真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス- 作:ローグ5
本スレで最高の導入を頂いたので良い物を書いていきたい…!
セプテントリオン一日前となれば、普段よりも大分人通りが減った物だ。
とは言え日本一の人口密集地である普段の東京に、人が集まりすぎているとの見方も出来よう。
今に至ってもまだ危機感の薄い一般人か、あるいは政府を信用していない漂流者か、まばらな人影を見かける。
その為数人程度の移動なら悪目立ちはそうしない。
故に上野にあるヤタガラスの拠点、寺院に偽装した施設には。
時たま出入りする関係者がいた。
以前のセプテントリオン戦の教訓から多人数を収容できる様改造した本院。
物資の搬入はとうに済み、警備も万全。
常駐する戦力に加え、彼方の御国を始めとする系列組織の人間が待機している。
翌日の決戦において、スカイタワーを含む重要施設を防衛する為に。
「……もしもし御影さん?」
その中には雨柳も含まれている。
「はい、貴方の御影ですよ巧さん。
そちらはどうですか」
「前回と同じで静かなもんさ。
葛葉の里はどうかな?」
「快適ですよー。皆さん良くしていただいて。
ちょっと申し訳ないくらい]
御影のみならず、電話越しに聞こえる姦しい声。
雨柳と普段ビルで暮らしている子達は、今里へ避難している。
彼方の御国の来訪以来、再び近づいた帝都ヤタガラスとの距離。
その事から今回避難を打診され、雨柳も彼女達と話し合いの末承諾した。
何せ
セプテン戦最中に、万が一の襲撃があってはならないからだ。
葛葉の里は結界や各種手段で場所の特定を防ぎ、厳重な警備が敷かれている。
何処かの避難所よりもかなり安全であるはずだ。
(ちょっと特別扱いで罪悪感はあるが……)
御影の足の事もある。
背に腹は代えられない。
避難先の里には、彼女の顔見知りも何人かいる。
ありがたく胸を貸してもらった。
「巧さんはもうご飯食べましたか?」
「鰤と大根の照り焼きとか食べたよ。
明日はテイクアウトのブイヤベースだから。
和食が出るのはありがたい」
杉並レルムの飲食店で購入したおいのりブイヤベース*1はパック詰めされ、拠点の業務用冷蔵庫で大量に保管されている。
複数の店が協力し息も絶え絶えになりながら作った長期戦への備え。
料理人達の執念が籠った食事は確かにDB達の血肉になるだろう。
「ロゼちゃんが美味しいお店って言っていましたが、世の中には凄い料理があるんですねえ。
落ち着いたらお礼も兼ねて皆で行きましょうか」
「それはいいな。どの時間なら予約しやすいんだろ」
セプテントリオン戦の後を話すのは、楽観ではなく危機を乗り越える意思の証。
自分を支えてくれる人と共に生きていこうと思っているからこそ。
「それとあかりちゃんがレイちゃんと会いたいって。
まだちょっと微妙に距離感あるから、仲良くしたいって言ってました」
「あー……ロゼは奏と響達とも馴染んだけど、レイはまだだからなあ。
最初会った時は随分絞られたな俺……」
「あの時のレイちゃんは怖かったですねえ。
絶対零度って感じで」
若干の責任を感じつつも、和やかに話を続ける。
ありふれた得難い時間が、心から尊く感じられた。
翌日には決戦があるからこそ、己の幸福を感謝と共に見直す。
未来の為、戦う意思を絶やさない為に。
一日前倒しとなったセプテントリオン戦の直前。
愛する人との会話はかけがえのない時間だった。
鳴り響くサイレンを搔き消すような爆音と悲鳴。
海外に続き、帝都東京においてもセプテントリオンは来襲していた。
黒丸が三つ中央に配置された、腐乱死体めいた禍々しい紫色の球体。
小球体が連なる触手を備えたそれは、セプテントリオンの一角。
無限を以て人類を殲滅するミザール。
| 武曲星 | ミザール | Lv45 |
| 武曲星 | ミザール | Lv45 |
| 武曲星 | ミザール | Lv45 |
| 武曲星 | ミザール | Lv45 |
| 武曲星 | ミザール | Lv45 |
| 武曲星 | ミザール | Lv45 |
東京へ到達したミザールは膨大
サイズも様々な「敵が七分に黒が三分」という有名なアニメの言葉が馬鹿にならない程。
数の暴力で人類文明を圧殺せんとしていた。
| 貪狼星 | ドゥベ | Lv20 |
| 貪狼星 | ドゥベ | Lv20 |
