TS龍娘ダクファン世界転生   作:てんぞー

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命の値段 Ⅲ

「それじゃあ僕らは仕事の話をするから。リアを頼んだよエデン」

 

「あぁ、ローズ。君は彼女達と一緒に遊んでなさい」

 

「はい、お父様」

 

「うっす」

 

 ローズが従者の癖に主に対する軽すぎる対応に一瞬目を剥いたが、エドワードは一切気にする様な様子を見せない。まあ、グランヴィル家はそこら辺緩くやっているし客人相手には物凄く真面目にやっているのでハウスルールは許してくれ。これ、ハウスルールで正しいのか? まあ、何でもええやろ。とりあえず大人が真面目な話をするので、その邪魔にならない様に部屋から外に出る。

 

 さて困った。相手は特に良く知りもしない領主のお嬢様。どうやって対応すべきか。若干頭を悩ます話題でもある。何せ、年頃の娘の接し方なんて俺には全くノウハウがないのだから。俺自身今は小娘の体をしているが、中身は完全に大人なのだ。女の子の接し方は何時だって知りたい。

 

「ローゼリアさん、ずっと同年代の友達が欲しかったんです。私、ローゼリアさんとは良い友達になれたらなあ、と思っているんだけどローゼリアさんはどうかな?」

 

 言った―――! かなりストレートに言った―――!!

 

 火の玉ストレートで友達になろうと言えた我が家のお姫様のコミュニケーション能力に戦慄する。でもこれ、ちょっと敬語で接するべきかどうか悩んでる感じはあるな、と見た。実際同年代の相手は俺が初めてだが、俺は立場上は使用人だ。俺が相手であればグローリアは自由な振る舞いが許されるが、この少女は領主の娘だ。一応は領民というカテゴリーに入る以上、接し方を考えなくてはならない。

 

 とはいえ、エドワードとサンクデルを見ている限り普通の子煩悩パパって感じだから仲良くしてほしい……って意図は感じる。親が仲良いと子供も普通は仲良くなるもんだしなぁ。

 

 さて、とローゼリアのリアクションを見ると、軽く髪を後ろへと流しながらそうね、と言葉を置いた。やはりその瞳には焔が見える。どことない敵対心か対抗心か、そんなものが映っている。或いは同世代の少女に負けたくないという気持ちがあるのか。

 

「良いわよ、楽な喋り方で。私もあなたの事はグローリアと呼ばせていただきます、良いかしら?」

 

「えぇ、勿論よローゼリア。私、今日という日を楽しみにしていたの」

 

「それは勿論、私も楽しみにしてました」

 

 ローゼリアの視界にはグローリアしか映っていない。俺は使用人だからターゲットから外れたかなぁ、と考える。まあ、少女たちの青春を横で眺めるのも使用人のお仕事だろうと自分を納得させる。

 

「所で、グローリアはなんでも……父であるエドワード様から魔導の手ほどきを手厚く受けている、とか」

 

 ほほーん?

 

 探る様なローゼリアの言葉にグローリアは頷いて答えた。

 

「うん、お父様は私に才能があるからって魔法の勉強を教えてくれるよ。歳の割には魔法に関しては抜きんでているって話だよね、エデン?」

 

「俺は相対的にそっちの才能皆無だったけどな。リアは魔法関係、基本は抑えて紙式も制御可能になってるし、身内贔屓の評価かもしれないけど才能あるんじゃないかな? スポンジの如く教えられたことを吸収してすぐに実践できてるし羨ましいよ」

 

 まあ、俺が才能なさすぎという問題なのだが。その分俺はフィジカル方面に初代暴君から色々と仕込まれているので立場的にはトントンという感じだ。二代目暴君はマジカル方面かぁ……というのが現在の俺とエドワードの認識なのかもしれない。いや、二代目暴君就任とかされても嫌なんだけど。

 

「でも私、エデンの体が凄い所羨ましいよ」

 

