真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -アナザーキリギリス- 作:ローグ5
今回はニンゲン2体との戦いとなります。
御台場周辺の戦場は、今白熱していた。
突如大量に投下された
雑多な個体を駆逐し、特に強大な2体には何とか各戦線から抽出した精鋭を派遣。
ただでさえ過酷な戦場へ、追加された理不尽に抗い続けていた。
そしてそれは御台場外縁でも変わりはない。
囲む様に5点へ投下された
奴等を駆逐せんとDB達は己の業を振るう。
「ウオオオオビッグサイトをやらせるかーっ!」
「キリギリス集合ッ聖地を護るぞ!」
装備も動きも違っても歴戦揃い、
巨大な怪物に対して、臆せず立ち向かう。
「せええいっ!」
可憐な声と共に巨刃が振るわれる。
| ウィンドブレイカー*1 | 疾風属性スキル | 敵単体に疾風属性の物理攻撃で中ダメージを与え、3ターン防御力を低下させる 心に魔を宿しながらも進む狂戦士の戦技 |
風の刃が節くれた木々に似た個体の枝を切り飛ばす。
そこへ他のDBが傷を広げていく。
「このわたくし、転生美少女DBの面目躍如ですわ~っ!」
更にもう一撃、再度≪ウィンドブレイカー≫で敵を刻む。
豪快な斬撃を自慢とするは快活な高笑いを浮かべる金髪の美少女。
紫の巨剣を手にした彼女の、肩や太ももの細かな傷は、その瞬間も治癒していく。
恐らく生命の泉*2といった回復系スキルの持ち主なのだろう。
そんな彼女の横合いからミザールが湧き出し。
文字通りの横やりを入れんとするが。
「汚い手で姐さんにふれんじゃねえっ!」
「腐った葡萄の分際でえっ」
「ふざけんなバカヤロー!」
少年が≪カバー≫しそのまま手にした剣で≪反撃≫*3。
続けて更に二人が槍で刺し鈍器で殴りミザールを地に叩きつける。
恐らく十代半ばか前半程の三人は、いずれもミザール戦へ動員された漂流者。
幾重にもかけられた結界式の各種カジャ・ンダの恩恵を受け、増殖する敵と渡り合う。
「アレは俺らがやっておくんで、姐さんはあのキモイ奴等お願いします!」
「ピーちゃんは丁度良い距離よろしく。
≪妖精の祝福≫*4でMP回復頼むぞ」
「もしMP切れたらアイテム投げますんで!」
「ありがとう。貴方達も奇襲には気を付けますのよ!」
彼等に手を振り少女はまたギガント級との戦いに向かう。
その雄姿を少年三人はつかの間、ずっと見ていた。
────正確にはニーハイから覗く太腿と、ミニスカ越しに形が分かる尻と、開いた胸元から直視できる豊かな乳を。
「……今、揺れたぞ」
「ああ。確かに見たぜ」
「少し汗ばんでいるのがよな」
小声で囁き交わし、少年達はミザールと殴り合う。
動員された身ではあるが士気は低くない。
面識あったDBにドナドナされた時はビビったが、思ったより扱いは手厚い。
幾重にも重なったカジャ・ンダに一部装備も無償でレンタル。
イケるのかと思ったが、ミザールとかいう化物と渡り合えている。
「レベル上げじゃあああ!」とか叫んでいたDB連中の事を考えると、後が怖い気がするので、その言葉はどうか気のせいであってほしい。
少年達は御台場周辺で戦っていたが、増援として現れたのがさっきの少女である。
年は自分達より2~3歳程年上の金髪巨乳美少女露出高め。
しかも快活で鷹揚な性格。
彼等の士気にも否応なくカジャが掛かっていた。
「ケイケンチーになれ雑魚助ェ!」
「俺達の輝かしい未来の為死ねえ!」
「大きいのはッ……美少女の乳だけでいいんだよ」
セプテン戦が終わったら抱き合って喜ぶとまで行かなくても、ハイタッチぐらいはしてくれるかもしれないし、仲間や友達を紹介してくれるかもしれない。
淡い期待を胸に
セプテントリオンとヒュージとの過酷な二正面戦闘。
それでも戦士達は各々の敵を倒さんと進み続ける。