| 貪狼星 | ドゥベ | Lv20 |
更に第一のセプテントリオンたるドゥベもその中に混じっている。
ミザールの対処へ罹りきりになれば、ドゥベの爆発が周囲一帯を灰燼に帰す。
単純ながら最悪な組み合わせ。
二種のセプテントリオンが東京へ迫っていた。
空を覆う異形が死と破壊をばらまく。
人類の天敵の襲来に、戦う力を持たない者は逃げまとうのみ。
「おい!? こっちに来やがるぞアイツ等!」
「なんでよ、この世界は楽園じゃなかったの……!?」
「畜生、やっぱり逃げておけばよかった!」
逃げ遅れ、否難しなかった者が逃げ纏う。
政府への不信、現行世界への楽観、理由は様々。
彼等に突きつけられた現実は過酷だ。
「うわあああ!? く、来るなあっ!」
仲間とはぐれ逃げ纏う少年が叫ぶ。
少年は政府もDBも信じてなど居なかった。
かつて世界では比較的安定した地域に住んではいたが、所詮は今と比べ物にならない秩序が崩壊し、人心が荒廃した世界。
権力者や実力者は皆自分の懐を肥やし欲望を満たすのが第一で、恩恵が向いても身内のみ。
半ば無理やり敵への襲撃に参加させられ、重傷を負った時の傷は今でも残っている。
偶然転がっていた回復アイテムがなければ死んでいた事実は、強烈な不信を自身へ叩き込んだ。
数少ないまともだったのは護国の家の生き残りだったというDBの男。
確か尾之辻といったか。この世界でも一度ブラックフィエンドで見かけた男。
あの男位だったが、やがてあの男もまた。
話を戻そう。不信感を抱いた少年は政府の避難勧告を信じていなかった。
兼ねてから一部の漂流者に流れていた、ヤクザだけでなく不要な漂流者を処分するという"噂"。
信憑性を感じられる話だった。
金やその他の対価もなく守るなんてありえない。
だから避難所に行かなかった。
その結果がこれだ。
ミザールが見る見るうちに増殖し。
あらゆる生物を上回る勢いの速度で成長。
球体を連ねた触手を振るう。
≪百烈突き≫*2
人類を殺し尽くす為に。
「うわあああああっ!」
質量を備えた触手による一撃を、低位覚醒者である少年は防げない。
叩き潰され、血の花で破壊された街を彩るかと思えたが。
「どっせい!」
「しゃあっ!」
盾を構えた長身の男が≪カバー≫に入り、そのまま手にした鈍器で≪猛反撃≫。
更に横から走り出た男が≪火炎斬り≫で、ミザールを焼き切る。
今も数を増やしつつある群れが弱点攻撃で後退。
「射線が開いた! 掃射します!」
一人の女性DBが長大な銃器を構え、引き金を引く。
目標は当然、今も増殖するミザール。
| ブランクバレット*3 | 銃撃属性スキル | 敵全体に銃撃火炎属性*4中ダメージを2回与え、確率で混乱を付与する |
| M294軽機関銃*5 | 銃器 | M249ミニミを対悪魔改造した敵全体を撃ち抜く軽機関銃 高価な品であるが交流ある島田家の尽力で入手出来た逸品 |
高威力の火炎弾頭が解き放たれ、2度に渡り武曲星の波濤を撃ち砕く。
紫の球体に風穴が穿たれ、燃えて朽ちる。
生き残った大型個体もまた他のDBの集中砲火により斃れていった。
「掲示板に上がった情報の通りだな。
全部の個体が火炎弱点か」
「今の所は物理オンリーで来てる、反撃持ちの仲魔を出していくぞ」
「体力が無駄に多わねコイツ。
カジャ撒いていくドスエ」
この場にいるのは無力な人々のみならず。
幾多の死闘を乗り越えなおも戦い生きる。
歴戦のDB達がいた。
\カカカッ/
| 軍勢 | 一般デビルバスターズ | LV80 |
ダナーンの騎士、剣士、魔術師に召喚師にその他諸々。
クラスもスキルも出自も様々だが、文明の終焉を防ぎたい点では一致した者達。
精鋭の多くがある事情から沿岸部に移動しつつある状況でも彼等は意気軒昂。
増殖する武曲星を駆逐せんと挑みかかる。
「怪我はありませんか?」
「え、あ、はい」
その中は暗い色の装束を纏う、秀麗な面持ちの女性DBもいた。
一房が空色に近い蒼に染められた、艶やかな黄金色に近い淡色の髪。
憂いと共に意思の強さを感じさせる瞳。
<冷迷の東京>から来た漂流者、アイリス・ビショップもまた戦場に立っていた。
\カカカッ/
| 顕現者 | アイリス・ビショップ | LV73 | 氷結・電撃・衝撃・魔力・神経耐性 呪殺無効 破魔吸収 精神反射*6 |
「避難所はあの信号を右に曲がった先にあります。
漂流者用のカードは持っていますね?
