真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス- 作:ローグ5
そんな訳で自作でも予定を前倒ししてオリジナルの霊的国防兵器を出してみました。
レイとロゼが、その少女と出会ったのはほんの偶然だった。
阿修羅会決戦の数日前、見回りの為以前防衛した病院*1に来た時の事。
立ち眩みを起こしていた彼女を見つけたの。
ただそれだけの事。
「大丈夫? きついなら病院の人に声かけた方がいいと思うけど」
「体調悪い時は無理しないのが一番だよ。
僕達の事は大丈夫だから」
「落ち着いてきたから大丈夫。
御免ね迷惑かけちゃって」
どうやら診察を終え、迎えを待っていた時にこうなったらしい。
本人は大丈夫だというがまだ顔色が悪く心配だ。
だからレイとロゼは暫く様子を見る事にした。
幸い今日の予定はもう終わりで時間はある。
病院の庭にあるベンチに腰を落ちつけ話す。
レイより年上で、白皙の繊細で可憐な面持ち。
申し訳なさげな様子を見せるが麗しさは損なわれていない。
その顔立ちは少し御影に似ているなと思えた。
同時に少女には見覚えも。
(綺麗な人だったから覚えてる。
この人、あのバスに居た人質の一人だわ)
阿修羅会の計画した病院襲撃の第一段階。
それは爆弾化させた人間と人質を載せたバスの特攻という禄でもなさすぎる物。
幾つかの病院で行われたテロはほぼ犠牲者ゼロで対処されたが。
だからと言って心の傷を負った人間がいない訳ではなかったようだ。
「ちょっと前に、事件に巻き込まれてね。
無事に助かったんだけど偶に思い出しちゃって。
養子にしてくれた家の人にも迷惑かけちゃった」
困った様に笑う少女の顔は、明らかに無理をしていて。指先は微かに震えていた。
(……辛い、よね)
詳細な事情は知らないが少女が新たに人生を歩みだそうとした矢先の事件。
手口を予想されない為、攫われたその場でバスに放り込まれた為穢されてはいないけど。
自分が塵芥の様に扱われ、死の恐怖を味合わされ、土足で心を踏みにじられた。
心が傷ついて、辛くないはずがない。
悪魔や人の悪意に貪られた犠牲者、この世界は間違っていると叫ぶファントムの召喚師、国を称する腐敗に蝕まれ虐げられた護国の刀剣。
不幸な少女をレイは、前の世界で見慣れている。
悲惨は世界に溢れた物で。
前よりマシなこの世界でも変わらない。
まだ十代半ばだけど醜い物を見すぎてきた。
それは最近仲良くなった帝都の子達も同じだろう。
世界は少女が生きるには、あまりにも醜悪に溢れすぎている。
だけど少しだけ人に優しく出来るはずなんだ。
誰かを想い傷つけない様にする事は』
だけど前の世界である人が言った言葉はを、まだ忘れてはいない。
邪悪に染まって生きるには大切な人間が、優しくされ優しくしたい人が周りにも多すぎた。
「……ねえ、貴方お世話になっている家って弟や妹とかいる?」
「え? あ、うん。妹が一人いる」
「妹さん可愛い?」
「可愛いよ。まだ会って間もないのに私の事お姉ちゃんって呼んで抱き着いてくれる。
髪とかよく結んであげてる」
出会って間もない妹は、彼女にとって大切な相手になっているのだろう。
妹を想う少女の顔は自然に笑んでいて、レイも素直に嬉しく思えた。
「私も孤児で色々辛い事もあったけど。
同じ孤児院の子とか、先生とか……妹みたいなこの子もいるから。
割と生きていけてる」
「うん、僕の方もレイには妹らしくお世話になっているんだよね」
うむうむと頷くロゼ。
その様は姉の身ながら可愛いなと思えた。
「だからもし辛くなったら妹さんの事を思い出して。
貴方を大切にしてくれる子の事を」
