真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス- 作:ローグ5
今回はペルソナやD2のネタも入れつつ書いてみました。
近年の悪魔業界のインフレは激しい。
ここ数年に起きた数々の事件に続き今年に入ってから起きた世界的な異変。
それはガイア教やメシア教、滅びはしたがファントムソサエティと言った闇組織の活動激化のみならず、
日に日に強大になっていく魔界より出現する悪魔達。
それらに対応するように人間の側も強化されつつある。
南極での事件で有用性が認められたデモニカスーツの各国への普及や情報網による悪魔対策の共有。
その他にも悪魔事件の増加に比例するかのような悪魔と戦う才気あふれる人間の増加。
あくまで例外的な話ではあるが新人の中には数か月でレベル40を超える者もいる程だ。
と、いっても所詮それは例外の話。
日本の各地方は強力な悪魔蔓延る異界の対処にてんてこ舞いとなっており、封鎖し外に出ようとする悪魔を排除するだけで根本的な解決に至っていない物も多い。
長野県南東にあるこの異界もそうだ。
かつて小なりとはいえ城郭があり、激しい戦の舞台となった古戦場跡に出現した異界。
血なまぐさい逸話故か高い戦闘能力を持つ上に好戦的な悪魔が異界の主となり、覇を唱えんとしている時代に逆行した修羅場。
逼迫した状況故に周辺の退魔師は最悪の事態をも覚悟して封鎖に当たっていたが、今日この冬晴れの日には彼らの緊迫幾分か和らいでいる。
それもそのはず、この異界を踏破しに強力な援軍がこの日駆け付けたのである。
「二人共しっかり私を守ってね!? 私近接よわよわだからこのクラスの異界で出てくる悪魔相手だと危険なんだから!」
「待ってくれお前さんには武器があるだろう。そう、菩薩掌とデカい乳という武器が! ぐへっ!」
「誰がデカい乳よ! セクハラ発言ばかりしてると全国ネットで謝罪会見開かせるぞ!」
異界の監視の為に建てられた陣地に居るのは三人の男女。
彼等は現在ヤタガラス等の護国組織と連携しつつ各地で戦いを続けている
小組織であるがゆえに彼らには統一感がない。
紅一点となる女性は綺麗な黒髪と色白の肌に眼鏡をかけた知的で、それでいて柔らかい印象を与える美女。
ただしその姿はケブラーベストを着込み銃器を提げ、各所に小型のホルスターを装着したミリタリーチックな物ものしさ。
そんな彼女にどつかれているのはオレンジに近い金髪をした長身の青年。
良い意味で悪ガキがそのまま大人になった様な青年は、西洋鎧を着込み背中に曰く有り気な剣を背負っている。
陰陽師の系譜の血族に産まれた多彩な術と銃器を使いこなす眼鏡の女性。
かつて独逸の対悪魔部隊に籍を置き、紆余曲折あって今は悪魔の力が宿った武器で戦うサクセサーの青年。
一見対照的である二人は中々に馬が合うようだ。
「ほら二人共そろそろ準備しな。
そんな事ばっかりしていると夜になるよ」
二人からやや離れた位置で観察していた青年が苦笑しながらじゃれ合いを止める。
青年はやや癖のある黒髪に、地味な印象を与える物の整っていると言える顔立ち。
由緒を感じさせるものの、その目からは一筋縄ではいかない複雑さをも垣間見せる。
そんな青年は他の二人とは違う意味で目立つ存在だった。
一見コート姿で街にもすぐに溶け込める恰好をしており、武張った恰好の二人と比べると目立たないように見える。
が、特徴的なのはその得物であった。
青年が持つのは細く長い鉄製の和傘である。
艶消しの黒を中心とし所々補強を施したと見えるフォルム。
通常布で構成される部分には金色の縁取りで獅子が魔術的な意匠で描かれている。