「その言い方語弊があるから止めない??」

 

「貴女……従者の癖に馴れ馴れしいわね」

 

 やや睨むような視線に礼を取る。

 

「これは失礼しましたローゼリア様。立場と態度をわきまえましょう」

 

 それを受けて少しだけ睨んでいたローゼリアが頭を横に振った。

 

「いえ、良いわ。グランヴィル家の使用人なのでしょう? 私が口出しする様な事でもないし……本人がそれで良いのならそれが正解なのでしょう。申し訳ありませんわね」

 

「いえ、此方こそお気遣い頂いたようで申し訳ありません。ですが、その……当家、貴族というのも名ばかりなので振舞いとか義務とかは特に求められなくて……」

 

「あぁ、うん……」

 

「うーん?」

 

 貴族ではあるけど名前ばかりでぶっちゃけ貴族らしさは皆無ですよ、と言外に告げるとローゼリアは察してくれたのか納得する様な同情する様な視線を送ってくる。理解していないグローリアは首を傾げて人の角を掴んでくるが、それをハンドルの様に扱うのは止めろと言っただろ。いや、まあ、この貴族フリースタイル100年! みたいなグランヴィル家のノリ、俺は嫌いじゃないんだが。滅茶苦茶快適だし。エドワードもエリシアも、別にそこまで言動キチンとしてなくても良いんだよ? って普通に言ってくるし。自分の子供が1人増えているような感覚なんだろうな、あの2人からすると。そこはもう、本当に感謝しかない。

 

「と、とにかく」

 

 ローゼリアが咳払いしつつ仕切る。

 

「私、貴女の話をお父様から聞いてからしたい事があるのよ。付き合って貰えるかしら?」

 

 挑戦的な気配を隠そうともせずに告げるローゼリアにグローリアは気づく事もなく首を傾げる。

 

「え、なになに?」

 

 何を、と聞き返してくるグローリアに対してローゼリアが言い放つ。

 

「無論、魔法の比べ合いよ」

 

 

 

 

 つまり、このローゼリアというお嬢様はずっとグローリアをライバル視してきたという事だ。同年代の少女で、父の友人。そしてエドワードは昔は中央ではそりゃ大層有名な宮廷魔術師だったらしい。今の生活を見ていると全くそういう風には見えないが、当時はバリバリに活躍していたらしく人望も実力もある人物だった。そんな人が辺境にいて、自分と同年代の娘を持っているのだ。ローゼリアは話を聞いた時から恐らくライバル視していたのだろう。

 

 見ている感じ、貴族としての、或いは領主の娘としてのプライドが非常に強い娘だ。だから代表される身として、負けてはいられないという気持ちで溢れている……というのが俺の見立てだった。

 

 中庭に移動するとローゼリアは使用人に頼んで木人をターゲットとして用意して貰った。それをターゲットとしてタイルの上に設置すると、その前でローゼリアとグローリアが向き合っていた。所で君たち名前を略すと2人ともリアになるんだな、って今更ながらどうでもいい事実に気づいた。

 

「私も魔導はお父様や先生から習っていて自信があるわ。でもあのエドワード様に直接教わっていると言われるグランヴィル家令嬢グローリア、実力の程が非常に気になるの。だから私貴女がどれだけ出来るのか見たいし、比べたいの」

 

「エデンとだと勝負にすらならないし良いよ。私も自分がどれだけ出来るか知りたかったし」

 

「そこで俺を引き合いに出すの止めない? このジャンルだと糞雑魚だってのは認めるから」

 

 両手をだらりと下げてコミカルに脱力していると、ローゼリアが腕を組みながら顎に手を当て、考えるように首を傾げた。

 

「エドワード様から貴女も教わっているのよね?」

 

「当の本人から才能がないって評価貰ってるんですよ」

 

 やれやれのポーズを取る。

 