「…………うん、そうする。
ありがとうね。あの日のヒーローさん達」
思わぬ言葉にレイとロゼは顔を見合わせる。
気付いていたとは思わなかった。
「私人の顔覚えるのが得意なの。
後ね、話は変わるけど妹がしたい髪型があって。
ちょっと他の人の意見を聞きたいの」
それから少しばかり少女と、レイとロゼは話した。
結局髪型の話のみならず髪で実習したりと愉快な事になったが。
少女の迎えが来るまでの短い時間は楽しかった。
「レイ―僕の髪型どう? 似合ってる?」
「似合ってるわ。結構いい感じ」
いつもと装いを変えたロゼの髪を確かめつつ、二人で病院の外へ歩いていく。
かつて護った病院はまだ平和が保たれている。
衣装の中に隠した閃刀をそっと撫でた。
格納されているのはレイが使役する仲魔達。
中には新たに受領した悪魔も居る。
(あのタケミカヅチと同じ霊的国防兵器……すごい悪魔を渡されてしまったわね)
多くの周回で国防が為の悪魔は創られている。
レイの居た周回で創られた造魔達や、大西洋オカルト管理局が管理していた魔神マハラギオン。
それ以外でも多くの周回で軍やヤタガラスが霊的国防兵器を創り出している。
先日ヤタガラスより、レイが受領した悪魔は<黎明の霊的国防兵器>が一柱。
かつて冷迷の東京──レイの知らない
彼等が強力な悪魔やガイア系勢力への抑止力としていた悪魔兵器。
大半が世界崩壊から対ガイア再生機構防衛戦で失われたが、未だ健在な個体もあった。
討伐隊の生存者に高位の召喚師がいないという事情も加味し、各方面の同意と調整の元レイが受領し仲魔としたのだ。
それはレイへの評価の表れであり。
かつ討伐隊からも雨柳の弟子ならばとの好意的に受け止められた事による。
だからこそ、僅かながら重く感じていたが。
(阿修羅会との決戦に、プレッシャーなんて感じていられないもの……!)
レイには護国への
ただ、再会した人にこまどりの子供達。
ロゼや自分の仲間である人達。
嫌いじゃない、
彼等の役に立つなら戦う事に迷いはない。
「給料と装備と待遇分は働かないとね」
「うん。油断せず備えて結果を出そう!」
レイとロゼは、姉妹の様に意思を通わせる二人は同じ想いを抱いていた。
見てきた物は違っても、悪と戦い世界や人に守る価値はある。
ならば悲観せず、力を合わせて頑張ろうと。
若者の街として全国に知られる渋谷。
本来は陽である街の様相は、今は陰に移り変わっていた。
そこら中で暴れまわるは強化された極道や悪魔。
避難する民間人を狙う奴等は、護国やキリギリスが阻止しているがまだ途切れる事は無い。
渋谷は大規模な繁華街を抱えた地区。
煌びやかな裏にはいかがわしきもある。
都内でも阿修羅会の勢力が比較的強かったようだ。
極道共や悪魔が、街角から、建物の中から湧き出していく。
中でも一際大規模に湧き出したのは、道玄坂にあるクラブミルトン。*2
大理石を模した柱を幾本も備え、鳥の彫刻が施された神殿の如き娯楽施設。
普段は多少素行悪気な者達が集う此処は、その実阿修羅会の拠点が一つ。
巧妙に出自を偽装していた橋頭保。
そして今、ミルトンは禍々しい力に満ちていた。
軽薄な白を彩るは、不吉な赤き光。
それは愚瓶が垂れ流すマガツヒに他ならぬ。
愚瓶に詰められたのは暴力、略奪、凌辱、破壊、激怒、憎悪、熱情。
押さえつけられていた混沌の欲望の集積体。
徳川曼荼羅を混沌の色で染め上げる呪物。
「流石に愚瓶の防備が厚いな。
抜くのは手がかかりそうだ」
「数も多いが厄介なのは……奴だな」
既に阿修羅会の前衛を崩し、ミルトン内に突入したDB達は膠着状態。
まだ攻略しきれてはいない理由は幾つもある。
