真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス- 作:ローグ5
今回は戦闘マシマシとなっております。
帝都にそびえたつスカイタワーの周辺において戦闘は続いている。
「うおおおおおおエストマァ!」
「火炎特化の力を見せてやらあ!」
仲魔に騎乗しエストマを展開したサマナーが悪魔を退去させ、異能者が練り上げた猛火でミザールを焼き払う。
周辺地域のDB達は迅速に押し寄せんとする敵勢力を掃討していた。
押しては寄せる終わりなき敵の波。
彼等は真っ向から多種多様な手管で駆逐し続ける。
いつか来る、戦闘終了の時まで。
「チッ、ドゥベの野郎が増えてきやがった!
万能使える奴頼む!」
「────わたくしがやりますわ」
ゆったりとした袖をした柔らかな若草色の装束。
以前より強化を施された装束に身を包んだ夕海子が進み出る。
手にしているのは巨大なハンマー。
マグネタイトで形成された弾頭が形成。
彼方の御国の技術を取り入れた武器COMPの機能。
瞬く光の強さは少女が陰日向に研鑽を確かに積み重ねてきた証明。
「平和と我が家の繁栄の礎となりなさい!」
| エグゼキューション*1 | 万能属性スキル | 敵全体に万能属性で大ダメージを与える |
撃鉄の様に叩きつけられるハンマー。
放たれた弾頭はドゥベの中心に着弾し拡散。
万能属性ダメージで爆散させていく。
「ドゥベの排除完了!
後はミザールを!」
「了解!」
少女の指示を受けた部下や他のDBが、風穴の空いた敵陣の傷を広げていく。
消しゴムで消す様に消失していく敵の波。
この区域に突入してくるミザールとドゥベへの対処は順調。
しかし夕海子の表情には焦燥が見て取れた。
(まだ敵の数が多い……!
乱入を防ぐだけで暫くは手一杯ですわ)
スカイタワー周辺に居るDBは魔人襲来による混乱もあり比較的少数。
全員で湧き出る悪魔やセプテントリオンに対処しなければ、乱入を許す事に成りかねない。
雨柳巧が今も魔人に抗い続けている決戦場へと。
(二人共
だけどあの魔人の近くなんて何も安心できる要素はない。
幾らおじ様が戦っているとはいえ……!)
幸い葛葉キョウジが隣接区域で戦闘中であり、敗北した場合即座に加勢する事となっている。
それでも魔人の強さ──レイとロゼの二人が敗北する程を想えば不安で仕方ない。
心臓が此処まで締め付けられるのは、あの雨柳と再会した日*2以来だろうか。
ヤタガラスが多くの戦士を失った頃から、ファントムの壊滅と九頭竜撃破を境に流れが変わり。
2度のセプテントリオン戦から漂流者の到来、混沌の奇禍まで楽な戦いなど一つもなかった。
それでも出現した魔人の強さと不吉さには並ならぬ怖気を感じる。
自分の親しい人へ死が迫る事の恐怖を久しぶりに味わっていた。
揺れる心を鎮める為、ふぅと短く息を吐く。
そうしてから鉄槌をしっかりと握り、声を張り上げる。
指揮官らしく誇れる長女らしく。
「10時の方向からセプテントリオンが来ますわ!
悪魔はあちらへ任せてわたくし達で対処します!」
それでも今は敵を押しとどめるしかない。
自分が気を引かれ過てば彼等だけでなく多くの人が死ぬかもしれない。
弥勒家の長女として、あってはいけない事だ。
(その時まで耐え抜くのみ────!)
