい。
「そろそろ若い女と子供を……ぬっ!?」
瞬間、絵図を燃やす様に莫大な焔が瞬いた。
「無効耐性で固めようと貫通があれば倒せる。
強引な手だけどな」
仲魔たる太陽神アドラメレクの焔は反射以外の耐性を貫く。
機械式にしてLV80を超える悪魔の強化された一撃に、トゥワイスの群れは焼かれるのみ。
多くが一瞬で炭化し、一部は燃えながら吹き飛ぶ。
(新手が来たか……! 実に面倒な!)
(
アドラメレクを使うのは難しいか)
煩わし気にデュラハンはトゥワイスの燃え盛る残骸を蹴散らす。
雨柳はCOMPを操作し、魔神から幻魔に入れ替えつつ接近。
消耗したDB達とスイッチ。
馬上の亡霊騎士へ刀を振るう。
「来いよ亡霊野郎! 地獄へ叩き返してやる!」
「人間風情が猪口才な!」
≪べノンザッパー≫
鎌槍が旋回。
雨柳を切り裂くがその勢いすらも利用する。
≪猛反撃≫
≪十文字斬り≫
デュラハンの馬の足への脚斬り、返す刀にて十文字を描く。
硬い体表が削れ、黒い血が流れた。
≪フォッグブレス≫
≪マハジオダイン≫
≪メギドラ≫
さらに仲魔達も追随しワイルドハントを削る。
熾烈な近距離戦が繰り広げられた。
「面倒をかけてくれる!
来たれい我が配下共!」
雨柳に対してデュラハンは憑依を使用。
移動力が大幅に低下し回復不能の呪がかかる。
其処へ襲い掛かるはデュラハンの配下達。
「こうも群がられては逃げられまい!」
幽鬼の言葉には少しばかり焦りが進んでいた。
雨柳が前衛へ入った分避難が進み先程より避難者の数が減っている。
早く駆除せねば己の獲物が減ってしまう。
恐らくDBの一部が避難の支援に向かったのもあるだろう。
だがその分奴等は突出し集中攻撃を受けた。
ならばこのまま囲まれ死ぬのみだ。
(我を煩わせた報いだ……八つ裂きにしてくれる)
全方位から迫るワイルドハントの悪魔達。
どちらへ逃げようとデュラハンの速度なら貫く。
幽鬼が勝利を確信する中、雨柳が取り出すは小箱。
悪魔の棲む家*15──悪魔を拒絶する効果を持つアイテムがワイルドハントを吹き飛ばした。
(思った通り効いたか。
学園の子に感謝だな)
事前に聞いていた弱らせた相手への集中攻撃。
真っ向から相手せずともこういう手段もある。
「何じゃと!? ええい!」
デュラハンが自分へ飛んできた妖怪を払いのけ槍を旋回させて雨柳を狙う。
だが手元に銃弾が刺さり、槍を振るうより先に改造車が猛スピードで近づく。
「雨柳様!」
「いいタイミングだアイリス!」
アイリスがドアを開けると同時に雨柳とシロガネが飛び込む。
「後少しだけ付き合ってもらおうかしら」
絶対零度の波動が放たれ妖怪達が凍え砕かれ。
返礼の攻撃を放つ時には≪召し寄せ≫られている。
「何とかうまくいったな。
避難の様子は大丈夫そうか?」
「はい。他のDBの方々も協力して周辺分は完了しました」
アイリスと礼一郎は雨柳と一旦別れ、阿修羅会の迎撃と避難の支援を行っていた。
僅かながらも雨柳や他のDBが稼いだ時間で避難は急速に進み周辺には最早避難者はいない。
無論暫くするか状況が変わればまた避難民が来るだろうか、巻き添えを気にせず全力を出せる。
「ついでに所定のポイントで準備も完了しました。
いつでも行けますよ!」
「仕上げにボスの前にいる悪魔を潰しておきましょう。
礼一郎は左側を、私は右を狙います」
「了解。この位の速度なら……まあいけるか」
雨柳がアイテムで状態異常を回復している間、礼一郎とアイリスは身を乗り出し敵の前衛を狙撃。
狙いをデュラハンの前にいる悪魔に絞るのは仕込みを気付かせぬ為。
「後10秒でポイント着くぞ。
衝撃に備えておけよ!」
運転担当のDBの声と同時に急カーブ。
道の幅が狭まり左右の2階3階程の高さには遊歩道。
敵を滅ぼすには恰好の
「指定のポイントまで、3、2、1、通過!」
ポイントを通過した車をなおも追う亡霊の軍勢。
助手席にいた指示役のDBが呟く。
「ドリフターズ読んどけばよかったな亡霊共。
騎兵を倒すにゃ足止めが一番なんだよ」
言葉と同時、デュラハンがつんのめり転倒した。
「ぐ、がっ!?」
あまりに急激に停止した為地面に叩きつけられ呻く。
ダメージはそうないが内心の動揺が大きい。
(何だこれは攻撃の兆候はなかったはずだぞ!?)