都内前二十一か所に展開された愚瓶は阿修羅会の戦略の要。
それぞれ多数の戦力が割かれている上に、周辺の地形は滅茶苦茶。
強化された悪魔までも湧き出してくる。
「低劣にして野卑なる東国の雑兵共よ。
お前達に愚瓶を破壊等させんぞ」
さらに護衛として配された魔丞もまた厄介だった。
百足の如き鋭利な、濃緑の鎧に覆われた体躯。
尾には幾つもの蛇を生やし、顔は狡猾な犬の面相。
印を結ぶ両手を中心に魔力が渦巻く。
ソレはかつて京都ヤタガラスの下で暗躍した征魔剣盟党。
その幹部が変じた二十一母の一角たる魔丞である。
「
天に背き堕ちた魔丞が余裕を込めて吼えた。
\カカカッ/
| 堕天使 | 魔丞・サルガタナス | LV85(55+30)*3 | 耐性??? |
アスタロトに使える上級悪魔が1柱たる旅団長、強大な堕天使がこの場に君臨していた。
「そうです! 今こそ我らの力を見せる時!」
「もう二度邪魔などさせぬ!」
「正当な立場を我らの元へ!」
同時に周囲で呼応するは魔丞と轡を並べる者達。
悪魔も混じった半数は和装に帯刀。
征魔剣盟党の残党が中心になった軍勢と見えた。
\カカカッ/
| 軍勢 | 征魔剣盟党*4 | LV80(50+30) | 物理・銃撃耐性 破魔・呪殺無効 |
軍勢の主力となる剣士達の顔には優越感。
主たる魔丞の力は強大極まりない。
鬱憤は嗜虐心に反転し自尊心を満たす。
例え阿修羅会の手によって得た力だとしても。
「見るがいい。下郎には決してたどりつけぬ業を」
堕天使が念ずると共に波濤として広がるマガツヒ。
愚瓶の供給によって成り立つ
| 禍時:漲力*5 | マガツヒスキル | ターン中、味方全体に自身の能力上昇、低下効果による影響度が倍増する効果を付与する。 |
魔丞によって展開されるのは強化及び低下の効果を倍増させる領域。
配下の
強者たる己を誇示し、弱者達を嘲笑う。
| 討滅の咆哮*6 | 補助スキル | 3ターン敵全体の防御力を1段階減少させ、味方全体の攻撃力を1段階増加させる。 |
| レインストーム | 衝撃属性魔法 | 敵全体に貫通(D2仕様)を得た衝撃属性大ダメージを与え、命中・回避を1段階低下させる。 |
| 大虐殺者 | 自動効果 | 全体攻撃やランダム攻撃のダメージが上昇 |
泥が煮えるかの如き咆哮の後、衝撃が放出。
鉄を容易く砕く大威力に加え、込められた呪詛によってDB達の能力が大きく低下。
≪ジャベリンレイン≫
≪ギロチンカット≫
魔丞に追従して剣士達の攻撃が降り注ぐ。
徒党を組み力を増した彼らの攻撃は確かに強力。
DB達へ確かに血を流させた。
バフ・デバフを強化させる領域の元、積極的に自陣にバフを、敵陣にデバフを付与していくのが魔丞の基本的な動き。
手数は配下で補い、絶える事なく攻勢をかけていく戦術を取っていた。
(……予想よりも敵の勢いが衰えんな。
流石は京都が滅びた後も戦っていただけはあるか)
しかし、DB達は崩れない。
微かに苛立ちを感じ魔丞は眉をひそめた。
「チッ流石に格上の連弾は痛えな。
マッスルドリンコ無しなら死んでたぜ」
「チーターやチーター!
あのLVは改造データ使っとるでアイツ等!」
「だよなー。背伸びした瞬間腰が爆発しねえかなあ」
DB達は装備とアイテムで致命傷を避け、HPを削られた者も食いしばり持ちこたえる。
征魔剣盟党の運命を変えた京都戦以降も尚、悪魔や人と戦い続けた戦士達。
彼等は木っ端みたいに吹き散らされはしない。
(気取るしかない禪院扇や劣等感丸出しのダンゾウ。
女子供頼りのクズノハに有象無象共。
この世には苛立たしい者が多すぎる……!)
