真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス-   作:ローグ5

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決着まで書けたので投稿します。
今回も最初から最後まで戦闘マシマシです。



第三次セプテントリオン≪護哭絶影血戦:輝ける星の如く≫

【 推奨BGM:バトル -ライドウ- 】

 

 人と魔人の血戦は、まだ続いている。

 

 PLAYER TURN(雨柳達の行動)からENEMY TURN(魔人の行動)へ。

 護国殺戮の魔人が動き出す。

 

≪挑発≫

 

 防御力大向上魔法(ラク・カジャオン)により引き上げられた防御力が、再度引き下げられた。

────雨柳達の物理攻撃力が2段階上昇! 

────雨柳達の防御力が2段階低下! 

 

 一足飛びに迫る魔人の、殺意と刃が煌く。

 

≪磁霊龍雨突≫

 

「ぐっ!」

「きゃっ!」

 

 目にもとまらぬ疾さの突きが、雨柳とヒトコトヌシへ殺到。

 その体を貫き血を流させ。

 魔人の刃が変遷。突きから一切の間隙なく横一文字の斬撃へと移行。

 

≪刃・壊・塵≫≪脳天割り≫

 

「ぬ、ぐ……!」

「まだ、鋭いな!」

 

 アドラメレクを数度切り裂き気絶させ、敵全体への刃を振るう。

 一撃の度に中空を血が彩り、かき乱された大気とカクテルされる。

 剣椀を極限まで下げられても尚恐るべき鋭さ。

 

「────耐えて見せろ」

 

 カゲボウシが血振りした刀を地面に突き立て、マグネタイトを結集。

 緑色の燐光が満ちる中、瞳のみが赤紫に輝く。

 

【 カゲボウシが周囲のマグネタイトをかき集め始めた! 】

 

 護国殺戮の魔人の戦闘機動、ダメージを重ねマグネタイトも消費しているはずなのに、動きが嫌になる程淀みない。

 LV100級(超越者)に至ったカゲボウシは底が知れない。

 

「ヒトコトヌシは回復! シロガネは防御へ集中!」

 

 だが、対峙する雨柳達もまた膝を付かない。

 

「防御ならこれだ!」

「サマナー君のMagを回復へシュート!」

 

 自身は刀身を前へGUARD(防御態勢)となり、シロガネは≪神奈備の護り≫で防御結界を展開。

 最後にヒトコトヌシが≪メディアラハン≫で体力を全回復、敵の苛烈な攻撃へと備え切った。

 

 自らの引き起こした破壊の残滓たる砂塵。

 その全てを音もなく引き裂いて魔人が、凄惨なる刃を振るう。

 

≪磁霊龍牙突≫

 

「ぐ、らぁ!」

「っ!」

 

 正面からの袈裟懸けが雨柳を薙ぎ、返す≪猛反撃≫が魔人の片目を斬り。

 

≪磁霊龍雨突≫

 

 なお微塵も動きに破綻なく、雨の如く飛来する突きが、雨柳とアドラメレクを貫き。

 

≪磁霊金剛壊≫

 

「いぎゃっ!? 腕千切れそぉ……!」

 

 跳躍からの一刀両断を≪召し寄せ≫*1で盾となったヒトコトヌシが受け止める。

 

≪脳天割り≫

 

 全体への斬撃が雨柳達を襲い血が吹き上がる。

 

 東狂死天王守護役たる魔人の、苛烈極まりない剣技の数々。

 仲魔が居なくとも護国の戦士たる証の一刀。

 慟哭と憤怒の刃に、斃れない戦士等居なかった。

 

(…………女神の≪威嚇≫が効いているか。

≪挑発≫を入れてもなお、浅い)

 

 されど、この度は違った。

 

 このターンにおいては殺せず、既に目覚めたアドラメレク含め、気絶した者すらいない。

 血を流し、四肢を半ば切り落とされながらも皆、二本の足で立っている。

 

(あまつさえ────)

 

 残身した魔人へ、雨柳が返礼の刃を振るう。

 

 自身の磁霊龍牙突(一太刀目)と鏡合わせとなる袈裟斬りでの≪猛反撃≫。

 最大強化された防御により威力は大きく減衰されるも、胴を深く斬る。

 会心(クリティカル)の一刀により、魔人の身体からマグネタイトが飛び散った。

 

(こうも反撃の太刀を入れて来るか。

 戦闘開始時よりも鋭く動きの継ぎ目がない。

 我の動きに慣れて来たか)

 

 此方の動きに慣れ、対応しているのか召喚師の動きは更に洗練されてきている。

 幾ら回復をしているとはいえ精神的疲労があるだろうに、ここまでとは。

 在り方(ソウル)の強靭さ、それ以上に。

 

(……揺るがないならば、まだ続けるか)

 

 ターンが回る。ENEMY TURN(魔人の行動)からPLAYER TURN(雨柳達の行動)へ。

 魔人を倒す為のか細い道をなおも走る。

 

「回復は俺はやる! 

