真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス- 作:ローグ5
「存分に愉しめ悪魔共!」
カイリンが嗾けるは三体の悪魔。
そのいずれもがやはり強化されていた。
\カカカッ/
| 魔王 | ラーフ*1 | LV81(66+15) | 物理に弱い 万能を除く魔法を反射 |
\カカカッ/
| 堕天使 | ミスラ*2 | LV77(62+15) | 魔力無効 電撃・衝撃反射 火炎・氷結弱点 |
\カカカッ/
| 邪鬼 | ヘカトンケイル*3 | LV83(68+15) | 物理・銃撃耐性 破魔無効 衝撃弱点 |
並の召喚師では扱えぬ強力な悪魔。
それらを支配する外道召喚師は残忍に口を歪めた。
「笑える死に方をさせた奴にはMagをくれてやる。
せいぜい
\カカカッ/
| 外道召喚師 | LV88(68+20) | 全体的に強い*4 破魔・呪殺無効 氷結反射 |
「陳腐な口上はもう飽きた。
永遠に黙っていてもらおうか」
雨柳もスクルドとイルダーナフ、仲魔と仲間と共に対峙。
心身を敵へ集中させる。
「此処が力の使い所だな。────転神」
同時に礼一郎がマグバッテリーを起動。
放出されたマグネタイトを纏い、姿を変える。
黒紫の各所に装甲が配置された衣装。
胸部には水晶が輝き、顔を覆う仮面は朱い。
かつての世界にて、
霊的国防兵器の残骸と適性のある子供、即ち千寿礼一郎を合体。
後に悪魔討伐隊に加わり、黎明の霊的国防兵器の一柱として東京を護った一柱。
「黎明の霊的国防兵器肆號、秘神アメノフトタマ転身完了!」
\カカカッ/
| 秘神 | アメノフトタマ | LV70 | 物理・四属性に強い*5 精神・神経・魔力にかなり強い*6 破魔・呪殺無効 |
膨大な魔力を纏う秘神は世界が変わろうともやる事は変わらない。
阿修羅会の様な外道共を倒す為ならば、人ならざる力とて使う。
青年にはなおも変わらぬ意思があった。
「来いよ阿修羅会の三下!
地獄への直行便に放り込んでやるよ!」
「戯言を抜かすじゃねえか!」
雨柳達に先んじて動き出すはカイリン。
腕に装着した試作型
≪Mrサプライズ≫*7
先行し、更に
悪魔の力を取り込んだからこそ耐えられる発動。
残像を伴う速さでカイリンは首を振り口を開く。
ペストマスクの嘴が稼働し
≪マハジオダイン≫
≪冥界波≫
続いてラーフが電撃を、ヘカトンケイルが物理攻撃を敢行。
後者はまだしも前者は雨柳やアイリスには無効化、シロガネには吸収。
一手無駄にした結果へカイリンは舌打ち。
(電撃耐性はガチガチに固めてるか。
なら仕方ねえな。
最後にミスラがテトラカーンを展開。
ターンが回る。
(まず優先すべきはサマナーの雨柳さんだな)
最初に、アメノフトタマが雨柳へと手をかざす。
施されるは太占を行いし神の権能。
| 五伴緒神(劣化) | 自動効果 | 秘神アメノフトタマの |
| 効果①:自身が弱点をついたとき、与えるダメージが30%増加する |
| 効果②:自陣のターン開始時そのターンの間、味方単体をスキルによる即死無効状態にし、攻撃力を1段階上昇 |
雨柳の攻撃力が強化されると共に、即死無効化。
神話上の
冷迷の東京より続く力は今は、かつての変わらず味方を支える。
「このレベル差になると多少は喰らうな」
「ならいつも通りバフね」
「電撃相性チェック行くよ!」
雨柳がハーブ酒*8で回復。
スクルドが
迷いがない行動は歴戦の証。
更にはシロガネが
「うおっと! こういう時は貫通無くて良かったと思うんだよね」
