SAOが好きすぎる俺がSAOの中に入っちまった。それもホロウフラグメントなんだけど 作:クラッカーV
あれから数十分、暫く空を見つめていた俺はふと武器のことを思い出して立ち上がる
声の正体がわかるわけでもない。ただ、俺の声に似ているだけだ。声の似てる人なんているさ、偶々そうだっただけ、偶然似ていただけ。そう区切りをつけた
頬をペシペシと叩き、近くにあった窓で笑い顔を作ってみる
皆さんこの笑顔100円ですよ!ミスタードゥーナッツ!
「…………よっし、調子は戻ったなー」
さっきのこともアインクラッドの外側へと放り投げたぜ
取り敢えず武器を取りに、リズベットの店へとどーもどーも言いながら入ったら軽いお説教を貰った。はい、スンマセン、反省してます。いや、ホントだよ?反省してるって、ちょ、やめてハンマーを手に握らないで
お金を払って武器をストレージへ。うへぇ……結構金かかるのねん
それからリズベットにサヨナラバイバイしてエギルの店に、俺はこいつと旅に出るぜ…………あ、やっぱチェンジで、エギルとかないわー可愛い女の子がいいわ
そんなことをエギルのスキンヘッドを見ながらカウンター席に座り、俺は二本指を立てて一言こう言うんだ
「マスター、いつものやつ……頼むぜっ」
「やめとけ、ギャグにしか見えん」
ひどくね?
「学校じゃ結構、似合ってる〜っ、て言われてたんだけどな」
「いや、それ絶対バカにされてるだろ」
マジでか………!?
「わからなかったんだな……」
俺の顔を見てかエギルが暖かい目でそんなことを言いやがった
チクショウめぇ………べ、別にわからなかったわけじゃないですし?わかった上で道化を演じてたんだよ。ホントだよ?
「わかってたしぃ!」
なんかエギルの視線が非常に嫌な上に泣きそうになったので走って部屋まで戻って不貞寝を決め込んだ
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寝て起きたら朝だった。不貞寝を始めたのが夕方になるちょい前ぐらいからだから…………夜なんてなかったよ
エギルから飯とココアを貰って外へ繰り出す
さてどこへ行こー、ホロウエリアにレッツゴー。なんてラッパーに失礼ながらもラップ調で口ずさんでたら管理区に着いた。今思えば全然ラップになってなかったような気がします
「無限に広がる大宇宙って言うけど、宇宙の果てってあると思うんだ」
なんて言いながら管理区へ入るとキリトとフィリアが何か話していた。二人とも俺の方を向いて「お、おう……」みたいな顔をしている
あらやだ、私に隠れて密会中だったのね!?キリトの浮気者!アスナパイセンにチクってやる!!
「んで、何会議中?もしかして俺ハブられてる?」
「そ、そんなことないよ!?」
「何で慌てんの?余計ハブられてる感あんじゃん」
あ、ヤバ。泣きそう
「そういうわけじゃなくてだな、シン」
「やめてー、そういうのマジやめてー、俺のメンタルあれ並みに弱いんだから。あれだよあれ…………シャー芯」
「シャー芯!?」
うん、あんまいい例え思いつかんかったんよ。どうでもいいけどフィリアお前、意外と面白い反応返してくれるのな
「で、何の話よ」
全く、話が進まないじゃないか。誰のせいだ誰の!