 シロガネはデカジャ、ヒトコトヌシはバフだ!」

 

 雨柳が拾い上げた大妖精の粉*2で体力を回復し。

 

「防御を剥がす!」

 

 シロガネが投擲したデカジャの石が、魔人の目前で炸裂する。

────魔人の防御力が元に戻った! 

 

「多分三回目のこれでえっ!」

 

 またしてもヒトコトヌシが≪ラク・カジャオン≫で防御結界を構築。

────雨柳達の防御力が大幅に上昇! 

 

 そして、最後に動くアドラメレクの、翠玉の目が激しく燃える。

 

「魔人だろうと! 臆しはしない!」

 

 かつて魔獣オルトロスであった頃からの、雨柳の仲魔でも最古参。

 あの日雨柳が再び剣を取ったその時から、共に戦い続けて来た。

 堕天使の原型として現れた太陽神が焔を解き放つ。

 

「死を齎さんと立ちふさがるなら、燃やし尽くすのみだ!」

 

 太陽神が力の顕現たる≪メレク・シェメシュ≫。

 かつて太陽神であった魔王と同種の力は、魔人であろうと耐えきれぬ。

 

「────―ぐぅっ!」

 

 周囲一帯を熱波で包みながらカゲボウシを灼く。

 

 無論、強大な悪魔をこの一撃で討伐しきれない。

 されど魔人を包む炎と共に蛍火の如きマグネタイトが吹き上がった。

 

 これまでにない程に有効な打撃。

 魔人の動きが刹那にて、確かに揺らいだ。

 

 かたん、と。鹿威しが傾く様に、趨勢が雨柳達の側へ傾く。

 雨柳に仲魔、魔人も同時にそう感じていた。

 

(奴を倒す、道は拓けた)

 

(我が斃れる、道に乗せられた)

 

 雨柳と魔人の目がかち合った。

 

 まだ戦闘は終わっていない。

 一手の内間違いが、予期せぬ不運が。

 趨勢を決定する事等充分にあるのだ。

 

ターンが回る。互いに慢心も絶望もなく、ひりつく死闘を走り抜ける。

 

≪雷電剣≫*3≪磁霊金剛壊≫

 

 所々を焼け焦がしたカゲボウシが刀を振るう。

ターンの初動に≪挑発≫を絡めてはいても、魔人はあくまでも刀を頼みとする。

 物理攻撃力が弱体化した今、最適解は≪メギドラオン≫の連発。

 仮に障壁構築(カーン)がなされたならまだしも、そうする事は出来ない。

 

 カゲボウシは死を齎す悪魔(魔人)であり、自身を変革しうる者(人間)ではない。

 あくまでも刃にて護国失格者を誅殺する存在。

 補助も状態異常も万能魔法も、余技であると存在を定義されている。

 故に余技は1回目の動きか、剣技に交えての使用しか能わぬ。

 

【Critical!】   【Critical!】

 

「んっ! きゃあっ!」

 

 依然魔人の刃は高い殺傷能力を秘めている。

 反応が一瞬遅れたヒトコトヌシが、2度に渡りCritical(致命傷)を受け。

 マグネタイトを吹き出しつつDEAD(斃れる)

 

「女神、はどきょおおおおおおっ!!」

 

 が、女神はただでは死なない。

 直前に自身の秘める力を解き放つ。

 

死なばもろとも(調整)*4自動効果(思い出特技)1度の戦闘に1度死亡時に周囲の敵へ万能属性特大ダメージを与える

 葛葉式の合体術で付与したスキル このスキルの内容を知った時ヒトコトヌシは待ち受ける死闘の過酷さを想像し慄いた

万能プレロマ*5自動効果万能属性で与えるダメージを+20%

 

 強烈な万能属性の爆発に、魔人が盛大に吹き飛ぶ。

 メギドラオンすら上回る*6逆襲の一撃は痛烈。

 

(早速役に立つとはな……! 