電撃はミスラとラーフによって反射。
吸収耐性を持つシロガネには無傷だが面倒な耐性である事に変わりない。
(ラーフはあの野郎を庇ったか。
って事はカバー系のスキルを入れてやがるな)
(ダーク悪魔中心の構成に、電撃反射のミスラ。
なら試してみる価値はありますね)
雨柳とアイリスはアイコンタクト。
僅かな攻防でも得られる情報は数多い。
伯仲した戦いではそれらが突破口となる。
続けざまにアイリスが
光輝が敵陣を飲み込むがダメージを素直に受けたのはミスラのみ。
だが、それで十分だった。
「あのミスラやはりアプリ仕様……!」
「なら弱点は!」
アメノフトタマが叩き込むは
氷柱に貫かれ、血をまき散らす堕天使の口からは苦悶の声。
弱点の上アメノフタトマの≪五伴緒神≫によるダメージ強化。
格上だろうとも確かにダメージを負わせていた。
アイリス達が注目したのは堕天使ミスラの耐性。
カジュアルが使うアプリ仕様の悪魔でも、死神の点呼を持つ事から要注意の一体。
掲示板で開示されていた耐性と重なる上、破魔が素通しな事から可能性は高いと判断。
アプリ仕様の悪魔だとの推測が裏付けられた。
役に立つ機会が来るか分からない細かな知識。
その積み重ねが存外に馬鹿にできないと彼等は知っていた。
「チッンな細けえ知識を細々とよくも飽きねえもんだ」
「阿修羅会の阿保と違って予習をする性質なんでね」
カイリンとアメノフタトマの視線が交差。
イルダーナフが不測の事態に待機して手番が終了。
ターンが回る。
「カアァッ!」
嘴より放たれるのは耳障りな声。
パニックボイスと呼ばれる混乱の狂声。
シロガネとアメノフタトマの動きが鈍る。
更にラーフが目を見開き
精彩を欠く秘神と神造魔人を
「お前等、冷たいのは好きかァ?」
| 絶対零度*10 | 氷結属性魔法 | ランダムな敵へ1~4回氷結属性中ダメージを与える 戦死した八極道が所持していたヴァスキの悪魔カード、その搾り滓を再利用した物 |
氷柱が四度、雨柳達を打ち据える。
アイリスが不幸にも二度被弾。
視界の端で見た雨柳は瞬時に判断を下す。
「っ! イルダーナフ!」
「心得ているぞ召喚師よ」
邪鬼の太い腕の筋肉が隆起。
渾身の力で降りぬかれる鉄拳。
アイリスを庇い幻魔は真っ向から耐える。
「まだまだあっ!」
雨柳もまた邪鬼の一撃に耐え抜いた。
装備に宝石で上げたステータス、後少々の根性。
それらがあるならば、同格か格上の猛攻でもそうは死なない。
「苛つかせてくれるなァおい……!」
カイリンが再度舌打ちしつつ、ミスラにテトラカーンを使わせる。
敵の猛攻を雨柳達が凌ぎ、ターンが回る。
「アイリス、いつも通り頼むぞ」
「……はい!」
アイリスが
体勢を立て直し雨柳がマシンガンを抜き放つ。
攻撃力は五伴緒神で強化されているが、目的は攻撃ではない。
引き金を引くと共に
一手無駄にしたがこれで障壁は解除、物理で攻めやすくなった。
「スクルドはラーフ! イルダーナフはミトラを!」
指示と同時に軍神と幻魔が十字を描く。
≪デスサイズカット≫がラーフを深く切り裂き。
≪ブフバリオン≫が、駄目押しにアメノフトタマが放った一撃が。
ミトラを凍えさせ砕いた。
「まず一体目だ。このまま押しつぶすぞ」
「そう簡単に死ぬかよクソが!」
ターンが回る。宝玉でラーフを回復しカイリンはガントレット型COMPを操作。
人外ハンターから巻き上げた物を、ある技術者に
八極道が所有する物の試作品故、当然ながら悪魔合体ライトもインストールされている。
「悪魔なんてもんはなァ!