この和傘は青年が職人に特注して作成してもらっている『黒獅子の和傘』という武器だ。
『獅子の軍扇』*1と呼ばれる武器を元に傘として再設計した代物であり、高い攻撃性能はそのままに傘としての機構を備えている。
無論頑強さについては悪魔由来のパーツをも組み込み万全。
著名な杖術の流派である神道夢想流杖術には「突けば槍払えば薙刀打てば太刀杖はかくにも外れざりけり」という流儀歌があるが、この和傘も同様に突き斬り打つだけでなく盾にも出来る多様な使い方を可能としている。
特異な形状ゆえ習熟は必要であるが使い手の技量次第では非常に強力な武装と言えるだろう。
「状態異常対策の装備は? 回復用のアイテムはOK?」
「応よ」「ばっちりよ」
「なら油断せず、さっさとやろう。時間がかかるよりは早く終わった方がいいからさ」
「お前の場合愛しのあの子がいるからな~」
「言うなよ、それを」
仲間の言葉に苦笑すると和傘を持った青年、
「ま、いつも通りだ
高度な柔軟性を持って臨機応変に対応してこう」
「それフラグ~といいたいところだけど悪魔業界だと原則みたいなもんなのよね」
「属性一つとっても多すぎんだよな。臨機応変じゃないと死ぬわ」
軽口をたたき合いつつも油断なく三人は異界へと向かう。
その身のこなしは年若い彼らに似合わず経験をうかがわせた。
──―僕が彼らと組んでいるのはまあよくある感じですね。
幾つか長野県内の悪魔事件を解決しているうちに気も合うし協力しようということになって、そこから組織というかチームにって感じです。
丁度何処か長期的な定住先も決めたいって思ってたんで渡りに船でした。
だいたい一半年前くらいの事ですね。
え、僕の来歴が聴きたいって?
う~ん大したことありませんよ本当に。
正直パッとしないし特にこれといったイベントもないですが……いやいいですよカメンヒジリって珍しいですし。
最近ペルソナ使い、正確にはシャドウ使いというらしい者は増えていますけど、こういう古式のやり方をとるデビルバスターはそうはいないですからね。
そのあたりも含めて折角だし話しておきましょう。
僕の産まれは京都ヤタガラスを構成する家の一つで格としてはまあそこそこ。
仮面に封じた悪魔の力を使うカメンヒジリとして古くは公家とか、メジャーな所だと細川家とかの大名家にも護衛を派遣してた由緒ある家系で金も土地も持ってるからか裕福でしたね。
傍から見れば恵まれた暮らしに見えたかもしれません。
実際はどうだったか? まあクソでしたよ。正確には僕の家系だけじゃなくて京都全体がクソなんですが。
どいつもこいつも無駄にプライド高くて保守的なんてレベルじゃなくて頭固いうえに男尊女卑。
まともな神経した人ならコスモゾンビとかの屍鬼の方が話通じるって思うんじゃないですかね。
先代党首の方は大変高潔な方で、尊敬できる方だったんですけど。
それはもう京都の気風からすると浮いているくらいに。
で、僕の家も御多分にもれず家の中は常に陰湿陰鬱な空気が充満していました。
敵ですらない相手に対して何であんな振る舞いが出来るのかなって真似を親や兄がするのを見て育ったんですけどいまいち馴染めなくて。
親や親戚からの評価はそれなりに高かったんですけどお前達に評価されてもって思ってました。
……女の子にあんな真似する奴らに血がつながっているだけで親愛の情なんていだけませんよ。
で、そんな感じで365日嫌な空気が流れていた京都何ですけど先代党首の方が亡くなられるとそれはもう酷くなりまして。
目も当てられない程に醜悪な権力争いが起きて、殆ど他人事みたいな身からしてもいやあ心底不快でしたね。