 すまんヒトコトヌシ)

 

 そう思いながらつつも取り出した招来石*7でヒトコトヌシを呼び戻す。

 

「ただいま……うわ、あの魔人まだ生きてる」

「お帰り。もう少しの間頼む」

 

 即座にリスボーンしてきた女神に挨拶。

 冷や汗を流しながらも、魔人に相対してくれた。

 この戦闘における女神の貢献度は高い。

 

ターンが回る。篝火が灯る中両者が動く。

 

≪脳天割り≫

 

「ぐっ……気絶した奴はいないな!」

 

 魔人の集中攻撃を≪神奈備の護り≫で耐え切った雨柳が、血を吐き捨てながら叫ぶ。

 三者三様の返答に対して、雨柳は文字通り切り札を切る。

 

≪精神向上の札≫*8

 

 アイテムやマッカと引き換えに<心の怪盗団>から譲って貰った2枚しかない札。

 ブーストを掛ける対象は無論、魔神アドラメレク。

 

「燃えて朽ちろ!」

 

 焔の照り返しを受けて、スカイタワーが輝く。

 莫大な熱量に砕かれた舗装が燃え崩れる。

 生存が可能とは思えぬ火力だが。

 

≪挑発≫

 

 前進に焔を纏いながらも魔人が機動。

 防御低下からの恐るべき刃が連なる。

 

≪磁霊龍雨突≫

 

 片目が爆ぜても、尚平然と動く恐るべき生命力。

 されど僅かながらの焦りがある。

 

(京都で受けた傷が此処に来て響くか……!)

 

 この周回においてカゲボウシが相手取ったのは、葛葉マンゲツを始めとする精鋭。

 魔人からすれば護国失格者であろうと、歴戦たる敵の刃により傷つき、多くは癒えたものの確かに疲弊は蓄積している。

 魔人のHP(生命力)からすれば2割にも満たないそれが、ここに来て重く響く。

 

(だろうとも、此処に来て踵を返すはあり得ぬ)

 

 東狂の守護者に、護国の裁定者に撤退はあり得ぬ。

 塵殺し、ただ一人にて東狂への帰還しかないのだ。

 

 故になおも刃を振るい力戦し。

 

≪猛反撃≫

 

 雨柳もまた死力を尽くし、立ち向かう。

 

 死闘は続き、されど確実に終幕へと向かっていた。

 

 

 


 

 

 

「う……あ」

 

 暗く沈んだ視界に、急速に戻る光。

 瀕死のまま斃れていたレイは覚醒した。

 

「カブ……夕海子?」

「気が付きましたか!」

 

 自分を抱き起したのは、かつての世界では敵だった弥勒夕海子。

 状況からすると周辺の敵を潜り抜けて、何とかレイ達の元へ駆けつけてくれたのだろう。

 煤けてはいるがこちらは無事なようだ。

 常ならぬ緊張感を浮かべた彼女と目が合うが、レイは弾かれた様に動く。

 

「ロゼっ! ロゼは無事なの!?」

「なんとか……無事だよ」

 

 レイの横には座り込んだロゼ。

 衣装は乾ききらぬ血に濡れ、顔色は良くない。

 それでも確かに、生き延びていた。

 

「よかっ……う、痛ぁ……」

 

 蘇生による痛みにレイは思わず体を抑える。

 瀕死(Dying)とはいえ、即座に蘇生された訳ではない。

 心身に負担がかかり、レベルも幾つか下がっているだろう。

 

「無理はなさらないで。

 手足に違和感はありませんか?」

「私は……大丈夫だけど……魔人は? 

 あのカゲボウシと、レイブンは!?」

 

 レイの言葉へ、海子の返答より早く轟音が響く。

 押し寄せる熱気に、むせかえるような塵芥。

 夕海子の仲魔が遮蔽となってくれたが、その勢いはなお激しい。

 

「あれは────」

 

 急速に吹き散らされたそれらの果て、数十メートル先の戦場が、レイの目へ映る。

 舗装に至るまで斬り砕き尽くされ、炎上した領域。

 少女達を護る様に、背を向けて仲魔達となおも立つのは雨柳であり。

 

「ぐ、ガァ……!」

 

 文字通り死に体のカゲボウシであった。

 

 全身を焼かれ片腕が吹き飛び、朧げな輪郭は所々が不自然に欠けている。

 未だ殺意を絶やさない紫焔の瞳の眼光は確かに弱まっていた。

 

「おじさん……勝つんだ。

 あの、強すぎる魔人に」

 