幾らでも替えが効くんだよ!」
合体終了後、設定の通り自動で悪魔が召喚。
蠱惑的に、何処か箍の外れた声を響かせた。
「PAオマエpゆるさaないィtasuぞkeてェェぇ!」
\カカカッ/
| 夜魔 | クイーンメイブ*11 | LV76(61+15) | 火炎・氷結・衝撃耐性 電撃弱点 |
簡易型悪魔合体によって創られた悪魔がそのまま表れる。
その即効性は間違いなく利点と言えよう。
だがそれ以上に目につくのは所々が崩れた異形。
それと何人もの人間が狂い叫んでいるかのような奇怪な言葉。
「……外道が」
詳細は分からない、だが絶対に禄でもない経緯で"成った"悪魔。
阿修羅会の邪悪さが形になったかの如き代物。
「何とでも言えよカス共!
下らねえ倫理なんて悪魔を使うなら捨てる!
手段を選ばず勝って! 奪う!
大切なのはそれだけだろうが!」
前の総領や幹部が死に、阿修羅会に合流した後。
召喚師としての腕や知識を買われ、カイリンは
合体材料の確保や悪魔知識の収集、戦力を揃える過程で自身も多くの事を学べた。
その最たる物が貪欲に勝利を求める姿勢。
阿修羅会の赤玉に人間合体はカイリンにとっても衝撃的だった。
数えきれない程殺し犯し騙してきた自分ですらぬるく思える
それは生き残る為見習うべきだと感じられた。
だから作成した悪魔の素材を知っててもカイリンは罪悪感を覚える事は無い。
むしろ阿修羅会の在り方を体現していると開き直っていた。
(多少手下のレベルは下がったがまだまだやれる。
コイツ等がやられようが戦い続けられるぞ俺は)
ラーフとヘカトンケイルが再度攻撃し敵を削る。
現在の手持ちは魔王と新たに召喚した夜魔の2体が身代わり持ち。
活泉系を継承した"素材"庇わせれば、自身の身を護りつつ継戦可能。
その上合体で次々戦力を補充できるのだ。
「────奥の手はその程度か。
底が見えたな」
そんな極道が夢見る理想郷の様な、甘い考えが断ち切られた。
猛る精神を押しとどめ、集中し放つは奥義一閃。
銀色の死の流星が駆け抜けた。
「弱点つっても活泉持ちを一撃だと!?」
自身は無事ながらもカイリンは目を見開いく。
自動的にラーフが身代わりになり、二度斬り裂かれ果てていた。
「そういう業が世の中にあるんだよ。
自分より弱い相手しか狙えない下劣な屑は知らんだろうが」
奥義一閃は低確率で対象を即死させる効果を持つ物理スキル。
そう効果を発揮する物ではないが複数回当たれば話は別だ。
全体攻撃なら自身が受ける分と、庇う相手の分で二度当たる。
低確率の状態異常にもかかりやすいという訳だ。
「ミトラとラーフが落ちたならこれだね」
「次は攻めるとするか」
電撃を夜魔が庇い、二度弱点を突かれる。
物理を夜魔が庇い、二度物理を受ける。
そして体力の大半を削られた夜魔は、アメノフトタマのジオダインにて、焼け焦げて死んだ。
残るアイリスがアイテムで体力を回復し、スクルドがカバーの為待機。
物理無効と氷結吸収の耐性を持つ軍神は敵の攻撃を苦にしない。
雨柳達の優位はスキルや知識の優越のみならず。
自身と共に仲魔を練り上げ共に戦う
前者に比べ後者は、強化により高まったLVを差し引いても総合力では劣る。
召喚師と外道召喚師、悪魔に対する姿勢による差が如実に出ていただけだ。
「クソ、め……!」
「どうしたもう終わりか。
それとも駄目元で足掻いてみるか」
盾二つが1ターンで消えた事にカイリンは呻く。
アメノフトタマ──礼一郎は冷たく一瞥した。
「ああ、投降や贖罪は期待してないからいいぞ。
カスのオバホや阿修羅会に、反省する感性も知性もないのは良く知っているからな」
冷迷の東京で自身を改造し、裏で悪行を働き続け、挙句の果てにはガイア再生機構を呼び込んだ。
愚かさと罪深さは嫌という程に、アイリスと共によく知っている。
同時にオーバーホールという男が極道の英雄等ではなく、単に類稀な
「舐めるんじゃねえクソ共がああっ!」
言外の意図を悟ったか、カイリンは激昂。
COMPや自身の負担故行わなかった、再度の
増加した行動回数で手持ちの補充を行う。
(スマホにはまだ素材や悪魔のストックはある!