一応僕の兄貴分、遠縁の親戚でアニメとか詳しい人が居たんですが「山月記なら全員虎バターになっとるで」って言って出ていきました。
僕もその人から「京都はもうガンダムで例えると
それで準備はしていたけど、中々出奔する訳にもいかなかったんですねこれが。
デビルバスターとしての責任感? まあそれも少しはありましたけど家で少し気になることがありましてね。
いや、あんな親や兄弟はどうでもいいです。
僕の家には八つ下の女の子、使用人にされていた子が居ましてね。
あの子を見捨てたくないと思っていました。
……あまり気持ちのいい話じゃないんですが僕の実家を含め京都ヤタガラスは青田買いに熱心でしてね。
帝都のヤタガラスみたいに実力者を好待遇でむかえるなんて可愛い物じゃない。
その子も異能の才を見込まれて酒浸りのクズ親からはした金で使用人として連れてこられた子なんです。
去年までランドセル背負ってたような小さい子をどう扱おうとしたんだか。ああ反吐が出る。
その子の事がどうも気になって可能な限り庇ってはいたんですが、不十分でしたね。
流石にあんな真似をするとは思わなかった。
ある日実家の奴らが異界の討伐に出て、少々相性の悪い悪魔に出くわした時の事でした。
僕は別の班にいたんですがその子の班の奴らは彼女を囮にして逃げやがったんです。
僕と仲の悪い親戚もいたから、当てつけもあったんでしょうが。
合流した奴からそのことを聞いて慌てて異界を逆走して、どうにかして悪魔に食われかけてたその子を助けられました。
最悪の事態は避けられたんですが、それでも奴らにとうとう愛想が尽きましてね。
即効でその子の手を引いて京都を出奔しましたよ。
不幸中の幸いなんですが、京都からの脱出はうまくいきました。
名前は出せませんけど影ながらこっそりと支援してくれた人もいたんで追っ手とかはかからなかったです。
家にも面子がありましたし権力闘争でそれどころではなかったのも良かったんでしょうね。
それからは西日本は京都の手が届きそうなんで、東日本を転々としていました。
そんな訳で長野に流れ着いて今この場に至るというわけです。
長い割にはつまらない話ですいません。
え、京都から連れ出した子はどうしたかって?
……あーその、色々あって今も一緒に住んでますよ。
異能持ちっていうのもあるんですけどどうも僕と離れたくないって。
今は大分元気になって学校で友達も増えてます。
こんな碌でもない京都生まれの野郎より、もっとまともな人間が傍にいた方がいいと思うんですけどね。
まあそれでも、あの子が傍にいる間は可能な限りはするつもりです。
あの子は周りの人間にこれまで人生を奪われてきたんだ。
少しくらいは償うのが大人という物でしょう。
悪魔とはそういう物と言われればそうなのかもしれない。
が、この異界に出現した悪魔は好戦的な個体が多い。
「「「「ウオオオオ! 俺たちは闘いが大好きだあああああああアアッ!」」」」
| 邪鬼 | ラームジェルグの群れ | LV31 | 物理攻撃に強い、魔法に弱い |
狂気の叫びをあげて殺到するラームジェルグ達の目は血走り言葉通り狂気に満ちている。
「おいでなすったぞ! 反射はない、安心してぶっ放せ!」
「了解よ! くらえーっ!」
サクセサーの青年が
猛烈な勢いで疾走する邪鬼の殆どが二重奏に絡めとられて死亡するも、同胞を盾にした一体が接近。
狂気のままに剣を振り上げ雄たけびを上げる。
「斬殺うぅゥ、チャアアァんスゥゥ!」
「お前が死ぬんだな」
ラームジェルグの巨体が清浦が発動した
血を吐きめり込む邪鬼はそのままがくり、と倒れ伏す。
オンミョウジが念のために銃弾を撃ち込むが反応なし。弱点一発で完全に死んでいる。
「……好戦的な奴多くないここの異界?