 雨柳の側はアイテムの大半を使用し、回復を交えているものの心身共に疲弊を重ねている。

 それでも両者の姿を見れば戦闘の趨勢が決まっているのは明らか。

 次の瞬間にも完全な決着が訪れようとしていた。

 

(……レイブンは戦い抜いたんだ。

 私と違ってあのカゲボウシに)

 

 姉である自分がロゼ()を護るべきだったのに。

 この世界に来てから今に至るまで、むしろ自分が護られてきた。

 己の不甲斐なさに胸がずき、と痛む。

 

(それでも見届けなきゃ。

 レイブンが私達の為に戦ってくれた証を。

 強大な敵に勝利した光景を)

 

 じゃなければ、何の為に雨柳は自分達の元へ駆けつけてくれたのか。

 

 ロゼを支え、立ち上がろうとするレイ。

 その目前でカゲボウシが最期の突貫を行う。

 

「おおおおオオオォォ!!」

 

≪脳天割り≫≪磁霊龍雨突≫

 

 文字通り死に体の魔人の凄絶な剣技。

 マグネタイトを迸らせ、なおも雨柳へと繰り出す。

 

「ぐっ!」

 

 幾度目かもわからない刃に刻まれ、血が噴き出す。

 されど、雨柳は気絶する事なく踏みとどまり。

 

「──────おおっ!」

 

≪猛反撃≫

 

 返礼の刃で魔人の首を狩った。

 

 半ばから断ち切られた首から、高く高く吹き上がるマグネタイト。

 それは死闘の決着を告げる物で。

 

 レイとロゼ、夕海子が息をのみ見守る中。

 魔人がふらつき、一歩、二歩、三歩と後退。

 直前の動きとすらまるで違う、力ない動き。

 それはただ、朽ちて行くだけのそれで。

 

「…………え?」

 

 だから少女達も、雨柳も目を疑った。

 

不屈の闘志・改*9自動効果このスキルを持つ悪魔が死亡する際、一度だけHPが500回復する

 それはカゲボウシが取り込んだ刀の魔力か、或いは在りし日の戦士達が戦意の残滓か

 

 

 ぎゅるり、と逆回しの如く、魔人が復活し、戦う力を取り戻した事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────魔人カゲボウシの正体は、端的に言えばライドウを始めとする四天王守護役。

 後進の監督が為、所謂"説教部屋"に集められた残留思念の、更なる残滓(シャドウ)である。

 

 レイやロゼが居た世界のみならず、幾つもの世界でヤタガラスは腐り果てて来た。

 ある時は京都が主導権を握り、ある時は歪んだ意思を抱いた者達が元老院を名乗り。

 この国に生き、歴史を創る民を護る事を放棄してきた。

 

 驕り高ぶり、浅ましく逃げ纏い民や血を流す戦士達の犠牲を当然とする。

 残滓達がその醜悪を咎め立てれば、疎まれ封印されるのみ。

 

 封印された四天王達の思念は、世界崩壊と共に幾度も魔界へと堕ちていった。

 

 幾度なく堕ち重なり、発生した魔人は責務を果たさず生き延びたヤタガラスを間引き始めた。

 あまりに長く続いた粛清は、絶望が重なる(思念融合)の度に魔人を強化し、ヤタガラスの抹殺者としての性質を強めていった。

 それがGPの異常上昇により、まだ滅びていないこの世界にも現れた訳だ。

 

 魔人自身にも、予想外の復活であった。

 

 本来備えていた集団や核兵器等により倒されても再度復活する。

 護国の精鋭にしか倒し得ない特性を始め、多くの要素を喪失した。

 今となってはBOSS特性すらも持たぬ、一介の悪魔である。

 

 

「……我が慟哭は未だ潰えず、か」

 

\カカカッ/

魔人カゲボウシLV100 残HP500 

 

 

 それでもなお魔人は復活し、刀を構える。

 己を構成する絶望の、悍ましい程の底深さ故に。

 

「全員ッ防御っ!!」

 

 総毛だった雨柳が叫ぶ中、魔人が跳躍。

 中空で回転し、膨大なマグネタイトを込めた愛刀を地に突き刺す。

 

 

<<<魔人慟哭「絶」>>>

 

スピリット剣*10敵全体へあらゆる耐性を貫通する特大ダメージを与える

 かつての護国の四天王が振るった剣は今此処に最悪の形で復活した

 

 

 絶望の情が込められた刃が地より無数に生え、雨柳達を貫く! 