かつて己が征魔剣盟党を運営していた頃を微かに思い出す。
組織は京都との蜜月により発展していたが、あれこれと面倒事を押し付けられた。
暗殺や
自分達が主導するならまだしも、下働きは手間ばかりかかる。
しかも正義面して己らを掣肘する者までいた。
よりにもよって、女が、子供が。
当たり前の
義経以来の天才と謳われた剣士はあっさりと自分達を叩きのめした。
実に屈辱極まりない思い出だ。
──少女は悪意に絡めとられ、砕かれ堕ちたが。
(あの映像は最高に快かった。
我らと共に阿修羅会が支配する日の本では。
存分にああした娯楽を愉しみたいものだ)
尊厳を削ぎ落され、泣き笑う少女の裸身を思い返しほくそ笑む。
魔丞も、剣士達も、己達の勝利を確信していた。
魔丞と伍する特記戦力はなく、現状で対応可能。
無尽蔵のエネルギーによる領域展開の利は絶対的。
戦いが続く内に、形勢は決定的に傾くだろう。
愚瓶の防衛に関しても問題がない。
クラブの2階部分に安置された愚瓶には多数の護衛。
阿修羅会の精鋭と悪魔が取り巻いている。
現に敵も攻めあぐねているようだ。
(我のコトワリが叶う時は、近い!)
魔丞が理想とする喰楽畏のコトワリは、弱肉強食の理にて、己が永遠に強者である世界。
永遠に食らう側である固定されし強者。
喰らい続ける己を弱者が畏怖し崇める世界。
追い詰められ落ち延びる中、イチかバチかをかけた儀式により拓いたコトワリ。
実現はもうすぐ、そこにあると。
歓喜のまま魔法を放つ魔丞は──気づかなかった。
DB達がアナログをも駆使して内部のMAP情報を共有している事に。
愚瓶からじわじわと注意を離されている事に。
後衛や愚瓶の護衛が少しづつ倒されている事に。
力へおぼれた傲慢へ、英傑の刃が報いた。
◇
渋谷における愚瓶防衛部隊は意気軒昂であった。
「敵は小勢。小手先に惑わされず押し返すのです」
\カカカッ/
| 悪魔人間 | KUNIEDA | LV78(58+20) |
「肉……新鮮な肉」
\カカカッ/
| 外道 | ムーンフィッシュ | LV72(52+20) |
統一感のない服装に植物を纏った悪魔人間と、拘束着の間から鋭利な歯を伸ばす外道。
この場における
彼等は本来血に飢えた殺人鬼で組織に馴染むはずがない存在。
阿修羅会に参加したのは飴の旨さか。
はたまた異常者をも受け入れる姿勢の為か。
「優勢なのは我ら阿修羅会!
殺しと血の時間はすぐそこです!」
「新鮮な……断面!」
人中の怪物共は周囲の極道、悪魔と共に欲望を滲ませる。
殺戮を愛する彼らにとって愚瓶の色は好ましい。
帝都のみならず日本全てを満たす瞬間を想うと。
戦いと共に歓喜の念が湧いてくる。
何処までも浅ましく荒れ狂う人中の怪物共。
賢しい故に愚瓶から距離を離さず。
部下を盾とし、間から攻撃を行う。
「スプリガンベストは無し。
銃撃と剣技は普通に効くようだぞ」
「了解──ありがとうねお兄さん」
そんな彼らめがけて駆ける者がいた。
愚瓶を見据えるは、即ちDB達の援軍。
≪雄叫び≫
KUNIEDA達へ迫るのはロゼ。
近接は難しいと見るや、銃へと持ち替える。
少女の様子を見て殺人鬼は嗤う。
(愚かな真似を。私もムーンフィッシュも破魔無効装備の上テトラカーンを使用させている!
簡単に倒せると思ったが運の尽きです!)