なら自衛隊員の方々に言えば入れていただけるはずです」
「炊き出しの時に便利だから持ってたけど……」
絹の様な声をした美女に見惚れながらも、少年の脳裏には疑問。
「どうして俺を……助けたんだ?
俺、金もレベルも全然ないぞ。
臓器だってこの世界だと」
「世の中には────―」
戦闘中だから時間は限られている。
だから簡潔に伝えた。
「損得など関係なく人を助ける者もいる。
ただそれだけです。
さ、今の内に早く」
「あ……ああ!」
一瞬あっけにとられた少年は、すぐに避難所へ向けて駆けだす。
途中で立ち止まってアイリス達に頭を下げながら。
(旦那様の見真似でしたがうまくいったようですね)
あの少年に生きる気力があったのが良かった。
何もかも無くした者を動かすのが難しいのは、実体験として知っている。
無論自分が動かされる側としてだ。
人を助ける事は難しい。
損得や裏が絡み、何処かで感謝を期待する。
過去のメシア教会での生活で学んだ事だ。
(だからこそ人は、私は示さなくてはならない。
利益や欲望ではなく、善意で人を命を救う事があるのだと)
有史以来人が文明と共に築き上げた倫理道徳を以て、自分も示していかなくてはならない。
かつて世界の崩壊で何もかも無くした自分に手を差し伸べたあの人の様に。
あの暖かさを忘れていないからこそ、自身も同じ様に人を助けたいとアイリスは思う。
(貴方との未来の為にも、頑張らせていただきます)
再度増殖し迫りくるミザール。
奴等を阻止せんと銃を構える。
今回に備え火炎属性弾や破魔・呪殺属性弾はたっぷり用意した。
長く過酷な戦いだろうとやり遂げて見せる。
同じ東京で戦っている雨柳の様に。
……増援としてきた、
そう遠くない未来に結婚を控える淑女として、一緒にされたら恥ずかしいし。
帝都東京が文京区。各種の教育機関や歴史的な名所を備えた文化的中心地のひとつ。
近代的なレジャー施設を備えたこの区域も当然ながら襲撃を受けていた。
ミザールの衝突により、ビルが損壊し砕けたガラスが雨となる。
耳障りな音を立てて地に突き立つが、避難は完了しており民間人はいない。
ミザールを見据えるのは護国側に立つ戦士達。
<彼方の御国>に属する召喚師が中心となった戦陣である。
「────聞いてはいたけど凄い数ね」
武曲星との戦端が開かれる中、眼鏡を掛け直した女性が呟く。
群青色の髪に知性を感じさせる美貌。曲線を描く女性的な肢体。
この場における<彼方の御国>の主力である
\カカカッ/
| 悪魔召喚師 | 各務チヒロ | LV68 | 備考:アルゴスの悪魔人間 |
彼女と並び立つ仲魔は三体。
\カカカッ/
| 魔神 | トート*7 | LV55(31+24) | 破魔・呪殺耐性 四属性・精神吸収 物理弱点 |
\カカカッ/
| 幻魔 | ハヌマーン*8 | LV63(60+3) | 精神・神経・魔力耐性 破魔・呪殺無効 |
\カカカッ/
| 死神 | ペルセポネー*9 | LV61(58+3) | 電撃吸収 疾風・破魔・呪殺無効 |
以前よりのトートとハヌマーンに加え。
支援とバステ付与に長けたペルセポネー。
この三体が一先ずの戦力となる。
「打合せ通りいくよ。
まずはハヌマーンから動いて」
チヒロのラクカオートが発動する中。
ミザールが射的距離に入る瞬間に、動き出す。
「貴殿の意に恭じよう≪ラク・カジャ≫*10」
神猿が防御力を更に引き上げ。
「良く燃えるといいねン≪マハ・ラギダイン≫」
知恵の神が炎を武曲星へ解き放つ。
「早速試してみるねー≪バインドボイス≫*11」
呪う様な囁きで敵を縛る。
続いてチヒロは片手を
タッチパネルを操作する様に、軽く柔らかに。
≪テトラカーン≫*12