 

「食いしばれ……ない……!」

「ごめん……これは耐えるの無理……」

「何だ、この力、は!?」

 

 雨柳自身は≪報復の狼煙≫*11によってかろうじて生存。

 だがシロガネと仲魔2体は耐え切れなかった。

 DEAD(死亡)となり、管やCOMPへとリターンする。

 

(このマグネタイトの込め方は葛葉の……? 

 いや、それよりも不味いコイツはまだ)

 

 雨柳の思考の間隙をついて、魔人が再度の斬撃。

 

≪刃・壊・塵≫

 

 魔人は1ターンに4度動く。

 ならばまだ雨柳達に斬りかかれるのは道理。

 

【Hit!】   【Hit!】  【Critical!】

 

 紫の残光を残し、三度の斬撃が雨柳を刻む。

 1度死亡し弱体化が解除された斬撃に耐えられない。

 

「おじさんっ!!」

 

 ロゼの悲痛な叫びの中、多量の血が舞った。

 

 

 


 

 

 

 第二次セプテントリオン戦の後、雨柳巧がレイとロゼと会い、周回の事を知らされた時。

 最初に感じたのは、己に対する失望であった。

 

(前の俺は何をやりやがったんだ……)

 

 当然である。かつての周回の行いは許容出来る物ではない。

 世界が滅ぶ間際に腐敗したヤタガラスを殺し始め、あまつさえレイに幕引きを任せた。

 力の割に脆弱な精神しか持たない自分が、絶対にやらないと言い切れないからこそ、何をやっているのかと思った。

 

 いや、それだけじゃない。それ以外にも幾度なく滅びて来た周回で自分が何をやって来たか。

 アイリスの様に助けられた人もいるが、まだ過ちを犯しているかもしれない。

 

 事実今の世界でもそうだ。まだヤタガラスに居た頃から後悔は尽きない。

 命を助けられなかった者も、耐え難い苦しみを味わう前に助けられなかった者も何人もいる。

 これまでの周回より遥かにマシな世界でも、不甲斐ない男。

 そんな自分が正しくいられたとは思えない。

 

────魔人に斬られ、黒く染まった視界の中、不安が湧きだす。

 

 薄れゆく意識の中、光景が、声が巡る。

 朧げで本人すら自覚おぼつかぬ意識の奥底。

 それは最早本人の魂の奥深くにしかない魂の記憶。

 

【 瞬きの記憶が、微かに浮かび上がる 】

 

 

 

 何処かの研究所、あらゆる設備が損壊し炎上を続ける中。

 研究者らしき白衣の損壊した死体が散らばり、一際破壊された区域には斬殺された奇怪な化け物(ニンゲン)の遺骸すらある。

 死と破壊に塗りつぶされた研究所へ、新たな血が塗り重ねられた。

 

「がっ……! まだ、私の、けん、究は……」

 

 喉を抑えても噴き出す血の勢いは収まらない。

 近未来的な戦闘服の上から白衣を羽織った女は、よろめき膝を付く。

 白衣を染める大量の血を、認識するより早く倒れてこと切れた。

 

「……子供の屍を積み重ねた自己満足に何の意味がある」

 

 雨柳巧は復讐を遂げた。

 

 世界がニンゲンにより壊れ行く中、本末転倒の実験により被害を積み重ねていた集団。

 暴走する狂気は多くの少女達を殺し、世界の崩壊を加速させ、自身からすべてを奪い去った。

 だから手段を選ばずに、罪を重ねたこの研究所の者達全てを殺し尽くした。

 

 力の失われた手から黒と鋼色の大剣(魔■器)が落ちる。

 致命傷を負った雨柳の顔に晴れやかさはない。

 

 戦って、戦って、戦ってそれでも何も護る事が出来なかったから。

 

「……すまない」

 

 今はもういない愛していた人に詫びて、それが最期の言葉になった。

 

 

 

 

 

 ずるり、と雨柳の胸から十字剣が引き抜かれる。

 

 完全に消した気配からの鋭い一撃は、心臓を過たず無慈悲に貫いた。

 雨柳に出来たのは、回避や防御ではなく少女を庇う事のみ。

 

「残念だろうがアンタの役割はここまでだ。

 後は俺が影の実力者(始末屋)としての役割を引き継ぐ。

 フッ……だから安心して眠るんだな」

 

 十字剣を携えたフードの男は、意気揚々と告げ去っていく。

 まるで自身の趣味に関係する、どうしても欲しかった物が手に入ったような喜び具合。

 人を殺した直後にも拘らず、異様な反応であった。

 

 致命傷を受けた雨柳に少女が駆け寄る。

 その可憐な顔には涙。

 

「うそ、やだ……おじさん!」

「気づいて……いたのか……」

 

 貧富の差と差別、倫理が欠落する一方の社会で隆盛を迎えながらも腐敗していたヤタガラス。

 最早この流れを変えるにはコ■ェナ■トを集め、その力で世界を変革する他無し。

 そう考え暗躍していた雨柳の意思は、場違いな男の刃で潰える事となった。

 

「なんで! どうして私を庇ったの!? 