………え?何、俺のせい?あぁはいスミマセン
ブーメランってか、お前それブーメランだよ、ってか。大丈夫、俺のブーメランは投げたら『あっ、ブーメランが!』ってなって戻ってこないから
「この樹海エリアの向こう側に、他にもエリアがあるんだ。そこに行くための方法について話してた」
「向こう側?………あの鬱蒼とした樹海の向こうにまだなんかあったん?」
俺は探索を全体までしていないからよくわからないんだけど、まあ確かに、普通は他のエリアがあるもんか。見た感じアインクラッドみたいに迷宮区は無さそうだし
「この前俺達で手に入れたペンダントのこと覚えてるか?」
ペンダント?……………あぁ、あのサンクチュアリとかいう奴を倒した時のね
「これなんだけど」
俺が頭の片隅から引っ張ってきているとキリトがストレージからペンダントを取り出した
「フィリアが言うには、このペンダントと同じ紋章が刻まれた門があるらしい。それを確かめる為に今からそこへ向かおうと思ってるんだけど、シンも行くよな?」
「おう、行く行く」
キリトの質問に二つ返事で返す。まあ、元々一緒に探索するのが目的だしね
俺の返事にキリトが頷くと、キリトは手元を操作し、俺にパーティ申請を送った。それを承諾して、ストレージから武器を装備する。よし、準備完了。ポーションの在庫もまだある。キリトとフィリアがいるから、強い敵、もしくは沢山の敵と戦わない限りは問題無いだろう
いつでも行けるぜ、とアイコンタクトを送ると、キリトの合図で俺達はホロウエリアへ乗り出した
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「…うわぁ……」
樹海エリア、鬱蒼と木々が生い茂る中で少女は目を見開いた
時刻は正午前、視界の端に表示された数字がそう告げる
「ここが……」
右へ、左へ、ゆっくりと景色を眺めながら、自分の立っている場所を確認する。森の中、その一言に尽きる。というか、その一言以外少女は出てこない。ここが彼女の知るゲームの中であれば、まだどこか予想は付くのだが、生憎と彼女は、とある目的の為に『今現在、このゲームにログイン』したのだから、詳しい地形を知っているはずもない
必死に思考を巡らせて、取り敢えずその場に腰を下ろした
「ここが、SAO………浮遊城、アインクラッドだったよね」
少女は、『自分がいるこの場所を、アインクラッド内部』だと認識した。右手を振る動作をし、自分のステータス画面を確認。そして装備画面へ移行して、ストレージ内の武装を全て付ける
再度立ち上がり、彼女は言った
「まずは人を探さないと!」
そしてあても無く歩き出した
道中イノシシに遭遇し、左腰に携える片手用直剣で攻撃。相手の攻撃を正確に避け、素早い反撃。超高速の剣は、イノシシにそれ以上の追撃を許すことなく、1分にも満たないうちに、イノシシをポリゴン片へと変えた
「うーん、いいね!好調!」
立ち止まり、花が咲いたかのようににっこりと笑う。それから確かめるように数度剣を振ると、少女は鞘へ剣をしまった。にっこりと笑った顔は、剣をしまうと再度人を探す為の気合いを入れ直すように引き締まる
木々の間から、木の下を通る度に不規則な感覚で顔に当たる木漏れに、少し目を細めながらも上を向いて歩く。眩しいが、心地の良い気候た。運が良いのか、少女の行く先にはモンスターがあまり現れない。気付けば引き締まった顔も微笑に変わり、少女は鼻歌を歌いながら歩いていた
「……………!」
ふと、少女の耳元に金属音が聞こえる
剣と剣がぶつかる音。少女は人がいると考え、そこへ向かって走り出した
金属音の発生源へと向かうと、そこには一体のスケルトンと戦うプレイヤーの姿があった。左手にラウンドシールド、右手に純白の片手用直剣。白い生地の服装の上に、プレートを付けている
そして何よりも少女の興味を引いたのは、プレイヤーの顔にある狛犬のお面だった
「………狐?」
狛犬のお面だが、少女には狐に見えたらしい。普通ではあまり見ないその姿に、首を傾げた
「はぁっ!!」
お面のプレイヤーが気合いの一閃を放つ。その剣はスケルトンの腰骨辺りを薙ぎ、スケルトンはそれによりHPを削り取られた
プレイヤーは暫し、ポリゴン片となるスケルトンを見つめる。そして、お面の下で少し息を吐き、肩越し少女を見た。お面の間から見える眼光が、角度もあり鋭く見える。それに少女は臆すことなく、プレイヤーの前に姿を現した
「………何か用?」
プレイヤーはお面の所為か、少しくぐもった声で問い掛ける。敵意は感じられないが、冷たい声だった。冷たくしているかのような声だった
「ボク、人を探してたんだ。本当はもっと人のいる場所に行きたいんだけど、そこもどこにあるかわからなくて」