絶交の射撃ポジションであるテーブル上へ。
鬼雷砲*7を携えたロゼの傍らには大天使。
「元の形状留めてるからかな。
土足でテーブル乗ってるのちょっと気になるね」
「緊急避難です。気にしないでおきましょう」
出会った当初から紫の髪色は変わらず。
されど銀色の鎧はより精緻になり、翼は黄と橙色の色鮮やかに。
ロゼに仕える大天使は、さらに力を増していた。
\カカカッ/
| 大天使 | 月夜に在る者 オファニム*8 | LV64 | 物理に弱い 三属性に強い 衝撃・破魔・呪殺無効 |
レリエルの命を受け混迷の時代に降り立ち、少女を見守ってきた大天使。
彼女の
| メギドファイア*9 | 合体技 | 1ターン銃撃に万能属性を付与し弾切れもしなくなる。 アバドン王ではオファニムのみが習得するスキル。 |
ロゼとオファニムの連携による紫焔の銃撃。
殺人鬼共の身体に風穴が開く。
「……ガキがッ!」
「若い肉……!」
瞬間的にKUNIEDAは激昂。
不肖を顧みずロゼへ鋭利な蔓を伸ばし。
ムーンフィッシュも歯刃を旋回。
悪魔人間の≪浮月砕破≫*10。
外道の≪石化かみつき≫*11
少女を引き裂かんとする狂気が迫るが。
「ようやく隙ィ見せたな阿呆が」
| 隈落とし*12 | 自動効果 | 敵の格闘攻撃を回避し、相手に反撃として剣相性のダメージを与え、低確率でSHOCK状態にする。この攻撃に対する回避・防御・反撃はできない |
ロゼを≪カバー≫したDBが伸びた植物を、綱引きめいて引く。
柔術家の技巧による重心移動。
脚を射抜かれ、安定性を欠いたKUNIEDAが反転し床に叩きつけられる。
「単調な動きなら目をつぶってても落とせるっての」
| カウンターストライク*13 | 自動効果 | 攻撃を完全に回避し、攻撃してきた相手に反撃として1アクション分の射撃を行う |
後衛のDBが同時に銃撃。
ムーンフィッシュの歯刃を、腹を、肩を射貫く。
完璧なタイミングでの抑止射撃。
殺人鬼を迎撃した二人は的確に行動を阻止。
敵をいなしつつじわじわと戦力を削り、情報収集に努めてきたが潮目が変わった。
形勢を変える機会が来たなら逃さず乗るべし。
ましてや相手が子供なら。
相互理解による完璧な連携。
そして、それはロゼと。
「今だよレイっ!」
レイにも可能である。
ロゼが叫ぶのと同時。
閃光が瞬いた。
閃光はレイと、彼女を抱える仲魔。
深紅の全身装甲に緑の目。
大業物を抜き身で持つは英傑。
「切り裂いて────ヨシツネ!」
「心得たッ」
\カカカッ/
| 英傑 | ヨシツネ | LV72 | 物理・魔力耐性 破魔・呪殺・精神・神経無効 |
「天狗仕込みの剣術だ!
悪党の玩具相手には勿体ないがとくと見よ!」
群がるヤクザを飛び石に放つは超高速の斬撃。
愚瓶を中心に斬華が咲いた。
| 鞍馬流八閃*14 | 物理スキル | 敵単体に物理小ダメージを八回与える このスキルによる反撃効果は発動しない ヨシツネと一体化した銘刀膝丸との共鳴で放つ絶技 |
| 物理ギガプレロマ*15 | 自動効果 | 物理属性攻撃のダメージを大きく上昇させる |
| ミナゴロシの愉悦*16 | 自動効果 | 物理攻撃のクリティカル率を大きく上昇させる(150%) |
一瞬にして斬り砕かれた愚瓶。
最後のマガツヒがこぼれ落ちるが。
赤よりもなお英傑の深紅は鮮烈。
「なんだ、その技、HA」
SHOCKに呻くKUNIEDAの頭がずれて、落ちる。
ヨシツネの加速を得たレイによる≪ブレイブザッパー≫の一閃。
英傑と共に放つ斬撃が殺人鬼を屠ったのだ。
「ふっ……ザッケンナコラー!」
英傑と少女の華麗な斬撃に静まり返るも一瞬。
極道に悪魔達が湧きたつ。
仇討ち等理由は様々だが、憤りを纏いレイ達へ殺到せんとする。
「そう簡単には行かせはせんよ。
そこの嬢ちゃん下の奴等を手伝ってやってくれ。
そろそろMP切れの奴も出てくるからのォ」
「C級殺人鬼共は俺達で駆逐するんでよろしくー」
先程の二人を中心とするDBが押しとどめ、殴り返し、撃ち返す。
故にレイはロゼと容易く合流する事が出来た。
「次は魔丞、下の人達と連携していくわよ!」
「レイドバトル第二ラウンドだ!」
レイがヴェルザンディを召喚し、ロゼが気合いを入れる。
≪アクセラレート≫による加速をかけ。
1階へ飛び降りて魔丞と対峙した。
「っ!? 何奴だ!?」
「愚瓶を壊したのか!?