この場における戦いの趨勢は、御台場に出現した2体の巨人との戦いに掛かっていた。
かつて人でありながら己の罪から逃避し、不安に飲まれ変異し、怪物に成り果てた存在との。
────それは、力の意味を理解しなかった者である。
赤青の鎧を纏い錆色の大剣を手にしたホモ・フロット。
このニンゲンの起源は、ある国の高級軍人であった。
古くから続いた部門の家の出らしく、軍人となった男は若くから頭角を現していた。
良くも悪くも落ち着いた時勢に馴染まぬ、苛烈で傲岸な人格を危ぶむ者もいたが元より優れた戦技と知略の持ち主。
順調に出世を重ねやがては将官の席へ男が辿り着く日も遠くはないはずだった。
転落のきっかけはあり得ざる化物、
各国の軍隊がデモニカスーツを持ち出しても抵抗が精一杯。
核兵器を使用してもなお殲滅できない条理に背く怪物共。
優秀と言えど常識の範囲での能力しか備えていない男にはどうもできない。
やがて怪物に抗し始めたのは、異能に"覚醒"した
戦場の主役は、英雄は彼女達となりその男は端役へ追いやられた。
軍の損耗もあり地位と権限は得たが、それだけだった。
そんな現実が男を歪ませたのか、また歪みを加速させたのかは今となっては分からない。
ただ、男がガイア再生機構とも、GEHENAとも呼ばれる組織の申し出を受けたのは事実だ。
成果を男の強化に還元する代わりに、実験材料となるリリィの確保を支援するという契約を。
相手の見込んだ通り男の為した工作は確かな物で。
何人ものリリィが手引きによって確保され、実験材料とされた。
無論そう旨い話がある訳もなく、その後男の望みは叶うことなく堕ち切った。
英雄になる事もなく、ただ大剣を手に戦い抗う少女を斬殺する。
不安に飲まれた、醜悪極まりない化け物に。
| ニンゲン | ホモ・フロット | LV83 | 相性:??? |
怪物が繰り出すのは苛烈な斬閃。
| 切り刻み | 物理スキル | 敵単体へ物理特大ダメージ |
| 空間殺法 | 物理スキル*5 | 敵全体へ物理大ダメージを与え、攻撃力を1段階低下 |
行く手を阻む構造物をバターの如く切り裂き、立ちふさがるDBを刻む。
吹き上がる血が、鋭い剣閃を彩る。
「バフデバフいきます! ローレライ!」
「かしこまりました主よ」
だろうが彼等は簡単に斃れやしない。
久緒が自身の口にスク・カジャ団子*6を放り込み、仲魔へ指示を出す。
管より召喚した妖精ローレライ*7が≪ラク・カジャオン≫*8の防御結界を展開。
「物理偏重ならこれだな」
「流石に威力が高い、回復します!」
続いてウォルムが物理反射鏡、アイリスが≪常世の祈り≫で全体を完全回復。
ダメージを与えられなくとも、次につなげる堅実な動き。
『HuNNu!』
対してホモ・フロットは猪口才なと言わんばかりに叫ぶ。
≪魔導の会心≫*9
手にした錆色の大剣
斬撃の苛烈さを増す加護を齎した。
『NuuNNNN……!』
跳躍し繰り出すは、大上段からの振り下ろし。
禍き赤い光を帯びた大剣は理不尽な憤怒を現したかの如き。
| 憤怒の大剣*10 | 万能物理スキル | 敵単体へ万能大ダメージを与え、対象へ1度のみ物理弱点を付与する |
物理の刃を封じられようと問題なし。
会心の斬撃により
それは怪物の身に沁みついた動きである。
万能属性の上に物理弱点を付与する強力極まりないスキル。
超級ギガント級故の強靭さもあり、かつての世界ではリリィもDBも悪魔も。
小細工を弄しようが容易く斬殺できた。
人ならざる力と業を、理由も分からぬ憤怒と共に振るう。
それは最前列に居た、小柄な少年を斬り。
| 陰に生きる者達 | 自動効果 | 所持者の命中・回避が5%上昇する |
| ■眼(劣化)*11 | 自動効果 | 敵の命中率が大きく低下する 陰に生きて刃を振るう英雄の力 本来の7~8割程の効果だが曇りなき目は敵の動きを確かに捉える |