場所だけでも教えてくれないかな?とにこやかに問い掛ける。プレイヤーの態度から見て、案内をしてもらう、という選択肢は真っ先に消した。なぜなら目の前のプレイヤー、少女が話している最中に周囲を見渡しているからだ。話を聞いているのかどうかすらわかったものじゃない
「お兄さんが拠点にしてる場所でもいいから。駄目かな?」
両手を合わせてお願いのポーズをとる。声と体格から男性だと認識した少女は、取り敢えず彼のことをお兄さんと呼んだ
プレイヤーはそれを見て、頭を掻く。そしてまた息を吐き、声色を変えずに呟いた
「…………お前も違う」
「え?」
少女はプレイヤーの言葉がよく聞き取れなかった。しかし、場所を教えてくれているんだな、とも思わなかった。だが何かを言っていたのは事実、少女はそれが気になり思わず聞き返してしまう
プレイヤーは少女に向き合う
「拠点にしてる場所は忘れたし、人が集まってる所も忘れた。俺はずっとここらで探し物してるだけ」
それだけ告げると、全て伝えたと言わんばかりに踵を返して歩き出す
「……………え!?」
少しの間呆然となった少女だったが、プレイヤーが歩き出して暫くに我にかえった。折角見つけた同じプレイヤーなのだから、逃すわけにはいかない。そう思い走って追いかける
「わ、忘れたってどういうこと!?」
プレイヤーの隣に着き、少女は声を荒げた
探し物のこととか、気になることはあったがそれよりも、だ。拠点を忘れるとは一体どういうことか。街がある場所も忘れたとは一体………どうすればそんなことが起こるのか全くわからない。この人、記憶喪失なのかな?と疑った少女は悪くない
「着いてくんなよ。なに、ぼっちなの?寂しんガールなの?」
「お兄さんにだけは言われたくないよ………」
特にぼっちという単語に関しては、たった一人で探し物をしているこの人だけには言われたくない。少女は心の底から切実にそう思った。声色も変わらない為、本気で言ってるんじゃないだろうか
「それにボクはぼっちじゃないよ!ボクのギルドには沢山とは言えないけど、大事な仲間が………」
声のトーンが段々と落ちていく
「………ボク、皆に内緒で来ちゃった」
肩を落とし、落ち込んだ様子で呟いた。そんな少女を横目で確認したプレイヤーは、冷たい声色を少し軟化させて話す
「そりゃ大変だ。今すぐ帰ればコンビニでアイス買ってもらえるかもよ」
「うぅん、戻れないんだ。少なくとも、今すぐには」
「…………はぁ」
折角態度を軟化させたと言うのに、更に落ち込んでしまった少女を見て溜息を付いた。頭をガシガシと掻く。お面の奥の瞳は、面倒なものを拾った、と言う感情が見て取れた
「まあ、人がいる場所にいつかは行くかもしれないし。それまで着いてくればいいんじゃね」
面倒臭そうなのを隠そうともせずにそう告げた
対する少女は、そんなプレイヤーの態度を見ても特に変な顔をすることもなく、逆に顔を輝かせる
「いいの!?」
「そん代わり、俺の探し物の邪魔したら許さん。て言うか、手伝いなさい」
「うん!」
少女はプレイヤーの言葉に元気に頷く。花のような笑顔に、プレイヤーは少し恥ずかしくなって顔を背けた。少女はそれに気付かずに、早速プレイヤーの言った通り、探し物を手伝う為に其処彼処に歩み寄っては草の根を掻き分けたりしている
「ねぇ、探し物ってなに?」
聞くのを忘れていた、と少女はプレイヤーに聞いた
「知らない。でも、見たらわかる」
「じゃあ、もしかしたらこれとか?」
少女は不思議な形のした石を拾い上げ、プレイヤーの前に差し出した
「…………」
プレイヤーは暫しその石を見つめる
「チェスト」
「ふぎゃ!?」
そして、HPが減らないギリギリの威力でチョップを落とした
「そんなチンケな物なわけねぇだろうが」
「何かもわからないのに?」
「…………」
頭をさすりながら答える少女に図星を突かれた。少女はお面の下できっと悔しそうな顔をしてるプレイヤーに、ニヤニヤした笑みを浮かべる
「邪魔すんなって言ったろ」
「あ、誤魔化した!」
少女は構わず歩き出したプレイヤーを追かける
「あ、そうだお兄さん。名前は?」
「………狛犬お兄さんとでも呼べばいんじゃね」
「わかった!」
それ狛犬だったんだ、と思いながらも元気に返事をする少女。狛犬お兄さん方は内心冗談だったのだが、今更撤回するのも面倒なのでそのままにしておくことに決める
「お前の名前は?」
実際、本当には名乗ってはいないと言えど、相手の呼び名くらいは知っておかなければいけない。そう思い狛犬お兄さんが問い返す。少女はその問いを聞き、また花のような笑顔を咲かせた
「ボク、ユウキって言うんだ!よろしくね」
少女ユウキは、パープルブラックの髪を揺らし、朗らかにそう答えた
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