まだコイツ等に勝てる、殺して奪える!)
────形勢は既に傾いた。
如何に残酷で狡猾で邪悪だろうと、それだけでは勝てない。
連携しパターンを整えた敵に抗えない。
「置物になった悪魔は放置、他に攻撃を集中します」
「火炎反射無し。
なら来い、アドラメレク」
「この辺りでラスタかけておきますか」
徐々に徐々に、カイリンは悪魔毎削られていった。
まるで水に沈められた獣が足掻く様な空虚な抵抗。
じわりじわりと追い詰められていく。
・
・
・
また1体、使役悪魔が焼かれ崩れ落ちた。
炎上する死体は爆散し、合体に利用できない。
「何処までも使えねえ雑魚がァッ!」
憤怒の声を上げる外道へ容赦などあるはずも無し。
秘神が発動した魔法が身を焼き、怯んだところへ雨柳が踏み込む。
洗練された刃が、胴を深く薙いだ。
「げっ……! い、ふゥ」
明らかな致命傷、大量の血をしぶかせるカイリンは後退し。
「ふざけるんじゃねええええ!
三下共が、俺を殺していいはずがねえだろうが!」
傷を瘴気めいた物で覆い、踏みとどまった。
| 闇の再生*12 | 自動効果 | 習得者がHP0になった時、判定に成功すると再生を開始しMPの半分をHPに転換していく この効果はターン毎に増加するダーク属性が限界に達し、地獄へ吞まれるまで続く |
穢れきった魂に、取り込んだ悪魔の力を発揮。
外道はどうにか持ちこたえた。
そして一瞬の迷いの後、COMPを操作。
「テメエら如きに負けていられるか!
俺の、覚悟を見せてやる!」
目論むは悪魔合体ライトを使用し、自身と魔王ラーフの合体。
『手前の見た所カイリン殿とラーフの相性は実に良い。
もしもの一大事に至れば、その力を取り込むと良いと思われます』
八極道の一人たる悪魔人間の雌餓鬼。
カイリンの目から見ても邪悪で強大な、謎めいた存在はそう囁いた。
無論信用等欠片も出来ない相手ではある。
しかし援軍もなく、本隊勝利の情報もない今。
生き延びる可能性はこれしかない。
(これまで踏みにじってきたゴミ共と俺は違う。
人間を卒業しようがなんだろうが、まだまだ愉しみたいんだよ!)
逸脱した悪意のままに、最後の操作を完了。
雨柳達が止める間もなく、合体が開始された。
マグネタイトが爆発的に放出、粉塵が視界を満たす。
電光が多数瞬き、ガントレットが地に落ちる。
地響きと共に、巨体が床を踏みしめた。
赤紫色の身体に細長く伸びた四本腕。
首がなく胴体と直結された頭には歪曲した角。
獰悪な目に頭部を半周する大口。
「アハハ、ハハハァ! 何だこれスゲエ!