捨てる事なく、地へとめり込んだ。
『NuHuuuU……!?』
動揺と空振りでホモ・フロットの耐性が崩れ。
対して呼吸を合わせDB達が動き出す。
「まずはこの技で!」
先陣を切るのは久緒。
己に足らない物は未だ数多い。
地元じゃ神童と呼ばれた力も聖華学園では、幾らでも格上がいる。
神話存在の如き強さと、人間らしい勇気と優しさを持った勇者部にも。
機転としぶとさは学園随一、極まった生存能力の琴葉ジエンにも。
同年代に限っても明確に優れた者は多い。
それに成長期に入っても身長は伸びないし、顔つきも精悍になった気がしない。
これでは女の子からカッコいいとは思われ……それはまあ置いておいて。
色々と足りない物が多くても、己の手には確かに積み上げた力がある。
ならば先程すれ違ったあの少女────友達や他の人を護る為に必死に戦ったあの子の様に。
この地を脅かす敵相手に、自分も誰かの為に戦っていいはずだ。
(あの子達をコイツに襲わせる訳に行かないもんなっ!)
手にした退魔刀が、清らかな闇を帯びる。
怪物を切り裂くのは、忍び戦う英雄の一刀。
≪暗夜剣・不動≫*12
斬撃を喰らったホモ・フロットがたたらを踏む。
先程よりも明確に足の動きが鈍った。
さながら闇夜に呑まれたかの如く。
≪メ・ディア≫*13
≪フィジカルガード≫*14
続いてローレライが回復高揚*15で増幅したメ・ディアで全体を回復。
アイリスがアイテムにて物理反射を展開し続く。
最後にウォルムが踏み込んだ。
唸りを上げる
確かに噴き出す血に、ホモ・フロットが叫んだ。
「壊属性も耐性ありか、流石に硬いな……!」
本人はぼやくが敵の損傷は耐性越しかつ攻撃力低下中とは思えない程。
恐るべきは込められた膂力と技か。
「次仲魔を変えるんで物理反射と回復お願いします」
「了解しました。アイテムの在庫はまだ余裕があるのでお任せを」
彼等は格上にも拘らず、冷静に対処していた。
幾度も繰り返される攻防、彼等は決して揺るぐ事なく怪物に傷を積み重ねる。
じわじわと戦闘の趨勢を自分達へ傾けていく。
『NuuAAA!!』
「アイツの弱点は電撃。
なら電撃を中心に攻めていくか」
「雷電真剣で電撃付与しますね」
ホモ・フロットの弱点が電撃と判明しさらに形勢は傾く。
回復する術を持たない怪物の鎧は砕け焦げ。
何度目かの攻撃で大剣へ罅割れ、刀身が欠ける。
『HUnNZaaAAAAAAA!!』
大剣が損壊した事に激怒し、ホモ・フロットは荒れ狂う。
折よく接近してきたニンゲンの一体を盾に電撃を防ぎ。
これまで以上の勢いで大剣を振り回す。
「欠けた剣じゃなあっ!」
先程に比べれば小さな傷に対し、それを上回る威力の≪猛反撃≫反応。
欠けた大剣では久緒達へ充分なダメージを与える事は能わず。*16
それでも合流してきたニンゲンを盾にし時間を稼げば。
本能的に結論に達したホモ・フロットだが。
≪火炎ガードキル≫
入れ替えた久緒の仲魔がホモ・フロットの反射耐性を通常まで低下。
二人が回復と補助を行う中、ウォルムが槍斧を手に踏み出す。
≪フィジカル・エンハンス≫*17
幾度なく戦闘中に繰り返した動き、
ただしこれまでと異なり、得物へ焔を纏っている。
死者を冥府へと誘う鬼火の如き、蒼い焔を。
(────我ながらやる事が変わらないな)
以前ウォルムが生きていた世界は、この世界の人間からすればファンタジーに分類される世界。
魔物や魔法が人々に根付いた世界でも全く平和ではなく、様々な理由で殺し合っていた。
そんな世界で徴兵されて兵士になった後、各地を転戦して敵を殺し続け、騎士になり。
この御台場に現れたのと似た化物の大量発生で、国が亡ぶまで戦い続けた。
仲間のほぼ全員を失い、民を護れず、家族も全滅。