ええい猪口才なっ」
溢れ出るマガツヒを背に飛び折り、回転し衝撃を殺し走り出す。
湧き出ていた悪魔や剣士の一部が反応するが遅い。
振り向き驚愕する魔丞の目が見えた。
「ロゼ! 左を切り開いて!」
「オファニムは僕の次に援護!」
指示すると同時にロゼが歩み出た。
雷刃の≪乱入剣≫で悪魔共を斬り捨てる。
「私の力はいかがかしら?」
強化に加え絶妙なタイミングで発動した
レイの仲魔たるヴェルザンディの加護。
ロゼの耳で揺れるのは雷のソウル*17
三重に力を増した少女の斬撃に、並の悪魔等耐えられない。
(ここの敵も強化されて高くなってる。だけど)
ロゼの脳裏に浮かぶのは、赤子達の幸福を願っていた蜘蛛神。
奴や自分と近いLVの悪魔も居るが。
(ミクトランテクトリと比べると斬り易い……!)
死神には感情の、記憶の重みというべき何かが。
言わば生命の質量とも言うべき物があった。
倒したロゼはよく知っている。
だが、此処にいる悪魔、剣士達、そして魔丞からも感じられない。
強化されてようと、数が多かろうと、強かろうと付け入る隙はある。
尚も生き残る悪魔はオファニムが≪マハ・アギダイン≫で消し炭に。
拓かれた道を進むはレイとヨシツネ。
連携し狙うは剣士達と魔丞。
少女と英傑の刃が煌いた。
≪虚空斬波≫
≪空間殺法≫
剣士達の首が飛び、魔丞が右脚に深手を負う。
「無礼者共、があっ!」
片膝を付きながらも手刀を瞬時に振るう。
≪猛反撃≫、魔丞が剣士だった残滓をレイは刀身を盾に受け止める。
ダメージは僅か、軽く防がれた。
「どうやら調子は良くないようね。
気候の変わりやすい季節だからかな?」
口から喘鳴が漏れ、動きは精彩を欠いていた。
さながら風邪でもひいているかのように。
| 風邪状態*18 | 状態異常 | 攻撃力が25%低下する他回避率が0%になる また5%の確率で他のメンバーにも伝染する なお時間経過や戦闘終了で自然回復する事はない |
理屈から言えば単純な事である。
サルガタナスがバフ・デバフを操るならこちらも同じ事をするだけ。
加えて状態異常によりさらに能力を低下。
支援すべき配下達も削られ残り僅か。
ロゼとレイのみならず多数のDBの攻撃により、勝敗の天秤が傾いていた。
「ぐ、ぎがあ……オノレ、おのれ!
雑魚共が、雌餓鬼共がこの私にッ
下衆な刃をよくもッ!」
劣勢を悟った魔丞は激昂。
「貴様等は何故道理を弁えん!?
知ろうともせず刃を向ける!?
我の如きッ尊き血と伝統を持った剣士達こそが!