力が漲ってクルゥぞォ~!」
それは月と太陽を喰らうアスラ。
捕らえる者の名を持つ悪鬼。
「これなら俺は無敵だあああアア!!」
\カカカッ/
| 魔王? | 外道を歩むラーフ | LV91 | 耐性???? |
大口を開けかつてカイリンとなった悪鬼は哄笑。
爆炎に包まれる東京、天蓋と飛翔する生首の魔王。
脳裏に浮かぶ奇怪なイメージも、疑問処か己への祝福に感じられた。
(悪魔と人間の合体でこのレベルだと!?
幾ら高レベル同士でも奇妙だなコイツは……!)
敵の強大さに雨柳は目を見開く。
悪魔と人間の合体ではそう簡単に高LVになれはし。
出来る悪魔には限度がある。
「スリツブしころしてyaるよォォッ!」
ラーフの目が発光し、目から腕へのラインに掛けて光が伝播。
膨大な力は
| ギガバイオレンス*13 | 自動効果 | アバタールチューナーではある阿修羅も使用する |
悪鬼は4本の腕を天に掲げ、順に叩きつけた。
| ドラゴンクエイク | 地変属性魔法 | 敵全体に地変属性大ダメージ |
襲い来る地を砕く魔力の奔流。
最前列で雨柳とスクルドが受ける。
「スクルド」
「ええ、貴方の望みのままに」
スクルドは1発目を隠し身で、2発目を≪きまぐれカポーテ≫で回避。*14
雨柳は1発目2発目を喰らうも3発目はスクルドが庇った。
≪友愛の加護≫の発動により盾となったのだ。
そして4発目、雨柳は動いた。
この中で最も脆いアイリスを庇う。
| 正義漢*15 | サマナースキル | 味方が戦闘不能になるダメージを受ける際、低確率でカバーを行う |
盾となり攻撃を受け、尚斃れる事はない。
「プチィ! プチプチブチSATSUウウウゥ!!」
「何だ、アイツ? 悪魔所かラリってやがるぞ。
品のねえ奴だな」
食いしばり、なんて事もない様に、刀を構え立つ。
敵が強かろうが、まだまだ戦える。
「……見苦しくて、嫌になりますね」
≪メディアラハン≫
だからアイリスも、何事もなかった様に回復した。
まだ彼女達の戦いは続いている。
「ちょっと死ぬので蘇生よろしく……」
「了解。次あたり蘇生しとくね」
4連撃でアメノフトタマとアドラメレクは落ちた。
だが秘神の影に居た事で、シロガネはダメージを
マッスルドリンコによる増強に装備や宝石、それと魔法によるバフ。
そのどれもが雨柳達を支え、継戦を可能とする。
「もう一度呼び直すわね」
「手数が自慢なら下げておくか」
「念の為かけておくねいつもの奴」
招来の舞踏でスクルドがアドラメレクを呼び直し、雨柳が虚弱性・消毒スプレー*16を使用。
更にシロガネ≪神奈備の護り≫で全体を護る。
魔神は瀕死の秘神の盾となりつつ、立て直しが完了した。
「攻撃は死ネェノかよ雑魚GA!」
防御を立て直した彼らをラーフは嘲笑する。
自身の派手な攻撃と違い、なんと侘しい動きか。
「……信用信頼と無縁なお前と違ってな。
こっちは知り合いが多いんだよ」
再度ラーフが腕を掲げるよりも早く飛び込む影あり。
黒い鎧と深紅の外骨格。
それは少女達の使役する英傑二柱。
「手ごたえからすると物理有効。
背中を貸す、極東の勇士よ跳べ」
「応よ竜殺し」
ジークフリートの大剣が腕の一つを切り裂き。
ヨシツネがその背を跳び駆け上がる。
銘刀膝丸を抜き繰り出すは≪空間殺法≫。
悪鬼の全身を銀光が彩り、続いて血華が咲く。
「援軍が、モウキやがっTA、DAと……!?」
「──残念だけど周囲の御仲間なら全滅状態よ」
英霊達に続き現れるのはレイとロゼ。
二人もまたここまで潜り抜けてきたようだ。
「ザナドゥ・ユニオンや他の組織も大体倒されるか逃げた。
ほら、今も皆援軍に来ているでしょ?」
「まだ無駄に足掻く?