そんな状況でこの国に流れ着き、当初は酒におぼれたものだ。
自分が斬って燃やして積み重ねたのは人魔問わず膨大な屍。
殺して殺して殺しただけの半生。
その全てが無意味におわったのだから。
それでもなお、十数人の生存者はいて、行きついた世界には平和な社会が広がっていた。
ならば騎士/人殺しの自分のやるべき事は決まっている。
生存者の、この社会に生きる善き人々の為。
彼等を脅かす物を殺し続ける事だ。
職務、責務、怪物への報復、仲間への手向け、亡き祖国への忠誠。
全てを綯交ぜにした濁った黄金色の瞳で。
ウォルムは殺すべき敵を見た。
| 大暴れ*18 | 物理スキル | 敵全体に壊属性大ダメージを1~3回与える |
| ミナコロシの愉悦*19 | 自動効果 | クリティカル率を大幅に上昇させる |
| 火炎ハイブースタ | 自動効果 | 火炎相性ダメージを大幅に上昇させる |
ホモ・フロットを見据えるや否や、焔を纏いウォルムが突撃。
槍斧が幾度なく閃き、群れ為すニンゲンを斬り砕き。
咄嗟に掲げた大剣毎胴を深く薙いだ。
『──────!!!』
これまでにない叫びを上げてホモ・フロットが後退する。
使えそうだったニンゲンが全滅し、自身が深手を負ったのもある。
だがそれ以上に、己を見据える男の瞳が恐ろしかった。
かつてデヴァローガの喰奴すら屠り、この世界でなおも戦い続ける
闇にて刃を振るう召喚師と、あらゆる外敵を屠り続ける狂戦士を、元は聖女だった
臆し、文字通り地金の剝がれた巨人に未来等ない。
巨人が死に腐るまで、それから数分もかからなかった。
────それは、己の罪から逃げ続けた者である。
黒緑色の身体に鳥の様な造形に、白い仮面で顔を覆うホモ・ホプキ。
このニンゲンの起源はある島国の片隅で生きていた女だった。
ヒュージなる化物と、リリィなる少女英雄が決死の抗戦を続ける世界。
その女は軋みを上げる社会の中で、ある団体の唱える思想に傾倒した。
思想とはリリィ脅威論。得体のしれない、ともすればヒュージと似た力を扱うリリィこそが真の脅威であるとする主張である。
無論多くの人々からは一笑にされ、ともすれば嫌悪される主張だ。
リリィの奮闘によって支えられる社会では、馬鹿馬鹿しいとしか言いようがない。
だがそれでも極端だから、少数にしか支持されないからこそ、思想に傾倒する者がいて。
やがて危険極まりない方向に煮詰まっていく。
事実その女も、家族や学校も匙を投げる攻撃性と嫉妬深さにより孤立したからこそ、リリィ脅威論に同調した。
自分と違って社会から肯定され、整った容姿で手入れの行き届いた制服を纏い、物質的にも恵まれた彼女達こそが真の悪。
そうであったなら、自分を取り巻く全てがひっくりかえるから。
偏った少数の持つ毒は濃縮され、やがて致命的な危険性を帯びる。
同様の団体が官憲の捕縛を受けた事に逆上し、ヒュージ戦の混乱の中。
今しかないと、遂に彼等は一線を越えた。
社会にとっての真の悪である、リリィの
結論から言えば部分的に彼らの暴挙は成功してしまった。
彼等を除く多くの人々にとって不運な事に、暴走した車によりリリィ1名が死亡。
取り返しのつかない結果は多くの少女に癒えない傷を刻んだ。
当然団体の構成員の殆どが逮捕され、再度のテロを目論んだ者が掃討される中。
予防も兼ねた略式裁判後の死刑が決定した女は叫び続けた。
私は悪くない、悪いのは社会で家族で周囲で、リリィだと。
罪悪感が微塵もなかった訳ではないだろうが、その後女は堕ち切った。
罪から目をそらすかの様に暴走し、死と破壊をまき散らす。
不安に飲まれた、醜悪極まりない化け物に。
| ニンゲン | ホモ・ホプキ | LV84 | 相性:??? |
感情の赴くままにホモ・ホプキは爆走。
大開きにされた口から、涎と共に怪音波が垂れ流される。