仲間と仲魔を指揮してミザールへ対処し、ドゥベを万能で吹き飛ばす。
決戦へ邪魔をさせぬと決意する少女は的確に動く。
援軍とまで行かなくても、彼等を手助けしに行く為の余裕。
それが生まれるまで耐えて戦い抜く。
・
・
・
スカイタワーの下、相対する召喚師と魔人。
「────召喚!」
空前絶後の強敵に対し雨柳は仲魔を選択。
GUMPのトリガーを引くと管と銃口から燐光が瞬く。
シロガネと合わせ計三体、雨柳と共に戦う仲魔が並び立つ。
「相手が魔人であろうと関係なし。
貴方に勝利をもたらしてみせるわ」
\カカカッ/
| 軍神 | スクルド | LV77 | 破魔・呪殺無効 氷結吸収 精神・神経・魔力に強い 火炎弱点 |
「我が力、何処まで通じるものかのぉ」
\カカカッ/
| 邪神 | ギリメカラ*3 | LV76 | 破魔耐性 呪殺無効 物理・銃撃反射 電撃・衝撃弱点 |
「あの子達を殺させはしない! 絶対にだ!」
\カカカッ/
| 神造魔人 | シロガネ | LV79 | 火炎耐性 電撃吸収 呪殺・魔力・神経無効 飛具・破魔弱点 |
そして仲魔達へ召喚師として、戦士としての意思を示すかの如く。
雨柳は己が手にする<霧氷月影>を構える。
「……ああ! アイツは此処で倒す!」
\カカカッ/
| 悪魔召喚師 | 雨柳巧 | LV83 | 全体的に強い*4 電撃*5・精神・破魔無効 魔力・呪殺反射*6 |
かつてない程の戦意、叫ぶ瞬間に戦闘が始まった。
ぬるり、と魔人が動く。
一閃にて死を齎す戦闘機動。
「主導権なんざ握らせねえよ!」
先手を取られた代償に、呼吸を拒絶。
(コイツを乗せたら不味い。
それだけは分かる……!)
繰り出される魔人の刃、それは雨柳の予想を超える鋭さで。
戦士達が敗れ去った理由を、文字通り刻み込んだ。
式返しによるギリメカラへの魅了からの銃撃*7。
それが終われば刃・壊・塵*8から、紅蓮剣でスクルドを炎上*9せしめた。
雨柳はアムリタシャワー*10で状態異常を回復。
シロガネが宝玉輪で傷を癒やし、スクルドが
ギリメカラが
如何なる敵でも通用する強化弱体を軸に、強敵と戦わんとする。
それは召喚師達が積み重ねてきた
「ま、だ…… 致死圏っ!! ここから、来る!!」
レイの必死の叫びを裏付けるかの如く、魔人の動きは無慈悲。
慟哭を載せた刃は悍ましい程に強靭く、あらゆる防御の意味をなさぬ。
| 永劫たる守護者の慟哭*14 | パッシブスキル | 全属性攻撃の威力1.5倍に増加 物理属性攻撃の耐性からテトラカーンによる反射状態までを全て貫通する |
≪猛反撃≫と≪慈愛の猛反撃≫、返礼の刃を二度受けても魔人は怯まない。
意識の間断を、風を纏う一刀がギリメカラを襲う。
| 疾風剣*15 | 物理スキル | 敵単体に複数回衝撃属性ダメージを与え風圧*16を100%で付与 |
太い胴を抜く手も見せず両断。
僅かなギリメカラの残滓たるMagを払い捨てた。
意識の間隙にすら潜り込む様な風を纏う退魔剣技。
雨柳を遥かに上回る葛葉の業は、魔人の強さを明確に物語る。
(だろうが、負ける訳にはいかねえ)
かつてない程の恐るべき敵、されど戦意は微塵も衰えていない。
『逃げ惑い、恥知らずに幾度何度たりとも輪廻の先へ流れ行くものどもを三千世界の果てまでも追い詰め、鏖殺する刃であればこそ、我は浮上した』
カゲボウシの目的は、明確にレイとロゼの殺害。
ならば、ならばだ。例え何があろうと引くわけには行かない。
女子供を、よりによってあの子達を殺すなど、許せるものか。
(此処で終わるのはお前だけだ……!)
熟練の召喚師たる雨柳が
振るう刃は疾く鋭く、一撃毎にこちらを確実に刻んでくる。
更には状態異常とデバフによって確実にこちらの行動を縛ると来た。
容易には攻略の糸口が見えない、恐るべき敵。
(それでも幾つか分かった事がある)
既に交戦データはGUMPを通じて、ヤタガラスへ送信している。
短い攻防であるが既に有用な情報も幾つかあった。
(おそらく属性剣技を使うのは相手の弱点を突く為。
基本的には物理属性剣技を中心とした組み立て)
少なくとも物理属性の剣技は貫通付与で、反射やテトラカーンを貫くかはまだ分からないが楽観はできないだろう。
(ならばまず重視するのはバフ・デバフ、回復!)
