SAOが好きすぎる俺がSAOの中に入っちまった。それもホロウフラグメントなんだけど   作:クラッカーV

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感じる『強さ』

 

 

…………暗い。なんだここ暗い

俺は今何してる?……床に蹲ってんのか

 

ゆっくりと顔を上げる。見渡してみるに、エギルに貸してもらった部屋じゃない

 

(俺、昨日どうしたんだっけ?………あ?声が出ねえ)

 

何故に?俺の声帯が異常をきたしたか?

 

(取り敢えず、外に出るか)

 

俺は床に手をついて起き上がろうとする

 

(……………う、動かねえ…)

 

体はピクリとも動かなかった

 

(おいおい、どうしろってんだよ。………はっ、まさかこれは夢か?抓って確かめたいところだが動かねえしなぁ……)

 

コンコン

 

(ん?)

 

部屋にノックの音が飛び込んできた

 

(なんだ?誰だか知らないけど、今は動けない状態なんだ。だから諦めてくれ…………あれ?)

 

体が急に動くようになった。どういうことだ?相変わらず声は出ないようだが

 

(…………まあいい。扉を開けてあげよう)

 

俺は起き上がり音の発生源へと歩いていく。部屋の中は暗いから手探りで探さないと…………あった、これがドアノブだな

 

(はいはい、今開けますよ〜)

 

俺はドアノブを捻り、扉を引く。扉の間からはとても眩しい光が入ってきて、それに思わず目を細める。何処と無く暖かい

 

扉を完全に開け放った瞬間、俺は訪問者の姿を見ることなく意識を失った

 

 

 

 

 

 

 

「……………んあ?眩しっ!」

 

次に目を開けた時に俺の瞳を熱傷せんが如く太陽の光が入ってきた

 

………少し言い過ぎたかもしれない。たださっきまでの暖かい光と違って目にあまりよろしくはないだろう

 

「こ、ここはどこだ………」

 

俺は起き上がって辺りを見渡す。さっきみたいに体が動かないと言うことはなかったので安心した

 

起き上がった瞬間に白い毛布がハラリと膝に落ちる

 

「…………なんだ、空き地か」

 

ここは昨日俺が修行をしていた空き地だった。どうやらここで夜を明けてしまったらしい

 

「てかこの毛布なんだ?」

 

膝の上にある毛布を手に取り見てみる。綺麗な白色をしている毛布だ、だが俺には見覚えが無い

 

「……………!もしかして」

 

誰かお優しいお方がここで寝ている危なっかしい俺に優しさを込めてこれを掛けてくださったのか!?なんてお優しいお方なんだ!

 

きっと素晴らしい人に違いない!もし男ならばイケメン、女ならば美人さんだろう。俺は美人さんの方であると希望する!だって男だもの

 

大穴の大穴でもしかしたら原作キャラの誰かかもしれない!俺としてはシノンさんがいいな!

 

ザリッ

 

そんな妄想を張り巡らしていると後ろから足音が聞こえた

 

こ、この足音はもしかして!この毛布の主、もといシノンさんか!?

 

勝手にシノンさんだと決め付けてしまったがまあいいだろう。もしシノンさんじゃなくとも他のキャラだったらOKだろ。皆可愛いし

 

まあこの毛布イベント……イベント?があったところでどうと言うこともないけどな

 

俺は嬉々とした表情で振り返る

 

「よお、起きたか?シンよ」

 

そこにいたのはクラインだった

 

「………………」

 

俺の表情は今どうなっているのだろう。自分でもわからない

 

「ん?おい、どうしたよ」

 

「さ………さ……………」

 

「さ?」

 

だがこれだけは言っておこう。さあ皆さん、両手を頭に置いて空を見上げぇ

 

「最悪の裏切り行為だぁぁぁ!!」

 

俺の叫びは、きっとアークソフィア全体に届いただろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビックリしたぜ。お前さん、いきなり空に向かって叫び出すもんだからよ。何が最悪の裏切り行為だって?」

 

「……………いや、なんでもない」

 

まさかクラインだったとは……期待していた分落ち込みも激しい

 

と言うことはだ。もしかしてこの毛布はクラインのか?

 

「あー………毛布サンキューなクライン」

 

「ん?いや、そりゃあ俺のじゃねえぞ。お前さんのじゃねえのか?」

 

「は?いや………なんか気付いたら掛けてあったけど」

 

クラインじゃなかったのか。なんだ、やっばり何処かのお優しいお方が掛けてくださったんだな

 

…………この言い方だとクラインが優しくないみたいだな

 

「しかしその白い毛布。綺麗な色してんなぁ」

 

「ん?ああ、そうだよな。俺白色好きなんだよね」

 

クラインが毛布をマジマジと見るので両手で持って広げて見せてやる。見れば見るほど綺麗な白色だ

 

(うん!やっぱり白が似合うね!)

 

「…………あ?」

 

なんだ?今の…………

 

「へぇ、だから装備は白を基調としてるんだな」

 

「え?あー、まあね」

 

自分の装備を見る。改めて見ると確かに白を基調としてるな。でも変えないと駄目かな………じゃないと防御面に心配が

 

「ま、これは持ち主が現れるまで俺が持っとくか」

 

俺は白い毛布を畳んでストレージに入れた

 

……………しかし、なんだったんだ?さっきの声は。何処かで聞いたことあるような声だった

 

俺が居た世界で誰かに言われたことだったか………?覚えてないな

 

「おお、そうだシン」

 

「んあ?なんだ?」

 

「エギルの店に行くぞ。アスナさんがカンカンに怒ってるぜ」

 

……………はい?