| 大狂乱*20 | 万能スキル | 敵全体に万能中ダメージを与え、全能力を一段階低下させる |
雑多なゴミや瓦礫、何処からともなく足元を濡らす水を吹き飛ばす大音声。
耳障り極まりない叫びに眉を顰める暇もなく、怪物は更に突進。
「っ!」
光織へ暴走車の如く一切の躊躇もなく突進。
必殺の一撃は、≪カバー≫に入ったバルバトスを捉えた。
「ぐうっ……! これは単純な威力では……!」
堕天使を蝕む呪わしき悪意の力。
崩れ落ちて管へと送還される。
| 死の暴走*21 | 万能スキル | 敵単体を万能相性で攻撃し、防御■が■■■以上■■中の場合即死させる |
(万能即死だと……!? 永眠の誘いみたいに状態異常がトリガーでもないにも拘わらずか)
仲魔が堕とされた雨柳は
なまじ魔人戦を終えてから一時間足らず。
本調子には程遠く体は重く、機器の不調によりCOMPも使用不可。
光織とシロガネ、後は管による使役の1体が頼みの綱だ。
過酷な状況であろうと攻略の糸口を見つけねばならない。
そうでなければ自分達の命のみならず御台場の市民も危うい。
(これまでの攻撃傾向からすると────)
雨柳は≪招来石≫を使用し、バルバトスを蘇生し召喚。
シロガネが≪デクンダストーン≫で弱体化を解除、光織が回復。
荒れ狂う敵の攻撃に備える。
≪大地の四股ふみ≫*22
≪カンデオン≫*23
踏みつけの対象は先程の如く光織。
カンデオンはバルバトスだがやはり。
(光織への攻撃頻度が高い。
若い女の子に恨みでもあるのか?)
執拗な動きからの推測は、逆恨みではあるがあたっている。
だがこの怪物が人であった頃犯した罪科を雨柳は知らぬ。
それ故に確信はなく、あくまで推測だ。
「ニッカリさん!」
「ああ!」
だがここまでの交戦において得られた材料は幾つもある。
それらの推測が当たっているか外れているか、慎重に検証を続けていくだけだ。
≪テトラカーン≫
バルバトスが物理反射障壁を展開し、雨柳とシロガネが能力低下の解除と回復を行う中。
光織が前へと踏み出し≪精霊召喚≫を発動、魔力の奔流へホモ・ホプキを捉える。
『JaaaAAA……!』
怪物は幻惑され、頭を振る。
瞬間回復ですぐに戻るだろうが確かに動きが乱れ。
≪大狂乱≫≪大狂乱≫
万能の騒音波が雨柳達を打ち据えるも精彩を欠いていた。
「テトラカーンで反射されるのを嫌ったか?
デバフは面倒だが……緩めたな」
ホモ・ホプキは魔法よりも巨体を活かした物理の方が大幅に威力が高い。
≪大狂乱≫によるデバフは面倒だが、雨柳は装備で万能耐性があり、光織やシロガネの魔力は高い。
ならばダメージレースを考えれば魔法使用を誘導した方が望ましい。
そう考え雨柳はテトラカーンを使用させ、光織は囮として前へ出た。
更にバルバトスはファイの時報*24を所持しており、テトラカーンを2ターン維持可能。
敵が物理反射で傷つく事を厭うなら、こちらの手数が空く。
「もう一回デクンダストーン!」
「スクルド召喚、ラスタキャンディ頼む」
バルバトスと交代したスクルドが
敵の執拗なデバフに対応する。
「そろそろ、攻めに転じるよ!」
強化の後押しを受けた光織が
切り刻まれる強靭なニンゲンの身体、赤い光が噴き出し、仮面に包まれた口を開けて叫ぶ。
『AaazaRUNAAA……!』
発作的な怒りと共にホモ・ホプキは光織へと突進。
踏み潰そうとするがテトラカーンへ阻まれ逆に吹き飛ぶ。
『YiaaDAAA!』
悲鳴を上げて吹き飛ぶ怪物、一瞬仮面の奥の血走った眼が見えた。
憎悪と狂気が充満した異形の眼、だけど光織は怯まない。
光織は
悪魔関係の組織で訓練を受け、この過酷な戦況でも頭角を現すようになっても。
かつて自分を襲った様な、悪意と狂気に何処か恐怖を感じる事がある。
(頑張れ私! あの時や北海道の時の……ニッカリさんの様に!)