3体と一人、更に彼方の御国の召喚師と仲魔に物理反射障壁が展開。
意を得た彼等もまた動き出す。
「頼みますよオニャンコポン先生!」
「練習どおり働くかの」
召喚師の使役する秘神オニャンコポンが、杖を掲げ日輪を描く。
トートを包む加護はアフリカの天空神が力。
| キングオブテイル*13 | 補助スキル | 3ターンの間、味方単体を敵から狙われ易くし、攻撃力を最大まで上昇させる |
仄かな輝きを纏うトートに対し、魅入られたかの如くミザールが殺到。
小柄な神を触手による≪百烈突き≫で叩き潰そうとするも。
片っ端から反射され逆にその身を砕かれていく。
千切れ跳ぶ触手に、凹む球体。
まさに破壊者への因果応報。
物理攻撃に弱いトートをあえて前に出し、1ターン持続する物理障壁とヘイト操作のスキルでミザールの攻撃を誘導。
対ミザールとして考案された戦術の一つは、一先ず功を奏した。
「20秒後戻ってきますんでそれまでよろしく!」
「了解。此処は私は押さえておくから」
ハヌマーンの≪マカ・カジャ≫で魔力を引き上げられたトートが火炎を放ち。
チヒロがテトラカーンを再度発動し防御を固める。
≪道具の知恵・癒≫を持たしたペルセポネーはまだゆとりがある為再度バインドボイス。
仲魔との連携でミザールを押しとどめていた。
「ハレ、他所の戦況はどう?」
合間を見計らい指揮所にいる後輩へ通信。
オペレーターは本業でなくとも、ハレには優れたドローン技術がある。
各所に配置されたそれらを通じて各戦線の目になっていた。
『東京の戦況は大体安定しているけど……。
数分前からグランギニョル社周辺に変なのが落ち来てるって』
「変なの?」
返答には若干の困惑。
イレギュラーが起きているようだ。
『外道とかヒュージとか、アナライズしても結果が安定しない。
どうも純粋な悪魔じゃないみたい』
「前の人造悪魔とは違う奴……かな?
近くに来たら連絡して。
東京以外はどう?」
『まだ撃破報告は無し。
沿岸部も南北の2体も現地のDBが迎撃中だよ。
新潟もまだ報告なしだね』
突発的に始まった死闘は、DB達の奮闘がありつつも優勢と言い難い。
北海道と沖縄から襲来した2体のメラクは未だ撃破に至らず、帝都東京への進軍を許している。
実力と信用のあるDBは多くが沿岸部でメグレズの引き起こす津波への対処。
更に新潟に出現した謎の城もまだ健在。
しかも東京にもイレギュラーな敵性存在が多数出現している。
一体何がグランギニョル社を襲っているのか。
(激戦になると予想してたけど、此処まで混沌とした盤面は想定外ね)
それでもこの世界を護る為に戦うしかない。
一度逃げ出した身だろうと。
家族や矜持や社会の恩恵とか戦う理由はあっても。
戦うのを辞める理由はチヒロにはない。
(一頑張り処か何頑張りになるか分からないけど、此処は避難所から遠くない。
きっちり守るくらいはしないとね)
何、長時間や深夜の労働には慣れている。
残念ながら慣れてしまっていた。
「MPの回復入れつつ戦線を維持していくよ」
前の世界からの付き合いである、彼方の御国の仲間の援護を受けながら。
テトラカーンを展開し、合間を縫って銃を撃つ。
戦いを重ね、長い防衛戦にて安全地帯を守り抜く。
それは各務チヒロの積み重ねた鍛錬と知識と力、強きソウルの本領発揮。
揺るぐ事無く何かを護る精神の表れであった。
『……!? え、嘘、でしょ』
だが、現実は理不尽極まりない。
『何で、よりによって』
地獄は既に始まっていた。
「どうしたのハレ! 何が────」
『魔人が来た』
世界が滅んだとき以来に聞く、ハレの震えた声。
チヒロの心臓も柄になく、不規則に奮えた。
『上野スカイタワー!