 

「え、えっと……なんで?」

 

「昨日宿に戻ってねえんだろ?圏内にいることはフレンド登録してっからわかったけど、じゃんけんで負けて俺が見に来てみれば呑気に寝てるときたもんだ。そうメール打ったらアスナさんから怒りマーク付きのメールが返ってきた」

 

ほらよ、と可視化されたクラインのウインドウを見る

 

『後でお話がありますから、エギルさんのお店に来なさい』と確かに怒りマーク付きでそこには書かれていた

 

「oh………」

 

何故だ。何故にこんなに怒っていらっしゃるんでしょうか………

 

「…………なんで怒ってるかわかんねえ、って顔だな」

 

「すげえなクライン。まさにその通り、ザッツライト」

 

「はぁ………」

 

何で頭抑えるんだよ。やめろよ俺が変な奴みたいじゃないか

 

「外で寝てたら圏内と言えど危ねえんだ。睡眠PK、ってのは聞いたことあるよな?最近ではあまり聞かないが………その可能性は十分あり得るってことだ。今この七十五層から下に下りられなくなった状況で、オレンジギルドのプレイヤーが間違いや視察なんかで上がって来てるってぇ可能性もある」

 

「……………成る程な」

 

最前線には攻略組が居るからそんなことはまず無いと思ってたが………可能性は0じゃないってことなんだな

 

「ほら、行こうぜ」

 

クラインは俺の肩をトントン、と叩くと歩き出した

 

「でも、一ついいか?」

 

「?」

 

「なんで、そんなに心配するんだ?俺達って昨日出会ったばっかだよな」

 

そう、俺達は昨日会ったばかりだ。まあ出会いは特殊だが、でも昨日出会ったことに変わりはない。そんな人間のことをここまで心配出来るものなのか?いくら原作キャラと言えどそこまでお人好しじゃないだろう

 

これだけはどうしても気になることだ

 

「……………お前ェ、何言ってんだ?」

 

「あん?」

 

クラインは顔だけを俺に向けて言う

 

「昨日出会ったばかりだろうが、一昨日出会ったばかりだろうが、お前ェが死んだら悲しいじゃねえか。一度同じ机囲んだらもう仲間なんじゃねえのか?その仲間が死ぬ、なんて考えたくねえじゃねえか

 

まあ確かに、今日会った奴が明日になったら死んでました、ってのは目覚め悪いな

 

「……………俺もよ、ダチが一人やられちまってるんだ」

 

「!…………」

 

クラインの友達が一人死んでいる。確かに原作でそのことを話しているシーンがあったな………

 

「ダチだけじゃねえ。攻略の途中でどれだけの数のプレイヤーが死んでいったのか覚えてねえ。今でもよ………死にたくねえって泣きながら消えてった奴らの顔を、ダチの顔を思い出すと辛ぇんだ」

 

そうクラインは眉間に皺を寄せ、何かに耐えるように言う

 

「だからよ、お前さんにもそうなって欲しくねえんだ。一度知り合っちまったからにはな」

 

「………………そうか」

 

ああ、そう言うことか

 

クラインは………いや、クラインだけじゃない。キリト達も含めこいつらは、この二年間のデスゲームでこう言う風になっちまったんだ

 

いきなりデスゲームの中に放り込まれて、今まで感じたこともない恐怖を感じながら毎日を生きる。そんな生活を続けていくうちに、人が死ぬと言うことに敏感になったんだ

 

だからこんなにも優しいんだ

 

「ほら、行こうぜ」

 

クラインは俺を一瞥して歩き出す

 

「……………」

 

俺は、その背中がとても大きく感じた。そして、とても強く感じた

 

本を読むことではわからない。アニメを見ることでは理解することは出来ない『強さ』をクラインは持っていた

 

原作を読むに、クラインは攻略組と言うトップ集団の中に居ると言うことで、ある程度強いことはわかっていた。だが原作やアニメではクラインの戦闘シーンは少なすぎる。だからどこまでのモノなのかは俺はわからなかった。そう思っていたんだ

 

でも今、はっきり感じた

 

『ある程度強い』?そんなことを思っていた前の自分をぶん殴りたい

 

こいつはこんなにも強いじゃないか。こいつは、俺なんかとは比べ物にならないほど強い

 

「おい、待てよ」

 

きっとこの『強さ』はクラインだけじゃなく他の皆も持っているモノだろう

 

「あ?どうしたシン」

 

俺がこれから、ここで生きていく為にはこの『強さ』を得なければいけない。皆の役に立つ為には、皆と肩を並べる為には、これが絶対に必要だ

 

だけど、俺にはこの『強さ』の意味がまだよく理解出来ていない。何と無くはわかるが、まだ核心には至っていない

 

だから…………

 

「クライン…………」

 

俺はウインドウを操作して剣を取り出し、引き抜く

 

シュラァァァン、と音を立てながら引き抜いた剣の先を地面スレスレまで下げ、右足を引き腰をどっしりと構える

 

「俺と、勝負しろ」

 

『強さ』を知る為に、俺はお前と勝負する………!

 

 

 




次回はクラインとの真剣勝負
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