「魔力を引き出すのと込めるのは良いんですけど、どーしても放出やコントロールが駄目なんですよね。イメージが掴めないというか、コントロールする感覚やコツが掴めないというか。なのでこの一年間、まるで成長進捗がないんですよ」

 

「珍しい事もあるのね。あのエドワード様でさえ解決できないなんて……」

 

 あの、とか言われるレベルで凄い人だったというのはなんとなく察しているのだが、俺の状態ってそこまで深刻だったのか? いや、でもこの世界の住人にとって引き出す、放出、込めるの三動作が基本にして基礎って話なんだからそれが出来ない俺は相当ヤバイのか。まあ、当たり前の事が出来ない人間というのはどうしても奇異に映るか。

 

「まあ、その代わりに先天で使える魔法があるのでそれで……いや、それが邪魔しているとも言えるんですけど」

 

 うーん、と唸る。説明が難しいし、説明には時間がかかる。

 

「まあ、俺の事は放置で。本題ではないので」

 

 その言葉にローゼリアは軽く考えるように噛んでいた指を離して頷いた。

 

「気になるけどそうね。私も魔法を勉強して修練を重ねてきた自負があるわ。だから私と貴女、どちらが魔導の腕は上なのか是非とも比べてみたいのよ」

 

「私は全然かまわないよ。で、罰ゲームはどうする?」

 

「どうしてそこで自然と罰ゲームって発想が出たのかしら??」

 

「初対面の相手に罰ゲーム提案するのかこいつ……」

 

 何かおかしなことを言った? という感じに首を傾げる時点でもう既に手遅れ感はある。物凄い自然な形で罰ゲームを挟み込んでくる辺り我がリトルタイクーンの将来像が恐ろしくなってくるが、ローゼリアは直ぐに納得した様子だった。

 

「良いわ! 勝負ごとに勝ち負けは常、負ける事を恐れては勝負も出来ないわ! 勝敗判定はそこの従者に任せるとして罰ゲームはどうするかしら」

 

「じゃあエデンに技を一発かけて貰うって事で」

 

「いいわ!」

 

「いきなり地獄みたいな罰ゲーム入ったが本当に良いの? 良いんだな!? やっちゃうぞ俺!?」

 

「うん!」

 

「えぇ!」

 

 もうどうなってもしらんぞ。視線を待機している使用人の方へと向ければ、付き合ってください的な視線が向けられてくるが……本当に止めなくて良いんだな? 俺は街中でアルゼンチン・バックブリーカーを披露する女だぞ? えぇ、ゴーサイン出ているじゃん……まあ、合意なら不敬ポイントにならないしいっか。

 

「んじゃ勝負内容を決めましょっか」

 

「ならここは伝統的なスタイルを取るわ」

 

「伝統的なスタイル?」

 

「えぇ」

 

 解っていないグローリアに得意げにローゼリアが答える。

 

「魔術師は古来より互いの実力を比べ合ってきたわ。その一番の方法は決闘―――待って、無言で構えるの止めなさい。そんな野蛮な方法を取る訳ないでしょ!? なんで微妙に決闘する事に乗り気なのよ」

 

 無言で構えだしたグローリアの殺意の高さにローゼリアは驚きつつも、こほん、と咳払いして話を続ける。

 

「良い? 決闘なんかしないからね? ……魔術師は古来は決闘という形で優劣を付けていたわ。だけどその結果怪我をしたり、死人が出たりして問題もあったわ。その為、魔術師は単純に魔術の実力を測るのであれば、実戦形式ではなく互いの基礎能力を測れば良いという事に気が付いたわ」

 

「死人が出るまで気づかなかったの相当愚かでは」

 

「それは思う」

 

「何で気づかなかったんだろう?」

 

 まあ、昔の人って命よりも名誉みたいなタイプ多かったし……。力比べした結果死んでも良し! ってタイプが多かったんじゃないかと思う。まあ、間違いなく頭おかしいとは思うが。そういう時代じゃないんだなあ、今は。