それでも恐怖を────不安を感じない事が勇気ではなく。
不安を抱えても尚進んでいく事が勇気だと教えてくれた人がいたから。
今もこうして世界を護る側で戦い続けている。
故に揺るぐ事無く、増幅された魔力を元に魔法を撃ち続ける。*25
足元を濡らす水に気を配りつつ、目の前の怪物が斃れるまで。
それはかつて、怪物が忌み嫌った
『nNeeeeEAAAAA!!』
≪大狂乱≫でのデバフの後、ホモ・ホプキが光織へ突撃。
≪死の暴走≫による一撃で跳ね飛ばそうとするが。
「どうも、
シロガネが割って入り、ホモ・ホプキを受け止めた。
即死効果は発動せず、怪物は戸惑う。
(流石にもろもろを無視して即死させるわけじゃないか)
シロガネは破魔弱点な事もあり、以前から≪即死無効≫*26のスキルを付与している。
万能属性で即死という強力なスキルだろうと効きやしない。
(それ以上に何か動揺しているような……?)
雨柳もシロガネもまだ気づいてないが、≪死の暴走≫には発動条件がある。
| 死の暴走 | 万能スキル | 敵単体を万能相性で攻撃し、防御力が1段階以上低下中の場合即死させる |
敵へ効果を発揮するには防御力が低下中である事が必須。
仮に1発はシロガネが庇う事を見越して、2発連続で撃っても、条件を満たせなければスキルは空撃ちになるのみ。
テトラカーンで攻撃を制限しつつ、丁寧に能力低下をケアされればスキルは死に札になる。
『NnnnNaaAAAAAAAAA!!』
意味の分からない叫びを仮面の怪物が上げる。
弱っていた所なら、自分でも相手を殺せる。
人間時代の
最早言語化し得ない感情をこめて喚く。
「シロガネはいつでも≪カバー≫出来るように頼む。
強化低下を維持しつつダメージを重ねていくぞ」
「了解ですニッカリさん!
手が空いたらスクルドと合体魔法行きますのでよろしく!」
独りよがりの叫びは最早誰にも届かない。
罪を償わず逃避し続け、怪物に成り果てた今となっては。
「長く続いたが────これで終わりだ」
光織とスクルドの合体魔法によって凍らされ、雨柳の刃によって砕かれるまで。
ホモ・ホプキは無意味な叫びを上げ続けていた。
ホモ・フロット、ホモ・ホプキ討伐に前後して。
御台場周辺のギガント級を始めとする敵の殆どが掃討された。
御台場に投下されたヒュージは全滅となり。
帝都の一角にて起きた危機の一つは解決したが。
戦いは依然続く。無数のミザールを押し返し醜悪なニンゲンを討滅し、特異な魔人やドラゴンを打倒しようともなお。
低レベルの漂流者を動員し、考え抜かれた防衛網で徹底的に殴り返してもなお。
紫の球体は無限を体現した速度と密度で増殖してくる。
| 武曲星 | ミザール | Lv45 |
| 武曲星 | ミザール | Lv45 |
| 武曲星 | ミザール | Lv45 |
| 武曲星 | ミザール | Lv45 |
| 武曲星 | ミザール | Lv45 |
| 武曲星 | ミザール | Lv45 |
| 武曲星 | ミザール | Lv45 |
| 武曲星 | ミザール | Lv45 |
| 武曲星 | ミザール | Lv45 |
| 武曲星 | ミザール | Lv45 |
| 武曲星 | ミザール | Lv45 |
| 武曲星 | ミザール | Lv45 |
余りも増えすぎた数により、出現のたびに津波が起き、DB達が対処を強いられる。
まるで聖書神話を始めとする洪水の如く、文明を水で押し流さんとする。
「ドリンコキメたかー!!