ダメージを積み重ねる前にまずは戦線を構築。
思考を定めた雨柳はGUMPのトリガーを引く。
「召喚、夜魔ニュクス!」
「合体早々に随分な強敵ね。
でもいいわ、夜の闇で覆い隠してあげる」
\カカカッ/
| 夜魔 | ニュクス*17 | LV72 | 火炎・氷結・電撃・衝撃耐性 |
黒い裾長の衣装に身を包んだ蠱惑的な夜魔。
ニュクスが今必要となる悪魔であった。
「苦労した分在庫はあるんだよね≪宝玉輪≫」
「もう1段階上げていくわ≪ラスタキャンディ≫」
回復し下がっていた防御力を含め能力を底上げ、戦線を整える。
消極的ともとれる動きだが、まず敵の攻撃に耐えなければ戦い様がない。
「そう動くか」
ターンが回り
カゲボウシは抜く手も見せずに≪銃撃≫。
シロガネとスクルドにダメージを与える。
「ぐぁっ!?」
「んうっ!」
乾いた銃声と苦鳴は、猛攻の前奏曲。
≪挑発≫
殺意に満ちた魔人の目が雨柳達を見据える!
────雨柳達の防御力が2段階低下!
行動の継ぎ目もなく、魔人が突進。
雨柳の瞬時のガードをすり抜け、<刃・壊・塵>を振るう。
防具の物理耐性を濡れ紙の如く、三度貫き雨柳を苦悶させた。
「っがァ……!」
咄嗟に頭を振って首への一撃は避けるが、深く斬り裂かれた。
浸透する殺意のMag、悍ましき波動に揺さぶられた雨柳は崩れ落ちる。
| 気絶状態 | ライドウ系やSH2・メタファーで存在する状態異常 1ターンの間行動不能となるが、この状態異常を防ぐ装備等は存在しない |
先制攻撃の直撃や一部の物理によって引き起こされる気絶。
頑強な召喚師が崩れる様に軍神が反射的に動く。
「させない!」
スクルドが瞬時に≪慈愛の猛反撃≫の槍を振るう。
攻撃とほぼ同時故カゲボウシは避けられぬ。
が、その勢いすら利用して跳躍した。
≪磁霊金剛壊≫*18
大上段からの、無防備な脳天を狙う一撃。
魔人の刃が断罪の意思を帯びて煌き。
「────だから言ったでしょう?」
友愛の加護、忠愛を捧げる召喚師の危機へ、軍神が割って入り。
「私のサマナーを殺させはしないと!」
斬撃を真っ向から受け止めた。
「スクルド!」
シロガネが叫ぶ中、スクルドは血を噴き上げる。
顔を切り裂かれ白皙の肌と金糸の髪を血で汚し。
片目で魔人を睨み付ける軍神は尚も美しかった。
「……成程、仲魔の質は中々の様だな」
「ありがたいお言葉をどうも。
貴方が死んだ後に受け取らせてもらうわ」
「言ってくれるものだ」
後退したカゲボウシは言葉と共に刀を地へと突き立てる。
其処を視点としてマグネタイトが収束していく。
幻想的なMagの光が禍き魔人を取り巻く。
本能的に恐怖を感じさせる動き。
何かが来ると、シロガネ達は直感した。
「ニュクスは回復を頼む!」
「ええ、わかっていますとも」
シロガネは≪神奈備の護り≫*19の防御結界を展開。
ニュクスまた≪メディアラハン≫で全体を回復。
傷を癒やしたスクルドは血を拭い、雨柳の前で立ちはだかる。
「起きてサマナー!