 

「だから現代ではもっと平和的に基礎能力を比べ合う方法があるわ。というのも単純に互いに一定距離を開けて」

 

 ローゼリアがここに立って、と指示を出すのでそれに従ってグローリアが動く。俺も邪魔にならない様に距離を開け、2人の立ち位置を確認する。そうするとローゼリアとグローリアが木人を挟む様に立った。互いに木人からの距離は1メートル程だ。

 

「そうそう、そんな感じ。使えるものは己の両手のみ、移動は禁止。自分の立ち位置から動いては駄目よ。後は両手からの魔力の放出だけで木人を相手側に倒したほうが勝者というシンプルなルールだわ」

 

「あ、成程。魔力の運用、変換、放出と付与以外の技能を比べ合うんだこれ」

 

「そうよ。シンプルだけど基礎能力を測るには十分な遊びよ。ちなみに相手への直接的な妨害は禁止よ」

 

「あくまでも木人だけを狙えば良いのね、解ったわ」

 

「ならエデン、木人に細工がされてないか確認してくれるかしら?」

 

「多分必要ないと思いますけどなー」

 

 見てる感じ、ローゼリアというお嬢様の性分は真っすぐで負けず嫌いなタイプだ。漫画とかで見る王道タイプのお嬢様、たぶん仲良くなると気持ちの良い性格をしているから遊びやすく、一緒に居るのが楽しいタイプだろう。だから木人に特に細工が施されているとは思わないが、一応頼まれたのでチェックしてみる。近づいて木人に触れてみるが、何か魔法がかかっているとかそういう事は特にない。重さも普通だ。俺の筋力で片手で倒せる程度の重みでもある。これは結構魔力を使う事になりそうだ。

 

 確認を終えた所で後ろへと下がる。

 

「大丈夫っぽい……ついでに開始の合図も出します?」

 

「お願いするわ」

 

「ちょっとドキドキしてきた」

 

 ライバル心をぎらぎらと燃やしているローゼリアに対して、グローリアは新しい遊びに挑む感覚に近いのか、ちょっと興奮しているように見える。まあ、やらかさなきゃいいけどなあ……と思いながらポケットから硬貨を取り出す。

 

「ではこれを空中に放つので、これが地面に落ちたら開始という事で」

 

「問題ないわ」

 

「こっちも大丈夫だよ」

 

「ではでは」

 

 ローゼリアが両手を前に突き出すように構え、グローリアが同じように両手を前に出して構える。まだまだ幼い少女たちの青春が今、ここで繰り広げられている。異世界に行っても青春とかは全く変わらないんだ。そんな妙な心境になりつつコインを指で弾いた。

 

 くるくる回転しながら落ちて行くコインを少女たちが目の端で追う。

 

 ローゼリア、グローリア、共に集中するように視線を前に向けたまま構え―――コインが足元に落下した。

 

 瞬間、ローゼリアが魔力を放った。

 

「勝―――」

 

 瞬間、ローゼリアの表情には勝利を確信したものがあった。発動、放出、規模、全てが俺とは比べ物にならないレベルで優秀だった。ローゼリアが魔術に自信をもってグローリアに勝負を挑んだのも良く解る姿だった。コインが下に落ちた瞬間と言えるレベルの速さで放たれた魔力の壁は一瞬でグローリアとの間に勝敗を付けようとして、

 

「むんっ」

 

 グローリアから木人もローゼリアも飲み込む魔力の極太ビームが敗北する寸前に放たれた。

 

「はっ?」

 

 そんな疑問の声だけを残して、

 

 グローリアの魔力が一瞬で二つの姿を光に飲み込んだ。

 

 うーん、罰ゲーム決定ッ!!




 評価、本当にありがとうございます。完結した時並の勢いで増えてる……!

 実はかなり前から会う事にそわそわしていたお嬢様。エドワードはその道では有名人である。

 なおビームに飲まれる。
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