まるでコミケでマナー違反してもグッズを手に入れようとするオタクみたいな勢いね」
「その例えはどーなんだ? まぁルール無用具合に関しては似たようなもんだけど」
サーチで敵影がないことを確認し、武器の簡易点検と再装填を行う。
サクセサーは剣の血糊を拭い、オンミョウジはマガジンを交換。
清浦もまた装着した仮面を点検して、異常がない事を確かめると装着しなおす。
「なおキヨ。前から思ってたけどその仮面どうやって付けてんだ?
留め具とかねえよなそれ?」
「んー企業秘密と言っておこう。実を言うとこの特許で結構稼いでるんだ」
「「そうなの!?」」
「冗談に決まってるでしょ。そろそろ異界攻略も半分行くくらいか
テトラジャを切らさないようにしつつ進もう」
二人共仲がいいなと思いつつ先頭に立って異界を進む。
如何にこちらの方が強かろうと異界内部は悪魔の住まう領域。
緊張をほぐす軽口はあっても三人は油断せずに進む。
悪魔が現れれば後衛のオンミョウジが使役する悪魔や魔法、銃撃で援護。
サクセサーが剣を振るって、時折電撃を放つ。
清浦もまた黒獅子の和傘を用いて獅子奮迅の働きを見せる。
悪魔を叩き伏せ、急所を突き、縁と一体になった刃で切り裂く。
衝撃魔法と併用しての滑空による三次元攻撃をも使い前衛として十二分に立ち回る。
そうして悪魔を退けるとさらに奥へと進んで行く。
乾いた地面を踏みしめ、ダメージゾーンはあの手この手でやり過ごして進む。
そして開けた所に出ると案の定。
「っ敵だ! 数だけは多いぜ!」
| 外道 | アーバンテラー | LV31 | 打撃・斬撃反射 破魔弱点 |
| 邪鬼 | ラクサーシャ | LV35 | 銃撃・破魔・呪殺耐性 氷結弱点 |
| 鬼女 | クロト | LV37 | 火炎・氷結・電撃耐性 衝撃弱点 |
悪魔の構成は雑多ではあるが先程と同様に闘争本能溢れる個体が揃っている。
交渉の余地はなし、危険極まりない!
「うわっ銃撃持ちの悪魔いるじゃん!? え―さんお願い!」
「心得た!」
アーバンテラーは破壊を求めるテロリストが悪魔化した存在だと言われている。
その噂通りアーバンテラーは手にした銃器から銃撃属性のスキルを放つ。
殺到する鉛色の豪雨。対して先頭の清浦は和傘を開き、中心を起点に発動された魔法を見てアーバンテラーは剥いた眼をより見開く。
「ホッホォアアッ!?」
黒い和傘を起点に発動されるのは物理攻撃の一切を反射するテトラカーン。
厳然たる法則によって構築された障壁は銃弾の通過を許さない。
意気揚々と攻撃を仕掛けた悪魔達に対して乱れ撃つように跳ね返る。
清浦が扱うカメンヒジリの力は悪魔の能力を仮面に封じ使いこなす強力な物。
古式のペルソナ使いの一種ともいわれるその力を持って彼は状況に応じて各種の魔法を使い分けられる。
本人が持つ近接戦闘能力と合わせると敵に回せば非常に厄介な前衛型デビルバスターと言えるだろう。
「しゃあっギリメったぁ! *2今のうちに潰せ潰すぞぉ!」
「えーさんナイス! ダーク悪魔には破魔だ破魔をかませええええ!」
麻の如くみだれた敵の隊列にオンミョウジが破魔魔法を叩き込む。
耐性のあるラクサーシャとクロトは耐えたが弱点属性のアーバンテラーの2体が昇天。
更に1体に対して剣士が得意の電撃魔法を放つと感電。
SHOCK状態に陥って行動不能となる。
あっけない程にデビルバスター側に傾いた戦いの趨勢。
そのままクロトは接近戦に持ち込んで集中攻撃を浴びせ、ラクサーシャは前衛がいなしつつ氷結属性を中心とした魔法で攻めたてて屠る。
3人は適切に悪魔の弱点を突いた彼らが悪魔側を殲滅した。
「これでめぼしい奴らは大体潰したっぽいな。次あたりでボスか」
「でしょーね。ちょっと探ってみたけど強い気配がそう遠くない場所にあるから。
多分そいつがこの異界のボスだなー」
「だろうね。これまでの傾向的にボスは物理よりの可能性が高い。
マッスルドリンコ飲んで近接備えとくぞ」
今いる広めの空間の先からかすかに漂ってくる邪気。
それと相まみえる準備を手早くして集中力と体力を高める。
「二人共ほんと頼むからね! 私一番レベル低いから前衛の二人が終わると私も終わりだから!