レイと、ロゼの所に、来た……』
セプテントリオン戦の最中。
血戦が幕を開けた。
帝都に天高くそびえるスカイタワー。
新時代のシンボルであり、東京の通信の要が一つ。
この地における戦いは人類優位に進んでいた。
≪マハ・ラギダイン≫
≪鞍馬流八閃≫
大天使の火炎に英傑の斬閃。
ミザールが焼かれ斬られ原型をとどめず朽ちる。
周囲のDBの応戦によりなだれ込むミザールが、そう多くないのはある。
それ以上に、この地の防衛を任された少女二人奮戦も大きい。
「ロゼ! 前方から大きめのが来る!
「対処了解! 僕が倒すからレイは小型潰して!」
ロゼとレイ、二人の少女サマナーは果敢に戦い敵を駆逐。
仲魔へ的確に指示し、自らも利刃を煌かせる。
その姿は戦姫とすらと評するにふさわしい程に勇壮で可憐。
「────これで!」
「第2波ラストォ!」
ロゼとレイの同時の斬撃が最後のミザールを切り捨てる。
果物の如く小気味よくすぱん、と両断され地に堕ち、瞬く間に原型を失う。
「ふぅ……流石に数が多いね。
火炎弱点で統一されているやりやすいけど」
「ドゥベが時たま混じっているのが考え物ね。
万能を撃てる仲魔をもう1体出しておきましょうか」
呼吸を整えながら軽く水を口に含む。
直に第三波がやってくる。
それまでのごく短い小休止だった。
「夕海子ちゃんの方はどうかな。
思ったより避難してない人がいたんでしょ?」
「連絡見たけど大丈夫そう。
さっき最後の人を避難所に送ったって」
端末を垣間見たレイはやや表情を緩める。
かつては敵で、この世界で出来た仲間は今回も仕事を完遂したようだ。
「よかった~。不用心だなあとは思うけど極悪人でもない人に死んでほしくはないもんね」
「……そうね。そんな簡単に人の命は切り捨てる物じゃないわ
悪魔業界や護国だろうと、それは免罪符にはなりはしない」
レイの言葉にロゼも多少眉を顰める。
自身の姉が何の事を言っているか分かった。
かつての世界のヤタガラスの元老院、護国どころか人の心を忘れた腐敗の極み達。
腐敗を極め両手の指に余る程の悪行を重ねていた奴等に対して、一部の幹部が結成したのが彼方の御国。
シュバルツバースが拡大し世界が滅びゆく中、彼らの蜂起の決定的な理由になったのはある事件。
どんな悪魔だったのか、そこまでする必要があったのかは未だ分かっていない。
しかし未曽有の危機に民を護らず、生きながらえる事のみを考える醜悪さに組織の意見は一致。
蜂起した彼等は市民を救助しつつシェルターを奪取、元老院側と対立。
そしてその果てに奴等をレイブンが殺し尽くした事で戦いは終わった。
ロゼにとっては話でしか知らない内容。
ではあるが話を聞くたびに何処か胸がざわつく。
(記憶はないけど……僕も当事者だからかな?)
あの時何故レイブン────雨柳は自分を救い、レイに託したのだろうか。
葛葉マンゲツと共に自分を作った御影は何を想っていたんだろうか。
(おじさんと御影さんとは仲良くしてるけど、どうしても気になっちゃうな)
自分なりに疑問を抱えて、ロゼはこの世界での日々を生きている。
だけど今、やるべきなのは。
ぞわと、彼方から湧き出すミザールへの対処。
「第三波が来る……!