次の一撃が来るわよ!」
「っ! 落ちてたか!」
スクルドの声に復帰する雨柳。
その目前で魔人が動き出す。
超高速の突進、その手に握る刃が不吉に煌く。
≪磁霊龍牙突≫
無慈悲なる流星の如き突きが雨柳の腹を貫く。
「ぎっ……がァ!」
≪猛反撃≫により雨柳も又魔人へ刃を突きさす。
突進の勢いと、引き上げられた攻撃力を載せた返礼は深々と刺さった。
(やはり狙いは俺か)
だろうと臆せず対処するのみだ。
アイコンタクトもなく、≪慈愛の猛反撃≫によりスクルドが魔人を側面から切り裂く。
腕を切り裂かれても魔人は止まる事無く再度の刃を繰り出す。
≪磁霊龍雨突≫
旋回する刃からの速射砲の如き突き、雨柳を中心に据えたそれをスクルドは≪カバー≫。
幾度なく貫かれてもなおも、意地でも動きはせずに。
≪磁霊金剛壊≫
更なる友愛の情を以て、上段からの破壊的な刃をも受け止めて見せた。
「うっ……」
代償として
からんと、槍が地面とぶつかる音が立つ瞬間。
既にカゲボウシは姿勢低く、身をひねり。
≪脳天割り≫
破滅を齎す斬光が一閃。
全体を斬り裂く斬撃でスクルドを両断せしめた。
(初見の印象よりは遥かにマシな召喚師と仲魔だ。
これ程までの忠義を抱かされるとはな)
当初はこいつもまた女悪魔を情婦として使う手合いかと考えていた。
だがこの軍神は魔人の予想を幾度も献身を以て上回って見せた。
それ自体は賞賛に値するが……これで終わりだ。
(
挑発を交えて手数を削り、あの召喚師を殺す)
魔人の思考は淀みない。
迷いは微塵もなく殺す事のみを考える。
敵に対して容赦などはありはしない。
「……ほう?」
その魔人が、僅かながらに感嘆を見せた。
「実は私、意外な程しぶといのよ。
一見そうは見えないでししょう?」
眼前ではマグネタイトを励起し、再生しつつあるスクルドが居た。
「≪報復の狼煙≫か。味な真似をしてくれる」
| 報復の狼煙*20 | 思い出特技 | 1度の戦闘で1度だけ死亡時にHPを50%回復して復活する |
血に濡れ負傷の痕を残しながらも、スクルドは尚も地に立っている。
意思を宿した赤紫の瞳が、魔人を臆す事なく見つめていた。
ターンが回る。
「サマナー、まずはアイツの剣を」
「兎にも角にもそれだな」
────多少、賭けにはなるが、やるべきだ。
(攻撃スキルの豊富さと2度挑発をしてきた事からすると、それ以外の強化補助。
雨柳は思案する。突破口となりうる内容を。
推定
完全無敵の万能な存在であるはずがなく、スキルの数も限られている。
ならば挑発以外にその手のスキルがある可能性は少ないと踏んだ。
当然そうでない可能性もある。
そうならばそうで、以降の戦いの。
自分が負けた後の参考になるはずだ。
「ん……うっ……」
背後で瀕死のロゼが呻く声が聞こえた。
不安はある、だが踏み出さねばならぬ。
「……スクルドは一旦下がれ」
「役に立ちそうな所でよんでね」
彼女自身の動きもあり管へと高速で格納。
新たな仲魔を召喚する。
マグネタイトの光に包まれ現れるは、和装の悪魔。
鮮やかな
「来い! ヒトコトヌシ!」
「うわ!?とんでもない奴と戦っているねサマナー君……!?」
ひらり、と女神が優雅に舞い降りた。
ヒトコトヌシの召喚に続き、シロガネ達も動き己のすべきを成さんと動き出す。
「今のダメージ量なら!」
シロガネが撒くのは大妖精の粉*21なる耳慣れない回復アイテム。
以前ロゼ達が行商人から購入したアイテムの一部を譲り受けた物。
宝玉輪の数が限られている以上、それ以外で事足りるなら補うべきだ。
「猛り狂うなら落ち着いてもらいましょう。
とぉぜん強制的にね」
ニュクスが
────魔人の全能力が1段階低下!
最後に動くのはヒトコトヌシ。
怯えがあるが、それでもなお動く。
(……ワラワこんな化物と戦うの予想外なんだけど。
今回怪獣相手に持久戦って話じゃなかったの?)