真剣頼むからね!」
「いや俺ら前衛こそ後衛の援護頼りだからそっちこそよろしく頼むわ」
頼もしい仲間二人の言葉を聞きつつ清浦はふっと口元を緩める。
思えば京都時代から変わった物である。
あの頃は周りを信じる事無く基本的に一人で過ごしていたし、仕事も可能な限り一人で済ましていた。
周囲の環境を考えればそれも当然といったところであるが、それにしても頑なだった。
それがどうだ。
あれから二年程京都を出て様々な人と出会い、俺という一人称が僕になり、その他にも随分と変わった。
世の中何が起こるか分からない物である。
(人間って変わる物だよなあ。悪い方にもだけど、それ以上に良い方に)
そんな思いはここ最近特に強くなったと清浦は思う。
異界最深部にある円形の空間。
この異界を押し広げた主が本拠とするそこは血を思わせるような赤を基調とした、闘技場めいた空間であった。
「────―雑魚の分際で良くも此処まで踏み込んだものだなニンゲン共。
貴様らの無謀に応えてこの我が相手をしてやろう」
それは全長3mに至る巨大な堕天使であった。
赤と白の体色に所々を鎧で覆った、獰猛な豹の頭部を胸に付けた奇怪な姿。
豹頭からの言葉を傲岸に吐き出す堕天使は本来首に当たる部分がら生えた剣を抜き放ち、己の名を告げる。
「我が名は堕天使フラロウス。20の軍団を統べる偉大なる魔界の公爵である。
この我の剣を以て貴様らの無意味な生に終止符を打とう!」
\カカカッ/
| 堕天使 | フラロウス | LV50 | 火炎・呪殺無効 氷結弱点 |
異界の主は高位の堕天使であるフラロウス。
大剣を握った巨体の五指に灯るのは不吉な炎。
「魔法来るぞ! 避けろ!」
放射するように放たれる広域火炎魔法を3人は躱す。
火炎耐性を付与したシキオウジを壁にして稼いだ一拍の時間により余裕をもって回避。
されどその火力は侮れるものではない。
(チッ悪魔の傾向からして物理型とは思っていたが魔法も相当やる。
悪魔って奴はレベルが高くなると無法だよな本当に!)
衝撃を利用して広げた和傘で滑空。
そのまま手を掲げ衝撃魔法をフラロウスめがけて放つ。
「ぬぅっ! 雑魚の分際で猪口才なァ!」
着地した清浦に対して剣を掲げてフラロウスは突進。
鈍色の剣に宿る仄暗い怨念のオーラを見た清浦の脳裏には悪寒。
アレは、まずい!
