あなたの願い、届けます。   作:通りすがりのアンパン

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ポケモンはあまり死について触れないため、それに関連する物語を作ってみたく、この話を書いてみました。


少女とイーブイ

「あっ……」

 

『…………』

 

 少女は喋らない。でも想いが胸の中に流れ込んできて、彼女が何を言いたいのかはだいたいわかる。

 

「そう、それが君の願いなんだね」

 

『……』

 

 少女はこくりと頷いた。彼女の悲しい気持ち、無念、そして何より心配している気持ちが強く流れ込んでくる。

 

 僕は彼女と一緒に彼女の思い出が詰まる場所に行った。

 

「ここなんだね」

 

『……』

 

 人通りの少ない路地を抜けた先には大きな木が一本そびえ立っている公園があった。ここで彼女と彼女のポケモンはたくさんの時間を過ごした。

 

「ブイ…………」

 

 そこにいたのは一匹のイーブイ。木の根からぶら下がっているブランコを前に俯いている。

 

 途端に強い頭痛と共に記憶が流れ込んでくる。

 

(……ちゃん!……ちゃん!しっかりして!)

 

(駄目だ……血が止まらない)

 

(早く救急車を!!)

 

 

 

 そうか…………

 

 

「ブイ!?」

 

 物音に気付いたイーブイはこちらを振り向くと警戒を露わにする。

 

「大丈夫、今日は君に伝えたいことがあるんだ」

 

「ブイ……?」

 

 どうやらイーブイも何かを感じ取ったのだろう。警戒を解いてこちらにやってきた。

 

「ねえ、イーブイ。君はどうして進化をしないんだい?」

 

「ブイ……イーブイ……」

 

 イーブイの耳が垂れ下がり悲しそうに目線を落とした。

 

『…………』

 

 少女はイーブイの頭を撫でる。少女の目からはポロポロと涙が溢れ悲しい気持ちが流れてくる。

 

「ねぇ、イーブイ」

 

「……ブイ?」

 

 イーブイを抱っこして頭を撫でながら僕は()()()()それを伝えた。

 

「約束守れなくてごめんなさいって言ってるよ」

 

「……!」

 

 イーブイは驚いて周りをキョロキョロと見渡す。でもこの公園には今は僕とイーブイしかない。

 

 イーブイは何かを察して僕の言葉を待つように真っ直ぐ目を合わせた。

 

「一緒に冒険に行きたかった。もっとたくさんの時間をあなたと過ごしたかった。突然いなくなってごめんなさい」

 

『…………』

 

 少女は止まることのない涙を流しながら優しくイーブイの頭を撫で続けている。

 

「……ブイっ……」

 

 僕の言葉を聞いてイーブイはとうとう堪え切れず涙を流した。僕の胸に顔を埋めて大声で泣いた。

 イーブイはわかっていた。でも、何故かこの場所に来ると再び彼女に会えるような気がした。しかし、そんなことはなかった。

 彼女と最初に出会ったこの公園は、二人だけのかけがえのない思い出が詰まった場所。

 

「それとねイーブイ」

 

「ブイ……?」

 

「進化して欲しいって言ってるよ」

 

「……っ!」

 

 

「10歳の誕生日に親から貰った進化の石で君は進化をするはずだったんだよね」

 

「……ブイ」

 

「誕生日の一ヶ月前から君は彼女に最初のバトルで勝って喜んでもらえるようにワザの練習をしてたんだよね。君はこっそりしてたつもりだったみたいだけど、知ってたんだって」

 

「イブイ……」

 

「だからね、ちゃんと進化してくれると嬉しいって言ってるよ」

 

「……ブイブイ!」

 

 イーブイは覚悟を決めた目で力強く頷いた。そして、こちらに一礼すると公園を去っていった。

 

 

「良かったね。イーブイきっと進化して立派になるよ」

 

『…………』

 

 少女は嬉しそうに微笑むとスーっと姿を消した。

 

 

 ◇次の日◇

 

 

 僕は彼女のお墓に来ていた。

 

 

「これ、君に渡してほしいって」

 

 僕は一輪の花をお墓にお供えした。

 

『えへへ、ありがとう!』

 

 少女は頬を染めて嬉しそうに微笑えんだ。

 

 

(イーブイ!来月の私の誕生日、10歳になったから旅に出ていいって!)

 

(ブイブイ!)

 

(ふふっ、楽しみだね。誕生日プレゼントはイーブイが進化できる石をくれるってパパ言ってたんだ!だからね、私の誕生日にイーブイが好きな石を選んで進化しようね!)

 

(イブイ!)

 

(うんうん、そしたらたくさんバトルして、いろんなところを見て回って、いっっぱい冒険しようね!約束だよ!)

 

 

 

 

『お兄ちゃんにね、最後のお願いがあるの。その子を、お兄ちゃんに育てて欲しいな』

 

「……うん、わかった。大事に育てるよ」

 

『うん!いい子にするだよぉ〜』

 

 少女の声は届かない。でもきっとその想いは届いているだろう。

 

 結局イーブイは石を使わなかった。

 

 でも少女は嬉しそうに笑っている。

 

「お花、ありがとうだって。あと、これから僕と一緒にいて欲しいみたいなんだけどいいかな?」

 

 僕の隣でお座りをしていた少女のパートナーは元気よく返事をした。

 

「フィア!」

 

 きっと少女の想いが伝わったのだろう。涙を流しながら、それでいて満面の幸せそうな顔で────────

 

 

 

 

 

 

『ニンフィア』は笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕は昔から()()()()()()()人やポケモンを見ることができる。

 所謂幽霊なんだと思う。

 周りの人達は気味が悪いだの、物騒だの、呪われるだの言っているが全くそんなことはない。彼らはただやり残したことを今生きている人たちに頼んでいるだけなのだ。

 

 だから僕はそんな彼らをお手伝いしている。彼らの最期のお願いを叶えるお手伝いを。

 

 

 

 

 

 

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