魔人は一目見てわかる程に自分より遥かに強い。
面識なき
(それでもワラワ今、サマナー君の仲魔なのよね)
雨柳巧という召喚師は中々いい人なのは割と分かっている。
北海道では逃げ込んだ子達共々お世話になったが、あの子達にも丁寧に対応してくれた。
まだ会って二週間くらいだけど、仲魔になってよかったなと思っている。
脳破壊とか、若干ヘンな所もあるけど。
(何より……悪党に負けたら顔向けできないもの)
誰にと言われれば返答に困る。
ただ、ただレイやロゼ、自分の召喚師の可能性が絶たれるのは納得できない。
人の可能性と未来、それは尊ばれるべきだと。
信じた誰かを裏切りたくないと思う。
それはヒトコトヌシ自身も知らぬ己の起源が先、父たる神造魔人の原型となった鬼神と、彼が仕えた可能性を信じた神の意志に叶うあり方。
「行くわよぉっ!」
若干声が裏返った事を少し恥ずかしく思いつつも。
意を決して魔力弾を発射する。
魔力弾は魔人の目前で拡散、百獣が一斉に吼えたかの如き轟音へ変化。
「──────そうくるか!」
| 威嚇*23 | 補助スキル | 敵全体の防御力を最大まで強化・物理攻撃力を4段階低下 |
魔人の腕が微かに震え、眦が細められる。
────魔人の防御力が最大まで強化!
────魔人の物理攻撃力が4段階低下!
物理・魔法両面に対する抵抗力を得た半面、敏捷性を引き下げられ。
剣腕を最大まで魔人は低下させられた。
| 魔人 | カゲボウシ | LV??? |
物理攻撃力 | -4 | |
魔法攻撃力 | -2 | |
防御力 | 最大強化 | |
命中・回避 | -2 | |
相手が魔人だろうと召喚師と仲魔が協力し、意志と力の限り戦う。
それは護国のみならず、人と悪魔が積み重ねてきた召喚師と仲魔の、理想的な在り方の一つ。
殺傷力を減衰させられ切った魔人が動く。
≪式返し≫
初手に繰り出すは悪魔と連携を絶つ絡め手。
召喚師と契約して日が浅いと、想定し使用したが。
「残念だけどワラワNTRは厳禁なの!」
耐性により
予備動作もなく魔人は跳躍、≪磁霊金剛壊≫の一刀を女神に振り下ろす。
「いぎゃっ! 痛ったぁ……!」
「成程、純粋な女神ではないか」
種族女神の悪魔であるなら通常は
確かなダメージ与えたが弱点を突いた感触は無し。
(妙な悪魔を連れているものだ)
護国逸脱者共が飼う人造悪魔の類は幾度も屠ったが、これ程の力に妙な耐性。
小うるささといい、気になる点が無くはない。
(問題となるのは)
血濡れの刃が敵全員を狙い奔る。
≪脳天割り≫
無慈悲な斬閃が大気を震わせて、敵を切り裂く。
ニュクスはかろうじて生きている状態な上、気絶している。
だが他の三人は未だ意識明瞭で戦闘態勢。
先程の威嚇が響き、誰も殺せていない。
(今の威力では簡単には殺しきれんか。
ならば使うべき業は)
(威嚇の解除をしない所を見るとスキルについては想定通り。
だが楽観するにはまだほど遠い。
気絶とクリティカルでひっくり返されかねん)
両者の思考と共にターンが回る。
(氷結属性の有無は気ががかりだが攻めていく!)
雨柳はGUMPを操作、戦闘不能寸前のニュクスと
新に現れるのは悪魔的な黒と城壁のような白亜に、鮮烈な赤の三色で彩られた体。
見よ。鋭い4つの翼を生やす魔神の、翡翠色の目は燃えている。
「攻めるならお前だアドラメレク!」
「話は聞いていたが相手が魔人とはな。
だろうと臆せず焼き滅ぼすのみ!」
\カカカッ/
| 魔神 | アドラメレク | LV79 | 魔力に強い 破魔・呪殺無効 火炎吸収 氷結・重力弱点 |
雨柳の仲魔でも最大火力の魔神、鋼の太陽神が高らかに宣言した。
「まだまだアイテムはあるぞ!