ならそれでもいいけど」
遠方から近づいて来る気配がさらに複数。
霞が関駅周辺での第二次戦闘も護国・DB側が大半で勝利。
残るは深部への門番代わりだったラーフ程度だ。
「ッ! 舐メルんJAねェエえッ!!」
眼が再度瞬き、四本腕に力が伝播。
四本の腕が順に地へ叩きつけられ、衝撃が伝播。
魔力の奔流が雨柳達を襲う。
「ン、だto?」
強大な攻撃でも、今度は誰も死んですらいない。
死んでいた秘神を蘇生し、アイリスが全体を回復。
その理由は単純明快な物だ。
まずシロガネの神奈備の護りは敵のダメージを30%軽減する。
それだけでも大きいが雨柳の使ったアイテムは、
重ねる事は出来ないが効果は大きく、攻撃力は67%まで低下。
二つの要素が合わされば、最初の4連撃の半分以下までダメージは低下する。
「こんなKotoデ俺ガ……」
「LVの高さだけで、何もかも適う程簡単じゃない」
言葉と共に雨柳はスクルドと動く。
息を合わせ放つは合体技。
「悪魔の力に溺れて人を外れたなら、そのまま朽ちてゆけ」
刀と槍より放たれる、空間を震わせる波動。
人魔が繰り出す≪震天大雷≫の一撃が、悪鬼を正面から砕く。
「うあgi! UソだァアアアあaA!!」
血とマグネタイトを噴出させ、ラーフは叫び声をあげる。
支援する仲間に仲魔もいなければ劣勢を覆せるはずもない。
悪逆ガイア組織ザナドゥ・ユニオンの総領、外道召喚師カイリンだった魔王が死に絶えるまで、そう時間はかからなかった。
所々で煙をあげつつも、爆炎があちこちで上がっているでもない。
破壊の痕跡を残しつつも原型をとどめた街。
それが後に【混沌の奇禍】と呼ばれる内戦事案の結末だった。
「情勢を見るに大勢は決したようだな」
警戒を解く事なく、雨柳はあたりを見回す。
既に阿修羅会側の戦力は駆逐され、極道もガイアも悪魔も躯を残すのみ。
まだ残党の掃除は続いているが、護国・DB側の勝ちは揺るがない。
最も大変なのはこれからだろうが。
「レイブン、HQから支援来たけど後詰と後退して戻ってって」
「ならもう少し連絡を確認して行くとしよう」
ふぅ、と息を吐き出し端末を確認。
避難した御影達、仙台で戦っていた汐音も無事。
今回の事件は全国規模の激戦。
周りの人間が無事だった事はなによりだが。
(勝った勝ったと喜んではいられない、か)
阿修羅会やその他悪性ガイア組織は滅び、この国は護られた。
政府の方針や人心の動揺、それらを除いても気がかりな点は幾つもある。
一つ目は聖華学園への襲撃事件。
新世塾に加え複数の魔人が学園に侵攻。
強大な魔人の攻撃で校舎に甚大な被害が出たとまでは聞いている。
幸いにして生徒達の奮戦や援軍により被害は抑えられた。
しかし自身の知古も通う学園の被害は実に心配だ。
そして二つ目が。
(まさか……アイツが行方不明になるとは……)
キリギリスの発起人で、雨柳とも縁深いDB。
<漫画好き>毎佐々木が行方不明となっている。
雨柳達がラーフを倒した後。
異界深部の浸水の情報を聞き、救助の補助をせんとした時。
奥から湧き出てきた悪魔を倒した後、しばらくして帰ってきたのは深部で戦ってきた者達。
実は阿修羅会へのスパイだったというヘルメット団に、佐々木の仲間達。
そして────泣き濡れた乃木園子。
目を赤くした美森が言うには阿修羅会首領との決戦の最中。
クソ忌々しい狂人シャドウの暴走で深部にあった兵器が不安定化。
そこから佐々木が何とか少女達を逃がしたと。