 なんでえええ!」

「──────」

 

 庇った少女にどう答えたのかは最早分からない。

 

 ただ、彼女の心を癒す言葉を言えなかった。

 それは確かだった。

 

 

 

 

 

 何処とも知れぬ空間、黒く深い心の底。

 

 涼やかな銀髪の、この上なく整った容姿の女性が泣いていた。

 大人びて、それでいて少女にも見える彼女の悲痛さに胸が痛む。

 そんな事を想う権利なんて、ありはしないけど。

 

『嫌……! 貴方と一緒じゃないと帰らない!』

『もうここにいたらいけない。

 君も仲間の元へ帰るんだ』

 

 雨柳は、完全に敗北した。

 世界の命運をかけた者同士の争いの果て。

 自身が育て上げた召喚師(■イ)と、彼女の仲間達。

 彼等との死闘の末己の理想は潰え、無惨に死んだ。

 

 そんなつまらない男になおもフ■グは手を差し伸べてたのに。

 雨柳は決してその手を取る事はしなかった。

 

『あ……あああああああっ!』

 

 消失していく意識、死を改竄される事なく、完全な死を迎える中。

 彼女の泣き叫ぶ声が聞こえた。

 

 この時の後悔が、罪がきっと最初で────

 

 

 

【 瞬きの記憶が、泡沫のように弾けて消えていく 】

 

(……何だ今の声は? 俺の、もっと過去周回()の……記憶?)

 

 朧げな記憶は今の雨柳の脳には残らない。

 今浮かび上がった殆ども、もう既に再び消失した。

 

(俺は誰を傷つけて。

 誰を助けられなかったんだろうな)

 

 ただそれでも自分がまた繰り返す事への、不安は残った。

 

 重ねた過去から湧き上がる不安は消えない。

 あのカゲボウシの様に、殺すだけの存在になり果てるかもしれない不安も。

 

 現に自分は10年前に己の愚かさによって子供を殺しかけた。

 まだ小さな子の未来を絶とうとしたのだ。

 そんな自分が今後も間違えないとは言い切れない。

 今の世界で人を助け、勝利を重ねても不安は常に付きまとう。

 

(────それでも、それでもだ)

 

 心からではない、少女達の声が聞こえた。

 レイブン、おじさん、おじ様と何れも自分への呼び方は違う。

 だけど三人共自分を案じる声を上げていた。

 

 皆優しい子だから魔人を、セプテントリオンを倒したとしても雨柳が死んだら泣くだろう。

 あの時自分には何か出来る事があったはずだと、幸せになった後も悔やむはずだ。

 

 それだけじゃない。思えばここ数年で会った人のみに限っても、御影以外に自分が死んだら泣く人を増やしすぎた。

 情けなくうずくまり、遅れてようやく戦い始めた奴に対してだ。

 それ以外でも、死んだら残念には思ってくれそうな人は存外に多い。

 

(なら……みっともなく倒れていられないな)

 

 魔人の刃を受け力が失われていく体に、強いて力を籠める。

 

 不安は影の様に絶える事は無い。

 だがそれでも少女達の未来の為に。

 笑顔と幸福を護りたい人の為に。

 

(もう一度……立ち上がれ!)

 

 足に、腕に、魂に力を籠めて。

 血と悲鳴の中から、雨柳は立ち上がる。

 2度目の復活は、ソウルを磨き上げた召喚師の証明。

 

食いしばり(サマナーの資質)*12サマナースキルHPが0になった際一度だけHP1で持ちこたえる

 ソウルハッカーズ2においては極限までソウルを磨き上げた証として習得が可能になるスキル

 

 仲魔は全滅し全身血まみれの死にかけ(HP1)

 それでもなお、雨柳の心身に力が灯る。

 不安を超え、未来を掴む為一歩踏み出した証に。

 

輝ける星の如く、纏うマグネタイトが、暖かな橙色に輝いていた。

 

「…………来いっ!」

 

 魔人カゲボウシは己の敗北を確信した。

 雨柳の纏う力が、何であるのかは仔細は知らぬ。

 だが不思議と確信していた。

 

 あれは怪物を倒し人を護る、英雄の力であると。

 

(であるならば我は!魔人(怪物)として真っ向から受けて立つのみ!)