次いくぞー!!」
「ぶへへへ、倉庫にいれてた物理反撃アクセが火を吹くぜー。
手足もちますよに」
「現在、対応悪魔を現場で製造中!
<反撃>持ちの悪魔をよこせ!!」
「合体完了!! 次いくぞー!!」
装備とスキルの組み合わせによる物理反撃の乱打。
有用なスキルを持った仲魔の前線での悪魔合体。
持てる知識とリソースを駆使し対応。
いつしか足元を濡らし始めた水、その意味に気づき戦慄しながらも手を止めず戦い続けていた。
「カジャは維持できているな?
避難完了まで持ちこたえるぞ!」
雨柳もまだ前線で戦い続けていた。
結界式のカジャが最大まで維持された状態なら、≪猛反撃≫一撃でミザールを倒せる。
それでも手が足りない、ミザールを駆逐しきれない。
「叩いても叩いても減らん。
ヨルムンガンドの如きだなこれは!」
傍らのトールもMag消費も考え、猛反撃を中心に動いている。
時たま≪冥界破≫や≪猛突進≫*27も交えているが。
(まだしばらくは敵が途絶える様子がねえ……!)
第二次の時も終わりが見えない猛攻が続いたが、今回はあの時以上だ。
心身の疲労は限界を迎えつつあるが。
それでもなお、刀を振り並みいる敵に対抗し続ける。なにせ。
「まだまだっ……いけますよおおおおおおっ!」
「火炎属性弾がなくてもまだ他の弾があります!」
合体魔法を連発する光織も、銃を撃ち続けるアイリスもまだ戦っていて。
「悪魔合体士がいたのはラッキーね。
反撃型の悪魔と」
「火炎特化の悪魔の作成完了!
立てる間は頑張るよっ」
レイやロゼも体の負荷を押してなおも防衛線を維持している。
ならば己が戦わないでどうするのだ。
「おじ様ーっ!」
まだ皆頑張り続けているのだ。
その証拠に、夕海子が息せき切って駆けてきた。
「これを!」
悪魔に騎乗────やけに堂に入っている彼女が投げ渡したのは、雨柳のCOMP。
激戦で破損したが幸い損傷は浅く、現場近くに詰めていた彼方の御国の技術者が修理を行ったのだ。
所有者を強化する機能も、仲魔を召喚する機能も再び使用可能。
「ありがとう夕海子ちゃん。
おかげでまだ戦える……!」
COMPのトリガーを引き、仲魔を呼び出す。
召喚されるは魔神アドラメレク。
回復がなされた魔神は翼を広げ。
翡翠の目を戦意に煌めかせた。
「連戦は流石に堪えるが……この数なら俺が必要だなサマナー!」
「ああ! もうしばらく持ちこたえるぞ!」
雨柳の示す先にアドラメレクが
雨柳とトールが残った敵を斬り、叩き潰していく。
無限とも思える敵がいようと、DB達は諦めない。
此処に来るまで強くなると共に多くの物を背負った彼らは。
未来ではなく今の為に抗い続ける。
・Tips:ホモ・フロット及びホモ・ホプキについて
両者共に本スレで言及された
前者は己の力が為にリリィへの人体実験へ加担し、後者は逆恨みからリリィを殺害し、その果てに化け物へとなり下がった。
己が誰の為に力を使うべきか忘れ果て、罪を直視する事なく逃げ続けた彼らの生き方はニンゲンに成り果てる前から、人中の怪物であったと言えるのかもしれない。
なお両ニンゲンの名前の元ネタはホモ・フロットがベオウルフの手にした名剣フルンティングの語源となる
ホモ・ホプキが中世の悪名高い魔女狩りのマシュー・ホプキンスとなっている。
次回は第三次セプテン編エピローグ予定。
10月頃予定ですがよろしくお願いします。