不幸中の幸いと言っては何だが、後にハイエースがサバトマされた事からどうやら生きてはいるらしい。
無論依然行方不明で友奈達もまた同様の状況では、とうてい楽観はできない。
「一先ずはかえって各自体を休めるとしよう。
明日以降の依頼や任務もあるしな」
部外者の自分には今出来る事は何もない。
伸展があり、協力できる事があれば全力で協力する。
そうする他は、今はない。
「そうね。帰りましょうか」
「うん、今は食べて寝ないと」
レイとロゼがうなづき歩き出す。
雨柳も二人に続いた。
「まずは彼方の御国の所へ合流するか。
丁度礼一郎もあっちへ行ってるし」
「はい」
隣に居たアイリスもまた歩き出す。
彼女がコートの裾を掴んでいた事は気づいてないふりをした。
過酷な戦いがあり、まだ心残りがあるからこそ。
そのぬくもりは悪くはない。
(早く帰って来いよ佐々木。
お前が無事に人生の墓場に入らんと俺もおちおち入れん。
何より心配している子達が大勢いるんだからな)
<混沌の奇禍>が討ち祓われた日の夜に。
あの男が少女達と再会できるといいと、思えた。
◎Tips:阿修羅会篇の敵について
今回は全4話で多数の敵が出たので解説を載せておきます。
大体さっさと死んだ方がいいクズです。
・モブ極道の皆さん
東京各所で暴れていた極道達。
雨柳やその他のDBにカグラバチのヤクザ並みの勢いで根切りにされた。
・<幽鬼 ヤコウ・デュラハン>
百鬼夜行でも過激派と呼べる分派のヤコウがデュラハンの皮を被った姿。
人間に対する意識は極道のカタギに対する意識と大体同じで、蹂躙する対象としか思っていない。
トラップで足止めされDB達に袋叩きにされた。
・<魔丞 堕天使サルガタナス>
京都系組織征魔剣盟党の幹部の成れの果てである魔丞。
ウダウダ言ってたが部下も含め、要は自分達が搾取側に立ちたいだけのカス。
レイロゼを含むDB達に部下を全滅させられ、削り殺された。
なお拠点の捜索において監禁されていた人間の他、悪趣味な映像記録が発見。
後者は内容の確認後、速やかに破棄された。
・<秘神 サルタヒコ>
八極道の手で強化された秘神の一柱。
自身が太陽神としてこの国の主神とならんと不遜な野望を抱いたサタヒコ神をシュロが強化した姿。
高空からのD2スキルによる爆撃という戦法を取ったが叩き落とされ、その後は一方的に倒された。
・<KUNIEDA><ムーンフィッシュ><竪琴マコト><トキワコ>
前2名は『僕のヒーローアカデミア』後2名は『スケルトンダブル』出典の殺人鬼。
いずれも殺戮や決闘、売名等の目的から阿修羅会の傘下に入り、決戦以前も命じられるまま幾度なく己の手を血で染めた。
しかし表舞台へ出たのが運の尽き。
強化されていようと歴戦のDB達には勝てる由もなく死んでいった。
・<外道召喚師 カイリン>
ザナドゥ・ユニオンの総領となったダークサマナー(真)。
殺し犯し奪い騙す、悪徳を愉しめる者こそが強いという邪悪な思考の持ち主で、多数の犯罪に手を染めてきた。
恐らく存在の起源は爆炎の東京で、その頃の何かが魂に残っているのか、高い悪魔人間適正とラーフの■恵を宿している。
雨柳達と戦い、自らラーフとなり激戦を繰り広げたが最終的に敗北。
闇の再生のデメリットや戦った場所からすると間違いなくシュロの地獄へ堕ちたと思われる。
次回はデータを更新しつつ1話箸休め的な話をして、その次からガイア再生機構戦の予定です。