せこいマネとは言うなよ!」
シロガネが使うのは仙酒露*25。
瀕死になりながらもレイやロゼが懸命に雨柳達の方へ押し出したアイテムポーチ。
其処からシロガネはいつの間にか回収して道具を使っていた。
「防御を固めていくぞヒトコトヌシ!」
「サマナー君が使って欲しいのはこれだよね!」
続いてヒトコトヌシが嫋やかな両腕を動かしスキルを発動。
防御力を大幅に引き上げる結界が展開された。
≪ラク・カジャオン≫*26
魔人による≪挑発≫を塗りつぶす、堅固な結界が雨柳達を護る。
────雨柳達の防御力が大幅に上昇!
そして、最後にアドラメレクが動き出す。
「俺が、俺達の太陽の力を見るがいい!!」
空気が揺らぎ、太陽の如き光が掲げた腕へ収束。
魔人へ向けて、戦意と共に解き放つ!
| メレク・シェメシュ*27 | 火炎属性魔法 | 敵単体に火炎属性大ダメージを与える ダメージは自身の魔法防御力に依拠し敵の死亡時に踏みとどまるスキルを無視する |
| 太陽神の威厳(劣化調整)*28 | 自動効果 | 火炎相性貫通(吸収まで)に加え火炎属性ダメージを25%上昇させる |
| 火炎高揚*29 | 自動効果 | 火炎相性ダメージが50%上昇 |
2重のブーストを受けた火焔が魔人へ着弾。
轟音と共にその身を焼き尽くさんとする。
「っ……!」
如何に防御力が上昇しているとはいえ、尋常ならざる威力。
熾火を纏った魔人は僅かに後退していた。
「奴の火炎耐性は恐らく無効!
お前の貫通なら抜けるぞ!」
火焔の残滓たる熾火は、魔人に触れても微塵も燃え移る事は無し。
そのあたりも考えると想定される耐性は無効。
また一つ、参考となるデータが一つ手に入った。
(次に試すなら電撃か?
余裕があったら他も試したいが)
当たり前だが一つの優位をとった所で、容易く崩せる相手ではない。
敵の戦力を解き明かし、強化と弱体化を重ね、回復しつつ削る。
| 悪魔召喚師/神造魔人 | 雨柳巧/シロガネ | LV83/78 |
物理攻撃力 | +4 | |
魔法攻撃力 | +2 | |
防御力 | 大幅上昇 | |
命中・回避 | +2 | |
| 女神/魔神 | ヒトコトヌシ/アドラメレク | LV79 |
防御力 | 大幅上昇 | |
雨柳達は防御を固め、己の手番を終え。
対峙する魔人が動き出す。
(ラク・カジャオンによる防御上昇ならばこれだ)
≪挑発≫
────雨柳達の物理攻撃力が2段階上昇!
────雨柳達の防御力が2段階低下!
雨柳達の防御力は、現在通常より1段階低下中。
カジャオンの大幅上昇効果はあくまで1段階。*30
1段階上昇から2段階引き下げれば、そうなる訳だ。
≪磁霊金剛壊滅≫≪銃撃≫
「ガっ! ア……!」
雨柳へと真っ向からの上段斬り、瞬間的な射撃でシロガネとアドラメレクを撃ち抜く。
そして追撃の刃を振るう事無く────飛び下がり刃を地に突き立てる。
刀を導体として放出されたマグネタイトが描くは巨大な円。
朱く禍く輝く円より放たれるは万物であり、万物に非ざる純粋な力。
| メギドラオン*31 | 万能属性スキル | 敵全体に万能特大ダメージを与える 葛葉に伝わる仲魔との合体奥義の最奥であるが、カゲボウシは単体で使用可能 かつて在りし護国の戦士達の嘆きを受け継ぐ魔人が故に |
絶大な威力を誇る奥の手たる万能スキル。
本来敵全体の反射状態への移行を引き金にとして、発動連発される技。
膠着を鑑みカゲボウシは己の意思で使用した。
絶大な力に砕ける大地、砂塵が舞う様はさながら破滅の具現化の如し。
残滓たるマグネタイトの煌きはさながら死者を誘う光に見えた。
「……ほう?」
先程の攻撃で気絶し、まだ視線が定まらぬ雨柳含めて敵は全員が立っている。
挑発を入れたとはいえ、二度の≪ランダマイザ≫が功を奏したか。
「さっきと! 同じだ!!」
血を吐き捨てたシロガネが叫ぶ。
例え召喚師が行動不能でも、何をすべきかは分かっている。
何せ堕天使との戦いから短くも濃密な死線を、共に潜り抜けて来たのだから。
「持ってけえ!」
シロガネが2個目の≪仙露酒≫で全体を回復し。
「もういっかああああい!」
ヒトコトヌシが再度≪ラク・カジャオン≫を唱える。
────雨柳達の防御力が大幅に上昇!