「う、おおおおおおっ!」
魔法を発動する暇もなく必死で身をひねって直撃を回避。
幸いにもサクセサーの青年がジオンガを腕に当てて攻撃を遅らせた事、また薙ぎ払う斬撃ではなく突きであった事もあって避ける事が出来た。
「あっぶねえ……今のは久々にヒヤッとしたぜ」
「口調崩れてんぞキヨ。あんまりみねえ技だったがアレか。
掲示板で言ってた龍撃系スキル*3ってやつか。直に見るとビビんなー」
サクセサーが骨伝導マイク(軍用の戦闘中でも使える小声でもはっきり届く物だ)越しに推測を口にする。
先程の攻撃は黒龍撃*4と呼ばれる呪殺属性の刃による攻撃。
最近になって存在が確認されたスキルを使うあたり発生してから日が浅い悪魔なのだろうが、強力な攻撃手段を幾つも持っているのはありがたくない事だ。
「ボスだっけあって強いな。僕らよりレベルも上だし」
「──―だけどアイツ、無効なのは火炎と呪殺だけよ。後はせいぜい耐性どまり」
オンミョウジもまた骨伝導マイクいつもよりも不敵な声で告げた。
彼女が可能なアナライズにより抜けた耐性の情報。
フラロウスは強いがつけ入るスキがあると。
「なら、試してみる価値はあるな。────頃合いを見てテトラ行くからその時は頼む」
「了解」「おけまる」
三人はそれから戦闘スタイルを変える。
派手な攻撃で相手にダメージを与えるよりも、こちら消耗を抑えリスクを避ける持久戦向けの戦い方。
じわりじわりと相手の精神を削るやり方で戦いを進める。
「ぬうううっうっとおしい! 大人しく焼け死ねえっ!」
投擲されたブフーラストーンに苦悶の声を上げるフラロウス。
応報のマハラギオンでまとめて焼き払おうにも清浦の展開したマカラカーンが厭わしい。
下衆の分際でちょこまかと!
「死ねえ木っ端ぁ!」
「ぐがっ!」
苛立ちのままに最もヘイトの高い清浦に対して剣を振るい吹き飛ばす。
一般的には重傷と言われる傷でも歴戦のデビルバスターからすれば戦闘続行可能な程度。
その程度の傷では彼らの動きは微塵も鈍らない。
「待てよデカブツ俺を忘れてるでしょうがっ」
剣を手に斬りかかるサクセサーに向き直るフラロウス。
ああ文字通り吹けば飛ぶようなニンゲン共が我にこうも歯向かうとは。
2人とも首を落とすだけでは飽き足らない。死骸に雑霊を入れてゾンビとしてこき使い────いや、待て2人だと?
「…………?」
その疑問の答えにたどり着く間もなくフラロウスは訝しむ。
己の身体が、弱体化を掛けられようとなお力強い四肢が、まるで固く縛られたように動かない。
いつの間にか緊縛状態に陥らされていた。
「急急如律令、なんてね♪」
何処からともなく響く女の声。
その言葉にフラロウスはしてやられた事を悟る。
堕天使には全容が掴めていない全容を語るならこうだ。
サクセサーの青年が戦闘の合間、密かにドロンパ*5を発動。
透明化したオンミョウジが無防備な死角から札を媒介に状態異常魔法を発動。
消費は大きい物の、シバブオン*6相当の効力を持った魔法は耐性を貫きフラロウスをBIND状態に貶めたのだ。
「恨むなら耐性どまりで無効付けてこなかった自分を恨むのね。
と、いうわけで私頑張ったから後二人しくよろ~」
「マジサンキュなあっ! キヨ、一気にぶち抜くぞ!」
「ああ、好機は逃さんっ!」
サクセサーの青年が全身をフルに使いフラロウスに暗夜剣*7と呼ばれるスキルを放つ。
渾身の力を込めて放たれた斬撃は剣を握るフラロウスの右腕を深く切り裂き、さらには顔面に傷を与える。
己の骨肉だけでなくプライドをもズタズタに切り裂く斬撃にフラロウスは苦悶。
しかし動くにはまだ時間がかかる。
「ガアア、ア……! おのれニンゲンどもが強き悪魔にひれ伏し阿るだけが脳の弱小種族ガ……
何故、こんな我を、アヤめるなどぉ…………? 何故ダぁ……!」
「さあな、ただ僕にも、一つだけ分かっている事がある」
斬撃を終えたサクセサーを踏み台に駆け上がる清浦。
半回転させた黒獅子の和傘を引いて構える目には静かで、されど深い意思が垣間見えた。
「強いから、偉いから何をしてもいい。
そんな腐れた考えのままじゃいつまでたっても進歩しねえ。
それだけは確かだろうよ」
京都の化石共のようにな。そう口に出す代わりに全身の力を一気に開放する。
筋肉が躍動したことで生まれた力はそのまま和傘に集まり螺旋状に突き出すエネルギーとなる。
螺旋を描くようにして突き出される漆黒に金で獅子が描かれた和傘。
その先端が傷ついたフラロウスの顔面を、血走った眼を容易くぶち抜く!