背後でもワイルドハント達が次々に転倒。
予想外の事態に中列以降の亡霊妖怪達は動揺。
反転せんとするも、最後尾が踏み出した瞬間爆発が起こった。
地雷を幾つも並べて起爆した様な爆発。
亡霊妖怪の手足が吹き飛ぶ。
キリギリス側の取った戦法は単純である。
雨柳を始めとしたDBデュラハンの足を止め、手の空いたDBが選定されたポイントにトラップを仕掛けた。
道が狭く左右がふさがれ、何かあっても容易に逃げられない地点へ。
| バインドトラップ | RTSコマンド | エリアへ侵入した敵を一定時間停止させる |
| マイントラップ | RTSコマンド | エリアへ侵入した敵のHP・MPを減少させる |
露見しない様に阿修羅会や亡霊妖怪を始末していた為時間がかかったが見事に成功した。
デュラハンを含め機動力が売りの集団であるならば足を止めるのみ。
「ちなみにお前等の前後にはまだトラップが複数埋めてあるかもしれないぞ。
そうかもしれないしそうじゃないかもしれない」
「飛び上がってもいいぞー。
上で張っている奴等が袋叩きにするだけだから」
「民間人に手を出した以上お前達は一方的に殺されるんだ。
悔しいだろうが仕方ないんだ」
仕上げは明智光秀が得意とした十字砲火。
飛び道具を構えたDBや魔法を励起する仲魔達。
「奴等に反射耐性は無し。
此処で一気にケリをつけていくぞ」
雨柳もまた仲間と共にとどめを刺さんとする。
タル・カジャ珠で攻撃力を上げる中。
イルダーナフが放つは合体で取得した
軍勢への有効な全体攻撃魔法を皮切りに、銃撃や魔法が降り注ぐ。
機動力を殺され、密集したデュラハンと亡霊妖怪達に抗う術は無し。
(馬鹿な。大抵の覚醒者ですら抗えぬ我が。
犬追物の犬の如く殺されるというのか)
周囲の妖怪が猛攻を浴びて砕かれていく。
攻撃に混じる弱体化魔法が回避や防御を鈍らす中。
一方的に蹂躙されていく。
それはデュラハンが望む人と妖怪の関係とは真逆。
妖怪が人の理不尽に砕かれる光景だった。
「認めんぞ人如きが────!」
陳腐な言葉。それのみがデュラハンに出来る抵抗だった。
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所々が焦げ砕けた道路の端には、デュラハンの頭部が落ちていた。
熾火の絶えた虚ろな眼窩が、恨めし気に宙を見上げていた。
最後の亡霊妖怪が燃え尽きたのちに残るは奴らの残滓のみ。
完膚なきまでに滅ぼされた悪魔達。
ここで一息といきたいところだが。
「阿修羅会の奴等これまで一体どれだけ戦力を蓄えているんだか。
もっと健全な事に使って欲しいぜ全く」
「いやあ同感だね」
軽口を躱しながらも雨柳とシロガネの目は敵から外れない。
道路の向こう側から迫るは阿修羅会の新手。
強化されたヤクザに悪魔人間、巨体の悪魔。
『我が名HA<ムシキ>!
此の地De貶めらレシ名は<エンコウ>Naり!」
大猿とカッパを混ぜ合わせた様な単眼の秘神。
デュラハン同様歪な悪魔が闊歩する。
口の端から涎を垂らし目を血走らせた姿は遠目にも正気ではない。
「ムシキ……中国の無支祁かな?
確かに猿猴と類似点はあるがどうにも歪ですね」
「雨柳様、HQからの指示は?」
「魔丞はキョウジが、拠点は彼方の御国が順調に攻略してる。
俺達はアイツを止めた方が良さそうだな」
悪魔の出方を伺いながら退魔刀を抜き放つ。
今回はかつてない程の長丁場。
だろうと仲間や仲魔と戦うのみ。
他のDBも仲魔を召喚師武器を構え戦闘態勢。
激戦の後でもまだまだ意気軒昂だ。
護る事は難しく、苦しみが伴う。
だろうがこの場にいる戦士は皆止める事は無い。
「次の避難者が来る前に倒すぞ!」
雨柳の言葉と同時にDB達も動き出す。
奇禍を討ち祓う日は、まだ始まったばかりだった。
次回も可能な限り早めに投稿していきたいと思います