「灰に、帰れ!」
そしてまた、アドラメレクが動き≪メレク・シェメシュ≫で魔人を燃やす。
「ぐぬゥ……!」
太陽の如き焔を受けたカゲボウシは呻く。
≪威嚇≫によって引き上げられた防御力がそのままの為、見た目程のダメージはない。
だが、魔人の目には危機感が灯る。
(良くない、運びだ……!)
此方は敵を殺し、崩しきれず。
敵は回復し立て直し、着実に削ってくる。
単純で、それ故に覆しがたい流れ。
自身が
「随分と抗う物だ。
そこまで────あの娘達が大事か?」
「────当然、だろう」
此処に居たるまでカゲボウシに刻まれ続けた雨柳は全身血濡れ。
それでも折れる事等なく、魔人を睨み付ける。
かつては無かった強い決意の灯を灯して。
「お前になんざあの子達は殺させやしねえよ」
「護国を捨て逃げ落ち、あまつさえ四天王を名乗る誇り無き者共だぞ?」
「それがどうした」
世界が滅びる中、レイとロゼはシェルターによって命を拾った。
最期まで戦い、国や世界に準じた訳ではない。
それを逃げ出したと評する者もいるだろう。
葛葉四天王の称号、それは途轍もなく重い物だ。
幾度なくこの国を人々を救ってきた英雄の後継者。
その重さを背負うには少なくとも自分は値しない。
軽々しく扱う事は言語道断だと知っている。
「あの子達は決まりきった終わりの中、必死に足掻いて偶々生き残っただけだ。
甘い考えだと魔人以外に言う者もいるだろう。
だが、雨柳巧はそう思わない。
「それに四天王の名は子供を殺す大義名分になりやしねえよ。
罪があろうがそんな最悪な事に、称号が使われてたまるか」
大義名分に依り子供を殺す事の残酷さと醜悪さ。
雨柳は直視し難い"罪"を知っている。
言葉へと力がこもる。赦せない事があった。
「それに、それにだ。お前があの子達に逃げたから。
称号を名乗ったから死ねというのは……!」
お前が少女達を糾弾し、殺そうとしているのはそういう事だと、真っ向から突き付ける。
ロゼがかつて蜘蛛神と戦い未来を護った赤子。
レイが慈しんだ人の悪意に怯える少女。
二人がこれからも護っていく全ての人達。
その全てが護られなくて良かったとほざくのか?
「二人がしてきた事も、未来も否定はさせねえ!
何があろうとだ!」
最初は面食らった、まだ数か月の短い付き合いだ。
それでも今も戦っている少女達と同じく、未来と笑顔が見たい。
心からそう想うには充分な月日を過ごしてきた。
だからこそ
あの日
例え魔人が、強大な敵が相手だろうと折れる事等もうしない。
「…………それが貴様の意思と選択か。
貴様に力を尽くさせる、あの娘達には確かな価値があるのだろう。
腐りきったと断ずるには早計だったと、認めよう」
だがと、魔人の言葉と共に刀身が緩く弧を描く。
それのみで大気を構成する要素全てが斬り裂かれる様な。
凄惨な威圧感があった。
「我は東狂の守護者であり、護国を違えた者を切り捨てる刃である。
ただそれだけの、それ以外の何者でもなき……影」
これまでと違う、何処か悲哀を滲ませた言葉。
「故にこれ以上の言葉は不要。
互いの生死を以て、尊ばれるべきを証明するのみ」
「ああ。最初からそのつもりだ」
視線の交錯はほんの一瞬。
両者の主張は平行線、交わる事等有りはしない。
微塵の妥協もなく殺し合う他なし。
改めてそれが分かった。
前提の再確認と同時、魔人の刃が再度奔る。
召喚師と魔人の決戦は確実に決着への道をたどりつつあった。
次回雨柳VSカゲボウシ決着 6月の1~2週目には投稿したいと思います。