「ア、アバッ」
蛇の目突き*8と呼ばれる、清浦が習得した剣術や棒術の技から独自に発展させたスキルは、堕天使の急所を無慈悲に貫いた。
断末魔のくぐもった叫びをあげるフラロウス。
無慈悲に傘を開きながら引き抜き、清浦はとどめと言わんばかりに顔面を蹴って飛び離れると、その巨体がゆっくりと倒れ伏す。
「僕も知ったのは、割と最近だけどな……と」
堕天使が霧散していくと共に異界も消失していく。
エネミーソナーにも感なし。
奇襲の警戒は必要であるが、今日もまた彼等素晴らしき蕎麦の会のデビルバスター達は敵を倒して生きていた。
「よっしゃ今日もいい感じで終わったな!」
「二人共お疲れ~! ね、あの私の援護カッコよくなかった? いかにもやり手って感じでしょ?」
幾度ない危険があっても、世界が滅びそうでも清浦栄二は生きている。
頼もしい仲間と、大切な少女と共に。
────私の、栄二お兄ちゃんの第一印象は怖そうな人だった。
「お前か? 今日からこのクソ見てえな家に投げ込まれたってガキは?」
当時はよく知らなかったけど退魔の名家に引き取られた私を出迎えたお兄ちゃんは今よりもずっと尖っていた。
目つきは鋭かったし言葉使いも荒い。
当時の私は思わずビクっとしてしまった。けどそれは私の勘違いだった。
「取り合えず可能な限り家の中じゃ野郎と二人きりになるんじゃねえぞ。
俺も可能な限り注意するけどあいつらマジ糞だかんな。
それとマグ不足しそうになったら俺に言え。生体エナジー協会から持ってきてやるから」
お兄ちゃんはあの陰鬱な家に引き取られた私を心配してくれていただけだった。
初めて会った時からその後も家の人たちから私を守ってくれてた。
あの事件の時も私の元へ駆けつけて悪魔を倒したのはお兄ちゃん。
少なくとも京都にいた時はお兄ちゃんだけが私を人間として扱ってくれていた。
私の父親は最悪だった。
いつもお酒を飲んでいて仕事をせず、気に入らない事があると私を叩く。
挙句の果てに私の身体が年不相応な程に育ってくると、平気で私の胸を触ってくるような品のない人たちに接待をさせようとする始末。
私、ついこの間まで小学生だったのに。
結局そのガラの悪い人たちよりも多いお金を払った家に連れてこられたけど、私の人生が特に好転することはなかった。
何か失敗をしなくても容赦なく罵声が飛び、時には暴力や……屈辱的な振舞をさせられることもあった。
私にとって人生は延々と苦痛と悲しみが続く、終わりのない地獄のように思えた。
お兄ちゃんの存在を除いては。
だからお兄ちゃんに連れて京都を出た時嬉しさもあったけどそれ以上に怖かった。
この人に捨てられたらどうしようって。
頭の中がぐちゃぐちゃになって、勝手に追い詰められて裸で土下座しちゃった。
無駄に育った私の身体を幾らでも使っていいです。だからお願いします捨てないでくださいって懇願してしまった。
私の無様な様を見たお兄ちゃんは京都の奴らがそうした女の人をあざ笑う時みたいな反応は見せなかった。
心から打ちのめされたような、とても哀しそうな顔をした。
「……俺はさ、君を捨てるなんてことは絶対にしないよ。
そんな無責任な扱いをするぐらいならここまで連れてこないっての」
「ほんと?」
「本当だとも。君は可愛くて良い子だ。だからこれからはこれまでの分幸せになっていいんだ。
俺は、あー……僕はそう思う」
お兄ちゃんは私に服を着せてから優しくなでてそう言ってくれた。