 

 折れる事無い闘志と共に、召喚師と魔人が互いを見据える。

 

ターンが回る。死闘の終焉となる最後の一撃へ。

 

 橙色の光を曳き、雨柳の左手が管に触れる。

 選択するは共に戦い続けた軍神。

 

「召喚ッ! スクルド!」

「いい所で呼んでくれて嬉しいわ。

 私のサマナー」

 

 蛍火の如きマグネタイトの奔流と共に、管へ戻っていたスクルドが急速召喚。

 美しい微笑みと共に、雨柳が掲げる刀へと槍の穂先をあわせる。

 

 まだ漂流者達が来るよりも前、まだシロガネもいなかった頃。

 雨柳が奥義としていたのは、瞬間的な召喚からの合体技。*13

 久しく使っていなかった技を、今再び使用する。

 魂がこの一撃を繰り出せと、そう叫んでいた。

 

 不安を超えて一歩を踏み出し、心技体を合わせて刀を振り下ろす。

 

「おおおおおおおおっ!!」

 

 死闘の終焉を告げる、最後の一太刀。

 天を震わせるマグネタイトの波動が解き放たれた。

 

 それは、刹那に幻想を現実にとする、召喚師の英雄の力。

 

震天大雷*14合体技敵全体に物理特大ダメージを与え中確率で気絶を付与する

 葛葉式召喚術が最強の合体技の一つであり、雨柳巧の持つ召喚師の英雄としての力の発露である

 

 輝ける退魔の力が、魔人へと迫る。

 

 真っ向から受けるカゲボウシは刀を盾とせん。

 だがGUARD(防ぐ)事は能わない。

 殺戮の魔人は、自他を護る術を持たない故に。

 

「お前なら……いや、お前達ならば、あるいは」

 

 何処か寂しげで、期待を込め呟いた魔人を、英雄の一撃が滅ぼし尽くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 爆ぜて吹き上がる舗装の残滓に土塊、葬送の灯の様なマグネタイト。

 地へ降り注ぐそれらに一拍遅れ、刀が突きたつ。

 

 魔人が振るっていた漆黒の刀。

 それ以外には最早、魔人の痕跡はなし。

 完全にLOST(討滅)されていた。

 

「……勝った、のか?」

 

 力を使いつくし自身の刀を杖代わりにした、雨柳が呟いた。

 死にかけの身体の傷が癒え、徐々に体力を取り戻していく。

 誰かが回復魔法を使ってくれていた。

 

「おじ様!」

「レイブン!」

「「おじさん!」

 

 口々に自分を呼びながら駆け寄ってくる少女達。

 砂塵に塗れ、それでも生きている姿は、雨柳が魔人を倒した証で。

 

「勝ったぞおおおおおおおっ!!!」

 

 少女達に応える為、枯れた血の味のする喉で、それでも雨柳は叫んだ。

 

 護国殺しの魔人に対し、雨柳巧は仲魔達と共に勝利したのだ。

 

 

 護 国 絶 影 血 戦 
 

 勝 者 雨 柳 巧 ! 
 

 

 


 

 

 

 ◎主人公紹介

 

 ・雨柳巧 <デビルサマナー><剣士> LV87(83-2+6)

 

 ◇シリーズポジション

 ニッカリ及び悪魔討伐隊(真・女神転生Ⅳ Final)

 レイブン(ソウルハッカーズ2)

 召喚師の英雄原型(アーキタイプ)(メタファー:リファンタジオ)

 

 

 魔人との死闘に勝利した元ヤタガラスの悪魔召喚師。

 過去に色々やらかしたり、脳破壊されたりもするがそれでなお。

 笑顔と未来を護る為、一歩踏み出した男。

 人類の心の奥底に刻まれる、名もなき英雄の一人として。

 セプテントリオンを超え戦い続けるのだ。

 

 

 

◎おまけ:魔人 カゲボウシのデータ

 

【 相性耐性 】

 >銃撃無効

 >火炎無効

 >電撃無効

 >衝撃無効

 >呪殺無効

 >魔力無効

 >精神無効

 >破魔無効

 ※基本BS、即死系無効 

 