上に立つべきだというに!」
そうだ、と自分の言葉を魔丞は肯定する。
雑種が支配者に相応しい品格を備えるものか。
民に阿る政治屋や帝都ヤタガラスでもなく。
口だけの京都ヤタガラスでもなく。
強さと高貴さを併せ持つ己達が上に立ち。
永遠に強者として君臨する。
その為なら一時的に低劣な極道共手を組もう。
正統な地位を得る為の臥薪嘗胆。
だというにと
英傑を従えた少女が、何処かあの少女を連想させた。
己等を否定した少女と。
「頭が高いぞ! 平服しろ! 我こそが貴様らの生殺与奪を──」
「一つ聞きたいんだけどさ」
魔丞の言葉を遮るのはロゼ。
「悪魔になっても自分の血とか伝統が大事なんだ。
だったらなんで」
善悪以前に、魔丞の言葉には致命的な欺瞞がある。
「刀を持ってないの?」
「────────」
魔丞・サルガタナスの武器は魔法に自身の爪牙。
名前の通り征魔剣盟党は剣士達の組織なのに。
刀と呼べる物は帯びていない。
無論
魔丞に成った事で扱えなくなったのかもしれない。
だがそれにしては気にしている様子がなかった。
「貴方みたいなクズの事を結構知ってるけどね。
お題目は何でもいいのよ。
自分のくだらない欲望を満たせるなら」
嗜虐心や虚栄心といった人が自制すべき欲。
浅ましい性根に、相応しい下劣な欲望を抑える気すらもない。
それが彼らの本質。
「それ以外は何もない矮小な人間。
だから阿修羅会なんかに与して、
「何というか本当に救いようがないねえ」
言葉を紡ぐレイとロゼの目には軽蔑。
征魔剣盟党はマンハントにも関わっていた。
阿修羅会に合流後、点数稼ぎの為積極的に狩っていたという。
まるで手慣れているかの様に。
諸々の情報からすると、あの少女を含め病院襲撃の為拉致を行ったのは征魔剣盟党。
ただでさえ許せない理由がまた一つ増えた。
「ふ……ふざけるなよ雌餓鬼共ッ!
今すぐその口を閉じてくれる!」
「メスガキメスガキうるさいなー。
あ、そうだレイ」
レイと目が合った。
二人共考える事は同じらしい。
メスガキ扱いするなら、メスガキらしく煽ってやるだけだ。
「があああああっ!」
激昂した魔丞は≪レインストーム≫をレイ達へ放つが、それ以上動く事は出来ない。
そうなれば動き出すのは歴戦のDB達。
「俺達をヒャッハーって突っ込んですぐにやられるザコキャラと思ったかあッ」
「剣士気取りが! なめろうと見まがうばかりに刻んでやるぜ!」
「テメエ等のお陰で因習系エロゲで抜けなくなったんだよ。
命で賠償しろやオラァ!」
「恐れんな……恐れんなよ。
お前でマンハントは……何人目だっけ?
まあいいや死んでいい奴だし」
一気呵成の攻撃が続いていく。
「回復完了、一気に決めるわよロゼ!」
「了解。自爆とかさせないようにしないとね」
ヴェルザンディの≪メディアラハン≫で回復したレイ達もまた攻撃に参加。
焦らず堅実に魔丞を追い詰めていく。
少女剣士の刃が煌き、仲魔達がそれを支える。
強烈な連携に、魔丞の体力がさらに削られ。
残り少ない悪魔や剣士達が斃れ、魔丞の身体にも深い傷が付いていく。
魔丞・サルガタナスが滅びるまでそう時間はかからなかった。
尚断末魔の悲鳴はDB達が録音しておいたらしい。
かくして渋谷における魔丞を中心とした阿修羅会側の戦力は壊滅。
後は勝鬨を上げるDB達と、矜持と共に立つ少女達が残りばかりであった。
・Tips:黎明の霊的国防兵器について
かつてアイリス達が居た世界においても必殺の霊的国防兵器は存在していた。
とはいえ本格的な実戦投入は間に合わず、敗戦に伴って所在等情報と共に封印され、長らく使用者不在のままだった。
それらの一部は世界滅亡の前奏曲となる動乱の中、ある物は阿修羅会やその他ガイア系に、またある物はヤタガラス及び政府の手に渡り戦力となった。
世界滅亡後は最終的に4体が悪魔討伐隊の保有戦力となり、数年もの間冷迷の東京守護に多大な貢献を果たした。
しかし上がり続けるGPに多神連合の出現、さらにはガイア再生機構の暗躍。
抗い続けたものの、悪魔討伐隊最強の黛冬優子が使役する<龍神 コウガサブロウ>。
及び貴重なベテラン召喚師だった雨柳巧の使役する<英傑 ミチザネ>の2体が防衛戦の結果失われた。
今となっては護られ生き延びた人々の記憶に、召喚師と共に残るのみである。
次回もなるべく早く投稿したいと思います。