そこからだったと思う。お兄ちゃんの一人称が俺から僕になったのは。
お兄ちゃんは自分の言葉を裏切らなかった。
一年半前に長野に定住してからもいつも私を気遣って、勉強でも生活でもわからないことは何度でも丁寧に教えてくれた。
私が久しぶりに学校に行って友達と遊んでいるのを知ると凄い嬉しそうな顔をしてくれた。
人から誕生日を祝ってもらうのって初めてで、プレゼントをもらった時には泣いちゃったな。
京都を出てから世の中は荒れているけど、私の周辺はお兄ちゃん達が頑張っているから平和だ。
そのことを申し訳なく思ってしまう事もあるけど私は今の生活を愛している。
明日が来ることに恐怖じゃなくて嬉しさがある生活を素晴らしいと思っている。
だから私はお兄ちゃん達の役に立ちたい。
私は戦うよりも、装備やアイテムを研究して作ったりする方が向いているらしいから、今はそっちの方に進むために色々と教わっている。
直接戦うだけが仕事じゃないってお兄ちゃんも言ってたしね。
(お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん)
私はカッコよくて優しいお兄ちゃんが大好きだ。
友達も、お兄ちゃんの周りにいる人たちも好きだけどお兄ちゃんへ向ける"好き"はだいぶ違う。
もっと考えるだけで顔が火照って、息が甘くなって、お腹の下あたりがきゅんとするような好き。
この感情に名前を付けるなら、それはきっと恋というものなのでしょう。
そんな事を考えているうちにお兄ちゃんが帰ってきた。
無事終わったけど今日の敵はちょっと強かったらしいから心配だな。
とびっきりの笑顔で迎えてないと。
扉を開けて両腕を広げて、心からの笑顔で最愛の人を迎える。
嗚呼、なんて幸せなんだろう。
「お帰りなさい! 栄二お兄ちゃん!」
◎主人公紹介
・清浦栄二 <カメンヒジリ> LV44
原作ではその腐敗っぷりが度々描写される京都ヤタガラス出身のデビルバスター。
酷い目にあわされていたJCを伴い出奔した後に、長野へ移住しそこで出会った仲間達と組んで悪魔達と戦っている。
家に伝わる悪魔の力を封じた仮面を用いたカメンヒジリとしての業を持つほか、黒獅子の和傘を巧みに扱い戦う多芸な前衛。
なお現在同居しているJCちゃんにはかなり愛情を注いでいるが、JCちゃん側からの愛情の重さには気づいていない。
100日と言わず食われそうな事を知らないのは彼だけであった。
・<素晴らしい蕎麦の会>
長野県を本拠とする若手のデビルバスターやデビルサマナーが集まった組織というかチーム。
元々は本作に出てきたオンミョウジちゃんが東京封鎖に巻き込まれ世の中ヤバくね?と思った事から封鎖中に知り合ったサマナー達と結成した後、サクセサーや清浦が加入して現在の形になった。
状態異常や式神召喚の他に銃を使いこなすオンミョウジや電撃系・物理系のスキルを得意とするだけでなくドロンパといったトリッキーな魔法を使うサクセサーが主力となっている。
殆どのメンバーは長野中心に活動しているが、今回出てきた主力三人は要請があれば帝都などにも出向く。こないだの緑化会戦もこっそり参加していた。
次のエピソードも可能なら二月中に投稿したいと思います。
次回のエピソードは新キャラと脳破壊おじさんが主役の予定。
原作や参考作品へのリスペクトを忘れないようにしつつ良い作品にしていきたいです。