 ◇スキル

 ・<刃・壊・塵>

 複数回の物理中ダメージ+気絶5%

 

 ・<磁霊龍牙突>(太刀)

 敵単体に物理中(斬相性)ダメージ+気絶4%

 属性:片手剣属性※P1

【夜魔や悪霊に威力が高く、竜王や屍鬼に効果が薄い】

 

 ・<磁霊龍雨突>(槍)

 敵複数に物理(突相性)中ダメージ+気絶付与5%

 属性:槍属性※P1

【天使や堕天使に効果が高く、悪霊や屍鬼に効果が薄い

 

 ・<磁霊金剛壊>(斧)

 敵単体に物理(壊相性)中ダメージ+気絶20%

 属性:斧属性

【地霊に対して極めて威力が高くなる】

 

 ・<脳天割り>

 敵全体に物理大ダメージ+気絶8%

 

 ・<挑発>※真3

 敵全体の攻撃力を2段階上昇させ、防御力を二段階低下+MPを微小回復

 

 ・<銃撃>

 銃撃小ダメージを敵ランダムに与える1~5回

 

 ・<式返し>

 敵全体(1グループ、前・後のライン)に精神小ダメージ+魅了40%

 連携を産み出す為の業であり、仲魔にのみ通じる

 

 ・<メギドラオン>

 敵全体に万能特大ダメージ

 

 

 ※下記の3スキルは、敵の相性に合わせて自動的に選択される

 弱点の場合、確実に、弱点なしだったらランダム

 無効以上の場合は、物理に切り替わる

 

 ・<紅蓮剣>(太刀)

 敵に複数火炎中ダメージ

 炎上率100%(火炎弱点行動不能1~2T)

 ・<疾風剣>

 敵に衝撃複数中ダメージ

 風圧率100%(衝撃弱点行動不能1~2T)

 ・<雷電剣>(槍)

 敵単体に複数電撃中ダメージ

 感電率100%(電撃弱点行動不能1~2T)

 

◎特殊スキル 

 ・不屈の闘志・改

 このスキルを持つ悪魔が死亡する際、一度だけHPが500回復する

 

 ・スピリット剣

 戦闘により高めた感情を刃に乗せ、敵全体へあらゆる耐性を貫通する特大ダメージを与える

 

◎特徴/パッシブ

 ・<永劫たる守護者の慟哭>※永世ライドウ 

 全属性攻撃の威力1・5倍に増加

 物理攻撃の耐物理・物理無効・物理吸収相性を無効化する

 これの場合テトラカーンも無視する仕様となっている

 

 

 HPは推定15000程で、基本的に四回行動する強力極まりない魔人。

≪挑発≫や≪式返し≫の絡め手で敵を崩しつつ、パッシブで強化された凄絶な物理剣技を叩き込んでくる仕様となっております。

 その上物理には低確率で気絶の付与、属性剣も的確に弱点を突いて状態異常も載せて来る。

 間違いなくアナザーキリギリス史上最強の敵で、かつてない程の死闘となりました。

 

 なお不屈の闘志・改とスピリット剣はほびーさんからデータを頂いた段階ではなかったスキル。

 RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚の発表もあり、最後の展開の布石として入れさせていたいた形です。

*1
ライドウシリーズ出典 仲魔を呼び寄せ攻撃からカバーしてもらう葛葉式召喚術の業

*2
メタファー 味方全体のHPを300回復

*3
アバドン王出典 敵単体に複数回電撃ダメージを与え、100%の確率で感電を付与

*4
アバドン王出典

*5
真Ⅴ.V出典

*6
アバドン王においてメギドラオンのダメージは150、一方死なばもろとものダメージは190

*7
真ⅣF出典 死亡した仲魔を蘇生した上で召喚する

*8
P5出典 魔法の威力を一度だけ2倍以上に向上

*9
D2出典

*10
RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚出典のシステム

*11
アバドン王出典 戦闘に一度だけ、HPが0になった際最大値の50%HPを回復する

*12
SH2出典

*13
真Ⅲにおいても十四代目葛葉ライドウは仲魔の召喚からの合体技を1手番で使用する

*14
ライドウ系出典のスキル




アナザーキリギリスも連載4周年を迎え、この度の魔人カゲボウシ戦で一つの節目を迎えました。

第三次セプテントリオンを超えた後も、まだまだ雨柳巧とDB達の戦いは続くので、これからもご愛読していただけたら嬉しいです。
コンゴトモヨロシクお願いします。
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