補給は出来てるわね」
「後8回くらいは余裕だよ。
僕若いからさ」
ビルから、街路から湧き出してくるミザール。
瞬く間に増殖する群体に少女達は怯まない。
仲魔と共に臆せず敵を見据える。
「ドゥベが何体か見えるわ。
強化からの万能でまずアイツから消していく」
「うん、定石通りだね」
脅威に対し可憐に立ち向かわんとする少女達。
迫りくるミザールの全てが薙ぎ払われた。
「っ!!?」
瞬時に切り裂かれ崩壊していく武曲星の波濤。
紫の破片の中、悍ましく煌く刃に。
ロゼはかろうじて反応する。
| 磁霊龍牙突*14 | 物理スキル | 敵単体に物理(斬属性)中ダメージを与え極低確率で気絶を付与 葛葉一族に伝わる清冽なる退魔の剣技 |
「んうっ!」
彗星の如き突き。ロゼの閃刀と衝突した刃が、強烈な金属音を響かせる。
肩口を貫かれながらも
ダメージをトリガーに仲魔達が動く。
| 慈愛の反撃*15 | 自動効果 | 召喚師がダメージを受けた時仲魔が反撃を行う |
主を傷つけられた怒りを載せた刃が身を裂く。
だが敵は淀みなく反転し着地。
ゆらりと、刀を手に相対する。
軍装に近い装束の輪郭は黒く朧。
手にした刀は見るからに不吉な輝きを纏い。
黒く影に塗りつぶされた顔はただ。
極大の殺意を灯した紫焔の瞳が輝いていた。
「レイ……こいつは!」
ええ。よりにもよって今に……!」
二人の鼓動が速さを増し、背を冷や汗が伝う。
二人共既にこの敵が何か勘づいている。
西日本で甚大な被害を出し、当代マンゲツすら殺めた怪物。
その後も各地で殺戮の痕跡を見せていた魔人。
それがよりによって、
「────此処に居たか。
四天王を騙る未熟者共」
地の底から響くような、怖気のする声だった。
「例え童だろうと、試練を超えず、あまつさえ逃げ延びた責は赦すまじ。
我が刃を以って誅殺するに他はなし」
刀を緩やかに、かつて少女達が感じた事がない程の威圧感を持って構える。
殺る気だ。直感したレイは恐怖を飲み下し叫ぶ。
「ロゼ! 連携して持ちこたえるわよ!」
「分かってるっ!」
少女二人が選択するは連携重視の、足並みをそろえた戦闘作法。
多数の召喚師が共闘する故に発達したかつての周回の方式。
未知の強敵に対して最悪な事態は、浮足立ち連携を乱しばらばらに戦う事。
故に慣れ親しんだ方式で、相互協力し戦わんとする。
されど、魔人の動きは少女達を超越した。
戦闘技術と圧倒的なスペック差が、主導権を奪取。
「護国に足らざる者よ。
最期に我が名を知れ」
殺意を込めて少女達を見据える。
「我が名は東狂死天王守護役────<魔人 カゲボウシ>」
| 魔人 | カゲボウシ | LV??? | 東狂死天王守護役 |
──────殺戮が始まった。
≪式返し≫*16で揺さぶり、≪挑発≫*17で此方の防御を引き下げる。
其処から続くあまりにも鋭い刃は仲魔を、少女二人を容赦なく斬り刻む。
反撃しても、補助や回復を連ねても、流れが止められない。
仲魔が
「レイッ!!? まってて、今回復を……!」
「ロゼぇ! 、まえぇえ!」
そして少女二人も、ついに斃れる。
真の死をもたらす刃がついに振り下ろされる。
「させるかぁ!!!」
直前に刃を阻んだのは雨柳。
戦う力を失った少女達を背に。
魔人へと対峙する。
「つまりあれか? 偽物の、紛い物ヤタガラスだから全員殺すと」
「そんな理由で、正しく生きようとしてる子どもを、正しく生きてた連中を殺したのか」
「今ある、笑顔を守らずに、何を守れるっていうんだよ」
かつて帝都を護り、今も護る為戦う者が殺意を以て魔人を射抜く。
「燃え尽きた世界の底より、我が帝都は蘇る。
それを阻まんとするならば貴様も討つ」
「今持ち得る栄誉にしがみつかせる者共が語らせる声音は聞き飽きた」
「証明してみせよ。これが守られる価値と強さがあると!!!」
東狂より来た、護国殺戮の魔人が殺意を以て召喚師を射抜く。
天を突く塔の下、この時始まるは血戦。
人は護る為、魔人は殺す為。
持てる力の全てを出し尽くす。
「此処で終われ。子供を刻む魔人────!」
「意志と力を見せろ。葛葉の召喚師────!」
死闘が始まった。
次回も可能な限り早く投稿したいと思います